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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097872
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】タービンブレード及び水流発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 3/12 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
F03B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214237
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】村田 祥
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】百々 泰
【テーマコード(参考)】
3H072
【Fターム(参考)】
3H072AA09
3H072AA26
3H072BB27
3H072CC43
3H072CC67
(57)【要約】
【課題】中空のブレード本体の内部に海水などの液体が浸入すると、安定した発電に不利に働く可能性がある。
【解決手段】水流発電用のタービンブレード9において、中空のブレード本体91と、ブレード本体91を支持する取付座92と、ブレード本体91の内部に収容された浮力発生体90と、取付座92とブレード本体91とを連結する連結構造10と、を備え、ブレード本体91は、内部に連通する開口Mが形成された端面部91yを備え、取付座92は、端面部91yに当接する本体受け部92aを備え、連結構造10は、端面部91yと本体受け部92aとを圧接して接続する接続部13と、端面部91yと本体受け部92aとの間で、開口Mを囲むように配置されたシール材14と、を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流発電用のタービンブレードにおいて、
中空のブレード本体と、
前記ブレード本体を支持する取付座と、
前記ブレード本体の内部に収容された浮力発生体と、
前記取付座と前記ブレード本体とを連結する連結部と、を備え、
前記ブレード本体は、前記内部に連通する開口が形成された端面部を備え、
前記取付座は、前記端面部に当接する本体受け部を備え、
前記連結部は、前記端面部と前記本体受け部とを圧接して接続する接続部と、前記端面部と前記本体受け部との間で、前記開口を囲むように配置された環状のシール材と、を備えているタービンブレード。
【請求項2】
前記取付座は、前記本体受け部から突出すると共に、前記端面部を含む根本部を外嵌する外筒部を更に備えている、請求項1記載のタービンブレード。
【請求項3】
前記接続部は、前記本体受け部を貫通すると共に、前記端面部に交差して前記ブレード本体の長手方向に延在する接合ボルトと、前記ブレード本体に設置されると共に、前記接合ボルトに螺合されるナットと、を備えている、請求項1または2記載のタービンブレード。
【請求項4】
前記接合ボルトは、前記開口の周りに複数配置されており、
前記ナットは、前記各接合ボルトに螺合すると共に、前記開口の周方向に沿うように複数設けられており、
前記周方向に沿って隣接して並ぶ二つの前記ナットを比較した場合、前記各ナットから前記端面部までの距離は異なる、請求項3記載のタービンブレード。
【請求項5】
前記接合ボルトは、前記開口の周りに複数配置されており、
前記シール材は、前記開口及び前記複数の接合ボルトを囲むように配置されている、請求項3または4記載のタービンブレード。
【請求項6】
前記取付座は、前記本体受け部から突出すると共に、前記端面部を含む根本部を外嵌する外筒部を更に備え、
前記根本部は、前記端面部から離れるほど外径が拡径するテーパ部を備えており、
前記外筒部は、前記テーパ部に対応して前記本体受け部から離れるほど内径が拡径する受け側テーパ部を備えている、請求項1~5のいずれか一項記載のタービンブレード。
【請求項7】
水流発電装置において、
胴体の内部に配置された発電機と、
前記発電機のロータに接続された回転軸と、
前記回転軸に接続されたタービンブレードと、を備え、
前記タービンブレードは、
中空のブレード本体と、
前記ブレード本体を支持する取付座と、
前記ブレード本体の内部に収容された浮力発生体と、
前記取付座と前記ブレード本体とを連結する連結部と、を備え、
前記ブレード本体は、前記内部に連通する開口が形成された端面部を備え、
前記取付座は、前記端面部に当接する本体受け部を備え、
