(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097801
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】排水誘導具付き床タイルおよびその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20230703BHJP
E04D 13/04 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E04F15/00 G
E04D13/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214118
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】514304603
【氏名又は名称】エア・ウォーター・エコロッカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 孝男
(72)【発明者】
【氏名】田畑 敏秋
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA08
2E220AB05
2E220AC01
2E220BA01
2E220BA30
2E220BB20
2E220GA26X
2E220GB01Z
2E220GB25X
2E220GB26X
2E220GB32Z
(57)【要約】
【課題】簡易な構成にて床タイルの排水性の向上を図る。
【解決手段】排水誘導具付き床タイル1Aは、床タイル2Aと、排水誘導具3Aとを備える。床タイル2Aは、無機材料からなり、天面21aが親水性のものである。排水誘導具3Aは、金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなり、床タイル2Aに取り付けられる。排水誘導具3Aは、床タイル2Aの側面21bの一部に接触してこれを覆う板状の基部31aを有する。基部31aは、床タイル2Aの側面21bのうちの当該床タイル21bの天面21a側の縁に達する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料からなり、天面が親水性である床タイルと、
金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなり、前記床タイルに取り付けられた排水誘導具とを備え、
前記排水誘導具は、前記床タイルの側面の一部に接触してこれを覆う板状の基部を有し、
前記基部が、前記床タイルの前記側面のうちの当該床タイルの前記天面側の縁に達している、排水誘導具付き床タイル。
【請求項2】
前記排水誘導具が、前記基部のうちの前記床タイルの前記天面側の端部から前記床タイル側に向けて突出した板状の天面側突出部をさらに有し、
前記天面側突出部が、前記床タイルの前記天面の一部に接触してこれを覆っている、請求項1に記載の排水誘導具付き床タイル。
【請求項3】
前記基部が、前記床タイルの前記側面のうちの当該床タイルの底面側の縁に達し、
前記排水誘導具が、前記基部のうちの前記床タイルの前記底面側の端部から前記床タイル側に向けて突出した板状の底面側突出部をさらに有し、
前記底面側突出部が、前記床タイルの前記底面の一部に接触してこれを覆い、
前記天面側突出部および前記底面側突出部によって前記床タイルが挟み込まれることにより、前記排水誘導具が、前記床タイルに係止している、請求項2に記載の排水誘導具付き床タイル。
【請求項4】
無機材料からなり、互いに隣り合うように配置された、天面が親水性である第1床タイルおよび第2床タイルと、
金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなり、前記第1床タイルおよび前記第2床タイルの間に配置された排水誘導具とを備え、
前記排水誘導具は、前記第1床タイルの側面の一部に接触してこれを覆う板状の第1基部と、当該第1基部から前記第2床タイル側に向けて突き出た板バネ部とを有し、
前記板バネ部が弾性変形した状態で前記第2床タイルの側面に当接することにより、前記排水誘導具が、前記第1床タイルおよび前記第2床タイルに取り付けられ、
前記第1基部が、前記第1床タイルの前記側面のうちの当該第1床タイルの前記天面側の縁に達している、排水誘導具付き床タイル。
【請求項5】
前記排水誘導具が、前記第1基部のうちの前記第1床タイルの前記天面側の端部から前記第1床タイル側に向けて突出した板状の第1天面側突出部をさらに有し、
前記第1天面側突出部が、前記第1床タイルの前記天面の一部に接触してこれを覆っている、請求項4に記載の排水誘導具付き床タイル。
【請求項6】
前記排水誘導具が、前記第2床タイルの前記側面の一部に接触してこれを覆う板状の第2基部をさらに有し、
前記板バネ部が、当該板バネ部の前記第1基部側とは反対側の端部において、前記第2基部に接続している、請求項5に記載の排水誘導具付き床タイル。
【請求項7】
前記排水誘導具が、前記第2基部のうちの前記第2床タイルの前記天面側の端部から前記第2床タイル側に向けて突出した板状の第2天面側突出部をさらに有し、
前記第2天面側突出部が、前記第2床タイルの前記天面の一部に接触してこれを覆っている、請求項6に記載の排水誘導具付き床タイル。
【請求項8】
無機材料からなり、天面が親水性である床タイルが準備される工程と、
金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなり、板状の基部を有する排水誘導具が準備される工程と、
前記基部が、前記床タイルの側面の一部に接触してこれを覆うとともに、前記基部が、前記床タイルの前記側面のうちの当該床タイルの前記天面側の縁に達するように、前記排水誘導具が前記床タイルに取り付けられる工程とを備える、排水誘導具付き床タイルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水誘導具が床タイルに取り付けられてなる排水誘導具付き床タイルおよびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば大型商業施設に代表されるような比較的大型の建屋の屋上バルコニーやベランダ等において、これらの床に大型の床タイルを敷き詰めることにより、床面をフラットに仕上げることが行なわれている。
【0003】
このように屋外に設置された床タイルは、降雨や撒水によってその表面が頻繁に濡れた状態になる。そのため、表面が親水性となるように床タイルを加工することにより、水に濡れた状態においても表面が滑り難くなるようにすることが行なわれている。しかしながら、表面が親水性の床タイルは、水の表面張力によってその表面に水溜まりが生じやすくなるため、床タイルの上を歩く歩行者の足元が濡れたり、水溜まりが凍結して表面が滑りやすくなることで歩行者が転倒したりするおそれがある。
