(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097770
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ウエハ保持装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230703BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20230703BHJP
B65H 3/14 20060101ALI20230703BHJP
B65H 5/12 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H01L21/68 C
B65H7/14
B65H3/14
B65H5/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214053
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一樹
(72)【発明者】
【氏名】森崎 大司
(72)【発明者】
【氏名】野口 謙一
【テーマコード(参考)】
3F048
3F101
3F343
5F131
【Fターム(参考)】
3F048AB09
3F048BA05
3F048BB02
3F048CA06
3F048CC01
3F048DC11
3F048EA15
3F048EB27
3F101CA13
3F101CE24
3F343FA13
3F343FB19
3F343JB07
3F343JB17
3F343JB18
3F343JB19
3F343JB20
3F343JB21
3F343KB18
3F343KB20
3F343LA03
3F343LA16
3F343LC02
3F343LD07
3F343MA03
3F343MA26
3F343MB03
3F343MC07
5F131AA02
5F131CA21
5F131CA37
5F131DA22
5F131DB27
(57)【要約】
【課題】ベルヌーイチャックに保持した半導体ウエハを的確に回転させる。
【解決手段】ウエハ保持装置は、半導体ウエハ5を保持するためのチャック2と、チャック2を回転させるための回転機構3とを有している。チャック2の半導体ウエハに対向する対向面2aには、複数のパッド23と複数の支持部25が形成されている。チャック2は、複数のパッド23のそれぞれから気体を噴出することにより、半導体ウエハ5を保持する。複数の支持部25は、チャック2の対向面2aの中心からずれた位置に形成されており、チャック2が半導体ウエハ5を保持しているときに、複数のパッド23は半導体ウエハに接触せず、複数の支持部25は半導体ウエハ5の主面5aに接触する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、前記第1面に形成された複数のパッド、および前記第1面とは反対側の第2面を有するベルヌーイチャックと、
前記ベルヌーイチャックの前記第2面上に配置された、前記ベルヌーイチャックを回転させるための回転機構と、
を含み、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面には、前記第1面の中心からずれた位置に複数の支持部が形成されており、
前記ベルヌーイチャックが前記半導体ウエハを保持しているときに、前記複数のパッドは前記半導体ウエハに接触せず、前記複数の支持部は前記半導体ウエハの主面に接触する、ウエハ保持装置。
【請求項2】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記回転機構が前記ベルヌーイチャックを回転させたときに、前記ベルヌーイチャックに保持される前記半導体ウエハも前記ベルヌーイチャックと一緒に回転する、ウエハ保持装置。
【請求項3】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記複数のパッドのそれぞれから気体を噴出することにより前記半導体ウエハを前記ベルヌーイチャックの前記第1面側に吸引して、前記半導体ウエハを前記複数の支持部に接触させる、ウエハ保持装置。
【請求項4】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記複数の支持部のぞれぞれは、前記ベルヌーイチャックの前記第1面に形成された突起部である、ウエハ保持装置。
【請求項5】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面は円形状である、ウエハ保持装置。
【請求項6】
請求項5記載のウエハ保持装置において、
前記複数の支持部のそれぞれは、前記第1面の中心からの距離が、前記第1面の半径の1/3以上である、ウエハ保持装置。
【請求項7】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面の周辺部に、前記複数のパッドが配置されている、ウエハ保持装置。
【請求項8】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面において、前記複数のパッドのそれぞれは、平面視において前記複数の支持部と前記第1面の縁とによって囲まれている、ウエハ保持装置。
【請求項9】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記複数の支持部は、それぞれ弾性体からなる、ウエハ保持装置。
【請求項10】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記複数の支持部は、それぞれ樹脂材料からなる、ウエハ保持装置。
【請求項11】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面において、前記複数の支持部は、前記第1面の中心に対して対称な位置に配置されている、ウエハ保持装置。
【請求項12】
請求項11記載のウエハ保持装置において、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面において、前記複数のパッドは、前記第1面の中心に対して対称な位置に配置されている、ウエハ保持装置。
【請求項13】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面には、在荷センサが設けられている、ウエハ保持装置。
【請求項14】
請求項1記載のウエハ保持装置において、
前記ベルヌーイチャックに保持される前記半導体ウエハの前記主面に付与されている識別情報を読み取るための第1画像センサを更に含む、ウエハ保持装置。
【請求項15】
請求項14記載のウエハ保持装置において、
前記第1画像センサは、前記ベルヌーイチャックに保持される前記半導体ウエハのノッチまたはオリエンテーションフラットを検出するためにも用いられる、ウエハ保持装置。
