(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097658
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】医薬品発注管理システム、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20230703BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230703BHJP
【FI】
G16H20/10
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213887
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】309005238
【氏名又は名称】アクシスルートホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 一馬
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】発注量を抑える特定期間とその特定期間の前の所定期間との発注量を最適に設定することができる医薬品発注管理システム、及び、プログラムを提供する。
【解決手段】医薬品発注管理システム1は、1週間から数ヶ月の特定期間の医薬品の需要量の予測値と、特定期間より前の所定期間の医薬品の需要量の予測値とを取得する予測情報取得機能と、予測情報取得機能により取得された特定期間の医薬品の需要量の予測値より少量の発注量を、特定期間の医薬品の発注量の予測値として算出し、予測情報取得機能により取得された特定期間より前の所定期間の医薬品の需要量の予測値より多量の発注量を、当該所定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する発注量予測機能とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1週間から数ヶ月の特定期間の医薬品の需要量の予測値と、前記特定期間より前の所定期間の医薬品の需要量の予測値とを取得する予測情報取得機能と、
前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の医薬品の需要量の予測値より少量の発注量を、前記特定期間の医薬品の発注量の予測値として算出し、前記予測情報取得機能により取得された前記所定期間の医薬品の需要量の予測値より多量の発注量を、前記所定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する発注量予測機能と
を備える医薬品発注管理システム。
【請求項2】
前記発注量予測機能は、前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の医薬品の需要量の予測値と前記特定期間の医薬品の発注量の予測値との差分を算出し、前記差分と前記所定期間の需要量の予測値との合計以上の発注量を、前記所定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する請求項1に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項3】
前記発注量予測機能は、
医薬品を、医薬品の属性情報及び患者の属性情報の少なくとも一方に応じて、前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の医薬品の需要量の予測値に応じて前記特定期間に発注する第1医薬品と、前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の医薬品の需要量の予測値より少量を前記特定期間に発注する第2医薬品とに分類し、
前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の前記第2医薬品の需要量の予測値より少量の発注量を、前記特定期間の前記第2医薬品の発注量の予測値として算出し、前記予測情報取得機能により取得された前記所定期間の前記第2医薬品の需要量の予測値より多量の発注量を、前記所定期間の前記第2医薬品の発注量の予測値として算出し、
前記発注量予測機能は、前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の前記第1医薬品の需要量の予測値に応じた発注量を、前記特定期間の前記第1医薬品の発注量の予測値として算出し、前記予測情報取得機能により取得された前記所定期間の前記第1医薬品の需要量の予測値に応じた発注量を、前記所定期間の前記第1医薬品の発注量の予測値として算出する請求項1又は2に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項4】
前記第1医薬品は、投薬期間の制限のある医薬品、所定の価格以上の高額医薬品、及びハイリスク医薬品、及び、服薬フォローが実施された患者に処方する医薬品の少なくとも一つを含む請求項3に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項5】
前記予測情報取得機能は、電子薬歴システムにおいて記録された薬歴情報に基づいて、前記特定期間の医薬品の需要量の予測値と、前記所定期間の医薬品の需要量の予測値とを算出する請求項1~4の何れか1項に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項6】
前記予測情報取得機能は、前記電子薬歴システムにおいて記録された前記薬歴情報に基づいて、前記特定期間と前記所定期間との長期投与患者又は分割投与患者の来局の有無を予測し、前記所定期間と前記所定期間との前記長期投与患者又は前記分割投与患者の来局の有無の予測結果に応じて、前記特定期間と前記所定期間との医薬品の需要量の予測値を算出する請求項5に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項7】
前記予測情報取得機能は、医薬品の需要量の増加の要因となる増加要因情報を取得し、取得した前記増加要因情報に応じて、前記特定期間と前記所定期間との医薬品の需要量の予測値を算出する請求項5又は6に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項8】
