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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097800
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20230703BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F37/00 C
H01F37/00 E
H01F37/00 H
H01F37/00 R
H01F41/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214115
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍太
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044CA09
(57)【要約】
【課題】補助巻線が精度良く取り付けられたリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル1は、主コイル2とコア3とコア被覆樹脂5と補助巻線4と嵌入部6とを備えるようにした。主コイル2は外部から電流が流され、コア3は磁性体を含んで主コイル2が装着される。コア被覆樹脂5は、コア3を被覆し、コア3と主コイル2との間に介在する。補助巻線4は、1巻き以上巻回された環状部42を有し、主コイル2の磁束が入って電流を発生させる。嵌入部6は、コア被覆樹脂5から延出し、補助巻線4が嵌め入れられることにより、当該補助巻線4を支持する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から電流が流される主コイルと、
磁性体を含み、前記主コイルが装着されるコアと、
前記コアを被覆し、前記コアと前記主コイルとの間に介在するコア被覆樹脂と、
1巻き以上巻回された環状部を有し、前記主コイルの磁束が入って電流を発生させる補助巻線と、
前記コア被覆樹脂から延出し、前記補助巻線が嵌め入れられることにより、当該補助巻線を支持する嵌入部と、
を備えること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記嵌入部は、間隔を空けて対向する一対の狭持壁を有し、
前記補助巻線は、前記環状部が前記一対の狭持壁によって挟持されていること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項3】
前記一対の狭持壁のうちの一方は、前記補助巻線と前記主コイルとを隔てる隔壁であること、
を特徴とする請求項2記載のリアクトル。
【請求項4】
前記嵌入部は、前記補助巻線の前記環状部を挟んで対向した2箇所に設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のリアクトル。
【請求項5】
前記補助巻線は、前記環状部から同一方向に並んで引き出されるリード線を有し、
前記コア被覆樹脂は、前記環状部と直交又は斜交する方向に拡がり、前記補助巻線の前記環状部のうち、前記リード線と180度反対の湾曲範囲を支持する支持壁を備えること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のリアクトル。
【請求項6】
前記補助巻線は、前記環状部の両端部から同一方向に並んで引き出されるリード線を有し、
前記コア被覆樹脂は、前記補助巻線の前記環状部に面して拡がり、前記環状部のうち、前記リード線と180度反対の湾曲範囲と対面する当接壁を有し、
前記当接壁は、前記リード線側の面で前記湾曲範囲と対面すること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のリアクトル。
【請求項7】
前記コア被覆樹脂は、前記支持壁を含むL字状部を備え、
前記L字状部は、
前記補助巻線の前記環状部に面して拡がり、前記環状部のうち、前記リード線と180度反対の湾曲範囲と対面する当接壁と、
