(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097863
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】高周波電源システム
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214221
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄一
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084DD38
2G084HH05
2G084HH08
2G084HH23
2G084HH25
2G084HH28
2G084HH29
2G084HH52
2G084HH56
(57)【要約】
【課題】IMDによる反射波電力Pr1(反射係数)の増加を抑える処理を簡略化する。
【解決手段】本開示は、接続される負荷に対して高周波電力を提供する、高周波電源システムであって、第1の高周波電力を負荷に供給する第1の電源と、第2の高周波電力を負荷に供給する第2の電源と、第1の整合部および第2の整合部を含む整合器と、を備え、整合器は、第1の電源および第2の電源のそれぞれにシステムクロックを供給し、前記第2の電源は、前記整合器から供給されたシステムクロックに基づいて定まる制御周期で第2の高周波電圧を出力し、前記第1の電源は、前記整合器から供給されたシステムクロックに基づいて定まる制御周期毎に、第1の基本周波数を有する基本波信号を周波数変調させるとともに増幅して第1の高周波電圧として出力する、高周波電源システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続される負荷に対して高周波電力を提供する、高周波電源システムであって、
第1の基本周波数を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を前記負荷に供給する第1の電源と、
前記第1の基本周波数より低い第2の基本周波数を有する第2の高周波電圧を出力することにより第2の高周波電力を前記負荷に供給する第2の電源と、
前記第1の電源と前記負荷との間に接続された第1の整合部および前記第2の電源と前記負荷との間に接続された第2の整合部を含む整合器と、を備え、
前記整合器は、前記第1の電源および前記第2の電源のそれぞれにシステムクロックを供給し、
前記第2の電源は、前記整合器から供給されたシステムクロックに基づいて定まる制御周期で第2の高周波電圧を出力し、
前記第1の電源は、前記整合器から供給されたシステムクロックに基づいて定まる制御周期毎に、第1の基本周波数を有する基本波信号を周波数変調させるとともに増幅して第1の高周波電圧として出力する、高周波電源システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の電源における周波数変調は、前記基本波信号を変調開始位相および変調量ゲインが設定された信号で周波数変調させるものである、高周波電源システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の電源は、前記システムクロックに基づいてトリガ信号を生成し、前記トリガ信号に応答して、前記変調開始位相および前記変調量ゲインを更新する、高周波電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野では、電子機器の小型化・高機能化に伴って高密度な実装が要求されており、実装基板への素子の接続は微細化され、より信頼性の高い実装が必要となっている。
【0003】
実装の信頼性を確保する方法の一つに、プラズマによる表面改質方法がある。例えば、被処理基板にプラズマ処理を施すと、基板の表面に付着した有機物による汚染を除去でき、ワイヤーボンディングのボンディング強度の向上が図れ、濡れ性が改善され、基板と封止樹脂との密着性を向上できる。このようなプラズマ処理を施すためには、プラズマリアクタ装置に対して電源装置を接続する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1は、プラズマリアクタ装置に接続される電源装置の構成例について開示する。具体的に、特許文献1は、高周波(ソース)電源と低周波(バイアス)電源を、整合回路を介して重畳させてプラズマリアクタ装置に供給する構成について開示している。整合回路において、電源側とプラズマリアクタンス装置側とのインピーダンス整合を取ることにより、効率的な電源供給を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-74159号公報
【特許文献2】特表2018-536295号公報
【特許文献3】特開2017-18834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で示されるように2周波数電源を供給する場合、プラズマリアクタ装置のプラズマチャンバ内には、プラズマと共に、プラズマシースが発生することが知られている。このプラズマシースは、一般的に電気的に絶縁されているものと見なすことができ、プラズマチャンバの電極間に仮想的なコンデンサが形成されていると見ることができる。そして、低周波(バイアス)電源の電圧が周期的に変化することに連動してプラズマの位置が変動するため、プラズマシースの静電容量も周期的に変動する(例えば、プラズマチャンバの構造によってバイアス周波数と同一あるいは2倍の周期で変動する)。つまり、プラズマインピーダンスがバイアス電源の電圧の変化によって高速に変化することを意味する。