前記連結部は、前記端面部と前記支持受け部とを圧接して接続する接続部と、前記端面部と前記本体受け部との間に配置されると共に、前記開口を囲むように配置された環状のシール材と、を備えている、水流発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水流発電用のタービンブレード及び水流発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水流を利用して発電する発電装置が知られている(特許文献1、2参照)。この種の発電装置は、海中の所定位置に設置されたタービンブレードを備えており、タービンブレードの回転を受けて発電される。これに対し、海中を浮遊した状態で発電する水流発電装置が知られている(特許文献3参照)。浮遊式水流発電装置は、水中で浮遊する胴体と、胴体の内部に配置された発電機と、発電機のロータに接続された回転軸とを備えている。回転軸には、タービンブレードが接続されており、タービンブレードの回転は発電機のロータに伝達されて発電される。タービンブレード内には、発泡樹脂等の浮力発生体が配置されている。なお、水流発電用のタービンブレードと風力発電用のタービンブレードとは、技術分野として本質的に異なるが、例えば、非特許文献1、2には、風力発電用のタービンブレードについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-160757号公報
【特許文献2】特表2006-500510号公報
【特許文献3】特開2020-94552号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】CompositeStructures, Volume 133, 1 December 2015, p.878-885
【非特許文献2】The Concept of Segmented Wind Turbine Blades: A Review Energies2017, 10(8), 1112 p.1-20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中空のブレード本体の内部に海水などの液体が浸入すると、安定した発電に不利に働く可能性がある。
【0006】
本開示は、中空のブレード本体の内部に海水などの液体が浸入することを阻止して止水性を向上するタービンブレード及び水流発電装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、水流発電用のタービンブレードにおいて、中空のブレード本体と、ブレード本体を支持する取付座と、ブレード本体の内部に収容された浮力発生体と、取付座とブレード本体とを連結する連結部と、を備え、ブレード本体は、内部に連通する開口が形成された端面部を備え、取付座は、端面部に当接する本体受け部を備え、連結部は、端面部と本体受け部とを圧接して接続する接続部と、端面部と本体受け部との間で、開口を囲むように配置された環状のシール材と、を備えている。
【0008】
このタービンブレードは、中空のブレード本体を備えており、ブレード本体の端面部には、ブレード本体の内部に連通する開口が形成されている。ブレード本体と取付座とは、連結部によって連結されている。ブレード本体の端面部は、取付座の本体受け部に当接している。連結部の環状のシール材は、端面部と本体受け部との間で開口を囲むように配置されており、接続部は端面部と本体受け部とを圧接する。その結果、開口を囲むように配置されているシール材は、端面部と本体受け部との両方に密着され、外部から開口に向けた液体の浸入を阻止する。したがって、中空のブレード本体の内部に海水などの液体が浸入することを阻止して止水性を向上する。
【0009】
いくつかの態様において、取付座は、本体受け部から突出すると共に、端面部を含む根本部を外嵌する外筒部を更に備えていてもよい。外筒部で根本部を囲むように保持するので、止水性が向上すると共に、取付座によって支持されたブレード本体が安定する。
【0010】
いくつかの態様において、接続部は、本体受け部を貫通すると共に、端面部に交差してブレード本体の長手方向に延在する接合ボルトと、ブレード本体に設置されると共に、接合ボルトに螺合されるナットと、を備えていてもよい。接合ボルトをナットに螺合して締結することにより、端面部と本体受け部とを強固に圧接して止水性を向上できる。
【0011】
いくつかの態様において、接合ボルトは、端面部の開口の周りに複数配置されており、ナットは、各接合ボルトに螺合すると共に、開口の周方向に沿うように複数設けられており、周方向に沿って隣接して並ぶ二つのナットを比較した場合、各ナットから端面部までの距離は異なるような態様であってもよい。例えば、端面部からの距離が短いナットと、その距離が長いナットとが周方向で交互に並ぶような千鳥状の配置になるため、隣り合うナット同士の間の距離(肉厚)を確保し易くなり、構造上の強度を確保し易い。
