(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097831
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】防竹構造、及びこれに用いる防竹シート
(51)【国際特許分類】
A01M 21/00 20060101AFI20230703BHJP
A01G 13/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A01M21/00 A
A01G13/00 302Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214164
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】596045177
【氏名又は名称】株式会社白崎コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐治 健介
(72)【発明者】
【氏名】小谷 智博
(72)【発明者】
【氏名】白崎 健悟
(72)【発明者】
【氏名】東山 真也
(72)【発明者】
【氏名】堂埜 誠
(72)【発明者】
【氏名】河野 友祐
(72)【発明者】
【氏名】田村 謙治
(72)【発明者】
【氏名】先山 竜史
【テーマコード(参考)】
2B024
2B121
【Fターム(参考)】
2B024DB03
2B024DC10
2B121AA19
2B121BB28
2B121EA21
2B121EA30
2B121FA01
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】敷設作業の負担増加を伴うことなく、固定ピン2の抜けを有効に防いで筍3の成長を阻止することができる防竹構造10とこれに用いる防竹シート1を提供すること。
【解決手段】筍3の成長時の突き上げ力に応じた伸長性を有し、地面Gを覆う防竹シート1と、この地面Gに打ち込まれ、防竹シート1を地面Gに固定する複数の固定ピン2とから防竹構造10を構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹の繁殖を抑制するための防竹構造であって、
筍の成長時の突き上げ力に応じた伸長性を有し、地面を覆う防竹シートと、
前記地面に打ち込まれ、前記防竹シートを前記地面に固定する複数の固定ピンと、
から成り、
前記筍が前記防竹シートを突き上げたとき、当該防竹シートが伸長し、前記筍の周囲の前記各固定ピンに対する引抜荷重を均等化するとともに、前記筍の先端を当該筍の周囲の複数の前記固定ピン間の中央側へ誘導しながら前記筍の先端を押さえて前記筍の成長を阻止することを特徴とした防竹構造。
【請求項2】
前記防竹シートが、前記筍の突き上げ力により15%以上の伸び率で伸長することを特徴とした請求項1に記載の防竹構造。
【請求項3】
前記防竹シートが透水性を有することを特徴とした請求項1または請求項2に記載の防竹構造。
【請求項4】
前記防竹シートが不織布から成ることを特徴とした請求項1~請求項3の何れかに記載の防竹構造。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載の防竹構造に用いる防竹シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防竹構造、及びこれに用いる防竹シート、より詳しくは、筍の成長を阻止して竹の繁殖を抑制する防竹構造と、この防竹構造に用いる防竹シートとに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、雑草等の不要植物を防除するための対策の一つとして、地面に遮光性を有する防草シートを敷設することが一般的に行われている。そして、現在までに、遮光性、透水性、貫通抵抗性等に優れた各種の防草シートが提案されている(例えば、下記特許文献1~3等)。
【0003】
しかしながら、これら従来の防草シートを用いて、竹の繁殖を抑制しようとする場合には、以下のような不具合が発生する問題があった。
【0004】
通常、防草シートを地面に敷設する際には、長尺帯状の防草シートを互いにその長辺同士を一部重ね合わせて複数、並列させて地面に敷き詰め、その上から固定ピンを地中に打ち込むことによって、これら防草シートを地面に固定するようにしている。
【0005】
ところが、竹の新芽(筍)は、その成長時の突き上げ力が、他の雑草よりも格段に強いため、
図7に示すように、防草シート100下で発生した筍3の突き上げによって、特に筍3の最寄りの固定ピン2が地面Gから引き抜かれてしまい、筍の成長を阻止できなくなる不具合があった。従来の防草シート100は、その破裂強さや貫通抵抗性等に優れているものの、筍3の突き上げ力に応じた伸長性を有していないため、
図7(b)に示すように、筍3が成長するに従って防草シート100が全体的に持ち上げられてしまい、最寄りの固定ピン2から順に抜けてしまう事態を招いたのである。
【0006】
このような固定ピン2の抜けを防ぐためには、例えばより長い固定ピンをより深く地中に打ち込むなどして固定ピン2自体の引抜き抵抗を高めるか、固定ピン2の打込み本数を増やすかする必要があるが、この場合、防草シート100の敷設作業の負担が著しく増大し、敷設コストが大幅に上昇する難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-168730号公報
【特許文献2】特許第4485765号公報
