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特開2023-97860全固体電池用原料の加圧装置および処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097860
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】全固体電池用原料の加圧装置および処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230703BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230703BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214218
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(72)【発明者】
【氏名】山田 侑矢
(72)【発明者】
【氏名】原島 謙一
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦明
(72)【発明者】
【氏名】中川 泰伸
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AM12
5H029CJ03
5H029CJ28
5H029CJ30
5H029DJ16
(57)【要約】
【課題】密閉性や処理完了後の操作性やメンテナンス性を確保した状態で、全方位から均等に圧縮を施すことによって、全固体電池を構成するすべての素材を均一な配置とすることのできる全固体電池原料の加圧装置および処理システムを提供する。
【解決手段】本発明の加圧装置は、有機溶媒を貯留する給液タンクと、給液タンクから供給された有機溶媒を加圧する増圧機と、増圧機から吐出された有機溶媒を供給され、全固体電池原料が配置される圧力容器と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒を貯留する給液タンクと、前記給液タンクから供給された前記有機溶媒を加圧する増圧機と、前記増圧機から吐出された前記有機溶媒を供給され、全固体電池原料が配置される圧力容器と、を有する加圧装置。
【請求項2】
前記全固体電池原料を処理するための空間を密閉する密閉部と、前記密閉部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、前記不活性ガスを循環精製するガス循環精製部と、を有する請求項1記載の加圧装置。
【請求項3】
前記密閉部は、前記加圧装置の全体または一部を封止するシール部を有する請求項1または2に記載の加圧装置。
【請求項4】
前記増圧機から吐出される前記有機溶媒の圧力、および/または、前記加圧容器内の圧力を検知する検知部と、を有する請求項1~3のいずれかに記載の加圧装置。
【請求項5】
前記圧力容器は、前記全固体電池原料を密閉する袋体を配置する、請求項1~4のいずれかに記載の加圧装置。
【請求項6】
前記圧力容器は、内部を密閉するための蓋を有し、前記蓋を自動で開閉するための蓋位置調整部を有する、請求項1~5のいずれかに記載の加圧装置。
【請求項7】
前記請求項1~6のいずれかに記載の加圧装置と、前記全固体電池原料を微粒化する微粒化装置と、を有する、処理システム。
【請求項8】
前記微粒化装置は、前記全固体電池原料を微粒化する噴射チャンバーを有する、請求項7記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池用原料の加圧装置および処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウムイオン電池等の液体電解質材を用いた電池は、正極材と負極材をセパレータで区切り、隙間に液状のバインダを介在させる。正極材は、Ni、Mn、Co、LiCoO2等である。負極材は、グラファイト等である。セパレータは、多孔質樹脂である。バインダは、高分子材料である。正極材、負極材、セパレータ、バインダ自体の改良や、電池としてのパッケージ方法の改良等が研究されている。
【0003】
近年、液体のバインダ(電解質材)に代わり、固体電解質材を用いる電池が検討されている。固体電解質材を用いる電池では、セパレータが不要となる。電気を発生させるために正極材と負極材を往来する電荷の移動の自由度を高め、電流の出力効率を向上させる取り組みがなされている。正極材、負極材、固体電解質材は、すべて固体で構成されることから、全固体電池と言われる。全固体電池に用いられる固体電解質材として、酸化物系固体電解質材と硫化物系固体電解質材が検討されている。
【0004】
