(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097733
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 5/00 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
A46B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213982
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梯 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】西村 彦人
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB15
3B202BA02
3B202CA02
3B202CB06
3B202DB01
3B202EE01
3B202EF10
(57)【要約】
【課題】良好なグリップ性を維持しつつ、使用者が手を通じてブラッシング圧の低減を実感することが可能な歯ブラシを提供する。
【解決手段】歯ブラシ10は、長手方向の先端側に植毛面を有するヘッド部100と、ヘッド部100の後端側に配置されたハンドル部200と、を有し、ハンドル部は、正面視において、厚み方向に延びる扁平な硬質樹脂の壁230、240で囲まれた単位領域230A、240Aを有し、単位領域は壁を共有しながら規則性をもってハンドル部の長手方向に所定の長さに亘って連続して形成されており、ハンドル部の正面視において、連続した単位領域の最外周を繋ぐ面積(A)に対して単位領域の面積の総和(B)の割合が40%以上90%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の先端側に植毛面を有するヘッド部と、
前記ヘッド部の後端側に配置されたハンドル部と、を有し、
前記ハンドル部は、正面視において、厚み方向に延びる扁平な硬質樹脂の壁で囲まれた単位領域を有し、
前記単位領域は前記壁を共有しながら規則性をもって前記ハンドル部の長手方向に所定の長さに亘って連続して形成されており、
前記ハンドル部の正面視において、連続した前記単位領域の最外周を繋ぐ面積(A)に対して前記単位領域の面積の総和(B)の割合が40%以上90%以下である、歯ブラシ。
【請求項2】
前記単位領域は、前記ハンドル部の表面側及び裏面側の両位置において硬質樹脂で覆われていない、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記単位領域は、前記ハンドル部の表面と前記ハンドル部の裏面で、同じ硬質樹脂の壁を共有して貫通している、請求項1又は請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記ハンドル部の正面視において前記単位領域の面積は5mm2以上30mm2であり、
前記ハンドル部に配置された前記単位領域の総数は30個以上60個以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記壁の厚みは0.3mm以上1.5mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記ハンドル部の正面視において、前記ハンドル部全体の面積(C)に対して前記面積(A)の割合が25%以上90%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記ハンドル部の正面視において前記単位領域は略六角形であり、
前記単位領域の対向する任意の2点間の距離が3mm以上7mm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記ハンドル部の最大幅は10mm以上16mm以下であり、
前記ハンドル部の最大厚みは4mm以上16mm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
前記ハンドル部の先端から前記ハンドル部の後端側へ向かうハンドル部全長の1/2の距離の位置を(α)とし、
前記(α)の位置から前記ハンドル部の先端側へ40mmずれた位置を(β)とし、
前記(α)の位置から前記ハンドル部の後端側へ40mmずれた位置を(γ)とした場合に、
前記(β)の位置及び前記(γ)の位置を支持点として、前記(α)の位置に対して前記ハンドル部の厚さ方向に100Nの荷重を付与して3点曲げ試験を実施したときの撓み量が3mm以上7mm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項10】
前記単位領域の内側には軟質樹脂が充填されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ブラッシング圧を低減させる制御を目的とした歯ブラシが多数存在している。一般的に、ブラッシング圧は、「荷重(g)/植毛面積(cm2)」で定義される。
【0003】
ブラッシング圧を低減させる方法として、例えば、(1)植毛面積の増大と、(2)ブラッシング荷重の低減の二つが考えられる。上記(1)に関しては、ヘッド幅が広い仕様(一般的なワイドヘッド歯ブラシ)を採用することが考えられる。ただし、ヘッド幅が広い仕様を採用した場合、ブラッシング圧の低減効果を使用者が十分に認識することは困難である。一方で、上記(2)に関しては、下記(A)、(B)、(C)等の方法が考えられる。
【0004】
(A)ネック部を細径化した仕様(一般的なスリムネック歯ブラシ)の採用
(B)ネック部に軟質樹脂を被覆することで、弾力性を付与した仕様の採用
(C)ハンドル部の材質を柔らかくすることで弾力性を付与した仕様の採用。
【0005】
上記(A)に関しては、ブラッシング時に歯ブラシがヘッド部(作用点)により近いネック部(支点)で撓むため、毛先への応力集中が発生し、使用性に悪影響を与えることが考えられる。また、上記(B)に関しては、ネック部が撓みすぎることで、使用性が大きく損なわれてしまうことが考えられる。
【0006】