【請求項16】
請求項14記載のウエハ保持装置において、
前記ベルヌーイチャックに保持される前記半導体ウエハのノッチまたはオリエンテーションフラットを検出するための第2画像センサを更に含む、ウエハ保持装置。
【請求項17】
請求項1記載のウエハ保持装置を用いたOCR工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a)ベルヌーイチャックにより半導体ウエハを保持した状態で、前記半導体ウエハのノッチまたはオリエンテーションフラットを検出する工程、
(b)前記(a)工程後、前記ベルヌーイチャックを回転させることで、前記ベルヌーイチャックに保持される前記半導体ウエハも前記ベルヌーイチャックと一緒に回転させる工程、
(c)前記(b)工程後、前記ベルヌーイチャックにより前記半導体ウエハを保持した状態で、前記半導体ウエハに付与されている識別情報を読み取る工程、
を含み、
前記ベルヌーイチャックは、前記半導体ウエハと対向する第1面、前記第1面に形成された複数のパッド、および前記第1面とは反対側の第2面を有し、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面には、前記第1面の中心からずれた位置に複数の支持部が形成されており、
前記(a)、(b)および(c)工程では、前記複数のパッドのそれぞれから気体を噴出することにより前記半導体ウエハを前記ベルヌーイチャックの前記第1面側に吸引し、前記複数のパッドは前記半導体ウエハに接触しないが前記複数の支持部は前記半導体ウエハの主面に接触した状態で前記半導体ウエハを保持する、半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、
(d)前記(c)工程後、前記半導体ウエハに半導体素子を形成する工程、
を更に含む、半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、
前記ベルヌーイチャックの前記第1面の周辺部に、前記複数のパッドが配置されており、
前記複数の支持部のそれぞれは、前記第1面の中心からの距離が、前記第1面の半径の1/3以上である、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ保持装置および半導体装置の製造方法に関する。特に、半導体装置の製造方法については、半導体ウエハに対するOCR工程を含む半導体装置の製造方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-195346号公報(特許文献1)には、ベルヌーイチャックを利用したウェット処理装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その直径が大きく、且つ、その厚さが薄い半導体ウエハを搬送するには、ベルヌーイチャックを用いることが適している。しかし、ベルヌーイチャックで保持した半導体ウエハを回転させることは難しい。このため、半導体ウエハを回転させるには、ベルヌーイチャックで搬送された半導体ウエハを、ベルヌーイチャックではない接触型のチャック(真空チャック)で保持し直すことが考えられる。しかしながら、その場合は、半導体ウエハの回転を伴う工程に要する時間が長くなったり、あるいは、ベルヌーイチャックから別のチャックに半導体ウエハを保持し直す際に半導体ウエハの破損(欠けなど)が生じる懸念がある。このため、半導体ウエハをベルヌーイチャックで搬送するだけでなく、ベルヌーイチャックで保持した半導体ウエハを回転させることもできるようにすることが、望まれる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、ウエハ保持装置は、互いに反対側に位置する第1面および第2面を有するベルヌーイチャックと、前記ベルヌーイチャックを回転させるための回転機構と、を含む。前記ベルヌーイチャックの前記第1面には、複数のパッドと複数の支持部が形成されている。前記ベルヌーイチャックは、前記複数のパッドのそれぞれから気体を噴出することにより、半導体ウエハを保持する。前記複数の支持部は、前記ベルヌーイチャックの前記第1面の中心からずれた位置に形成されており、前記ベルヌーイチャックが半導体ウエハを保持しているときに、前記複数のパッドは前記半導体ウエハに接触せず、前記複数の支持部は前記半導体ウエハの主面に接触する。
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置の製造方法は、(a)ベルヌーイチャックにより半導体ウエハを保持した状態で、前記半導体ウエハのノッチまたはオリエンテーションフラットを検出する工程、(b)前記(a)工程後、前記ベルヌーイチャックを回転させることで、前記ベルヌーイチャックに保持される前記半導体ウエハも前記ベルヌーイチャックと一緒に回転させる工程、を含む。半導体装置の製造方法は、更に、(c)前記(b)工程後、前記ベルヌーイチャックにより前記半導体ウエハを保持した状態で、前記半導体ウエハに付与されている識別情報を読み取る工程、を含む。前記ベルヌーイチャックの前記半導体ウエハと対向する第1面には、複数のパッドと複数の支持部が形成されている。前記複数の支持部は、前記ベルヌーイチャックの前記第1面の中心からずれた位置に形成されている。前記(a)、(b)および(c)工程では、前記複数のパッドのそれぞれから気体を噴出することにより前記半導体ウエハを前記ベルヌーイチャックの前記第1面側に吸引し、前記複数のパッドは前記半導体ウエハに接触しないが前記複数の支持部は前記半導体ウエハの主面に接触した状態で前記半導体ウエハを保持する。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、ベルヌーイチャックに保持した半導体ウエハを的確に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施の形態のウエハ保持装置を示す模式図である。
【
図2】
図1のウエハ保持装置装置を構成するチャックの平面図である。
【
図3】
図2に示されるチャックの一部を拡大した部分拡大平面図である。
【
図4】
図2に示されるチャックの要部断面図である。
【
図5】半導体ウエハを保持した状態でのチャックの要部断面図である。
【
図6】OCR工程を行っているときのウエハ保持装置を示す模式図である。
【
図7】チャックに保持された半導体ウエハの平面図である。
【
図9】OCR工程に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図10】
図9に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図11】
図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図12】