【0004】
床タイルの表面に水溜まりを生じさせ難くするために、たとえば特開2016-102033号公報(特許文献1)に開示された床タイルにおいては、その側面に親水性物質からなる被膜が形成されることにより、床タイルの排水性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術は、床タイル自体に特殊な加工を施す必要があるものであるため、床タイルの製造コストが増大する問題がある。また、施工済みの状態にある床タイルの側面に対して後から親水性物質からなる皮膜を塗工することは必ずしも容易ではなく、施工済みの床タイルに対してはその適用が困難な技術でもある。
【0007】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成にて床タイルの排水性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面に基づく排水誘導具付き床タイルは、床タイルと、排水誘導具とを備えている。上記床タイルは、無機材料からなり、天面が親水性のものである。上記排水誘導具は、金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなり、上記床タイルに取り付けられている。上記排水誘導具は、上記床タイルの側面の一部に接触してこれを覆う板状の基部を有している。上記基部は、上記床タイルの上記側面のうちの当該床タイルの上記天面側の縁に達している。
【0009】
上記本発明の第1の局面に基づく排水誘導具付き床タイルにあっては、上記排水誘導具が、上記基部のうちの上記床タイルの上記天面側の端部から上記床タイル側に向けて突出した板状の天面側突出部をさらに有していてもよく、また、その場合には、上記天面側突出部が、上記床タイルの上記天面の一部に接触してこれを覆っていてもよい。
【0010】
上記本発明の第1の局面に基づく排水誘導具付き床タイルにあっては、上記基部が、上記床タイルの上記側面のうちの当該床タイルの底面側の縁に達していてもよい。その場合には、上記排水誘導具が、上記基部のうちの上記床タイルの上記底面側の端部から上記床タイル側に向けて突出した板状の底面側突出部をさらに有していてもよく、また、その場合には、上記底面側突出部が、上記床タイルの上記底面の一部に接触してこれを覆っていてもよい。さらに、その場合には、上記天面側突出部および上記底面側突出部によって上記床タイルが挟み込まれることにより、上記排水誘導具が、上記床タイルに係止していてもよい。
【0011】
本発明の第2の局面に基づく排水誘導具付き床タイルは、第1床タイルおよび第2床タイルと、排水誘導具とを備えている。上記第1床タイルおよび上記第2床タイルは、無機材料からなり、互いに隣り合うように配置された、天面が親水性のものである。上記排水誘導具は、金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなり、上記第1床タイルおよび上記第2床タイルの間に配置されている。上記排水誘導具は、上記第1床タイルの側面の一部に接触してこれを覆う板状の第1基部と、当該第1基部から上記第2床タイル側に向けて突き出た板バネ部とを有しており、上記板バネ部が弾性変形した状態で上記第2床タイルの側面に当接することにより、上記排水誘導具が、上記第1床タイルおよび上記第2床タイルに取り付けられている。上記第1基部は、上記第1床タイルの上記側面のうちの当該第1床タイルの上記天面側の縁に達している。
【0012】
上記本発明の第2の局面に基づく排水誘導具付き床タイルにあっては、上記排水誘導具が、上記第1基部のうちの上記第1床タイルの上記天面側の端部から上記第1床タイル側に向けて突出した板状の第1天面側突出部をさらに有していてもよく、また、その場合には、上記第1天面側突出部が、上記第1床タイルの上記天面の一部に接触してこれを覆っていてもよい。
【0013】
上記本発明の第2の局面に基づく排水誘導具付き床タイルにあっては、上記排水誘導具が、上記第2床タイルの上記側面の一部に接触してこれを覆う板状の第2基部をさらに有していてもよく、また、その場合には、上記板バネ部が、当該板バネ部の上記第1基部側とは反対側の端部において、上記第2基部に接続していてもよい。
【0014】
上記本発明の第2の局面に基づく排水誘導具付き床タイルにあっては、上記排水誘導具が、上記第2基部のうちの上記第2床タイルの上記天面側の端部から上記第2床タイル側に向けて突出した板状の第2天面側突出部をさらに有していてもよく、また、その場合には、上記第2天面側突出部が、上記第2床タイルの上記天面の一部に接触してこれを覆っていてもよい。
【0015】
本発明に基づく排水誘導具付き床タイルの施工方法は、以下の工程を備える。
(a)無機材料からなり、天面が親水性である床タイルが準備される工程。
(b)金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなり、板状の基部を有する排水誘導具が準備される工程。
(c)上記基部が、上記床タイルの側面の一部に接触してこれを覆うとともに、上記基部が、上記床タイルの上記側面のうちの当該床タイルの上記天面側の縁に達するように、上記排水誘導具が上記床タイルに取り付けられる工程。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成にて床タイルの排水性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図2】
図1に示す排水誘導具付き床タイルの斜視図である。
【
図3】
図1に示す排水誘導具付き床タイルの断面図である。
【
図4】実施の形態に係る排水誘導具付き床タイルの施工方法を示す断面図である。
【
図5】
図2に示す排水誘導具付き床タイルの拡大断面図である。
【
図6】第1変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図7】第2変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図8】第3変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図9】第4変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図10】第4変形例に係る排水誘導具付き床タイルの斜視図である。
【
図11】第4変形例に係る排水誘導具付き床タイルの断面図である。
【
図12】第5変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図13】第5変形例に係る排水誘導具付き床タイルの斜視図である。
【