【0007】
しかしながら、整合器は、インピーダンス可変素子をモータで動作させているため、高速なプラズマインピーダンスの変化に対してマッチング動作を追従させることができない。その結果、混変調歪(IMD:Inter-Modulation Distortion)によって、ソース電源の出力端に帰還する反射波電力が増加してしまう。反射波電力が増大すると効率的、かつ正確に電源を負荷側に供給できないため、IMDを低減する必要がある。
【0008】
この点、例えば、特許文献2および3は、低周波数側(LF)電源の周期中で、高速に分割して演算したインピーダンスおよび周波数―整合器ルックアップテーブルの2つから反射波が低減されるような高周波数側(HF)電源の位相(周波数)と電力を求め、LFからのトリガ信号に従って、HFが動作するよう制御することにより、IMDを低減する技術を開示している。
【0009】
しかしながら、特許文献2および3に開示の技術では、低周波数側(LF)電源からのトリガ信号に従って、高周波数側(HF)電源またはインピーダンス整合器が周波数のオフセット調整やインピーダンス演算から位相や電力の制御を行いIMDの低減をする。この場合、LF電源の周期に合わせる同期信号が必要であり、同期がずれたときは、オフセット調整やインピーダンスの演算が正しくできず反射波電力の低減が十分でない可能性ある。
本開示はこのような状況に鑑み、IMD抑制のための周波数変調制御において同期ずれが生じない技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示は、接続される負荷に対して高周波電力を提供する、高周波電源システムであって、第1の基本周波数を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を前記負荷に供給する第1の電源と、前記第1の基本周波数より低い第2の基本周波数を有する第2の高周波電圧を出力することにより第2の高周波電力を前記負荷に供給する第2の電源と、前記第1の電源と前記負荷との間に接続された第1の整合部および前記第2の電源と前記負荷との間に接続された第2の整合部を含む整合器と、を備え、前記整合器は、前記第1の電源および前記第2の電源のそれぞれにシステムクロックを供給し、前記第2の電源は、前記整合器から供給されたシステムクロックに基づいて定まる制御周期で第2の高周波電圧を出力し、前記第1の電源は、前記整合器から供給されたシステムクロックに基づいて定まる制御周期毎に、第1の基本周波数を有する基本波信号を周波数変調させるとともに増幅して第1の高周波電圧として出力する、高周波電源システムを提供する。
【0011】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素および多様な要素の組み合わせ、ならびに以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0012】
本開示の技術によれば、整合器から共通のシステムクロックが、第1の電源および第2の電源に供給されて行われる。そのため、第1の電源における周波数変調制御のタイミングを第2周波数と同期させることができる。そのため、第1の電源および第2の電源のシステムクロックのずれによる悪影響が生じず、精度のよい周波数変調制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による電源供給システム(高周波電源システムとも言う)1にプラズマ負荷40を接続した状態を示す図である。
【
図2】本実施形態によるソース電源10の内部構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態による整合器30の内部構成例を示す図である。
【
図4A】本実施形態による、電源供給システム1全体におけるIMD低減(抑制)処理の詳細を説明するためのフローチャート(前半)である。
【
図4B】本実施形態による、電源供給システム1全体におけるIMD低減(抑制)処理の詳細を説明するためのフローチャート(後半)である。
【
図5】IMD抑制前後の反射波電力Pr1の変化の様子(例)を示す図である。
【
図6】IMD抑制処理前後のインピーダンス軌跡(例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0015】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0016】
更に、本開示の実施形態は、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
【0017】
<電源供給システム1の構成例>
図1は、本実施形態による電源供給システム(高周波電源システムとも言う)1にプラズマ負荷40を接続した状態を示す図である。電源供給システム1は、ソース電源(第1の電源)10と、バイアス電源(第2の電源)20と、ソース電源10およびバイアス電源20のそれぞれから出力が供給され、ソース電源10およびバイアス電源20側とプラズマ負荷40側とのインピーダンス整合を取る整合器(インピーダンス変換装置ともいう)30と、を備え、ソース電源10から出力する高周波電力(ソース電力)とバイアス電源20から出力する高周波電力(バイアス電力)とを、例えば重畳してプラズマ負荷40に供給するシステムである。
