(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097823
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】排水管継手、及び排水管継手に使用される誘導ガイド部材
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20230703BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/12 D
F16L5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214152
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390013516
【氏名又は名称】株式会社小島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 誠造
(72)【発明者】
【氏名】加古 洋三
(72)【発明者】
【氏名】岩槻 剛史
(72)【発明者】
【氏名】貴島 雅大
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB07
2D061AC06
2D061AC07
2D061AD01
(57)【要約】
【課題】排水管継手の汎用性を高くして、排水管継手を中、高層等の建物から超高層建物にまで使用できるようにする。
【解決手段】床スラブの貫通部分に挿通されて上階と下階との排水立て管を接続するとともに、排水横枝管が接続される排水管継手であって、胴部21と、胴部21の上端位置に形成される上部受け口22と、胴部21の上部側面に形成される横枝管受け口24と、横枝管受け口24よりも下方に位置する胴部21の内周面に形成されており、流下する排水を旋回させる旋回ガイド34とを備えており、上部受け口22の下側には、排水立て管から流下する排水を旋回させて胴部21の内周面の旋回ガイド34に導くための誘導ガイド部材50が後付け可能に構成されており、誘導ガイド部材50は、後付けされる際に、上部受け口22から挿入されてその上部受け口22の下側に取付けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上階と下階とを仕切る床スラブの貫通部分に挿通されて上階と下階との排水立て管を接続するとともに、前記床スラブ上の排水横枝管が接続される排水管継手であって、
排水を流下させるための胴部と、
前記胴部の上端位置に形成されて、前記上階の排水立て管が接続される上部受け口と、
前記胴部の上部側面に形成されて、前記排水横枝管が接続される横枝管受け口と、
前記横枝管受け口よりも下方に位置する前記胴部の内周面に形成されており、流下する排水を旋回させる旋回ガイドと、
を備えており、
前記上部受け口の下側には、前記上階の排水立て管から流下する排水を旋回させて前記胴部の内周面の旋回ガイドに導くための誘導ガイド部材が後付け可能に構成されており、
前記誘導ガイド部材は、後付けされる際に、前記上部受け口から挿入されてその上部受け口の下側に取付けられる排水管継手。
【請求項2】
請求項1に記載された排水管継手であって、
前記誘導ガイド部材は、上端に外フランジ部を備える円筒部と、その円筒部の内側に固定された旋回ガイド本体部とを備えており、
前記誘導ガイド部材は、前記上部受け口の下端に形成された内フランジ部に対して前記円筒部が挿通され、前記円筒部の外フランジ部が前記内フランジ部に上方から重ねられることで、前記上部受け口の下側に取付けられる排水管継手。
【請求項3】
請求項2に記載された排水管継手であって、
前記誘導ガイド部材の円筒部の内側には、前記旋回ガイド本体部の下流端よりも下流側の位置に一定幅で前記円筒部の径方向内側に突出する帯板状の縦壁部が形成されており、
前記誘導ガイド部材の旋回ガイド本体部にガイドされて旋回する排水と、前記縦壁部に沿って流下する排水とが合流し、合流した排水が前記胴部の内周面の前記旋回ガイドに導かれる排水管継手。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された排水管継手であって、
前記誘導ガイド部材の肉厚寸法は、前記胴部の肉厚寸法の1/2よりも小さな値に設定されている排水管継手。
【請求項5】
請求項4に記載された排水管継手であって、
前記誘導ガイド部材はステンレス鋼により形成されている排水管継手。
【請求項6】
請求項1に記載された排水管継手であって、
前記上部受け口には、その上部受け口と前記上階の排水立て管間を水密な状態でシールするシール材が設けられており、
前記誘導ガイド部材は、前記シール材と一体成形されている排水管継手。
【請求項7】
建物の上階と下階とを仕切る床スラブの貫通部分に挿通されて上階と下階との排水立て管を接続するとともに、前記床スラブ上の排水横枝管が接続される排水管継手において使用される誘導ガイド部材であって、
前記排水管継手において前記上階の排水立て管が接続される上部受け口の下側に取付けられる構成で、上端位置に外フランジ部を備える円筒部と、
前記円筒部の内側に固定されて、前記上階の排水立て管から流下する排水を旋回させる旋回ガイド本体部と、
を備えており、