図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図13】
図12に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図14】
図13に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図15】OCR工程を行っているときの変形例のウエハ保持装置を示す模式図である。
【
図16】OCR工程を行っているときの変形例のウエハ保持装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0011】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0012】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0013】
<検討の経緯>
その直径が大きく、且つ、その厚さが薄い半導体ウエハを搬送するには、ベルヌーイチャックを用いることが適している。その直径が大きく、且つ、その厚さが薄い半導体ウエハは、反りが発生しやすいが、ベルヌーイチャックを用いた場合は、ベルヌーイチャックに半導体ウエハを密着させる必要がないため、半導体ウエハに反りが生じていたとしても、半導体ウエハをベルヌーイチャックに保持することができる。しかしながら、ベルヌーイチャックを用いた場合には、ベルヌーイチャックに保持した半導体ウエハを回転させることは難しい。なぜなら、ベルヌーイチャックを用いた場合には、半導体ウエハとベルヌーイチャックとが接触しないため、ベルヌーイチャックに保持した半導体ウエハに回転力を付与することが難しいからである。
【0014】
このため、半導体ウエハを回転させることが要求される半導体ウエハのOCR工程を行うには、ベルヌーイチャックで搬送された半導体ウエハを、ベルヌーイチャックではない接触型のチャック(真空チャック)で保持し直した後で、半導体ウエハの回転を伴うOCR工程を行うことが考えられる。しかしながら、その場合は、ベルヌーイチャックを用いて搬送された半導体ウエハを、ベルヌーイチャックではない接触型のチャックで保持し直すことに起因して、OCR工程に要する時間が長くなったり、あるいは、半導体ウエハの破損(欠けなど)が生じる懸念がある。また、その直径が大きく、且つ、その厚さが薄い半導体ウエハは、反りが発生しやすいが、OCR工程でベルヌーイチャックではない接触型のチャックを用いた場合は、反りが生じている半導体ウエハはチャックで保持しにくいので、OCR工程の工程管理が難しくなる。
【0015】
そこで、本発明者は、ウエハ保持装置として、例えばOCR工程で使用する文字認識装置にベルヌーイチャックを採用するとともに、ベルヌーイチャックで半導体ウエハを保持した状態でも、半導体ウエハを的確に回転させることを可能とすることを検討した。
【0016】
<文字認識装置>
図1は、本実施の形態のウエハ保持装置として文字認識装置1を示す模式図(断面図)である。
図2は、文字認識装置1のチャック2を
図1の矢印YG1の方向から見たときのチャック2の平面図である。
図3は、
図2の一部を拡大した部分拡大平面図である。
図4は、
図3のA-A線の位置でのチャック2の要部断面図である。
図5も、
図4と同じ位置でのチャック2の要部断面図であるが、チャック2が半導体ウエハ5を保持した状態の断面図が示されている。
図6は、OCR工程を行っているときの文字認識装置1を示す模式図(断面図)である。
図6では、文字認識装置1を構成するチャック2に半導体ウエハ5が保持されている。
図7は、チャック2に保持された半導体ウエハ5を
図6の矢印YG2の方向から見たときの半導体ウエハ5の平面図である。
図7では、理解を簡単にするために、半導体ウエハ5を透視したときのチャック2、在荷センサ21、パッド23および支持部25の位置を点線で示してある。
【0017】
図1~
図7に示されるように、文字認識装置(ウエハ保持装置)1は、半導体ウエハ(半導体基板)5を保持するためのチャック(ベルヌーイチャック、ウエハチャック、ウエハ保持部)2と、チャック2を回転させるための回転機構(回転装置)3と、チャック2および回転機構3の移動を可能とするアーム部4と、を有している。文字認識装置1は、半導体ウエハ5の保持と、保持する半導体ウエハ5の回転とが可能なウエハ保持装置として機能することができる。
【0018】
チャック2は、ベルヌーイチャックである。チャック2は、半導体ウエハ5を保持したときに半導体ウエハ5に対向する面2a(以下、対向面2aと称する)と、対向面2aとは反対側の面2bと、を有している。チャック2の対向面2aは、チャック2が回転するときの回転軸方向に対して、略垂直である。半導体ウエハ5は、互いに反対側に位置する主面5aおよび主面5bと、主面5aと主面5bとをつなぐ側面5cと、を有している。チャック2が半導体ウエハ5を保持した際には、チャック2の対向面2aと半導体ウエハ5の主面5aとが互いに対向する。従って、チャック2の対向面2aは、半導体ウエハ5を保持する面(ウエハ保持面)とみなすこともできる。
【0019】
チャック2の面2b上に回転機構3が配置されている。回転機構3は、チャック2を回転させる機能を有しており、例えばロータリーアクチュエータである。回転機構3は、本体部3aと回転軸3bとを有しており、チャック2は回転機構3の回転軸3bに取り付けられている。回転機構3の本体部3aは、アーム部4に取り付けられている。回転機構3は、本体部3aに対して回転軸3bを回転させることができ、従って、回転軸3bに取り付けられたチャック2も回転軸3bと一緒に回転させることができる。アーム部4は、アーム部4を水平方向および上下方向に移動させることにより、チャック2および回転機構3を水平方向および上下方向に移動させることができる。
【0020】
文字認識装置1は、文字認識装置1の動作を制御する制御部6も有している。制御部6は、例えば、制御用の半導体装置(プロセッサ)と記憶用の半導体装置(メモリ)などを含んでいる。
【0021】
チャック2は、アーム部4に対して回転可能に取り付けられている。具体的には、チャック2には、中空シャフト(中空経路)11が連結されており、中空シャフト11がスリップリング12を介してアーム部4に連結されている。回転機構3は、中空シャフト11の周囲に配置されており、中空シャフト11を囲んでいる。中空シャフト11は、回転軸3bおよびチャック2と一緒に回転する。中空シャフト11は、筒状の形状を有しており、内部が空洞となっている。チャック2に気体を供給するための配管13は、中空シャフト11内を通過し、更にスリップリング12内を通過しており、配管13の一方の端部は、アーム部4内の配管14と、ロータリージョイント15を介して接続されている。配管13とアーム部4内の配管14との間にロータリージョイント15が介在しているため、チャック部2が回転することに伴って配管13が回転しても、アーム部4内の配管14から配管13への気体の供給は可能である。