図14】第5変形例に係る排水誘導具付き床タイルの断面図である。
【
図15】第6変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図16】第6変形例に係る排水誘導具付き床タイルの斜視図である。
【
図17】第6変形例に係る排水誘導具付き床タイルの断面図である。
【
図18】第7変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図19】第7変形例に係る排水誘導具付き床タイルの断面図である。
【
図20】第8変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
【
図21】第8変形例に係る排水誘導具付き床タイルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
図2は、
図1に示す排水誘導具付き床タイルの斜視図であり、
図3は、
図1中に示すIII-III線に沿った断面図である。まず、これら
図1ないし
図3を参照して、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aについて説明する。
【0020】
図1ないし
図3に示すように、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aは、たとえば大型商業施設に代表されるような比較的大型の建屋の屋上バルコニーやベランダ等の床面にアレイ状に敷き詰められた複数の床タイル2Aのうちの1つである第1床タイル21と、第1床タイル21に取り付けられることで当該第1床タイル21の排水性を向上させることが可能に構成された8つの排水誘導具3Aとを備えている。ここで、第1床タイル21と、これに互いに隣り合うように配置された床タイル2Aとの間には、目地部40が格子状に形成されており、第1床タイル21に降ったあるいは撒かれた水は、当該目地部40を伝って排水溝へと誘導される。
【0021】
床タイル2Aは、平面視略矩形状の板状の外形を有しており、天面および底面と、これらを接続する4つの側面とを含んでいる。なお、床タイル2Aの平面視した場合の外形は、特にこれが略矩形状に限定されるものではなく、たとえば、多角形状、略円形状、略楕円形状等であってもよい。床タイル2Aとしては、たとえば600mm角で厚みが20mmの大きさのものが用いられるが、床タイル2Aの大きさは、特にこれに限定されるものではなく、施工条件等に応じて適宜変更が可能である。
【0022】
床タイル2Aは、無機材料にて構成されることが好ましく、たとえば磁器質材料、せっ器質材料等が用いられる。本実施の形態においては、床タイル2Aとして磁器質材料からなるものが用いられている。また、床タイル2Aには、その天面が親水性となるように表面加工が施されており、これにより、床タイル2Aの天面を滑り難いものにすることができる。
【0023】
排水誘導具付き床タイル1Aにおいては、8つの排水誘導具3Aが、上述した第1床タイル21に取り付けられている。具体的には、第1床タイル21の4つの側面の各々に、2つずつ排水誘導具3Aが配置されている。
【0024】
ここで、以下の説明においては、
図1に示すように、第1床タイル21と互いに隣り合うように配置された複数の床タイル2Aのうち、平面視した場合に第1床タイル21の右側に位置するものを第2床タイル22と称する。また、第1床タイル21の4つの側面のうちの第2床タイル22に面しているものを第1側面21bと称し、第2床タイル22の4つの側面のうちの第1床タイル21に面しているものを第2側面22bと称する。
【0025】
また、以下の説明においては、
図1に示すように、第1側面21bに配置された2つの排水誘導具3Aのうち、平面視した場合に相対的に下側に位置している排水誘導具31の構成および効果について説明するが、当該排水誘導具31について説明する構成は、これ以外の排水誘導具3Aにも同様に適用されるものである。
【0026】
図1ないし
図3に示すように、排水誘導具31は、第1床タイル21の第1側面21bの一部に接触してこれを覆う板状の第1基部31aと、当該第1基部31aから第2床タイル22側に突き出た板バネ部31bとを有している。
【0027】
第1基部31aは、その上端が、第1側面21bのうちの第1床タイル21の第1天面21a側の縁に達しているとともに、その下端が、第1側面21bのうちの第1床タイル21の第1底面21c側の縁に達している。
【0028】
排水誘導具31は、第1基部31aのうちの第1天面21a側の端部から第1床タイル21側に向けて突出した板状の第1天面側突出部31cをさらに有しており、当該第1天面側突出部31cは、第1天面21aの一部に接触してこれを覆っている。
【0029】
排水誘導具31としては、たとえば高さが20mm、幅が20mm、厚みが0.8mmの大きさのものが用いられるが、排水誘導具31の大きさは、特にこれに限定されるものではなく、床タイル2Aの大きさや施工条件等に応じて適宜変更が可能である。
【0030】
排水誘導具31の材質は、金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなるものであれば特にこれが制限されるものではなく、たとえばステンレス、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDMゴム)等を用いることができる。このように構成することにより、第1床タイル21の表面に水溜まりを生じさせ難くすることができるが、この点については、後において詳述することとする。
【0031】
図4は、実施の形態に係る排水誘導具付き床タイルの施工方法を示すための、
図1中に示すIII-III線に対応した位置における断面図であり、具体的には、
図4は、床タイルに排水誘導具が取り付けられる前の状態を示す断面図である。次に、この
図4を参照して、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aの施工方法について説明する。
【0032】
図4に示すように、排水誘導具31が第1床タイル21へと取り付けられるに際しては、予め、無機材料からなり、天面が親水性である第1床タイル21およびこれに隣り合う床タイル2Aが敷き詰められて準備される。その際、第1床タイル21と、これに隣り合う床タイル2Aとの間には、上述した目地部40が形成される。
【0033】
この状態において、まず、金属材料および樹脂材料のうちの少なくともいずれかからなり、板状の第1基部31aと、板バネ部31bと、板状の第1天面側突出部31cとを有する排水誘導具が準備され、当該排水誘導具31が、第1床タイル21の上方の所定位置に位置決めされて配置される。次に、排水誘導具31の第1基部31aおよび板バネ部31bが、第1床タイル21の第1側面21bと第2床タイル22の第2側面22bとの間の目地部40に挿入されることとなるように、排水誘導具31が、第1床タイル21に向けて(すなわち、
