(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097740
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】包装凍結食品の製造方法、および包装凍結食品
(51)【国際特許分類】
A23L 3/36 20060101AFI20230703BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230703BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20230703BHJP
A23B 4/06 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A23L3/36 A
A23L19/00 A
A23L17/00 A
A23B4/06 501E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213992
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222783
【氏名又は名称】東洋水産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 文宏
(72)【発明者】
【氏名】角野 圭一
(72)【発明者】
【氏名】地曳 健
【テーマコード(参考)】
4B016
4B022
4B042
【Fターム(参考)】
4B016LG05
4B016LK16
4B016LP05
4B016LP06
4B016LP10
4B016LP11
4B016LP13
4B022LA01
4B022LB02
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4B022LJ06
4B042AC03
4B042AC05
4B042AD39
4B042AG27
4B042AH01
4B042AP02
4B042AP03
4B042AP06
4B042AP18
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】包装容器の同じ収容領域内に収容されている魚介類および野菜類が喫食時においていずれも香味、食感、および外観が良好となる包装凍結食品の製造方法等を提供する。
【解決手段】魚介類を容器充填前において加熱処理して生の領域を含まない状態とする魚介類加熱処理工程と、野菜類を容器充填前において、魚介類とは別に、魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件で処理する野菜類処理工程と、加熱処理された魚介類および処理された野菜類を含む食材を包装容器の同じ収容領域内に充填して真空包装する充填包装工程と、真空包装された食材を凍結する凍結工程と、を備える方法により包装凍結食品を製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類を容器充填前において加熱処理して生の領域を含まない状態とする魚介類加熱処理工程と、
野菜類を容器充填前において、前記魚介類とは別に、前記魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件で処理する野菜類処理工程と、
加熱処理された前記魚介類および処理された前記野菜類を含む食材を包装容器の同じ収容領域内に充填して真空包装する充填包装工程と、
真空包装された前記食材を凍結する凍結工程と、を備える、
包装凍結食品の製造方法。
【請求項2】
前記魚介類加熱処理工程が、過熱水蒸気を用いて前記魚介類を加熱処理する工程である、請求項1に記載の包装凍結食品の製造方法。
【請求項3】
前記魚介類加熱処理工程における前記加熱処理の条件が、前記魚介類を75℃未満の領域を含まない状態に達するまで加熱して1分間以上保持する条件、あるいは前記魚介類を85℃未満の領域を含まない状態に達するまで加熱する条件である、請求項1または2に記載の包装凍結食品の製造方法。
【請求項4】
前記野菜類処理工程における前記野菜類の周囲温度が、前記魚介類加熱処理工程における前記魚介類の周囲温度よりも30℃以上低い、請求項1~3のいずれか1項に記載の包装凍結食品の製造方法。
【請求項5】
加熱調理されて喫食される包装凍結食品の製造方法である、請求項1~4のいずれか1項に記載の包装凍結食品の製造方法。
【請求項6】
加熱処理された生の領域を含まない状態の魚介類、および前記魚介類よりも加熱履歴が小さい野菜類を含む食材が包装容器の同じ収容領域内に充填されて真空包装され、凍結された、包装凍結食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装凍結食品の製造方法、および包装凍結食品に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類の時短調理需要などを背景として、魚介類の加工食品が多く製造、販売されている。このうち、冷凍食品などの包装凍結食品は、強い殺菌処理が施されたレトルト包装食品などと比較して魚介類本来の風味等が維持され易く、且つ魚介類の形状も比較的保持され易いため、需要が高まってきている。特に、フライパンなどにより加熱調理してから喫食するタイプの包装凍結食品は、喫食時に調理感をより感じ易いことなどから非常に好まれている。