【0022】
チャック2は、在荷センサ21を有している。在荷センサ21は、チャック2の対向面2aに設けられている。在荷センサ21により、チャック2の対向面2aに対向する位置に半導体ウエハ5があるか無いかを検出することができる。
【0023】
在荷センサ21に電気的に接続された配線16は、チャック2内および中空シャフト11内を通過し、スリップリング12を介して、アーム部4に設けられている配線17と電気的に接続されている。スリップリング12は、中空シャフト11とアーム部4との間に配置されている。チャック2および中空シャフト11が回転しても、配線16と配線17とのスリップリング12を介した電気的接続は維持される。
【0024】
配管13は、チャック2内の流路(気体の流路)22に接続されており、アーム部4内の配管14から配管13へ供給された気体は、チャック2内の流路22に供給される。アーム部4内の配管14から配管13を介してチャック2の流路22に供給される気体は、好ましくは空気であり、より好ましくは圧縮空気である。
【0025】
チャック2の対向面2aには、複数のパッド(サイクロンパッド)23と複数の支持部(突起部、保持部)25とが設けられている。各パッド23は、気体を噴出することにより半導体ウエハ5を引き上げて(吸引して)保持する機能を有している。支持部25は、チャック2が半導体ウエハ5を保持する際に、半導体ウエハ5の主面5aに接触する部位である。
【0026】
各パッド23は、気体噴出口であるノズル24を有しており、そのノズル24から気体を噴出して旋回流を発生させることができる。具体的には、各パッド23は円筒形状を有し、その円筒形状の内部側面(内壁)または内部底面にノズル24が設けられている。ノズル24は、例えば環状に形成されている。ノズル24から噴出する気体は、配管13から流路22に供給された気体であり、好ましくは空気であり、より好ましくは圧縮空気である。
【0027】
配管13からチャック2内の流路22に供給された気体は、流路22を通って各パッド23のノズル24から噴出する。各パッド23のノズル24から噴出した気体は、パッド23を構成する円筒形状の内部で旋回流となり、真空を発生させる(いわゆるサイクロン効果)。各パッド23のノズル24から噴出した気体は、チャック2の対向面2aと半導体ウエハ5との間から大気中に放出される。その結果、パッド23と半導体ウエハ5との間には気体層が発生し、パッド23と半導体ウエハ5とが接触することなく、半導体ウエハ5をパッド23に近づく方向に引き上げて保持することができる。パッド23が気体を噴出することにより生じたサイクロン効果とベルヌーイ効果とにより、半導体ウエハ5がチャック2の対向面2a側に引き上げられて(吸引されて)保持される。
【0028】
チャック2の対向面2aに設けられた支持部25は、チャック2の対向面2aから突出している。すなわち、支持部25は、チャック2の対向面2aに形成された突起部である。支持部25の高さH1は、パッド23の高さH2よりも高い(H1>H2、
図4参照)。すなわち、支持部25の先端の高さ位置は、パッド23の最頂部の高さ位置よりも高い。ここで、チャック2が半導体ウエハ5を保持した際に、半導体ウエハ5に近づく側を、高さが高いものとし、半導体ウエハ5から遠ざかる側を、高さが低いものとする。
【0029】
図5および
図6からも分かるように、各パッド23のノズル24から気体を噴出することでチャック2が半導体ウエハ5を保持している間、各パッド23と半導体ウエハ5とは接触しないが、各支持部25の先端は、半導体ウエハ5と接触する。このため、パッド23のノズル24から気体を噴出することでチャック2が半導体ウエハ5を保持している間、各支持部25の先端が半導体ウエハ5と接触できるように、各支持部25の高さH1を設定しておく。
【0030】
各パッド23のノズル24から気体を噴出することでチャック2が半導体ウエハ5を保持している間、各パッド23と半導体ウエハ5とは接触しないが、各支持部25の先端は、半導体ウエハ5の主面5aと接触する。各支持部25の先端が半導体ウエハ5の主面5aと接触することにより、回転機構3がチャック2を回転させたときに、半導体ウエハ5の主面5aと接触する支持部25が、半導体ウエハ5に回転力を付与し、チャック2と一緒に半導体ウエハ5を回転させることができる。一方、パッド23は半導体ウエハ5と接触しないため、半導体ウエハ5は、パッド23のノズル24からの気体の噴出を阻害しない。
【0031】
従って、保持すべき半導体ウエハ5の主面5aがチャック2の対向面2aに対向した状態で、各パッド23のノズル24から気体を噴出させることにより、半導体ウエハ5をチャック2の対向面2aに近づく方向に引き上げて、半導体ウエハ5の主面5aが支持部25の先端に接触した状態とし、その状態で半導体ウエハ5を保持することができる。そして、回転機構3がチャック2を回転させると、支持部25が半導体ウエハ5の主面5aに接触しているため、チャック2と一緒に半導体ウエハ5を回転させることができる。
【0032】
本実施の形態では、チャック2の対向面2aにおいて、チャック2の対向面2aの中心2cからずれた位置に、複数の支持部25が設けられている。ここで、チャック2の対向面2の中心2cとは、チャック2が回転するときの対向面2における回転中心に対応している。
【0033】
支持部25がチャック2の対向面2aの中心2cに設けられた場合には、その支持部25は、チャック2が回転したときに、半導体ウエハ5に対して回転力を付与することができない。一方、チャック2の対向面2aの中心2cからずれた位置に設けられた支持部25は、チャック2が回転したときに、半導体ウエハ5に対して回転力(回転モーメント力)を付与することができる。本実施の形態では、チャック2の対向面2aにおいて、チャック2の対向面2aの中心2cからずれた位置に複数の支持部25が設けられており、それら複数の支持部25が半導体ウエハ5の主面5aに接触している状態でチャック2を回転させることにより、チャック2に保持された半導体ウエハ5を、チャック2と一緒に回転させることができる。
【0034】
このように、支持部25は、チャック2が回転するときに半導体ウエハ5に回転力(回転モーメント力)を付与する機能を有している。チャック2の対向面2aにおいて、支持部25は、対向面2aの中心2cからずれた位置に複数(2つ以上)設けるが、半導体ウエハ5を的確に回転させるためには、対向面2aの中心2cからずれた位置に3つ以上設けることが好ましい。
【0035】
また、チャック2の対向面2aは円形状であることが好ましい。これにより、円形状の半導体ウエハ5をチャック2で効率的に保持することができ、また、チャック2の寸法が不必要に大きくなるのを防止することができる。
【0036】