上記(C)に関しては、下記特許文献1に記載の歯ブラシが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の歯ブラシは、ネック部からハンドル部の後端部まで繋がっている硬質樹脂からなる複数の把持片を含む。複数の把持片の内側には軟質樹脂が充填されている。特許文献1に記載の歯ブラシは、硬質樹脂からなる複数の把持片を有するため、使用者がハンドル部を把持した際、グリップ性が非常に良好なものとなる。しかしながら、ハンドル部の大部分が軟質樹脂から構成されているため、使用者が手を通じて実感するブラッシング圧の低減効果が十分なものではなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みて発明されたものであり、良好なグリップ性を維持しつつ、使用者が手を通じてブラッシング圧の低減を実感することが可能な歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の歯ブラシは、長手方向の先端側に植毛面を有するヘッド部と、前記ヘッド部の後端側に配置されたハンドル部と、を有し、前記ハンドル部は、正面視において、厚み方向に延びる扁平な硬質樹脂の壁で囲まれた単位領域を有し、前記単位領域は前記壁を共有しながら規則性をもって前記ハンドル部の長手方向に所定の長さに亘って連続して形成されており、前記ハンドル部の正面視において、連続した前記単位領域の最外周を繋ぐ面積(A)に対して前記単位領域の面積の総和(B)の割合が40%以上90%以下である。
【発明の効果】
【0011】
上記の歯ブラシは、ハンドル部に規則正しく配列された硬質樹脂の壁で囲まれた単位領域を有するため、ブラッシング時にハンドル部を手に沿う形で自然に撓ませることができる。それにより、上記の歯ブラシは、良好なグリップ性を維持しつつ、使用者の手を通じたブラッシング圧の低減を実感させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る歯ブラシを示す正面図である。
【
図2】
図1に示す矢印2A方向から見た歯ブラシの側面図である。
【
図3】歯ブラシのハンドル部を拡大して示す正面図である。
【
図4】ハンドル部に配置された複数の壁及び複数の単位領域を拡大して示す斜視図である。
【
図5】ハンドル部に配置された複数の壁及び複数の単位領域を拡大して示す正面図である。
【
図6】一つの壁(第1の壁)及び一つの単位領域(第1の単位領域)を拡大して示す正面図である。
【
図7】一つの壁(第2の壁)及び一つの単位領域(第2の単位領域)を拡大して示す正面図である。
【
図8】
図3に示す矢印8A-8A線に沿うハンドル部の断面図である。
【
図9】実施例(ハンドル部の厚み方向の3点曲げ試験)の試験方法を簡略的に示す図である。
【
図10】実施例(ハンドル部の厚み方向の3点曲げ試験)の試験結果を示すグラフである。
【
図11】実施例(ハンドル部の幅方向の3点曲げ試験)の試験方法を簡略的に示す図である。
【
図12】実施例(ハンドル部の幅方向の3点曲げ試験)の試験結果を示すグラフである。
【
図13】変形例1に係る複数の壁及び複数の単位領域を拡大して示す正面図である。
【
図14】変形例2に係る一つの壁及び一つの単位領域を拡大して示す正面図である。
【
図15】変形例3に係るハンドル部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0014】
図1は、実施形態に係る歯ブラシ10の全体構成を示す正面図である。
図2は、
図1に示す矢印2A方向から見た歯ブラシ10の側面図である。
図3は、歯ブラシ10が備えるハンドル部200を拡大して示す正面図である。
図4は、ハンドル部200に配置された各壁230、240及び各単位領域230A、240Aを拡大して示す斜視図である。
図5は、各壁230、240及び各単位領域230A、240Aを拡大して示す正面図である。
図6は、一つの壁230及び一つの単位領域230Aを拡大して示す正面図である。
図7は、一つの壁240及び一つの単位領域240Aを拡大して示す正面図である。
図8は、
図3に示す矢印8A-8A線に沿うハンドル部200の断面図である。
【0015】
各図に付した矢印X1-X2は、ハンドル部200の長手方向(歯ブラシ10の長手方向と同方向)を示す。矢印X1側は、ハンドル部200の先端側を示し、矢印X2側は、ハンドル部200の後端側を示す。また、各図に付した矢印Y1-Y2はハンドル部200の幅方向を示す。また、各図に付した矢印Z1-Z2は、ハンドル部200の厚み方向を示す。
【0016】
本明細書において、正面視とは、ヘッド部100の植毛面110側から歯ブラシ10を見ることを意味する(
図1を参照)。なお、植毛面110が配置された側と同一側に位置するハンドル部200の面を「ハンドル部200の表面200a」とし、表面200aの反対側に位置するハンドル部200の面を「ハンドル部200の裏面200b」とする(
図2、
図8を参照)。
【0017】
本明細書において参照するハンドル部200に関する各寸法は
図3に示し、単位領域230A、240Aに関する各寸法は
図4、
図6、
図7に示す。
【0018】
<歯ブラシ>
図1に示すように、歯ブラシ10は、長手方向の先端側に植毛面110を有するヘッド部100と、ヘッド部100の後端側に配置されたハンドル部200と、を有する。
【0019】
ヘッド部100とハンドル部200との間には、長手方向に所定の長さで延在するネック部300が設けられている。
【0020】
植毛面110には、複数の用毛121からなる毛束群120が配置されている。用毛121の材質、形状、個数等については任意のものを選択することができる。また、植毛面110の正面視の面積や幅、長さ等について特に制限はない。
【0021】
歯ブラシ10は、使用者(自然人)の口腔内を洗浄する用途で使用することができる。使用者は、歯ブラシ10を使用する際、口腔内にヘッド部100及びネック部300の一部を挿入した状態で、ハンドル部200を手指で把持しつつ操作することにより、ヘッド部100の植毛面110に植毛された複数の毛束群120により、口腔内を洗浄することができる。
【0022】
<ハンドル部>
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、
図8に示すように、ハンドル部200は、正面視において、厚み方向に延びる扁平な硬質樹脂の壁230、240で囲まれた単位領域230A、240Aを有する。
【0023】
本実施形態では、ハンドル部200には、正面視において形状の異なる二つの壁230、240が配置されている。以下、壁230を「第1の壁」と称し、壁230によって区画された単位領域230Aを「第1の単位領域」と称する。また、壁240を「第2の壁」と称し、壁240によって区画された単位領域240Aを「第2の単位領域」と称する。
【0024】
