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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097795
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】圧電振動素子及び圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20230703BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20230703BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H03H9/02 K
H03H9/02 N
H03H9/19 C
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214105
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 正明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信孝
(72)【発明者】
【氏名】楠木 孝男
(72)【発明者】
【氏名】植田 貴博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正彦
(72)【発明者】
【氏名】阿多利 仁
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079CB02
5J079FA24
5J079HA08
5J079HA25
5J108AA04
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108FF03
5J108GG03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】計測温度を圧電体の温度に近づけることが容易化される圧電振動素子及び圧電デバイスを提供する。
【解決手段】水晶素子1は、水晶ブランク3と、2つの励振電極7と、2つの引出電極9と、感温膜11と、を有する。2つの励振電極7は、水晶ブランク3の表面に重なっている。2つの引出電極9は、2つの励振電極7から引き出されている。感温膜11は、励振電極7に重なっている部分を有する。感温膜11は、薄膜サーミスタ等によって構成され、水晶素子1の温度を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と、
前記圧電体の表面に重なっている第1励振電極及び第2励振電極と、
前記第1励振電極及び前記第2励振電極から引き出されている2つの引出電極と、
前記第1励振電極に重なっている部分を有している感温膜と、
を有している圧電振動素子。
【請求項2】
前記圧電体は、板状部を有しており、
前記第1励振電極及び前記第2励振電極は、前記板状部を厚さ方向に挟んで互いに対向している
請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記感温膜は、前記圧電体の表面のうち前記第1励振電極及び前記第2励振電極が重なっている領域とは異なる領域に位置している部分を有している
請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記感温膜は、前記圧電体の表面のうち前記第1励振電極及び前記第2励振電極が重なっている領域とは異なる領域に位置している2つの外部電極を有している
請求項1~3のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記圧電体は、
前記第1励振電極及び前記第2励振電極の少なくとも一部が位置している第1領域部と、
前記圧電体を厚さ方向に見たときに前記第1領域部とは異なる部位であり、前記感温膜の少なくとも一部が位置している第2領域部と、を有しており、
前記第2領域部の厚さが、前記第1領域部の厚さよりも厚い
請求項1~4のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の圧電振動素子と、
前記圧電振動素子を保持しているパッケージと、
を有している圧電デバイス。
【請求項7】
前記圧電振動素子は、前記パッケージの所定面に対向した状態で、前記所定面と前記圧電振動素子との間に介在する接合材によって前記所定面に接合されており、
前記第1励振電極は、前記圧電体の、前記所定面とは反対側の面に位置している
請求項6に記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記圧電振動素子は、前記パッケージの所定面に対向した状態で、前記所定面と前記圧電振動素子との間に介在する接合材によって前記所定面に接合されており、
前記第1励振電極は、前記圧電体の、前記所定面の側の面に位置している
請求項6に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電振動素子、及び当該圧電振動素子を有する圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子及び水晶発振器等の圧電デバイスが知られている(例えば下記特許文献参照)。このような圧電デバイスは、水晶振動素子等の圧電振動素子と、圧電振動素子を保持しているパッケージとを有している。圧電振動素子は、圧電体(例えば水晶ブランク)と、圧電体に重なる2つの励振電極と、2つの励振電極から引き出されている2つの引出電極とを有している。2つの引出電極は、例えば、パッケージが有しているパッドと導電性の接合材によって接合されることによって、パッケージに対する圧電振動素子の実装に寄与する。
【0003】
上記のような圧電デバイスとして、サーミスタ等の感温素子を有しているものが知られている。感温素子が検出した温度は、例えば、温度変化に起因する圧電振動素子の特性変化を補償することに利用される。
【0004】
感温素子は、パッケージに実装されている。例えば、特許文献1では、パッケージは、第1凹部と、当該第1凹部とは反対側に開口する第2凹部とを有している。圧電振動素子は、第1凹部に収容されて、第1凹部の底面に実装される。また、第1凹部は、蓋体によって塞がれて密閉される。感温素子は、チップ型の部品であり、第2凹部に収容されて、第2凹部の底面に実装される。具体的には、感温素子の2つの端子と、第2凹部の底面に位置している2つのパッドとが導電性の接合材によって接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-211340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、計測温度を圧電体の温度に近づけることが容易化される圧電振動素子及び圧電デバイスが提供されることが待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る圧電振動素子は、圧電体と、前記圧電体の表面に重なっている第1励振電極及び第2励振電極と、前記第1励振電極及び前記第2励振電極から引き出されている2つの引出電極と、前記第1励振電極に重なっている部分を有している感温膜と、を有している。
【0008】
本開示の一態様に係る圧電デバイスは、上記圧電振動素子と、前記圧電振動素子を保持しているパッケージと、を有している。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、例えば、計測温度を圧電体の温度に近づけることが容易化される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る水晶素子を示す斜視図。
図2図1の水晶素子を示す他の斜視図。
図3】第1実施形態に係る水晶素子の利用例としての水晶デバイスの分解斜視図。
図4図3のIV-IV線における断面図。
図5】第2実施形態に係る水晶素子を示す斜視図。
図6図5の水晶素子を示す他の斜視図。
図7】第2実施形態に係る水晶素子の利用例としての水晶デバイスの断面図。
図8】第3実施形態に係る水晶素子を示す斜視図。
図9】第4実施形態に係る水晶素子を示す平面図。
図10】第5実施形態に係る水晶素子を示す平面図。
図11】第6実施形態に係る水晶素子を示す平面図。
図12】第7実施形態に係る水晶素子を示す平面図。
図13】第8実施形態に係る水晶素子を示す斜視図。
図14図13のXIV-XIV線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明で用いられる図は模式的なものである。従って、例えば、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。図面同士において同一の部材の寸法比率も一致しない。また、細部の図示が省略されることがあり、一部の形状が誇張されて図示されることがある。ただし、上記は、実際の寸法比率が図面のとおりとされてもよいこと、及び図面から形状及び寸法比率等の特徴が抽出されてよいことを否定するものではない。
【0012】
図面には、便宜上、直交座標系D1-D2-D3を付すことがある。実施形態に係る圧電振動素子及び圧電デバイスは、いずれの方向が上下方向又は水平方向とされてもよい。ただし、便宜上、+D3側を上方とした表現をすることがある。また、平面視又は平面透視は、特に断りが無い限り、D3方向に平行に見ることを指す。
【0013】
相対的に後に説明される態様(実施形態及び変形例)の説明においては、基本的に、先に説明された態様との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項は、先に説明された態様と同様とされたり、類推されたりしてよい。先に説明された態様の説明は、矛盾等が生じない限り、後に説明される態様に援用されてよい。複数の態様において、互いに対応する部材については、便宜上、相違点があっても同一の符号を付すことがある。
【0014】
平面形状の縁部を指す用語としての「辺」は、一般に、多角形の縁部(換言すれば直線)を指すが、実施形態の説明では、便宜上、多角形でなくてもよい形状の縁部(例えば曲線状であってもよい縁部)に用いられることがある。同様に、「長辺」及び「短辺」は、一般に、長方形の辺を指すが、実施形態の説明では、便宜上、長方形以外の縁部に用いられることがある。「平行」は、通常、直線同士の距離が一定である関係を指すが、実施形態の説明では、便宜上、直線でなくてよい線(例えば曲線)同士の距離が一定である関係に用いられることがある。
【0015】
矩形又は矩形状というとき、特に断りが無い限り、角部が面取りされているなど、厳密に正方形又は狭義の長方形でなくてもよいものとする。矩形以外の多角形についても同様である。
【0016】
<第1実施形態>
(水晶素子の概要)
図1は、第1実施形態に係る水晶素子1(圧電振動素子の一例)の斜視図である。図2は、図1とは反対側から水晶素子1を見た斜視図である。
【0017】
水晶素子1は、例えば、交流電圧が印加されることによって振動を生じるものである。この振動は、例えば、一定の周波数で信号強度(例えば電圧及び/又は電流)が振動する発振信号の生成に利用される。換言すれば、水晶素子1は、例えば、水晶振動子又は水晶発振器に含まれるものである。発振信号の周波数は任意である。
【0018】