なお、ソース電源10は、第1の基本周波数(例えば40.68MHz)を有する第1の高周波電圧(進行波電圧)を出力することにより第1の高周波電力(進行波電力)を負荷に供給する。また、バイアス電源20は、第2の基本周波数(例えば400kHz)(第1の基本周波数>第2の基本周波数)を有する第2の高周波電圧(進行波電圧)を出力することにより第2の高周波電力(進行波電力)を負荷に供給する。
【0018】
整合器30は、ソース電源10およびバイアス電源のそれぞれに、システムクロックを供給する。また、整合器30は、周波数変調動作(IMDを低減するため動作)を開始するためのタイミングである制御開始トリガおよび演算した反射係数Γをソース電源10に供給する。また、ソース電源10は、現在の制御状態を示す制御状態フラグ(IMD制御のための変調動作を行っているか否かを示す情報)を整合器30に返送する。
【0019】
<ソース電源10の内部構成例>
図2は、本実施形態によるソース電源10の内部構成例を示す図である。
図2に示されるように、ソース電源10は、周波数変調量・開始位相コントローラ201と、FM変調基本波形テーブル202と、開始位相設定部203と、変調量ゲイン設定部204と、変調テーブル更新部205と、基本波生成部206と、加算部(変調部)207と、DDS(Digital Direct Synthesizer)208と、増幅器209と、検出器210と、広帯域検出部211と、平均化処理部212と、電力設定部213と、減算部214と、振幅設定コントローラ215と、を備える。
【0020】
周波数変調量・開始位相コントローラ201は、整合器30から制御開始トリガ(タイミング信号)、反射係数、およびシステムクロックを受信し、開始位相設定部203と変調量ゲイン設定部204に開始位相あるいは変調量ゲイン(変調範囲(例えば、±1.2MHz)のゲインコントロールの割合を示す値)の設定を指示する。また、周波数変調量・開始位相コントローラ201は、ソース電源10側でのIMD低減に係るFM変調動作の開始や終了を制御状態フラグとして整合器30に送信する。
FM変調基本波形テーブル(メモリ)202は、例えば、40.68MHz±1.2MHzの範囲内の波形を400kHzで変調してえられる波形を格納するテーブルであって、周波数変調量・開始位相コントローラ201からの指示に従って、FM変調基本波形を出力する。開始位相設定部203は、FM変調基本波形における開始位相を設定する。変調量ゲイン設定部204は、FM変調基本波形における、変調量ゲインを設定する。変調テーブル更新部205は、FM変調テーブルにおける現時点でFM変調に用いる変調量ゲインの値と開始位相の値を更新する。
【0021】
基本波生成部206は、ソース電源10の基本波(例えば、40.68MHz)であってFM変調の対象の基本波信号を生成する。加算部(変調部)207は、変調テーブル更新部205からの変調量ゲインおよび開始位相を、基本波生成部206からの基本波信号に反映してFM変調(例えば、49.68MHz±1.2MHzの範囲内の波形を400kHzでFM変調)する。DDS(Digital Direct Synthesizer)208は、FM変調された信号をAD変換し、高周波信号として出力する。増幅器209は、高周波信号(FM変調信号)を増幅してRF出力としての高周波電力を整合器30に供給する。なお、以降では出力する高周波電力を進行波電力Pf1という。また、進行波電力Pf1の電圧成分を進行波電圧Vf1という。同様に、プラズマ負荷40側から反射してくる高周波電力を反射波電力Pr1という。また、反射波電力Pr1の電圧成分を反射波電圧Vr2という。
【0022】
検出器210は、増幅器209からの進行波電圧Vf1を検出し、検出信号として進行波電圧検出信号Vf11を出力すると共に、整合器30を介してプラズマ負荷40側から反射された反射波電力Pr1を検出し、検出信号として反射波電圧検出信号Vr11を出力する。検出器210は、検出した進行波電圧検出信号Vf11と反射波電圧検出信号Vr11とを広帯域検出部211に出力する。
【0023】
広帯域検出部211は、所望の周波数成分を通過させるフィルタであり、例えばスーパーヘテロダイン方式で演算し、フィルタリング処理を行うことで、進行波電圧検出信号Vf11の所望成分である進行波電圧検出信号Vf12と反射波電圧検出信号Vr11の所望成分である反射波電圧検出信号Vr12とをそれぞれ通過させ平均化処理部212に出力する。
【0024】
平均化処理部212は、進行波電圧検出信号Vf12に基づいて進行波電力Pf1を算出するとともに、反射波電圧検出信号Vr12に基づいて反射波電力Pr1を算出する。例えば、Vf2^2/R(R:抵抗値に相当するゲイン)によって進行波電力Pf1を算出することができる。反射波電力Pr1も同様にして算出することができる。なお、上記計算式では、Vf2は進行波電圧検出信号Vf12の大きさを表している。もちろん、実際の電力値に換算するためのゲインが乗算される。
平均化処理部212は、算出した進行波電力Pf1と反射波電力Pr1とをそれぞれ所定期間において蓄積する。更に、平均化処理部212は、進行波電力Pf1と反射波電力Pr1とをそれぞれ所定期間について平均化する。平均化処理部212は、進行波電力Pf1の平均電力(所定期間毎の移動平均)を減算部214に出力する。また、平均化処理部212は、進行波電力Pf1の平均電力および反射波電力Pr1の平均電力を周波数変調量・開始位相コントローラ201に出力する。なお、上記では、電圧に基づいて電力を算出した後に、平均化を行う例を示したが、電圧の平均化を行った後に、電力を算出してもよい。