【0003】
例えば特許文献1には、原料冷凍魚介類を半解凍して塩水で洗浄し、三枚におろし、必要に応じて骨抜きを行い、塩水とお茶との必要に応じて調味料を加えた混合水溶液に浸漬し、30分凍結したうえで切身に切断し、-35℃以下に二次凍結し、真空パックした、料理材料となる切身魚介類調理加工冷凍食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、消費者ニーズの多様化などを背景として、魚介類とともに野菜類などの他の種類の食材をまとめて包装した包装凍結食品や、他の食材を加熱調理時にさらに追加するタイプのものなども開発されている。しかしながら、例えば未加熱の魚介類および野菜類を包装容器の同じ収容領域内に充填して包装、凍結した包装凍結食品とすると、これらが混合された状態で喫食前の加熱調理などを行う必要があるが、最適な加熱条件がそれぞれ異なるため、開封して1度に加熱調理等をし始めるといずれかの香味、食感、外観などが著しく損なわれる場合があるという課題があった。具体的には、加熱調理後などにおいて魚介類の一部が加熱不足の状態であったり、逆に野菜類の一部が焦げてしまったりする場合などがあった。また、野菜類などの他の食材を加熱調理時にさらに追加するタイプの包装凍結食品においても、混合状態となっている凍結された未加熱の魚介類、凍結された野菜類、および追加された野菜類など(主に非凍結品)の最適な加熱調理条件がそれぞれ異なるため、1度に加熱調理等をし始めると、同様に、いずれかの香味、食感、外観などが著しく損なわれる場合があった。
【0006】
そこで本発明は、包装容器の同じ収容領域内に収容されている魚介類および野菜類が喫食時においていずれも香味、食感、および外観が良好となる包装凍結食品の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、容器充填前に、魚介類を加熱処理して生の領域を含まない状態とし、これとは別に、野菜類を魚介類の加熱処理よりも小さい加熱履歴となる条件で処理し、この魚介類および野菜類を含む食材を包装容器の同じ収容領域内に充填して真空包装し、凍結して包装凍結食品とすることにより、喫食時において魚介類および野菜類がいずれも香味、食感、および外観が良好となることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の(1)~(7)である。
(1)魚介類を容器充填前において加熱処理して生の領域を含まない状態とする魚介類加熱処理工程と、野菜類を容器充填前において、前記魚介類とは別に、前記魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件で処理する野菜類処理工程と、加熱処理された前記魚介類および処理された前記野菜類を含む食材を包装容器の同じ収容領域内に充填して真空包装する充填包装工程と、真空包装された前記食材を凍結する凍結工程と、を備える、包装凍結食品の製造方法。
(2)前記魚介類加熱処理工程が、過熱水蒸気を用いて前記魚介類を加熱処理する工程である、(1)に記載の包装凍結食品の製造方法。
(3)前記魚介類加熱処理工程における前記加熱処理の条件が、前記魚介類を75℃未満の領域を含まない状態に達するまで加熱して1分間以上保持する条件、あるいは前記魚介類を85℃未満の領域を含まない状態に達するまで加熱する条件である、(1)または(2)に記載の包装凍結食品の製造方法。
(4)前記野菜類処理工程における前記野菜類の周囲温度が、前記魚介類加熱処理工程における前記魚介類の周囲温度よりも30℃以上低い、(1)~(3)のいずれか1つに記載の包装凍結食品の製造方法。
(5)加熱調理されて喫食される包装凍結食品の製造方法である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の包装凍結食品の製造方法。
(6)加熱処理された生の領域を含まない状態の魚介類、および前記魚介類よりも加熱履歴が小さい野菜類を含む食材が包装容器の同じ収容領域内に充填されて真空包装され、凍結された、包装凍結食品。
(7)(1)~(5)のいずれか1つに記載の方法により製造された、(6)に記載の包装凍結食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、包装容器の同じ収容領域内に収容されている魚介類および野菜類が喫食時においていずれも香味、食感、および外観が良好となる包装凍結食品、ならびにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る包装凍結食品の製造方法の一例を、工程図として示したものである。
【
図2】実施例で作製した包装凍結食品の外観写真である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、魚介類を容器充填前において加熱処理して生の領域を含まない状態とする魚介類加熱処理工程と、野菜類を容器充填前において、魚介類とは別に、魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件で処理する野菜類処理工程と、加熱処理された魚介類および処理された野菜類を含む食材を包装容器の同じ収容領域内に充填して真空包装する充填包装工程と、真空包装された食材を凍結する凍結工程と、を備える包装凍結食品の製造方法である。また、この方法により製造が可能な、加熱処理された生の領域を含まない状態の魚介類、およびこの魚介類よりも加熱履歴が小さい野菜類を含む食材が包装容器の同じ収容領域内に充填されて真空包装され、凍結された包装凍結食品である。以下においては、これらを「本発明に係る包装凍結食品の製造方法」、「本発明の包装凍結食品」という場合もある。