水晶素子1は、例えば、水晶ブランク3(圧電体の一例)と、水晶ブランク3に重なっている(少なくとも)2つの導体パターン5(図示の例では第1導体パターン5A及び第2導体パターン5Bの2つ)と、を有している。2つの導体パターン5は、互いに短絡されていない。各導体パターン5は、例えば、励振電極7と、励振電極7から引き出されている引出電極9とを有している。すなわち、水晶素子1は、1対の励振電極7と、当該1対の励振電極7と接続されている1対の引出電極9とを有している。
【0019】
1対の引出電極9は、水晶素子1の実装に寄与する。具体的には、例えば、後述する図4に示すように、引出電極9とパッケージ103の第1パッド113とが、導電性の接合材105によって接合されることにより、水晶素子1がパッケージ103に実装される。なお、水晶素子1は、パッケージ103以外の部材(例えば回路基板)に実装されてもよいが、実施形態の説明では、便宜上、パッケージ103に実装されることを前提とした表現をすることがある。パッケージ103を介して1対の引出電極9に交流電圧が印加されると、1対の励振電極7によって水晶ブランク3に交流電圧(電界)が印加される。これにより、水晶ブランク3は振動する。
【0020】
水晶素子1は、さらに、図1に示すように、感温膜11を有している。感温膜11は、温度を計測するための素子であり、例えば、薄膜サーミスタ等によって構成されている。感温膜11の位置は任意である。例えば、感温膜11は、1対の励振電極7の少なくとも一方の励振電極7に重なる部分を有している。図示の例では、感温膜11の全体が+D3側の励振電極7に重なっている。なお、感温膜11が励振電極7に重なるという場合、特に断りが無い限り、励振電極7の水晶ブランク3とは反対側の表面に感温膜11が重なっていることを指すものとする。感温膜11によって計測された温度は、例えば、温度変化に起因する水晶素子1(水晶ブランク3)の特性変化を補償することに利用される。
【0021】
このように、本実施形態においては、感温膜11(感温素子)は、パッケージ103に実装されるのではなく、水晶素子1に含まれている。これにより、例えば、感温素子がパッケージ103に実装されている態様(換言すれば水晶素子1と感温素子とが離れている態様)に比較して、水晶ブランク3の温度を直接的に計測できる。ひいては、計測した温度が水晶ブランク3の温度に追従しやすくなり、温度補償の精度が向上する。また、例えば、チップ型の感温素子に代えて感温膜11(膜状の素子)を用いていることから、パッケージ103の小型化に有利であり、また、感温素子の質量が水晶素子1の振動に及ぼす影響も低減される。
【0022】
以上が第1実施形態に係る水晶素子1の概要である。以下において、第1実施形態の説明は、概略、下記の順に行う。
1.水晶素子1の本体(感温膜11を除く部分。図1及び図2
1.1.水晶素子1の本体の構成の概要
1.2.水晶素子1の本体の構成要素の形状、寸法及び材料の例
2.感温膜11(図1
2.1.感温膜11の構成の概要
2.2.感温膜11の構成と図面との対応関係
2.3.感温膜11の位置、形状及び寸法
2.4.外部電極11b(後述)の位置、形状及び寸法
3.水晶素子1の利用例(図3及び図4
4.第1実施形態についてのまとめ
【0023】
(1.水晶素子の本体(感温膜以外の部分))
(1.1.水晶素子の本体の構成の概要)
図示の例では、水晶素子1は、いわゆるATカット型の水晶素子とされている。ATカット型の水晶素子1において、水晶ブランク3は、概略、板状の形状を有している。換言すれば、水晶ブランク3は、水晶素板である。1対の励振電極7は、板状の水晶ブランク3の第1面3a及び第2面3bに重なっている。第1面3a及び第2面3bは、板形状の最も広い面(主面)であり、別の表現では、板形状の表裏の面である。1対の引出電極9は、例えば、1対の励振電極7から水晶ブランク3の一端側(-D1側)へ引き出されている。
【0024】
ATカット型においては、1対の励振電極7によって水晶ブランク3に交流電圧が印加されることによって、いわゆる厚み滑り振動が生じる。既述のように、水晶素子1は、1対の引出電極9が接合材105によってパッケージ103に接合されることによって実装される。このとき、水晶素子1は、例えば、パッケージ103によって片持ち梁状に支持される。
【0025】
図示の例以外の水晶素子としては、例えば、以下のものを挙げることができる。屈曲振動を利用する音叉型の素子。輪郭すべり振動を利用するCTカット若しくはDTカットの素子。厚み滑り振動を利用する、ATカット以外のカット角(例えばBTカット)の素子。なお、このような素子も、例えば、圧電体(例えば水晶)と、当該圧電体を励振する2つの励振電極と、当該2つの励振電極から引き出される2つの引出電極と、を有している。
【0026】
上記の例示から理解されるように、水晶素子(水晶ブランク)の形状は、板形状に限定されず、種々の形状とされてよい。例えば、音叉型の水晶ブランクは、基部と、基部から互いに並列に延びる1対の振動用の腕とを有している。各腕には、2以上の励振電極が位置する。基部は、1対の振動用の腕それぞれを片持ち梁状に支持することに寄与する。2つの引出電極は、例えば、基部及び/又は基部から延びる実装用の腕に位置しており、接合材105によってパッケージ103に接合される。
【0027】
種々の形状(板形状を含む。)の水晶素子は、例えば、全体として、薄型の形状とされてよく、別の観点では、厚さ方向(図示の例ではD3方向)を概念できる形状とされてよい。厚さ方向の寸法は、当該厚さ方向に直交するとともに互いに直交する方向(図示の例ではD1方向及びD2方向)の寸法よりも小さい。そして、薄型の水晶素子は、例えば、パッケージ103の後述する第1基板面111c(換言すれば所定面)に対向するようにしてパッケージ103に実装されてよい。この場合において、励振電極によって励振される部位(振動部)が、図示の例と同様に、片持ち梁状に支持されてよい。
【0028】
上記のように、水晶素子が第1基板面111cに対向するようにパッケージ103に実装される態様において、水晶素子は、感温膜11の構成を考慮した全体において、+D3側の面(第1面3a)及び-D3側の面(第2面3b)のいずれを第1基板面111cに対向させることも可能に構成されていてもよいし、そのように構成されていなくてもよい。例えば、水晶素子は、厚さ方向に直交する不図示の対称軸(例えば図示の例ではD1方向に平行な中心線)に関して180°回転対称の構成とされていてもよいし、そのような構成とされていなくてもよい。
【0029】
なお、本実施形態の説明では、便宜上、特に断り無く、水晶素子1がATカット型のものであること、及び/又は水晶ブランク3が水晶素板であることを前提とした表現をすることがある。また、本実施形態の説明では、主として、第1面3a及び第2面3bのうち第2面3bが第1基板面111cに対向する面として想定されている態様を例にとる。
【0030】
また、水晶ブランク3は、エッチングに対する水晶の異方性に起因して、側面等に傾斜面(別の観点では結晶面)を有していることがある。実施形態の説明では、そのような傾斜面の存在については基本的に無視する。寸法等の説明において、厳密性が要求される場合においては、その説明は、合理性を欠いたり、矛盾が生じたりしない限り、傾斜面を無視して適用されてもよいし、傾斜面を考慮して適用されてもよい。例えば、水晶ブランク3のD1方向の長さというとき、当該長さは、第1面3a又は第2面3bの長さ(結晶面を除いた長さ)であってもよいし、平面透視における最大長さ(結晶面を考慮した長さ)であってもよい。
【0031】
(1,2.水晶素子の本体の構成要素の形状、寸法及び材料の例)
図示の例のように、板状の水晶ブランク3と、水晶ブランク3の両方の主面に重なる1対の励振電極7と、1対の励振電極7から引き出される1対の引出電極9とを有する水晶素子1(ATカット型とは限らない。)において、水晶ブランク3、励振電極7及び引出電極9のより具体的な構成(平面形状等)は適宜に設定されてよい。
【0032】
例えば、感温膜11を考慮外としたときに、水晶ブランク3、1対の励振電極7及び/又は1対の引出電極9の形状は、+D3側の面(第1面3a)及び-D3側の面(第2面3b)のいずれを第1基板面111cに対向させることも可能に構成されていてもよいし、そのように構成されていなくてもよい(図示の例)。換言すれば、これらの形状は、厚さ方向に直交する不図示の対称軸(例えばD1方向に平行な中心線)に対して、180°回転対称の形状であってもよいし、そのような形状でなくてもよい。図示の例では、水晶ブランク3及び1対の励振電極7は、180°回転対称の形状であるが、1対の引出電極9は、180°回転対称の形状ではない。
【0033】
また、例えば、水晶ブランク3の平面形状は、矩形状(図示の例)、円形状、楕円形状又は矩形状以外の多角形状とされてよい。また、水晶ブランク3の平面形状は、多角形の任意の数の辺(例えば矩形状の1辺、2辺、3辺又は4辺)を外側に曲線状に膨らませた形状とされてもよい。また、水晶ブランク3の平面形状は、一部に突起又は切欠きを有する形状であってもよい。また、例えば、水晶ブランク3の平面形状は、D1方向を長手方向とする形状(D1方向の最大長さがD2方向の最大長さよりも長い形状)であってもよいし、そのような区別ができない形状であってもよい。
【0034】
また、例えば、水晶ブランク3の厚さは、一定であってもよいし(図示の例)、一定でなくてもよい。後者の例としては、特に図示しないが、以下のものを挙げることができる。1対の励振電極7と重なって励振される中央の領域(メサ部)が、その外周の領域よりも厚い、いわゆるメサ型。上記とは逆に、1対の励振電極7と重なって励振される中央の領域(逆メサ部)が外周の領域よりも薄い、いわゆる逆メサ型。1対の励振電極7と重なって励振される振動部と、当該振動部の縁部の一部(例えば1辺、2辺又は3辺)に隣接し、振動部よりも厚く、1対の引出電極9が位置する固定部と、を有するもの。外周部において外周縁に近づくほど薄くなるベベル型。
【0035】
また、例えば、励振電極7の平面形状は、水晶ブランク3の平面形状(又は上述したメサ部、逆メサ部若しくは振動部の平面形状。本段落において、以下、同様。)に対して、類似する形状であってもよいし(図示の例)、そのような形状でなくてもよい。前者としては、例えば、水晶ブランク3の平面形状-励振電極7の平面形状が、矩形状-矩形状、円形状-円形状、又は楕円形状‐楕円形状である態様を挙げることができる。後者としては、例えば、水晶ブランク3の平面形状-励振電極7の平面形状が、矩形状-円形状、矩形状-楕円形状、又は楕円形状-矩形状である態様を挙げることができる。励振電極7の平面形状が水晶ブランク3の平面形状に類似するか否かに関わらず、水晶ブランク3の平面形状についての既述の説明は、矛盾等が生じない限り、励振電極7の平面形状に援用されてよい。
【0036】
各引出電極9は、例えば、励振電極7から延びる配線部9aと、配線部9aを介して励振電極7と接続されているパッド状の端子部9bとを有している。端子部9bは、パッケージ103に接合される部分であり、配線部9aの幅よりも広い幅を有している。既述のように、図示の例の水晶素子1は、当該水晶素子1の下面がパッケージ103の第1基板面111cに接合されることによってパッケージ103に支持されることが想定されている。従って、各引出電極9は、下面にのみ端子部9bを有している。上記の説明とは異なり、図示の例では、下面の端子部9bは、上面の端子部9bよりも面積(別の観点ではD1方向の長さ)が大きくされていると捉えられてもよい。もちろん、図示の例とは異なり、上面及び下面の双方に同等の大きさの端子部9bが設けられてもよい。
【0037】