【0025】
電力設定部213は、目標の電力設定値を出力する。減算部214は、目標の電力設定値と検出された進行波電力Pf1(平均化処理部212の出力値)とのずれを算出し、振幅設定コントローラ215に出力する。振幅設定コントローラ215は、減算部214で算出されたずれ量に基づいてFM変調における振幅値を設定する。
【0026】
周波数変調量・開始位相コントローラ201は、平均化処理部212から出力された進行波電力Pf1および反射波電力Pr1の平均値(所定期間毎の移動平均)を内部メモリ(図示せず)に格納する。また、周波数変調量・開始位相コントローラ201は、予め決められた開始位相設定値および変調量ゲイン設定値の全てについて反射波電力Pr1を取得していない場合には、開始位相値あるいは変調量ゲインを変更するように開始位相設定部203あるいは変調量ゲイン設定部204を制御する。さらに、周波数変調量・開始位相コントローラ201は、全ての開始位相設定値および変調量ゲイン設定値に対応する反射波電力Pr1のうち、最小の反射波電力Pr1となる開始位相設定値および変調量ゲイン設定値を求め、それ以降のFM変調のパラメータ(変調量ゲイン設定値および開始位相設定値)を固定する。なお、上記では反射波電力Pr1を低減させる例を示したが、反射係数を低減させるようにしてもよい。
【0027】
<整合器30の内部構成例>
整合器30は、本実施形態による電源供給システム1の中で中心的な役割を果たす装置である。整合器30は、バイアス電源(低周波側電源:例えば、400kHzで動作)20およびソース電源(高周波側電源:例えば、40MHzで動作)の両方から出力が供給されている(供給開始のタイミングも含めて)ことを認識している。バイアス電源20から出力が供給され始めると、整合器30は、ソース電源10にIMDを低減するための変調動作(IMD低減処理)を開始させるため、IMD低減処理開始のタイミングをソース電源10に通知するため、制御開始トリガをソース電源10に送信する。ただし、整合器30は、制御開始トリガをソース電源10に送信しただけでは、IMD低減処理が開始されたか確認できないため、ソース電源10から制御状態フラグを取得するようになっている。
【0028】
図3は、本実施形態による整合器30の内部構成例を示す図である。整合器30は、HF側センサ301と、ダウンコンバート回路302と、HF側インピーダンス計算部303と、IMD関連制御部304と、HF側整合設定部305と、HF側整合ネットワーク306と、LF側センサ307と、LF側インピーダンス計算部308と、LF側整合設定部309と、LF側整合ネットワーク310と、出力センサ311と、を備える。
【0029】
本実施形態では、HF側センサ301、ダウンコンバート回路302、HF側インピーダンス計算部303、IMD関連制御部304、HF側整合設定部305およびHF側整合ネットワーク306によって、第1の整合部が構成されている。また、LF側センサ307、LF側インピーダンス計算部308、LF側整合設定部309、LF側整合ネットワーク310およびIMD関連制御部304によって、第2の整合部が構成されている。
【0030】
HF側センサ301は、ソース(HF)電源10によって供給された進行波電力Pf1から進行波電圧Vf1と、プラズマ負荷40側から反射してくる反射波電力Pr1から反射波電圧Vr1を検出し、これらをダウンコンバート回路302に提供する。また、LF側センサ307は、ソース電源10からのHF側の進行波電力Pf1をHF側整合ネットワーク306に供給する。
【0031】
ダウンコンバート回路302は、インピーダンス軌跡を求める際の処理速度を考慮して、動作周波数を低く変換する(例えば、40MHzから12MHzに落とす)。
【0032】
HF側インピーダンス計算部303は、平均化出力(Vf・sinθ、Vf・cosθ、Vr・sinθ、およびVr・cosθ)から、HF側のインピーダンス(Vr/Vf)を計算し、これを反射係数(ベクトル成分U,V)に変換してIMD関連制御部304にそれぞれ供給する。なお、HF側インピーダンス計算部303の動作の詳細については後述する(
図4Bのステップ409参照)。
【0033】
IMD関連制御部304は、システムクロックをソース電源10およびバイアス電源20に供給するとともに、制御開始フラグや反射係数Γなどをソース電源10に供給し、ソース電源10においてIMD低減処理に開始したことおよび終了したことを示す制御状態フラグをソース電源10から直接受け取る。また、IMD関連制御部304は、反射係数(ベクトル成分U,V)を用いて、整合器のポジションを演算(例えば、Sパラメータテーブルを参照し、UおよびVに対応する可変コンデンサのポジションを取得する)し、当該ポジションをHF側整合設定部305に供給する。
【0034】
HF側整合設定部305は、IMD関連制御部304から取得した可変コンデンサのポジションに基づいて、HF側整合ネットワーク306に含まれる可変コンデンサの値を変更する。
【0035】
HF側整合ネットワーク306は、入力側(ソース電源10側)と出力側(プラズマ負荷40側)の整合を取り、ソース電源10から供給された進行波電力Pf1を出力センサ311に供給する。
【0036】
LF側センサ307は、バイアス(LF)電源20によって供給された進行波電力Pf2から進行波電圧Vf1と、プラズマ負荷40側から反射してくる反射波電力Pr2から反射波電圧Vr2を検出し、これらをLF側インピーダンス計算部308に提供する。また、LF側センサ307は、バイアス電源20によって供給されたLF側の進行波電力Pf2をLF側整合ネットワーク310に供給する。