チャック2の対向面2aの中心2cから支持部25までの距離R1が大きくなるほど、その支持部25は、チャック2が回転したときに半導体ウエハ5により大きな回転力を付与することができる。このため、チャック2の対向面2aの中心2cからの距離R1が、チャック2の対向面2aの半径R2の1/3以上となる位置に、支持部25を設けることが好ましい。すなわち、チャック2の対向面2aにおいて、支持部25とチャック2の対向面2aの中心2cとの間の距離をR1とし、チャック2の対向面2aの半径をR2としたときに、R1≧R2/3が成り立つような位置に、支持部25を設けることが好ましい。これにより、チャック2と一緒に半導体ウエハ5をより的確に回転させることができるようになる。
【0037】
また、チャック2が半導体ウエハ5を保持する際に、半導体ウエハ5が撓んだり、あるいは傾いた場合には、半導体ウエハ5がチャック2のパッド23に接触してしまい、パッド23のノズル24からの気体の噴出を阻害する虞がある。そこで、本実施の形態では、
図2に示されるように、チャック2の対向面2aにおいて、各パッド23を複数の支持部25と対向面2aの縁(外周)とが囲むように、パッド23と支持部25とを配置している。すなわち、チャック2の対向面2aにおいて、複数のパッド23のそれぞれは、平面視において複数の支持部25と対向面2aの縁とによって囲まれている。これにより、チャック2が半導体ウエハ5を保持する際に、半導体ウエハ5がチャック2のパッド23に接触するのを、より的確に防止することができる。その結果、パッド23のノズル24からの気体の噴出が半導体ウエハ5によって阻害されるのを、より的確に防止することができる。
【0038】
なお、本実施の形態において、平面視とは、チャック2の対向面2aに略平行な平面で見た場合に対応している。
【0039】
チャック2が回転したときに、支持部25によって半導体ウエハ5に回転力を付与しやすくなり、また、半導体ウエハ5に不要な力が加わるのを防止しやすくなるという観点では、支持部25を構成する材料として弾性体が好ましく、ゴムであればより好ましい。一方、半導体ウエハ5の保護の観点では、支持部25を構成する材料は、樹脂(樹脂材料)が好ましい。支持部25が樹脂で構成されていれば、支持部25が半導体ウエハ5の主面5aに接触しても、半導体ウエハ5に不要な物質が付着するのを防止しやすくなる。また、それ以外にも、金属などの種々の材料で、支持部25を形成することも可能である。
【0040】
また、支持部25の形状は、例えば円柱状または円筒状などとすることができる。支持部25は、チャック2の対向面2aに接着材などで接着してもよいし、あるいは、ネジなどの固定部材を用いてチャック2の対向面2aに支持部25を固定してもよい。
【0041】
また、支持部25が半導体ウエハ5の主面5aに接触したことによる影響をできるだけ抑制するという観点では、支持部25の平面寸法(平面積)は大きくしすぎない方が望ましい。この観点で、各支持部25の平面寸法(平面積)は、15.7mm2以下が好ましい。ここで、各支持部25の平面寸法とは、平面視における各支持部25の面積に対応している。
【0042】
また、本実施の形態では、支持部25の先端の平面形状は円形状で、パッド23の先端の平面形状はリング状(ドーナツ形状)であるが、他本形態として、支持部25の先端の平面形状を、パッド23のようにリング状(ドーナツ形状)とすることもできる。
【0043】
また、チャック2の対向面2aにおいて、複数の支持部25はバランスよく配置することが好ましい。例えば、
図2にも示されるように、チャック2の対向面2aにおいて、対称(対向面2aの中心2cに対して対称)な位置に複数の支持部25を配置することが好ましい。これにより、チャック2に保持された半導体ウエハ5が撓んだり、あるいは傾いたりするのを、より的確に防止することができる。
【0044】
また、チャック2の対向面2aにおいて、複数のパッド23はバランスよく配置することが好ましい。例えば、
図2にも示されるように、チャック2の対向面2aにおいて、対称(対向面2aの中心2cに対して対称)な位置に複数のパッド23を配置することが好ましい。これにより、チャック2で半導体ウエハ5を、より的確に保持することができる。
【0045】
また、チャック2の対向面2aの周辺部に、複数のパッド23が配置されていることが好ましい。
図2の場合は、複数のパッド23は、チャック2の対向面2aの周辺部において、対向面2aの縁(外周)に沿うようにほぼ等間隔で配置されている。これにより、チャック2で半導体ウエハ5を、より的確に保持することができ、チャック2に保持された半導体ウエハ5が撓んだり傾いたりするのを、抑制または防止しやすくなる。
【0046】
また、本実施の形態では、
図2からも分かるように、チャック2の対向面2aの中心2cの位置には支持部25は設けていない。他の形態として、チャック2の対向面2aにおいて、中心2cからずれた位置だけでなく、中心2cと一致する位置にも支持部25を設けることもできる。すなわち、
図2において、対向面2aの中心2cと一致する位置に支持部25を追加する場合もあり得る。しかしながら、対向面2aの中心2cに配置された支持部25は、半導体ウエハ5に対して回転力を付与することはできない。また、対向面2aの中心2cと一致する位置にも支持部25を配置した場合よりも、対向面2aの中心2cには支持部25を配置しない場合の方が、チャック2に保持される半導体ウエハ5に共振現象が生じにくくなる。このため、対向面2aの中心2cと一致する位置にも支持部25を配置した場合よりも、対向面2aの中心2cには支持部25を配置しない場合の方が、より好ましい。
【0047】
また、支持部25により半導体ウエハ5に的確に回転力を付与できるようにするとともに、チャック2に保持する半導体ウエハ5に共振現象が生じるのをできるだけ抑えるという観点では、対向面2aの中心からの距離が対向面2aの半径R2の1/3未満となるような位置には、支持部25を配置しないことが、より好ましい。また、チャック2に半導体ウエハを的確に保持するという観点で、対向面2aの中心からの距離が対向面2aの半径R2の1/3未満となるような位置には、パッド23を配置しないことが、より好ましい。
【0048】
本実施の形態では、チャック2が半導体ウエハ5を保持した際には、支持部25は、半導体ウエハ5の側面5cではなく、半導体ウエハ5の主面5aに接触している。
【0049】
本実施の形態とは異なり、チャック2の対向面2aにおいて、半導体ウエハ5の側面5cに接触するように、支持部を設けておくことも考えられ、この場合を、以下では検討例と称する。検討例の場合、チャック2を回転させたときに、半導体ウエハ5の側面5cに接触する支持部が、半導体ウエハ5に対して回転力を付与し、半導体ウエハ5を回転させることができる。
【0050】