図4中の矢印AR1方向に向けて)移動させられる。
【0034】
このようにして移動させられた排水誘導具31は、
図3に示すように、板バネ部31bが弾性変形した状態で第2側面22bに当接することになり、これにより、排水誘導具31が、第1床タイル21および第2床タイル22の間に配置されてこれらに取り付けられることになる。このようにして取り付けられた排水誘導具31は、その第1基部31aが第1床タイル21の第1側面21bの一部に接触してこれを覆うとともに、当該第1基部31aが、第1側面21bのうちの第1床タイル21の第1天面21a側の縁に達することとなる。
【0035】
図5は、
図2中に示すV-V線に沿った模式拡大断面図である。次に、この
図5および上述した
図2を参照して、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aによる排水効果について説明するとともに、排水誘導具付き床タイル1Aによって当該排水効果が奏される理由についての考察を示す。
【0036】
上述したように、屋外に設置された第1床タイル21は、降雨や撒水によってその第1天面21aが濡れることがある。その際、第1天面21aには、以下に示す式1によって算出される表面張力γSLに起因して、その表面に水溜まりが生じやすくなる。したがって、第1床タイル21の第1天面21aにおける排水効果を高めるためには(すなわち、表面張力γSLを小さくするためには)、第1天面21aにおける水に対する接触角θを如何に小さくするかが重要になる。
【0037】
(式1) γSL=γS-γL・cosθ
ここで、「γSL」は、固体と液体との界面にはたらく表面張力を示し、「γS」は、固体と気体との界面にはたらく表面張力を示し、「γL」は、液体と気体との界面にはたらく表面張力を示し、「θ」は、接触角を示す。
【0038】
ここで、
図2に示すように、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aにあっては、上述したように、排水誘導具31は、第1床タイル21の第1側面21bの一部に接触してこれを覆う板状の第1基部31aを有しており、当該第1基部31aが、第1床タイル21の第1側面21bのうちの当該第1床タイル21の第1天面21a側の縁に達しているとともに、排水誘導具31が、第1基部31aのうちの第1床タイル21の第1天面21a側の端部から当該第1床タイル21側に向けて突出した板状の第1天面側突出部31cをさらに有しており、当該第1天面側突出部31cが、第1床タイル21の第1天面21aの一部に接触してこれを覆っている。
【0039】
このように構成することにより、第1床タイル21の第1天面21a上には、排水誘導具31の第1天面側突出部31cが位置することになり、当該第1床タイル21の第1天面21aが濡れた状態においては、第1床タイル21の第1天面21a側の位置において、水と第1床タイル21との界面が存在するばかりでなく、水と排水誘導具31との界面も存在することになる。
【0040】
上述したように、第1床タイル21の第1天面21aは親水性であり、第1床タイル21の第1天面21a側の位置における水に対する第1床タイル21接触角θは、概ね20°以上40°以下である。一方で、排水誘導具31は、上述したように金属材料および樹脂材料の少なくともいずれかにて構成されているため、第1床タイル21の第1天面21a側の位置における水に対する排水誘導具31の接触角θは、概ね20°未満になるものと推察される。
【0041】
そのため、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aとすることにより、第1床タイル21の第1天面21aが濡れた場合において、水に対する接触角θが小さくなる水と排水誘導具31との界面が第1床タイル21の第1天面21a側の位置に存在することになるため、第1床タイル21に排水誘導具31を取り付けなかった場合に比べ、第1天面21aにおける表面張力γSLを小さくすることができる。したがって、当該構成とすることにより、排水効果が大幅に高まることになり、結果として水溜まりを生じさせ難くすることができる。
【0042】
ここで、上述したように第1床タイル21は無機材料にて構成されているため、
図5に示すように、第1床タイル21の第1天面21aには、微細な凹凸が生じている。そのため、第1床タイル21の第1天面21aと当該第1天面21aを覆う排水誘導具31の第1天面側突出部31cとの間には、互いに連なる隙間50が位置している。また、同様に、第1床タイル21の第1側面21bと当該第1側面21bを覆う排水誘導具31の第1基部31aとの間にも、互いに連なる隙間50が位置している。
【0043】
そのため、第1天面21aを覆う第1天面側突出部31cに接触した水の一部は、第1天面21aと第1天面側突出部31cとの間に位置する隙間50を伝って第1床タイル21の第1天面21aの縁にまで達し、さらに、第1側面21bと第1基部31aとの間に位置する隙間50を伝って下方へと流れ落ちることになる。また、第1天面21aを覆う第1天面側突出部31cに接触した水の他の一部は、排水誘導具31の第1天面側突出部31cの側面および第1基部31aの側面を伝って下方へと流れ落ちることになる。
【0044】
なお、上述したように、第1床タイル21の第1天面21aが親水性であるため、当該第1天面21aに溜まった水は、比較的濡れ広がりやすい。そのため、第1天面21aのうちの、排水誘導具31の第1天面側突出部31cから遠い位置に溜まった水についても、これが濡れ広がることにより、第1天面21aを覆う第1天面側突出部31cに順次接触することになる。したがって、上記構成を採用することにより、第1床タイル21の第1天面21a上に残水が生じることが効果的に抑制できることになる。
【0045】
以上において説明したように、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aとすることにより、床タイル2Aの側面に排水誘導具3Aを取り付けるという簡易な構成にて、床タイル2Aの排水性を大幅に向上させることが可能になる。
【0046】
なお、以上において説明した排水誘導具付き床タイル1Aにおける排水性向上の効果は、後述する検証試験によって確認されている。
【0047】
また、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aとした場合には、床タイル2Aの初期の施工時のみならず、施工済みの床タイル2Aに対しても、排水誘導具3Aを取付けることで排水性を向上させることが可能になる。したがって、この点においても、利便性に資するものとすることができる。