前記増加要因情報は、疾患が流行する情報、及び、疾患がPRされた情報の少なくとも一方を含む請求項7に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項9】
前記予測情報取得機能は、医薬品の需要量の減少の要因となる減少要因情報を取得し、取得した前記減少要因情報に応じて、前記特定期間と前記所定期間との医薬品の需要量の予測値を算出する請求項5~8の何れか1項に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項10】
前記減少要因情報は、薬局の近隣に新規薬局がオープンする情報、不動在庫の情報、及び、地域医療連携の情報の少なくとも一つを含む請求項9に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項11】
前記所定期間の医薬品の仕入れ単価は、前記特定期間の医薬品の仕入れ単価に1未満の係数を乗じた価格である請求項1~10の何れか1項に記載の医薬品発注管理システム。
【請求項12】
1週間から数ヶ月の特定期間の医薬品の需要量の予測値と、前記特定期間より前の所定期間の医薬品の需要量の予測値とを取得する予測情報取得機能と、
前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の医薬品の需要量の予測値より少量の発注量を、前記特定期間の医薬品の発注量の予測値として算出し、前記予測情報取得機能により取得された前記所定期間の医薬品の需要量の予測値より多量の発注量を、前記所定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する発注量予測機能と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品発注管理システム、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の発注を支援するためのコンピュータシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のコンピュータシステムでは、調剤単位コードを含む調剤データと医薬品の在庫量とに基づいて医薬品を発注する確率を算出し、算出した確率に基づいて発注すべき医薬品の調剤単位コードを発注単位コードに変換し、発注単位コードに対応する発注単位で発注すべき医薬品を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1~数ヶ月程度、あるいは1~数週間程度等のある特定期間については医薬品の発注量を抑え、その特定期間の前の所定期間に医薬品の発注量を増やすことで薬局の実需に対応することも可能である。そのような対応の潜在的なニーズも存在する。例えば、薬価改定により薬価の上昇が予想される場合には、薬価改定後のある特定期間については医薬品の発注量を抑え、その特定期間の前の所定期間に医薬品の発注量を増やすことで、薬局の実需に対応すると共に薬局の医薬品の仕入れ価格を抑えることが考えられる。
【0005】
しかしながら、医薬品によっては高額である等の理由により大量発注をするのには不適な医薬品もある。また、発注量を抑える特定期間に長期投与の患者が来局して医薬品の需要量が急増することも考えられる。そのため、医薬品の属性や患者の属性に応じて、発注量を抑える特定期間とその特定期間の前の所定期間との発注量を最適に設定する必要がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、発注量を抑える特定期間とその特定期間の前の所定期間との発注量を最適に設定することができる医薬品発注管理システム、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る医薬品発注管理システムは、1週間から数ヶ月の特定期間の医薬品の需要量の予測値と、前記特定期間より前の所定期間の医薬品の需要量の予測値とを取得する予測情報取得機能と、前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の医薬品の需要量の予測値より少量の発注量を、前記特定期間の医薬品の発注量の予測値として算出し、前記予測情報取得機能により取得された前記所定期間の医薬品の需要量の予測値より多量の発注量を、前記所定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する発注量予測機能とを備える。
【0008】
また、本発明に係るプログラムは、1週間から数ヶ月の特定期間の医薬品の需要量の予測値と、前記特定期間より前の所定期間の医薬品の需要量の予測値とを取得する予測情報取得機能と、前記予測情報取得機能により取得された前記特定期間の医薬品の需要量の予測値より少量の発注量を、前記特定期間の医薬品の発注量の予測値として算出し、前記予測情報取得機能により取得された前記所定期間の医薬品の需要量の予測値より多量の発注量を、前記所定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する発注量予測機能とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発注量を抑える特定期間とその特定期間の前の所定期間との発注量を最適に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る医薬品発注管理システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、発注管理サーバの機能を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、予測部の機能を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1医薬品の需要量の予測値と最適発注量の予測値との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第2医薬品の需要量の予測値と最適発注量の予測値との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第2医薬品の仕入れ単価と仕入れ価格総額との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る医薬品発注管理システム1の構成を示す図である。この図に示すように、医薬品発注管理システム1は、発注管理サーバ10と、薬局側端末20と、管理者側端末30と、電子薬歴管理サーバ40とを備える。発注管理サーバ10と薬局側端末20と管理者側端末30と電子薬歴管理サーバ40とはネットワーク2を介して通信可能に接続されている。