前記当接壁から屈曲して延びる前記支持壁と、
を有し、
前記当接壁は、前記リード線側の面で前記湾曲範囲と対面し、
前記支持壁は、前記当接壁から前記リード線側に屈曲して延びること、
を特徴とする請求項5記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは主としてコイルとコアとから成る。コイルは、通電により巻数に従って磁束を発生させる。以下、外部から通電されて磁束を発生させることにより誘導性リアクタンスとして機能するコイルを主コイルと呼ぶ。コアは、コイルが発生させた磁束を真空よりも高い透磁率に従って通す閉磁路となる。このリアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。
【0003】
このようなリアクトルは、多種多様の用途に使用されている。代表的なリアクトルとして、昇圧リアクトル、直列リアクトル、並列リアクトル、限流リアクトル、始動リアクトル、分路リアクトル、中性点リアクトル及び消弧リアクトル等が挙げられる。
【0004】
昇圧リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等の車載用の昇圧回路に組み込まれる。直列リアクトルは、電動機回路に直列に接続し短絡時の電流を制限する。並列リアクトルは、並列回路間の電流分担を安定させる。限流リアクトルは、短絡時の電流を制限しこれに接続される。始動リアクトルは、機械を保護する電動機回路に直列に接続して始動電流を制限する。分路リアクトルは、送電線路に並列接続されて進相無効電力の補償や異常電圧を抑制する。中性点リアクトルは、中性点と大地間に接続して電力系統の地絡事故時に流れる地絡電流を制限するために使用する。消弧リアクトルは、三相電力系統の1線地絡時に発生するアークを自動的に消滅させる。
【0005】
このようなリアクトルにおいて、リアクトルの状態を検知するために補助巻線が設けられる場合がある。補助巻線は、主コイルが発生させた磁束を受けて、磁束に応じた電流を流す。この補助巻線の電流値を検知することで、例えばリアクトルが発生させた磁束の計測といったセンサ等に使われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5267802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、回路の小型化と電気部品の集積化の進展によってリアクトルの小型化が求められている。リアクトルは、コイルをコアに装着して成る。コアは閉磁路を形成するために、コイルが装着される脚部と、この脚部と平行な他の脚部、各脚部を両側から挟んで閉環形状を画成するヨーク部を有する。リアクトルの小型化のために脚部間の間隔は狭くなっている。更に、コアはコイルとの絶縁のために絶縁性能を有する樹脂で被覆される。従って、樹脂で被覆された脚部間は更に狭くなっている。
【0008】
補助巻線は、脚部に巻き付けて引き出した後、接着テープ等によって樹脂に止めている。このような狭い領域に接着テープで補助巻線を所望位置に精度良く止め続けておく作業は、リアクトルの小型化に伴って難しくなってきており、補助巻線を撓むことなく良好に設置できない虞も生じ得る。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、補助巻線が精度良く取り付けられたリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るリアクトルは、外部から電流が流される主コイルと、磁性体を含み、前記主コイルが装着されるコアと、前記コアを被覆し、前記コアと前記主コイルとの間に介在するコア被覆樹脂と、1巻き以上巻回された環状部を有し、前記主コイルの磁束が入って電流を発生させる補助巻線と、前記コア被覆樹脂から延出し、前記補助巻線が嵌め入れられることにより、当該補助巻線を支持する嵌入部と、を備える。
【0011】
前記嵌入部は、間隔を空けて対向する一対の狭持壁を有し、前記補助巻線は、前記環状部が前記一対の狭持壁によって挟持されているようにしてもよい。