また、特許文献1に記載の全固体電池の製造法は、全固体電池素子を溶融状態の樹脂(流体中)で加圧することによって、電池を封口する際の電池ケースの膨れや、充放電に際して電極の膨張収縮が生じても電池特性が損なわれないことが開示されている。全固体電池素子に印加される圧力は、50kgf/cm2以下では加圧の効果は見られず、10000kgf/cm2以上では全固体電池素子にクラックが生じ電池性能が低下するため、50~10000kgf/cm2の加圧が好ましいことも開示されている。
【0005】
また、特許文献2に記載の全固体電池の製造方法は、正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層を有する被加圧体に、等方圧加圧を行う加圧工程を施すことによって、電極活物質層の割れ、剥離、微小な変形、および反りの発生を防止できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000‐106154号公報
【特許文献2】再公表特許2012‐164723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、全固体電池は、液体電池と異なり、セパレータを有さない。そのため、正極材、負極材、固体電解質材を均一な状態にするためには、各素材および電池を構成するすべての素材を合わせた均一性を高める必要がある。また、正極材、負極材、固体電解質材を圧着させて一体の固体状にする方法も確立していない。
【0008】
酸化物系固体電解質材は、La、Li、Ti、O等である。これらの素材は硬度が高く、一体の固体状に圧着させることが容易ではない。また、これらの素材は硬度が高いため、固体電解質材の小型化が困難である。
硫化物系固体電解質材は、Li、Ge、P、S等で構成される。これらの素材は柔らかく、均一性を維持して一体の固体状にすることが困難である。さらに、硫化物系固体電解質材は、水と反応する特性を有する。硫化物系固体電解質材が水と反応すると、硫化物由来の毒性の高い気体が発生し、作業者や電池の利用者に害を与える可能性がある。
【0009】
酸化物系固体電解質材と硫化物系固体電解質材ともに、このような課題があり、現状、固体電解質材の量産化には至っていない。特に、硫化物系固体電解質材を生成するためには、密閉性や処理完了後の操作性やメンテナンス性を確保した装置の開発が求められる。
【0010】
また、素材を圧着させて一体の固体にするとしても、プレス等の機械的な圧縮においては、全方位から均等に圧縮することも難しく、効率的な圧縮方法の開発も求められていた。
【0011】
特許文献1および特許文献2には、全固体電池素子を樹脂によって封止するための静水圧プレスに関する装置構成は開示されているが、全固体電池に用いられる酸化物系固体電解質材と硫化物系固体電解質材は、水に触れることによる酸化を誘発してしまう可能性や、毒性のある硫化水素として気化してしまうことによる人体への悪影響の可能性等があり、そうした課題を解決するための装置構成は開示されていなかった。
【0012】
本発明は、密閉性や処理完了後の操作性やメンテナンス性を確保した状態で、全方位から均等に圧縮を施すことによって、全固体電池を構成するすべての素材を均一な配置とすることのできる全固体電池原料の加圧装置および処理システムを提供することを目的とする。
【0013】
本発明では、全固体電池用原料の加圧装置および処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の加圧装置は、有機溶媒を貯留する給液タンクと、給液タンクから供給された有機溶媒を加圧する増圧機と、増圧機から吐出された有機溶媒を供給され、全固体電池原料が配置される圧力容器と、を有する。
【0015】
本発明の処理システムは、加圧装置と、全固体電池原料を微粒化する微粒化装置と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の加圧装置および処理システムによれば、密閉性や処理完了後の操作性やメンテナンス性を確保した状態で、全方位から均等に圧縮を施すことによって、全固体電池を構成するすべての素材を均一な配置とすることのできる全固体電池用原料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の加圧装置の構成図
図2】本実施形態(変形例1)の加圧装置の構成図
図3】本実施形態の蓋位置調整部の(a)変形例1と(b)変形例2の断面図
図4】本実施形態の逆止弁の詳細を示す断面図
図5】本実施形態(変形例2)の加圧装置の構成図
図6】本実施形態の処理システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0019】
(加圧装置の構成)
本実施形態の加圧装置1は、図1に示すように、全固体電池用原料M1の圧縮成形等を行う装置である。加圧装置1の圧力容器4内において、全固体電池用原料Mを10~800MPaの範囲内で加圧することによって、加圧処理を行うことができる。加圧装置1は、給液タンク2と、増圧機3と、圧力容器4と、を有する。
【0020】
