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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097790
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230703BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214098
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】佐段田 裕平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 徹真
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006BB05
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC01
5H770BA01
5H770BA07
5H770BA09
5H770DA03
5H770DA41
5H770FA04
5H770FA13
(57)【要約】
【課題】平滑用コンデンサに印加される電圧の過剰な変化を簡素な構成で抑制する。
【解決手段】電力変換装置は、整流回路と、インバータ回路と、平滑用コンデンサと、電圧保持回路20と、を備える。整流回路は、交流電源が出力する交流を直流に変換して出力する。インバータ回路は、整流回路が出力する直流を交流に変換して出力する。平滑用コンデンサは、整流回路が出力する直流に含まれる変動を平滑化する。電圧保持回路20は、平滑用コンデンサに対して並列に接続される回路であり、電圧上昇が発生した場合に電力を吸収するとともに電圧低下が発生した場合に電力を出力する電圧保持用コンデンサ21を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源が出力する交流を直流に変換して出力する整流回路と、
前記整流回路が出力する直流を交流に変換して出力するインバータ回路と、
前記整流回路が出力する直流に含まれる変動を平滑化する平滑用コンデンサと、
前記平滑用コンデンサに対して並列に接続される回路であり、電圧上昇が発生した場合に電力を吸収するとともに電圧低下が発生した場合に電力を出力する電圧保持用コンデンサを含む電圧保持回路と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記電圧保持回路は、前記電圧保持用コンデンサに直列に接続された電力出力用ダイオードと、前記電圧保持用コンデンサに直列に接続された電力吸収回路と、を含み、
前記電力出力用ダイオードと前記電力吸収回路が並列に接続されている電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記電力吸収回路は、電力吸収用ダイオードと、ツェナーダイオードと、を逆向きかつ直列に接続した回路である電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記整流回路が出力する直流の定常状態での電圧変動量よりも前記ツェナーダイオードの降伏電圧の方が大きい電力変換装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電力変換装置であって、
前記電力吸収回路は、前記ツェナーダイオードに直列に接続され、前記電圧保持用コンデンサへの突入電流を抑える抵抗器を含む電力変換装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の電力変換装置であって、
前記電圧保持用コンデンサの静電容量は、前記平滑用コンデンサの静電容量よりも大きい電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、主として、交流電源が出力する電力を変換して出力する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電力変換装置は、コンバータ回路と、インバータ回路と、小容量の第1コンデンサと、第2コンデンサと、モータと、を備える。コンバータ回路は、交流電源が出力する電力を整流する。インバータ回路は、複数のスイッチング素子のスイッチング動作により、コンバータ回路の出力を所定の電圧及び周波数の交流に変換して、モータに出力する。第1コンデンサは、複数のスイッチング素子のスイッチング動作により生じる電圧の脈動を平滑する。
【0003】