しかしながら、検討例の場合、半導体ウエハ5の側面5cに接触するように支持部をチャック2の対向面2aに設ける必要があることから、チャック2の平面寸法が半導体ウエハ5の平面寸法よりもかなり大きくなってしまう。これは、チャック2の大型化を招いてしまう。また、チャック2の平面寸法が半導体ウエハ5の平面寸法よりも大きいと、OCR工程でチャック2に保持された半導体ウエハ5のノッチを検出しにくくなる。また、検討例の場合は、半導体ウエハ5の側面5cに支持部を接触させることで、半導体ウエハ5を半導体ウエハ5の側面側から押すような力が働くため、半導体ウエハ5に欠けまたは割れが発生するリスクが高まる。なぜなら、薄い半導体ウエハ5の側面側から半導体ウエハ5を押すような力が働くと、半導体ウエハ5に欠けまたは割れが発生しやすくなるからである。
【0051】
それに対して、本実施の形態では、チャック2の対向面2aに設けた支持部25は、半導体ウエハ5の側面5cではなく半導体ウエハ5の主面5aに接触するようにしているため、チャック2の小型化(小面積化)を図ることができる。例えば、チャック2の平面寸法(平面積)を、半導体ウエハ5の平面寸法(平面積)よりも小さくすることができる。このため、OCR工程でチャック2に保持された半導体ウエハ5のノッチを検出しやすくなる。また、半導体ウエハ5に欠けや割れが発生するリスクを低減することができる。半導体ウエハ5の主面5aに接触する支持部25が半導体ウエハ5の主面5aを押すような力が働いても、半導体ウエハ5に欠けまたは割れが発生するリスクは非常に小さい。このため、本実施の形態では、OCR工程を的確に行うことができ、OCR工程の工程管理が容易になる。
【0052】
また、半導体ウエハ5は、ノッチまたはオリエンテーションフラットを有している(
図7参照)。本実施の形態では、半導体ウエハ5がノッチ31を有している場合について説明するが、半導体ウエハ5がノッチ31の代わりにオリエンテーションフラットを有している場合もあり得る。半導体ウエハ5がノッチ31の代わりにオリエンテーションフラットを有している場合は、本実施の形態の説明において、「ノッチ」を「オリエンテーションフラット」に読み替えればよい。
【0053】
また、半導体ウエハ5は、その主面5bに、印字または刻印などにより付与された情報(識別情報)32を有している(
図7参照)。半導体ウエハ5の主面5bに付与された情報32は、その半導体ウエハ5を識別するためのウエハ識別情報(ウエハ識別番号)である。情報32は、例えば、数字、文字、または記号、あるいはそれらの組み合わせにより構成されている。
【0054】
また、半導体ウエハ5の厚さは、例えば150μm以下である。そのような薄い半導体ウエハ5であっても、チャック2としてベルヌーイチャックを採用しているため、チャック2で的確に保持することができる。半導体ウエハ5の直径は、例えば200mm以上である。
【0055】
また、本実施の形態の文字認識装置1は、画像センサ41および照明(光源)42,43を更に有している(
図6参照)。画像センサ41は、半導体ウエハ5のノッチ31を検出するためと、半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を読み取るためとに用いられる。画像センサ41は、ノッチ31や情報32を識別することが可能な識別部(識別手段)とみなすこともできる。
【0056】
照明42は、画像センサ41が半導体ウエハ5のノッチ31を検出する際に使用され、照明43は、画像センサ41が半導体ウエハ5の情報32を読み取る際に使用される。照明42は、チャック2に保持された半導体ウエハ5の主面5aに対して光を照射することが可能であり、照明43は、チャック2に保持された半導体ウエハ5の主面5bに対して光を照射することが可能である。このため、照明42と照明43とは、光を照射する向きが反対である。
【0057】
<半導体装置の製造工程>
まず、半導体ウエハ5を用意する。
【0058】
用意された半導体ウエハ5に対して種々の工程が施されることにより半導体装置が製造されるが、それに先立って、半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を読み取る工程、いわゆるOCR(Optical Character Recognition/Reader:光学的文字認識)工程を行う。以下に、OCR工程について説明する。
【0059】
<<OCR工程>>
図8は、OCR工程を説明するための説明図(フロー図)である。
図6~
図8を参照してOCR工程を説明する。
【0060】
まず、上述した文字認識装置1のチャック2により、半導体ウエハ5を保持する(
図8のステップS1)。ステップS1では、具体的には、保持すべき半導体ウエハ5の主面5aがチャック2の対向面2aに対向した状態で、チャック2の対向面2aに設けられた複数のパッド23(のノズル24)から気体を噴出させる。これにより、半導体ウエハ5がチャック2の対向面2a側に引き上げられて、半導体ウエハ5の主面5aが支持部25の先端に接触した状態となり、その状態で半導体ウエハ5がチャック2に保持される。それから、制御部6は、アーム部4を動作させることにより、
図6のように、チャック2に保持された半導体ウエハ5の縁(外周)を画像センサ41が検出できるような位置に、チャック2とそれに保持された半導体ウエハ5とを移動させる。
【0061】
次に、チャック2に保持された半導体ウエハ5のノッチ31を画像センサ41により検出する(
図8のステップS2)。具体的には、制御部6は、回転機構3によりチャック2を回転させることにより、チャック2に保持された半導体ウエハ5をチャック2と一緒に回転させる。回転する半導体ウエハ5の輪郭を画像センサ41で連続的に撮影し、画像センサ41が半導体ウエハ5のノッチ31を認識(検出)したら、制御部6は、回転機構3によるチャック2の回転を停止することで、半導体ウエハ5の回転も停止させる。ステップS2でも、上述したように、支持部25の先端は、チャック2に保持された半導体ウエハ5の主面5aに接触しているため、回転機構3がチャック2を回転させることにより、半導体ウエハ5に接触している支持部25が半導体ウエハ5に回転力を付与することで、チャック2と一緒に半導体ウエハ5を回転させることができる。また、ステップS2では、半導体ウエハ5の主面5aの外周部に対して照明42から光44を照射しながら、半導体ウエハ5の輪郭を画像センサ41で撮影する。これにより、半導体ウエハ5の輪郭を画像センサ41が判別しやすくなり、半導体ウエハ5のノッチ31を画像センサ41により的確に検出することができる。ステップS2において、照明42は、チャック2に保持された半導体ウエハ5の主面5aの外周部に対向する位置に配置されている。ステップS2では、照明43からの光の照射は不要である。
【0062】
次に、半導体ウエハ5を所定の角度回転させる(
図8のステップS3)。具体的には、制御部6は、回転機構3によりチャック2を所定の角度回転させることにより、チャック2に保持された半導体ウエハ5もチャック2と一緒に所定の角度回転させる。この際、画像センサ41が半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を読み取ることが可能となるように、半導体ウエハ5を回転させる。半導体ウエハ5の主面5bにおいて、ノッチ31の位置と情報32が付与されている位置との相対的な位置関係は、事前に把握されているため、ステップS2でノッチ31を検出すれば、ステップS3で、画像センサ41が情報32を読み取ることが可能となるような回転位置まで、半導体ウエハ5を回転させることができる。