配線部9a及び端子部9bの位置、形状及び寸法等は任意である。例えば、図示の例のように水晶素子1が所定方向(ここではD1方向)の一端において片持ち梁状に支持される態様において、配線部9aは、D1方向に平行に延びていてもよいし(図示の例)、D1方向に対して斜めに延びていてもよいし、直線状に延びていてもよいし(図示の例)、屈曲部若しくは湾曲部を有していてもよい。なお、これらのいずれの態様も、配線部9aは、励振電極7から所定方向の第1側(ここでは-D1側)に延びていると捉えられてよい。また、端子部9bは、上面及び下面の少なくとも一方の上記第1側(-D1側)の端部に位置してよい。なお、端部に位置するか否かは、合理的に判断されてよい。例えば、端子部9bの-D1側の縁部が、上面及び下面の少なくとも一方の-D1側の縁部と一致していたり、上面及び下面の少なくとも一方の-D1側の縁部に対して、端子部9bのD1方向の長さの1/2以下の距離で近接していたりする場合は、端子部9bは、端部に位置していると捉えられてよい。
【0038】
水晶素子1の寸法は任意である。ただし、厚み滑り振動を利用する水晶素子1においては、水晶ブランク3の厚さ(本段落においては、特に断りがない限り、励振電極7が重なっている部分における厚さ。)は、発振信号の周波数を決定する因子となっている。例えば、公知のように、ATカットの水晶素子においては、基本的には、f=1.67×n/tの関係が成り立つ。ここで、fは周波数(MHz)、nは利用される振動の次数、t(mm)は厚さである。水晶素子1は、基本波モードを利用するものであってもよいし、オーバートーンモードを利用するものであってもよい。
【0039】
以下に、水晶素子1(又は水晶ブランク3)の寸法の範囲の例を挙げる。水晶素子1の長手方向(D1方向)における長さは、500μm以上1500μm以下とされてよい。水晶素子1の短手方向(D2方向)における長さは300μm以上800μm以下とされてよい(ただし、水晶素子1のD1方向における長さよりも短い。)。水晶素子1の厚さは、5μm以上100μm以下とされてよい。以上は、比較的小型なATカット型の水晶素子1を想定した寸法の範囲の例であるが、他の種々の水晶素子の寸法の例として参照されても構わない。
【0040】
導体パターン5の材料は、例えば、金属とされてよい。金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)若しくは銀(Ag)又はこれらの少なくとも1つを主成分とする合金を挙げることができる。導体パターン5は、単一の材料からなる1層の導体層によって構成されていてもよいし、互いに異なる材料からなる複数の導体層が積層されて構成されていてもよい。導体パターン5は、例えば、その面積全体に亘って材料の構成が同じであってもよいし、領域によって材料の構成が異なっていてもよい。
【0041】
なお、水晶素子は、種々の構成であってよいこと(例えば水晶ブランク3が板状でなくてもよいこと)を述べた。音叉型の水晶素子から理解されるように、励振電極の数は、2つとは限られず、3つ以上であってもよい。ただし、同電位とされる2以上の励振電極は、1つの励振電極として捉えられてもよい。また、互いに異なる電位が付与される2つの励振電極は、水晶ブランクの厚さ方向の両面に位置するものに限定されず、例えば、少なくとも一方が側面(例えば音叉型の腕の側面)に位置するものであってもよい。別の観点では、2つの励振電極は、水晶ブランクのうちの、互いに異なる方向(例えば反対方向又は互いに交差(例えば直交)する方向)に面している2つの面に位置してよい。引出電極は、より複雑な経路で延びる配線部を含んでいてもよい。
【0042】
(2.感温膜)
(2.1.感温膜の構成の概要)
感温膜11の種類(別の観点では温度の検出原理)は任意であり、例えば、サーミスタ、測温抵抗体、熱電対又はダイオードであってよい。各種の温度センサの具体的な構成も任意である。なお、実施形態の説明では、便宜上、特に断り無く、感温膜11がサーミスタである態様を例に取った表現をすることがある。
【0043】
なお、感温膜11がチップ型の感温素子でないことは、技術常識に基づいて合理的に判断されてよい。例えば、感温膜11は、成膜対象(水晶ブランク3)に重なる1以上の層によって構成されており、一方で、チップ型の感温素子は、パッケージングされている構成が接合材(例えばバンプ)によって実装される。別の観点では、感温膜11の絶対的な厚さ、又は水晶ブランク3の厚さに対する相対的な厚さは、必ずしも極めて薄いことを要しない。
【0044】
特に図示しないが、感温膜11がサーミスタである態様を例に取り、その具体的な構成が種々のものとされてよいことについて述べる。
【0045】
サーミスタは、例えば、基本的な構成要素として、温度により抵抗値が変化する抵抗膜を有している。抵抗膜の材料は、例えば、酸化物(例えば複合酸化物)又は窒化物(例えば複合窒化物)とされてよい。酸化物又は窒化物は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)及びクロム(Cr)の1つ以上を含んでよい。抵抗膜は、例えば、単一の材料からなる1層の膜のみを有していてもよいし、互いに異なる材料からなる2層以上の膜を有していてもよい。また、抵抗膜は、平面視において、その全体に亘って材料の構成が同じであってもよいし、領域によって材料の構成が異なっていてもよい。
【0046】
上記の抵抗膜は、例えば、絶縁膜を介して導体パターン5(例えば励振電極7)に重なっている。なお、抵抗膜は、導体パターン5の非配置領域に位置する部分を有していてもよい。当該部分は、水晶ブランク3の表面に直接的に重なっていてもよいし、導体パターン5に重なる領域と同様に、絶縁膜を介して水晶ブランク3の表面に重なっていてもよい。別の観点では、抵抗膜が導体パターン5の非配置領域に位置する部分を有している態様において、絶縁膜は、抵抗膜の下面全体に重なっていてもよいし、抵抗膜の下面のうち導体パターン5に重なる部分を含む一部にのみ重なっていてもよい。絶縁膜は、例えば、抵抗膜の抵抗率よりも高い抵抗率を有している。
【0047】
絶縁膜の材料は任意であり、例えば、無機材料であってもよいし、有機材料であってもよいし、両者の組み合わせであってもよい。無機材料としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO)及び窒化ケイ素(Si)が挙げられる。有機材料としては種々の樹脂(例えばエポキシ系樹脂又はシリコーン系樹脂)が挙げられる。絶縁膜は、例えば、単一の材料からなる1層の膜のみを有していてもよいし、互いに異なる材料からなる2層以上の膜を有していてもよい。また、絶縁膜は、平面視において、その全体に亘って材料の構成が同じであってもよいし、領域によって材料の構成が異なっていてもよい。
【0048】
また、抵抗膜は、パッケージ103によって構成される空間(別の観点では後述する凹部R1の内部)に露出していてもよいし、絶縁性の被覆膜によって覆われていてもよい。被覆膜は、例えば、抵抗膜の抵抗率よりも高い抵抗率を有している。被覆膜は、種々の目的で設けられてよい。例えば、被覆膜は、抵抗膜又は後述する電極を保護することに寄与してよい。当該保護は、例えば、腐食からの保護の他、水晶素子1の周波数を調整するために励振電極7を削るレーザー光からの保護が挙げられる。また、被覆膜は、抵抗膜を周囲の空間から断熱して、抵抗膜の温度を水晶ブランク3の温度に追従しやすくすることに寄与してもよい。被覆膜の材料は任意である。例えば、前段落における絶縁膜の材料の説明は、被覆膜に援用されてよい。
【0049】
抵抗膜は、適宜な配置及び形状の1対の印加電極によって電圧が印加されてよい。例えば、1対の印加電極は、平面視において抵抗膜の長手方向(又は短手方向)の両端に位置し、抵抗膜に対して長手方向(又は短手方向)に電圧を印加してよい。この態様において、1対の印加電極のうち少なくとも抵抗膜に接続される部分は、抵抗膜の下面(水晶ブランク3側)に重なっていてもよいし、抵抗膜の上面に重なっていてもよい。また、1対の印加電極は、抵抗膜を厚さ方向に挟んで対向し、抵抗膜に対して厚さ方向に電圧を印加してもよい。1対の印加電極は、抵抗膜の上面又は下面に重なるとともに、互いに噛み合っている1対の櫛歯電極であってもよい。
【0050】
なお、印加電極が抵抗膜の下面に重なっている態様において、印加電極が導体パターン5の配置領域に位置する部分を有する場合は、当該部分と、導体パターン5との間には、既述の絶縁膜(又は他の絶縁膜)が介在していてよい。印加電極が抵抗膜の下面に重なっている態様において、印加電極が導体パターン5の非配置領域に位置する部分を有する場合は、当該部分と水晶ブランク3との間には、既述の絶縁膜(又は他の絶縁膜)が介在していてもよいし、介在していなくてもよい。
【0051】
印加電極を例に取ったが、感温膜11が有している他の導体層(後述)についても同様である。すなわち、感温膜11の導体層と導体パターン5との間には、必要に応じて既述の絶縁膜(又は他の絶縁膜)が介在してよい。導体パターン5の非配置領域においては、感温膜11の導体層と水晶ブランク3との間に絶縁膜が介在していてもよいし、介在していなくてもよい。換言すれば、導体層は、水晶ブランク3と絶縁膜を介して重なっていてもよいし、水晶ブランク3に直接的に重なっていてもよい。
【0052】
印加電極の材料は任意である。例えば、印加電極の材料の少なくとも一部は、導体パターン5の材料の少なくとも一部と同じであってもよいし、異なっていてもよい。いずれにせよ、既述の導体パターン5の材料の説明(金属の具体例、異なる材料の層の有無、異なる材料の領域の有無等)は、印加電極の材料の説明に援用されてよい。後述する外部電極11b及び中継導体の材料も同様である。
【0053】
(2.2.感温膜の構成と図面との対応関係)
上記の説明から理解されるように、感温膜11は、種々の構成(例えば、抵抗膜、絶縁膜、被覆膜及び印加電極)を有してよい。図1(並びに他の図面)においては、以下のように、感温膜11の構成が示されている。
【0054】
図1(並びに他の図面)において、感温膜11は、膜本体11aと、1対の外部電極11bとを有している。膜本体11aは、例えば、1対の外部電極11bを介して電圧が印加される。また、別の観点では、膜本体11aは、温度に応じた強度の信号を1対の外部電極11bの少なくとも一方から出力する。
【0055】
膜本体11aは、例えば、上記のサーミスタを例に取った説明から理解されるように、例えば、温度検出に直接的に寄与する機能部(例えばサーミスタでは抵抗膜)と、当該機能部と導体パターン5(例えば励振電極7)との間に介在する絶縁膜とを有していてよい。なお、膜本体11aが導体パターン5と重ならない部分を有している場合においては、当該部分は、絶縁膜を有さず、機能部のみを有していてもよい。また、膜本体11aは、機能膜及び絶縁膜に加えて、被覆膜、印加電極及び/又は次段落で述べる中継導体を有していてもよい。
【0056】
外部電極11bは、例えば、感温膜11がサーミスタである態様を例に取ると、抵抗膜に直接的に電圧を印加する(抵抗膜に直接に接している)印加電極の一部又は全部であってもよいし、印加電極と電気的に接続されている電極であってもよい。後者の態様において、外部電極11bは、例えば、印加電極と一部同士が互いに重なることによって直接的に印加電極と接続されていてもよいし、中継導体(例えば印加電極及び外部電極11bの双方と異なる導体層)を介して間接的に印加電極と接続されていてもよい。
【0057】
また、別の観点では、1対の外部電極11bは、図1において、その全体が示されていると捉えられてもよいし、一部が示されていると捉えられてもよい。後者の場合において、上記一部は、例えば、被覆膜によって覆われている1対の外部電極11bのうち、被覆膜から露出している部分であってよい。また、上記一部は、1対の外部電極11bのうちパッケージ103との接続に寄与する部分が抽出されて(1対の外部電極11bの他の部分も露出しているが、図面では図示が省略されて)示されていると捉えられてもよい。
