(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097856
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】制御システム及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 9/54 20060101AFI20230703BHJP
G06F 9/48 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G06F9/54 Z
G06F9/48 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214207
(22)【出願日】2021-12-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】池澤 隆人
(72)【発明者】
【氏名】足立 博紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 大輝
(72)【発明者】
【氏名】森本 和也
(72)【発明者】
【氏名】中山 弘志
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 美信
(57)【要約】
【課題】ローカルなコンピュータ内で標準入出力を用いて容易、安全且つ高速にプロセス間通信を行うことで、複数のプログラムを連携して制御対象機器を制御する制御システム及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】異なる複数の単機能動作を連携して実現する目標動作を制御対象機器3に実行させるための制御情報を少なくとも算出する対象演算部11と、予め作成された設計情報としての構成情報21に基づいて生成される動作経路を示す経路22にしたがって前記対象演算部11を実行する制御管理部13とを備え、制御管理部13が、前記経路にしたがった複数の前記対象演算部11の実行処理を標準入出力により行うものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の単機能動作を連携して実現する目標動作を制御対象機器に実行させるための制御情報を少なくとも算出する対象演算手段と、
予め作成された設計情報に基づいて生成される動作経路を示す経路ネットワークにしたがって前記対象演算手段を実行する制御管理手段とを備え、
前記制御管理手段が、前記経路ネットワークにしたがった複数の前記対象演算手段の実行処理を標準入出力により行うことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制御システムにおいて、
前記目標動作を実現するために前記制御対象機器が行う単機能動作の順序に関する情報、及び当該単機能動作を実行するための制御情報を算出する対象演算手段の起動方法に関する情報からなる構成情報を前記設計情報として記憶するストレージを備え、
前記制御管理手段が、
前記構成情報に基づいて前記経路ネットワークを構築する経路生成手段と、
前記対象演算手段の実行を制御する対象演算管理手段とを備える制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の制御システムにおいて、
前記制御管理手段が、
前記対象演算手段の実行状態を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記対象演算手段の実行にフィードバックを行うフィードバック処理手段とを備え、
前記判定手段が、前記ストレージに記憶されている構成情報、及び前記対象演算手段から出力される標準エラー出力に基づいて前記対象演算手段の実行状態を判定する制御システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の制御システムにおいて、
前記制御管理手段が、
前記対象演算手段の実行状態を判定する判定手段を備え、
前記経路生成手段が、前記構成情報、及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記経路ネットワークの再構築を行う制御システム。
【請求項5】
異なる複数の単機能動作を連携して実現する目標動作を制御対象機器に実行させるための制御情報を、少なくとも算出する複数の対象演算手段、
予め作成された設計情報に基づいて生成される動作経路を示す経路ネットワークにしたがって前記対象演算手段を実行する制御管理手段としてコンピュータを機能させ、
前記制御管理手段が、前記経路ネットワークにしたがった複数の前記対象演算手段の実行処理を標準入出力により行うことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御プログラムを連携することで制御対象機器の複雑な目標動作を実現する制御システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロボット開発において、近年高度な制御技術が開発されており、それに応じて制御プログラムも複雑さを増している。効率的に制御プログラムを開発するためには、各プログラムごとの結合を疎にし、開発の局所化、並行化を行うことが必須となっている。これを実現するためのソフトウェアとしてROS(Robot Operating System)と呼ばれるミドルウェアが知られており、コミュニティにより日々改善が進められている。