【0012】
前記一対の狭持壁のうちの一方は、前記補助巻線と前記主コイルとを隔てる隔壁であるようにしてもよい。
【0013】
前記嵌入部は、前記補助巻線の前記環状部を挟んで対向した2箇所に設けられているようにしてもよい。
【0014】
前記補助巻線は、前記環状部の両端部から同一方向に並んで引き出されるリード線を有し、前記コア被覆樹脂は、前記環状部と直交又は斜交する方向に拡がり、前記補助巻線の前記環状部のうち、前記リード線と180度反対の湾曲範囲を支持する支持壁を備えるようにしてもよい。
【0015】
前記補助巻線は、前記環状部から同一方向に並んで引き出されるリード線を有し、前記コア被覆樹脂は、前記補助巻線の前記環状部に面して拡がり、前記環状部のうち、前記リード線と180度反対の湾曲範囲と対面する当接壁を有し、前記当接壁は、前記リード線側の面で前記湾曲範囲と対面するようにしてもよい。
【0016】
前記コア被覆樹脂は、前記支持壁を含むL字状部を備え、前記L字状部は、前記補助巻線の前記環状部に面して拡がり、前記環状部のうち、前記リード線と180度反対の湾曲範囲と対面する当接壁と、前記当接壁から屈曲して延びる前記支持壁と、を有し、前記当接壁は、前記リード線側の面で前記湾曲範囲と対面し、前記支持壁は、前記当接壁から前記リード線側に屈曲して延びるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、補助巻線が精度良く取り付けられており、リアクトルが高品質化する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】リアクトルの主構成を示す斜視図である。
図2】コアの斜視図である。
図3】リアクトルの全構成を示す斜視図である。
図4】コア被覆樹脂の分解図である。
図5】短脚樹脂部の斜視図である。
図6】ヨーク収容部、主コイル挿通部及び接続脚収容部の長さ方向と直交する方向から見た短脚樹脂部の平面図である。
図7】ヨーク収容部の長さ方向に沿い、主コイル挿通部及び接続脚収容部の長さ方向と直交する方向から見た短脚樹脂部の側面図である。
図8】ヨーク収容部の長さ方向と直交し、主コイル挿通部及び接続脚収容部の長さ方向に沿った方向から見た短脚樹脂部の正面図である。
図9】主コイルと補助巻線との境界付近を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施形態のリアクトルの主構成を示す斜視図である。リアクトル1は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。リアクトル1は、主コイル2とコア3と補助巻線4とを備えている。主コイル2と補助巻線4はコア3に装着されている。例えば、リアクトル1は、1個のコア3に対して3個の主コイル2と3個の補助巻線4を有している。
【0021】
主コイル2は、リアクトル1が組み込まれる回路から電流が流されて磁束を発生させるインダクタであり、回路に誘導性リアクタンスを導入する。この主コイル2は、エナメル被覆等の絶縁被覆が施された導電線を筒状に巻いた巻回体であり、巻軸に沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に巻回することで形成される。主コイル2の導電線は、例えば平角線であり、導電線の幅広面が主コイル2の巻軸との直交方向に拡がるように、導電線が巻回されて成る螺旋状のエッジワイズコイルである。主コイル2としては、また例えばフラットワイズコイルを採用することもできる。
【0022】
主コイル2の巻き始めと巻き終わりには引出線21が引き出されている。引出線21は、バスバー(不図示)に接続されている。バスバーは、回路内の他機器との接続するための接続導体であり、例えば銅等の導体を引き出した長板である。各引出線21は各バスバーと溶接等により接続されている。このバスバーに回路内の他機器の端子が接続されることで、主コイル2に対して外部から電流供給される。
【0023】