【0058】
具体例を挙げると、例えば、感温膜11は、既述のように、平面視における所定方向(例えば機能部(抵抗膜)が延びている方向)の両側において機能部に重なる1対の印加電極を有していてよい。この場合において、図示されている1対の外部電極11bは、例えば、1対の印加電極の全体であってもよいし、1対の印加電極のうち一部(露出部分又は抽出部分)であってもよいし、1対の印加電極と直接に又は間接に接続されている1対の端子であってもよい。
【0059】
また、例えば、感温膜11は、既述のように、抵抗膜を厚さ方向に挟んでいる1対の印加電極を有してよい。この場合において、図示されている1対の外部電極11bは、1対の印加電極の一部(露出部分又は抽出部分)であってもよいし、1対の印加電極と直接に又は間接に接続されている1対の端子であってもよい。前者の態様において、1対の外部電極11bは、一方の印加電極の平面視における端部と、他方の印加電極の平面視における端部とであってよい。
【0060】
また、例えば、感温膜11は、既述のように、1対の印加電極として、1対の櫛歯電極を有してよい。図示されている1対の外部電極11bは、1対の櫛歯電極を含む1対の導体パターンの一部(露出部分又は抽出部分)であってもよいし、1対の櫛歯電極と直接に又は間接に接続されている1対の端子であってもよい。より詳細には、1対の櫛歯電極は、例えば、互いに対向する1対のバスバーと、各バスバーから他方のバスバーへ延びる複数の電極指とを有してよい。上記の1対の導体パターンの一部は、例えば、1対のバスバーから延びる部分であってよい。また、上記の1対の端子は、例えば、1対のバスバーに直接又は間接に接続されていてよい。
【0061】
なお、平面視において、感温膜11の形状と1対の櫛歯電極の配置との関係は任意である。例えば、図示の例のように感温膜11の少なくとも一部(図1の例においては3つの直線状部分のそれぞれ)が長手方向及び短手方向を有する形状(本段落において第1形状という。)である場合においては、1対のバスバーが長手方向に延び、複数の電極指が短手方向に延びるように1対の櫛歯電極が配置されてよい。図1の例のように、感温膜11が複数の第1形状を有している態様においては、各第1形状に1対の櫛歯電極が設けられてよい。
【0062】
(2.3.感温膜の位置、形状及び寸法)
感温膜11の位置、形状及び寸法は任意である。なお、感温膜11の位置、形状及び寸法の説明は、矛盾等が生じない限り、膜本体11aの位置、形状及び寸法に援用されてもよい。膜本体11aは、上記のサーミスタの例から理解されるように、例えば、少なくとも機能部(サーミスタでは抵抗膜)を有し、必要に応じて絶縁膜、被覆膜、印加電極及び/又は中継導体を有している。ただし、感温膜11の位置、形状及び寸法の説明は、矛盾等が生じない限り、機能部、又は機能部及びその直上の他の部分の組み合わせの、位置、形状及び寸法に援用されてよい。
【0063】
感温膜11は、例えば、水晶ブランク3の第1面3a(パッケージ103の第1基板面111cとは反対側に面する面)に位置する励振電極7に重なっている。また、感温膜11の平面形状は、例えば、1対の励振電極7(より詳細には上面側の励振電極7)の縁部に沿って延びる形状とされている。別の観点では、感温膜11の平面形状は、励振電極7の所定領域を囲む形状である。所定領域は、例えば、励振電極7の中央側の領域であり、励振電極7の幾何中心を含んでいる。
【0064】
より詳細には、図示の例では、励振電極7の形状は矩形状であり、感温膜11は、励振電極7の4辺(4つの縁部)のうち、3辺に沿って延びている。以下の説明では、感温膜11のうち、励振電極7の各縁部(1辺)に沿う部分をセグメント11sということがある。図示の例では、感温膜11は、3つのセグメント11sを有している。
【0065】
感温膜11がセグメント11sを有する態様において、感温膜11が有するセグメント11sの数は任意である。例えば、励振電極7が矩形状である態様において、セグメント11sの数は、1、2、3又は4であってよい。また、セグメント11sの位置が位置する励振電極7の辺は、任意の辺とされてよい。
【0066】
例えば、感温膜11が1つのセグメント11sを有する態様において、当該セグメント11sは、-D1側、+D1側、-D2側及び+D2側のいずれの辺に位置していてもよい。別の観点では、セグメント11sは、長辺及び短辺のいずれに位置していてもよいし、励振電極7に対して引出電極9の側及びその反対側のいずれに位置していてもよい。
【0067】
また、例えば、感温膜11が2つのセグメント11sを有する態様において、2つのセグメント11sは、互いに連結されてL字状とされてよい。2つのセグメント11sは、励振電極7の4辺のうち任意の2辺に対して位置してよい。
【0068】
また、例えば、感温膜11が3つのセグメント11sを有する態様において、3つのセグメント11sは、互いに連結されてU字(図示の例)とされてよい。3つのセグメント11sは、励振電極7の4辺のうちの任意の3辺に対して位置してよい。例えば、図示の例では、3つのセグメント11sは、2つの長辺と1つの短辺とに位置している。図示の例とは異なり、3つのセグメント11sは、2つの短辺と1つの長辺に位置していてもよい。
【0069】
また、例えば、感温膜11が4つのセグメント11sを有する態様において、4つのセグメント11sは、互いに連結されて環状(枠状)とされていてもよいし、一部が途切れてC字状とされていてもよい。後者の態様において、途切れる位置が位置する辺は任意の辺とされてよい。
【0070】
既述のように、励振電極7の平面形状は矩形状に限定されず、種々のものとされてよい。この場合であっても、例えば、励振電極7において4つ(又は4つ以上)の縁部を概念できる形状においては、上記のセグメント11sの概念を用いて、励振電極7との関係において感温膜11の形状及び大きさを説明できる。そのような励振電極7の形状としては、例えば、矩形の1辺、2辺、3辺又は4辺を外側に膨らむ曲線状にした形状が挙げられる。また、励振電極7の4つの縁部を概念できない場合も、感温膜11が直線状部分の組み合わせであれば、セグメント11sを概念することは可能である。
【0071】
セグメント11sの概念とは異なる概念によって、励振電極7の縁部に沿って延びる感温膜11の長さについて述べる。感温膜11は、例えば、励振電極7の幾何中心回りの角度範囲において、90°以下の範囲に収まっていてもよいし、90°以上180°以下の範囲に収まっていてもよいし、180°以上270°以下の範囲に収まっていてもよいし、270°以上360°以下の範囲に収まっていてもよい。感温膜11が位置する角度範囲の方向は任意である。例えば、感温膜11が位置する角度範囲の中心の方向は、+D1方向、-D1方向、+D2方向又は-D2方向であってよい。
【0072】
感温膜11(セグメント11s)は、例えば、一定の幅で励振電極7の縁部に平行に延びている。図示の例では、励振電極7の4つの縁部のそれぞれは直線状であるから、各セグメント11sは直線状に延びている。ただし、感温膜11(セグメント11s)は、幅が変化していてもよいし、励振電極7の縁部と平行でなくてもよい。例えば、1つのセグメント11s内で幅が変化していてもよいし、励振電極7の曲線状の縁部に沿って延びる感温膜11(又はセグメント11s)が直線状に構成されていてもよい。
【0073】
2以上のセグメント11sは、互いに同様の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。例えば、D2方向に延びるセグメント11sと、D1方向に延びるセグメント11sとは、互いに同一の幅を有していてもよいし、互いに異なる幅を有していてもよい。また、例えば、D2方向に延びるセグメント11sと、D1方向に延びるセグメント11sとは、双方が直線状であってもよいし、一方が直線状であるのに対して他方が曲線状であってもよい。
【0074】
感温膜11(セグメント11s)の幅は任意である。例えば、感温膜11の幅は、励振電極7の最小幅(最小径)に対して、1/10以上、1/5以上又は1/4以上とされてよく、また、1/3以下、1/4以下又は1/5以下とされてよい。上記の下限と上限とは、矛盾が生じないように任意のもの同士が組み合わされてもよい。感温膜11(セグメント11s)の励振電極7の縁部からの距離は任意である。例えば、当該距離は、感温膜11の幅に対して、1倍以下又は1/2以下とされてよく、また、感温膜11の外側の縁部が励振電極7の縁部に略一致してもよい。
【0075】
各セグメント11sの長さは、例えば、励振電極7の対応する縁部(例えば辺)の長さと同等である。例えば、前者の長さ(最大長さ又は中心線における長さ)は、後者の長さの2/3以上又は4/5以上である。感温膜11全体の端部を有しているセグメント11sは、上記よりも短くてもよい。例えば、図示の例において、D1方向に延びるセグメント11sの長さは、励振電極7の長辺の長さに対して半分以下の長さとされてもよい。
【0076】
感温膜11によって囲まれる領域の形状は任意である。例えば、セグメント11sの形状等の説明から理解されるように、感温膜11によって囲まれる領域の形状は、励振電極7の外縁の形状と類似していてもよいし(図示の例)、異なっていてもよい。後者の例としては、励振電極7の外縁及び感温膜11によって囲まれる領域の一方が矩形状(又は矩形状の一部)であって、他方が円形状(又は円形状の一部)である態様が挙げられる。また、例えば、感温膜11によって囲まれる領域の長手方向及び短手方向は、励振電極7の長手方向及び短手方向と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。
【0077】
既述のように、板形状の水晶ブランク3は、メサ部又は逆メサ部を有する構成であってもよい。この場合において、平面視において、励振電極は、メサ部又は逆メサ部に収まっている態様であってもよいし、メサ部又は逆メサ部よりも外側に広がっている態様であってもよい。いずれの態様においても、感温膜11は、メサ部又は逆メサ部に重なっていてよい。また、後者の態様においては、感温膜11は、メサ部又は逆メサ部の周囲に位置していてもよい。換言すれば、感温膜11に囲まれる領域には、メサ部又は逆メサ部が収まっていてもよい。また、いずれの態様においても、感温膜11は、メサ部又は逆メサ部の段差部に跨っていてもよい。
【0078】
感温膜11は、その領域全体に亘って概ね一定の厚さを有していてもよいし、互いに厚さが異なる複数の領域を有していてもよい。感温膜11の上面は、例えば、平面状であってもよいし、曲面状であってもよいし、凹凸を有する形状であってもよい。凹凸を有する形状としては、高さが互いに異なる複数の平面を有する形状が挙げられる。このような形状としては、例えば、抵抗膜及び/又は中継導体の有無がこれらを覆う被覆膜の上面に現れた形状が挙げられる。
【0079】
感温膜11の具体的な厚さは任意である。例えば、感温膜11の最大厚さ又は平均厚さは、水晶ブランク3の最小厚さ、平均厚さ又は最大厚さに対して、1/300以上、1/200以上、1/100以上、1/50以上、1/30以上、1/10以上、1/5以上又は1/2以上であってよく、また、2倍以下、1倍以下、1/5以下、1/10以下又は1/100以下であってよい。上記の下限と上限とは、矛盾が生じないように任意のもの同士が組み合わされてもよい。また、感温膜11の厚さは、例えば、0.05μm以上、0.1μm以上、1μm以上、5μm以上又は10μm以上とされてよく、また、100μm以下、50μm以下又は10μm以下とされてよい。上記の下限と上限とは、矛盾が生じないように任意のもの同士が組み合わされてもよい。