【0048】
さらに、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aにおいては、排水誘導具3Aが、板バネ部31bの弾性力によって床タイル2Aに取り付けられるのみではなく、第1天面側突出部31cが第1天面21aの一部に接触することでこれに掛止している。したがって、このように構成することにより、排水誘導具3Aが床タイル2Aから脱落してしまうことが未然に防止でき、排水誘導具31の床タイル2Aへの取り付けを確実ならしめることができる。
【0049】
なお、本実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aにおいては、上述したように、第1床タイル21の4つの側面の各々に2つずつ排水誘導具3Aが配置されているが、第1床タイル21に取り付けられる排水誘導具3Aの数および配置は、これに限定されるものではなく、第1床タイル21の大きさや必要とされる排水性能等に応じて適宜変更可能である。また、必ずしも第1床タイル21の4つの側面全てに排水誘導具3Aが配置される必要はなく、たとえば1つの側面のみに排水誘導具3Aが配置されることで一方向に排水されるようにしてもよい。
【0050】
(第1および第2変形例)
図6および
図7は、それぞれ第1および第2変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。以下、これら
図6および
図7を参照して、上述した実施の形態に基づいた第1および第2変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A1,1A2について説明する。
【0051】
図6および
図7に示すように、第1および第2変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A1,1A2は、上述した実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aと比較した場合に、床タイル2A1,2A2の大きさと、第1床タイル21に取り付けられている排水誘導具3Aの数および配置とが相違している。
【0052】
図6に示すように、第1変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A1においては、床タイル2A1が、上述した実施の形態に係る床タイル2Aに比較して、その外形が小さく構成されており、これに伴い、排水誘導具付き床タイル1A1においては、第1床タイル21の4つの側面の各々に1つずつ排水誘導具3Aが配置されている。
【0053】
図7に示すように、第2変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A2においては、床タイル2A2が、上述した実施の形態に係る床タイル2Aに比較して、その外形が大きく構成されており、これに伴い、排水誘導具付き床タイル1A2においては、第1床タイル21の4つの側面の各々に3つずつ排水誘導具3Aが配置されている。
【0054】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果と同様の効果が得られることになる。
【0055】
(第3変形例)
図8は、第3変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。以下、この
図8を参照して、上述した実施の形態に基づいた第3変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A3について説明する。
【0056】
図8に示すように、第3変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A3は、上述した実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aと比較した場合に、排水誘導具3Aが、第1床タイル21だけでなく、これと隣り合うように配置されている他の床タイル2Aにも取り付けられている点において相違している。
【0057】
具体的には、排水誘導具付き床タイル1A3にあっては、第1床タイル21と隣り合うように配置されている床タイル2Aの4つの側面の各々に2つずつ排水誘導具3Aが配置されている。また、第1床タイル21および第2床タイル22に着目した場合には、第1床タイル21の第1側面21bに取り付けられている排水誘導具3Aと第2床タイル22の第2側面22bに取り付けられている排水誘導具3Aとは、第1床タイル21と第2床タイルとの間に位置する部分の目地部40に沿って見た場合に交互に位置することとなるように配置されており、他の排水誘導具3Aも同様に配置されている。なお、これらの排水誘導具3Aの配置は、これに限定されるものではなく、互いに干渉しないように配置されていればよい。
【0058】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果と同様の効果を得られることになる。
【0059】
(第4変形例)
図9は、第4変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
図10は、
図9に示す排水誘導具付き床タイルの斜視図であり、
図11は、
図9中に示すXI-XI線に沿った排水誘導具付き床タイルの断面図である。以下、これら
図9ないし
図11を参照して、上述した実施の形態に基づいた第4変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A4について説明する。
【0060】
図9ないし
図11に示すように、第4変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A4は、排水誘導具3A4の形状および配置が、上述した実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aの排水誘導具3Aのそれらと相違している。ここで、第4変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A4における排水誘導具3A4の配置は、上述した第3変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A3の配置と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0061】
本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A4が具備する複数の排水誘導具3A4の各々は、上述した実施の形態に係る排水誘導具3Aが具備する排水誘導具31と比較した場合に、当該排水誘導具31が有していた第1基部31aおよび板バネ部31bを有している一方、当該排水誘導具31が有していた第1天面側突出部31c(