単位領域230A、240A同士は各壁230、240の少なくとも一部を共有しながら規則性をもってハンドル部200の長手方向に所定の長さに亘って連続して形成されている。
【0025】
上記の「共有しながら規則性をもってハンドル部200の長手方向に所定の長さに亘って連続して形成されている」とは、隣接する第1の壁230及び/又は隣接する第2の壁240が、各壁230、240の各々が備える側壁部231、232、233、234、235、236、241、242、243、244、245、246(
図6、
図7を参照)の少なくとも一部を互いに接触させた状態で配列されており、各単位領域230A、240Aが所定のパターンに沿って長手方向に連なっていることを意味する。
【0026】
なお、「単位領域の規則性」とは、厳密なものではなく、例えば、ハンドル部200の幅方向や長手方向で大きさや形状が異なっていてもよい。
【0027】
図1、
図2に示すように、各単位領域230A、240Aは、ハンドル部200の長手方向の先端201と後端203の間の所定の範囲に配置することができる。ハンドル部200の先端201は、下記の(1)~(4)のいずれかで定義することができる。なお、ハンドル部200の先端201を定義する際には(1)~(4)の順に優先的に当てはめて定義を行う。(1)ネック部300との境界を示す稜線が存在する場合、その稜線の位置をハンドル部200の先端201とする。(2)ハンドル部200に指当て用のエラストマー被覆がある場合、その被覆が始まる位置をハンドル部200の先端201とする。(3)(ネック部300からハンドル部200に向けて)拡幅する部分の両縁を形成する直線の終点又は拡幅する部分の両縁を形成する曲線の曲がり方向が変化する位置(変曲点)をハンドル部200の先端201とする。(4)ハンドル部200の先端201の特定が困難な場合は、歯ブラシ10全長に対して、歯ブラシ10の先端から42.2%の位置を境界とする。
【0028】
ハンドル部200の後端203は、ハンドル部200の最後端の部分で定義することができる。
【0029】
図3に示すように、正面視において、ハンドル部200の単位領域230A、240Aが配置されていない部分は、ハンドル部200の本体部分210を構成している。ハンドル部200において単位領域230A、240Aが配置された領域220は「配列領域」と定義する。
【0030】
本体部分210は、例えば、各壁230、240を構成する硬質樹脂と同一の材料で構成してもよい。また、本体部分210は、例えば、各壁230、240を構成する硬質樹脂よりも柔軟な軟質樹脂で構成することができる。本体部分210を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、トランス-ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0031】
図4、
図5、
図6に示すように、第1の壁230は、正面視において、正六角形の形状を有する。第1の壁230の内側には、第1の壁230によって区画された空間からなる第1の単位領域230Aが形成されている。なお、本明細書における正六角形及び略六角形を含む多角形とは、正面視において壁の外周の任意の位置に所定数の頂点(頂部)が存在することを意味する。例えば、正面視において六つの頂点(頂部)を含み、単位領域に面する内壁が丸みを帯びたような形状は上記の六角形に含まれる。
【0032】
第1の壁230は、第1の側壁部231と、第2の側壁部232と、第3の側壁部233と、第4の側壁部234と、第5の側壁部235と、第6の側壁部236と、を備える。
【0033】
図4、
図5、
図6に示すように、第2の壁240は、正面視において、略六角形の形状を有する。第2の壁240の内側には、第2の壁240によって区画された空間からなる第2の単位領域240Aが形成されている。
【0034】
第2の壁240は、第1の側壁部241と、第2の側壁部242と、第3の側壁部243と、第4の側壁部244と、第5の側壁部245と、第6の側壁部246と、を備える。
【0035】
図2、
図8に示すように、第1の単位領域230Aと第2の単位領域240Aは、ハンドル部200の表面200aとハンドル部200の裏面200bの両面に配置することができる。
【0036】
図4に示すように、各単位領域230A、240Aは、ハンドル部200の表面200a側及び裏面200b側の両位置において硬質樹脂で覆われていない。つまり、第1の壁230及び第2の壁240は、各壁230、240の深さ方向(高さ方向)の最上面及び最下面(ハンドル部200の表面200a及び裏面200bのそれぞれに臨む面)が外部に連通している。
【0037】
歯ブラシ10は、各単位領域230A、240Aがハンドル部200の厚み方向に貫通した状態(つまり、ハンドル部200の表面200a及び裏面200bに開口した状態)で配置されているため、ハンドル部200の厚み方向における一様な撓みを実現することが可能となる。仮に、各単位領域230A、240Aがハンドル部200の各面200a、200bに対して貫通していない場合、ハンドル部200の厚み方向における撓みの低下が懸念される。
【0038】
図4に示すように、各単位領域230A、240Aは空洞状に構成されている。各単位領域230A、240Aには樹脂材料等が充填されていない。
【0039】
なお、後述する変形例で説明するように、各単位領域230A、240Aには、各単位領域230A、240Aを構成する硬質樹脂よりも柔軟な軟質樹脂400(
図13を参照)を充填することができる。ただし、ブラッシング時にハンドル部200の撓みを生じさせる効果を効果的に発揮させる観点より、ハンドル部200の表面200a及び裏面200bの両面に各単位領域230A、240Aを配置する場合、表面200a及び裏面200bの少なくとも一方に配置された各単位領域230A、240Aは外部に連通していることが好ましい。
【0040】
図8に示す直線H1は、ハンドル部200の表面200a側に配置された各単位領域230A、240Aのハンドル部200の長手方向の中心位置と、ハンドル部200の裏面200b側に配置された各単位領域230A、240Aのハンドル部200の長手方向の中心位置とを結ぶ仮想線である。
【0041】
歯ブラシ10は、ハンドル部200の表面200a側に配置された各単位領域230A、240Aのハンドル部200の長手方向における位置と、ハンドル部200の裏面200b側に配置された各単位領域230A、240Aのハンドル部200の長手方向における位置と、を略同一の位置に配置している。そのため、直線H1はハンドル部200の長手方向に対して略垂直である。
【0042】