【0013】
薬局側端末20は、レセコン(レセプトコンピュータ)機能と、電子薬歴管理機能と、入庫処理機能と、オンライン服薬指導機能と、薬剤師管理機能とを備える薬局用コンピュータである。この薬局側端末20は、演算処理を行うCPU、記憶部としてのハードディスク、情報入力のためのキーボード等の操作部、ディスプレイ等を備え、各種プログラムがインストールされている。この各種プログラムとしては、レセコン用プログラム、電子薬歴管理用プログラム、入庫処理用プログラム、及び、オンライン服薬指導用プログラム、薬剤師管理用プログラム等が挙げられる。
【0014】
レセコン機能としては、保険請求のためのレセプト作成、処方・調剤内容の入力、窓口会計の計算等の基本機能の他、投薬の重複・禁忌・相互作用のチェック(承認)、領収書の発行、薬剤の在庫管理、インターネット回線を利用した電子請求等の機能等が挙げられる。レセプトには、患者情報及び処方情報が記載される。薬局側端末20は、レセコン機能側で入力されたレセプト情報(患者情報、処方情報等)を調剤実績情報(出庫情報)として発注管理サーバ10に送信する。
【0015】
患者情報としては、診察日、保険者番号・保険証の記号番号、患者の氏名、生年月日、性別、住所、医療機関、診療科、病名、診療日等が挙げられる。患者情報としては、その他に、後発医薬品の希望の有無、地域医療連携での連携の有無、併用薬、嗜好品、職業、アドヒアランス、医薬品の患者負担率等が挙げられる。
【0016】
処方情報としては、初診(再診)の回数及び点数、指導の回数及び点数、処方した医薬品の品目、用法及び処方量(用量、数量)と点数、処置の回数及び点数、検査の回数と点数、合計の請求点数(薬剤一部負担金額)等が挙げられる。処方情報としては、その他に、代替調剤(変更調剤)に関する情報、オンライン服薬指導に関する情報、スイッチOTC医薬品の提案に関する情報、ハイリスク薬の薬学的管理指導(特定薬剤管理指導)に関する情報、服薬フォローに関する情報等が挙げられる。
【0017】
電子薬歴管理機能としては、薬歴の保存・管理の基本機能の他、調剤記録保存・管理、患者に対する指導歴保存・管理等の付加機能等が挙げられる。薬局側端末20のレセコン機能で入力されたレセプト情報(患者情報、処方内容等)は、電子薬歴管理サーバ40において自動的に更新・保存される。
【0018】
入庫処理機能としては、バーコードリーダ等の読取装置により医薬品の包装に付されたバーコード等の識別表示が読み取られることにより医薬品の入庫情報を取得する機能や、キーボード等の入力装置の操作により医薬品の入庫情報を取得する機能等が挙げられる。薬局側端末20は、入庫処理機能により取得された医薬品の入庫情報を、発注管理サーバ10に送信する。
【0019】
オンライン服薬指導機能としては、ビデオチャット等を用いたオンライン診療の実施、患者の個人情報の登録、オンライン診療の実施時間の予約、オンライン服薬指導の実施の要否の選択、処方箋情報の受信、診療費の決済等の機能が挙げられる。薬局側端末20は、オンライン服薬指導による患者に対する指導歴の情報を、電子薬歴管理サーバ40に送信する。オンライン服薬指導による患者に対する指導歴の情報は、電子薬歴管理サーバ40に保存される。
【0020】
薬剤師管理機能としては、薬剤師のシフト勤務カレンダーを管理する機能、かかりつけ薬剤師と担当の患者とを管理する機能等が挙げられる。薬局側端末20は、薬剤師管理機能により取得された薬剤師のシフト勤務カレンダー、かかりつけ薬剤師と担当の患者とに関する情報等の薬剤師管理情報を、発注管理サーバ10に送信する。
【0021】
管理者側端末30は、調剤薬局各店舗の医薬品の最適発注量の予測に用いる外的情報を入力する情報入力機能を備える。管理者側端末30は、演算処理を行うCPU、記憶部としてのハードディスク、情報入力のためのキーボード等の操作部、ディスプレイ等を備え、各種プログラムがインストールされている。管理者側端末30の情報入力機能で入力された外的情報は、発注管理サーバ10に送信される。外的情報は、レセプト情報には含まれない情報であり、薬局側端末20には入力されず電子薬歴管理サーバ40には保存されない情報である。
【0022】
外的情報としては、製薬会社がある疾患の啓発を行ったという情報(以下、疾患PR情報という)、ある疾患が流行するという予測情報(以下、疾患流行予測情報という)等が挙げられる。外的情報としては、その他に、フォーミュラリー(医薬品の使用方針)に関する情報(以下、フォーミュラリー情報という)、薬局の立地に関する情報(以下、薬局立地情報という)等が挙げられる。
【0023】
薬局立地情報としては、薬局の近隣に新規薬局がオープンするという情報(以下、薬局オープン情報という)、薬局が立地する地域の医科・医師の情報(以下、医科・医師情報という)、薬局が立地する地域の住民に関する情報(以下、住民情報という)、薬局が立地する地域の施設に関する情報(以下、施設情報という)等が挙げられる。医科・医師情報としては、薬局が立地する地域の大学病院や大学病院の系列病院に関する情報、治験を行う教授や医師に関する情報等が挙げられる。また、住民情報としては、地域住民の国籍の割合、年齢層の割合、性別の割合等が挙げられる。さらに、施設情報としては、柔道や剣道等の道場、刑務所、工場の有無等が挙げられる。
【0024】
発注管理サーバ10は、調剤薬局の各店舗の医薬品の需要量と最適発注量とを予測する機能を備えるサーバである。この発注管理サーバ10は、演算処理を行うCPU、記憶部としてのハードディスク等を備え、調剤薬局の各店舗の医薬品の需要量と最適発注量とを予測する処理を実行するためのプログラムがインストールされている。また、発注管理サーバ10のハードディスクには、医薬品に関する情報(以下、医薬品情報という)が格納されている。
【0025】
医薬品情報としては、投薬制限に関する情報(以下、投薬制限情報という)、薬価に関する情報(以下、薬価情報という)、後発医薬品に関する情報(以下、後発医薬品情報という)、医薬品ガイドラインに関する情報(以下、ガイドライン情報という)、主剤の副作用と副作用止めとに関する情報(以下、主剤・副作用止め情報という)、合併症に関する情報(以下、合併症情報という)、予製剤に関する情報(以下、予製剤情報という)、スイッチOTC医薬品に関する情報(以下、OTC情報という)、薬学的管理指導(特定薬剤管理指導)を要するハイリスク薬(特定薬剤)に関する情報(以下、ハイリスク薬情報という)等が挙げられる。