【0063】
例えば、
図7のように、半導体ウエハ5の主面において、情報32の角度位置とノッチ31の角度位置との差が180°の場合には、ステップS3では半導体ウエハ5を180°回転させればよい。これにより、ステップS3を終了したときの半導体ウエハ5の回転位置は、画像センサ41が半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を読み取ることが可能となるような回転位置となる。ステップS3でも、上述したように、支持部25の先端は、チャック2に保持された半導体ウエハ5の主面5aに接触しているため、回転機構3がチャック2を回転させることにより、半導体ウエハ5に接触している支持部25が半導体ウエハ5に回転力を付与することで、チャック2と一緒に半導体ウエハ5を回転させることができる。
【0064】
次に、画像センサ41を用いて半導体ウエハ5の輪郭を観測し、半導体ウエハ5の水平位置を補正する(
図8のステップS4)。例えば、制御部6は、画像センサ41により半導体ウエハ5の輪郭の頂部の位置を検出し、その頂部の位置が所定の基準位置に一致するように、アーム部4を動作させて、半導体ウエハ5を水平方向に移動させる。アーム部4を動作させてチャック2を水平方向に移動させることにより、チャック2に保持された半導体ウエハ5も水平方向に移動させることができる。
【0065】
次に、半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を、画像センサ41を用いて読み取る(
図8のステップS5)。ステップS5では、半導体ウエハ5の主面5bの外周部に対して照明43から光45を照射しながら、半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を画像センサ41を用いて読み取る。これにより、半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を画像センサ41が判別しやすくなり、情報32を画像センサ41により的確に読み取ることができる。ステップS5において、照明43は、チャック2に保持された半導体ウエハ5の主面5bの外周部に対向する位置に配置されている。このため、照明42と照明43とは、半導体ウエハ5を間に挟んで反対側に配置されている。ステップS5では、照明42からの光の照射は不要である。また、ステップS5では、半導体ウエハ5を回転させる必要は無い。
【0066】
ステップS5で読み取られた情報32に基づいて、半導体ウエハ5を識別することができ、その後の種々の工程で、ステップS5で読み取られた情報32を利用することができる。また、ステップS5で読み取られた情報32を、種々の工程の管理や製造された製品の管理などに用いることもできる。
【0067】
ステップS2、ステップS3、ステップS4およびステップS5は、チャック2の対向面2aに設けられた複数のパッド23(のノズル24)から気体を噴出させることで半導体ウエハ5をチャック2に保持した状態で、行われる。
【0068】
その後、半導体ウエハ5は搬送され、半導体ウエハ5に対して種々の工程が施されることで、半導体装置が製造される。
【0069】
OCR工程では、ステップS2で半導体ウエハ5のノッチ31を検出してから、ステップS3で半導体ウエハ5を所定の角度回転させ、ステップS5で半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を読み取る。準備した複数の半導体ウエハにおけるノッチの位置が常に一定で、かつその位置を事前に把握できていれば、ステップS2で個々の半導体ウエハのノッチの位置を検出する必要は無いが、それを実現することは容易ではない。このため、準備した複数の半導体ウエハのそれぞれに対して、上述したステップS2,S3,S4,S5を行うことが必要となる。すなわち、ステップS5を行う前に、ステップS2やステップS3で半導体ウエハ5を回転させる必要がある。本実施の形態では、チャック2は、パッド23から気体を噴出させることにより、半導体ウエハ5の主面5aが支持部25の先端に接触した状態で半導体ウエハ5を保持するため、チャック2が回転すると、支持部25が半導体ウエハ5に回転力を付与し、チャック2と一緒に半導体ウエハ5を的確に回転させることができる。このため、チャック2が半導体ウエハ5を保持した状態で、ステップS2,S3,S4,S5を行うことができる。これにより、OCR工程に要する時間を短縮することができる。また、OCR工程を的確に行うことができる。また、半導体ウエハに欠けまたは割れが発生するリスクを抑制することができる。また、OCR工程に必要な設備を簡略化することができる。
【0070】
<<OCR工程以降の工程>>
OCR工程以降の半導体装置の製造工程の一例について、
図9~
図14を参照して説明する。
図9~
図14は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0071】
図9に示される半導体基板SBは、例えば、1~10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)であり、上記半導体ウエハ5が半導体基板SBに対応している。
【0072】
半導体基板SBに半導体素子を形成する。以下では、半導体素子としてnチャネル型のMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)が形成される場合を例に挙げて説明する。
【0073】
まず、
図10に示されるように、半導体基板SBの主面に、素子分離領域STを形成する。素子分離領域STは、酸化シリコンなどの絶縁体からなり、STI(Shallow Trench Isolation)法により形成することができる。
【0074】
次に、
図11に示されるように、nチャネル型のMISFETが形成される予定領域において、半導体基板SBにp型ウエルPWをイオン注入法などを用いて形成する。
【0075】
次に、半導体基板SB(p型ウエルPW)上にゲート絶縁膜GFを介してゲート電極GEを形成する。例えば、半導体基板SBの主面(p型ウエルPWの表面)上に、熱酸化法などを用いてゲート絶縁膜GF用の絶縁膜を形成してから、その絶縁膜上に、ゲート電極GE形成用の導電体膜(例えばポリシリコン膜)を形成し、その後、その導電体膜をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、ゲート電極GEを形成することができる。ゲート電極GEの下に残存する絶縁膜(ゲート絶縁膜GF用の絶縁膜)が、ゲート絶縁膜GFとなる。
【0076】
次に、