各壁230、240を構成する硬質樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート等を用いることができる。また、上記の硬質樹脂には、生分解性樹脂、植物由来樹脂、紙配合樹脂、植物配合樹脂等を用いることもできる。上記の材料の中でもポリプロピレン(PP)は、成形性に優れ、かつコスト面で有利である。したがって、各壁230、240を構成する硬質樹脂としてポリプロピレン(PP)を使用することがより好ましい。
【0043】
図3、
図5に示すように、ハンドル部200には、幅方向に沿って一つの第1の単位領域230Aと二つの第2の単位領域240Aが配列された部分と、幅方向に沿って二つの第1の単位領域230Aが配列された部分とが長手方向に沿って交互に規則的に配列されている。
【0044】
各単位領域230A、240Aの具体的な配列パターン(規則性)について特に制限はない。また、ハンドル部200には、正面視の形状が同一の一つの種類の単位領域のみを配置することもできる。また、ハンドル部200には、長手方向に沿って配列された所定数の単位領域を一単位として、この一単位をハンドル部200の長手方向に沿って間隔を空けて配置することもできる。ただし、この一単位は、ハンドル部200の長手方向に沿って多くとも2つまでとすることが好ましい。また、各単位領域230A、240Aは、例えば、ハンドル部200の表面200a及び裏面200bの一方の面のみに配置することもできる。また、各単位領域230A、240Aを厚み方向に分断するよう、扁平な硬質樹脂が水平方向にさらに配置されてもよい。
【0045】
また、単位領域は、ハンドル部200の表面200aとハンドル部200の裏面200bで同じ硬質樹脂の壁を共有して貫通していてもよい。換言すると、単位領域は、ハンドル部200の厚み方向において一つしかない(同じ壁を共有し、空洞がハンドル部200の厚み方向に完全に貫通している)構成を有していてもよい。このように構成した場合、ハンドル部200がブラッシング時により一層撓みやすくなる。
【0046】
また、各単位領域230A、240Aの正面視における形状は、正六角形や略六角形に限定されることはない。例えば、隣接する各単位領域230A、240A間で一部の辺を共有するように配置することが可能な六角形以外の多角形で構成することも可能である。
【0047】
また、各壁230、240の最上面及び最下面はハンドル部200の最外郭を構成する表面200a及び裏面200bよりも厚さ方向の内側に配置することができる。つまり、各壁230、240の最上面及び最下面は、ハンドル部200の表面200a及び裏面200bとは面一に配置しなくてもよい。
【0048】
また、各壁230、240の任意の側壁部には、各壁230、240の厚み方向に延びる切れ込みが設けられていてもよい。
【0049】
また、各壁230、240の直線で繋がっている縁部分にはR加工(面取り加工)が施されていてもよい。そのように構成することにより、ブラッシング時に硬質樹脂の各壁230、240に対して応力がしなやかに掛かるようになる。
【0050】
次に、ハンドル部200、各壁230、240、各単位領域230A、240Aの好適な寸法例、及び歯ブラシ10の持つ各効果について説明する。
【0051】
歯ブラシ10は、ハンドル部200の正面視において、連続した単位領域230A、240Aの最外周を繋ぐ面積(A)に対して各単位領域230A、240Aの面積の総和(B)の割合(B/A)の下限は40%以上に形成することができる。また、上限は90%以下で形成することができる。なお、「連続した単位領域230A、240Aの最外周を繋ぐ面積(A)」は、以下、単に「面積(A)」とも記載し、上記の割合は、単に、「割合(B/A)」とも記載する。
【0052】
割合(B/A)は、好ましくは下限が40%以上である。また、好ましくは上限が70%以下である。
【0053】
上記面積(A)の対象となる範囲を
図3において破線Aで示す。面積(A)は、本実施形態のようにハンドル部200の表面200a及び裏面200bに各単位領域230A、240Aが形成されている場合、表面200a側及び裏面200b側のうちの一方の面側の面積のみを意味する。
【0054】
上記「各単位領域230A、240Aの面積の総和(B)」は、
図3に示す正面視において、各壁230、240で囲まれた範囲の面積を意味する。また、上記の「各単位領域230A、240Aの面積の総和(B)」は、以下、単に「面積の総和(B)」とも記載する。
【0055】
歯ブラシ10は、ハンドル部200に配置された厚み方向に延びる扁平な硬質樹脂からなる各壁230、240で囲まれた各単位領域230A、240Aを有することにより、ブラッシング時にハンドル部200で撓みが生じ、ブラッシング圧の低減が可能となる。
【0056】
また、歯ブラシ10は、てこの原理を応用してネック部で撓みを生じさせるように構成された歯ブラシと比較して、ブラッシング圧の低減効果が高い。仮に、各単位領域230A、240Aがハンドル部200の厚み方向ではなく、幅方向に延びるように構成されている場合(つまり、空洞が幅方向に延びるように構成されている場合)、ブラッシング時におけるハンドル部200の幅方向の撓みが促進されてしまうため、歯ブラシ10の使用性を低下させてしまうことが懸念される。歯ブラシ10では、このような使用性の低下が生じることを好適に防止できる。
【0057】
また、歯ブラシ10は、各単位領域230A、240Aが長手方向に沿って規則性をもって連続していることにより、ブラッシング時にハンドル部200にかかる応力が長手方向の各部で均一に分散し、ハンドル部200の厚み方向における一様な撓みが実現可能となる。そのため、使用者は、実際に手の掌に収まる領域内で撓みを実感することが可能になる。仮に、各単位領域230A、240Aがハンドル部200の長手方向に沿って連続していない場合、応力が均一に分散せず、ハンドル部200の一様な撓みを実現できない可能性がある。
【0058】
また、歯ブラシ10は、割合(B/A)の下限が40%以上であり、上限が90%以下であることにより、ハンドル部200に一定量の硬質樹脂が存在する。そのため、歯ブラシ10は、ハンドル部200の強度担保及びハンドル部200の厚み方向における一様な撓みを両立したブラッシング圧の低減が可能となる。割合(B/A)が40%未満の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。また、割合(B/A)が90%超の場合、ハンドル部200の強度低下が懸念される。
【0059】