【0026】
本実施形態では、発注管理サーバ10は、1週間~数ヶ月の特定期間(以下、特定期間という)の発注量を年間の特定期間以外の期間の発注量よりも低く抑える年間発注計画に従って、特定期間の最適発注量と特定期間以外の期間の最適発注量とを予測する。具体的には、発注管理サーバ10は、薬局側端末20から送信される調剤実績情報(出庫情報)から医薬品の出庫の推移を学習し、さらに、医薬品の出庫の推移と、薬局側端末20から送信される薬剤師管理情報と、電子薬歴管理サーバ40から送信される薬歴情報と、管理者側端末30から送信される外的情報と、発注管理サーバ10に格納された医薬品情報と、医薬品の在庫量とに基づいて、医薬品毎に、特定期間の最適発注量と、特定期間の前の所定期間の最適発注量とを予測する。特定期間の前の所定期間は、最大で、1年間から特定期間を除いた期間であり、最小で1週間である。
【0027】
医薬品の最適発注量の予測で用いられる薬剤師管理情報としては、かかりつけ薬剤師のシフト勤務カレンダー、かかりつけ薬剤師の担当の患者が挙げられる。ここで、かかりつけ薬剤師の担当の患者は、かかりつけ薬剤師の勤務予定に合わせて来局すると考えられる。そのため、かかりつけ薬剤師のシフト勤務カレンダーと、かかりつけ薬剤師の担当の患者の情報とに基づいて、かかりつけ薬剤師の担当の患者に対する医薬品の調剤日を予測できる。
【0028】
医薬品の最適発注量の予測で用いられる薬歴情報としては、長期投与患者に関する情報(以下、長期投与患者情報という)、分割投与患者に関する情報(以下、分割投与患者情報という)、定期的に来局する患者に関する情報(以下、定期患者情報という)、オンライン服薬指導を実施した患者に関する情報(以下、オンライン服薬指導患者情報という)、地域医療連携で連携されている患者に関する情報(以下、地域医療連携患者情報という)、服薬フォローを実施している患者に関する情報(以下、服薬フォロー患者情報という)、後発医薬品を希望した患者に関する情報(以下、後発薬希望患者情報という)等が挙げられる。オンライン服薬指導患者情報には、さらに、オンライン服薬指導を実施して医薬品を患者宛に配送している患者に関する情報(以下、オンライン服薬指導配送患者情報という)が含まれる。
【0029】
医薬品の長期投与や分割投与(分割調剤)が実施される場合には、患者へのヒアリング又は処方した医師への疑義照会が行われたうえで、当該実施の事実が電子薬歴に記載される。そのため、電子薬歴の記載に基づいて、長期投与患者又は分割投与患者であるか否かを判断でき、電子薬歴に記載の処方日数に基づいて、長期投与患者又は分割投与患者の次回の来局日を予測できる。
【0030】
電子薬歴には、患者の来局日時が蓄積されている。そのため、電子薬歴に記載の来局日時に基づいて、定期的に来局する患者であるか否かを判断でき、電子薬歴に記載の来局日時に基づいて、定期的に来局する患者の次回以降の来局日を予測できる。
【0031】
電子薬歴には、オンライン服薬指導を実施したか否かが記載される。そのため、電子薬歴の記載に基づいて、オンライン服薬指導を実施した患者であるか否かを判断でき、電子薬歴に記載のオンライン服薬指導の実施記録に基づいて、当該患者の次回の来局日を予測できる。また、電子薬歴には、オンライン服薬指導を実施した患者宛に医薬品を配送しているか否かが記載される。そのため、電子薬歴の記載に基づいて、医薬品を配送する患者であるか否かを判断でき、電子薬歴に記載のオンライン服薬指導及び配送の記録に基づいて、当該患者の分の医薬品の発注の要否を判断できる。
【0032】
電子薬歴には、地域医療連携で連携されているか否かが記載される。そのため、電子薬歴の記載に基づいて、地域医療連携で連携されている患者であるか否かを判断でき、電子薬歴の記載に基づいて、当該患者の次回以降の来局日を予測できる。また、地域医療連携で連携されている患者については医薬品の処方量が減少することを予測できる。
【0033】
電子薬歴には、服薬フォローを実施しているか否かが記載される。そのため、電子薬歴の記載に基づいて、服薬フォローを実施している患者であるか否かを判断でき、電子薬歴の記載に基づいて、当該患者の次回以降の来局日を予測できる。
【0034】
電子薬歴には、後発医薬品の希望の有無が記載される。そのため、電子薬歴の記載に基づいて、後発医薬品を希望する患者であるか否かを判断でき、電子薬歴の記載と医薬品情報とに基づいて、当該後発医薬品の発注の要否を判断できる。
【0035】
医薬品の最適発注量の予測で用いられる薬歴情報としては、その他に、患者の併用薬に関する情報(以下、併用薬情報という)、患者の副作用・アレルギー歴に関する情報(以下、副作用・アレルギー情報という)、患者の嗜好品に関する情報(以下、嗜好品情報という)、患者の職業に関する情報(以下、職業情報という)、患者のアドヒアランスに関する情報(以下、アドヒアランス情報という)、医薬品の患者負担率に関する情報(以下、患者負担率情報という)、薬剤師による代替調剤に関する情報(以下、代替調剤情報)、薬剤師によるOTC医薬品、スイッチOTC医薬品への変更提案に関する情報(以下、スイッチOTC薬情報という)、薬剤師によるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する情報(以下、特定薬剤管理指導情報という)等が挙げられる。
【0036】
電子薬歴には、患者の併用薬の有無及び種類が記載される。そのため、電子薬歴の記載と医薬品情報とに基づいて、当該併用薬との併用が可能な医薬品であるか否か、及び当該併用薬との併用が可能な医薬品の種類を判断できる。よって、電子薬歴の記載と医薬品情報とに基づいて、当該併用薬との併用が可能な医薬品と当該併用薬との併用が不可能な医薬品との発注の要否を判断できる。
【0037】
電子薬歴には、患者の副作用・アレルギー歴(禁忌薬等)が記載される。そのため、電子薬歴の記載と医薬品情報とに基づいて、当該患者に提供可能な医薬品であるか否か、及び当該患者に提供可能な同効能の医薬品は何かを判断できる。よって、電子薬歴の記載と医薬品情報とに基づいて、当該患者に提供可能な医薬品と当該患者に提供不可の医薬品との発注の要否を判断できる。
【0038】