【0037】
LF側インピーダンス計算部308は、LF側の進行波電圧Vf2および反射波電圧Vr2を用いて、LF側のインピーダンス(Vr/Vf)を算出し、これをLF側整合設定部309に提供する。LF側整合設定部309は、LF側のインピーダンス値に基づいて、LF側整合ネットワーク310に含まれる可変コンデンサのポジションを演算し、当該ポジションに基づいて、LF側整合ネットワーク310の可変コンデンサの値を変更する。
【0038】
LF側整合ネットワーク310は、入力側(バイアス電源20側)と出力側(プラズマ負荷40側)の整合を取り、バイアス電源20から供給された進行波電力Pf2を出力センサ311に供給する。
【0039】
出力センサ311は、ソース電源10からの進行波電力Pf1(ソース電力)とバイアス電源20からの進行波電力Pf2(バイアス電力)とを、重畳してプラズマ負荷40に供給する。
【0040】
<電源供給システム1全体におけるIMD低減(抑制)処理の詳細>
図4Aおよび
図4Bは、本実施形態による、電源供給システム1全体におけるIMD低減(抑制)処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0041】
(i)ステップ401
整合器30のIMD関連制御部304は、ソース電源10およびバイアス電源20にシステムクロックを供給する。また、IMD関連制御部304は、IMD低減処理の開始条件として、例えば400kHzで動作するバイアス電源20から高周波電力が出力されて負荷に供給されたことを検知し、そのタイミングでIMD低減処理を実行する。つまり、IMD関連制御部304は、バイアス電源20からの出力を検知した場合、HF側整合設定部305にポジションの固定を指示し、HF側整合ネットワーク306における可変コンデンサの値と所定の固定値に設定する。また、IMD関連制御部304は、ソース電源10に対して、変調動作を開始するように指示する制御開始トリガを送信する。
【0042】
(ii)ステップ402および403
整合器30から供給されるシステムクロックおよび制御開始トリガ信号を受信すると、ソース電源10の周波数変調量・開始位相コントローラ201は、開始位相設定部203に開始位相(初期値)の設定を指示する。当該指示に応答して、開始位相設定部203は、FM変調基本波形テーブル202から基本波形(例えば、40.68MHz±1.2MHzの範囲内の波形を400kHzの周波数で変調した波形)を読み込み、任意の開始位相(初期値)を設定し、当該開始位相を反映した基本波形を変調量ゲイン設定部204に出力する。
【0043】
また、周波数変調量・開始位相コントローラ201から変調量ゲイン設定の指示を受け、開始位相設定部203から開始位相を反映した基本波形を受け取ると、変調量ゲイン設定部204は、任意の変調量ゲイン(初期値)を設定し、当該変調量ゲインを反映した基本波形を変調テーブル更新部205に出力する。
【0044】
そして、加算部(変調部)207は、変調テーブル更新部205から出力された初期設定基本波を、基本波生成部206から出力された基本波(例えば、ソース電源10における40.68MHzの基本波)に反映してFM変調を実行し、DDS208に出力する。
【0045】
(iii)ステップ404
検出器210は、変調量ゲイン(初期値)および開始位相(初期値)で変調し、増幅することによって得られた高周波出力(進行波電力Pf1:増幅器209の出力)を検出すると共に、プラズマ負荷40側からの反射波電力Pr1を検出し、それらを広帯域検出部211に出力する。そして、広帯域検出部211は、所定検出回数分の(あるいは所定期間で検出された)進行波電力Pf1および反射波電力Pr1を検出し、平均化処理部212で移動平均値を算出する。
【0046】
さらに、周波数変調量・開始位相コントローラ201は、平均化処理部212から取得した反射波電力Pr1(反射係数Γ)が所定の閾値THより小さいか判断する。反射波電力Pr1(反射係数Γ)が閾値THよりも小さい場合(ステップ404でYESの場合:「閾値TH以下」としてもよい)、当該IMD抑制処理は終了する。一方、反射波電力Pr1(反射係数Γ)が閾値TH以上の場合(ステップ404でNOの場合:「閾値THより大きい」としてもよい)、処理はステップ405に移行する。
【0047】
(iv)ステップ405
周波数変調量・開始位相コントローラ201は、開始位相を前回の値から所定値分(変更ステップ量は予め決められている)変更する。このとき、変調量ゲインは前回と同一値に固定し、変調テーブル更新部205は、開始位相が変更された基本波を加算部(変調部)207に出力する。加算部(変調部)207は、変調テーブル更新部205から出力された基本波(開始位相が変更されたもの)を、基本波生成部206から出力された基本波に反映してFM変調を実行し、DDS208に出力する。
【0048】
検出器210は、変調量ゲイン(初期値)および変更された開始位相で基本波を変調し、増幅することによって得られた高周波出力(進行波電力Pf1:増幅器209の出力)を検出すると共に、プラズマ負荷40側からの反射波電力Pr1(反射係数Γ)を検出し、それらを広帯域検出部211に出力する。そして、広帯域検出部211は、所定検出回数分の(あるいは所定期間で検出された)進行波電力Pf1および反射波電力Pr1を検出し、平均化処理部212で移動平均値を算出する。