給液タンク2は、図1に示すように、有機溶媒M2を貯留するタンクである。図1および図2に示すように、給液タンク2の全部(外装)または一部を外部の空気と接することのないようにグローブボックスなどで密閉することもできる。
【0021】
水を用いると全固体電池用原料M1に悪影響を及ぼす可能性があるため、酪酸ブチル等の有機溶媒M2を用いることが望ましい。有機溶媒M2を加圧流体として用いるためには、加圧装置1はもちろん、加圧装置1の内部の要素を連結する配管を有機溶媒M2に耐えうる素材で製作する必要がある。例えば、食品や医薬分野で利用されるステンレスやジルコニア等の樹脂を用いることができる。例えば、配管の全部または一部を樹脂製とすることができる。
【0022】
具体的な有機溶媒M2として、非水分散媒として使用できる有機溶媒としては、アルコール化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、アミノ化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、エステル化合物溶媒等が挙げられる。中でも、アミド化合物溶媒、炭化水素化合物溶媒(芳香族化合物溶媒及び脂肪族化合物溶媒)、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エステル化合物溶媒が好ましい。
【0023】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、2-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールが挙げられる。
【0024】
エーテル化合物溶媒としては、アルキレングリコール(トリエチレングリコール等)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル等)、アルキレングリコールジアルキルエーテル(エチレングリコールジメチルエーテル等)、ジアルキルエーテル(ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,2-、1,3-及び1,4-の各異性体を含む)等)が挙げられる。
【0025】
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、2-ピロリジノン、ε-カプロラクタム、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0026】
アミノ化合物溶媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
【0027】
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、イソブチルプロピルケトン、sec-ブチルプロピルケトン、ペンチルプロピルケトン、ブチルプロピルケトンなどが挙げられる。
【0028】
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、パラフィン、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油などが挙げられる。
【0029】
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0030】
エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ペンタン酸ブチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸イソブチル、ピバル酸プロピル、ピバル酸イソプロピル、ピバル酸ブチル、ピバル酸イソブチルなどが挙げられる。
【0031】
溶媒に含有される非水分散媒は、1種であっても、2種以上であってもよく、2種以上であることが好ましい。溶媒が2種以上の非水分散媒を含有する場合、炭化水素化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒及びエステル化合物溶媒からなる群から選択される2種以上の非水分散媒の組み合わせが好ましい。
【0032】
増圧機3は、図1に示すように、ピストンの往復によって、加圧室内の圧力を上昇または下降させることによって、加圧装置1内を通過する流体の圧力を10~800MPaの範囲内で加圧する。図1に示すように、給液タンク2と同様に、増圧機3の全部(外装)または一部を外部の空気とは接することのないようにグローブボックスなどで密閉することもできる。
【0033】
また、図5に示すように、増圧機3の変形例として、サーボモータ3Aを利用することもできる。つまり、増圧機3を駆動する場合は、図示しない油圧ポンプ等を利用することが多いが、電動モータ3B等で駆動するサーボモータ3Aを利用することで、電動化を図ることができる。
【0034】