【0080】
また、水晶素子の本体(感温膜11以外の部分)の説明では、水晶素子1が種々の構成であってよいこと(例えば水晶ブランク3が板状でなくてもよいこと)を述べた。図示以外の水晶素子において、感温膜11の位置、形状及び寸法は適宜に設定されてよい。例えば、水晶ブランクが、基部と、当該基部から互いに並列に延びる振動用の1対の腕とを有している音叉型のものである態様において、感温膜11は、例えば、腕において励振電極に重なっていてよい。
【0081】
(2.4.外部電極の位置、形状及び寸法)
図示の例では、1対の外部電極11bは、膜本体11aの配置領域内に位置している。例えば、外部電極11bは、膜本体11aを構成するいずれかの構成要素(例えば、機能部(抵抗膜))に重なっている。ただし、外部電極11bは、膜本体11aの配置領域の外部に位置していてもよい。さらに、引出電極9から理解されるように、外部電極11bは、膜本体11aが位置する面(ここでは第1面3a)とは別の面(側面及び/又は第2面3b)に位置していてもよい(位置する部分を有していてもよい。)。この場合において、外部電極11bは、例えば、水晶ブランク3の側面(図示の例では、-D2側の面、+D2側の面、-D1側の面及び/又は+D1側の面)を経由してよい。また、水晶ブランク3を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている場合は、外部電極11bは、当該貫通孔を経由してもよい。
【0082】
既述のように、膜本体11aの構造は、種々のものとされてよい。例えば、機能部(サーミスタでは抵抗膜)に電圧を印加する印加電極と外部電極11bとの間には両者を電気的に接続する中継導体が介在してよい。さらに、印加電極、中継導体及び外部電極11bの少なくとも2つは、絶縁体を介して立体交差してもよいし、印加電極と外部電極11bとの間に2以上(例えば2層以上)の中継導体が介在してもよい。このことから理解されるように、外部電極11bが膜本体11aの配置領域内に位置する態様においても、外部電極11bの位置、形状及び寸法は、機能部の位置、形状及び寸法に関わらずに、任意の位置、形状及び寸法とすることが可能である。
【0083】
図示の例では、1対の外部電極11bは、感温膜11(又は膜本体11a。以下、矛盾等が生じない限り、本段落及び次段落において同様。)が延びる方向の互いに異なる領域に位置している。ただし、図示の例とは異なり、例えば、1対の外部電極11bは、感温膜11の幅方向において並んでいてもよい。また、図示の例では、1対の外部電極11bは、感温膜11の両端に位置している。図示以外の態様としては、例えば、1対の外部電極11bの少なくとも一方が感温膜11のその延在方向中央に位置する態様、及び1対の外部電極11bの双方が感温膜11の一端に位置する態様が挙げられる。
【0084】
外部電極11bの平面形状は、矩形状(図示の例)又は円形状等の種々の形状とされてよい。また、外部電極11bの寸法も任意である。例えば、上記の位置の説明からも理解されるように、感温膜11の幅方向における外部電極11bの長さは、感温膜11の幅の1/2以上であってもよいし、1/2以下であってもよい。また、感温膜11の長手方向における外部電極11bの長さと、感温膜11の幅方向における外部電極11bの長さとは、いずれが大きくてもよいし、同等であってもよい。
【0085】
(4.水晶素子の利用例)
図3は、水晶素子1の利用例としての水晶デバイス101の分解斜視図である。図4は、図3のIV-IV線における断面図である。
【0086】
水晶デバイス101は、例えば、全体として略直方体形状となっている電子部品である。水晶デバイスの寸法は、適宜な大きさとされてよい。一例を挙げると、長辺又は短辺の長さは、0.6mm以上2.0mm以下であり、上下方向の厚さは、0.2mm以上1.5mm以下である。水晶デバイス101は、例えば、その下面を不図示の実装基体(例えば回路基板)の上面に対向させて表面実装される。
【0087】
水晶デバイス101は、例えば、水晶振動子として構成されている。水晶デバイス101は、例えば、水晶素子1と、当該水晶素子1を保持しているパッケージ103とを有している。パッケージ103は、例えば、水晶素子1の保護に寄与するとともに、水晶素子1と上記の不図示の実装基体との電気的接続に寄与する。
【0088】
パッケージ103は、例えば、水晶素子1を支持する基体107と、基体107に接合されて水晶素子1を封止する蓋体109と、を有している。パッケージ103の内部空間は、例えば、真空とされ、又は適当なガス(例えば、窒素)が封入されている。基体107は、例えば、絶縁部材111と、絶縁部材111に位置している種々の導体とを有している。
【0089】
絶縁部材111は、水晶素子1を収容する凹部R1を有する形状とされている。別の観点では、絶縁部材111は、平板状の基板部111aと、基板部111aの上面の縁部に沿って設けられている枠部111bとを有している。基板部111a及び枠部111bの材料は任意であり、例えば、セラミックである。基板部111aは、凹部R1の底面を構成する第1基板面111cと、水晶デバイス101の底面を構成する第2基板面111dとを有している。
【0090】
基体107が有している導体としては、例えば、以下のものが挙げられる。水晶素子1と電気的に接続される2つの第1パッド113及び2つの第2パッド115。水晶デバイス101を実装基体に実装するための4つの外部端子117。上記の4つのパッド(113及び115)と、4つの外部端子117とを接続する4つの配線導体119。
【0091】
第1パッド113は、接合材105によって引出電極9と接合される。これにより、水晶素子1が固定されるとともに、励振電極7が外部端子117と電気的に接続される。第2パッド115は、ボンディングワイヤ121によって感温膜11の外部電極11bと接続される。これにより、感温膜11が外部端子117と電気的に接続される。
【0092】
第1パッド113及び第2パッド115は、第1基板面111cに重なる導体層(例えば金属)によって構成されている。これらのパッドの位置、形状及び寸法は任意である。例えば、2つの第1パッド113は、基板部111aの長手方向の一端側(-D1側)において、基板部111aの短手方向に並んでいる。2つの第2パッド115は、基板部111aの長手方向の他端側(+D1側)において、基板部111aの短手方向に並んでいる。
【0093】
図示の例では、2つの外部電極11bが励振電極7の-D1側の端部に位置しているのに対して、2つの第2パッド115は、水晶素子1に対して+D1側に位置している。すなわち、両者は比較的離れている。ただし、両者は比較的近い位置に配置されていてもよい。例えば、例えば、図示の例とは異なり、少なくとも1つの第2パッド115は、第1基板面111cの長手方向の中央側に位置していたり、第1パッド113に隣接していたりしてもよい。逆に、2つの外部電極11bは、励振電極7の+D1側の端部に位置していてもよい。
【0094】
外部端子117は、第2基板面111dに重なる導体層(例えば金属)によって構成されている。外部端子117の位置、形状及び寸法は任意である。例えば、4つの外部端子117は、第2基板面111dの4隅に位置している。
【0095】
2つの第1パッド113に接続される2つの外部端子117と2つの第2パッド115に接続される2つの外部端子117との位置関係は任意である。例えば、図示の例のように、前者の2つの外部端子117は、基板部111aの長手方向の一方側(-D1側)に位置し、後者の2つの外部端子117は、基板部111aの長手方向の他方側(+D2側)に位置してよい。また、例えば、前者の2つの外部端子117は、互いに対角に位置し、後者の2つの外部端子117は、互いに対角に位置してよい。
【0096】
配線導体119の構成は種々のものとされてよい。例えば、配線導体119は、基板部111aを貫通するビア導体を有していてもよいし、第1基板面111c、第2基板面111d、基板部111aの内部、及び/又は基板部111aの側面(キャスタレーションの内面を含む)に重なる層状導体を有していてもよいし、ビア導体及び層状導体の双方を有していてもよい。図示の例では、配線導体119は、ビア導体のみによって構成されている。
【0097】
接合材105及びボンディングワイヤ121の材料等は任意である。例えば、接合材105は、導電性接着剤からなる。導電性接着剤は、金属からなるフィラーを混ぜ込んだ熱硬化性樹脂によって構成されている。外部電極11bの位置及び第2パッド115の位置が任意であることから理解されるように、ボンディングワイヤ121の経路は任意である。例えば、ボンディングワイヤ121は、水晶素子1の上面から第1基板面111cへ至る過程において、水晶素子1の+D1側、-D1側、-D2側及び+D2側のいずれを経由してもよい。
【0098】
特に図示しないが、水晶素子1とボンディングワイヤ121との接合位置においては、水晶素子1の下方に水晶素子1を支持する支持部材が位置していてもよい。このような支持部材は、ボンディングワイヤ121と水晶素子1とを接続するときに水晶素子1が傾き過ぎる蓋然性を低減できる。支持部材は、例えば、絶縁性(又は導電性)の接着剤によって構成されていてよく、また、水晶素子1に密着していてもよいし、密着していなくてもよい。
【0099】
蓋体109は、例えば、絶縁体又は金属からなる平板状の部材である。蓋体109の基体107に対する接合方法も任意である。例えば、両者は、シーム溶接によって接合されてよい。図示の例では、シーム溶接に利用される金属層123及び125が図示されている。蓋体109が金属からなり、かつ感温膜11に接続される外部端子117の1つが基準電位用のものである態様においては、当該1つの外部端子117は、不図示の配線導体119を介して蓋体109と接続されてもよい。
【0100】
水晶素子1は、上記の利用例の他、種々の態様で利用されてよい。
【0101】
例えば、水晶素子1を含む水晶デバイス(圧電デバイス)は、水晶素子1に加えて、水晶素子1に電圧を印加して発振信号を生成する集積回路素子(IC:Integrated Circuit)を有する発振器であってもよい。また、水晶デバイスは、水晶素子1及びIC以外の電子素子を備えていてもよい。
【0102】
上記から理解されるように、水晶デバイスが有するパッドの数及び外部端子の数は任意であり、また、複数のパッド及び複数の外部端子の接続関係も任意である。例えば、発振器においては、水晶素子1(引出電極9及び外部電極11b)は、外部端子ではなく、ICに電気的に接続されてよい。
【0103】
圧電デバイスにおいて、水晶素子1をパッケージングするパッケージの構造は、適宜な構成とされてよい。例えば、パッケージは、上面及び下面に凹部を有する断面H型のものであってもよい。この場合、下面の凹部には、例えば、上記のICが実装されてよい。また、パッケージは、基板状の基体(凹部を有していない基体)と、基体に被せられるキャップ状の蓋体とで構成されるものであってもよい。また、例えば、圧電デバイス(パッケージ)は、恒温槽を有するものであってもよい。
【0104】
(4.第1実施形態についてまとめ)
以上のとおり、実施形態に係る圧電振動素子(水晶素子1)は、圧電体(水晶ブランク3)と、第1励振電極(本実施形態では+D3側の励振電極7)及び第2励振電極(本実施形態では-D3側の励振電極7)と、2つの引出電極9と、感温膜11と、を有している。2つの励振電極7は、水晶ブランク3の表面に重なっている。2つの引出電極9は、2つの励振電極7から引き出されている。感温膜11は、第1励振電極に重なっている部分(図示の例では感温膜11の全部)を有している。