【0012】
ここで、この「包装凍結食品」とは、容器に充填されて包装された凍結状態の食品(例えば-18℃以下で保管等がされる冷凍食品など)を意味する。なお、この包装凍結食品の販売時(例えば陳列時など)における保管温度帯は0℃未満に限定されない。
【0013】
まず、本発明に係る包装凍結食品の製造方法について詳細に説明する。
本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、食材として少なくとも魚介類および野菜類(根菜類、いも類、豆類、および種実類も包含される)を用いる。したがって、本発明の包装凍結食品には少なくとも魚介類および野菜類が含まれるが、これら以外に例えば肉類、穀類、果実類、藻類、きのこ類、卵類、および乳加工品類からなる群から選ばれる1以上を食材として用いても良い。また、上記した食材の1以上を用いて形成された加工品を使用しても良い。特に、魚介類および野菜類に加えて肉類および/または穀類を食材として用いる実施形態であると、本発明の効果がより発揮され易いため好適である。ここで、この食材には何らかの処理(加熱処理、カット、洗浄、加工処理など)が施されたものも包含されるが、一方で、喫食時に固形分や半固形分が実質的に残らないもの(例えばエキス類などの調味成分、バターなどの油脂類、水など)はこの食材には含まれない。
なお、本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、魚介類または野菜類のいずれかを食材として使用しない実施形態(例えば魚介類のみ使用、あるいは野菜類のみ使用)や、これらをいずれも使用しない実施形態は包含されない。
【0014】
魚介類としては、鮭、サバ、赤魚、鱈、カレイ、アジ、サンマ、イワシ等の魚類、イカ・タコ類、エビ・カニ類、ホタテ、アサリ、ハマグリ等の貝類などの生鮮品またはその冷凍品が例示され、これらの魚介類の一部(切身など)を使用しても良い。また、これらから選ばれる2以上を混合して魚介類の食材として用いても良い。なお、本発明においては、魚肉練り製品などの魚介類が原形をとどめない程度まで加工された形態で含まれる加工品は、この魚介類には含まれない。しかしながら、上記したように切身などの魚介類の原形が一部でも保持されているものは包含される。
【0015】
また、野菜類としては、トマト、アスパラガス、ブロッコリー、キャベツ、ニラ、ネギ、ピーマン、パプリカ、コーン、玉ネギ、根菜類(大根、人参、レンコン、ゴボウなど)、カボチャ、ナス、パセリ、香辛野菜(ショウガ、ニンニク、唐辛子など)等の生鮮品またはその冷凍品が例示される。また、本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、前述したように、上記の根菜類や、いも類(ジャガイモ、サツマイモ、サトイモなど)、豆類(大豆、インゲン、エンドウなど)、および種実類(ゴマ、クルミ、カシューナッツなど)についても野菜類の1つとして使用できる。そして、これらから選ばれる2以上を混合して野菜類の食材として用いても良い。なお、本発明においては、大豆加工品などの野菜類が原形をとどめない程度まで加工された形態で含まれる加工品は、この野菜類には含まれない。しかしながら、葉物野菜の一部などの野菜類の原形が一部でも保持されているものは包含される。
【0016】
さらに、穀類としては、粳米や糯米などの精白米や玄米、加工米(洗米、浸漬、蒸らしなどの少なくとも一部の工程が省略できるように加工された米)等の米が例示される。なお、米の品種については限定されない。また、発芽玄米を使用することもできる。さらには、ヒエ、アワ、キビ等の雑穀や、小麦、大麦、ライ麦、蕎麦などを使用することもできる。肉類としては、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉、鴨肉、これらから選ばれる1以上が加工された加工肉(ベーコンなど)等が例示される。そして、これらも、上記から選ばれる2以上を混合して穀類または肉類の食材として用いても良い。そして、これらは、上記した穀類が原形をとどめない程度まで加工された形態で含まれる穀類加工品や、上記した肉類が原形をとどめない程度まで加工された形態で含まれる肉類加工品であっても構わない。
【0017】
また、本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、魚介類および野菜類とともに、上記した肉類や穀類だけでなく、例えば果実類としてレモン、パイナップル、リンゴ、ベリー類など、藻類としてワカメ、コンブなど、きのこ類としてシイタケ、マイタケ、シメジ、エリンギ、キクラゲなど、卵類として鶏卵、うずら卵、卵加工品など、乳加工品としてチーズなどを食材として使用しても良い。さらに、魚介類および野菜類とともに、魚肉練り製品や大豆加工品などの前述したような加工品を併用しても良い。そして、必要に応じて、食材以外の原料として調味成分(エキス類、醤油、みそ、食酢、果汁、香辛料、塩類、糖類、アミノ酸類など)や油脂類(バター、オリーブオイルなど)を用いても良く、これらに加えて、さらに任意の添加成分(天然色素、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、香料など)や水を用いても良い。なお、この調味成分、油脂類、および添加成分は、食材との併用時(同じ収容領域内への充填時など)において固形状(ゼリー状も含む)、粉状、または液状(ペースト状も含む)のいずれの形態であっても良い。さらに、この調味成分等は、魚介類および野菜類と同じ収容領域内に充填されずに、別の軟包材容器(小袋など)等に充填され、これが包装凍結食品に添付される実施形態としても構わない。