電子薬歴には、薬剤師による代替調剤が実施されたか否かが記載される。そのため、電子薬歴と薬剤師管理情報とに基づいて、代替調剤後の医薬品と代替調剤前の(処方箋に記載の)医薬品との発注の要否を判断できる。
【0039】
電子薬歴には、薬剤師によるOTC医薬品又はスイッチOTC医薬品への変更提案が実施されたか否かが記載される。そのため、電子薬歴と薬剤師管理情報とに基づいて、OTC医薬品又はスイッチOTC医薬品と処方箋に記載の医薬品との発注の要否を判断できる。
【0040】
電子薬歴には、薬剤師によるハイリスク薬の薬学的管理指導(特定薬剤管理指導)が実施されたか否かが記載される。特定薬剤管理指導の対象の医薬品(例えば、抗悪性腫瘍剤等)は、投与期間及び休薬期間を管理する必要があるので、電子薬歴の記載に基づいて、当該医薬品の次回の発注時期を判断できる。
【0041】
医薬品の最適発注量の予測で用いられる外的情報としては、疾患PR情報、疾患流行予測情報、フォーミュラリー情報、薬局立地情報等が挙げられる。疾患PR情報は、管理者による管理者側端末30の操作により発注管理サーバ10に送信される。製薬会社がある疾患の啓発を行った場合には、当該疾患の受診が増加し、当該疾患の治療薬や予防薬の需要量の増加が予測される。そのため、疾患PR情報に基づいて、当該疾患の治療薬や予防薬の需要量を予測できる。
【0042】
疾患流行予測情報は、発注管理サーバ10が過去の統計と公開済みの予測情報とを学習することにより取得する情報である。季節性の疾患の流行は、地域差、気温差、花粉飛散量等の各種の変動要因に左右される。そのため、季節性の疾患を、薬局が立地する地域における気温、花粉飛散量等の各種の変動要因と関連付けてデータベースに蓄積し、そのデータベースに蓄積された情報を学習することにより、疾患流行の過去の統計を求めることができる。さらに、薬局が立地する地域における気温、花粉発散量等の各種の変動要因の予測情報と、季節性の疾患の流行の未来情報と、疾患流行の過去の統計とに基づいて、当該地域における季節性の疾患の流行を予測できる。
【0043】
フォーミュラリー情報は、管理者による管理者側端末30の操作により発注管理サーバ10に送信される。薬局が立地する地域の基幹病院のフォーミュラリー(投与指針)から、当該基幹病院のフォーミュラリー選択薬が明らかになるので、当該地域において当該フォーミュラリー選択薬の需要量が多くなることを予測できる。
【0044】
薬局立地情報は、管理者による管理者側端末30の操作により発注管理サーバ10に送信される。薬局の近隣に新規薬局がオープンした場合には、患者が新規薬局に流出し、医薬品の発注量が減少することを予測できる。また、薬局が立地する地域の大学病院や系列病院で治験が行われた場合には、治験の対象の医薬品の需要量が増加することを予測できる。
【0045】
医薬品の最適発注量の予測で用いられる医薬品情報としては、投薬制限情報、薬価情報、後発医薬品情報、ガイドライン情報、主剤・副作用止め情報、合併症情報、予製剤情報、OTC情報、ハイリスク薬情報等が挙げられる。投薬制限情報は、投薬期間の制限に関する情報と、投薬量の制限に関する情報とを含む。新薬や麻薬・向精神薬・覚醒剤原料の場合、投薬期間は原則で14日に制限される。そのため、長期投与患者や分割投与患者に対して投薬期間の制限のある医薬品が処方されることは考えられない。よって、患者情報と投薬制限情報とに基づいて投薬期間の制限のある医薬品の需要量を予測できる。また、投薬期間の制限のない医薬品が優先的に処方されると考えられることから、投薬期間の制限のある医薬品の需要量は相対的に小さくなる。そのため、投薬期間の制限のある医薬品は、大量発注には適さず、時期毎の需要量に応じて発注されるべきである。
【0046】
また、その他の医薬品についても、患者の年齢・体重・疾患に応じた投薬量(1回の量、1日の量)の制限がある。そのため、投薬量の制限に関する情報と患者情報(年齢・体重・疾患)とに基づいて、医薬品の需要量を予測できる。
【0047】
薬価情報は、高額医薬品とそれ以外の医薬品とを分類する情報を含む。抗悪性腫瘍剤等は高額医薬品に分類される。ここで、高額医薬品は、大量発注には適さず、時期毎の需要量に応じて発注されるべきである。
【0048】
後発医薬品情報は、成分、効能が同一である先発医薬品と後発医薬品との情報を含む。上述したように、電子薬歴には後発医薬品の希望の有無が記載されるので、電子薬歴の記載と後発医薬品情報とに基づいて、当該後発医薬品の需要量を予測できる。
【0049】
ガイドライン情報は、各種の疾患の治療ガイドラインを含む。この治療ガイドラインは、第一選択薬と、第一選択薬に効果が無かった場合に選択される第二選択薬との情報を含む。第一選択薬の処方が一定期間続いた場合には第二選択薬に切り替わることを予測できる。
【0050】
主剤・副作用止め情報は、副作用の強い医薬品(主剤)と、当該医薬品の副作用を止める医薬品との情報を含む。副作用の強い医薬品が処方される場合には、当該医薬品の副作用を止める医薬品が併せて処方されることを予測できる。例えば、ロキソプロフェンは、胃の粘膜の血流を悪くし、胃の粘膜の保護作用を低下させるので、ロキソプロフェンの処方に併せてレバミピド等の医薬が処方されることを予測できる。
【0051】
合併症情報は、糖尿病等の所定の疾患の医薬品と、発現し易い合併症の予防薬及び治療薬との情報を含む。糖尿病の合併症としては、血管系の疾患(動脈硬化等)、免疫機能低下に起因する疾患(風邪やインフルエンザ、肺炎、結核、膀胱炎、水虫等)、その他の疾患(高血圧、脂質異常症、骨粗鬆症、歯周病、糖尿病網膜症、糖尿病腎症等)が挙げられる。所定の疾患の医薬品毎に、発現し易い合併症の予防薬及び治療薬を季節毎に予測できる。
【0052】
予製剤情報は、一包化や計量混合や自家製剤等で使用する予製剤の種類、量の情報を含む。一包化や計量混合や自家製剤等の需要量に基づいて、予製剤作成前の医薬品の需要量を予測できる。
【0053】
OTC情報は、医療用医薬品と当該医療用医薬品と同様の効能のあるOTC医薬品、スイッチOTC医薬品の情報を含む。上述したように、電子薬歴には、薬剤師によるOTC医薬品又はスイッチOTC医薬品への変更提案が実施されたか否かが記載されているので、薬剤師毎に、医療用医薬品とOTC医薬品又はスイッチOTC医薬品との需要量を予測できる。
【0054】
ハイリスク薬情報は、投薬期間の制限、休薬期間の情報を含む。また、薬歴には、特定薬剤管理指導の実績が蓄積されている。そのため、投薬機間の制限、休薬期間の情報と、薬歴の特定薬剤管理指導実績とに基づいて、ハイリスク薬の時期毎の需要量を予測できる。ここで、高額医薬品と同様、ハイリスク薬も大量発注には適さず、時期毎の需要量に応じて発注されるべきである。