【0105】
従って、例えば、既述のように、計測温度を水晶ブランク3の温度に追従させることが容易化される効果、水晶デバイス101の小型化の効果、及び感温膜11の質量が水晶素子1の振動に及ぼす影響の低減の効果が奏される。さらに、感温膜11は、励振電極7に重なっているから、水晶ブランク3のうち振動が意図されている部分(振動部)に(間接的に)重なっていることになる。従って、感温膜11は、水晶ブランク3のうち水晶素子1の電気的特性に及ぼす影響が大きい振動部の温度を計測しやすくなっている。その結果、例えば、計測温度に基づく温度補償の精度が向上する。
【0106】
水晶ブランク3は、板状部(図示の例では水晶ブランク3の全部)を有してよい。板状部は、2つの励振電極7は、板状部を厚さ方向に挟んで互いに対向していてよい。
【0107】
この場合、例えば、励振電極7は、音叉型の腕に位置する励振電極に比較して、長さに対する面積が相対的に大きい。従って、励振電極7に重なる感温膜11の面積を確保することが容易であり、ひいては、感温膜11の平面形状の設計の自由度が高い。別の観点では、励振電極7における感温膜11の非配置領域の設計の自由度が高い。従って、例えば、本実施形態のように、振動の中心を避けて感温膜11を設け、感温膜11の質量が振動に及ぼす影響を低減できる。また、例えば、励振電極7に感温膜11の非配置領域の面積が確保されることによって、周波数調整のために励振電極7を削ることが容易化される。
【0108】
本実施形態に係る水晶デバイス101は、上記のような圧電振動素子(水晶素子1)と、水晶素子1を保持しているパッケージ103と、を有している。これにより、感温膜11を有している水晶素子1による種々の効果が奏される。
【0109】
水晶素子1は、パッケージ103の所定面(第1基板面111c)に対向した状態で、第1基板面111cと水晶素子1との間に介在する接合材105によって第1基板面111cに接合されていてよい。第1励振電極(感温膜11が重なっている励振電極7)は、水晶ブランク3の第1基板面111cとは反対側の面(+D3側の面)に位置している。
【0110】
この場合、例えば、水晶素子1を接合材105によって基体107に固定した後、かつ蓋体109によって凹部R1を塞ぐ前において、周波数調整のために第1面3a上の励振電極7が削られる態様において、励振電極7が削られる領域を感温膜11によって規定することができる。また、例えば、第1面3a上に感温膜11の外部電極11bが位置する態様においては、感温膜11とパッケージ103との電気的接続にボンディングワイヤ121を利用することができる。後述する接合材127(図7)を用いる態様に比較して、感温膜11の電気的接続が水晶素子1の振動に及ぼす影響が低減される。
【0111】
<第2実施形態>
図5及び図6は、第2実施形態に係る水晶素子201を示す斜視図である。これらの図は、第1実施形態の図1及び図2に対応している。
【0112】
第1実施形態に係る水晶素子1においては、感温膜11は、水晶ブランク3の第1面3a(+D3側の面。実装後に基板部111aとは反対側に面する面)に位置していた。これに対して、第2実施形態においては、感温膜11は、第2面3b(-D3側の面)に位置している。その他の事項に関しては、水晶素子201は、基本的に、水晶素子1と同様である。
【0113】
図7は、第2実施形態に係る水晶素子201の利用例としての水晶デバイス101Aを示す断面図である。この図は、第1実施形態の図4に対応している。
【0114】
水晶デバイス101Aでは、水晶素子201の下面に位置している感温膜11(より詳細には図6に示す外部電極11b)と、パッケージ103の第2パッド115とが導電性の接合材127によって接合されている。これにより、感温膜11と外部端子117とが電気的に接続されている。
【0115】
第2パッド115は、少なくとも一部が外部電極11bの少なくとも一部と対向している。外部電極11bは、第1実施形態で述べたように、任意の位置に配置されてよい。従って、第2パッド115及び接合材127の位置も任意である。例えば、第2パッド115は、図示の例のように第1基板面111cの中央に対して第1パッド113側(-D1側)に位置していてもよいし、図示の例とは異なり、第1基板面111cの中央よりも第1パッド113とは反対側(+D1側)に位置していてもよい。なお、図示の例では、第2パッド115が-D1側に位置していることに伴って、第2パッド115に接続される配線導体119は、外部端子117の直上のビア導体だけでなく、当該ビア導体と第2パッド115とを接続する層状導体を有している。
【0116】
接合材127の材料は任意である。例えば、接合材127の材料は、接合材105の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、接合材127の材料は、導電性接着剤であってもよいし、はんだ(鉛フリーはんだを含む)であってもよい。なお、ボンディングワイヤ121(図4)と接合材127との相違に応じて、第2パッド115及び外部電極11bの構成は、第1実施形態と第2実施形態とで異なっていてもよい。
【0117】
既述のように、第1実施形態の水晶素子1は、膜本体11a(例えばその機能部)が水晶ブランク3の第1面3aに位置する一方で、外部電極11bが第2面3bに位置していてもよい。従って、接合材127による接合は、第1実施形態のように第1面3aに膜本体11a(その一部又は全部)を有する構成に適用することも可能である。逆に、ボンディングワイヤ121による接合は、第2実施形態のように第2面3bに膜本体11a(その一部又は全部)を有する構成に適用することも可能である。さらに、一方の外部電極11bにはボンディングワイヤ121を用い、他方の外部電極11bには接合材127を用いるなど、ボンディングワイヤ121及び接合材127を組み合わせることも可能である。
【0118】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素子201は、少なくとも一部が第1励振電極(本実施形態では-D3側の励振電極7)に重なる感温膜11を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0119】
水晶素子201は、パッケージ103の所定面(第1基板面111c)に対向した状態で、第1基板面111cと水晶素子1との間に介在する接合材105(及び/又は接合材127)によって第1基板面111cに接合されていてよい。第1励振電極(感温膜11が重なる励振電極7)は、水晶ブランク3の第1基板面111cの面(第2面3b)に位置する部分を有していてよい。
【0120】
この場合、例えば、水晶素子201の実装後、かつ蓋体109による封止前に、周波数調整のために第1面3a上の励振電極7が削られる態様において、感温膜11が共に削られる蓋然性が低減される。その結果、例えば、感温膜11の機能部(サーミスタでは抵抗膜)が露出している態様において、機能部の特性変化が生じる蓋然性が低減される。別の観点では、機能部を覆う保護膜を設ける必要性が低減される。
【0121】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態に係る水晶素子301を示す斜視図である。この図は、第1実施形態の図1に対応している。
【0122】
水晶素子301は、端的に言えば、第1実施形態と第2実施形態との組み合わせである。すなわち、感温膜11は、第1面3aの励振電極7に重なる部分と第2面3bの励振電極7に重なる部分との双方を有している。また、図示の例では、感温膜11は、上記の2つの部分を接続するために、励振電極7の非配置領域に位置する接続部分も有している。より詳細には、当該接続部分は、第1面3a、第2面3b、並びに水晶ブランク3の側面(-D2側の面、+D2側の面、-D1側の面及び/又は+D1側の面)に位置する部分を有している。
【0123】
2つの外部電極11bのそれぞれは、水晶ブランク3の第1面3a及び第2面3b(並びに側面)のいずれの面上に位置していてもよい。図示の例では、第1実施形態と同様に、2つの外部電極11bの双方が第1面3a上に位置している。ただし、図示の例では、第1及び第2実施形態とは異なり、2つの外部電極11bは、励振電極7の非配置領域に位置している。
【0124】
図示の例とは異なり、例えば、感温膜11は、第1面3a上の部分と第2面3b上の部分とが接続されておらず、それぞれに2つの外部電極11bが設けられていてもよい。また、例えば、膜本体11aの機能部(サーミスタでは抵抗膜)は、第1面3a上の部分と第2面3b上の部分とで接続されておらず、導体は、第1面3a上の部分と第2面3b上の部分とで接続され、2つの外部電極11bのみが設けられていてもよい。また、例えば、水晶ブランク3を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている場合は、当該貫通孔(例えばスリット)を経由して、第1面3a上の部分と第2面3b上の部分とが接続されていてもよい。
【0125】
第1及び第2実施形態の説明は、本実施形態に援用されてよい。感温膜11において、第1面3a及び第2面3bのそれぞれに位置する部分の形状は、種々の形状とされてよい。第1面3aに位置する部分の形状と第2面3bに位置する部分の形状とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。別の観点では、両者は大部分(例えば各部分の面積の8割以上同士)が重なっていてもよいし、大部分が重なっていなくてもよい。
【0126】
感温膜11において、第1面3aの部分と第2面3bの部分とを接続する部分の位置、形状及び寸法も任意である。例えば、平面透視で互いに重複するセグメント11sが設けられている場合においては、セグメント11sの2つの短辺及び1つの長辺(水晶ブランク3の外縁に沿う3辺)のうちの、任意の1つ、2つ又は3つにおいて接続がなされてよい。また、例えば、セグメント11sの長辺の全体に亘って接続がなされたり、当該長辺の一部においてのみ接続がなされたりしてよい。
【0127】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素子301は、少なくとも一部が励振電極7に重なる感温膜11を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0128】
感温膜11は、圧電体(水晶ブランク3)の表面のうち2つの励振電極が重なっている領域とは異なる領域(換言すれば全ての励振電極7の非配置領域)に位置している2つの外部電極11bを有していてよい。
【0129】
この場合、例えば、励振電極7の配置領域において温度を計測しつつ、外部電極11bを励振電極7から離すことができる。外部電極11bが励振電極7から離されることによって、例えば、外部電極11bに接合されるボンディングワイヤ121又は接合材127が励振電極7と短絡される蓋然性が低減される。
【0130】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態に係る水晶素子401を示す平面図である。
【0131】