【0003】
上記に関連し、ROSなどのミドルウェアを用いて制御プログラムを効率的に開発する技術として、例えば特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、第1のタイプのロボット機能要素モジュールの第1のインターフェース定義を解析して、第2のタイプのロボット機能要素モジュールの第2のインターフェース定義と、ミドルウェア間変換ソースコードと、を生成するステップと、前記第2のインターフェース定義と前記ソースコードを用いて、変換モジュールを生成するステップと、を備えているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばROSなどのミドルウェアは、TCP/IPなどのネットワークプロトコルを使用して遠隔操作を行えるようにしたり、多くの人が様々な機能を実装できるように複雑に設計されている。そのため、開発には多くの手間と時間が必要となり効率が良くないという課題を有する。
【0006】
また、通信情報のパケット化や複雑な処理の順序制御などが必要になるため、処理のオーバーヘッドが多く発生してしまい、処理の遅延を招いてしまうという課題を有する。
【0007】
本発明は、ローカルなコンピュータ内で標準入出力を用いて容易、安全且つ高速にプロセス間通信を行うことで、複数のプログラムを連携して制御対象機器を制御する制御システム及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る制御システムは、異なる複数の単機能動作を連携して実現する目標動作を制御対象機器に実行させるための制御情報を少なくとも算出する対象演算手段と、予め作成された設計情報に基づいて生成される動作経路を示す経路ネットワークにしたがって前記対象演算手段を実行する制御管理手段とを備え、前記制御管理手段が、前記経路ネットワークにしたがった複数の前記対象演算手段の実行処理を標準入出力により行うものである。
【0009】
このように、本発明に係る制御システムにおいては、異なる複数の単機能動作を連携して実現する目標動作を制御対象機器に実行させるための制御情報を少なくとも算出する対象演算手段と、予め作成された設計情報に基づいて生成される動作経路を示す経路ネットワークにしたがって前記対象演算手段を実行する制御管理手段とを備え、前記制御管理手段が、前記経路ネットワークにしたがった複数の前記対象演算手段の実行処理を標準入出力により行うため、標準入出力を用いてプロセス間通信を行うことで、単機能のプログラムを連動させて複雑な処理を行うといった設計を、例えばprintfやscanf程度の簡単なプログラムで実現することが可能となり、他のプロセス間通信の手法であるTCP/IPやUnix Socketといったサーバとクライアントが必然的に生じるものよりも高速かつ単純で、更には名前付きパイプを含めた他のプロセス間通信のように外部からの影響を受けないという利点が生じるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る制御システムを用いた実施態様の一例を示す構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係る制御システムの処理を示すイメージ図である。
【
図3】第1の実施形態に係る制御システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る制御システムにおける構成情報の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る制御システムにおける経路生成部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る制御システムにおける経路の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】第1の実施形態に係る制御システムにおける対象演算管理部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】第1の実施形態に係る制御システムにおける対象演算制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】第1の実施形態に係る制御システムにおける制御管理部の動作を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施形態に係る制御システムにおける対象演算部の動作を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態に係る制御システムを用いてクラッシャの駆動を制御する場合における具体的な構成の一例を示す図である。
【