【0049】
周波数変調量・開始位相コントローラ201は、以上の動作をすべての開始位相の値(開始位相を変化させる幅(変化幅)は予め決められている。)について繰り返し、各開始位相の値に対応する反射波電力Pr1(反射係数Γ)を取得する。なお、変化幅における「すべて」の開始位相の値について反射波電力Pr1を求めなくてもよく、開始位相の変化幅の範囲内で複数の開始位相値に対応する反射波電力Pr1を求めるようにしてもよい。
【0050】
(v)ステップ406
周波数変調量・開始位相コントローラ201は、ステップ405で取得した複数の反射波電力Pr1(反射係数Γ)の中から最小の反射波電力Pr1(反射係数Γ)を抽出し、それに対応する開始位相の値を取得する。そして、周波数変調量・開始位相コントローラ201は、以後の処理において、開始位相を上記取得した値に固定する。なお、反射波電力Pr1の最小値を抽出する場合、周波数変調量・開始位相コントローラ201における処理においては、進行波電力Pf1は不要である。また、反射係数Γの最小値を抽出する場合、周波数変調量・開始位相コントローラ201は、反射係数を算出する機能を有することになる。この実施形態では、反射係数Γを式(1)によって算出している。
Γ=√(Pr/Pf) ・・・・・ (1)
【0051】
反射波電力Pr1の最小値を抽出する場合であっても、反射係数Γの最小値を抽出する場合であっても、反射波電力Pr1の最小値を抽出するという概念は同じである。また、反射係数は、進行波電圧と反射波電圧とに基づいて算出してもよいし、他の方式で算出してもよい。検出器210は、所望の情報が検出できるものであればよい。
【0052】
(vi)ステップ407
周波数変調量・開始位相コントローラ201は、変調量ゲインを前回の値から所定値分(変更ステップ量は予め決められている)変更する。このとき、上述したように、開始位相の値は、ステップ406で決定された値に固定される。
【0053】
変調テーブル更新部205は、開始位相が固定値で変調量ゲインが変更された基本波を加算部(変調部)207に出力する。加算部(変調部)207は、変調テーブル更新部205から出力された基本波(開始位相が固定、変調量ゲインが変更されたもの)を、基本波生成部206から出力された基本波に反映してFM変調を実行し、DDS208に出力する。検出器210は、固定された開始位相および変更された変調量ゲインで基本波を変調し、増幅することによって得られた高周波出力(進行波電力Pf1:増幅器209の出力)を検出すると共に、整合器30からの反射波電力Pr1を検出し、それらを広帯域検出部211に出力する。そして、広帯域検出部211は、所定検出回数分の(あるいは所定期間で検出された)進行波電力Pf1および反射波電力Pr1を検出し、平均化処理部212で移動平均値を算出し、周波数変調量・開始位相コントローラ201に提供する。
【0054】
周波数変調量・開始位相コントローラ201は、以上の動作をすべての変調量ゲインの値(変調量ゲインを変化させる幅(変化幅)は予め決められている。)について繰り返し、各変調量ゲインの値に対応する反射波電力Pr1(反射係数Γ)を取得する。なお、変化幅における「すべて」の変調量ゲインの値について反射波電力Pr1を求めなくてもよく、変調量ゲインの変化幅の範囲内で複数の変調量ゲインに対応する反射波電力Pr1を求めるようにしてもよい。この場合、どの程度の範囲内で変調量ゲインを変化させるのかは、予め定めておけばよい。
【0055】
(vii)ステップ408
周波数変調量・開始位相コントローラ201は、ステップ407で得られた複数の反射波電力Pr1の中から最小の反射波電力Pr1を抽出し、それに対応する変調量ゲインの値を取得する。そして、周波数変調量・開始位相コントローラ201は、ステップ406で得られた開始位相と当該ステップで得た変調量ゲインを以後の変調動作を行う(整合完了)。
【0056】
なお、上記では複数の反射波電力Pr1の中から最小の反射波電力Pr1を抽出し、それに対応する開始位相の値を取得したが、これに限定されない。例えば、ステップ406と同様に反射係数を用いてもよい。
【0057】
(xiii)ステップ409
整合器30のHF側インピーダンス計算部303は、進行波電圧Vf1および反射波電圧Vr2を取得してからインピーダンス軌跡とその中心値を算出する。当該処理の詳細は以下のようになる。
まず、HF側インピーダンス計算部303は、HF側センサ301から進行波電力Pf1の電圧成分Vf(進行波電圧)および反射波電力Pr1の電圧成分Vr1(反射波電圧)を取得する。
【0058】
次に、HF側インピーダンス計算部303は、HF周波数f(例えば、40.68Mz)で信号(cos成分およびsin成分)を生成(発振)し、乗算器を用いて、HF側センサ301からの進行波電圧Vf1と発振出力の実数成分(cos(2nf・ts・k))とを乗算する。また、HF側インピーダンス計算部303は、乗算器を用いて、HF側センサ301からの進行波電圧Vf1と発振出力の虚数成分(sin(2nf・ts・k))とを乗算する。さらに、HF側インピーダンス計算部303は、乗算器を用いて、HF側センサ301からの反射波電圧Vr1と発振出力の実数成分(cos(2nf・ts・k))とを乗算し、HF側センサ301からの反射波電圧Vr1と発振出力の虚数成分(sin(2nf・ts・k))とを乗算する。以上の動作により、HF側センサ301の検出値(進行波電圧Vf1と反射波電圧Vr1)が複素化される。つまり、HF側インピーダンス計算部303は、内部に複素フィルタを有している。複素フィルタによって、VfおよびVrは、Vf1=Vf1{cos(2nf・ts・k)-j・sin(2nf・ts・k)}、Vr1=Vr1{cos(2nf・ts・k)-j・sin(2nf・ts・k)}となる。