補助巻線4は、リアクトル1の状態を検出するために、主コイル2が発生させてコア3を通る磁束を受けて、当該磁束に応じた起電力を生じ、補助巻線4に接続された磁力センサ等の外部機器に電流を流す。この補助巻線4は、導電線を概略360度に亘って一巻き以上された巻回体であり、巻き始め及び巻き終わりのリード線41が並べて引き出されている。この補助巻線4は例えばエナメル被覆等の絶縁被覆が施された丸線である。補助巻線4は、主コイル2と一対一で対応して配置されており、より磁束漏れの影響が少ない磁束を得るために、対応の主コイル2の磁束導出端面の近傍に配置されている。
【0024】
コア3は、磁性体を含み、主コイル2が発生させた磁束を真空よりも高い透磁率に従って通す閉磁路となる。磁性体としては、圧粉磁心、フェライト磁心、メタルコンポジットコア又は積層鋼板等が挙げられる。圧粉磁心は、磁性粉末を押し固めた圧粉成形体を焼鈍したものである。磁性粉末は、鉄を主成分とし、純鉄粉、鉄を主成分とするパーマロイ(Fe-Ni合金)、Si含有鉄合金(Fe-Si合金)、センダスト合金(Fe-Si-Al合金)、アモルファス合金、ナノ結晶合金粉末、又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが挙げられる。メタルコンポジットコアは、磁性粉末と樹脂とが混練され成型されて成るコアである。
【0025】
図2は、コア3の斜視図であり、説明の都合上、一部の主コイル2を省いている。コア3は、ヨーク部31と嵌装脚部32と接続脚部33とを備えた縦格子状の閉磁路である。ヨーク部31は、主コイル2及び補助巻線4の巻軸に直交して延び、全主コイル2を包含する長さを有する。コア3は、一対のヨーク部31を備えている。一対のヨーク部31は、主コイル2の巻軸と直交両端面側から全主コイル2を挟んでいる。
【0026】
嵌装脚部32は、主コイル2と補助巻線4とが嵌入される。嵌装脚部32は、主コイル2と補助巻線4の組数分、間隔を空けてヨーク部31間に延びている。この嵌装脚部32は、主コア3内が空芯となる脚部であり、突起部32aと断絶域32bとから成る。突起部32aは、各ヨーク部31から延び、ヨーク部31と一体成型された同種の磁性体により成る突起であり、補助巻線4が掛けられ、主コイル2の環状面入口付近に入り込んで延びている。一対の突起部32a間が断絶域32bであり、換言すると嵌装脚部32は突起部32a間が途切れている。接続脚部33は、嵌装脚部32の両脇に延び、一対のヨーク部31間を繋いでいる。
【0027】
尚、嵌装脚部32は、これに限らず、ヨーク部31間に断絶無く連続して延びていても良い。また、嵌装脚部32は、ヨーク部31間に架橋されつつ、インダクタンス低下を防止する磁気的なギャップを有していてもよい。磁気的なギャップとしては、非磁性体、セラミック、非金属、樹脂、炭素繊維、若しくはこれら2種以上の合成材、ギャップ紙又はエアギャップを用いることができる。
【0028】
図3は、リアクトル1の全構成を示す斜視図である。このコア3は、コア被覆樹脂5によって被覆され、コア被覆樹脂5に被覆されてからコア34には主コイル2及び補助巻線4が装着される。コア被覆樹脂5は、コア3を機械的衝撃から保護すると共に、少なくとも主コイル2及び補助巻線4とコア3とが近接する箇所を覆って、主コイル2と補助巻線4に対してコア3を絶縁させている。
【0029】
コア被覆樹脂5には、格子状面52aに補助巻線止め55が延設されており、装着された補助巻線4から引き出されたリード線41が外れないように係止されている。格子状面52aは、ヨーク部31、嵌装脚部32及び接続脚部33を含む平面と平行で、この格子状面52aと直交する方向からコア被覆樹脂5を見ると、格子状に見える面である。補助巻線止め55は、鉤状に延出し、補助巻線4の被覆層を縮径させて嵌め込んでいる。
【0030】
コア被覆樹脂5の材質としては、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合が挙げられ、コア被覆樹脂5は絶縁性及び耐熱性を備えている。コア被覆樹脂5には熱伝導性のフィラーを混入させてもよい。
【0031】