前記円筒部が前記上部受け口の下端に形成された内フランジ部に挿通されて、前記円筒部の外フランジ部が前記内フランジ部に対して上方から重ねられることで、前記円筒部と旋回ガイド本体部とが前記上部受け口の下側に取付けられる誘導ガイド部材。
【請求項8】
建物の上階と下階とを仕切る床スラブの貫通部分に挿通されて上階と下階との排水立て管を接続するとともに、前記床スラブ上の排水横枝管が接続される排水管継手において使用される誘導ガイド部材であって、
前記排水管継手において前記上階の排水立て管が接続される上部受け口の下側に取付けられる構成で、前記上階の排水立て管から流下する排水を旋回させる旋回ガイド本体部を備えており、
前記排水管継手の上部受け口には、その上部受け口と前記上階の排水立て管間を水密な状態でシールするシール材が設けられており、
前記旋回ガイド本体部は、前記シール材と一体成形されている誘導ガイド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブの貫通部分に挿通されて上階と下階との排水立て管を接続するとともに、前記床スラブ上の排水横枝管が接続される排水管継手、及び排水管継手に使用される誘導ガイド部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の排水設備で使用される排水管継手が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された排水管継手100は、
図13に示すように、排水を流下させる胴部120を備えている。そして、排水管継手100の胴部120には、上端位置に上階の排水立て管(図示省略)が接続される上部受け口122が形成されており、下端位置に下階の排水立て管(図示省略)が接続される下端接続部124が形成されている。また、排水管継手100の胴部120の上部側面には、
図13、
図14に示すように、床スラブ上の排水横枝管(図示省略)が接続される横枝管受け口126が円周方向に複数個形成されている。さらに、排水管継手100の胴部120の内壁面には、横枝管受け口126よりも低い位置にその胴部120内を流下する排水を旋回させるための第1旋回ガイド128と第2旋回ガイド129とが位相を180°ずらした状態で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記排水管継手100では、第1旋回ガイド128と第2旋回ガイド129とにより流下する排水を旋回させ、胴部120の内壁面に沿って2条の旋回流を発生させる。これにより、胴部120の中央に空気芯を形成して、胴部120内が負圧になるのを防止し、排水管継手100の排水性能を確保している。しかし、建物が高層になるにつれて排水管継手100の胴部120の中央に空気芯を形成することが難しくなる。このため、超高層建物用に使用される排水管継手では、流下する排水をさらに強く旋回させるために、胴部の上下方向の寸法を大きくして、旋回ガイドの数を増加させることが行われている。したがって、一般的には、中、高層建物用の排水管継手100と、超高層建物用の排水管継手とは構造が異なっている。このため、中、高層建物用の排水管継手100と、超高層建物用の排水管継手との二種類の継手を用意することが必要になる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的課題は、排水管継手の汎用性を高くして、排水管継手を中層等の建物から超高層建物にまで使用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブの貫通部分に挿通されて上階と下階との排水立て管を接続するとともに、前記床スラブ上の排水横枝管が接続される排水管継手であって、排水を流下させるための胴部と、前記胴部の上端位置に形成されて、前記上階の排水立て管が接続される上部受け口と、前記胴部の上部側面に形成されて、前記排水横枝管が接続される横枝管受け口と、前記横枝管受け口よりも下方に位置する前記胴部の内周面に形成されており、流下する排水を旋回させる旋回ガイドとを備えており、前記上部受け口の下側には、前記上階の排水立て管から流下する排水を旋回させて前記胴部の内周面の旋回ガイドに導くための誘導ガイド部材が後付け可能に構成されており、前記誘導ガイド部材は、後付けされる際に、前記上部受け口から挿入されてその上部受け口の下側に取付けられる。
【0007】
本発明によると、上部受け口の下側には、上階の排水立て管から流下する排水を旋回させて胴部の内周面の旋回ガイドに導くための誘導ガイド部材が後付け可能に構成されている。このため、誘導ガイド部材を上部受け口の下側に後付けすることで、上階の排水立て管から流下する排水を旋回させて胴部の内周面の旋回ガイドに導けるようになる。これにより、誘導ガイド部材と旋回ガイドとの相乗効果により流下する排水を強く旋回させることが可能になる。即ち、中、高層建物用の排水管継手に対して誘導ガイド部材を後付けすることで超高層建物用の排水管継手として使用できるようになる。このように、誘導ガイド部材を後付けし、あるいは前記誘導ガイド部材を省略することで、排水管継手を超高層建物用、あるいは中、高層建物用に使用できるため、排水管継手の汎用性が高くなる。
【0008】