また、特許文献1の電力変換装置は、第2コンデンサと、スイッチと、スイッチ制御部と、を更に備える。第2コンデンサは、第1コンデンサに対して並列に接続されている。スイッチは、第2コンデンサに対して直列に接続されている。スイッチ制御部は、第1コンデンサに印加される電圧が低くなるタイミングでスイッチを閉じる。これにより、第1コンデンサに印加される電圧が過剰に減少することが抑制される。一方、第1コンデンサの電圧が上昇すると、ダイオードが導通して第2コンデンサに電力が吸収される。これにより、第1コンデンサに印加される電圧が過剰に上昇することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-131446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電力変換装置は、上述した構成により、平滑用コンデンサとしての第1コンデンサに印加される電圧の過剰な変化を抑制する。また、特許文献1とは異なる簡素な構成で、平滑用コンデンサに印加される電圧の過剰な変化を抑制することが望ましい。
【0006】
本出願は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、平滑用コンデンサを含む電力変換装置において、平滑用コンデンサに印加される電圧の過剰な変化を簡素な構成で抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本出願の観点によれば、以下の構成の電力変換装置が提供される。即ち、電力変換装置は、整流回路と、インバータ回路と、平滑用コンデンサと、電圧保持回路と、を備える。前記整流回路は、交流電源が出力する交流を直流に変換して出力する。前記インバータ回路は、前記整流回路が出力する直流を交流に変換して出力する。前記平滑用コンデンサは、前記整流回路が出力する直流に含まれる変動を平滑化する。前記電圧保持回路は、前記平滑用コンデンサに対して並列に接続される回路であり、電圧上昇が発生した場合に電力を吸収するとともに電圧低下が発生した場合に電力を出力する電圧保持用コンデンサを含む。
【発明の効果】
【0009】
本出願によれば、平滑用コンデンサに印加される電圧の過剰な変化を簡素な構成で抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本出願の一実施形態に係る電力変換装置の回路図。
図2】電圧保持回路の回路図。
図3】負荷電力が急峻に変化した場合の従来例と本実施形態での直流部電圧の変化を概念的に示すグラフ。
図4】負荷電力が急峻に変化した場合の従来例と本実施形態での直流部電圧の変化のシミュレーション結果を示すグラフ。
図5】変形例の電圧保持回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本出願の実施形態を説明する。
【0012】
図1に示す電力変換装置1は、交流電源11が出力する交流の電圧及び周波数を変換して、負荷17に出力する。交流とは、周期的に大きさ及び向きが変化する電流又は電圧である。電力変換装置1は、例えば、船舶又は航空機等の移動体、持ち運び可能な小型の機器、又は、工場等に設置される産業機械等に適用できる。ただし、電力変換装置1の適用対象は、上述した例に限定されない。
【0013】
交流電源11は、三相交流を出力する。交流電源11は、商用電源であってもよいし、移動体等に設けられる電源であってもよい。負荷17は、電力を消費して他のエネルギーに変換する。負荷17は、例えば、モータ、照明、又は、加熱器である。なお、交流電源11が出力する交流は、三相交流に限られず、単相交流であってもよい。
【0014】
図1に示すように、電力変換装置1は、高調波フィルタ12と、整流回路13と、直流回路14と、インバータ回路15と、を備える。
【0015】
交流電源11が出力する交流は高調波フィルタ12に入力される。高調波フィルタ12は、リアクトル等で構成された公知のフィルタである。高調波フィルタ12は、交流電源11が出力する交流に含まれる高調波を低減する。高調波とは、交流の基本波の整数倍の周波数成分を有する波である。高調波を低減することにより、交流の波形の歪みを低減できる。高調波フィルタ12は、電力変換装置1の必須の構成要素ではなく省略することもできる。
【0016】
高調波フィルタ12が出力する交流は、整流回路13に入力される。整流回路13は、交流を直流に変換する。直流とは、時間によって流れる方向が変化しない電流又は電圧である。整流回路13は、複数の整流器を備える。整流器は、電流を一方にのみ流し、他方向には流さない素子である。本実施形態の整流器はダイオードであるが、別の整流器を含んでいてもよい。整流回路13は、三相ブリッジ整流回路であり、それぞれの整流器は、ブリッジ接続されている。これにより、交流を直流に変換できる。なお、交流電源11が単相交流を出力する場合、整流回路13として、単相の整流回路が用いられる。
【0017】
直流回路14は、整流回路13が出力する直流が流れる回路である。直流回路14には、電圧保持回路20と平滑用コンデンサ30が並列に配置されている。電圧保持回路20の詳細は後述する。
【0018】