【0059】
そして、HF側インピーダンス計算部303は、複素化した進行波電圧および反射波電圧をHF周波数(ソース(高周波)電源10の基本周波数)で平均化する。具体的には、サンプル周波数(例えば、400kHz)の一周期分の複素化されたVf1およびVr1をそれぞれHF周期(例えば、40.68MHz)で平均化する。これにより、LF周期(400KHz)の一波形分の振幅値と位相値が算出される。
【0060】
さらに、HF側インピーダンス計算部303は、平均化された進行波電圧(Vf1・cosθおよびVf1・sinθ)と平均化された反射波電圧(Vr1・cosθおよびVr1・sinθ)を用いてインピーダンス値を算出する。具体的には、HF周期でLF周期の一波形分を平均化して得られた電圧値を用いてインピーダンス値(Vr1/Vf1)を求めている。当該演算により、HF周期毎の反射係数を算出したことになり、LF周期(400kHz)をHF周期(40.68Mz)で分割した反射係数のベクトル(ベクトル(U,V))を求めることができる。つまり、(400kHz÷40.68MHz)個分のプロット値が得られる。そして、HF側インピーダンス計算部303は、当該(LF周波数/HF周波数)個数分の反射係数(ベクトル;プロット)に対応してインピーダンス軌跡((LF周波数/HF周波数)個数分のインピーダンスがLF周波数の一周期で取得することができる)とその中心値を求め、出力する。
【0061】
(ix)ステップ410
整合器30のIMD関連制御部304は、HF側インピーダンス計算部303から上記反射係数のベクトル(ベクトル(U,V))および反射係数Γを受け取り、HF側整合ネットワーク306における可変コンデンサの整合ポジションを決定する。具体的には、IMD関連制御部304は、Sパラメータテーブル(図示せず)を参照して、反射係数のベクトル(U,V)に対応する可変コンデンサのポジションの情報を取得する。ステップ410において、固定していた可変コンデンサのより適切なポジションが求められる。決定された可変コンデンサのポジションの情報は、IMD関連制御部304からHF側整合設定部305に提供される。
【0062】
(x)ステップ411
整合器30のHF側整合設定部305は、IMD関連制御部304から受け取った可変コンデンサのポジション音情報に基づいて、HF側整合ネットワーク306における可変コンデンサのポジションを設定する。
【0063】
(xi)ステップ412
HF側センサ301は、プラズマ負荷40からの反射波電力Pr1を検出する。
【0064】
(xii)ステップ413
IMD関連制御部304は、反射波電力Pr1(反射係数Γ)が所定の閾値THよりも小さいか判断する。反射波電力Pr1(反射係数Γ)が閾値THより小さい場合(ステップ413でYESの場合:「閾値TH以下」としてもよい)、当該IMD抑制処理は完了する。一方、反射波電力Pr1(反射係数Γ)が閾値TH以上の場合(ステップ413でNOの場合:「閾値THより大きい」としてもよい)、処理はステップ409に戻る。
【0065】
<IMD抑制処理前後の反射波電力Pr1の変化>
図5は、IMD抑制前後の反射波電力Pr1の変化の様子(例)を示す図である。
図5(a)は、変調した入力波を示し、
図5(b)は、IMD抑制処理前(整合器30による整合前)の反射波を示し、
図5(c)は、IMD抑制処理後(整合器による整合後)の反射波電力Pr1を示している。
図5(b)と
図5(c)との比較からも分かるように、IMD抑制処理によって反射波電力Pr1(反射波電圧Vr)の変動が抑えられていることが分かる。
【0066】
<IMD抑制処理前後のインピーダンス軌跡の変化>
図6は、IMD抑制処理前後のインピーダンス軌跡(例)を示す図である。
図6(a)はIMD抑制処理前のインピーダンス軌跡を示し、
図6(b)はIMD抑制処理後のインピーダンス軌跡を示している。
【0067】
IMD成分(反射係数成分)を除外してインピーダンス値を算出すると、狭帯域で整合を取った時のインピーダンス軌跡には中心(スミスチャートの中心)から大きく外れた値(プロット値)が含まれることがある。これをベクトル平均すると、IMD抑制していない状態であってもインピーダンス軌跡は中心近傍に収められたものとなる。
【0068】
しかし、実際には
図6(a)に示すように、中心に収まったインピーダンス軌跡(最大+0.8付近まで広がっている)とはならない。これでは最適に整合がなされているとは言えない。そこで、ソース電源10における高周波出力(RF出力)をFM変調して(例えば、LF周波数でFM変調する)整合器30に供給してIMDを抑制すると、インピーダンス軌跡を中心近傍に収めるようにする。インピーダンス軌跡が中心に収まった状態(IMDが抑制された状態)で進行波電圧Vf1および反射波電圧Vr1を平均化する。これにより、平均化しないで得られるインピーダンス軌跡も平均化して得られるインピーダンス軌跡も中心近傍に収めることができる(
図6(b)参照)。
【0069】
FM変調をしない状態で例えば
図6(a)に示すようなインピーダンス軌跡(中心近傍に収まっていない軌跡)が得られた場合、インピーダンス整合を実現するためにはまずFM変調を行う。FM変調後に得られるインピーダンス軌跡とFM変調前のインピーダンス軌跡を比較すると、その軌跡の形状が変化することが分かる。この軌跡が整合の条件(インピーダンス値が50Ω)からずれている場合、そのずれを整合器30で修正することにより、IMDが最も抑制された状態にすることができるようになる。