第2の発明によると、誘導ガイド部材は、上端に外フランジ部を備える円筒部と、その円筒部の内側に固定された旋回ガイド本体部とを備えており、前記誘導ガイド部材は、前記上部受け口の下端に形成された内フランジ部に対して前記円筒部が挿通され、前記円筒部の外フランジ部が前記内フランジ部に上方から重ねられることで、前記上部受け口の下側に取付けられる。即ち、誘導ガイド部材の外フランジ部を上部受け口の下端の内フランジ部に対して上方から重ねることで、誘導ガイド部材を上部受け口の下側に取付けることができるため、排水管継手に対する誘導ガイド部材の取付けが容易になる。
【0009】
第3の発明によると、誘導ガイド部材の円筒部の内側には、旋回ガイド本体部の下流端よりも下流側の位置に一定幅で前記円筒部の径方向内側に突出する帯板状の縦壁部が形成されており、前記誘導ガイド部材の旋回ガイド本体部にガイドされて旋回する排水と、前記縦壁部に沿って流下する排水とが合流し、合流した排水が前記胴部の内周面の前記旋回ガイドに導かれる。
【0010】
第4の発明によると、誘導ガイド部材の肉厚寸法は、胴部の肉厚寸法の1/2よりも小さな値に設定されている。即ち、誘導ガイド部材が排水管継手の胴部に対して十分に薄肉であるため、誘導ガイド部材の取付けによる胴部内の流路面積の減少を極力抑えることができる。
【0011】
第5の発明によると、誘導ガイド部材はステンレス鋼により形成されている。このため、誘導ガイド部材が腐食し難く、また、強度を高くできる。この結果、薄肉の誘導ガイド部材であっても胴部の内壁部に対して耐久性が低下しない。
【0012】
第6の発明によると、上部受け口には、その上部受け口と上階の排水立て管間を水密な状態でシールするシール材が設けられており、誘導ガイド部材は、前記シール材と一体成形されている。このため、誘導ガイド部材を上部受け口の下側に取付け易くなる。また、誘導ガイド部材が上部受け口から外れ難くなる。
【0013】
第7の発明によると、建物の上階と下階とを仕切る床スラブの貫通部分に挿通されて上階と下階との排水立て管を接続するとともに、前記床スラブ上の排水横枝管が接続される排水管継手において使用される誘導ガイド部材であって、前記排水管継手において前記上階の排水立て管が接続される上部受け口の下側に取付けられる構成で、上端位置に外フランジ部を備える円筒部と、前記円筒部の内側に固定されて、前記上階の排水立て管から流下する排水を旋回させる旋回ガイド本体部とを備えており、前記円筒部が前記上部受け口の下端に形成された内フランジ部に挿通されて、前記円筒部の外フランジ部が前記内フランジ部に対して上方から重ねられることで、前記円筒部と旋回ガイド本体部とが前記上部受け口の下側に取付けられる。
【0014】
第8の発明によると、建物の上階と下階とを仕切る床スラブの貫通部分に挿通されて上階と下階との排水立て管を接続するとともに、前記床スラブ上の排水横枝管が接続される排水管継手において使用される誘導ガイド部材であって、前記排水管継手において前記上階の排水立て管が接続される上部受け口の下側に取付けられる構成で、前記上階の排水立て管から流下する排水を旋回させる旋回ガイド本体部を備えており、前記排水管継手の上部受け口には、その上部受け口と前記上階の排水立て管間を水密な状態でシールするシール材が設けられており、前記旋回ガイド本体部は、前記シール材と一体成形されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、排水管継手の汎用性が高くなり、排水管継手を中層等の建物から超高層建物にまで使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係る排水管継手を使用した排水設備の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る排水管継手の平面図である。
【
図3】前記排水管継手の縦断面図(
図2のIII-III矢視(前方から見た)断面図)である。
【
図4】前記排水管継手の胴部における補助ガイド、旋回ガイドの縦断面図である(
図3のIV-IV矢視(左側から見た)断面図)である。
【
図5】前記排水管継手に後付けされる誘導ガイド部材の平面図である。
【
図6】前記誘導ガイド部材を前方から見た一部破断側面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII矢視断面図(左側から見た縦断面図)である。
【
図9】誘導ガイド付継手を使用した排水設備と誘導ガイドなし継手を使用した排水設備とに一定量の排水を流した場合における管内圧力分布を表すグラフである。
【
図10】本発明の変更例(1)に係るシール兼用ガイド部材の一部破断斜視図である。
【
図11】変更例(2)に係る排水管接手の縦断面図である。
【
図12】変更例(3)に係る排水管接手の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
以下、
図1~
図10に基づいて本発明の実施形態1に係る排水管継手の説明を行なう。本実施形態に係る排水管継手20は、集合住宅やオフィスビル等の中、高層建物、及び超高層建物における排水設備に使用される排水管継手である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、排水管継手における前後左右、及び上下に対応している。
【0018】
<排水設備の概要について>
排水設備は、