【特許文献3】特許第6501471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の防草シートを用いた防竹対策に上記のような問題があったことに鑑みて為されたもので、敷設作業の負担増加を伴うことなく、固定ピンの抜けを有効に防いで筍の成長を阻止することができる防竹構造と、この防竹構造に用いる防竹シートとを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、竹の繁殖を抑制するための防竹構造であって、
筍の成長時の突き上げ力に応じた伸長性を有し、地面を覆う防竹シートと、前記地面に打ち込まれ、前記防竹シートを前記地面に固定する複数の固定ピンと、から成り、
前記筍が前記防竹シートを突き上げたとき、当該防竹シートが伸長し、前記筍の周囲の前記各固定ピンに対する引抜荷重を均等化するとともに、前記筍の先端を当該筍の周囲の複数の前記固定ピン間の中央側へ誘導しながら前記筍の先端を押さえて前記筍の成長を阻止することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記防竹シートが、前記筍の突き上げ力により15%以上の伸び率で伸長することを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記防竹シートが透水性を有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記防竹シートが不織布から成ることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、これらの防竹構造に用いる防竹シートであって、筍の成長時の突き上げ力に応じた伸長性を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る防竹構造及び防竹シートによれば、筍の突き上げ力に応じて防竹シートが伸長するので、筍の周囲の各固定ピンに対する引抜荷重を均等化して固定ピンの抜けを防ぐとともに、筍の先端を周囲の複数の固定ピン間の中央側へ誘導しながら筍の先端を押さえて筍の成長を有効に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図2中のA部分における筍成長時の防竹シートの伸長状態を示す断面図である。
【
図4】
図2中のC部分における筍成長時の防竹シートの伸長状態を示す断面図である。
【
図5】
図2中のD部分における筍成長時の防竹シートの伸長状態を示す断面図である。
【
図6】
図2中のE部分における筍成長時の防竹シートの伸長状態を示す断面図である。
【
図7】従来の防草シートの敷設状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の防竹構造10は、竹の繁殖を抑制すべき地面Gを覆う伸長性を有する防竹シート1と、地面Gに打ち込まれ、防竹シート1を地面Gに固定する複数の固定ピン2とから構成されている。
【0017】
防竹シート1は、長尺帯状を成しており、
図2に示すように、複数の防竹シート1が、互いにその長辺同士を一部重ね合わせて並列して地面Gに敷き詰められている。この防竹シート1は、筍3の成長時の突き上げ力に応じた伸長性を有しており、後述するように、筍3の突き上げ力(約400N)によって、15%以上の伸び率で伸長することが好ましい。
【0018】
本実施形態の防竹シート1は、短辺長さ約200cmの長尺帯状の不織布から成り、遮光性、透水性を有している。より具体的には、防竹シート1は、ポリエステル長繊維の不織布から成る上層と、同じくポリエステル長繊維の不織布から成る下層との間にポリエステル織布から成る補強中間層が介在した三層構造の複合不織布として構成されている。防竹シート1が透水性を有しているので、防竹構造10の敷設範囲において、敷設前後で地中の水分量の変化を最小限に抑えることができ、環境に対する影響をより小さくすることができる。また、防竹シート1が不織布から成るので、貫通抵抗性、耐候性に優れ、長期間に亘る使用が可能となる。
【0019】
固定ピン2は、鉄鋼製棒材の上端側を曲げ加工してピン本体部21と頭部22とを形成した従来公知の留め具であり、ピン本体部21を上方から防竹シート1を貫いて地面Gに打ち込むことによって、その頭部22で防竹シート1の上面を押さえて防竹シート1を地面Gに固定する。
【0020】
本実施形態では、
図2に示すように、複数の固定ピン2が、各防竹シート1の長辺縁部及び短辺縁部において、間隔Lにて等間隔に打ち込まれており、各防竹シート1の中程部においては、その長辺と平行に計3列、間隔2Lにて等間隔に、互いの位置を間隔Lだけずらして打ち込まれている。なお、本実施形態では、固定ピン2同士の打込み間隔Lを、従来の防草シートの場合と同様、約50cmとしている。固定ピン2の打込み間隔L及びその配列は、敷設現場等の敷設状況に応じて適宜、変更可能であるが、この間隔Lを小さくし過ぎると作業負担が著しく増加する一方、間隔Lを大きくし過ぎると、地面Gの凹凸に対する防竹シート1の追従性が大幅に低下する。
【0021】
以下、
図3~
図7を参照しながら、本実施形態の防竹構造10による防竹作用とその効果について説明する。
【0022】
本実施形態の防竹構造10の敷設範囲において、
図2中のA部分に示すように、筍3がその周囲の計4本の固定ピン2間の一つの対角線上で発生した場合、本実施形態の防竹構造10によれば、
図3(a)~(d)に示すように、筍3の成長が進むに従って防竹シート1が徐々に伸長してゆく。この際、防竹シート1は、筍3の周囲の複数の固定ピン2間においてより均等に伸長しようとするので、防竹シート1は、筍3の先端31との接触位置を徐々に変えながら、その引張応力を周囲の複数の固定ピン2間で分散化し、各固定ピン2に対する引抜荷重を均等化する。このことで、伸長した防竹シート1による引張応力が、筍3の最寄りの固定ピン2(