歯ブラシ10は、ハンドル部200の正面視において、ハンドル部200全体の面積(C)に対して面積(A)の割合の下限を25%以上に形成することができる。また、上限を90%以下で形成することができる。「ハンドル部200全体の面積(C)」は、以下、単に「面積(C)」とも記載し、上記の割合は、単に、「割合(A/C)」とも記載する。
【0060】
割合(A/C)は、好ましくは下限が60%以上である。また、好ましくは上限が90%以下である。
【0061】
上記面積(C)の対象となる範囲を
図3において一点鎖線Cで示す。
【0062】
割合(A/C)、ハンドル部200の最大幅W1、各単位領域230A、240Aの配列の好適な組み合わせの一例を下記に示す。
【0063】
下記の各構成例において、ハンドル部200の最大幅W1に対する配列領域220の幅W3の割合(W3/W1)の下限は70%以上が好ましい。また、上限は96%以下が好ましい。割合(W3/W1)が70%未満の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。一方で、割合(W3/W1)が96%超の場合、ハンドル部200の成形性及びハンドル部200の強度低下が懸念される。なお、略六角形の各単位領域230A、240Aが長手方向及び幅方向に連続して構成されるハニカム構造を採用した場合、ハンドル部200の幅方向に対してハンドル部200の縁部近傍まで各単位領域230A、240Aを配置した場合においても、ハンドル部200の強度を確保することが可能になる。
【0064】
また、下記の各構成例において、ハンドル部200の幅方向の縁幅W2(配列領域220の外縁と本体部分210の外縁との間の距離)の下限は0.5mm以上が好ましい。また、上限は2.0mm以下が好ましい。縁幅W2が0.5mm未満の場合、ハンドル部200の成形性及びハンドル部200の強度低下が懸念される。一方で、縁幅W2が2mm超の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。
【0065】
また、下記の各構成例において、ハンドル部200の長さL1に対する配列領域220の長さL2の割合(L2/L1)の下限は50%以上が好ましい。また、上限は80%以下が好ましい。割合(L2/L1)が50%未満の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。一方で、割合(L2/L1)が80%超の場合、ハンドル部200の強度低下が懸念される。
【0066】
歯ブラシ10は、割合(A/C)が25%であり、ハンドル部200の最大幅W1が7.5mmであり、ハンドル部200の縁幅W2が0.7mmの場合、六角形の各単位領域230A、240Aをハニカム状に33個配置することができる。
【0067】
歯ブラシ10は、割合(A/C)が50%であり、ハンドル部200の最大幅W1が7.5mmであり、ハンドル部200の縁幅W2が0.7mmの場合、ハンドル部200の長手方向の中心位置から長手方向の先端側に向かう所定の範囲内に六角形の各単位領域230A、240Aをハニカム状に48個配置することができる。
【0068】
歯ブラシ10は、割合(A/C)が80%であり、ハンドル部200の最大幅W1が11.5mmであり、ハンドル部200の縁幅W2が0.7mmの場合、ハンドル部200の長手方向の先端側から基端側の所定の範囲内に六角形の各単位領域230A、240Aをハニカム状に38配置することができる。
【0069】
歯ブラシ10は、割合(A/C)が90%であり、ハンドル部200の最大幅W1が11.5mmであり、ハンドル部200の縁幅W2が2mmの場合、六角形の各単位領域230A、240Aをハニカム状に58個配置することができる。
【0070】
図3、
図5に示すハンドル部200の正面視において、各単位領域230A、240Aの面積(各単位領域230A、240Aの一つの面積)は下限を5mm
2以上で形成することができる。また、上限を30mm
2以下で形成することができる。この場合において、ハンドル部200に配置された各単位領域230A、240Aの総数は30個以上60個以下とすることができる。
【0071】
歯ブラシ10は、各単位領域230A、240Aが上記の一定の面積を有することにより、ハンドル部200の強度担保及びハンドル部200の厚み方向における一様な撓みを両立することが可能となる。例えば、各単位領域230A、240Aの面積が5mm2未満の場合、ハンドル部200の厚み方向における撓みの低下が懸念される。また、各単位領域230A、240Aの面積が30mm2超の場合、ハンドル部200における強度低下が懸念される。なお、ハンドル部200の強度担保及び厚み方向における一様な撓みを両立する観点より、ハンドル部200の幅方向に単位領域を少なくとも2列分配置することが好ましい。
【0072】
歯ブラシ10は、一定数の各単位領域230A、240Aを有することにより、ハンドル部200の強度担保及び厚み方向における一様な撓みを両立することが可能となる。例えば、各単位領域230A、240Aの総数が30個未満の場合、ハンドル部200の厚み方向における撓みの低下が懸念される。一方で、各単位領域230A、240Aの総数が60個超えの場合、ハンドル部200における強度低下が懸念される。
【0073】
各単位領域230A、240Aの面積、ハンドル部200の最大幅W1、各単位領域230A、240Aの配列の好適な組み合わせの一例を下記に示す。
【0074】
各単位領域230A、240Aの面積が5mm2である場合、ハンドル部200の最大幅W1=11.5mmに対して、六角形の壁230、240の2列及び3列を1周期とするハニカム状にして、ハンドル部200の長手方向に沿って規則的に配列することができる。
【0075】
各単位領域230A、240Aの面積が30mm2である場合、ハンドル部200の最大幅W1=15.0mmに対して、六角形の壁230、240の2列及び3列を1周期とするハニカム形状にして、ハンドル部200の長手方向に沿って規則的に配列することができる。
【0076】
各単位領域230A、240Aの総数と各単位領域230A、240Aの配置の好適な組み合わせの一例を下記に示す。
【0077】
各単位領域230A、240Aの総数が30個以上であり、ハンドル部200の最大幅W1が11.5mmであり、ハンドル部200の長さL1が80mmの場合、ハンドル部200の長手方向の中心位置から長手方向の先端側に向かう所定の範囲内において、1辺2mmの正六角形の単位領域230Aをハニカム状にして33個配置することができる。この場合において、ハンドル部200の厚み方向の撓みを実現する観点より、ハンドル部200の長手方向の中心位置から長手方向の先端側に向かう所定の範囲内に各単位領域230A、240Aが存在することが好ましい。