図1に示すように、建物の上階と下階とを仕切る床スラブCSを貫通して各階に設置されている排水管継手20と、各階の排水管継手20を相互につなぐ排水立て管70と、各階の床上に配管されて各階の排水管継手20に接続される排水横枝管75,76とを備えている。排水管継手20は、耐火防音被覆材80(二点鎖線参照)に覆われた状態で床スラブCSの貫通穴CHに挿通されている。そして、排水設備の施工完了後に、前記貫通穴CHがモルタルMに埋め戻されることで、排水管継手20は床スラブCSに固定される。
【0019】
<排水管継手20の概要について>
排水管継手20は、上階の排水立て管70及び排水横枝管75,76により導かれた排水を合流させて下階の排水立て管70に流下させる継手である。排水管継手20は、鋳鉄製の継手であり、
図1、
図3等に示すように、排水を流下させるための筒状の胴部21を備えている。
【0020】
排水管継手20の胴部21の上端位置には、
図1に示すように、排水立て管70の下端挿し口70sが挿入接続される上部受け口22が形成されている。上部受け口22は、
図3に示すように、略円筒形に形成された円筒部22eと、その円筒部22eの下部位置に設けられた内フランジ部22fとを備えている。そして、上部受け口22の円筒部22e内には、内フランジ部22fに載せられた状態で、排水立て管70の下端挿し口70sと上部受け口22間を水密な状態でシールするゴム製の筒状シール材32が収納されている。また、上部受け口22の内フランジ部22fには、
図3に示すように、誘導ガイド部材50が支持されている。誘導ガイド部材50は、後記するように、上階の排水立て管70から流下した排水を左旋回させるための部材である。
【0021】
排水管継手20の胴部21は、
図1、
図3に示すように、上部受け口22の内フランジ部22fよりも下側が拡径されており、上部受け口22よりも内径寸法が大きな大径円筒部23となっている。そして、胴部21の大径円筒部23の上部側面には、
図2に示すように、左側と前側とに排水横枝管75,76が挿入接続される横枝管受け口24が円周方向に90°間隔で形成されている。横枝管受け口24には、
図3に示すように、その横枝管受け口24と胴部21との境界位置に、排水横枝管75,76の先端面上部が当接可能な挿入ストッパ24sが形成されている。ここで、横枝管受け口24の内側には、上部受け口22の場合と同様に、排水横枝管75,76と横枝管受け口24間をシールするゴム製のシール材(図示省略)が収納されている。なお、本実施形態では、排水管継手20の胴部21の前側と左側とに横枝管受け口24を形成する例を示したが、横枝管受け口24の個数、及び取付け位置は周方向に適宜変更可能である。
【0022】
排水管継手20の胴部21の大径円筒部23の下側位置には、
図1、
図3に示すように、下方で径寸法が徐々に小さくなるように形成されたテーパー部25が形成されている。さらに、胴部21のテーパー部25に下側には、円筒形の下端挿し口部27が形成されている。排水管継手20の胴部21は、
図1に示すように、横枝管受け口24より下側に位置する大径円筒部23と、テーパー部25と、下端挿し口部27の上部とが床スラブCSの貫通穴CH内に収納される。そして、床スラブCSの貫通穴CHから下方に突出する胴部21の下端挿し口部27に対して下階の排水立て管70の上部受け口70uが接続される。
【0023】
排水管継手20の胴部21の内壁面には、
図2~
図4(
図3のIV-IV矢視断面図)に示すように、流下する排水を胴部21の内壁面に沿って左旋回させるための補助ガイド31と旋回ガイド34とが形成されている。旋回ガイド34は、
図2、
図3に示すように、上部受け口22の下側に設けられた誘導ガイド部材50によって左旋回させられた排水を受けて、さらに旋回させるためのガイド羽根である。補助ガイド31は、誘導ガイド部材50の真下位置に配置されて、誘導ガイド部材50では受けられなかった排水を受けて左旋回させるためのガイド羽根である。このため、排水管継手20の胴部21内には、誘導ガイド部材50と旋回ガイド34とによる旋回流と補助ガイド31による旋回流との2条の旋回流が内壁面に沿って流れるようになる。
【0024】
<誘導ガイド部材50について>
誘導ガイド部材50は、上階の排水立て管70から流下した排水を左旋回させるための部材であり、中、高層建物用の排水管継手20を超高層建物(高さ60m超建物)用に仕様変更する場合に使用される。誘導ガイド部材50は、例えば、エポキシ樹脂コーティングされたステンレス鋼(厚みt=1.2mm)により成形されている。誘導ガイド部材50は、
図5~
図7に示すように、排水を左旋回させるための旋回ガイド本体部52と、その旋回ガイド本体部52を周方向から覆う円筒支持部54とから構成されている。円筒支持部54は、誘導ガイド部材50を排水管継手20の上部受け口22の下側に取付けるとともに、排水立て管70から流下した排水が胴部21内で半径方向外側に飛び散らないようにして、排水横枝管75,76に逆流しないようにする部材である。円筒支持部54は、上部受け口22の内フランジ部22fに挿通される円筒部54eと、その円筒部54eの上端に形成されて、前記内フランジ部22f上に載せられる外フランジ部54fとから構成されている。ここで、円筒支持部54の円筒部54eの外径寸法は、上部受け口22の内フランジ部22fの内径寸法とほぼ等しい値に設定されている。また、円筒支持部54(円筒部54e)の高さ寸法は、排水横枝管75,76に対する排水逆流防止の観点から40mmよりも大きく、さらに、