【0012】
いくつかの態様において、接合ボルトは、端面部の開口の周りに複数配置されており、シール材は、開口及び複数の接合ボルトを囲むように配置されていてもよい。外部の液体は、複数の接合ボルトに到達する前にシール材によって内部への浸入を阻止される。その結果、接合ボルトとナットとの螺合箇所を経由して、液体がブレード本体の内部に浸入するのを阻止でき、止水性を向上できる。
【0013】
いくつかの態様において、取付座は、本体受け部から突出すると共に、端面部を含む根本部を外嵌する外筒部を更に備え、根本部は、端面部から離れるほど外径が拡径するテーパ部を備えており、外筒部は、テーパ部に対応して本体受け部から離れるほど内径が拡径する受け側テーパ部を備えていてもよい。根本部を外筒部に差し入れるように装着する際、テーパ部は受け側テーパ部に案内されるように移動するので、根本部を外筒部内の適切な位置に配置することが容易になる。
【0014】
本開示の一態様は、水流発電装置において、胴体の内部に配置された発電機と、発電機のロータに接続された回転軸と、回転軸に接続されたタービンブレードと、を備え、タービンブレードは、中空のブレード本体と、ブレード本体を支持する取付座と、ブレード本体の内部に収容された浮力発生体と、取付座とブレード本体とを連結する連結部と、を備え、ブレード本体は、内部に連通する開口が形成された端面部を備え、取付座は、端面部に当接する本体受け部を備え、連結部は、端面部と支持受け部とを圧接して接続する接続部と、端面部と本体受け部との間に配置されると共に、開口を囲むように配置された環状のシール材と、を備えている。
【0015】
この水流発電装置によれば、中空のブレード本体の内部に海水などの液体が浸入することを阻止して止水性を向上する。
【発明の効果】
【0016】
本開示のいくつかの態様によれば、中空のブレード本体の内部に海水などの液体が浸入することを阻止して止水性を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、水流発電装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図2図2は、タービンを拡大して示す側面図である。
図3図3は、タービンブレードの斜視図である。
図4図4は、ブレード本体が固定された取付座を示し、(a)図は側面図であり、(b)図は、(a)図のb-b線に沿った断面図である。
図5図5は、取付座に固定されたブレード本体の根本部を拡大して示す断面図であり、(a)図は図4の(b)図のV(a)-V(a)線に沿った断面図であり、(b)図は図4の(b)図のV(b)-V(a)線に沿った断面図である。
図6図6は、変形形態に係る取付座及びブレード本体の根本部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る水流発電装置を示す概略構成図である。水流発電装置(以下、「発電装置1」と称する)は、例えば、海流(水流)FLを利用して発電する浮遊式海流発電装置である。
【0020】
図1に示されるように、発電装置1は、海水中において所定の深度(水深)で浮遊する浮体2と、浮体2に対して回転可能に取り付けられているタービン3と、浮体2に収容されておりタービン3の回転によって発電する発電機4とを備える。浮体2は、海底Bに固定されたシンカー5に対して、係留索51を介して接続されている。なお、シンカー5に代えてアンカーが用いられてもよい。
【0021】
浮体2は、一対の発電ポッド6と、一対の発電ポッド6を連結するクロスビーム8と、クロスビーム8に固定された中央ポッド7とを備えている。一対の発電ポッド6は、同方向を向くように例えば左右に並んで配置されている。一対の発電ポッド6は、クロスビーム8によって互いに連結されており、中央ポッド7は、クロスビーム8の略中央の下面に固定されている。発電ポッド6及び中央ポッド7は、中空の筒状容器であり、長手方向が同一方向を向くように配置されている。発電ポッド6の後部には、タービン3が設けられている。発電ポッド6及び中央ポッド7は、タービン3に適正な浮力を付与する。
【0022】
この浮力は、発電ポッド6及び中央ポッド7に搭載される浮力調整機構によって提供される。浮力調整機構は、浮力調整用のタンクを含んでおり、このタンクに海水を注排水することによって、浮体2の内部の空間容積量が調整される。浮力調整機構は、具体的には、各発電ポッド6、中央ポッド7及びクロスビーム8の内部の空間容積量をそれぞれ調整する。浮力調整機構は、これらの空間容積量の調整によって、浮体2に加わる浮力を調整する。
【0023】