図12】第2の実施形態に係る制御システムを用いて制御対象機器を制御する場合における具体的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る制御システムについて、
図1ないし
図11を用いて説明する。本実施形態に係る制御システムは、制御対象機器(ここでは、複数の動作を連動させて一連の高度な動作を行うような機器)の目標動作を複数の単機能のプログラムを連動させることで実現する場合に、ローカルなコンピュータ内で標準入出力を用いることで処理動作を制御するための設計及びプログラミングを簡素化して開発効率を上げるものである。
【0012】
例えばLinux(登録商標)は、標準入出力をうまく扱うことで単機能のプログラムを連動させ、複雑な処理を行うという設計が可能となっている。これを利用することで、本実施形態に係る制御システムおいては、Linux(登録商標)を用いる場合にShellにおけるパイプを使用したネットワークを構築する。これにより、printfやscanf程度の簡単なプログラムで通信が可能になると共に、他のプロセス間通信(以下IPCという)の手法であるTCP/IPやUnix Socketといったサーバとクライアントが必然的に生じるものよりも高速且つ単純に、さらには名前付きパイプを含めた他のIPCのように外部からの影響を受けないといった利点を得ることができる。
【0013】
基本的に標準入出力では、一方方向の通信しかできない。例えばProgram1→Program2への通信を行う場合にProgram1←Program2への通信を行うことはできない。これを実現するためには、中間ファイルを用意することで双方向通信に拡張することが可能である。例えばFile→Program1の通信を行い、Program1→Program2の通信を行い、Program2→Fileの通信を行うことで通信ネットワークを作成する。しかしながら、このような双方向通信のネットワークを作成するには、規模に応じて中間ファイルや実行方法が複雑化するため、非常に効率が悪くなり実用的ではない。また、そもそも一般的に普及しているプログラムは一方方向の通信が前提となっているためネットワーク形成に適していない。本実施形態においては、これを自動化することで極めて高い効率化を図ることができる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る制御システムを用いた実施態様の一例を示す構成図である。
図1において制御システム1は、任意のコントローラなどからなる操作部2からの操作情報を受信し、ロボットや機械などの制御対象である制御対象機器3が、受信した操作情報にしたがった動作を行うように制御信号を生成してPLCなどの駆動制御部(制御対象機器3に含まれており、ここでは図示しない)に制御信号を送信する。また、制御システム1は、制御対象機器3の単機能の動作を実行するための制御信号をそれぞれ個別に算出する複数の対象演算部11からなる対象演算処理群12と、それらの対象演算処理群12の実行動作を管理する制御管理部13とを備える。
【0015】
なお、操作部2は、従来であれば制御対象機器3ごとにそれぞれを操作するための専用のコントローラを用意する必要があったが、本実施形態においては制御システム1が制御対象機器3の動作を制御するための制御信号に変換することから、一般的に市販されている例えばゲーム用のコントローラなど任意のコントローラやリモコンを用いて制御対象機器3の動作を制御することが可能となっている。また、制御対象機器3は、使用状況に応じて異なる複数の動作を行うロボットなどの機器であり、例えば産業用ロボット、建設機械、自動運転機器などが対象となる。
【0016】
以下、制御システム1について詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る制御システムの処理を示すイメージ図である。
図2において、破線の矢印が標準入力を示し、点線の矢印が標準出力を示し、実線の矢印が標準エラー出力を示している。制御システム1は、制御対象機器3が任意の動作を行うために予め設計されている設計情報(任意の動作を行うために必要な単機能プログラムの実行順序やそのプログラムの起動方法が特定された構成情報21であり、詳細は後述する)を制御管理部13が読み込み、任意の動作に対応する一又は複数の経路22を連結した経路ネットワークが生成される。
【0017】
経路22には任意の動作を実現するための実行順序に関する情報が含まれており、経路22にしたがって対象演算部11のプログラムが起動される。御信号算出部11のプロセス間通信は、
図2に示すように、経路22で構成される経路ネットワークにしたがって制標準入力、標準出力、標準エラー出力により行われる。経路22にしたがって一連の対象演算部11のプログラムが全て起動されると、制御対象機器3を動作させるための制御信号が算出され、最終的に制御対象機器3が所望の動作を行うための制御信号がPLCなどの駆動制御部に送信される。
【0018】
図3は、本実施形態に係る制御システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