図3に示すように、挿入ストッパ24sより下側に突出しない値となるように設定されている。
【0025】
旋回ガイド本体部52は、
図5に示すように、円筒支持部54の円筒部54eの前側内周面に固定されている。旋回ガイド本体部52は、
図5~
図7に示すように、円筒支持部54の円筒部54eの内周面に重ねられる平面円弧形の円弧縦壁部52eと、流下した排水を左旋回させる旋回ガイド部52xとを備えている。旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eは、
図5、
図6に示すように円弧縦壁部52eの円周方向における上流側端縁に形成された上流側縦壁部52jと、円周方向における下流側端縁に形成された端縁縦壁部52wとを備えている。
【0026】
旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eは、
図6、
図7に示すように、円筒支持部54の円筒部54eに収納されて重ねられる部分と、その円筒部54eから下方に突出する部分とから構成されている。そして、旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eと円筒支持部54の円筒部54eとの重複部分が溶接により互いに接合されている。即ち、旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eと円筒支持部54との重複部分の肉厚寸法は、1.2mm×2=2.4mmとなる。
【0027】
円筒支持部54の円筒部54eから下方に突出する旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eは、
図6に示すように、側面形状(前方から見た側面形状)が略直角三角形に形成されている。そして、直角三角形の斜辺に相当する旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eの下端位置に旋回ガイド部52xが円弧縦壁部52eから円筒支持部54の中央方向に張り出すように形成されている。旋回ガイド部52xは、
図2、及び
図5に示すように、平面形状が略偏平半円形に形成されている。そして、旋回ガイド部52xにおいて円弧縦壁部52eから円筒支持部54の中央方向に張り出す張出端52yが直線状に形成されて、その直線状の張出端52yが平面視において左側の横枝管受け口24の軸心と平行になる(
図2参照)。ここで、排水管継手20が、例えば、呼び径100mmの場合、旋回ガイド部52xの張出端52yから排水管継手20の中心までの寸法は、胴部21内の空気芯の形成を妨げないように、約20mmに設定されている。
【0028】
旋回ガイド本体部52の旋回ガイド部52xは、
図6等に示すように、円筒部54eの軸心(一点鎖線)を基準にして円周方向において角度θ1だけ傾斜している(前面側から見て右側が低くなるように傾斜している)。ここで、角度θ1は、例えば、θ1=50°に設定されている。これにより、上階の排水立て管70から流下した排水が、
図5に示すように、旋回ガイド本体部52の旋回ガイド部52xで受けられて、円弧縦壁部52eに沿って左旋回するようになる。また、旋回ガイド部52xは、
図8に示すように、円弧縦壁部52e側に対して張出端52y側が低くなるように、半径方向において角度θ2だけ傾斜している。ここで、角度θ2は、例えば、θ2=25°に設定されている。これにより、流下した排水が旋回ガイド本体部52の旋回ガイド部52xの位置で跳ね難くなる。これにより、排水が跳ねることによる排水管継手20の胴部21内の空気芯の閉鎖を防止できる。
【0029】
旋回ガイド本体部52の旋回ガイド部52xの上流端の位置には、
図5に示すように、円弧縦壁部52eの上流側端縁に形成された上流側縦壁部52jが配置されている。上流側縦壁部52jは、帯板状に形成されており、円弧縦壁部52eに対して円筒支持部54の中央方向に約90°折り曲げられている。そして、上流側縦壁部52jは、
図6等に示すように、旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eの上端位置から旋回ガイド部52xの上流端と等しい高さ位置まで上下方向に延びるように形成されている。これにより、流下する排水が上流側縦壁部52jにガイドされて旋回ガイド部52xに効率的に導かれるようになる。
【0030】
旋回ガイド本体部52の旋回ガイド部52xの下流端よりも下流側には、円弧縦壁部52eの下流側端縁に形成された端縁縦壁部52wが配置されている。ここで、旋回ガイド部52xの下流端と端縁縦壁部52w間の寸法W(
図8参照)は、排水管継手20が、例えば、呼び径100mmの場合、約20mmに設定されている。端縁縦壁部52wは、
図5に示すように、帯板状に形成されており、円弧縦壁部52eに対して円筒支持部54の中央方向に約90°折り曲げられている。そして、端縁縦壁部52wは、
図6等に示すように、旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eの上端位置から旋回ガイド部52xの下流端と等しい高さ位置である下端位置まで上下方向に延びるように形成されている。このため、旋回ガイド本体部52の端縁縦壁部52wに沿って流下する排水は、旋回ガイド部52xにガイドされて左旋回し、その旋回ガイド部52xを通過した排水と合流する。