【0078】
各単位領域230A、240Aの総数が60個以下であり、ハンドル部200の最大幅W1が11.5mmであり、ハンドル部200の長さL1が80mmの場合、ハンドル部200の長手方向の中心位置から長手方向の先端側及び後端側に向かう所定の範囲内において、1辺2mmの正六角形の単位領域230Aをハニカム状にして58個配置することができる。
【0079】
なお、各単位領域230A、240Aの面積の下限は20mm2以上が好ましい。また、上限は30mm2以下が好ましい。各単位領域230A、240Aの面積が20mm2未満の場合、ハンドル部200の厚み方向における撓みの低下が懸念される。
【0080】
ハンドル部200の正面視において各単位領域230A、240Aの連なりが分断されている場合、各単位領域230A、240Aの面積は、単位領域の集合体の面積の総和を各単位領域230A、240Aの個数の総和で除した値である。
【0081】
第1の壁230の厚みd1及び第2の壁240の厚みd2は、下限を0.3mm以上に形成することができる。また、上限を1.5mm以下に形成することができる。
【0082】
歯ブラシ10は、各壁230、240のそれぞれが一定の厚みを有することにより、ハンドル部200の強度担保及びハンドル部200の厚み方向における一様な撓みを両立することができる。
【0083】
なお、各壁230、240の厚みd1、d2の下限は0.3mm以上が好ましい。また、上限は1.0mm以下が好ましい。各壁230、240の厚みd1、d2が0.3mm未満の場合、成形性及びハンドル部200の強度低下が懸念される。一方で、各壁230、240の厚みd1、d2が1.5mm超の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。
【0084】
図6、
図7に示すように、ハンドル部200の正面視において各単位領域230A、240Aは略六角形に形成することができる。
【0085】
各単位領域230A、240Aを略六角形に形成した場合、各単位領域230A、240Aの対向する任意の2点間の距離は下限を3mm以上で形成することができる。また、上限を7mm以下で形成することができる。
【0086】
本実施形態では、上記距離として、ハンドル部200の長手方向に沿う第1の単位領域230Aの幅方向の寸法(幅寸法)w11及び幅方向と直交する縦方向の寸法w12と、ハンドル部200の長手方向に沿う第2の単位領域240Aの幅方向の寸法(幅寸法)w21及び幅方向と直交する縦方向の寸法w22を例示する。なお、各単位領域230A、240Aの幅方向や縦方向がハンドル部200の長手方向に対して斜め方向に配置される場合、上記距離は各単位領域230A、240Aの対向する任意の2点間の距離で定義することができる。
【0087】
歯ブラシ10は、各単位領域230A、240Aが略六角形の形状を有することにより、ブラッシング時にハンドル部200に掛かる応力を分散することができる。それにより、ハンドル部200の強度担保を実現することが可能となる。
【0088】
歯ブラシ10は、各単位領域230A、240Aが上記一定の寸法を有する略六角形で形成されているため、ハンドル部200の強度担保及びハンドル部200の厚み方向における一様な撓みを両立することが可能となる。各寸法w11、w12、w21、w22が3mm未満の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。一方で、各寸法w11、w12、w21、w22が7mm超の場合、ハンドル部200の強度低下が懸念される。
【0089】
各寸法w11、w12、w21、w22の下限は4mm以上が好ましい。また、上限は7mm以下が好ましい。各寸法w11、w12、w21、w22が4mm未満の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。
【0090】
各単位領域230A、240Aの各寸法w11、w12、w21、w22及び配列の好適な組み合わせの一例を下記に示す。
【0091】
各単位領域230A、240Aの各寸法w11、w12、w21、w22が3mmであり、ハンドル部200の最大幅W1が11.5mmであり、ハンドル部200の縁幅W2が2mmの場合、略六角形の各単位領域230A、240Aを2列のハニカム状に配置することができる。
【0092】
各単位領域230A、240Aの各寸法w11、w12、w21、w22が7mmであり、ハンドル部200の最大幅W1が15mmであり、ハンドル部200の縁幅W2が0.7mmの場合、略六角形の各単位領域230A、240Aを2列のハニカム状に配置することができる。
【0093】
なお、第1の単位領域230Aは、長手方向の幅寸法w11と縦方向の寸法w12とが異なる長さを備える場合、より大きな寸法を備える方をハンドル部200の長手方向に沿って配置することが好ましい。各寸法w11、w12において寸法がより大きな方をハンドル部200の長手方向に沿って配置することにより、ハンドル部200が厚み方向に撓みやすくなる。第2の単位領域240Aについても上記の点は同様である。
【0094】
ハンドル部200の最大幅W1の下限は10mm以上に形成することができる。また、上限は16mm以下に形成することができる。また、ハンドル部200の最大厚みD1の下限は4mm以上に形成することができる。また、上限を16mm以下に形成することができる。
【0095】
歯ブラシ10は、ハンドル部200の最大幅W1が上記の一定の寸法を有することにより、良好なグリップ性を実現することが可能となる。なお、ハンドル部200の最大幅W1が10mm未満の場合、グリップ性の低下が懸念される。一方で、ハンドル部200の最大幅W1が16mm超の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。
【0096】
ハンドル部200の最大幅W1の下限は13mm以上であることが好ましい。また、上限は16mm以下であることが好ましい。ハンドル部200の最大幅W1が13mm未満の場合、使用者の手へのグリップ性の僅かな低下が懸念される。
【0097】
また、上記のように、歯ブラシ10は、ハンドル部200の最大幅W1が所定の大きさに規定されることにより、ハンドル部200の強度が変化する。したがって、ハンドル部200の厚みD1を薄くしなくとも、ハンドル部200の強度を確保しながら、所望の撓みを確保できる。