【0018】
そして、本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、まず、魚介類加熱処理工程を実施する。この魚介類加熱処理工程は、必須の食材の1つである魚介類について、容器充填前において、加熱処理(外部から人為的または機械的に加熱を行う処理)を行って生の領域を含まない状態とする工程である。つまり、容器充填前において魚介類の完全な加熱処理を行う工程である。そして、この魚介類は、加熱処理の前または後において、所定のサイズにカットしたり不要な部分(骨、鱗、皮、殻、内臓など)を除去したりする処理や、X線検査機や金属探知機などによる選別処理などが施されても良い。さらに、加熱処理の前または後に魚介類を浸漬液に浸漬する味付け処理などを行っても良い。なお、この工程では、他の食材と比べて加熱調理等に時間を要する魚介類について容器充填前に予め加熱処理を行う工程であり、この魚介類と、もう1つの必須の食材である野菜類と、を混合して一緒に加熱処理を行うものではないが、野菜類以外の他の食材(例えば肉類など)をこの魚介類と混合して加熱処理を行うことを完全に除外するものではない。また、複数種の魚介類を混合して加熱処理を行っても良い。しかしながら、使用する魚介類に最適な加熱処理を行うという観点から、この魚介類加熱処理工程は、食材として魚介類のみを(魚介類以外の食材を含まないで)加熱処理する工程であるのが好ましく、また、複数種の魚介類を使用する場合には1種類ずつ魚介類を加熱処理する工程(魚介類の種類毎に別々に加熱処理する工程)であるのが好ましい。なお、これらの場合でも、魚介類とともに調味成分や油脂類、添加成分などは併用しても構わない。また、本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、食材として使用する魚介類は全てこの魚介類加熱処理工程を行う。
【0019】
魚介類の加熱処理の方法としては、直火、炭、水蒸気、熱湯、油などを用いて焼成、蒸煮、油揚などを行うのが好ましい。特に、この加熱処理が過熱水蒸気を用いた加熱処理であると、つまりこの魚介類加熱処理工程が過熱水蒸気を用いて魚介類を加熱処理(焼成処理または蒸煮処理)する工程であると、この加熱処理時に魚介類が過熱水蒸気に包み込まれることによって香りや味が抜けにくくなる(香りや味を封じ込め易くなる)ためより好ましい。また、直火などにより焼成する場合と比較して、魚介類の一部が加熱過多により縮んで硬くなることも抑制し易い。つまり、食感も良好な状態とし易い。そして、この魚介類加熱処理工程における加熱処理の条件は、より確実に魚介類を生の領域を含まない状態とするために、少なくとも魚介類を75℃未満の領域を含まない状態に達するまで加熱して1分間以上保持する条件(例えば魚介類の中心温度または深部温度が75℃以上で1分間以上保持される加熱条件)であるのが好ましい。あるいは、これと同等の条件として、少なくとも魚介類を85℃未満の領域を含まない状態に達するまで加熱する条件(魚介類の中心温度または深部温度が85℃以上に達温するまで加熱する条件など)であっても同様に好ましい。つまり、これら条件のいずれかであるのが好ましい。
【0020】
また、本発明の効果がより発揮され易くなることから、この魚介類加熱処理工程における魚介類の周囲温度(加熱処理されている魚介類の周囲温度)が、後述する野菜類処理工程における野菜類の周囲温度(処理されている野菜類の周囲温度)よりも30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上高い温度(高くなる条件)であると好適である。野菜類処理工程における周囲温度が複数ある場合には、その最も高い温度よりも30℃以上高くなるようにする。そして、この周囲温度が好ましくは150℃超、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上であると、魚介類加熱処理工程においてより短い時間で魚介類を生の領域を含まない状態とすることができ、且つ喫食前の加熱調理時などにおいて魚介類から余分な水分が出にくくなるため非常に好適である。特に、過熱水蒸気を用いた加熱処理の場合、このような温度条件とするのがより好ましい。そして、この魚介類の周囲温度は190℃以上であるのがさらに好ましく、200℃以上であるのがさらに好ましく、220℃以上であるのがさらに好ましい。この上限は、限定されるものではないが、400℃以下であって良く、350℃以下であって良く、330℃以下であって良い。さらに、この加熱処理の時間(所定の周囲温度で処理する時間)は、温度条件、魚介類の種類や部位などによって適宜設定すれば良く限定されるものではないが、5分以上であって良く、5分超であって良く、7分以上であって良く、さらに30分以下であって良く、20分以下であって良く、15分以下であって良い。そして、上記条件での加熱処理を1回行う工程であるのがより好ましいが、所定の処理時間を分割して複数回に分けて加熱処理を行っても良い。なお、この「周囲温度」とは、加熱処理されている魚介類や処理されている野菜類の周囲を取り囲む領域の温度であり、過熱水蒸気や飽和水蒸気などの気体を用いた場合や物理的処理などの場合には雰囲気温度を意味し、熱湯、水、油などの液体を用いた場合にはその液体の温度(周囲液体温度)を意味する。以下においても同様である。