【0031】
そして、旋回ガイド部52xにガイドされて左旋回する排水と、端縁縦壁部52wに沿って流下する排水とが合流することで、合流した排水が、
図3に示すように、胴部21のテーパー部25の後側内周面に形成された旋回ガイド34に導かれるようになる。ここで、旋回ガイド部52xの下流端と端縁縦壁部52w間の寸法Wを約20mmよりも大きくすると、上記したように合流した排水が胴部21の下方よりも円周方向に流れ易くなり、旋回ガイド34に導かれる排水量が低下する。また、旋回ガイド部52xの下流端と端縁縦壁部52w間の寸法Wを約20mmよりも小さくすると、前記合流した排水が胴部21の中心方向に流れ易くなり、旋回ガイド34に導かれる排水量が低下する。したがって、旋回ガイド部52xの下流端と端縁縦壁部52w間の寸法Wを約20mmに設定することで、合流した排水を効率的に旋回ガイド34に導けるようになる。ここで、端縁縦壁部52wは、旋回ガイド本体部52の円弧縦壁部52eの下流側端縁において円筒支持部54の円筒部54eから下方に突出する部分にのみ形成するようにしても良い。
【0032】
<旋回ガイド34について>
旋回ガイド34は、
図3に示すように、誘導ガイド部材50の旋回ガイド本体部52によって左旋回させられた排水を受けて、さらに左旋回させるためのガイド羽根である。旋回ガイド34は、胴部21のテーパー部25の位置で、
図2等に示すように、誘導ガイド部材50の旋回ガイド本体部52から180°回転した位置(平面視において対向する位置)に形成されている。旋回ガイド34は、
図4に示すように、排水管継手20の胴部21を鋳造する際に胴部21と一体に形成される。なお、胴部21の肉厚寸法は、約5mmに設定されている。
【0033】
旋回ガイド34は、
図2に示すように、胴部21のテーパー部25の内周面からその胴部21の中央方向に張り出すように、平面形状が略偏平半円形に形成されている。そして、旋回ガイド34においてテーパー部25の内周面からその胴部21の中央方向に張り出す張出端34yが直線状に形成されて、その直線状に形成された張出端34yが平面視において左側の横枝管受け口24の軸心と平行になる。ここで、排水管継手20が、例えば、呼び径100mmの場合、旋回ガイド34の張出端34yから排水管継手20の中心までの寸法は、胴部21内の空気芯の形成を妨げないように、約40mmに設定されている。
【0034】
旋回ガイド34は、
図3に示すように、胴部21の軸心(一点鎖線)を基準にして円周方向において角度βだけ傾斜している(前面側から見て左側が低くなるように傾斜している)。ここで、角度βは、例えば、β=30°に設定されている。これにより、誘導ガイド部材50の旋回ガイド本体部52によって導かれた排水が、
図3に示すように、旋回ガイド34で受けられ、誘導ガイド部材50と旋回ガイド34との相乗効果で流下する排水を強く左旋回させられるようになる。
【0035】
<補助ガイド31について>
補助ガイド31は、
図2(点線参照)に示すように、誘導ガイド部材50の真下位置に配置されて、誘導ガイド部材50では受けられなかった排水を受けて左旋回させるためのガイド羽根である。補助ガイド31は、
図3の二点鎖線で示すように、胴部21の大径円筒部23の下部からテーパー部25の上部にかけて形成されている。補助ガイド31は、
図4に示すように、排水管継手20の胴部21を鋳造する際に胴部21と一体に形成される。補助ガイド31は、誘導ガイド部材50の旋回ガイド部52xと同様に、
図2に示すように、胴部21の内周面からその胴部21の中央方向に張り出すように、平面形状が略偏平半円形に形成されている。そして、補助ガイド31において胴部21の内周面からその胴部21の中央方向に張り出す張出端31yが直線状に形成されて、その直線状に形成された張出端31yが平面視において左側の横枝管受け口24の軸心と平行になる。ここで、排水管継手20が、例えば、呼び径100mmの場合、補助ガイド31の張出端31yから排水管継手20の中心までの寸法は、胴部21内の空気芯の形成を妨げないように、約20mmに設定されている。
【0036】
補助ガイド31は、
図3に示すように、胴部21の軸心(一点鎖線)を基準にして円周方向において角度αだけ傾斜している(前面側から見て右側が低くなるように傾斜している)。ここで、角度αは、例えば、α=50°=θ1に設定されている。これにより、誘導ガイド部材50の旋回ガイド本体部52によって受けられず、胴部21の内周面に沿って流下する排水、例えば、排水横枝管75,76から流入した排水等が、
図3に示すように、補助ガイド31で受けられて左旋回させられるようになる。
【0037】
<排水管継手20の取り扱いについて>
排水管継手20を超高層建物(高さ60m超建物)用として使用する場合には、排水管継手20に対して誘導ガイド部材50をセットする。即ち、誘導ガイド部材50の旋回ガイド本体部52(旋回ガイド部52x)が、