第1実施形態の説明において、感温膜11のセグメント11sの数及び位置は任意であることを述べた。水晶素子401は、第1実施形態の図面で例示された3つのセグメント11sの配置とは異なる配置で3つのセグメント11sを有している。なお、水晶素子401は、第1実施形態に係る水晶素子の一種として捉えられて構わない。より詳細には、水晶素子401は、引出電極9側の短辺と2つの長辺とに沿う3つのセグメント11sを有している。換言すれば、感温膜11は、少なくとも、引出電極9側の縁部に沿っているセグメント11sを有している。
【0132】
第1実施形態の説明では、2つの外部電極11bの位置が任意であることを述べた。図示の例では、2つの外部電極11bは、感温膜11の全体の両端ではなく、引出電極9側のセグメント11sの両端に位置している。もちろん、2つの外部電極11bは、感温膜11の全体の両端等の他の領域に位置していてもよい。
【0133】
引出電極9は、パッケージ103に固定されるから、水晶ブランク3の振動は、引出電極9側において規制される。従って、感温膜11のうち-D1側の部分(図示の例では-D1側の短辺に対応するセグメント11s)は、励振電極7の中央に対して、本来的に振動が規制される蓋然性が高い側に位置することになる。その結果、感温膜11の質量が水晶ブランク3の振動に及ぼす影響が低減されることが期待される。
【0134】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素子401は、少なくとも一部が励振電極7に重なる感温膜11を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0135】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態に係る水晶素子501を示す平面図である。
【0136】
第5実施形態に係る水晶素子501は、感温膜の形状が第1実施形態と相違する。具体的には、水晶素子501の感温膜511の形状及び/又は寸法は、セグメント11sの概念で捉えることが難しい形状及び/又は寸法となっている。
【0137】
図示の例の感温膜511の形状は、例えば、短手方向の長さに対する長手方向の長さの比(アスペクト比)が1に近い形状であると捉えることができる。例えば、長手方向(ここではD2方向)の長さは、短手方向(ここではD1方向)の長さに対して、2倍以下又は1.5倍以下である。ただし、上記比が2倍程度であっても、感温膜511及び励振電極7の具体的な態様によっては、セグメント11sの概念を用いて位置及び形状を説明できることもある。
【0138】
また、図示の例の感温膜511は、励振電極7の比較的広い面積を占めているとともに、概略、数学で言う凸集合の境界線のような輪郭を有していると捉えることができる。例えば、感温膜511は、(1つの)励振電極7の面積の1/3以上又は2/5以上に重なっていてよい。後述する第6実施形態(図11)から理解されるように、感温膜511は、励振電極7の全体に重なっていてもよく、上限は特に規定されない。ただし、例えば、上限は、2/3以下又は1/2以下とされてもよい。上記の下限と上限とは任意のもの同士が組み合わされてもよい。凸集合の境界線のような形状としては、例えば、矩形状等の凸多角形、円形状及び楕円形状を挙げることができる。感温膜511の形状は、励振電極7の形状と類似していてもよいし、類似していなくてもよい。例えば、特に図示しないが、励振電極7の円形状又は楕円形状であるのに対して、感温膜511の形状は矩形状であってよい。
【0139】
図示の例では、感温膜511は、励振電極7内の2つの引出電極9が位置する側(第1側、-D1側)の領域に位置している。換言すれば、感温膜511の幾何中心は、励振電極7の幾何中心よりも第1側に位置している。また、感温膜511は、励振電極7の第1側(-D1側)の端部に位置する部分を有している。ただし、図示の例とは異なり、感温膜511は、励振電極7内の中央側の領域又は励振電極7内の引出電極9とは反対側の領域に位置していてもよい。
【0140】
既述のように、水晶ブランク3は、メサ部又は逆メサ部を有していてよく、また、平面視においてメサ部又は逆メサ部は、励振電極7の領域に収まっていてもよい。この場合において、感温膜511と、メサ部又は逆メサ部とは、例えば、少なくとも一部同士が重なっていてもよいし、全く重なっていなくてもよい。後者は、図示の例に関して換言すれば、メサ部又は逆メサ部は、感温膜511よりも+D1側に位置していてよい。
【0141】
他の実施形態と同様に、1対の外部電極11bの位置は任意である。図示の例では、1対の外部電極11bは、感温膜511の4隅のうち引出電極9側の2つに位置している。図示の例とは異なり、例えば、1対の外部電極11bは、引出電極9とは反対側の角部に位置していたり、D1方向における感温膜511の中央に位置していたりしてもよい。
【0142】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素子501は、少なくとも一部が励振電極7に重なる感温膜511を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。また、本実施形態では、感温膜511は、アスペクト比が1に近い形状で比較的広い面積が確保されている。従って、例えば、感温膜511の構造が長尺に形成することが困難な構造である態様において有利である。
【0143】
<第6実施形態>
図11は、第6実施形態に係る水晶素子601を示す平面図である。
【0144】
第6実施形態に係る水晶素子601は、感温膜の形状が第1実施形態と相違する。具体的には、水晶素子601の感温膜611は、励振電極7の概ね全体に重なっている。例えば、感温膜611は、(1つの)励振電極7の面積の4/5以上に重なっていてよい。図示の例では、平面透視において、感温膜611は、励振電極7の縁部よりも内側に位置している。ただし、感温膜611の縁部の一部又は全部は、励振電極7の縁部に一致していてもよいし、励振電極7の縁部よりも外側に位置していてもよい。感温膜611の形状は、励振電極7の形状と類似していてもよいし、類似していなくてもよい。例えば、特に図示しないが、励振電極7の平面形状が円形状又は楕円形状であるのに対して、感温膜611の平面形状は矩形状であってよい。
【0145】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素子601は、少なくとも一部が励振電極7に重なる感温膜611を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。また、感温膜611は、励振電極7の概ね全体に重なっているから、感温膜611の面積を確保することが容易である。また、水晶ブランク3の温度が部位によって異なる場合に、振動が意図されている部分の温度の計測精度が向上する。
【0146】
<第7実施形態>
図12は、第7実施形態に係る水晶素子701を示す平面図である。
【0147】
これまでの説明において、感温膜(11等)が励振電極7の非配置領域に位置する部分を有してよいことについて折に触れて述べた。水晶素子701は、そのような部分を有する感温膜の例となっている。図示の例では、感温膜11の平面形状として、第4実施形態の感温膜11の平面形状と同様のものが例示されている。従って、水晶素子701は、第1及び第4実施形態に係る水晶素子の一種として捉えられて構わない。
【0148】
より詳細には、図示の例では、長辺に沿うセグメント11sが、励振電極7に重なっているとともに、水晶ブランク3のうち励振電極7の非配置領域に直接的に重なっている。もちろん、これまでの説明でも折に触れて述べたように、種々の形状の感温膜(11、511又は611等)の種々の部位が水晶ブランク3に直接的に重なってよい。
【0149】
種々の形状の感温膜において、励振電極7に重なる広さと水晶ブランク3に直接的に重なる広さとの相対的な大きさは任意である。例えば、前者は、後者に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。また、例えば、1つのセグメント11sにおいて、励振電極7に重なる幅(図示の例ではD2方向の長さ)は、1つのセグメントの幅に対して、1/2未満であってもよいし、1/2程度であってもよいし、1/2超であってもよい。
【0150】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素子701は、少なくとも一部が励振電極7に重なる感温膜11を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。また、感温膜11は、水晶ブランク3の表面のうち2つの励振電極7(別の観点では全ての励振電極7)が重なっている領域とは異なる領域に位置している部分を有している。この場合、例えば、水晶ブランク3のうち励振が意図されている振動部(励振電極7が重なっている部分)に感温膜11を近づけて計測温度を振動部の温度に近づけつつ、感温膜11の質量が振動部の振動に及ぼす影響を低減するように振動部から離れた位置に感温膜11の面積を確保することができる。
【0151】
<第8実施形態>
図13は、第5実施形態に係る水晶素子801を示す斜視図である。この図は、第1実施形態の図1に対応している。また、図14は、図13のXIV-XIV線における断面図である。
【0152】
水晶素子801は、水晶ブランクの構成が第1実施形態の水晶素子1と相違する。具体的には、水晶素子801の水晶ブランク803は、励振電極7(その少なくとも一部。図示の例では全部。)が位置する第1領域部803cの厚さが、感温膜11(その少なくとも一部。図示の例では一部。)が位置する第2領域部803dの厚さよりも薄くなっている。第2領域部803dが厚くされていることによって、例えば、水晶ブランク803の単位面積当たりの質量に感温膜11の単位面積当たりの質量が占める割合が低減される。これにより、例えば、感温膜11の質量が第1領域部803cにおける振動に及ぼす影響が低減される。
【0153】
第1領域部803cは、既述のように、2つの励振電極7が重なっている部分である(その一部を第1領域部803cとして捉えてもよい。)。ただし、便宜上、実施形態の説明では、励振電極7が重なっている重複領域に加えて、当該重複領域の厚さと同じ厚さを有している他の領域を含んだ全体を第1領域部803cとして参照することがある。また、第2領域部803dは、既述のように、感温膜11が重なり、かつ第1領域部803cよりも厚い部分である(その一部を第2領域部803dとして捉えてもよい。)。ただし、便宜上、実施形態の説明では、感温膜11が重なり、かつ第1領域部803cよりも厚い重複領域に加えて、当該重複領域の厚さと同じ厚さを有している他の領域を含んだ全体を第2領域部803dとして参照することがある。
【0154】
第1領域部803cの厚さは、例えば、2つの励振電極7の広さ全体に亘って一定の厚さである。本実施形態の説明では、このような態様を前提とした表現をすることがある。ただし、励振電極7の外周部の一部又は全部は、相対的に厚くされている領域に食み出していてもよい。本段落の説明から理解されるように、感温膜11が位置している第2領域部の厚さが、励振電極7が位置している第1領域部の厚さよりも厚いというとき、励振電極7の広さ全体において、そのような厚さの関係が成立していなくてもよい。このような関係が成立する広さは、例えば、1つの励振電極7の面積の2/3以上又は全部とされてよい。
【0155】