【0021】
さらに、本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、野菜類処理工程を実施する。この野菜類処理工程は、もう1つの必須の食材である野菜類について、容器充填前において、上記した魚介類とは別に(魚介類と混ぜ合わせることなく別工程で)、魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件で処理する工程である。つまり、魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件で加熱処理するか、あるいは魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件である非加熱処理をする工程である。そして、これら両方の処理を行っても良い。なお、この工程でも、野菜類と、もう1つの必須の食材である魚介類と、を混合して処理を行うものではないが、この魚介類以外の他の食材を野菜類と混合して処理を行っても良い。また、複数種の野菜類を混合して処理を行っても良い。しかしながら、これも使用する野菜類に最適な処理を行うという観点から、この野菜類処理工程は、食材として野菜類のみを(野菜類以外の食材を含まないで)処理する工程であるのが好ましい。また、複数種の野菜類を使用する場合には1種類ずつ野菜類を処理する工程(野菜類の種類毎に別々に処理する工程)であるのが好ましい。なお、これらの場合でも、野菜類とともに調味成分や油脂類、添加成分などは併用しても構わない。
【0022】
ここで、「魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件」とは、この処理条件における野菜類の加熱履歴が、前述した魚介類加熱処理工程の加熱処理条件における魚介類の加熱履歴よりも小さくなることを意味している。そして、この「加熱履歴」とは、処理温度と処理時間とによって算出される、処理によって食材に与えられる総熱量(総熱エネルギー)である。よって、この魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件での処理には、非加熱での処理も包含される。
なお、本発明では、魚介類よりも加熱履歴が小さい野菜類と併用する限りにおいて、魚介類と同等以上の加熱履歴となる加熱処理が施された野菜類(例えば魚介類と同等以上の加熱処理が施されたカボチャなど)を使用しても構わない。
【0023】
さらに、本発明の効果がより発揮され易くなることから、この野菜類処理工程における野菜類の周囲温度が、前述した魚介類加熱処理工程における魚介類の周囲温度よりも30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上低い温度(低くなる条件)であると好適である。魚介類加熱処理工程における魚介類の周囲温度が複数ある場合には、その最も低い温度よりも30℃以上低くなるようにする。そして、この野菜類の処理は150℃以下の周囲温度での処理であるのがより好ましい。つまり、150℃以下の周囲温度での加熱処理であるか、あるいは非加熱処理であるのがより好ましい。また、この野菜類の処理が加熱処理である場合には、魚介類加熱処理工程における魚介類の周囲温度よりも30℃以上低く且つ150℃以下の周囲温度であるとより好ましく、あるいは魚介類加熱処理工程における魚介類の加熱処理の時間よりも短い時間での加熱処理であってもより好ましい。そして、このいずれの条件を満たしていてもより好ましい。得られる包装凍結食品の喫食時において、魚介類および野菜類がいずれも香味、食感、および外観がより良好な状態となり易いからである。そして、この野菜類の周囲温度は130℃以下であるのがさらに好ましく、120℃以下であるのがさらに好ましく、100℃以下であるのがさらに好ましい。この下限は、限定されるものではないが、非加熱での処理を含む場合には0℃以上であって良く、10℃以上であって良い。加熱処理の場合には50℃以上であって良く、70℃以上であって良く、80℃以上であって良い。また、加熱処理の場合の処理時間は、温度条件、野菜類の種類や部位などによって適宜設定すれば良く限定されるものではないが、5分以下であって良く、5分未満であって良く、4分以下であって良く、3分以下であって良い。しかしながら、併用する魚介類を加熱処理する魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件(例えば野菜類の加熱処理における周囲温度が魚介類加熱処理工程における魚介類の周囲温度よりも30℃以上低い条件など)である限りにおいて、この野菜類処理工程における加熱処理が150℃超の周囲温度(例えば過熱水蒸気やオーブン等による180~220℃の周囲温度)での処理であっても構わない。野菜類の加熱処理としては、例えばブランチング処理やあく抜き処理、飽和水蒸気による蒸し処理、素揚げ処理などが示される。
【0024】