【0098】
歯ブラシ10は、ハンドル部200の厚みD1が上記の一定の寸法を有することにより、良好なグリップ性を実現することが可能となる。なお、ハンドル部の厚みD1が4mm未満の場合、グリップ性の低下が懸念される。一方で、ハンドル部の厚みD1が16mm超の場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。
【0099】
ハンドル部200の厚みD1の下限は10mm以上が好ましい。また、上限は16mm以下が好ましい。ハンドル部200の厚みD1が10mm未満の場合、グリップ性の僅かな低下が懸念される。
【0100】
ハンドル部200の先端201からハンドル部200の全長に対して33%の領域を把持部と定義し、50%の領域を中央部と定義し、66%の領域を後端部と定義した場合、それぞれの位置における第1の単位領域230Aの深さh1及び第2の単位領域240Aの深さh2(
図4を参照)は、ハンドル部200の最大厚みD1に対して60%以上、下限30%以上・上限60%以下、60%以上とすることができる。
【0101】
把持部及び後端部の各領域における厚みD1が16mmである場合に、把持部及び後端部における各単位領域230A、240Aの深さh1、h2の下限を10mm以上とし、上限を16mm以下とした場合、各単位領域230A、240Aの深さh1、h2はハンドル部200の最大厚みD1に対して下限が60%以上であることが好ましい。また、上限は100%以下が好ましい。この場合に、上記割合が60%を下回ると、把持部及び後端部におけるグリップ時の強度低下が懸念される。
【0102】
中央部の厚みD1が16mmである場合に、中央部における各単位領域230A、240Aの深さh1、h2の下限を5mm以上、上限を8mm以下とした場合、各単位領域230A、240Aの深さh1、h2はハンドル部200の最大厚みD1に対して下限が30%以上であることが好ましい。また、上限は60%以下が好ましい。この場合に、上記割合が30%を下回ると、中央部におけるグリップ時の強度低下が懸念される。また、上記割合が60%を上回ると、ハンドル部200の厚み方向における撓みの低下が懸念される。
【0103】
なお、後述する変形例で説明するように、各単位領域230A、240Aには、軟質樹脂400を充填することができる(
図13を参照)。各単位領域230A、240Aに軟質樹脂を充填する場合、硬質樹脂で構成される各壁230、240は、ハンドル部200の表面200a及び裏面200bに対して面一で配置するか、もしくは、把持のし易さを考慮して少し下がるように配置することができる。一方で、軟質樹脂400は、製造時の成形工程を考慮して、ハンドル部200の表面200a及び裏面200bに対して、面一よりも下がるように配置することができる。このように構成した場合、把持部及び後端部にブラッシング時の応力集中が起き易くなる。そのため、各単位領域230A、240Aの深さh1、h2はより大きく形成することが好ましい。一方で、中央部については、深さh1、h2が小さな各単位領域230A、240Aを用いることで、ハンドル部200を撓み易くさせることが可能になる。
【0104】
歯ブラシ10は、ハンドル部200の先端201からハンドル部200の後端203側へ向かうハンドル部全長の1/2の距離の位置を(α)とし、(α)の位置からハンドル部200の先端側へ40mmずれた位置を(β)とし、(α)の位置からハンドル部200の後端側へ40mmずれた位置を(γ)とした場合に、(β)の位置及び(γ)の位置を支持点として、(α)の位置に対してハンドル部200の厚み方向に100Nの荷重を付与して3点曲げ試験を実施したときに、撓み量の下限が3mm以上となるように構成することができる。また、上限が7mm以下となるように構成することができる。
【0105】
上記の要件は、ハンドル部200に一定の応力を負荷した時のハンドル部200の撓み量を規定している。例えば、撓み量が3.0mm未満の場合、ブラッシング荷重の低減効果を使用者が自ら手を通して認識することが困難であると考えられる。一方で、撓み量が7mm超の場合、歯ブラシ10の使用性の低下が懸念される。
【0106】
なお、歯ブラシ10は、上記の3点(α、β、γ)での曲げ試験をハンドル部200の幅方向に対して実施した場合、幅方向の撓み量が厚み方向の撓み量の0.5倍以下であることが好ましい。幅方向の撓み量が厚み方向の撓み量の0.5倍超の場合、ブラッシング時におけるハンドル部200の幅方向の使用性の低下が懸念される。
【0107】
また、歯ブラシ10は、幅方向の撓み量の上限が3mm以下が好ましい。幅方向の撓み量が3mm超の場合、ブラッシング時における幅方向の使用性の低下が懸念される。
【0108】
(実施例)
上記の3点(α、β、γ)での曲げ試験の実施例を説明する。実施例1~3、比較例1として下記の歯ブラシを準備した。
・実施例1:厚み=0.5mmの壁で囲まれた正六角形の単位領域がハンドル部200に配置された歯ブラシ。
・実施例2:厚み=1.0mmの壁で囲まれた正六角形の単位領域がハンドル部200に配置された歯ブラシ。
・実施例3:厚み=1.5mmの壁で囲まれた正六角形の単位領域がハンドル部200に配置された歯ブラシ。
・比較例1:ハンドル部に単位領域が配置されていない歯ブラシ。
【0109】
<ハンドル部の厚み方向に対する3点曲げ試験>
実施例の条件は下記の通りである。
【0110】
図9に示すように、ハンドル部200の裏面200b側から(β)の位置及び(γ)の位置を所定の支持部材510で支持した。ハンドル部200の厚み方向に沿って(α)の位置に対して径5mmの圧子520を10mm/minで押し付けた。
【0111】
図10には、上記3点曲げ試験の試験結果を示す。図中の実線は比較例、図中の二点鎖線は実施例1、図中の一点鎖線は実施例2、図中の破線は実施例3を示している。
【0112】
図10に示す結果より、単位領域を構成する硬質樹脂の量(つまり、壁の厚み)が小さくなるにしたがって、ハンドル部200の撓み量が増加することを確認できた。例えば、一般的な硬質樹脂製のハンドル部では、100Nの荷重のときの圧縮変位量(撓み量)は1.0mmである。このような硬質樹脂製のハンドル部との比較より、100Nの荷重のときのハンドル部200の撓み量の下限が3mm以上・上限が7mm以下である場合には、使用者はブラッシング圧の低減効果を十分に認識することが可能になると考えられる。なお、実施例2の結果に対応する撓み量3mmを下回る場合、ハンドル部200の厚み方向の撓みを使用者が手の中で感じにくくなることが懸念される。そのため、ハンドル部200の厚み方向の撓み量の下限は3mm以上が好ましい。また、上限は7mm以下が好ましい。