図3において、白抜きの矢印は処理の流れを示し、実線の矢印はデータの流れを示している。制御システム1は、操作部2からの操作情報を受信したり、受信した操作情報に応じて制御対象機器3を動作させるための制御信号を算出したり、算出された制御信号を制御対象機器3の駆動制御部に対して送信する処理等を行う対象演算処理群12(すなわち、対象演算部11の集合体)と、対象演算部11の処理を制御したり、設計情報である構成情報21から経路22で構成される経路ネットワークを構築する処理等を行う制御管理部13とを備える。また、構成情報21等を格納するためのストレージ23を備える。
【0019】
構成情報21は開発者により予め設計される情報であり、例えば制御対象機器3に実現させる任意の動作に応じて実行対象となる対象演算部11のプログラムの起動方法(例えば、起動コマンド等)や、実行した対象演算部11の出力結果を次にどの対象演算部11に渡すかといった情報(例えば、送信先プログラムとそれに渡すパラメータ等)が記載されている。
図4は構成情報の一例を示す図であり、この中のCommandの部分が対象演算部11のプログラムの起動方法に関する記載であり、Toの部分がどの対象演算部11の出力をどの対象演算部11に渡すかといった処理の受け渡し情報に関する記載である。
【0020】
制御管理部13の経路生成部24は、ストレージ23に格納されている構成情報21に基づいて、制御対象機器3が所定の動作を実現するのに必要となる制御信号を算出するための経路ネットワークを構築し、この経路ネットワークを構成する個々の経路22を生成する。
図5は、本実施形態に係る制御システムにおける経路生成部の構成を示す機能ブロック図である。経路生成部24は、ストレージ23から構成情報21を取得して経路に関する情報(例えば
図4におけるToの部分)を読み取る経路情報読取部31と、読み取った情報に基づいて、所定の動作を行うための処理順序を示す経路ネットワークを構築する経路ネットワーク構築部32と、構築された経路ネットワークにしたがって対象演算部11との間で標準入出力の情報をやり取りする経路22を作成する経路作成部33とを備える。経路ネットワーク構築部32で構築される経路ネットワークにしたがって対象演算部11の一連の処理が実行されることで、制御対象機器3が所定の動作を実現するための制御信号が算出されることとなる。
【0021】
図6は、本実施形態に係る制御システムにおける経路の構成を示す機能ブロック図である。経路生成部24で生成された経路22は、当該経路生成部24で生成された処理の受け渡し情報を含む経路情報34に基づいて、対象演算部11の実行ファイルとなるインスタンス11aに対して標準入力の書き出しを行う標準入力書出し部35と、インスタンス11aからの標準出力の受け取りを行う標準出力受取り部36とを備える。受け取った標準出力の情報は再度標準入力書出し部35に渡されて、次の対象演算部11のインスタンス11aに対する標準入力書き出しの際に利用される。経路22やインスタンス11aは単機能ごとに存在しており、複数の経路22が経路生成部22で構築された経路ネットワークにしたがって処理を実行する。
【0022】
このような経路ネットワークにしたがった制御信号が算出されることで、開発者が制御対象機器3に任意の動作を行わせる際に、対象演算部11のプログラムの中身の書き換えを必要最小限に抑え、構成情報21を編集する作業を行うだけで制御対象機器3に任意の動作を行わせることが可能となり、開発効率を格段に向上させることができる。
【0023】
図3に戻って、制御管理部13において経路生成部24と経路22とにより対象演算部11の処理手順が特定されて実行される一方で、対象演算管理部25及び対象演算制御部26により、対象演算部11の起動制御などが行われる。
【0024】
図7は、本実施形態に係る制御システムにおける対象演算管理部の構成を示す機能ブロック図である。対象演算管理部25は、ストレージ23の構成情報21から対象演算部11のプログラムの起動情報(例えば
図4におけるCommandの部分)を読み取る読取処理部41と、読み取った起動情報と対象演算制御部26(構成については詳細を後述する)から受け取った対象演算部11の動作状況に関する情報とを比較して解析を行う解析処理部42と、解析処理部42が行った解析結果に基づいて対象演算部11へのフィードバックを行うためのフィードバック情報を生成するフィードバック情報生成処理部43と、読取処理部41で読み取った対象演算部11のプログラムの起動情報から当該対象演算部11のインスタンス11aを生成するための指示を対象演算制御部26に送る生成処理部44と、対象演算部11の実行結果をログとして記録するための書き込みを行う実行記録書込処理部45とを備える。
【0025】
解析処理部42は、対象演算制御部26が対象演算部11のインスタンス11aから受け取った標準エラー出力の情報を受け取り、その情報を実行記録書込処理部45に渡してログとして記録させると共に、読取処理部41が読み取った起動情報と標準エラー出力の情報との比較を行う。その比較結果から標準エラー出力を回避するためのフィードバック情報がフィードバック情報生成部43により生成され、対象演算制御部26に送信される。また、対象演算部11の起動(=インスタンス11aの生成)は、読取処理部41が読み込んだ起動情報に基づいて、生成処理部44が対象演算制御部26に指示を送ることで実行される。