平滑用コンデンサ30は、小容量のコンデンサである。小容量とは、例えば、静電容量が数十μF程度である。つまり、本明細書では、静電容量が1μF以上で100μF以下のコンデンサを小容量のコンデンサと定義する。平滑用コンデンサ30は、例えばフィルムコンデンサ又はセラミックコンデンサであるが、別の種類のコンデンサであってもよい。電力変換装置1の長寿命化のためには、平滑用コンデンサ30は電解コンデンサ以外の種類のコンデンサであることが好ましい。ただし、平滑用コンデンサ30は電解コンデンサであってもよい。整流回路13が出力する直流には、交流を直流に変換する際に生じた電圧の変動が含まれる。この電圧の変動をリップルと称する。平滑用コンデンサ30は、このリップルを除去又は低減して電圧の変動を平滑化する。
【0019】
直流回路14には、インバータ回路15が接続されている。インバータ回路15は、直流回路14から入力された直流を所定の電圧及び周波数に変換する。インバータ回路15は、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を備える。スイッチング素子は、電流が流れる状態と流れない状態を切り替える素子である。インバータ回路15は、コントローラ16が出力する制御信号に応じてスイッチング素子の開閉を切り替えることにより、直流を交流に変換して出力する。本実施形態のインバータ回路15が出力する交流は三相交流であるが、単相交流であってもよい。
【0020】
コントローラ16は、CPU、ROM、RAM等を備えるコンピュータである。CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することで、インバータ回路15を制御する。コントローラ16が出力する制御信号は、インバータ回路15の各スイッチング素子に対して、開閉するタイミングを指示する信号である。
【0021】
次に、図2及び図3を参照して、電圧保持回路20の機能及び構成について説明する。
【0022】
電圧保持回路20は、負荷17に供給される電圧を保持するための回路である。電圧保持回路20と平滑用コンデンサ30は、並列に配置されている。電圧保持回路20が対象とする電圧変動は、上述したリップルではなく、負荷17で必要とされる電力の変動に起因する直流回路14の電圧変動である。以下では、負荷17で必要とされる電力を負荷電力と称する。
【0023】
図3には、負荷電力の変化時における、従来例の直流部電圧の変化が示されている。従来例とは、電圧保持回路20を含まない電力変換装置1である。直流部電圧とは、直流回路14の平滑用コンデンサ30の電圧である。図3の負荷電力のグラフに示すように、時間T1において負荷電力が急峻に上昇している。この場合、交流電源11からの電力供給が間に合わず、かつ、平滑用コンデンサ30は小容量であるため平滑用コンデンサ30に蓄えられている電力では足りないことがある。その結果、直流部電圧が大きく低下し、負荷17の電力需要を賄うことができない可能性がある。
【0024】
また、図3の負荷電力のグラフに示すように、時間T2において、負荷電力が急峻に低下している。この場合、整流回路13が存在することにより、交流電源11まで電力が戻らない。その結果、電力が平滑用コンデンサ30に集中する。平滑用コンデンサ30は小容量であるため、直流部電圧が過剰に上昇し、その結果、平滑用コンデンサ30が破損する可能性がある。
【0025】
電圧保持回路20は、このような負荷電力の急峻な上昇及び低下の両方に対応するために設けられている。
【0026】
図2に示すように、電圧保持回路20は、電圧保持用コンデンサ21と、電力出力用ダイオード22と、電力吸収回路23と、を含む。
【0027】
電圧保持用コンデンサ21は、平滑用コンデンサ30に対して並列に配置されている。電圧保持用コンデンサ21の静電容量は、平滑用コンデンサ30の静電容量よりも大きい。電圧保持用コンデンサ21は、負荷電力の急峻な変化時の直流部電圧を保持する。電圧保持用コンデンサ21は、大容量のコンデンサである。大容量とは、例えば、静電容量が数百μF程度である。つまり、本明細書では、100μFを超過して1000μF以下のコンデンサを大容量のコンデンサと定義する。電圧保持用コンデンサ21は、例えば、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、又は、電解コンデンサである。なお、電圧保持用コンデンサ21が動作する頻度は平滑用コンデンサ30よりも低いため、電圧保持用コンデンサ21が電解コンデンサであっても、電界コンデンサを使用したことによる装置寿命の低下を抑制する事ができる。
【0028】
電力出力用ダイオード22は、電圧保持用コンデンサ21に対して直列に配置されている。電力出力用ダイオード22は、通常のダイオードである。通常のダイオードとは、整流用に用いられるダイオードであり、かつ、電力変換装置1で発生し得る電圧では降伏しないダイオードである。電力出力用ダイオード22は、電圧保持用コンデンサ21から出力される電流を通す向き、言い換えれば電圧保持用コンデンサ21に入力される電流を遮断する向きで配置されている。後述するように、負荷電力が急峻に上昇した場合は、電圧保持用コンデンサ21に保持されている電力が負荷17に出力される。
【0029】