【0055】
ここで、本実施形態では、原則的に、発注管理サーバ10が、特定期間には、予測される需要量よりも少量の発注量での医薬品の発注を実施し、特定期間の前の所定期間においては、予測される需要量よりも多量の発注量での医薬品の発注を実施する。即ち、発注管理サーバ10は、特定期間の前の所定期間においては、特定期間における発注量と需要量との差分を当該所定期間の需要量に加算した発注量以上での医薬品の発注を実施する。
【0056】
加えて、発注管理サーバ10は、特定期間以外の期間においては、医薬品の仕入れ価格Pを下記(1)式から算出するのに対して、特定期間においては、医薬品の仕入れ価格Pを下記(2)式から算出する。
P=P0×α …(1)
P=P0 …(2)
但し、P0は、定価であり、αは、発注量が増えるほど値が小さくなる1未満で所定の下限値(例えば、0.5)以上の係数である。
【0057】
図2は、発注管理サーバ10の機能を示すブロック図である。この図に示すように、発注管理サーバ10は、入力情報が入力される入力部11と、医薬品情報等を格納したデータベース(DB)12と、医薬品の最適発注量を予測する予測部13と、医薬品の仕入れ価格Pを算出する価格算出部14と、予測された最適発注量及び算出された仕入れ価格Pで医薬品を発注する発注部15とを備える。
【0058】
入力部11には、上述したように、薬局側端末20から送信される調剤実績情報と、薬局側端末20から送信される薬剤師管理情報と、電子薬歴管理サーバ40から送信される薬歴情報と、管理者側端末30から送信される外的情報とが入力される。
【0059】
予測部13は、入力部11に入力された調剤実績情報から医薬品の出庫の推移を学習する。そして、予測部13は、医薬品の出庫の推移と、薬剤師管理情報、薬歴情報、外的情報、及び医薬品情報に含まれる各種情報とに基づいて、医薬品毎に、特定期間における需要量と特定期間以外の期間における需要量とをそれぞれ予測する。
【0060】
図3は、予測部13の機能を示すブロック図である。この図に示すように、予測部13は、医薬品を、特定期間の需要量に応じた発注を特定期間に行う医薬品(以下、第1医薬品という)と、特定期間の需要量より少量の発注を特定期間に行う医薬品(第2医薬品)とに分類する機能(医薬品分類機能)131を備える。第1医薬品としては、投薬期間の制限のある医薬品、所定価格以上の高額医薬品、ハイリスク薬、服薬フォローを実施中の患者に処方する医薬品等が挙げられる。第2医薬品は、原則的に、第1医薬品以外の医薬品であり、特定期間の需要量との差分が特定期間前の所定期間に発注される。
【0061】
また、予測部13は、特定期間に医薬品の需要量が増加する条件が成立するか否かを判定する機能(第1需要量増加条件判定機能)132を備える。当該条件としては、長期投与患者の特定期間の来局、分割投与患者の特定期間の来局、予製剤使用の患者の特定期間の来局、特定期間の直前の疾患PR情報の取得、特定期間の直前の疾患流行予測情報の取得等が挙げられる。
【0062】
予測部13は、需要量予測値算出機能136を備えており、長期投与患者、分割投与患者の特定期間の来局という条件が成立する場合には、電子薬歴に記載の医薬品の処方量等に基づいて、当該患者の特定期間の需要量の予測値を算出する。また、予測部13は、予製剤使用の患者の特定期間の来局という条件が成立する場合には、電子薬歴に記載の医薬品の処方量、予製剤作成前の医薬品の量(医薬品情報)等に基づいて、当該患者の特定期間の需要量の予測値を算出する。さらに、予測部13は、特定期間の直前の疾患PR情報の取得、特定期間の直前の疾患流行予測情報の取得という条件が成立する場合には、PRされた疾患の医薬品や流行が予測される疾患の医薬品の需要量の予測値Dを下記(3)式により算出する。
D=D0×β …(3)
但し、D0は、条件が成立しない場合の需要量の予測値であり、βは、1より大きく所定の上限値(例えば、10)以下の係数である。
【0063】
また、予測部13は、期間にかかわらず医薬品の需要量が増加する条件に該当するか否かを判断する機能(第2需要量増加条件判定機能)133を備える。当該条件としては、長期投与患者の来局、分割投与患者の来局、予製剤使用の患者の来局、疾患PR情報の取得、疾患流行予測情報の取得、フォーミュラリー情報の取得、薬局立地情報の取得等が挙げられる。予測部13は、長期投与患者、分割投与患者の来局という条件が成立する場合には、電子薬歴に記載の医薬品の処方量等に基づいて、当該患者の当該期間の需要量の予測値Dを算出する。また、予測部13は、予製剤使用の患者の来局という条件が成立する場合には、電子薬歴に記載の医薬品の処方量、予製剤作成前の医薬品の量(医薬品情報)等に基づいて、当該患者の当該期間の需要量の予測値Dを算出する。
【0064】
また、予測部13は、疾患PR情報の取得、疾患流行予測情報の取得という条件が成立する場合には、PRされた疾患の医薬品や流行が予測される疾患の医薬品の需要量の予測値Dを上記(3)式により算出する。また、予測部13は、フォーミュラリー情報の取得という条件が成立する場合には、フォーミュラリー選択薬の需要量の予測値Dを上記(3)式により算出する。
【0065】
さらに、予測部13は、薬局が立地する地域の大学病院や系列病院で治験が行われたという条件が成立する場合には、当該治験で用いる医薬品の需要量の予測値Dを上記(3)式により算出する。
【0066】
他方で、予測部13は、特定期間に医薬品の需要量が減少する条件に該当するか否かを判定する機能(第1需要量減少条件判定機能)134を備える。当該条件としては、薬局オープン情報の取得、地域医療連携患者情報の取得等が挙げられる。予測部13は、薬局オープン情報の取得という条件が成立する場合には、医薬品の需要量の予測値Dを下記(4)式により算出する。また、予測部13は、地域医療連携患者情報の取得という条件が成立する場合には、医薬品の需要量の予測値Dを下記(4)式により算出する。
D=D0×γ…(4)
但し、D0は、条件が成立しない場合の需要量の予測値であり、γは、1未満で所定の下限値(例えば、0.5)以上の係数である。
【0067】
また、予測部13は、期間にかかわらず医薬品の需要量が減少する条件に該当するか否かを判定する機能(第2需要量減少条件判定機能)135を備える。当該条件としては、薬局オープン情報の取得、地域医療連携患者情報の取得等が挙げられる。予測部13は、薬局オープン情報の取得という条件が成立する場合には、医薬品の需要量の予測値Dを上記(4)式により算出する。また、予測部13は、地域医療連携患者情報の取得という条件が成立する場合には、医薬品の需要量の予測値Dを上記(4)式により算出する。