圧力容器4は、図1に示すように、全固体電池用原料Mを収容するための容器であり、蓋6で密閉される。圧力容器4は、ステンレス等の金属製や樹脂製等であればよく、耐圧仕様である。圧力容器4内に全固体電池用原料Mを収容した後、蓋6で圧力容器4内を密閉状態とすることで、気密性を保つことができる。圧力容器4は、本体5内に配置または形成され、フレーム等の架台によって固定される。蓋6は、圧力容器4を開閉するための蓋である。図1および図2に示すように、圧力容器4の全部(外装)または一部を外部の空気と接することのないようにグローブボックスなどで密閉することもできる。
【0035】
加圧装置1は、10~800MPaと高圧状況下で利用するものであり、加圧時の圧力容器4内の内圧を確保しなければならない。蓋6と圧力容器4を、ボルト等の結合部材やネジ部材によって密閉性を強固なものにすることもできる。その他、手動式だけでなく、自動式の固定方法等適宜選択することができる。
【0036】
例えば、図3(a)に示すように、蓋6の位置を自動で調整するための蓋位置調整部6aを配置することができる。蓋6の側面に形成する蓋側ガイド部6bが、蓋位置調整部6aの側面に形成する蓋位置調整部側ガイド部6cを上下に移動することによって、蓋6の開閉を自動で行うことができる。本実施例中においては、上下に移動する形態としたが、上下(Z軸方向)だけでなく、左右(X軸方向、Y軸方向)に移動できる構成とすることもできる。
【0037】
また、図3(b)に示すように、図3(a)の軸構成によるものではなく、蓋6の位置を自動で調整するための蓋位置調整部6aとして、蓋6に固定される支持部6eを回転軸6dの旋回/回転を利用することもできる。
【0038】
密閉部7は、図1に示すように、箱状のケーシングである。密閉部7は、図1および図2に示すように、加圧装置1全体または一部を密閉する。密閉性を確保するため、密閉部7は、直方体または立方体の下面以外の全面を覆う形状を有する。密閉部7は、外部との通気を行う通気口等を有することもできる。
【0039】
密閉部7は、図1に示すように、シール部10を配置することもできる。シール部10は、ゴム、Oリング、パッキン等の部材であり、密封性を維持できるものであればよい。ただし、有機溶媒M2に触れるものであるため、溶媒に耐性のある素材を選定する必要がある。
【0040】
不活性ガス供給部8は、図1に示すように、密閉部7に不活性ガスFを供給する不活性ガス供給源(不図示)を有する。不活性ガスFは、例えば、窒素やアルゴンである。密閉部7に不活性ガスFを充満させることによって、万が一、全固体電池原料M1(硫化物系固体電解質材)が水と反応し、硫化物由来の毒性の高い気体が発生しても、気体の活性化を防止できる。全固体電池原料M1に残存している溶存酸素を除去することで、全固体電池原料M1および全固体電池材料Eの酸化を防止する。
【0041】
ガス循環精製部9は、図1に示すように、密閉部7の気体の安全性を確保する。特に、硫化物系電解質材料等を微粒化処理する場合に、毒性の高いガス等が発生したとしても、ガス循環精製部9が、毒性の高いガスを吸引し、毒性を下げる処理を行う。
【0042】
具体的には、硫化水素は、空間内における硫化水素濃度が10ppmを越えると目の粘膜を刺激し、人体に害を与える。そのため、硫化水素濃度が10ppmを越えないように、継続的に換気することが好ましい。不活性ガス供給部8およびガス循環精製部9が、密閉部7内の硫化水素濃度を10ppm以下とすることによって、作業者の安全性を確保できる。
【0043】
また、圧力容器4周辺に、検知部11を配置することもできる。検知部11は、増圧機3から吐出される有機溶媒M2の圧力や流量、および/または、圧力容器4内の圧力等を検知するための圧力センサ、流量センサ等を用いることができる。
【0044】
袋体12は、密閉性が確保でき、有機溶媒M2で損傷または劣化しない材質で製作された袋である。
【0045】
また、図1、2、4等に示すように、逆止弁13を増圧機3の両端に配置することもできる。逆止弁13を配置することによって、増圧機3内の圧力が低下しないように維持することができることで、有機溶媒M2の圧力の安定化を図ることができる。
逆止弁13は、図4に示すように、ボール13aと、ボール受け13bと、付勢部13cと、樹脂部13dを有する。
【0046】
ボール13aは、球状の部材であればよい。接触が多い箇所であるため、コンタミの少ないセラミックや樹脂等のものを利用することが望ましい。ボール受け13bは、ボール13aを受ける(囲う)ものであり、圧力変動によって生じる衝撃を和らげる。SUS等の金属部材などを利用できる。さらに、ボール受け13bだけでなく、樹脂パッキンやシール等を配置することもできる。付勢部13cは、ボール受け13bを付勢するものであり、バネ等を利用することができる。樹脂部13dは、ボール受け13bの外側に配置されるものであり、各種溶媒による耐性を向上させるためのものである。
【0047】