電力吸収回路23は、電圧保持用コンデンサ21に対して直列に配置されている。また、電力出力用ダイオード22と電力吸収回路23は並列に配置されている。電力吸収回路23は、電圧保持用コンデンサ21に電力を吸収させる機能を有する。電力吸収回路23は、電力吸収用ダイオード23aと、ツェナーダイオード23bと、抵抗器23cと、を有する。後述するように、負荷電力が急峻に低下した場合は、負荷から戻った電力が電圧保持用コンデンサ21に蓄えられる。
【0030】
電力吸収用ダイオード23aは、通常のダイオードである。電力吸収用ダイオード23aは、電圧保持用コンデンサ21に吸収される電流を通す向き、言い換えれば電圧保持用コンデンサ21から出力される電流を遮断する向きで配置されている。更に言い換えれば、電力出力用ダイオード22の向きと、電力吸収用ダイオード23aの向きは逆向きである。
【0031】
ツェナーダイオード23bは、電力吸収用ダイオード23aと抵抗器23cの間、言い換えれば電力吸収用ダイオード23aと電圧保持用コンデンサ21の間に配置されている。ツェナーダイオード23bは、電力吸収用ダイオード23aとは逆向きで配置されている。ツェナーダイオード23bは、降伏電圧を超える電圧が掛かると、電流を通す性質を有する。従って、降伏電圧以下の電圧が電力吸収回路23に掛かっても、電力吸収回路23から電圧保持用コンデンサ21には電流は流れない。降伏電圧を超える電圧が電力吸収回路23に掛かると、電力吸収回路23から電圧保持用コンデンサ21に電流が流れる。
【0032】
従って、ツェナーダイオード23bは、定常状態では降伏せず、かつ、負荷電力の急峻な変動時に降伏することが好ましい。つまり、図3の鎖線で囲んだグラフに示すように、定常状態の直流部電圧の変動量をΔVdcとし、ツェナーダイオード23bの降伏電圧をVzとした場合、Vz>ΔVdcが成立することが好ましい。なお、補助電圧とは、電圧保持用コンデンサ21の電圧である。定常状態の直流部電圧の変動量は上述したリップルを含むため、リップルに基づいて定常状態の直流部電圧の変動量を算出できる。また、コントローラ16がインバータ回路15を制御して電流ノイズ抑制制御を行う場合、電流ノイズ抑制制御に起因する変動量を更に考慮することが好ましい。電流ノイズ抑制制御とは、交流電源11が出力する交流に歪みが発生している場合に、歪みを抑制する制御である。つまり、リップルに起因する変動量をΔVrctとし、電流ノイズ抑制制御による変動量をΔVcntとした場合、ΔVdc=ΔVrct+ΔVcntが成立する。ツェナーダイオード23bの降伏電圧は、以上を考慮して決定されることが好ましい。
【0033】
抵抗器23cは、電圧保持用コンデンサ21への突入電流を抑えるための制限抵抗である。
【0034】
次に、電圧保持回路20の動作について詳細に説明する。定常状態では、電圧保持用コンデンサ21に電圧が掛かるため、電圧保持用コンデンサ21に電力が蓄えられる。充電量は、平滑用コンデンサ30の充電電圧のピーク値からツェナーダイオード23bの降伏電圧を引いた値である。また、定常状態では、Vz>ΔVdcが成立しているため、電流ノイズ抑制制御による電圧変動は電圧保持用コンデンサ21に抑制されない。
【0035】
また、時間T1のように負荷電力が急峻に上昇した場合、初めに平滑用コンデンサ30から負荷17に電力が供給され、その結果、平滑用コンデンサ30の電圧よりも電圧保持用コンデンサ21の電圧が高くなる。これにより、電圧保持用コンデンサ21から電力出力用ダイオード22を経由して負荷17に電力が供給される。これにより、直流部電圧の過剰な低下を抑えることができる。
【0036】
また、時間T2のように負荷電力が急峻に低下した場合、直流部電圧が上昇する。補助電圧と降伏電圧の合計よりも、直流部電圧が大きくなった場合、ツェナーダイオード23bが動作することにより、電圧保持用コンデンサ21に電流が流入する。その結果、直流部電圧の過剰な上昇を抑えることができる。
【0037】
ここで、特許文献1の電力変換装置では、第2コンデンサに直列にスイッチを配置し、状況に応じてスイッチを開閉する制御を行う。例えば、モータの負荷電力が急峻に上昇して第1コンデンサに印加される電圧が低下したタイミングでスイッチを閉じることにより、第2コンデンサからモータに電力を供給する。しかし、特許文献1の電力変換装置では、状況に応じてスイッチを開閉する制御が必要となるため、制御が複雑化する。これに対し、本実施形態の電圧保持回路20は、外部から制御を行うことなく、適切なタイミングで電圧保持用コンデンサ21からの電力を出力したり、電圧保持用コンデンサ21で電力を吸収したりすることができる。従って、コントローラ16を用いて電圧保持用コンデンサ21の動作を制御する構成と比較して、コントローラ16の処理を簡素化することができる。
【0038】
図4は、電圧保持回路20を備える本実施形態の回路と、電圧保持回路20を備えない従来の回路と、を用いたシミュレーションの結果を示すグラフである。図4に示すように、負荷電力を急峻に上昇させた場合、本実施形態では、従来例と比較して直流部電圧の低下量が抑えられている。負荷電力を急峻に低下させた場合、本実施形態では、従来例と比較して直流部電圧の上昇量が抑えられている。
【0039】