【0026】
図8は、本実施形態に係る制御システムにおける対象演算制御部の構成を示す機能ブロック図である。対象演算制御部26は、対象演算部11のインスタンス11aからの標準エラー出力の受け取りを行って対象演算管理部25に渡す標準エラー出力受取処理部51と、対象演算管理部25から送信される対象演算部11の起動情報やフィードバック情報を受け取る起動情報/フィードバック情報受取処理部52と、起動情報やフィードバック情報に基づいて対象演算部11ごとに制御信号を送信するインスタンス制御部53とを備える。
【0027】
対象演算部11のインスタンス11aから受け取った標準エラー出力は対象演算管理部25に送信され、上述したようにフィードバックに利用したりログに記録するのに利用される。対象演算部11ごとのインスタンス11aの生成、処理制御、フィードバック等はインスタンス制御部53が、起動情報/フィードバック情報受取処理部52から渡される情報に基づいて行う。
【0028】
図3に戻って、上記で説明したような制御管理部13の処理により対象演算部11のインスタンス11aが実行され、制御対象機器3に所定の動作を実行させるための制御信号が算出される。算出された制御信号は、制御対象機器3のPLCなどに送信され、制御対象機器3が動作する。
【0029】
次に、本実施形態に係る制御システムの動作について説明する。
図9は、本実施形態に係る制御システムにおける制御管理部の動作を示すフローチャートである。まず、制御対象機器3を動作させるための設計情報としてストレージ23に格納されている構成情報21を経路生成部24が読み出す(S1)。経路生成部24が、読み出した構成情報21に基づいて、制御対象機器3に所望の動作を行わせるための経路ネットワークを構築し、それらを構成する複数の経路22を作成する(S2)。併せて、対象演算管理部25及び対象演算制御部26が、構成情報21に基づいて対象演算部11のインスタンス11aを生成する(S3)。以下、S4からS11までの処理は、任意の対象演算部11(以下、対象演算部11Xとする)について、制御対象機器3が一連の所望の動作を行うための制御信号が算出されるまで繰り返して実行される。また、S4からS11までの処理はユーザランドで実装されてもよいし、カーネルで処理するようにしてもよい。
【0030】
任意の対象演算部11Xについて、経路22が対象演算部11Xの標準出力を確認する(S5)。データが存在する場合は、経路情報34を参照して実行対象とする対象演算部11のリストYを取得する(S6)。Yの全ての標準入力へ対象演算部11Xの標準出力情報を送信する(S7)。S5においてデータが存在しない場合は、そのままS8の処理に進む。
【0031】
S8において、標準エラー出力受取処理部51が対象演算部11Xの標準エラー出力を確認し、データが存在する場合はその情報を外部に出力する(S9)。フィードバック情報生成処理部43にてフィードバック情報が作成された場合は、フィードバック処理を行う(S10)。S11でループエンドとなったら、以降S4に戻って上記処理が繰り返して行われる。
【0032】
図10は、本実施形態に係る制御システムにおける対象演算部の動作を示すフローチャートである。対象演算部11は、他の対象演算部11からの入力、又はファイルなどを読み込み信号の受信するまで待機する(S1)。入力に応じて対象演算部11の固有の処理(例えばデータの加工や外部との送受信等)を行う(S2)。処理結果を他の対象演算部11に渡す場合は標準出力に、ログ等の外部に渡す場合は標準エラー出力に出力する(S3)。以降、S1に戻って待機状態となる。
【0033】
図11は、本実施形態に係る制御システムを用いてクラッシャの駆動を制御する場合における具体的な構成の一例を示す図である。
図11において、操作部2として任意のゲームコントローラを用いる。制御システム1は、Linux(登録商標)をOSとする小型PCに実装されている。制御システム1からEthernetでPLCに制御信号が送信され、PLCにより制御対象機器3であるクラッシャが駆動制御される。
【0034】
小型PCの制御システム1は、対象演算処理群12と制御管理部13とを備える。対象演算処理群12は、ゲームコントローラからの信号を受信する受信用の対象演算部111と、受信したボタン情報に基づいてクラッシャの姿勢情報を演算する姿勢演算用の対象演算部112と、演算した姿勢情報の制御信号をPLCに送信する送信用の対象演算部113とを有している。
【0035】
また、制御管理部13は、各対象演算部111~113に対して設計にしたがった経路で標準入出力(各対象演算部111~113へのパラメータの入力、演算結果の出力等)を行う複数の経路221,222を備えている。これ以外にもフィードバック処理を行う処理部、ログ管理を行う処理部、ログ情報や構成情報21などを格納しておくストレージ23など(いずれも図示しない)を備えている。第1の経路221は、対象演算部111から出力されるゲームコントローラのボタン情報を対象演算部112に入力する。第2の経路222は、対象演算部112から出力される姿勢情報を対象演算部113に入力する。そして、対象演算部113は、姿勢情報の制御信号をPLCに送信する。途中にエラーなどが行った場合は、そのエラー出力をログに書き出したり、フィードバックなどの処理が行われる。