図1ないし
図4参照)を有していない点において、その構成が相違している。
【0062】
すなわち、
図10および
図11に示すように、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A4が具備する複数の排水誘導具3A4のうちの一つである排水誘導具31に着目してみれば、当該排水誘導具31は、第1床タイル21の第1側面21bの一部に接触してこれを覆う板状の第1基部31aと、当該第1基部31aから第2床タイル22側に突き出た板バネ部31bとのみを有している。
【0063】
このように構成することにより、第1床タイル21の第1天面21aの縁には、排水誘導具31の第1基部31aのうちの第1床タイル21の第1天面21a側の端部が露出して位置することになり、第1床タイル21の第1天面21aが濡れた状態においては、第1床タイル21の第1天面21a側の位置において、水と第1床タイル21との界面が存在するばかりでなく、水と排水誘導具31との界面も存在することになる。
【0064】
そのため、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A4とすることにより、第1床タイル21の第1天面21aが濡れた場合において、水に対する接触角θが小さくなる水と排水誘導具31との界面が第1床タイル21の第1天面21a側の位置に存在することになるため、第1床タイル21に排水誘導具31を取り付けなかった場合に比べ、第1天面21aにおける表面張力γSLを小さくすることができる。したがって、当該構成を作用することにより、排水効果が大幅に高まることになり、結果として水溜まりを生じさせ難くすることができる。
【0065】
また、第1天面21aの縁において露出している第1基部31aに接触した水の一部は、第1側面21bと第1基部31aとの間に位置する隙間50を伝って下方へと流れ落ちることになり、第1天面21aの縁において露出している第1基部31aに接触した水の他の一部は、当該第1基部31aの側面を伝って下方へと流れ落ちることになる。
【0066】
したがって、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A4とすることにより、上述した実施の形態において説明した効果と同様の効果を得られるだけでなく、第1天面側突出部31cが第1床タイル21の第1天面21aを覆っていないため、排水誘導具付き床タイル1A4の美観を向上させることができる。
【0067】
なお、以上において説明した排水誘導具付き床タイル1A4における排水性向上の効果は、後述する検証試験によって確認されている。
【0068】
(第5変形例)
図12は、第5変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
図13は、
図12に示す排水誘導具付き床タイルの斜視図であり、
図14は、
図12中に示すXIV-XIV線に沿った排水誘導具付き床タイルの断面図である。以下、これら
図12ないし
図14を参照して、上述した実施の形態に基づいた第5変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A5について説明する。
【0069】
図12ないし
図14に示すように、第5変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A5は、排水誘導具3A5の形状および配置が、上述した実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aの排水誘導具3Aのそれらと相違している。ここで、第5変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A5における排水誘導具3A5の配置は、上述した第3変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A3の配置と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0070】
本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A5が具備する複数の排水誘導具3A5の各々は、上述した実施の形態に係る排水誘導具3Aが具備する排水誘導具31と比較した場合に、当該排水誘導具31が有していた第1基部31aおよび第1天面側突出部31cを有している一方、当該排水誘導具31が有していた板バネ部31b(
図1ないし
図4参照)を有していない点において、その構成が相違している。
【0071】
すなわち、
図13および
図14に示すように、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A5が具備する複数の排水誘導具3A5のうちの一つである排水誘導具31に着目してみれば、当該排水誘導具31は、第1床タイル21の第1側面21bの一部に接触してこれを覆う板状の第1基部31aと、当該第1基部31aのうちの第1天面21a側の端部から第1床タイル21側に向けて突出した板状の第1天面側突出部31cとのみを有している。
【0072】
ここで、板バネ部31bを有していない排水誘導具3A5の排水誘導具31は、
図13および
図14に示すように、第1基部31aのうちの第1側面21bに面する側の主面における幅方向の一対の端部に設けられた接着部31s(
図13中においては、色が付された部分が当該接着部31sに該当する)を介して、第1床タイル21の第1側面21bに取り付けられている。
【0073】
このように、第1基部31aのうちの第1側面21bに面する側の主面の全面を第1床タイル21に接着することなく部分的に接着することにより、上述した第1側面21bと第1基部31aとの間に位置する隙間50のすべてが接着部31sによって塞がれてしまうことが防止できることになる。なお、第1基部31aのうちの第1側面21bに面する側の主面に設けられる接着部31sの数および位置は、特にこれが制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0074】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果と同様の効果を得られることになる。
【0075】
(第6変形例)
図15は、第6変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図である。
図16は、
図15に示す排水誘導具付き床タイルの斜視図であり、
図17は、
図15中に示すXVII-XVII線に沿った排水誘導具付き床タイルの断面図である。以下、これら
図15ないし