クロスビーム8は、一対の発電ポッド6間の対向方向に沿って延在する中空の板状部材である。クロスビーム8は、その内部に空洞を有することによって浮力を発生している。クロスビーム8の形状は、浮遊する発電装置1の姿勢を安定させるべく、左右方向から見て例えば翼形状である。クロスビーム8の左右方向の両端は、例えば、一対の発電ポッド6の中央部にそれぞれ固定されている。また、クロスビーム8には、係留索51が接続されている。係留索51は、クロスビーム8に代えて発電ポッド6に接続されていてもよい。
【0024】
図1及び図2に示されるように、タービン3は、発電ポッド6(胴体の一例)内の発電機4に回転軸31を介して接続されている。発電機4は、ステータ41とロータ42とを備えており、回転軸31の一方端を含む部分(前部)はロータ42に接続されている。回転軸31は、発電ポッド6の長手方向に沿うように後方に向けて延在する。発電ポッド6の後部には、主軸受けとなるハブ61が設けられており(図2参照)、回転軸31の他方端を含む部分(後部)は、ハブ61に回転自在に支持された状態で発電ポッド6から露出している。
【0025】
本実施形態に係るタービン3は、発電ポッド6の後部、つまり、発電ポッド6が海流FLを受ける下流側に配置されている。発電ポッド6の後部にタービン3を配置する構成は、いわゆるダウンウィンド型である。なお、タービン3は、アップウィンド型であってもよい。
【0026】
図1及び図2に示されるように、タービン3は、回転軸31と、回転軸31に設けられた1枚若しくは複数枚のタービンブレード9とを備えている。本実施形態では、2枚のタービンブレード9を例示している。回転軸31は、前述の通り、発電ポッド6の内部において発電機4のロータ42に接続されている。回転軸31の回転軸線Laは、発電ポッド6の中心軸線と略一致(実質的に一致)している。
【0027】
タービンブレード9は、回転軸線Laまわりの回転運動を生じさせる翼部材であり、海流FLを受けて回転する。タービンブレード9による回転運動は、回転軸31を介して発電機4に提供される。発電機4は、この回転駆動力に応じて発電する。なお、各タービンブレード9のピッチ角度は、任意の角度に調整可能とされている。
【0028】
発電装置1には、発電機4により発電された電力を送電するための送電ケーブル43が設けられている。送電ケーブル43の一端は、クロスビーム8を介して発電ポッド6内の発電機4に接続されており、送電ケーブル43の他端は、例えばシンカー5内に設けられた中継器(又は変圧器等)を介して海底送電ケーブル44に接続されている。海底送電ケーブル44は、海底Bに敷設されており、例えば地上の電力系統(外部電源等)に接続される。発電機4によって発電された電力は、送電ケーブル43及び海底送電ケーブル44を通じて、当該電力系統に送電される。逆に、当該電力系統から各発電ポッド6に給電することもできる。なお、中継器は、シンカー5外の海底Bに設置されてもよい。
【0029】
図2及び図3に示されるように、タービンブレード9は、回転軸31に回転自在に取り付けられた旋回部32と、旋回部32に固定された取付座92と、取付座92に固定された中空のブレード本体91と、ブレード本体91内に設けられた骨組部93と、ブレード本体91内に収容された浮力発生体90と、を備えている。ブレード本体91は、骨組部93及び浮力発生体90を収容した状態で取付座92に着脱自在である。したがって、ブレード本体91が損傷あるいは経年劣化した場合には、ブレード本体91は、取付座92から取り外して交換できる。なお、ブレード本体91の外表面の全体には、防食塗装が施されている。
【0030】
旋回部32は、取付座92に固定される円盤状の旋回テーブル32aと、旋回テーブル32aを回転自在に支持する旋回軸受32bと、旋回軸受32bの回転角を所定角度に調整可能な角度調整機構等を備えている。旋回軸受32bの回転軸線(旋回軸線Lb)は、主軸である回転軸31の回転軸線Laに交差する方向に延在しており、例えば、直交している。旋回軸受32bの回転角を角度調整機構によって調整することにより、タービンブレード9のピッチ角度の調整が可能になる。
【0031】
図3に示されるように、ブレード本体91は、旋回軸線Lbに沿って延在するカバー部材である。ブレード本体91は、骨組部93を挟持するように覆う一対の外皮材91aと、一対の外皮材91aの接続線である側部を補強する補強材91bとを備えている。一対の外皮材91a、補強材91bは、例えば、接着剤によって互いに接続されている。
【0032】
ブレード本体91は、旋回軸線Lbに沿った方向に延在しており、一方の端部である根本部91x(図5の(a)図、(b)図参照)と、他方の端部である先端部91zとを備えている。根本部91xは取付座92に連結された部分であり、先端部91zは根本部91xに対して反対側の部分である。ブレード本体91は、根本部91xから先端部91zにかけて一旦膨らんで浮力発生体90を収容する浮力室を形成し、その後、先端部91zに向かうにつれて漸次縮径して先細りしている。先端部91zでは湾曲した閉鎖部を形成している。