その他、このリアクトル1においては、バスバーを固定し、外部機器の端子とバスバーとを締結するための端子台(不図示)が設けられている。また、このリアクトル1は、コア被覆樹脂5で覆われたコア3、当該コア3に嵌め込まれた主コイル2及び補助巻線4から成るリアクトル本体を収容するケース(不図示)を備えている。ケースは、例えばアルミニウム合金等、熱伝導性が高く軽量な金属で構成されており、放熱性を有する。このケースは、上面開口及び有底の概略箱形状を有する。
【0032】
尚、リアクトル本体とケースとの隙間には、充填剤が充填されて固化していてもよい。充填剤は、主コイル2及びコア3の放熱性能の確保及び主コイル2及びコア3からケースへの振動伝搬の軽減のため、比較的柔らかく熱伝導性の高い樹脂が適している。また、充填剤は絶縁性を有することが好ましい。この充填剤としては、例えばシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
【0033】
図4は、コア被覆樹脂5の分解図である。図4に示すように、コア被覆樹脂5は、短脚樹脂部51と長脚樹脂部56とに分かれて構成されている。短脚樹脂部51は、ヨーク部31を被覆するヨーク収容部52を備える。ヨーク収容部52からは、嵌装脚部32を覆い、また主コイル2が嵌る主コイル挿通部53が延びる。更に、ヨーク収容部52からは、接続脚部33を覆う接続脚収容部54が延びている。
【0034】
また、長脚樹脂部56は、ヨーク部31を被覆するヨーク収容部57を備える。ヨーク収容部57からは、嵌装脚部32を覆い、また主コイル2が嵌る主コイル挿通部58が延びる。更に、ヨーク収容部57からは、接続脚部33を覆う接続脚収容部59が延びている。短脚樹脂部51と長脚樹脂部56とにおいて、短脚樹脂部51の主コイル挿通部53及び接続脚収容部54は、長脚樹脂部56の主コイル挿通部58及び接続脚収容部59より短い。
【0035】
短脚樹脂部51において、ヨーク収容部52の延び方向に沿って、主コイル挿通部53と接続脚収容部54が交互に並ぶ。また、長脚樹脂部56において、ヨーク収容部57の延び方向に沿って、主コイル挿通部58と接続脚収容部59が交互に並ぶ。短脚樹脂部51は、ヨーク収容部52と主コイル挿通部53で、突起部32aが突出した一方のヨーク部31を被覆する。長脚樹脂部56は、ヨーク収容部57と主コイル挿通部58で、突起部32aが突出した他方のヨーク部31を被覆する。また、長脚樹脂部56は、接続脚収容部59で接続脚部33を被覆する。接続脚部33は、短脚樹脂部51の接続脚収容部54と同長分、長脚樹脂部56の接続脚収容部59の先端から露出している。
【0036】
そして、長脚樹脂部56の主コイル挿通部58に主コイル2を装着する。また、接続脚収容部59から露出した接続脚部33を接続脚収容部54に挿入する。そして、短脚樹脂部51の主コイル挿通部53と長脚樹脂部56の主コイル挿通部58を向かい合わせにし、短脚樹脂部51の接続脚収容部54と長脚樹脂部56の接続脚収容部59を向かい合わせにし、コア3は閉環状に組み立てられる。ここで、補助巻線4は、短脚樹脂部51の主コイル挿通部53と、隣の一方の接続脚収容部54との間を通って、主コイル挿通部53を一回りし、この主コイル挿通部53と、隣の他方の接続脚収容部54とに間から引き出されるように、主コイル挿通部53に装着されている。
【0037】
図5乃至8は、補助巻線4の短脚樹脂部51に対する設置態様を示し、図5は、短脚樹脂部51の斜視図、図6は、ヨーク収容部52、主コイル挿通部53及び接続脚収容部54の長さ方向と直交する方向から見た平面図、図7は、ヨーク収容部52の長さ方向に沿い、主コイル挿通部53及び接続脚収容部54の長さ方向と直交する方向から見た側面図、及び図8は、ヨーク収容部52の長さ方向と直交し、主コイル挿通部53及び接続脚収容部54の長さ方向に沿った方向から見た正面図である。
【0038】
尚、主コイル挿通部53及び接続脚収容部54の長さ方向は、主コイル2の巻軸に沿った方向であり、ヨーク収容部52の長さ方向とは、主コイル挿通部53及び接続脚収容部54が並ぶ方向、且つ主コイル2の巻軸と直交する方向をいう。