図2に示すように、排水管継手20の胴部21の補助ガイド31と平面的に重なり、さらに旋回ガイド34に対して180°回転した位置となるように位置決めされる。この状態で、誘導ガイド部材50の円筒支持部54の円筒部54eが排水管継手20の上部受け口22の内フランジ部22fに通される。そして、誘導ガイド部材50の円筒支持部54の外フランジ部54fが上部受け口22の内フランジ部22fに載せられる際、外フランジ部54fと内フランジ部22fとがゴム系の接着剤により接着される。これにより、排水管継手20に対する誘導ガイド部材50のセットが完了する。この状態で、排水管継手20の上部受け口22に対して筒状シール材32がセットされる。
【0038】
このように、排水管継手20に対して誘導ガイド部材50のセットされることで、上階の排水立て管70から流下した排水が、
図5に示すように、誘導ガイド部材50(旋回ガイド本体部52)の旋回ガイド部52xで受けられて、円弧縦壁部52eに沿って左旋回する。また、誘導ガイド部材50(旋回ガイド本体部52)の端縁縦壁部52wに沿って流下する排水が旋回ガイド部52xを通過した排水と合流する。これにより、前記合流した排水が胴部21のテーパー部25の後側内周面に形成された旋回ガイド34に導かれ、旋回ガイド34によってさらに左旋回させられる。即ち、誘導ガイド部材50と旋回ガイド34との相乗効果で流下する排水が強く左旋回させられる。
【0039】
また、誘導ガイド部材50の旋回ガイド本体部52によって受けられず、胴部21の内周面に沿って流下する排水、例えば、排水横枝管75,76から流入した排水等が、
図3に示すように、補助ガイド31で受けられて左旋回させられるようになる。このように、排水管継手20の胴部21内には、誘導ガイド部材50と旋回ガイド34とによる旋回流と補助ガイド31による旋回流との2条の旋回流が内壁面に沿って流れるようになる。このため、超高層建物用として排水管継手20を使用しても、排水管継手20の胴部21内に空気芯を良好に形成でき、排水性能を確保できる。
【0040】
排水管継手20を中、高層建物用とする場合には、誘導ガイド部材50をセットしない状態で使用する。これにより、排水管継手20の胴部21の内周面に沿って流下する排水が前側の補助ガイド31と後側の旋回ガイド34とで受けられて左旋回させられる。これにより、排水管継手20の胴部21内には、補助ガイド31と旋回ガイド34とによる2条の旋回流が内壁面に沿って流れるようになる。これにより、排水管継手20の胴部21内に空気芯を良好に形成でき、中、高層建物用としての排水性能を確保できる。
【0041】
図9は、誘導ガイド部材50をセットした排水管継手20(誘導ガイド付継手)と、誘導ガイド部材50をセットしない排水管継手20(誘導ガイドなし継手)とを排水実験設備(実験塔)の各階に設置して排水を実際に流した場合の管内圧力分布をグラフで表している。グラフでは、横軸側に管内圧力〔Pa〕を表しており、縦軸側に建物を模した実験塔の階数を表している。ここで、誘導ガイド付継手、及び誘導ガイドなし継手は、共に呼び径100mmのものを使用しており、排水は、共に一定量(6.5L/秒)を流している。また、圧力計は、各階の排水管継手20に接続された排水横枝管75内の定位置に設置されている。さらに、各階(1F~5F)における圧力測定は、排水を流した状態で一定時間だけ管内圧力を連続して測定している。
【0042】
図9のグラフ中の白丸と実線は、誘導ガイド付継手を使用した場合の管内圧力の最小値を表しており、黒丸と実線は、誘導ガイド付継手を使用した場合の管内圧力の最大値を表している。また、白丸と点線は、誘導ガイドなし継手を使用した場合の管内圧力の最小値を表しており、黒丸と点線は、誘導ガイドなし継手を使用した場合の管内圧力の最大値を表している。例えば、5階では、誘導ガイド付継手を使用した場合、管内圧力は約-200Pa~約20Paの間で変化する。これに対し、誘導ガイドなし継手を使用した場合、管内圧力は約-320Pa~約10Paの間で変化する。この原因は、誘導ガイド付継手の場合、強い旋回流の働きで管内に空気芯を良好に形成できることで負圧を小さく抑えることができると考えられる。また、旋回流と空気芯の働きで管内を排水が流れ易くなり、最大圧力値の上昇も抑えられる。
【0043】
4階から1階でも5階の場合と同様に誘導ガイド付継手の場合には、誘導ガイドなし継手の場合よりも負圧を小さく抑えることができる。また、誘導ガイド付継手の場合には、誘導ガイドなし継手の場合よりも正圧を小さく抑えることができる。特に、下層階では、排水が急激に方向転換を強いられて跳水現象(排水がジャンプして空気の逃げ道を塞ぐ)を起こし易く正圧の傾向となる。しかし、誘導ガイド付継手の場合には、旋回流と空気芯の働きで管内を排水が流れ易くなり、誘導ガイドなし継手と比較して正圧を小さく抑えることができる。
【0044】
<本実施形態に係る排水管継手20の長所について>
本実施形態に係る排水管継手20によると、上部受け口22の下側には、上階の排水立て管70から流下する排水を旋回させて胴部21の内周面の旋回ガイド34に導くための誘導ガイド部材50が後付け可能に構成されている。このため、誘導ガイド部材50を上部受け口22の下側に後付けすることで、上階の排水立て管70から流下する排水を旋回させて胴部21の内周面の旋回ガイド34に導けるようになる。これにより、誘導ガイド部材50と旋回ガイド34との相乗効果により流下する排水を強く旋回させることが可能になる。即ち、中、高層建物用の排水管継手20に対して誘導ガイド部材50を後付けすることで超高層建物用の排水管継手20として使用できるようになる。このように、誘導ガイド部材50を後付けし、あるいは前記誘導ガイド部材50を省略することで、排水管継手20を超高層建物用、あるいは中、高層建物用に使用できるため、排水管継手20の汎用性が高くなる。