図12に示されるように、半導体基板SB(p型ウエルPW)におけるゲート電極GEの両側の領域に、n型の不純物をイオン注入することにより、n
-型半導体領域EXを形成する。それから、ゲート電極GEの両側壁上に側壁絶縁膜としてサイドウォールスペーサSWを形成する。その後、半導体基板SB(p型ウエルPW)において、ゲート電極GEとその側壁上のサイドウォールスペーサSWとからなる構造体の両側の領域に、n型不純物をイオン注入することにより、n
+型半導体領域SDを形成する。n
+型半導体領域SDの接合深さは、n
-型半導体領域EXの接合深さよりも深く、n
+型半導体領域SDの不純物濃度は、n
-型半導体領域EXの不純物濃度よりも高い。これにより、MISFETのソース・ドレイン領域(ソースまたはドレイン用の半導体領域)が、n
-型半導体領域EXおよびn
+型半導体領域SDにより、形成される。
【0077】
次に、必要に応じて、これまでのイオン注入で導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う。
【0078】
このようにして、半導体基板SBに半導体素子としてnチャネル型のMISFETが形成される。また、導電型を逆にして、pチャネル型のMISFETを半導体基板SBに形成することもでき、あるいは、nチャネル型のMISFETとpチャネル型のMISFETの両方を半導体基板SBに形成することもできる。また、ここでは、横型のMISFETを半導体基板SBに形成する場合について説明したが、縦型のMISFET、すなわちトレンチゲート型のMISFETを半導体基板SBに形成することもできる。
【0079】
次に、
図13に示されるように、必要に応じて、n
+型半導体領域SDの表面や、ゲート電極GEの上面に、金属シリサイド層SLをサリサイド技術を用いて形成する。
【0080】
次に、
図14に示されるように、半導体基板SBの主面上に、ゲート電極GE、サイドウォールスペーサSWおよび金属シリサイド層SLを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜IL1を形成する。絶縁膜IL1の形成後、絶縁膜IL1の上面をCMP法により研磨するなどして、絶縁膜IL1の上面の平坦性を高めることもできる。
【0081】
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IL1にコンタクトホールを形成する。それから、コンタクトホール内に、接続用の導電体部として、タングステン(W)などからなる導電性のプラグPGを形成する。
【0082】
次に、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上に、配線形成用の絶縁膜IL2を形成する。それから、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて絶縁膜IL2に配線溝を形成し、ダマシン技術を用いて配線溝内に配線M1を形成する。その後、更に上層の配線および絶縁膜が形成されるが、ここではその図示および説明は省略する。
【0083】
その後、半導体基板SBとその上の構造体とを、ダイシング(切断)に個片化することで、半導体チップが得られる。
【0084】
<変形例>
次に、本実施の形態の文字認識装置1の変形例について、
図15および
図16を参照して説明する。
図15および
図16は、OCR工程を行っているときの変形例の文字認識装置1を示す模式図(断面図)であり、上記
図6に対応するものである。但し、
図15は、OCR工程における上記ステップS2を行っているときの文字認識装置1が示されており、
図16は、OCR工程における上記ステップS5を行っているときの文字認識装置1が示されている。
【0085】
上記
図6の場合は、上記ステップS2(ノッチ31の検出)と、上記ステップS5(情報32の読み取り)とは、同じ画像センサ41により行っていた。
【0086】
それに対して、変形例(
図15および
図16)の場合は、上記ステップS2(ノッチ31の検出)は、
図15に示される画像センサ41aにより行い、上記ステップS5(情報32の読み取り)は、
図16に示される画像センサ41bにより行っている。
【0087】
具体的には、検討例(
図15)の場合、上記ステップS2では、回転機構3によりチャック2を回転させることにより、チャック2に保持された半導体ウエハ5をチャック2と一緒に回転させ、回転する半導体ウエハ5の輪郭を画像センサ41aで連続的に撮影する。そして、画像センサ41aが半導体ウエハ5のノッチ31を認識(検出)したら、回転機構3によるチャック2の回転を停止することで、半導体ウエハ5の回転も停止させる。ステップS2では、半導体ウエハ5の主面5aの外周部に対して照明42から光44を照射しながら、半導体ウエハ5の輪郭を画像センサ41aで撮影する。
【0088】
また、検討例(
図16)の場合、上記ステップS5では、具体的には、半導体ウエハ5の主面5bの外周部に対して照明43から光45を照射しながら、半導体ウエハ5の主面5bに付与されている情報32を画像センサ41bを用いて読み取る。
【0089】
上記
図6の場合は、1台の(共通の)画像センサ41によって上記ステップS2(ノッチ31の検出)と上記ステップS5(情報32の読み取り)とを行うことができる。一方、検討例(
図15および
図16)の場合は、上記ステップS2(ノッチ31の検出)を行うための画像センサ41aと上記ステップS5(情報32の読み取り)を行うための画像センサ41bとの両方(すなわち2台の画像センサ)が必要になる。このため、必要な画像センサの数を少なくして、コストを抑制する観点では、上記
図6の場合の方が有利である。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0091】
例えば、OCR工程以外の半導体装置の製造工程において、ウエハ保持装置で保持した半導体ウエハを回転させる必要がある場合には、上述した文字認識装置1の技術思想を適用したウエハ保持装置により、半導体ウエハを保持して回転させることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 文字認識装置
2 チャック
2a 面(対向面)
2b 面
2c 中心
3 回転機構
4 アーム部
5 半導体ウエハ
5a,5b 主面
5c 側面
6 制御部
11 中空シャフト
12 スリップリング
13,14 配管
15 ロータリージョイント
21 在荷センサ
22 流路
23 パッド
24 ノズル
25 支持部
31 ノッチ
32 情報
41,41a,41b 画像センサ
42,43 照明
44,45 光
EX n-型半導体領域
GE ゲート電極
GF ゲート絶縁膜
IL1,IL2 絶縁膜
M1 配線
PG プラグ
PW p型ウエル
SB 半導体基板
SD n+型半導体領域
SL 金属シリサイド層
ST 素子分離領域
SW サイドウォールスペーサ