【0039】
図5及び図6に示すように、主コイル挿通部53の両脇に延びる接続脚収容部54からは、主コイル挿通部53に向けて第1狭持壁62が延出している。第1狭持壁62は、接続脚収容部54の外表面のうち、主コイル挿通部53に向く挿通部対向面54aに延設されている板片である。この第1狭持壁62は、太さを弾性変形させた補助巻線4が第1狭持壁62と主コイル挿通部53との間の隙間を通り抜け可能で、弾性変形から復帰して径が元に戻った補助巻線が通り抜け不可能な程度に、主コイル挿通部53に迫って張り出している。
【0040】
また、第1狭持壁62は、縮径させようとする外力が加わっていない状態の補助巻線4の直径よりも狭く、補助巻線4を最大限弾性変形させたときの直径以上の範囲で、ヨーク収容部52の内側面52bと間隔を空けて延出している。尚、内側面52bは、ヨーク収容部52のうち、主コイル挿通部53及び接続脚部収容部54が延出する面をいう。
【0041】
補助巻線4は、1巻以上の輪である環状部42が出来るように巻回された状態で、主コイル挿通部53に引っ掛けられ、第1狭持壁62と主コイル挿通部53との間の隙間に圧入され、第1狭持壁62とヨーク収容部52の内側面52bとにより狭持される。即ち、ヨーク収容部52の内側面52bは、第1狭持壁62と間隔を空けて対向する第2狭持壁61となる。そして、第1狭持壁62と第2狭持壁61とは、補助巻線4が嵌め入れられて狭持することによって、補助巻線4を支持する嵌入部6となっている。
【0042】
第1狭持壁62は、主コイル挿通部53の両脇にある各接続脚収容部54に延設されているため、嵌入部6は、主コイル挿通部53の両脇に位置する。そして、一対の嵌入部6は、補助巻線4の環状部42を対向2箇所から支持することになる。尚、接続脚収容部54から主コイル挿通部53に向かう方向と直交し、且つ接続脚部収容部54及び主コイル挿通部53の延び方向と直交する方向を上下方向と呼ぶと、第1狭持壁62は、補助巻線4が外れにくいように、上下方向に所定の長さがあればよい。
【0043】
次に、図7及び図8に示すように、コア被覆樹脂5の短脚樹脂部51の主コイル挿通部53にはL字状部7が形成されている。L字状部7は、主コイル挿通部53に立設された当接壁72と、この当接壁72の先端から延びる支持壁71を有し、当接壁72と支持壁71とによってL字型になっている。このL字状部7は、主コイル挿通部53の巻線止め面53aとは反対側の巻線止め反対面53bに形成されている。巻線止め面53aは、主コイル挿通部58のうち、補助巻線4を留める補助巻線止め55が延出する格子状面52aと同一方向を向く面である。
【0044】
当接壁72は、主コイル挿通部53の巻線止め反対面53bから、少なくとも補助巻線4の導電線直径を超える高さまで立ち上がる。支持壁71は、当接壁72の立ち上がり方向と直交する方向又は斜交する方向に延び、当接壁72と繋がる根元から延び先先端まで、少なくとも補助巻線4の導電線直径以上の長さで延びている。
【0045】
ここで、当接壁72から補助巻線4のリード線41への向きのうち、主コイル挿通部63の延び方向に沿った成分をリード線向き41aと呼ぶ。また、当接面72aを基端とし、当接面72aと直交して延び、当接面72aから離れる向きを当接面向き72bと呼ぶ。このとき、当接面向き72bのうち、主コイル挿通部63の延び方向に沿った成分がリード線向き41aと一致するように、当接面72aは設定されている。即ち、当接壁72のうち、リード線41側を向く面が当接面72aとして設定されている。当接壁72が主コイル挿通部53の巻軸に対して直交するように延出している場合、リード線向き41aと当接面72aの当接面向き72bとが同じ向きを向く。当接壁72が主コイル挿通部53の巻軸に対して斜交するように延出している場合、リード線向き41aと当接面向き72bとが成す角度が少なくとも90度未満となる。
【0046】