【0045】
また、誘導ガイド部材50の外フランジ部54fを上部受け口22の下端の内フランジ部22fに対して上方から重ねることで、誘導ガイド部材50を上部受け口22の下側に取付けることができるため、排水管継手20に対する誘導ガイド部材50の取付けが容易になる。さらに、誘導ガイド部材50の肉厚寸法(最大1.2mm×2)は、胴部21の肉厚寸法(約5mm)よりも薄肉であるため、誘導ガイド部材50の取付けによる胴部21内の流路面積の減少を極力抑えることができる。また、誘導ガイド部材50はステンレス鋼により形成されているため、誘導ガイド部材50が腐食し難く、また、強度を高くできる。この結果、薄肉の誘導ガイド部材50であっても胴部21の内壁部に対して耐久性が低下しない。
【0046】
<変更例1>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、
図3に示すように、誘導ガイド部材50の外フランジ部54fを上部受け口22の下端の内フランジ部22fに対して上方から重ねることで、誘導ガイド部材50を上部受け口22の下側に取付ける例を示した。しかし、
図10に示すように、上部受け口22に収納される筒状シール材32と誘導ガイド部材50とを一体成形したシール兼用ガイド部材320を使用することも可能である。
【0047】
<シール兼用ガイド部材320について>
シール兼用ガイド部材320は、ゴム製であり、筒状シール部321と排水ガイド部354とから構成されている。筒状シール部321は、筒状シール材32と等しい構成である。即ち、筒状シール部321は、上部受け口22の内周面を覆う被覆円筒部324と、被覆円筒部324の上部内周側に設けられた襞状のシール本体部322と、被覆円筒部324の下端位置に形成された断面コ字形の下端フランジ部324fとから構成されている。そして、筒状シール部321の下端フランジ部324fが上部受け口22の内フランジ部22f上に載せられるようになる。
【0048】
筒状シール部321の下端フランジ部324fの下側には、上部受け口22の内フランジ部22fに挿通される排水ガイド部354の円筒部354eが設けられている。そして、排水ガイド部354の円筒部354eの下側に旋回ガイド本体部352が設けられている。旋回ガイド本体部352は、誘導ガイド部材50の旋回ガイド本体部52と等しい構成である。旋回ガイド本体部352は、円筒部354eの下側延長線上に設けられた円弧縦壁部352eと、流下した排水を左旋回させる旋回ガイド部352xとを備えている。そして、旋回ガイド部352xにステンレス鋼355がインサートされている。また、旋回ガイド部352xの下流側に位置する円弧縦壁部352eの端縁には、端縁縦壁部352wが形成されている。このように、筒状シール材32と誘導ガイド部材50とを一体化したシール兼用ガイド部材320を使用することで、誘導ガイド部材50の経時的な落下を防止できる。また、排水管継手20に対するシール兼用ガイド部材320の取付けも容易になる。
【0049】
また、本実施形態では、鋳鉄製の排水管継手20に対して誘導ガイド部材50、あるいはシール兼用ガイド部材320を取付ける例を示したが、例えば、樹脂製の排水管継手に対して誘導ガイド部材50、あるいはシール兼用ガイド部材320を取付けることも可能である。さらに、本実施形態では、胴部21の内周面に補助ガイド31と旋回ガイド34とを備える排水管継手20に対して誘導ガイド部材50を取付ける例を示したが、旋回ガイド34のみを備える排水管継手に対して誘導ガイド部材50を取付けることで、前記排水管継手を超高層建物において使用することが可能になる。
【0050】
<変更例2,3>
本実施形態では、中、高層建物用の排水管継手20、即ち、胴部21内に旋回ガイド34と補助ガイド31とを備える排水管継手20に対して誘導ガイド部材50を装着することで、排水管継手20を超高層建物用として使用する例を示した。しかし、
図11に示すように、建物の最下階の排水を合流できる排水管継手のように、旋回ガイドを有しない排水管継手60に対して誘導ガイド部材50を装着することも可能である。即ち、誘導ガイド部材50は、排水管継手60の上部受け口62から挿入されて、その上部受け口62の内フランジ部62f上にセットされる。これにより、上階から流下する排水の旋回流を排水管継手60の内部でさらに増幅でき、排水管継手60の排水性能を向上させることができる。また、
図12に示すように、旋回ガイドを有しない在来排水管継手(MD継手)65に対して誘導ガイド部材50を装着することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
20・・・排水管継手
21・・・胴部
22・・・上部受け口
22f・・内フランジ部
24・・・横枝管受け口
31・・・補助ガイド
32・・・筒状シール材(シール材)
34・・・旋回ガイド
50・・・誘導ガイド部材
52・・・旋回ガイド本体部
52w・・端縁縦壁部(縦壁部)
54・・・円筒支持部
54e・・円筒部
54f・・外フランジ部
60・・・排水管継手
65・・・三方排水管継手
70・・・排水立て管
75・・・排水横枝管
76・・・排水横枝管
320・・シール兼用ガイド部材
CS・・・床スラブ