【0070】
以上のようにしてインピーダンス軌跡を生成して出力(提示)することによって、オペレータ(ユーザ)は、FM変調を実行して高周波出力(RF出力)をプラズマ負荷40に供給すべきか判断することが可能となる。
【0071】
<まとめ>
(i)本実施形態による高周波電源システムにおいて、バイアス電力と周波数変調された高周波出力とを取得し、ソース電源側のインピーダンスと負荷側のインピーダンスとの整合を取る第1の整合部を含む整合器は、バイアス電力の第2周波数と同一の周波数を有し、タイミングを取るためのトリガ信号を生成し、当該トリガ信号をソース電源に供給する。そして、ソース電源は、トリガ信号に応答して、周波数変調を行う。このようにすることにより、ソース電源がバイアス電源から情報を取得することなく周波数変調を実行することができ、IMDによる反射波電力Pr1の増加を抑える処理を簡略化する(処理演算数を削減する)ことが可能となる。具体的に、ソース電源は、トリガ信号に応答して、変調開始位相および変調量ゲインをそれぞれ変化させながら反射波を検出し、当該反射波が最小となる最適変調開始位相および最適変調量ゲインを決定する。また、整合器は、バイアス電源からバイアス電力を受け取ったことに応答して、トリガ信号を生成し、ソース電源に前記トリガ信号を供給する。さらに、整合器は、負荷からの反射波を検知し、当該反射波に係る情報をソース電源に供給する。
【0072】
一方、ソース電源は、トリガ信号に応答して周波数変調動作を開始したか、あるいは最適変調開始位相および最適変調量ゲインを決定完了したかを示す情報を整合器に提供する。このようにすることにより、整合器は、ソース電源側でIMD低減処理が行われたことを知ることができる。そして、整合器は、ソース電源によって最適変調開始位相および最適変調量ゲインが決定された(IMD低減処理実行)後、反射係数ベクトルを演算し、当該反射係数ベクトルに基づいて、整合器の整合ポジションを設定する。このようにすることにより、最適な整合ポジションを決定することが可能となる。また、整合器は、ソース電源からの進行波と負荷からの反射波に基づいて、インピーダンス軌跡を演算し、出力する。
【0073】
以上のような制御は、整合器30から共通のシステムクロックが、ソース電源(第1の電源)10およびバイアス電源(第2の電源)20に供給されて行われる。そのため、ソース電源における周波数変調制御のタイミングを第2周波数と同期させることができる。そのため、ソース電源10およびバイアス電源20のシステムクロックのずれによる悪影響が生じず、精度のよい周波数変調制御が行える。
【0074】
(ii)本実施形態の機能は、ソフトウェアのプログラムコードによっても実現することができる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、およびそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0075】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0076】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0077】
ここで述べたプロセスおよび技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはない。また、汎用目的の多様なタイプのデバイスが本開示の記述に従って使用することができる。なお、本開示の技術を実行する上で、専用の装置を構築するのが有益である場合があるかもしれない。
【0078】
本実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、本実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示の技術は、具体例な実施形態に関連して記述したが、これらは、本開示の技術を限定するためではなく、説明のためである。本分野にスキルのある者であれば、本開示の技術を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、およびファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0079】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 電源供給システム(高周波電源システム)
10 ソース(HF)電源
20 バイアス電源
30 整合器
40 プラズマ負荷
201 周波数変調量・開始位相コントローラ
202 FM変調基本波形テーブル
203 開始位相設定部
204 変調量ゲイン設定部
205 変調テーブル更新部
206 基本波生成部
207 加算部(変調部)
208 DDS
209 増幅器
210 検出器
211 広帯域検出部
212 平均化処理部
213 電力設定部
214 減算部
215 振幅設定コントローラ
301 HF側センサ
302 ダウンコンバート回路
303 HF側インピーダンス計算部
304 IMD関連制御部
305 HF側整合設定部
306 HF側整合ネットワーク
307 LF側センサ
308 LF側インピーダンス計算部
309 LF側整合設定部
310 LF側整合ネットワーク
311 出力センサ