また、支持壁71は、当該支持壁71が当接壁72を基端として延びる向きのうち、主コイル挿通部63の延び方向に沿った成分が、リード線向き41aと同じ向きとなるように、屈曲して延しておく。当接壁72が主コイル挿通部53の巻軸に対して直交するように延出させ、支持壁71を当接壁72と直交する方向に延す場合、支持壁71はリード線向き41aと同じ向きに屈曲して延びている。支持壁71を当接壁72と斜交する方向に延す場合、支持壁71が当接壁72を基端として延びる向きと、リード線向き41aとが成す角度が最大90度未満となるように、支持壁71は屈曲して延び、好ましくはリード線向き41aと同じ向きに屈曲して延す。
【0047】
補助巻線4は、1巻以上の輪である環状部42が出来るように巻回された状態で、主コイル挿通部53に引っ掛けられる。このとき、環状部42のうち、リード線41とは180度反対の湾曲範囲42aが当接壁72の当接面72aに対面するように、補助巻線4の環状部42をL字状部7に引っ掛ける。
【0048】
リード線41を引いて、補助巻線4の環状部42を引き締めると、湾曲範囲42aが当接壁72によって、リード線向き41aと反対の方向に移動することが規制され、補助巻線4の環状部42の位置決めがされる。また、当接壁72を支点にして環状部42が一対の嵌入部6に押し付けられ、嵌入部6の第1狭持壁62と主コイル挿通部53との隙間に入り込み、第1狭持壁62と第2狭持壁61との間に嵌まり込んで狭持される。この後、リード線41を補助巻線止め55に引っ掛けることで、補助巻線4は、両方の嵌入部6とL字状部7の当接壁72によって精度良く位置決めされた位置に設置される。
【0049】
また、支持壁71は、リード線41とは180度反対の湾曲範囲42aを、環状部42の面と直交する方向から支持している。そのため、環状部42が拡径するように補助巻線4が緩むことが阻止されている。
【0050】
図9は、主コイル2と補助巻線4との境界付近を示す拡大図である。補助巻線4を設置した後は、主コイル2を長脚樹脂部56の主コイル挿通部58に挿通しつつ、補助巻線4が設置された短脚樹脂部51と長脚樹脂部56とを連結して、コア被覆樹脂5を完成させる。このとき、図9に示すように、主コイル2は嵌入部6の第1狭持壁62に当接する。即ち、嵌入部6の第1狭持壁62が隔壁となって、主コイル2と補助巻線4とは絶縁距離を確保するように隔てられる。
【0051】
従って、第1狭持壁62の厚み、即ち主コイル2の巻軸方向の長さは、破壊されることなく補助巻線4を保持しておくことのできる強度を確保するための他、主コイル2と補助巻線4との間の絶縁距離の確保する長さとしてもよい。また、接続脚収容部54から主コイル挿通部53に向かう方向と直交し、且つ接続脚収容部54及び主コイル挿通部53の延び方向と直交する方向を上下方向と呼ぶと、第1狭持壁62は、上下方向に接続脚収容部54の上端から下端まで連続して延びていてもよいし、第1狭持壁62は等間隔に並ぶ複数の突出片とし、上下方向に間欠的に並んでいても良い。これら上下方向の長さについても、第1狭持壁62が破壊されることなく補助巻線4を保持しておくことのできる強度を確保するための他、主コイル2と補助巻線4との間の絶縁性を確保する長さとしてもよい。
【0052】
このように、リアクトル1は、主コイル2とコア3とコア被覆樹脂5と補助巻線4と嵌入部6とを備えるようにした。主コイル2は外部から電流が流され、コア3は磁性体を含んで主コイル2が装着される。コア被覆樹脂5は、コア3を被覆し、コア3と主コイル2との間に介在する。補助巻線4は、1巻き以上巻回された環状部42を有し、主コイル2の磁束が入って電流を発生させる。嵌入部6は、コア被覆樹脂5から延出し、補助巻線4が嵌め入れられることにより、当該補助巻線4を支持する。
【0053】
これにより、1巻以上の輪である環状部42が出来るように補助巻線4を整形した状態で、主コイル挿通部53に環状部42に引っ掛け、リード線41を引っ張れば、補助巻線4を所望位置に精度良く取り付けることができ、リアクトル1が高品質化するとともに、補助巻線4は精度良く主コイル2の磁束を取り込むことができる。
【0054】