【0033】
ブレード本体91及び骨組部93は、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)を含んで構成されている。骨組部93及びブレード本体91のそれぞれは、例えば金属を含んでもよく、その他の材質を含んでもよい。
【0034】
浮力発生体90は、ブレード本体91の内部に収容される固体物質である。浮力発生体90は、具体的には、発泡樹脂を含んで構成されている。発泡樹脂は、表面及び内部に複数の気泡が形成された構造を有している。浮力発生体90に含まれる発泡樹脂がこのような構造を有しているため、浮力発生体90の内部には、複数の気泡が含まれる。この気泡は、浮力発生体90内に取り込まれて存在するため、周囲に液体が存在しても液体と置き換わることは無く、あるいは置き換わり難く、所望の浮力を安定して保持することができる。
【0035】
発泡樹脂は、例えば、平均的な値として0より大きく且つ1.0以下の比重を有する樹脂材料として説明することができる。発泡樹脂は、例えば、現場で発泡可能な現場発泡樹脂である。現場発泡樹脂の材料として、例えば発泡シリコーン、発泡ウレタン、発泡エポキシ、発泡ポリエステル、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンテレフタラート、又は発泡フェノール等が挙げられる。
【0036】
また、浮力発生体90として使用される発泡樹脂は、ブレード本体91に浸入した海水から受ける静水圧に対する耐圧性を有している。すなわち、浮力発生体90の発泡樹脂の圧縮強度は、当該静水圧よりも大きい。当該静水圧は、例えば0MPaより大きく且つ1MPa以下の範囲内である。この静水圧の範囲は、発電装置1が運用される深度である0mより大きく且つ100m以下の範囲に対応している。
【0037】
発泡樹脂の圧縮強度は、「JIS-K7220」に準じた圧縮強度試験により得た値としてよい。具体的には、発泡樹脂から直径10mmの円柱状に切り出した試験片を、直径200mm、高さ200mmの円筒状の耐圧容器の内部に配置する。その後、試験片に対して、ハンドポンプによる圧縮負荷(上限2.5MPa)を高さ方向に加える。発泡樹脂の圧縮強度は、このように試験片に圧縮負荷を加えたときにおいて、試験片が耐えることができる最大荷重を、試験前の試験片の加重方向に垂直な断面積で除した値である。
【0038】
このように測定される圧縮強度が上記の静水圧よりも大きい発泡樹脂を採用することによって、浮力発生体90を当該静水圧に耐え得る強固な構造にすることが可能となる。このような圧縮強度を有する発泡樹脂の材料として、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はフェノール樹脂等が挙げられる。また、このような圧縮強度を有する発泡樹脂の一例として、深海用のROV(遠隔操作無人探査機:Remotely operated vehicle)に用いられる発泡樹脂(Diab社製、型番:HCP30)が挙げられる。この発泡樹脂は、比重0.2を有し、3.0MPa以上且つ3.9MPa以下の圧縮強度を有する。Diab社製の型番HCP30の発泡樹脂以外の例として、GENERAL PLASTIC社製の型番R-3312の発泡樹脂が挙げられる。この発泡樹脂は、比重0.24を有し、2.75MPa以下の圧縮強度を有する。
【0039】
また、浮力発生体90の発泡樹脂が現場発泡樹脂である場合、上述した圧縮強度を有する現場発泡樹脂は、現場発泡樹脂の材料に微小球を含有してもよい。この微小球の例として、中空ガラス微小球、中空アルミノ・ケイ酸塩微小球、中空フェノール微小球、又は、ガラスエポキシ、炭素エポキシ、或いは熱塑性樹脂によって形成される微小球等が挙げられる。
【0040】
なお、浮力発生体90は、海水(液体)の比重よりも小さい構造部分を備えていればよい。したがって、発泡樹脂などの気泡を取り込んだ構造ではなく、材料自体の比重が海水よりも小さい固体物質であってもよい。
【0041】
図4及び図5に示されるように、ブレード本体91は、連結構造10(連結部の一例)を介して取付座92に連結されている。連結構造10について詳しく説明する。
【0042】
ブレード本体91の一対の外皮材91aは、根本部91xにおいて、互いに一体となって円筒状を形成する。取付座92は、旋回部32に固定されると共に、ブレード本体91が取り付けられる本体受け部92aと、本体受け部92aから突出するように設けられ、根本部91xに外装される筒状(例えば、円筒状)の外筒部92bとを備えている。本体受け部92aは、外筒部92bに対して同芯環状(ドーナツ状)の部材である。外筒部92bの外周には複数の補強リブ92cが設けられている。
【0043】