図17を参照して、上述した実施の形態に基づいた第6変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A6について説明する。
【0076】
図15ないし
図17に示すように、第6変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A6は、排水誘導具3A6の形状および配置が、上述した実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aの排水誘導具3Aのそれらと相違している。ここで、第6変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A6における排水誘導具3A6の配置は、上述した第3変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A3の配置と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0077】
本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A6が具備する複数の排水誘導具3A6の各々は、上述した実施の形態に係る排水誘導具3Aが具備する排水誘導具31と比較した場合に、当該排水誘導具31が有していた第1基部31aを有している一方、当該排水誘導具31が有していた板バネ部31bおよび第1天面側突出部31c(
図1ないし
図4参照)を有していない点においてのみ、その構成が相違している。
【0078】
すなわち、
図16および
図17に示すように、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A6が具備する複数の排水誘導具3A6のうちの一つである排水誘導具31に着目してみれば、当該排水誘導具31は、第1床タイル21の第1側面21bの一部に接触してこれを覆う板状の第1基部31aのみを有している。
【0079】
ここで、板バネ部31bを有していない排水誘導具3A6の排水誘導具31は、
図16および
図17に示すように、第1基部31aのうちの第1側面21bに面する側の主面における幅方向の一対の端部に設けられた接着部31s(
図16中においては、色が付された部分が当該接着部31sに該当する)を介して、第1床タイル21の第1側面21bに取り付けられている。
【0080】
このように、第1基部31aのうちの第1側面21bに面する側の主面の全面を第1床タイル21に接着することなく部分的に接着することにより、上述した第1側面21bと第1基部31aとの間に位置する隙間50のすべてが接着部31sによって塞がれてしまうことが防止できることになる。なお、第1基部31aのうちの第1側面21bに面する側の主面に設けられる接着部31sの数および位置は、特にこれが制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0081】
このように構成した場合には、上述した実施の形態において説明した効果と同様の効果を得られるだけでなく、第1天面側突出部31cが第1床タイル21の第1天面21aを覆っていないため、排水誘導具付き床タイル1A6の美観を向上させることができる。
【0082】
なお、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A6における排水性向上の効果は、後述する検証試験によって確認されている。
【0083】
また、本変形例に係る排水誘導具31の第1床タイル21への取り付けは、上述した接着部31sを用いた方法に限定されない。たとえば、排水誘導具31が、EPDMゴム等の弾性材料によって構成されるとともに、その第1基部31aの厚みが、目地部40の幅(すなわち、第1床タイル21の第1側面21bと第2床タイル22の第2側面22bとの間の距離)よりもわずかに大きくなるように形成され、このように構成された排水誘導具31がその厚み方向に圧縮された状態で目地部40に挿入されることにより、排水誘導具31が、もとの厚みに復元しようとすることで第1側面21bおよび第2側面22bに当接した状態でこれらの間に取り付けられてもよい。
【0084】
(第7変形例)
図18は、第7変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図であり、
図19は、
図18中に示すXIX-XIX線に沿った排水誘導具付き床タイルの断面図である。以下、これら
図18および
図19を参照して、上述した実施の形態に基づいた第7変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A7について説明する。
【0085】
図18および
図19に示すように、第7変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A7は、排水誘導具3A7の形状および配置が、上述した実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aの排水誘導具3Aのそれらと相違している。ここで、第7変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A7における排水誘導具3A7の配置は、上述した第3変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A3の配置と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0086】
本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A7が具備する複数の排水誘導具3A7の各々は、上述した実施の形態に係る排水誘導具3Aが具備する排水誘導具31と比較した場合に、当該排水誘導具31が有していた第1基部31aおよび第1天面側突出部31cを有しているとともに、後述する第1底面側突出部31dを有している一方、当該排水誘導具31が有していた板バネ部31b(
図1ないし
図4参照)を有していない点において、その構成が相違している。
【0087】
すなわち、
図19に示すように、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A7が具備する複数の排水誘導具3A7のうちの一つである排水誘導具31に着目してみれば、当該排水誘導具31は、第1床タイル21の第1側面21bの一部に接触してこれを覆う板状の第1基部31aと、当該第1基部31aのうちの第1天面21a側の端部から第1床タイル21側に向けて突出した板状の第1天面側突出部31cと、当該第1基部31aのうちの第1底面21c側の端部から第1床タイル21側に向けて突出した板状の第1底面側突出部31dとを有している。ここで、第1底面側突出部31dは、第1底面21cの一部に接触してこれを覆っている。