そして、この野菜類処理工程には、前述したように野菜類を非加熱で処理する実施形態も包含されるが、この非加熱での処理とは、外部から人為的または機械的に加熱を行わない処理(処理環境の温度以下での処理)であり、例えば野菜類を所定のサイズにカットしたり不要な部分を除去したりするカット処理や、冷水等による洗浄処理、処理環境の温度以下の温度である浸漬液に一定時間浸漬する浸漬処理(味付け処理等)、X線検査機や金属探知機等による選別処理などが包含される。なお、野菜類を非加熱で処理する場合には、必然的に魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる。
【0025】
ここで、本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、魚介類および野菜類以外の食材を用いる場合に(例えば肉類、穀類、果実類など)、容器充填前において、その食材についても別途加熱処理を行っても良い。あるいはこれらを別途非加熱で処理(カット、洗浄など)しても良く、あるいはこれらの処理を両方行っても良い。加熱処理や非加熱処理については、特段限定されないが、上記した魚介類や野菜類と同様の方法を採用可能である。特に、肉類および穀類はいずれも、魚介類と同様に、容器充填前において加熱処理して生の領域を含まない状態とするとより好ましい。しかしながら、生の領域を含む肉類や穀類の使用を完全に除外するものではない。また、果実類を使用する場合には、野菜類と同様に、容器充填前において魚介類加熱処理工程よりも小さい加熱履歴となる条件で処理(加熱処理または非加熱処理)するのがより好ましい。
【0026】
次に、本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、上記のようにして加熱処理された魚介類および処理された野菜類を含む食材を、必要であれば調味成分や油脂類などとともに、包装容器の同じ収容領域内に(包装容器の一部などによって区域が分離されていない領域内に)充填して真空包装する充填包装工程を行う。各食材や調味成分などの計量および充填は、公知の方法(計量機等による機械充填、手作業による充填など)により行えば良い。
【0027】
この「真空包装」とは、真空パックとも呼ばれ、食材が充填された包装容器内(収容領域内など)の気体を吸引して脱気しながら密封することで包装容器の内部を略真空状態にする包装方法であり、公知の真空包装機を用いて行うことができる。これにより、包装時などにおける食材の形状崩れや損傷等が発生しにくくなり、また、包装凍結食品として長期保管された場合などにおいても、加熱履歴が異なる複数種の収容物(食材)についていずれも味や香りの変質、低減などを同じように抑制することができる。さらに、収容物の乾燥も起こりにくく、加熱履歴が異なる複数種の収容物についていずれも最適な水分量を維持し易い。なお、この「略真空状態」とは実質的に真空な状態を意味し、完全な真空状態に限定されるものではない。
【0028】
そして、この真空包装に使用する包装容器は、少なくとも、真空包装が可能なもの(可撓性包装容器など)であれば特段限定されず、例えば、可撓性プラスチックや、可撓性プラスチックおよび紙により構成された包装容器を使用できるが、軽量化や真空包装のし易さなどの観点から、可撓性プラスチックにより構成された包装容器(例えば非成形の深絞り包装容器など)であるのが好ましい。つまり、本発明における「包装容器」は、一部が成形された容器に限定されるものではない。後述する本発明の包装凍結食品においても同様である。
【0029】
また、この容器充填前あるいは真空包装前または後に、加熱処理された食材の粗熱を取るために、冷却処理を行っても良い。この冷却処理の方法としては、例えば、0~10℃の雰囲気温度において0.5~2時間程度保管する方法などが示され、食材の温度を0~20℃程度とするのが好適である。
【0030】
このようにして真空包装された食材について、急速凍結庫などを使用して、例えば-25℃以下(-40~-25℃など)の雰囲気温度において10~30時間程度保管して凍結させる凍結工程を行う。そして、包装容器内の収容物の温度を-18℃以下とするのが好適である。そして、この凍結工程の後は、得られた包装凍結食品を、必要に応じて外包装や箱詰めなどをして製品とする。なお、この外包装および箱詰めの少なくとも一方について凍結工程の前に行っても良い。
【0031】
本発明に係る包装凍結食品の製造方法では、得られる包装凍結食品において、包装容器の同じ収容領域内に充填されている魚介類と野菜類とが加熱履歴が異なる(魚介類よりも野菜類の方が加熱履歴が小さい)状態となっていることが大きな特徴である。これにより、この包装凍結食品は、喫食前の加熱調理などにおいて魚介類と野菜類との加熱ムラ(加熱過多または加熱不足)が生じにくく、加熱履歴が大きい魚介類からは加熱調理時などにおいて余分な水分(喫食時の香味や食感に悪い影響を与える水分)も出にくいため、喫食時の香味、食感、および外観がいずれも良好なものとなる。特に、本発明に係る包装凍結食品の製造方法で得られる包装凍結食品が、開封されて取り出され、加熱調理されて喫食される(加熱調理用の)ものであると、加熱調理後の喫食時において上記効果が発揮され易い。なお、この「加熱調理されて喫食される(加熱調理用)」とは、フライパンなどを利用した焼成や炒めだけでなく、ボイル(包装された状態でのボイルも含む)、蒸し、電子レンジでの加熱調理などの調理感を付与する加熱工程を経て喫食されるものを意味する。しかしながら、単に凍結状態の食品を解凍して喫食に適した温度とするだけの加熱工程を経ただけで喫食されるものは、この加熱調理用には含まれない。そして、この得られる包装凍結食品が、開封されて取り出され、その状態から焼成および/または炒めによって加熱調理されて喫食される(焼成および/または炒め調理用の)ものであると、加熱調理後の喫食時における調理感や香味のまとまりなどもより好ましくなり好適である。