【0036】
上記のように制御管理部13の経路221,222と対象演算部111~113とが連動して一連の処理を行うことで、制御対象機器3であるクラッシャをゲームコントローラで制御することが可能となる。また、プロセス間の通信が経路22により行われ、この経路22は構成情報21に基づいて生成されることから、プログラムを全体的に改修する必要がなく構成情報21を編集するだけで複雑な動作制御などを実現することが可能となる。
【0037】
このように、本実施形態に係る制御システム1においては、異なる複数の単機能動作を連携して実現する目標動作を制御対象機器3に実行させるための制御信号を、少なくとも算出する複数の対象演算部11と、予め作成された設計情報としての構成情報21に基づいて生成される動作経路を示す経路ネットワークにしたがって対象演算部11を実行する制御管理部13とを備え、制御管理部13が、経路ネットワークにしたがった複数の対象演算部11の実行処理を標準入出力により行うため、通信の仕組みが分離されて標準入出力によりプロセス間通信が行われることで、単機能のプログラムを連動させて複雑な処理を行うといった設計を、例えばprintfやscanf程度の簡単なプログラムで実現することが可能となり、他のプロセス間通信の手法であるTCP/IPやUnix Socketといったサーバとクライアントが必然的に生じるものよりも高速かつ単純で、更には名前付きパイプを含めた他のプロセス間通信のように外部からの影響を受けないという利点を得ることができる。
【0038】
また、従来であればプロセス間通信のネットワーク構造を変更する際に関係するコマンド全てにその変更を適用したり、コマンドの実行方法を非常に注意深く設計する必要
があったが、本実施形態においては、構成情報21を書き換えるだけの非常に簡単な作業で複雑なネットワーク構築が可能になる。
【0039】
さらに、動作時の情報を常時分析してフィードバックを行う構成となっているため、このフィードバックによりプロセスの停止や追加インスタンスの作成を行うことで対象演算部11の処理を動的に制御することが可能となる。
【0040】
さらにまた、動作情報などのログを一元的に管理することで障害発生時の詳細な分析等を迅速に行うことが可能になる。
【0041】
なお、
図7においてフィードバック情報生成処理部43が生成したフィードバック情報は対象演算制御部26に渡されてフィードバック処理が行われる構成としているが、それ以外にも、フィードバック情報生成処理部43がフィードバック情報を経路生成部24の経路ネットワーク構築部32に渡し、このフィードバック情報に基づいて経路ネットワーク構築部32が経路ネットワークを再構築して新たに経路22が作成されるようにしてもよい。
【0042】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る制御システムについて、
図12を用いて説明する。本実施形態に係る制御システムは、前記第1の実施形態に係る制御システム1の他の実施例であり、既存の制御システムを維持したまま本実施形態に係る制御システム1を組み込んだものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0043】
図12は、本実施形態に係る制御システムを用いて制御対象機器を制御する場合における具体的な構成の一例を示す図である。本実施形態に係る制御システムを実行するのには汎用OSが必要であるため、
図11の場合と同様にLinux(登録商標)などのOSが動作する小型のコンピュータ(小型PC)を搭載する。PLCなどの駆動システムを維持するために、既存のリモコンに並行して当該リモコンと同等の信号を模倣するリモコン模倣回路60を備える構成とする。このようなリモコン模擬回路60を備えることで、任意のリモコン61(インターネット経由も含む)に対して任意の制御を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 制御システム
2 操作部
3 制御対象機器
11 対象演算部
11a インスタンス
12 対象演算処理群
13 制御管理部
21 構成情報
22 経路
23 ストレージ
24 経路生成部
25 対象演算管理部
26 対象演算制御部
31 経路情報読取部
32 経路ネットワーク構築部
33 経路作成部
34 経路情報
35 標準入力書出し部
36 標準出力受取り部
41 読取処理部
42 解析処理部
43 フィードバック情報生成処理部
44 生成処理部
45 実行記録書込処理部
51 標準エラー出力受取処理部
52 起動情報/フィードバック情報受取処理部
53 インスタンス制御部
60 リモコン模倣回路
111 対象演算部(受信用)
112 対象演算部(姿勢演算用)
113 対象演算部(送信用)
221,222 経路