本体受け部92aは、外筒部92bの外周から張り出し、外筒部92bの外周に沿って設けられた外フランジ92dと、外筒部92bの内周から張り出し、外筒部92bの内周に沿って設けられた内フランジ92fと、を備えている。外フランジ92dは、旋回部32の旋回テーブル32aに固定される部分であり、ボルト締結用の複数のボルト通し孔92gが形成されている。取付座92は、外フランジ92dと旋回テーブル32aとが当接し、ボルト通し孔92gに通されたボルト92hの締結によって固定される。
【0044】
内フランジ92fはブレード本体91の根本部91xに固定される部分である。内フランジ92fには、接合ボルト11が貫通する複数のボルト通し孔92iが形成されている。複数のボルト通し孔92iは、内フランジ92fの周方向に沿って、例えば、等間隔で配置されている。
【0045】
根本部91xは外筒部92bに挿入されている。根本部91xは、外筒部92b内で、内フランジ92fに当接する端面部91yを備えている。本実施形態において当接とは、根本部91xと内フランジ92fとが接触している態様に限定されず、互いに対面しており、近接することで後述のシール材14に圧着される態様を広く含む。根本部91xの端面部91yには、中空のブレード本体91の内部に連通する開口Mが形成されている。
【0046】
根本部91xには、接合ボルト11が挿通される複数の挿通孔91cが形成されている。挿通孔91cは、根本部91xの端面部91yで開放されており、接合ボルト11を受け入れることができる。挿通孔91cは、旋回軸線Lbに沿った方向に延在している。旋回軸線Lbに沿った方向とは、実質的にブレード本体91の長手方向Daを意味している。挿通孔91cは、開放された一方の端部に対し、反対側であって奥側となる他方の端部を備え、挿通孔91cの奥側の端部は閉塞されている。
【0047】
根本部91xには、ナット12が埋設するように取り付けられている。ナット12は、挿通孔91cの他方の端部に重なるように配置されており、挿通孔91cに通された接合ボルト11に螺合する。根本部91xの内周には、ナット12が挿入されるナット保持孔91dが形成されている。ナット保持孔91dに挿入されたナット12は、接合ボルト11に螺合して位置決めされる。
【0048】
ナット保持孔91dは有底であり、ナット保持孔91dと根本部91xの外周との間には壁部91eが設けられている。つまり、ナット保持孔91dは、根本部91xを貫通しておらず、ナット保持孔91dと外部とを連通させる隙間などは形成されていない。したがって、この隙間を塞ぐシール材等は不要である。また、ナット12は、接合ボルト11との螺合を解くことでナット保持孔91dから引き抜くことができる。つまり、ナット12は、根本部91xに対して着脱自在な構造であり、ナット12が腐食等した場合には、容易に交換できる。
【0049】
接合ボルト11は、本体受け部92aを貫通すると共に、端面部91yに交差してブレード本体91の長手方向Daに延在するように配置されている。ナット12は、ブレード本体91の根本部91xに設置されており、接合ボルト11に螺合される。接合ボルト11をナット12に螺合させて締結することで根本部91xの端面部91yと本体受け部92a(内フランジ92f)とは圧接される。その結果、取付座92とブレード本体91とは連結される。接合ボルト11及びナット12は、接続部13の一例である。
【0050】
図4に示される通り、複数の接合ボルト11は、開口Mの周りに配置されている。例えば、複数の接合ボルト11は、開口Mの周方向CDに沿って等間隔で配置されている。ナット12は、開口Mの周方向CDに沿うように複数設けられている。なお、開口Mの周方向CDとは、開口Mの縁に沿った方向を意図している。また、開口Mの周方向CDについては、筒状の根本部91xの周方向として説明することもできる。複数のナット12は、それぞれ接合ボルト11に螺合する。
【0051】
図5は、取付座92に固定された根本部91xの一部分を拡大して示す断面図である。図5の(a)図に示された接合ボルト11と、(b)図に示された接合ボルト11とは、開口Mの周方向CDにおいて、隣り合って並ぶように配置されている。以下、図5の(a)図に示される接合ボルト11を便宜的に第1の接合ボルト11と表現し、図5の(b)図に示される接合ボルト11を便宜的に第2の接合ボルト11と表現する場合がある。また、以下の説明では、第1の接合ボルト11に螺合するナット12を第1のナット12と表現し、第2の接合ボルト11に螺合するナット12を第2のナット12と表現する場合がある。
【0052】