【0032】
さらに、本発明では、得られる包装凍結食品に他の食材(例えば非凍結状態の野菜類やきのこ類など)を追加して加熱調理を行ってから喫食する場合、上記効果がより発揮され易い。そしてこれも、この加熱調理がフライパンなどを利用した焼成および/または炒めであると、上記効果がさらに発揮され易い。つまり、本発明に係る包装凍結食品の製造方法は、開封されて取り出され、非凍結状態である食材とともに焼成および/または炒めによって加熱調理されて喫食される包装凍結食品の製造方法であると、加熱調理後の喫食時における調理感や香味、食感などの観点から非常に好適である。そして、この加熱調理時に追加する非凍結状態の食材としては、前述したものをここでも同様に使用可能であるが、特に玉ネギなどの野菜類やきのこ類を追加するのが好適である。
【0033】
なお、本発明に係る包装凍結食品の製造方法については、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、上記以外の任意の工程を含んでも良い。
以上のような工程を含む本発明に係る包装凍結食品の製造方法により得られる包装凍結食品は、包装容器の同じ収容領域内に収容されている魚介類および野菜類が、1度に加熱調理等をし始めても、喫食時においていずれも香味、食感、および外観が良好となる。つまり、いずれも美味しく出来上がった状態となる。野菜類などをさらに追加して加熱調理等を行った場合も同様である。
本発明に係る包装凍結食品の製造方法の一例(一実施形態)として、魚介類を容器充填前において加熱処理して生の領域を含まない状態とする魚介類加熱処理を行い、これとは別に、野菜類を容器充填前において魚介類加熱処理よりも小さい加熱履歴となる条件で処理する野菜類処理を行い、これらを冷却(粗熱取り)した後に包装容器に充填し、真空包装を行って密封してから急速凍結を行って包装凍結食品を得る製造例を
図1に示した。
【0034】
次に、本発明の包装凍結食品について詳細に説明する。
本発明の包装凍結食品は、加熱処理された生の領域を含まない状態の魚介類、およびこの魚介類よりも加熱履歴が小さい野菜類を含む食材が包装容器の同じ収容領域内に充填されて真空包装され、凍結された包装凍結食品である。つまり、少なくとも加熱処理された(例えば過熱水蒸気により加熱処理された)生の領域を含まない状態の魚介類と、この魚介類よりも加熱履歴が小さい(例えば非加熱での処理が施された)野菜類と、が含まれる食材が包装容器の同じ収容領域内に一体として充填されて、前述のような真空包装、凍結がされている包装凍結食品である。そして、この本発明の包装凍結食品は、前述のような魚介類加熱処理工程、野菜類処理工程、充填包装工程、および凍結工程を備える本発明に係る包装凍結食品の製造方法により製造することができ、この包装凍結食品を喫食する際(特に加熱調理してから喫食する際)において魚介類および野菜類がいずれも香味、食感、および外観が良好であるという特徴を有する。なお、本発明の包装凍結食品は、魚介類や野菜類として前述したようなものが含まれるが、さらに、この魚介類および野菜類以外に前述したような他の食材(肉類、穀類、果実類など)や調味成分などが含まれて真空包装、凍結されたものであっても良い。そして、この調味成分等は、別の軟包材容器等に充填されて添付されている実施形態であっても構わない。また、上記した野菜類に加えて、魚介類と同等以上の加熱履歴となる加熱処理が施された野菜類をさらに含む実施形態であっても良い。しかしながら、本発明の包装凍結食品には、生の領域を含む魚介類が凍結されたものは収容物として含まれない。
【0035】
また、本発明の包装凍結食品は、加熱処理された生の領域を含まない状態の魚介類と、この魚介類よりも加熱履歴が小さい野菜類と、さらに肉類および/または穀類と、を含む食材が包装容器の同じ収容領域内に充填されて真空包装され、凍結されたものであると、本発明の効果がより発揮され易いため好適である。そして、この肉類および穀類はいずれも、魚介類と同様に、加熱処理された生の領域を含まない状態のものが真空包装、凍結されている実施形態であるのがより好ましい。さらに、魚介類よりも加熱履歴が小さい果実類を上記した魚介類および野菜類とともに含む実施形態も好適である。
そして、本発明の包装凍結食品は、前述と同様の観点から、前述したような加熱調理用の包装凍結食品であるとより好ましく、また、前述したような焼成および/または炒め調理用の包装凍結食品(特に非凍結状態である食材とともに焼成および/または炒めによって加熱調理されて喫食される包装凍結食品)であるとさらに好ましい。
【0036】