上述した回路及び素子は一例であり、同一又は類似する機能を有するように回路及び素子を変更してもよい。例えば、図5に示すように、電力吸収回路23を変更することができる。図5に示す変形例の電力吸収回路23は、バイポーラトランジスタ23dをツェナーダイオード23bで駆動する。即ち、バイポーラトランジスタ23dはスイッチング素子として用いられている。ツェナーダイオード23bに降伏電圧を超える電圧が掛かるとバイポーラトランジスタ23dのベースに電流が流れる。その結果、電力吸収用ダイオード23aと電圧保持用コンデンサ21が電気的に接続されて、電圧保持用コンデンサ21に電力を蓄えることができる。バイポーラトランジスタ23dはスイッチ素子であるが、ツェナーダイオード23bにより駆動される構成となっている。つまり、ツェナーダイオード23bが導通した場合にのみ、スイッチ素子としてのバイポーラトランジスタ23dがONとなる。従って、能動的なスイッチを使用しながら、特別な駆動回路や制御が不要である。
【0040】
ツェナーダイオード23bには、定格を超える電流、電圧、又は電力を作用させることができない。従って、電圧保持回路20に作用させる電流等が大きい場合は、図5に示すように、バイポーラトランジスタ23dをツェナーダイオード23bで駆動することが好ましい。
【0041】
以上に説明したように、本実施形態の電力変換装置1は、整流回路13と、インバータ回路15と、平滑用コンデンサ30と、電圧保持回路20と、を備える。整流回路13は、交流電源11が出力する交流を直流に変換して出力する。インバータ回路15は、整流回路13が出力する直流を交流に変換して出力する。平滑用コンデンサ30は、整流回路13が出力する直流に含まれる変動を平滑化する。電圧保持回路20は、平滑用コンデンサ30に対して並列に接続される回路であり、電圧上昇が発生した場合に電力を吸収するとともに電圧低下が発生した場合に電力を出力する電圧保持用コンデンサ21を含む。
【0042】
これにより、負荷電力が急峻に上昇して直流部電圧が低下した場合は電圧保持用コンデンサ21から電力が負荷17に出力される。また、負荷電力が急峻に低下して直流部電圧が上昇した場合は電圧保持用コンデンサ21に電力が蓄えられる。即ち、電力変換装置1は、負荷電力の急峻な上昇と低下の両方に対応できる。
【0043】
本実施形態の電力変換装置1において、電圧保持回路20は、電圧保持用コンデンサ21に直列に接続された電力出力用ダイオード22と、電圧保持用コンデンサ21に直列に接続された電力吸収回路23と、を含む。電力出力用ダイオード22と電力吸収回路23が並列に接続されている。
【0044】
これにより、電圧保持用コンデンサ21から電力を出力する処理と電圧保持用コンデンサ21に電力を蓄える処理とを適切に行うことができる。
【0045】
本実施形態の電力変換装置1において、電力吸収回路23は、電力吸収用ダイオード23aと、ツェナーダイオード23bと、を逆向きかつ直列に接続した電圧保持回路20である。
【0046】
これにより、直流部電圧がツェナーダイオード23bの降伏電圧を超えたとき、言い換えれば負荷電力が急峻に変動したときに電圧保持回路20を動作させることができる。そのため、コントローラ16による制御を行うことなく直流部電圧を保持できる。
【0047】
本実施形態の電力変換装置1において、整流回路13が出力する直流の定常状態での電圧変動量よりもツェナーダイオード23bの降伏電圧の方が大きい。
【0048】
これにより、適切な降伏電圧を有するツェナーダイオード23bを用いて電圧保持回路20を実現できる。
【0049】
本実施形態の電力変換装置1において、電力吸収回路23は、ツェナーダイオード23bに直列に接続され、電圧保持用コンデンサ21への突入電流を抑える抵抗器23cを含む。
【0050】
これにより、電圧保持用コンデンサを保護できる。
【0051】
本実施形態の電力変換装置1において、電圧保持用コンデンサ21の静電容量は、平滑用コンデンサ30の静電容量よりも大きい。
【0052】
これにより、平滑用コンデンサ30の機能に適した容量とすることができる。また、電圧保持用コンデンサ21は、十分な電力を蓄えたり出力したりすることができる。
【0053】
以上に本出願の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0054】
ツェナーダイオード23b、抵抗器23cは必須の構成要素ではなく別の素子に置換又は省略することができる。
【0055】
電圧保持用コンデンサ21と平滑用コンデンサ30の静電容量の大小関係は一例であり、上述した説明とは異なる大小関係であってもよい。
【0056】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0057】
1 電力変換装置
13 整流回路
15 インバータ回路
20 電圧保持回路
21 電圧保持用コンデンサ
22 電力出力用ダイオード
23 電力吸収回路
23a 電力吸収用ダイオード
23b ツェナーダイオード
23c 抵抗器
図1
図2
図3
図4
図5