【0113】
<ハンドル部の幅方向に対する3点曲げ試験>
実施例の条件は下記の通りである。
【0114】
図11に示すように、ハンドル部200の側面から(β)の位置及び(γ)の位置を所定の支持部材510で支持した。ハンドル部200の幅方向に沿って(α)の位置に対して径5mmの圧子520を10mm/minで押し付けた。
【0115】
図12には、上記3点曲げ試験の試験結果を示す。図中の実線は比較例、図中の二点鎖線は実施例1、図中の一点鎖線は実施例2、図中の破線は実施例3を示している。
【0116】
図12に示す結果より、厚み方向の曲げ試験と同様に、単位領域を構成する硬質樹脂の量(つまり、壁の厚み)が小さくなるにしたがって、ハンドル部200の撓み量が増加することを確認できた。前述したように、一般的な硬質樹脂製のハンドル部では、100Nの荷重のときの撓み量は1mmである。このような硬質樹脂製のハンドル部との比較より、100Nの荷重のときのハンドル部200の撓み量が3mm以下である場合には、使用者はブラッシング荷重の低減効果を十分に認識することが可能になると考えられる。なお、実施例1の結果に対応する撓み量3mmを上回る場合、撓みすぎることによる使用性の低下が懸念される。
【0117】
<変形例1>
図13には、変形例1に係る各単位領域230A、240Aを示す。
【0118】
図13に示すように、各単位領域230A、240Aの内側に位置する空洞状の部分には各壁230、240を構成する硬質樹脂よりも柔軟な軟質樹脂400を充填することができる。
【0119】
軟質樹脂400は、ショアA硬度の上限が30以下が好ましい。軟質樹脂400のショアA硬度が30を超える場合、樹脂の硬度が想定よりも大きくなるため、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。
【0120】
各壁230、240を構成する硬質樹脂の弾性率の下限は1000Mpa以上が好ましい。また、上限は4000Mpa以下が好ましい。各壁230、240を構成する硬質樹脂の弾性率が1000MPa未満の場合、樹脂が過剰に柔らかくなるため、ハンドル部200が撓みすぎることが懸念される。また、各壁230、240を構成する硬質樹脂の弾性率が4000MPa超の場合、樹脂が過剰に硬くなるため、ハンドル部200の厚み方向の撓みの低下が懸念される。各壁230、240を構成する硬質樹脂の弾性率が1000Mpa以上4000Mpa以下である場合、ハンドル部200が撓んだときに軟質樹脂400が各壁230、240から剥離することを効果的に防止できる。
【0121】
ハンドル部200は、軟質樹脂400を各単位領域230A、240Aに充填する際の作業性を考慮して、各単位領域230A、240Aの最上面及び最下面がハンドル部200の最外郭を構成する表面200a及び裏面200bよりもハンドル部200の厚さ方向の内側に位置する(つまり、面一ではない)ことが好ましい。仮に、面一で構成された場合、軟質樹脂400を充填する際の成形性の低下が懸念される。
【0122】
なお、軟質樹脂400及び各壁230、240を構成する硬質樹脂の具体的な材料について特に制限はなく、例えば、前述した実施形態で例示した各材料の中から任意のものを選択することができる。
【0123】
<変形例2>
図14には、変形例2に係る壁250及び単位領域250Aを示す。
【0124】
単位領域250Aは、前述した実施形態で示した正六角形等の形状に限定されることはない。例えば、本変形例に示すように、幅方向の寸法(幅寸法)w31が縦方向の寸法w32よりも十分に長く形成された六角形で構成することも可能である。このような形状で単位領域250Aを構成する場合においても、ハンドル部200の厚み方向の撓みを好適に誘導することが可能となる。なお、各寸法w31、w32は、前述した実施形態に係る各単位領域230A、240Aと同様に、例えば、下限は3mm以上が好ましい。また、上限は7mm以下が好ましい。
【0125】
<変形例3>
図15には、変形例3に係るハンドル部200の断面図を示す。
図15は、
図8に対応した断面図である。
【0126】
図15に示すように、各壁230、240の深さ方向(各単位領域230A、240Aの深さ方向)の向きは、ハンドル部200の表面200aと裏面200bの間において斜めであってもよい。図示例では、各単位領域230A、240Aの上面側(ハンドル部200の表面200a側)の部分が下面側(ハンドル部200の裏面200b側)の部分と比べてハンドル部200の先端側に位置している。図中の直線H2は、ハンドル部200の表面200a側に位置する各単位領域230A、240Aの長手方向の中心部とハンドル部200の裏面200b側に位置する各単位領域230A、240Aの長手方向の中心部とを結んだ仮想線である。直線H2は、ハンドル部200の長手方向に対して先端側から後端側に向けて傾斜している。
【0127】
上記のように各単位領域230A、240Aを配置することにより、使用者がブラッシングした際に、ハンドル部200が斜め方向に撓みやすくなる。そのため、使用者がハンドル部200の撓みをより直接的に実感し易くなる。
【0128】
以上、本発明に係る歯ブラシを説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0129】
例えば、ヘッド部の材質、ハンドル部及びネック部の形状、材質、大きさ等については公知の歯ブラシの構造を適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0130】
10 歯ブラシ
100 ヘッド部
200 ハンドル部
200a ハンドル部の表面
200b ハンドル部の裏面
201 ハンドル部の先端
203 ハンドル部の後端
210 本体部分
220 配列領域
230 第1の壁(壁)
230A 第1の単位領域(単位領域)
240 第2の壁(壁)
240A 第2の単位領域(単位領域)
250 壁
250A 単位領域
300 ネック部
400 軟質樹脂
D1 ハンドル部の最大厚み
W1 ハンドル部の最大幅
W2 ハンドル部の縁幅
W3 配列領域の幅
d1 第1の壁の厚み
d2 第2の壁の厚み
h1 第1の単位領域の深さ
h2 第2の単位領域の深さ
w11 第1の単位領域の幅方向の寸法
w12 第1の単位領域の縦方向の寸法
w21 第2の単位領域の幅方向の寸法
w22 第2の単位領域の縦方向の寸法
w31 単位領域の幅方向の寸法
w32 単位領域の縦方向の寸法