第1のナット12は、第1の接合ボルト11の軸部の先端部分に螺合され、第2のナット12は、第2の接合ボルト11の軸部の先端部分に螺合される。また、第1の接合ボルト11の軸部の長さと第2の接合ボルト11の軸部の長さとは異なる。その結果、第1のナット12から端面部91yまでの距離Dxと、第2のナット12から端面部91yまでの距離Dyとは異なる。具体的には、第1の接合ボルト11の方が第2の接合ボルト11よりも短くなっており、第1のナット12から端面部91yまでの距離Dxは、第2のナット12から端面部91yまでの距離Dyよりも短くなっている。第1のナット12から端面部91yまでの距離Dxと第2のナット12から端面部91yまでの距離Dyとが異なることにより、隣り合って並ぶ第1のナット12と第2のナット12とは互に干渉し難い配置になっている(図4の(a)図参照)。
【0053】
また、長さの短い第1の接合ボルト11と長さの長い第2の接合ボルト11とは、開口Mの周方向CDにおいて交互に並ぶように配置されている。この配置に対応し、第1のナット12及び第2のナット12も交互に配置されており、第1のナット12及び第2のナット12は、開口Mの周方向CDで千鳥状に配置されている。ナット12を千鳥状に配置することにより、隣り合うナット12間の距離を確保し易くなり、適切な強度を保持し易くなる。
【0054】
上述の通り、根本部91xは外筒部92bに挿入され、根本部91xの端面部91yは、取付座92の本体受け部92aの内フランジ92fに当接するように配置される。内フランジ92fは、根本部91xの端面部91yに当接する側の一方の表面(内座面92j)と、反対側である他方の表面(外座面92k)とを備えている。外座面92kには、ボルト通し孔92iに重なるように接合ボルト11の頭部が収まる座ぐり92mが形成されている。接合ボルト11は、内フランジ92fの外座面92k側からボルト通し孔92iに挿入される。接合ボルト11の軸部は、内フランジ92fを貫通して根本部91xの挿通孔91cに通され、ナット12に到達する。ここで、接合ボルト11を回転させてナット12に螺合させる。その結果、根本部91x及び内フランジ92fは、接合ボルト11の頭部とナット12との間で挟持され、締結される。接合ボルト11の締結により、根本部91xの端面部91yと内フランジ92fとは互いに接近し、圧接される。
【0055】
根本部91xの端面部91yと内フランジ92fの内座面92jとの間には、外部からの海水(液体)の浸入を防ぐための環状のシール材14(例えば、Oリング)が配置されている。シール材14は、開口M及び複数の接合ボルト11を囲むように配置されている。接合ボルト11を締結して端面部91y及び内フランジ92fを圧接させることでシール材14は潰れる。その結果、環状のシール材14は全周に亘って端面部91y及び内フランジ92fに密着し、シール性を確保している。内フランジ92fの内座面92jには、シール材14の一部分が収まる位置決め用の環状溝が設けられている。なお、本体受け部92aは、旋回テーブル32aに当接する当接面を備えている。当接面の一部は、内フランジ92fの外座面92kである。当接面には、内フランジ92fを囲むように同心円状に配置された複数のOリング15が設けられている。複数のOリング15は、当接面と旋回テーブル32aとの間で挟持され、シール性を確保している。当接面には、複数のOリング15を位置決めする環状溝が設けられている。
【0056】
外筒部92bの先端近傍には、外筒部92bと根本部91xとを接続する接着剤16が設けられている。接着剤16を設ける主な目的は、外筒部92bと根本部91xとの間の空間を埋めること、または外筒部92bと根本部91xとの間を接合することである。
【0057】
根本部91xは、端面部91yから離れるほど外径が拡径するテーパ部92pを備えており、根本部91xに外嵌される外筒部92bには、テーパ部92pに対応した受け側テーパ部91fが設けられている。例えば、外筒部92bは、根本部91xに接する内面と反対側の外面とを備えており、内面には、テーパ部92pに対応して本体受け部92aから離れるほど内径が拡径する受け側テーパ部91fが設けられている。根本部91xを外筒部92bに差し入れるように装着する際、テーパ部92pは受け側テーパ部91fに案内されるように移動する。その結果、根本部91xと外筒部92bとの間に生じる隙間は徐々に小さくなり、根本部91xの端面部91yは、最終的に心出しされながら内フランジ92fまで到達する。
【0058】
なお、テーパ部92pと受け側テーパ部91fとの関係は、逆であってもよい。例えば、図6は、変形形態に係るブレード本体91の根本部91xと取付座92とを示している。図6に示されるように、テーパ部92rは、端面部91yから離れるほど外径が縮径しており、受け側テーパ部91gは、テーパ部92rに対応して本体受け部92aから離れるほど内径が縮径している。この変形形態によれば、根本部91xは外筒部92bから抜け難くなる。
【0059】