感温膜11が1つ以上のセグメント11sによって構成されていると捉えたように、第2領域部803dは、複数のセグメント(符号省略)によって構成されていると捉えることができる。この場合において、感温膜11を配置可能であって、感温膜11が位置していないセグメント(図示の例では-D1側の辺)は、相対的に厚い領域(第2領域部803d)とされていてもよいし(図示の例)、相対的に薄い領域(第1領域部803c)とされていてもよい。また、感温膜11を配置可能であって、感温膜11が位置していないセグメント(辺)が2つ以上存在する場合において、相対的に厚い(又は薄い)領域とされる数は任意であり、全部であってもよいし、一部であってもよい。
【0156】
水晶ブランク803において、感温膜11が位置するセグメントは、基本的に、相対的に厚い領域(第2領域部803d)とされている。そして、感温膜11は、セグメントに位置する部分の全体が、相対的に厚い領域に位置している。ただし、図示の例とは異なり、感温膜11が位置する複数のセグメントの一部、又は感温膜11が位置する各セグメントの一部において、相対的に薄い部分が存在しても構わない。
【0157】
図示の例では、励振電極7の縁部と水晶ブランク803の縁部とは互いに平行である。そして、相対的に厚い領域(第2領域部803d)は、概ね一定の幅で、上記の2つの縁部に沿って(より詳細には平行に)延びている。より詳細には、相対的に厚い領域の外側の縁部は、水晶ブランク803の縁部と一致している。また、相対的に厚い領域(その各セグメント)は、直線状に延びている。感温膜11は、相対的に厚い領域と同様に、略一定の幅で直線状に延びている。ただし、相対的に厚い領域の外側の縁部は、水晶ブランク503の縁部と一致していなくてもよいし、感温膜11(各セグメント11s)の平面形状は、相対的に厚い領域(各セグメント11sに対応する部分)の平面形状と類似していなくてもよい。
【0158】
既述のように、励振電極7の平面形状及び水晶ブランク803の平面形状は矩形に限定されない。例えば、励振電極7の縁部と水晶ブランク803の縁部とは互いに平行に曲線状に延びていてもよい。このような場合も、相対的に厚い領域(第2領域部803d)は、例えば、概ね一定の幅で、励振電極7の縁部に沿って(平行に)延びてよい。別の観点では、相対的に厚い領域は、曲線状に延びていてよい。このとき、相対的に厚い領域の外側の縁部は、水晶ブランク803の縁部と一致していてもよいし、一致していなくてもよく、また、感温膜11(各セグメント11s)の平面形状は、相対的に厚い領域の平面形状(各セグメント11sに対応する部分)と類似していてもよいし、類似していなくてもよい。
【0159】
励振電極7の縁部と水晶ブランク803の縁部とが互いに平行でない場合において、相対的に厚い領域(第2領域部803d)は、例えば、内側の縁部と励振電極7の縁部との距離が概ね一定となり、外側の縁部と水晶ブランク803の縁部とが一致するように(若しくは距離が概ね一定となるように)、幅を変化させながら延びてもよい。このとき、感温膜11(各セグメント11s)の平面形状は、相対的に厚い領域(各セグメント11sに対応する部分)の平面形状と類似していてもよいし、類似していなくてもよい。例えば、各セグメント11sは、一定の幅で直線状に延びていてもよい。
【0160】
なお、上記は相対的に厚い領域(第2領域部803d)の平面形状の一例であって、当該平面形状はその他の形状であってもよい。例えば、相対的に厚い領域は、励振電極7の縁部及び水晶ブランク803の縁部の双方に平行でなくてもよい。励振電極7の縁部及び水晶ブランク803の縁部が平行であっても、相対的に厚い領域の幅が変化してもよい。
【0161】
相対的に薄い領域(第1領域部803c)と、相対的に厚い領域(第2領域部803d)との間には、前者の厚さから後者の厚さへ徐々に厚さが変化する部分(図14に示す中間領域部803e)が存在してもよいし、存在しなくてもよい。別の観点では、両者の間には傾斜面が位置していてもよいし、位置していなくてもよい。傾斜面の角度は、任意の大きさとされてよく、また、エッチングに対する水晶の異方性に起因して現れる結晶面の角度によって規定されてもよい。傾斜面には、相対的に薄い領域から相対的に厚い領域に亘る凹部が位置していてもよい。このような凹部は、例えば、両領域に跨る導体層の形成を容易化することに寄与し得る。
【0162】
図示の例では、相対的に厚い領域(第2領域部803d)は、相対的に薄い領域(第1領域部803c)に対して、第1面803aが面している側(+D3側)、及び第2面803bが面している側(-D3側)の双方に厚くなっている。図示の例とは異なり、第2領域部803dは、+D3側のみ、又は-D3側のみに厚くなっていてもよい。換言すれば、第2領域部803dは、基板部111a側(-D3側)及び基板部111aとは反対側(+D3側)の一方に厚くなっていてもよいし、双方に厚くなっていてもよい。また、第2領域部803dが、基板部111a側又は基板部111aとは反対側に厚くなっている態様において、感温膜11は、厚くなっている側に位置していてもよいし、厚くなっていない側に位置していてもよい。
【0163】
第2領域部803dが第1領域部803cに対して、厚さ方向の一方のみに厚くなっており、厚くなっている側のみに感温膜11が位置している態様においては、例えば、第1領域部803cと感温膜11との間に介在する水晶ブランク803の質量が大きくなる。その結果、例えば、既述の感温膜11の質量が第1領域部803cの振動に及ぼす影響が低減される効果が向上する。逆に、厚くなっていない側にのみに感温膜11が位置している態様においては、例えば、第1領域部803cと感温膜11との間に介在する水晶ブランク803の質量が小さくなるから、計測温度を第1領域部803cの温度に追従させる効果が向上する。第2領域部803dが両側(+D3側及び-D3側)に厚くなっている態様、及び/又は感温膜11が両側に位置している態様においては、例えば、上記の効果が調和される。
【0164】
図示の例のように第2領域部803dが両側(+D3側及び-D3側)に厚くなっている態様において、+D3側に厚くなっている部分の平面形状と、-D3側に厚くなっている部分の平面形状とは、例えば、概ね一致する。ただし、両者は異なっていてもよい。いずれにせよ、既述の平面形状の説明は、上記の2つの部分のそれぞれ及び組み合わせに援用されてよい。また、+D3側へ厚くなっている量と、-D3側へ厚くなっている量とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。なお、実施形態で説明する第2領域部803dの厚みは、特に断りが無い限り、+D3側の面から-D3側の面までの厚さであり、+D3側及び-D3側の一方又は双方に厚くなっている態様に適用されてよい。
【0165】
第2領域部803dの厚さと、第1領域部803cの厚さとの差又は比率は任意である。例えば、第2領域部803dの厚さは、第1領域部803cの厚さに対して、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、5倍以上又は10倍以上とされてよく、20倍以下、10倍以下、5倍以下又は3倍以下とされてよい。上記の下限と上限とは、矛盾しないように任意のもの同士が組み合わされてもよい。また、第2領域部803dの厚さと、第1領域部803cの厚さとの差は、例えば、5μm以上、10μm以上、20μm以上又は30μm以上とされてよく、100μm以下、50μm以上又は30μm以下とされてよい。上記の下限と上限とは、矛盾しないように任意のもの同士が組み合わされてもよい。
【0166】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素子801は、少なくとも一部が励振電極7に重なる感温膜11を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0167】
圧電体(水晶ブランク803)は、水晶ブランク803を厚さ方向(D3方向)に見たときに互いに異なる部位である第1領域部803c及び第2領域部803dを有していてよい。第1領域部803cには、2つの励振電極7の少なくとも一部が位置していてよい。第2領域部803dには、感温膜11の少なくとも一部が位置していてよい。第2領域部803dの厚さは、第1領域部803cの厚さよりも厚くされていてよい。
【0168】
この場合、例えば、既述のように、第1領域部803cの振動に感温膜11の質量が及ぼす影響が低減される。その結果、例えば、水晶素子801の設計が容易化される。また、感温膜11の質量の誤差に起因して水晶素子801の特性に誤差が生じる蓋然性が低減される。また、別の観点では、感温膜11の設計の自由度が向上する。
【0169】
なお、本実施形態のように、第2領域部803dを第1領域部803cよりも厚くする構成は、板形状以外の形状を有する水晶ブランクに適用されてもよい。本実施形態の構成は、厚さを概念できる水晶ブランクであれば、種々の平面形状と組み合わされてよい。例えば、音叉型の水晶ブランクにおいて、第2領域部(例えば基部)が第1領域部(基部から延びる振動用の腕)よりも厚くされていてよい。そして、感温膜は、第1領域部の励振電極に重なる位置から第2領域部に重なる位置までに亘る広さを有していてよい。
【0170】
以上の実施形態及び変形例において、水晶素子1、201、301、401、501、601、701及び801は、それぞれ圧電振動素子の一例である。水晶デバイス101及び101Aは、それぞれ圧電デバイスの一例である。水晶ブランク3及び803は、それぞれ圧電体の一例である。2つの励振電極7のうち感温膜が重なっている励振電極7(例えば第1実施形態の+D3側の励振電極7又は第2実施形態の-D3側の励振電極7)は、第1励振電極の一例であり、他の励振電極7は第2励振電極の一例である。第1基板面111cは、パッケージの所定面の一例である。
【0171】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0172】
例えば、既述の実施形態は、適宜に組み合わされてよい。より詳細には、例えば、第2実施形態のように第2面3bに感温膜11を有する構成、及び第3実施形態のように第1面3a及び第2面3bの双方に感温膜11を有する構成は、第4~第8実施形態に適用されてよい。また、例えば、第8実施形態に係る第2領域部803dの厚さが第1領域部803cの厚さよりも厚い構成は、第5及び第6実施形態のようにセグメント11sを概念できない感温膜の平面形状と組み合わされてよい。
【0173】
圧電体は、水晶に限定されない。例えば、圧電体は、他の単結晶であってもよいし、多結晶からなるもの(例えばセラミック)であってもよい。なお、水晶に適宜なドーパントが添加されたものは水晶の一種と捉えられてよい。
【0174】
圧電振動素子は、発振信号を生成することを目的としたものに限定されない。例えば、圧電振動素子は、圧電式のジャイロセンサであってもよい。
【0175】
圧電振動素子のパッケージ等への実装態様は、種々のものとされてよい。例えば、圧電振動素子は、2つの引出電極に接合される2つの導電性の接合材によって両端支持されてもよい。また、例えば、圧電振動素子は、1つの引出電極に導電性の接合材が接合されるとともに、1つの引出電極にボンディングワイヤが接合されてもよい。また、圧電振動素子の一端又は両端を支持するための接合材として、引出電極の領域とは異なる領域に接合される絶縁性(導電性とすることも可能)の接合材が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0176】
1…水晶素子(圧電振動素子)、3…水晶ブランク(圧電体)、7…励振電極、9…引出電極、11…感温膜、101…水晶デバイス(圧電デバイス)。
図1
図2
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