例えば、嵌入部6は、間隔を空けて対向する第1狭持壁62及び第2狭持壁61を有し、補助巻線4は、環状部42が第1狭持壁62及び第2狭持壁61によって挟持されているようにした。また、嵌入部6は、補助巻線4の環状部42を挟んで対向した2箇所に設けられているようにした。
【0055】
嵌入部6は、これに限らず、第1狭持壁62を主コイル挿通部53側に立設してもよいし、外力をかけて縮径した補助巻線4が通過可能な隙間を空けて、接続脚部収容部54の挿通部対向面54aと主コイル挿通部53の両方に第1狭持壁62が立設していてもよい。また、補助巻線4を支持できれば、嵌入部6は何れか一方の1箇所でもよいし、円周等配位置に3箇所以上設けるようにしてもよい。
【0056】
この第1狭持壁62は、補助巻線4と主コイル2とを隔てる隔壁であるようにした。これにより、補助巻線4を支持するだけでなく、補助巻線4と主コイル2との絶縁を図る部材としても機能させることができる。
【0057】
また、補助巻線4は、環状部42の両端部から同一方向に並んで引き出されるリード線41を有する。そして、このリアクトル1は、環状部42と直交又は斜交する方向に拡がり、補助巻線4の環状部42のうち、リード線41と180度反対の湾曲範囲42aを支持する支持壁71を備えるようにした。
【0058】
これにより、環状部42が膨らもうとしても、支持壁71によって阻まれる。従って、補助巻線4は、規定の半径で巻回され、半径方向に拡径することが阻止され、緩むことが抑制される。そうすると、補助巻線4は精度良く主コイル2の磁束を取り込むことができ、リアクトル1が嵩高になることも阻止できる。
【0059】
また、コア被覆樹脂5は、補助巻線4の環状部42に面して拡がり、環状部42のうち、リード線41と180度反対の湾曲範囲42aと対面する当接壁72を有するようにした。そして、この当接壁72は、リード線41側の面である当接面72aで湾曲範囲42aと対面するようにした。
【0060】
これにより、リード線41を引いて、補助巻線4の環状部42を引き締めると、湾曲範囲42aが当接壁72によって、リード線向き41aと反対の方向に移動することが規制され、補助巻線4の環状部42の位置決めがされる。また、当接壁72を支点にして環状部42が一対の嵌入部6に押し付けられ、嵌入部6の第1狭持壁62と主コイル挿通部53との隙間に入り込む。従って、嵌入部6に簡単且つ精度良く補助巻線4が支持され、補助巻線4は、より精度良く主コイル2の磁束を取り込むことができ、リアクトル1がより高品質化する。
【0061】
尚、支持壁71と当接壁72とにより成るL字状部7を主コイル挿通部53に立設するようにしたが、支持壁71と当接壁72とを別々の箇所に設けるようにしてもよい。
【0062】
以上の本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【0063】
例えば、L字状部7の当接壁72は短脚樹脂部51のヨーク収容部52から延出していてもよい。また、環状部42のうち、湾曲範囲42aは、当接壁72のうち、リード線41側を向く面とは反対側の面に対面させるようにしてもよい。このとき、支持壁71は、当該支持壁71が当接壁72を基端として延びる向きのうち、主コイル挿通部63の延び方向に沿った成分が、リード線向き41aと真逆となるように、屈曲して延しておく。
【符号の説明】
【0064】
1 リアクトル
2 主コイル
21 引出線
3 コア
31 ヨーク部
32 嵌装脚部
32a 突起部
32b 断絶域
33 接続脚部
4 補助巻線
41 リード線
41a リード線向き
42 環状部
42a 湾曲範囲
5 コア被覆樹脂
51 短脚樹脂部
52 ヨーク収容部
52a 格子状面
52b 内側面
53 主コイル挿通部
53a 巻線止め面
53b 巻線止め反対面
54 接続脚収容部
54a 挿通部対向面
55 補助巻線止め
56 長脚樹脂部
57 ヨーク収容部
58 主コイル挿通部
59 接続脚収容部
6 嵌入部
61 第2狭持壁
62 第1狭持壁
7 L字状部
71 支持壁
72 当接壁
72a 当接面
72b 当接面向き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9