図3中の左側の固定ピン)に集中するのを抑制することができ、従来の防草シートを用いた場合のように最寄りの固定ピンが抜け出てしまう事態を未然に防ぐことができる。
【0023】
しかも、本実施形態の防竹構造10によれば、筍3の成長に従って防竹シート1が伸長してゆくので、
図3(b)、(c)中の白抜き矢印で示すように、筍3の成長時に、その先端31を周囲の複数の固定ピン2間の中央4側へ誘導することができる。この誘導作用によって、防竹シート1と筍3の先端31との接触位置が中央4側へ近づくことになり、このことによっても各固定ピン2に対する引抜荷重を均等化することができる。更には、この誘導作用によって、筍3の先端31を中央4側へ曲げながら筍3の先端31を防竹シート1で押さえることができ、筍3の成長をより効果的に阻害することができる。
【0024】
そして、
図3(d)に示すように、筍3の成長がある程度、進んだ段階で、伸長した防竹シート1の引張応力による下向きの押さえ力が筍3の突き上げ力にまで達し、以後の筍3の成長を阻止し、防竹シート1下で筍3を腐らせて竹の繁殖を抑制するのである。
【0025】
このように、本実施形態の防竹構造10は、筍3の突き上げ力により伸長する防竹シート1によって、筍3がある高さにまで成長することを許容することで、固定ピン2の引抜荷重の均等化作用、及び筍3の先端31の誘導作用を働かせるようにしている。
【0026】
なお、
図2中のB部分に示すように、筍3の発生位置がその周囲の計4本の固定ピン2間の何れの対角線上にもない場合であっても、同様に、筍3の突き上げ力に応じて伸長する防竹シート1によって、各固定ピン2に対する引抜荷重を均等化して固定ピン2の抜けを防ぐとともに、筍3の先端31を中央4側へ誘導して筍3の成長を有効に阻止する。
【0027】
次に、本実施形態の防竹構造10に用いる防竹シート1の伸び率について説明する。
【0028】
本実施形態の防竹構造10の敷設範囲において、
図2中のC部分に示すように、筍3がその周囲の計4本の固定ピン2間の二つの対角線上(計4本の固定ピン2間の中央)で発生した場合、
図4(a)に示すように、筍3が地面Gから約20cmの高さまで成長したとき、防竹シート1の伸び率は、約7.8%(固定ピン2間の間隔2L;約100cm)であり、地面Gに対する防竹シート1の傾斜角度α1は約21.8度であった。この伸び率約7.8%時の防竹シート1の引張抵抗力(荷重)は、約172N/5cm(JIS L1908準用)である。
【0029】
筍3は、その後、さらに成長を続けたが、
図4(b)に示すように、地面Gから約30cmの高さまで成長した後、防竹シート1下で腐敗した。筍3が地面Gから約30cmまで成長したとき、防竹シート1の伸び率は、約16.6%であり、地面Gに対する防竹シート1の傾斜角度α2は約31度であった。この伸び率約16.6%時の防竹シート1の引張抵抗力(荷重)は、約429N/5cm(JIS L1908準用)である。なお、
図4(b)に示す防竹シート1の伸長状態を、筍3の代わりに計測器を置いて再現し、テント状に伸長した防竹シート1の頂点での突き上げ力を計測したところ、約400Nであった。このことから、筍3の成長時の突き上げ力は、約400Nと推定される。
【0030】
防竹シート1は、筍3の突き上げ力に応じた伸長性を有している必要があるが、この筍3の突き上げ力(約400N)による伸び率が、15%以上であることが好ましい。この伸び率が15%よりも小さいと、筍3の最大成長時における防竹シート1の傾斜角度α2が小さくなり、上述した筍3の成長段階での固定ピン2に対する引抜荷重の均等化作用や、筍3の先端31の誘導作用が低下する。
【0031】
なお、本実施形態の防竹構造10の敷設範囲において、
図2中のD部分に示すように、筍3がその周囲の計6本の固定ピン2間の中央で発生した場合には、
図5に示すように、筍3が地面Gから約21cmの高さにまで成長したとき、上述したC部分における場合と同様に、防竹シート1の伸び率が約16.6%(最寄りの固定ピン2同士の間隔√2L;約71cm)、防竹シート1の傾斜角度α2が約31度となり、以後の筍3の成長を阻止する。
【0032】
また、本実施形態の防竹構造10の敷設範囲において、
図2中のE部分に示すように、筍3が最短間隔の固定ピン2間の中央で発生した場合には、
図6に示すように、筍3が地面Gから約15cmの高さにまで成長したとき、上述したC部分における場合と同様に、防竹シート1の伸び率が約16.6%(最寄りの固定ピン2同士の間隔L;約50cm)、防竹シート1の傾斜角度α2が約31度となり、以後の筍3の成長を阻止する。
【0033】
以上、本実施形態の防竹構造10及びこれに用いる防竹シート1について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0034】
例えば、上記実施形態では、防竹シート1として複合不織布を使用しているが、本発明は勿論これに限定されるものではなく、種々の材質、構成のシートを採用することができる。また、防竹シート1は、必ずしも遮光性を有していなくてもよく、多数の小孔を有するネット状シートを採用してもよい。また、防竹シート1として、不織布の他、織編物やフィルム材を使用してもよく、異なる材質のシートを複数層、積層させた複合シート材を採用してもよい。
【0035】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 防竹構造
1 防竹シート
2 固定ピン
3 筍
31(筍の)先端
4 (周囲の複数の固定ピン間の)中央
G 地面