次に、発電装置1に使用されるタービンブレード9の作用、効果を説明する。タービンブレード9は、中空のブレード本体91を備えており、ブレード本体91の端面部91yには、ブレード本体91の内部に連通する開口Mが形成されている。ブレード本体91の端面部91yは、取付座92の本体受け部92aに当接し、環状のシール材14は、開口Mを囲むように、端面部91yと本体受け部92aとの間に配置されている。接続部13は端面部91yと本体受け部92aとを圧接する。その結果、端面部91yと本体受け部92aとの間に配置されたシール材14は、端面部91yと本体受け部92aとの両方に密着し、外部から開口Mに向けた液体の浸入を阻止する。したがって、中空のブレード本体91の内部に海水が浸入することを阻止して止水性を向上する。さらに、シール材14は、環状に閉じた形状を呈しており、液体が浸入する隙間なども形成され難く、止水性を向上させる上で有利に作用する。
【0060】
また、取付座92は、根本部91xを外嵌する外筒部92bを備えている。外筒部92bで根本部91xを囲むように保持するので、止水性が向上すると共に、取付座92によって支持されたブレード本体91が安定する。特に、タービンブレード9は、海流FLの影響を受けて回転する構造であり、風力発電等で使用されるタービンブレードに比べて負荷が大きくなる。そのような厳しい環境下で使用されても、ブレード本体91の根本部91xは、外筒部92bで包囲されるように取付座92に取り付けられるので安定して保持される。
【0061】
また、接続部13は接合ボルト11とナット12とを備えており、根本部91xの端面部91yと取付座92の本体受け部92aとは、接合ボルト11とナット12との螺合により、強固に圧接される。その結果、シール材14は変形して端面部91yと本体受け部92aとに強固に密着するので止水性を向上できる。
【0062】
また、複数の接合ボルト11に螺合する複数のナット12において、例えば、周方向CDに沿って隣接して並ぶ二つのナット12を比較する。この場合に、二つのナット12は、各ナット12から端面部91yまでの距離が異なるように配置されている。したがって、例えば、端面部91yからの距離が短いナット12と、その距離が長いナット12とが周方向CDで交互に並ぶような千鳥状の配置になる。その結果、隣り合うナット12同士の間の距離(肉厚)を確保し易くなり、構造上の強度を確保し易い。
【0063】
また、本体受け部92aの内フランジ92fは、外フランジ92dに比べて内径が小さく、外フランジ92dに比べて接合ボルト11の本数制限は厳しくなる。ここで、外フランジ92dのボルト92hの本数に対応させ、例えば同数になるように、接合ボルト11を配置しようとすると、ボルト92hの配置に比べて密になってしまう。しかしながら、複数のナット12は、千鳥状に配置されているので、複数のナット12同士は、干渉することなく、適切に、且つできるだけ多くの本数を配置し易くなる。配置される。
【0064】
また、シール材14は、開口M及び複数の接合ボルト11を囲むように配置されているので、外部の海水は、複数の接合ボルト11に到達する前にシール材14によって内部への浸入を阻止される。その結果、接合ボルト11とナット12との螺合箇所を経由して、海水がブレード本体91の内部に浸入するのを阻止でき、止水性を向上できる。
【0065】
また、根本部91xは、端面部91yから離れるほど外径が拡径するテーパ部92pを備えており、外筒部92bは、テーパ部92pに対応して本体受け部92aから離れるほど内径が拡径する受け側テーパ部91fを備えている。したがって、根本部91xを外筒部92bに差し入れるように装着する際、テーパ部92pは受け側テーパ部91fに案内されるように移動するので、根本部91xを外筒部92b内の適切な位置に配置することが容易になる。
【0066】
本開示は、他に様々な変形が可能である。また、タービンブレード9及び水流発電装置は、海流以外の水流発電用として用いられたり、また、海以外の水中に設置されたりする発電装置であってもよい。例えば、発電装置は、浮遊式潮流発電装置であってもよい。
【0067】
このように、本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SustainableDevelopment Goals:SDGs)の目標14.海の豊かさを守ろう「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 発電装置(水流発電装置)
4 発電機
9 タービンブレード
10 連結構造(連結部)
11 接合ボルト
12 ナット
13 接続部
14 シール材
31 回転軸
92 取付座
91 ブレード本体
90 浮力発生体
91y 端面部
92a 本体受け部
92b 外筒部
CD 開口の周方向
Da ブレード本体の長手方向
M 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6