ここで、本発明の包装凍結食品のうち、本発明に係る包装凍結食品の製造方法により製造されたことを特徴とするものは、プロセスによって特定された物の発明であると判断される可能性も考えられる。しかし、仮にそうであったとしても、このような本発明の包装凍結食品と、本発明に係る包装凍結食品の製造方法とは明らかに異なる方法により製造された(例えば魚介類および野菜類を容器充填前に混合して同じ条件で加熱処理してから充填、真空包装された)包装凍結食品との具体的な相違点(香味、食感などの違いに影響を与えている構造または特性上の相違点)はいまだ明確に特定できておらず、また、この相違点の特定は著しく過大な経済的支出や時間を要するものであると考えられるため、この相違点をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情が存在すると認められる。
【0037】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0038】
(実施例)
生鮮品のサバ、ならびに冷凍品のスナップエンドウ、カットジャガイモ、カットミニトマト、およびカットレモンを用意した。そして、サバについては切身とし、サバ切身単独で(他の食材を混合せずに)、過熱水蒸気により280~350℃の雰囲気下において5~8分間焼成処理(加熱処理)を行い、生の領域を含まない状態の切身(焼成切身)とした(下記表1上段)。そして、加熱処理後に粗熱取りを実施した。なお、スナップエンドウは洗浄された生鮮品が熱湯でブランチング処理(加熱処理)された後に冷凍されたものである。カットジャガイモは洗浄された生鮮品が概ね所定の大きさとなるようにカットされ、熱湯でのブランチング処理後に冷凍されたものである。カットミニトマトおよびカットレモンはいずれも洗浄された生鮮品が概ね所定の大きさとなるようにカットされて冷凍されたもの(非加熱処理品)である。次に、粗熱取りされたサバ焼成切身、ならびに冷凍品のスナップエンドウ、カットジャガイモ、カットミニトマト、およびカットレモンを深絞り包装容器の同じ収容領域内に所定量充填し、さらに、ここに調味成分(植物油、食塩、香辛料、アミノ酸など)を含む液を所定量充填して、真空包装機によって真空包装を行った。次いで、この食材等が収容された深絞り真空包装品について、-25℃以下での急速凍結処理を行って収容物の品温を-18℃以下とし、本発明の包装凍結食品(実施例)を得た。この実施例の外観写真を
図2に示す。
【0039】
(比較例)
実施例と同様に、生鮮品のサバ、ならびに冷凍品のスナップエンドウ、カットジャガイモ、カットミニトマト、およびカットレモンを用意した。そして、サバについては切身(生切身)とした。なお、スナップエンドウ、カットジャガイモ、カットミニトマト、およびカットレモンはいずれも実施例で使用したものと同じものである。次に、生状態のサバ切身(生切身)、ならびに冷凍品のスナップエンドウ、カットジャガイモ、カットミニトマト、およびカットレモンを深絞り包装容器の同じ収容領域内に所定量充填し、さらに、ここに調味成分(植物油、食塩、香辛料、アミノ酸など)を含む液を所定量充填して、真空包装機によって真空包装を行った。次いで、この食材等が収容された深絞り真空包装品について、-25℃以下での急速凍結処理を行って収容物の品温を-18℃以下とし、包装凍結食品(比較例)を得た。
【0040】
そして、得られた実施例および比較例について、これらを開封して取り出し、その状態からフライパンにより1度に加熱調理(焼成または炒め調理)して喫食可能な状態とし、官能評価を行った。なお、これらの喫食前の加熱調理時間は、実施例は8分間、比較例は15分間であった(下記表1上段)。
【0041】
官能評価は、味、食感、香り、および外観(見栄え)の4つの項目について、いずれも以下に示す評価基準を用い、パネリスト間において共通の評価基準となるように統一した。つまり、比較例を基準サンプル(評価はいずれの項目も2.0)として、以下の評価基準に基づいて、訓練され官能的識別能力を備えた5名のパネリストが相対評価によって比較例と実施例とを比較官能評価し、この5名の実施例評価点の平均値を算出した。この結果を下記表1下段に示す。
【0042】
<評価基準>
5:非常に良い
4:かなり良い
3:良い
2:やや悪い(比較例と同等)
1:悪い
【0043】
【0044】
この結果から、本発明の包装凍結食品である実施例は、生の領域を含まない状態にまで加熱処理された(完全な加熱処理がされた)状態のサバ焼成切身と、これよりも加熱履歴がかなり小さい野菜類と、を容器の同じ収容領域内に充填して真空包装し、凍結することにより、生状態のサバ切身と、これと同等以上の加熱履歴である野菜類と、を用いて同様に製造した比較例とは異なり、喫食前の加熱調理後において調理ムラがほとんどなく、また、喫食時の味、食感、香り、および外観がいずれも非常に好ましいものとなることが示された。
【0045】
さらに、この実施例は、サバの焼成切身が凍結されたものであるため、凍結状態からの加熱調理でもサバからドリップが出にくいことからこのドリップが影響となる香味低下などが少なく、つまり加熱調理前の事前解凍およびドリップ除去が必要なく、加えて、喫食前の加熱調理時間がかなり短くて済むことが示された。したがって、この実施例は、喫食時の品質が高いだけでなく利便性も非常に高いと認められた。また、この実施例は、電子レンジでの加熱調理も可能であると推察された。
一方で、比較例は、凍結状態のサバ(生切身)に十分な加熱が必要であるため喫食前の加熱調理時間が実施例よりも多く(倍近く)必要となり、野菜類への加熱過多やサバからのドリップ発生などが原因で香味や外観などの評価が低くなっていると推察された。よって、利便性および加熱調理後の品質において実施例よりも明らかに劣るものであると認められた。