【0088】
このように構成された排水誘導具31は、その第1天面側突出部31cおよび第1底面側突出部31dによって第1床タイル21を挟み込むことにより、第1床タイル21に係止されることで取り付けられている。
【0089】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果と同様の効果を得られることになる。
【0090】
(第8変形例)
図20は、第8変形例に係る排水誘導具付き床タイルの平面図であり、
図21は、
図20中に示すXXI-XXI線に沿った排水誘導具付き床タイルの断面図である。以下、これら
図20および
図21を参照して、上述した実施の形態に基づいた第8変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A8について説明する。
【0091】
図20および
図21に示すように、第8変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A8は、排水誘導具3A8の形状および配置が、上述した実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aの排水誘導具3Aのそれと相違している。
【0092】
本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A8が具備する複数の排水誘導具3A8の各々は、上述した実施の形態に係る排水誘導具3Aが具備する排水誘導具31と比較した場合に、当該排水誘導具31が有していた第1基部31a、板バネ部31bおよび第1天面側突出部31cを有している一方、さらに後述する第2基部31eおよび第2天面側突出部31fを有している点において、その構成が相違している。なお、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A8においては、これら複数の排水誘導具3A8の各々が、上述した第1床タイル21および第2床タイル22を含む、隣り合う床タイル2Aの間に位置する目地部40に配置されている。
【0093】
より具体的には、本変形例に係る排水誘導具付き床タイル1A8が具備する複数の排水誘導具3A8のうちの一つである排水誘導具31に着目してみれば、当該排水誘導具31は、第1床タイル21の第1側面21bの一部に接触してこれを覆う板状の第1基部31aと、当該第1基部31aのうちの第1天面21a側の端部から第1床タイル21側に向けて突出した板状の第1天面側突出部31cと、第2床タイル22の第2側面22bの一部に接触してこれを覆う板状の第2基部31eと、当該第2基部31eのうちの第2天面22a側の端部から第2床タイル22側に向けて突出した板状の第2天面側突出部31fと、第1基部31aから第2床タイル22側に突き出ることにより、その第1基部31a側とは反対側の端部において第2基部31eに接続する板バネ部31bとを有している。
【0094】
このように構成した場合には、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果を得られることになり、互いに隣り合うように配置されている第1床タイル21および第2床タイル22の両方の排水性を、1つの部材である排水誘導具31によって向上させることができる。
【0095】
(検証試験)
検証試験においては、排水誘導具のサンプルを複数種類準備し、これらのサンプルを取り付けた場合およびこれらを取り付けなかった場合における床タイルの排水状況を目視によって確認することにより、排水誘導具が床タイルの排水性に及ぼす影響を検証した。
【0096】
本検証試験においては、排水誘導具のサンプルとして、SUS304からなり、実施の形態に係る排水誘導具3Aと同形状(後述する
図22においては、L型と称する)の排水誘導具(以降、説明の便宜上サンプル1と称する)と、SUS304からなり、第4変形例に係る排水誘導具3A4と同形状(T型)の排水誘導具(サンプル2)と、EPDMゴムからなり、第6変形例に係る排水誘導具3A6と同形状(I型)の排水誘導具(サンプル3)と、の合計で3種類のサンプルを準備するとともに、床タイルとして、磁器質材料からなり、600mm角で厚みが20mmの大きさのものを準備した。
【0097】
排水誘導具が床タイルの排水性に及ぼす影響を検証するにあたっては、まず、実施の形態に係る排水誘導具付き床タイル1Aと同様に、床タイルの4つの側面の各々に2つずつ、サンプル1を取り付けた(
図1参照)。次に、床タイルに撒水することでその天面を水で濡らし、当該床タイルの天面を経過観察することにより、排水に要する時間を測定した。なお、撒水量は、床タイルの天面および側面の全体が十分に水に濡れる量とした。同様の検証をサンプル2,3についても行ない、さらに、排水誘導具が取り付けられていない床タイルについても行なった。
【0098】
図22は、上述した要領にて行なった検証試験の結果を示す表である。当該表においては、各サンプルを取り付けた場合および取り付けなかった場合の床タイルにおける30分経過時点の排水率と、60分経過時点の残水量と、排水完了時間と、これらに対する評価とを示している。ここで、本検証試験においては、床タイルの天面における残水量が50cc以下となった時点で排水完了としている。また、
図22においては、排水完了時間が30分以下であったサンプルを「優」と評価し、排水完了時間が30分を超えて60分以下であったサンプルを「良」と評価し、排水時間が60分を超えたサンプルを「不可」と評価した。なお、60分を超えても排水が完了しなかったサンプルについては、それ以上の経過観察は行なわなかった。
【0099】
本検証試験の結果、ステンレスあるいはEPDMゴムからなる排水誘導具が床タイルに取り付けられることにより、床タイルの排水性が大幅に向上することがわかった。
【0100】
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0101】
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0102】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0103】
1A,1A1~1A8 排水誘導具付き床タイル、2A,2A1,2A2 床タイル、21 第1床タイル、21a 第1天面、21b 第1側面、21c 第1底面、22 第2床タイル、22a 第2天面、22b 第2側面、3A,3A4~3A8,31 排水誘導具、31a 第1基部、31b 第1天面側突出部、31c 板バネ部、31d 第1底面側突出部、31e 第2基部、31f 第2天面側突出部、31s 接着部、40 目地部、50 隙間。