【0068】
さらに、予測部13は、医薬品分類機能131による医薬品の分類結果、及び需要量予測値算出機能136の算出結果に応じて、特定期間及び特定期間前の所定期間の医薬品の最適発注量の予測値を算出する機能(最適発注量予測値算出機能)137を備える。予測部13は、特定期間に医薬品の需要量が増加する条件が成立し、且つ、当該医薬品が、第1医薬品に該当する場合には、当該医薬品の特定期間の需要量の予測値に応じた発注量を特定期間の最適発注量の予測値として算出する。当該医薬品の特定期間の最適発注量の予測値は、特定期間の需要量の予測値と一致していてもよく、特定期間の需要量の予測値から在庫量を減算した量であってもよく、特定期間の需要量の予測値に欠品を防止するための所定の係数(>1)を乗じた量であってもよい。例えば、長期投与患者の特定期間の来局が予測され、且つ、当該患者に処方する医薬品が、高額医薬品やハイリスク医薬品に該当する場合には、予測部13は、当該医薬品の特定期間の需要量の予測値に応じた発注量を特定期間の最適発注量の予測値として算出する。
【0069】
また、予測部13は、特定期間に医薬品の需要量が増加する条件が成立し、且つ、当該医薬品が、第2医薬品に該当する場合には、当該医薬品の特定期間の需要量の予測値よりも少量の発注量を特定期間の最適発注量の予測値として算出する。当該医薬品の特定期間の最適発注量の予測値は、特定期間の需要量の予測値に1未満で所定の下限値(例えば、0.1)以上の係数κを乗じた発注量とする。ここで、当該医薬品の特定期間前の所定期間(例えば、特定期間初日の1週間~数ヶ月前)の最適発注量の予測値は、当該医薬品の特定期間の需要量の予測値と最適発注量の予測値との差分Δを、当該医薬品の特定期間前の需要量の予測値に加算した量以上である。例えば、長期投与患者の特定期間の来局が予測され、且つ、当該患者に処方する医薬品が、高額医薬品にもハイリスク薬品にも該当しない場合には、予測部13は、特定期間の需要量の予測値に上記係数κを乗じた発注量を、当該医薬品の特定期間の最適発注量の予測値として算出する。また、この場合において、予測部13は、当該医薬品の特定期間の需要量の予測値と最適発注量の予測値との差分Δを当該医薬品の特定期間前の需要量の予測値に加算した量以上を、当該医薬品の特定期間前の所定期間の最適発注量の予測値として算出する。
【0070】
また、予測部13は、特定期間に医薬品の需要量が減少する条件が成立し、且つ、当該医薬品が、第1医薬品に該当する場合には、当該医薬品の特定期間の需要量(条件非成立の場合よりも少ない需要量)の予測値に応じた発注量を特定期間の最適発注量の予測値として算出する。例えば、薬局の近隣での新規薬局のオープンが予定される場合、予測部13は、その予定がない場合よりも少量の需要量の予測値を算出し、投薬期間制限のある医薬品や高額医薬品やハイリスク医薬品については、特定期間の需要量の予測値に応じた発注量を特定期間の最適発注量の予測値として算出する。
【0071】
また、予測部13は、特定期間に医薬品の需要量が減少する条件が成立し、且つ、当該医薬品が、第2医薬品に該当する場合には、当該医薬品の特定期間の需要量(条件非成立の場合よりも少ない需要量)の予測値よりも少量の発注量を特定期間の最適発注量の予測値として算出する。当該医薬品の特定期間の最適発注量は、特定期間の需要量の予測値に上記係数κを乗じた発注量とする。ここで、当該医薬品の特定期間前の所定期間の最適発注量の予測値は、当該医薬品の特定期間の需要量の予測値と最適発注量の予測値との差分Δを、当該医薬品の特定期間前の所定期間の需要量の予測値に加算した量以上である。例えば、薬局の近隣での新規薬局のオープンが予定される場合、予測部13は、その予定がない場合よりも少量の需要量の予測値を算出し、投薬期間制限のある医薬品にも高額医薬品にもハイリスク医薬品にも該当しない医薬品については、特定期間の需要量の予測値に上記係数κを乗じた発注量を、特定期間の最適発注量の予測値として算出する。また、この場合において、予測部13は、当該医薬品の特定期間の需要量の予測値と最適発注量の予測値との差分Δを、当該医薬品の特定期間前の所定期間の需要量の予測値に加算した量以上を、当該医薬品の特定期間前の所定期間の最適発注量の予測値として算出する。
【0072】
さらに、予測部13は、入庫情報と出庫情報とに基づいて、医薬品の不動在庫の有無を判定し、第2医薬品に該当する医薬品が不動在庫の場合には、特定期間前の所定期間の最適発注量の予測値を、不動在庫ではない場合に比して少量(例えば0)に予測する。
【0073】
図4は、第1医薬品の需要量の予測値と最適発注量の予測値との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、第1医薬品の特定期間の最適発注量の予測値は、第1医薬品の特定期間の需要量の予測値に対して近似する。また、第1医薬品の特定期間前の所定期間の最適発注量の予測値は、当該所定期間の第1医薬品の需要量の予測値に対して近似する。
【0074】
図5は、第2医薬品の需要量の予測値と最適発注量の予測値との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、第2医薬品の特定期間の最適発注量の予測値は、第2医薬品の特定期間の需要量の予測値よりも少なくなる。また、第2医薬品の特定期間前の所定期間の最適発注量の予測値は、当該所定期間の第2医薬品の需要量の予測値に対して第2医薬品の特定期間の需要量の予測値と最適発注量の予測値との差分Δを加算した量となる。
【0075】
図6は、第2医薬品の仕入れ単価と仕入れ価格総額との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、第2医薬品の特定期間の仕入れ単価は、第2医薬品の特定期間以外の期間の仕入れ単価よりも高くなる。他方で、第2医薬品の特定期間の発注量が需要量よりも少量に抑えられていることから、第2医薬品の特定期間の仕入れ価格総額は、第2医薬品の特定期間以外の期間の仕入れ価格総額と同等以下になる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る医薬品発注管理システム1は、1週間から数ヶ月の特定期間の医薬品の需要量の予測値と、その特定期間より前の所定期間の医薬品の需要量の予測値とを取得し、特定期間の医薬品の需要量の予測値より少量の発注量を、特定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する。また、医薬品発注管理システム1は、特定期間前の所定期間の医薬品の需要量の予測値より多量の発注量を、その所定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する。これにより、特定期間の直前に薬価改定により薬価が上昇する場合に、薬局の実需に対応すると共に薬局の医薬品の仕入れ価格を抑えることが可能になる。