また、図6に示すように、加圧装置1の周辺に、微粒化装置101を配置することによって、処理システム100として運用することもできる。微粒化装置101は、全固体電池用原料M1を微粒化する。増圧機等で10~500MPaの範囲内で加圧した全固体電池用原料Mを噴射チャンバー102から噴射する。
【0048】
全固体電池原料M1としては、例えば、酸化物系固体電解質材や硫化物系固体電解質材が想定できる。酸化物系固体電解質材は、La、Li、Ti、O等である。硫化物系固体電解質材は、Li、Ge、P、S等で構成される。溶媒としては、酸化物系固体電解質材であれば、素材を酸化させない組合せを選択し、さらに、硫化物系固体電解質材であれば、硫化水素を発生させない組合せを選択しなければならない。
【0049】
さらに、図6に示すように、ロボットRや制御装置14を利用することで、一層自動化を図ることもできる。ロボットRは、協働用のロボットであり、微粒化装置101で処理した全固体電池用原料M1を、加圧装置1に移動させるためのものである。
【0050】
制御装置14は、微粒化装置101、加圧装置1、不活性ガス供給部8、ガス循環精製部9等の数値を記憶、演算、処理等することで、適正な稼動条件を制御する。微粒化装置101の制御としては、給液ポンプから供給される全固体電池用原料M1の量、増圧機の圧力や吐出流量、処理回数等を調整する。加圧装置1の制御としては、給液タンク2から供給される有機溶媒M2の量、増圧機3の圧力や吐出流量、圧力容器4内の圧力等を調整する。不活性ガス供給部8、ガス循環精製部9の制御としては、不活性ガスの量などを調整する。さらに、そうした調整しなければいけない数値を総合的に制御することもできる。
【0051】
以下、本実施形態の加圧装置1における加圧処理手順について説明する。
【0052】
まず、ガス循環精製部9を稼働させることで、密閉部7に不活性ガスFを充満させる。
【0053】
次に、全固体電池用原料M1を袋体12内に密閉した状態で詰める。全固体電池用原料M1の入った袋体12を、圧力容器4に配置し、圧力容器の蓋6を閉める。
【0054】
次に、給液タンク2に貯留する有機溶媒M2を増圧機3で10~800Maの範囲内で加圧する。加圧した有機溶媒M2を圧力容器4内に供給する。圧力容器4内に加圧状態の有機溶媒M2を供給することで、圧力容器4内が順次加圧され、全固体電池用原料M1が全方向から加圧されることによって、固体化する。加圧処理の時間としては、10、30分、1時間等、装置の容量に応じて設定することができる。
【0055】
また、加圧処理の前工程として、微粒化装置101を用いて、全固体電池用原料M1を微粒化させることもできる。処理手順について説明する。
【0056】
まず、全固体電池用原料M1を増圧機によって、10~500Maの範囲内で加圧する。
加圧した全固体電池用原料M1を噴射チャンバー102から噴射することで、全固体電池用原料M1を微粒化することができる。全固体電池用原料M1の粒子径を均一に揃えることによって、加圧処理後の固体化した全固体電池用処理物M1の性能を安定化させることができる。
【0057】
さらに、図6に示すように、微粒化装置101と加圧装置1の間にロボットRを配置することで、作業の自動化を図ることもできる。微粒化装置101を用いて(10~500Maの範囲内で加圧した全固体電池用原料M1を噴射チャンバー102から噴射することで)微粒化させた全固体電池用原料M1が詰まった袋体12をロボットRによって、加圧装置1の圧力容器4内に移動させ、蓋6を蓋位置調整部6aによって閉じた後、加圧装置1を稼動させること(10~800Maの範囲内で加圧すること)で、固体化した全固体電池用原料M1を形成する。そのあと、蓋6を蓋位置調整部6aで開くことで、固体化した全固体電池用原料M1をロボットRによって外部に取り出すことができる。
【0058】
なお、加圧処理および微粒化処理を実施するにあたり、図6に示すように、微粒化装置101と加圧装置1の全部(外装)または一部を外部の空気とは接することのないようにグローブボックスなどで密閉し、不活性ガス供給部8およびガス循環精製部9による不活性ガスが充満する状態を保つことによって、精度の高い処理を実現する。
【0059】
さらに、そうした微粒化装置101、加圧装置1、不活性ガス供給部8、ガス循環精製部9等の自動化を図るにあたり、制御装置14を用いて、各数値を記憶、演算、処理等することで、適正な稼動条件を制御する。
【0060】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1 加圧装置
2 給液タンク
3 増圧機
3A サーボモータ
3B 油圧モータ
4 圧力容器
5 本体
6 蓋
6a 蓋位置調整部
6b 蓋側ガイド部
6c 蓋位置調整部側ガイド部
6d 回転軸
6e 支持部
7 密閉部
8 不活性ガス供給部
9 ガス循環精製部
10 シール部
11 検知部
12 袋体
13 逆止弁
14 制御装置
100 処理システム
101 微粒化装置
102 噴射チャンバー
M1 全固体電池用原料
M2 有機溶媒
R ロボット
図1
図2
図3
図4
図5
図6