【0077】
また、本実施形態に係る医薬品発注管理システム1は、特定期間の医薬品の需要量の予測値と特定期間の医薬品の発注量の予測値との差分を算出し、当該差分と特定期間前の所定期間の需要量の予測値との合計以上の発注量を、特定期間前の所定期間の医薬品の発注量の予測値として算出する。これにより、特定期間の医薬品の発注量を抑えつつ、特定期間及び特定期間前の所定期間の医薬品の需要に対応しこれらの期間での医薬品の欠品を防止できる。
【0078】
また、本実施形態に係る医薬品発注管理システム1は、医薬品を、医薬品の属性情報及び患者の属性情報の少なくとも一方に応じて、第1医薬品と第2医薬品とに分類する。第1医薬品は、投薬期間の制限のある医薬品、所定の価格以上の高額医薬品、及びハイリスク医薬品、及び、服薬フォローが実施された患者に処方する医薬品等である。この第1医薬品の特定期間の最適発注量の予測値は、特定期間の需要量の予測値に応じた量となる。他方で、第2医薬品の特定期間の最適発注量の予測値は、特定期間の需要量よりも少量となる。これにより、高額医薬品等の大量発注には不適な医薬品については、特定期間と特定期間以外とのそれぞれで需要に対応することが可能になる。
【0079】
また、本実施形態に係る医薬品発注管理システム1は、電子薬歴システムにおいて記録された薬歴情報に基づいて、特定期間の医薬品の需要量の予測値と、所定期間の医薬品の需要量の予測値とを算出する。これにより、例えば、長期投与患者、分割投与患者、予製剤使用の患者、定期的な患者等の特定期間の来局等の予測が可能になる。特に、長期投与患者、分割投与患者、予製剤使用の患者の特定期間の来局を予測できることにより、特定期間の需要量の増加を適切に予測することが可能になる。
【0080】
また、本実施形態に係る医薬品発注管理システム1は、医薬品の需要量の増加の要因となる増加要因情報を取得し、この増加要因情報に応じて、特定期間と特定期間前の所定期間との医薬品の需要量の予測値を算出する。これにより、例えば、疾患の流行が予測される場合や製薬会社による疾患のPRが行われた場合等に、特定期間と特定期間前の所定期間における医薬品の需要量の増加を適切に予測することが可能になる。
【0081】
また、本実施形態に係る医薬品発注管理システム1は、医薬品の需要量の減少の要因となる減少要因情報を取得し、この減少要因情報に応じて、特定期間と特定期間前の所定期間との医薬品の需要量の予測値を算出する。これにより、例えば、薬局の近隣に新規薬局がオープンしたり、不動在庫が存在したり、地域医療連携の対象の患者が存在したりする場合に、特定期間と特定期間前の所定期間とにおける医薬品の需要量の減少を適切に予測することが可能になる。
【0082】
さらに、本実施形態に係る医薬品発注管理システム1は、特定期間前の所定期間の医薬品の仕入れ単価を、特定期間の医薬品の仕入れ単価に1未満の係数を乗じた価格に設定する。即ち、特定期間の医薬品の仕入れ単価は、発注量が少量であるが故に特定期間以外に比して高くなる。それに対して、特定期間の医薬品の発注量が特定期間以外に比して少量であることにより、特定期間の医薬品の仕入れ価格総額を特定期間以外と同等以下に抑えることが可能になる。
【0083】
以上、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよく、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0084】
例えば、上記実施形態において、発注管理サーバ10が医薬品の需要量を予測したが、医薬品の需要量の予測は、他のシステムや他のサーバや端末で行われてもよい。また、上記実施形態において、特定期間の需要量の予測値と最適発注量の予測値との差分Δを、特定期間の前月の最適発注量の予測値に含めたが(
図5参照)、当該差分Δを、特定期間前の複数月の最適発注量の予測値に含めるようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、薬局側端末20を、レセコン機能と、電子薬歴管理機能と、入庫処理機能と、オンライン服薬指導機能と、薬剤師管理機能とを備える薬局用コンピュータとした。しかしながら、これらの機能を全て同じコンピュータに組み込むことは必須ではない。例えば、いわゆる電子薬歴簿としての機能を有するものである電子薬歴機能を、レセコン機能等を備えるコンピュータとは別のコンピュータに組み込む等してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、発注管理サーバ10と電子薬歴管理サーバ40とを別々のサーバとしたが、これらは、一つのサーバとして構成されてもよく、クラウドサーバとして構成される等してもよい。
【0087】
さらに、上記実施形態に係る医薬品発注管理システム1は、いわゆる調剤薬局で使用されることを想定して説明したが、これに限らず、介護施設や院内薬局等の他の施設内で使用されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 :医薬品発注管理システム
11 :入力部(予測情報取得機能)
13 :予測部(予測情報取得機能,発注量予測機能)
131 :医薬品分類機能(予測情報取得機能,発注量予測機能)
132 :第1需要量増加条件判定機能(予測情報取得機能,発注量予測機能)
133 :第2需要量増加条件判定機能(予測情報取得機能,発注量予測機能)
134 :第1需要量減少条件判定機能(予測情報取得機能,発注量予測機能)
135 :第2需要量減少条件判定機能(予測情報取得機能,発注量予測機能)
136 :需要量予測値算出機能(予測情報取得機能,発注量予測機能)
137 :最適発注量予測値算出機能(予測情報取得機能,発注量予測機能)
Δ :差分
D :予測値
P :仕入れ価格
α :係数