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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097902
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】駆動装置、移動体
(51)【国際特許分類】
   F16D 63/00 20060101AFI20230703BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20230703BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20230703BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20230703BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20230703BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20230703BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20230703BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20230703BHJP
【FI】
F16D63/00 H
A61G5/04 710
A61G5/10 717
H02K7/102
H02K7/116
F16D65/16
B60T1/06 Z
F16D121:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214276
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡島 史樹
(72)【発明者】
【氏名】大広 武志
(72)【発明者】
【氏名】小川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良輔
【テーマコード(参考)】
3J058
5H607
【Fターム(参考)】
3J058AB21
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC77
3J058FA19
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD01
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE07
5H607EE31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、ブレーキ機構のON/OFFに伴う消費電力を低減することを目的とする。
【解決手段】駆動装置のブレーキ機構70において、ロックシャフト72は、モータシャフトに固定される止め板71と軸方向に対向して、軸方向に移動する。弾性部材73は、ロックシャフトに止め板へと向かう力を付与する。止め板に配置される第1凹部712は、ロックシャフトの先端部を収容可能である。停止部74は、ロックシャフトの軸方向への移動を停止させる。第1停止部741は、第1凹部に収容されたロックシャフトを第1ソレノイド機構を用いて固定する。第2停止部742は、第1凹部よりも軸方向一方に位置するロックシャフトを第2ソレノイド機構90を用いて固定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って軸方向に延びるモータシャフトを回転可能なモータ部と、
前記モータシャフトの回転を停止させるブレーキ機構と、
を備え、
前記ブレーキ機構は、
前記モータシャフトの軸方向一方端部に固定される止め板と、
前記止め板と軸方向に対向して、軸方向に移動するロックシャフトと、
前記ロックシャフトに前記止め板へと向かう力を付与する弾性部材と、
前記ロックシャフトの軸方向における移動を停止させる停止部と、
を有し、
前記止め板は、
径方向に広がる板部と、
前記板部の軸方向一方端面に配置されて軸方向他方に凹み、前記ロックシャフトの軸方向他方端部を収容可能な第1凹部と、
を有し、
前記停止部は、
前記第1凹部に収容された前記ロックシャフトを第1ソレノイド機構を用いて軸方向において固定する第1停止部と、
前記第1凹部よりも軸方向一方に位置する前記ロックシャフトを第2ソレノイド機構を用いて軸方向において固定する第2停止部と、
を有する、駆動装置。
【請求項2】
前記第1凹部は、複数であって、周方向に並ぶ、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
周方向において、隣り合う前記第1凹部は、互いに接する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1凹部は、周方向において等間隔に並ぶ、請求項2又は請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1凹部の数は、前記ロックシャフトの数よりも多い、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1凹部は、軸方向から見た前記第1凹部の中央部よりも径方向外方に配置され、軸方向一方に向かうにつれて径方向外方に広がるテーパ面を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記止め板は、
前記板部の軸方向一方端面の軸方向から見た中央部に配置されて軸方向他方に凹み、前記第1凹部と繋がる中央凹部と、
前記板部の軸方向一方端面に配置されて軸方向他方に凹み、前記第1凹部から径方向外方に延びて前記板部の径方向外端部に開口する溝部と、
のうちの少なくともどちらかをさらに有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第1停止部は、
前記ロックシャフトに対して進退する第1柱部と、
前記第1ソレノイド機構により駆動される第2柱部と、
を有し、
前記ロックシャフトの外側面には、第2凹部が配置され、
前記第2凹部は、前記第1柱部の端部を収容可能であり、
前記第2柱部は、前記第1柱部との当接により前記ロックシャフトに対する前記第1柱部の後退を阻止する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記ブレーキ機構は、
前記止め板よりも軸方向一方に配置されて、前記中心軸と交差する方向に広がる取付板と、
前記取付板の軸方向一方端面に配置され、前記ロックシャフト及び前記停止部を収容するケースと、
前記第1停止部による前記ロックシャフトの固定を解除可能なロック解除部と、
をさらに有し、
前記取付板の軸方向一方端面には、軸方向他方に凹むガイド溝が配置され、
前記ガイド溝は、軸方向から見て前記第2柱部に向かって延び、
前記ロック解除部は、
前記ケースの内部から外部に延びる第1レバーと、
前記第1レバーの内端部から延びる第2レバーと、
を有し、
前記第1レバーは、前記取付板の軸方向一方端面に接続される支点部を有し、
前記第1レバーは、軸方向から見て前記支点部を中心にして回転可能であり、
前記第2レバーは、前記ガイド溝に嵌るとともに前記ガイド溝に沿って移動可能な凸部を有し、
前記第2レバーの一方端は、前記第1レバーの内端部に接続されるとともに、前記第1レバーの内端部に対して回転可能であり、
前記第2レバーの他方端は、前記ガイド溝に沿う前記凸部の移動に応じて、前記第1柱部から前記第2柱部を後退させる方向において前記第2柱部に対して接離可能である、請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記ブレーキ機構は、前記ロックシャフト及び前記停止部を収容するケースをさらに有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記ブレーキ機構は、前記止め板よりも軸方向一方に配置されて、前記中心軸と交差する方向に広がる取付板をさらに有し、
前記取付板の軸方向一方端面には、前記ケースが配置され、
前記取付板は、前記モータ部に取り付けられる、請求項10に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記第2停止部は、前記第2ソレノイド機構により駆動され、前記ロックシャフトに対して進退する第3柱部を有し、
前記ロックシャフトの外側面には、第3凹部が配置され、
前記第3凹部は、前記第3柱部の端部を収容可能である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の駆動装置を備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車椅子のブレーキには、無励磁作動ブレーキが用いられる。たとえば、操作ボックスのジョイスティックが操作されない時、電動車椅子の電磁ブレーキは、常にONの状態である。一方、ジョイスティックが操作されると、電磁ブレーキは通電によりOFFとなり、電動車椅子が所定の速度で走行する。(特開2000-070309号公報参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-070309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁ブレーキには強い制動力が必要であるため、弾性力の高いスプリングコイルが用いられる。そのため、制動力を解除するためには、電磁ブレーキにより大きな電力が必要となる。たとえば、電磁ブレーキの駆動には、10W程度の消費電力を必要とすることがある。
【0005】
本発明は、ブレーキ機構のON/OFFに伴う消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な駆動装置は、モータ部と、ブレーキ機構と、を備える。前記モータ部は、モータシャフトを回転可能である。前記モータシャフトは、中心軸に沿って軸方向に延びる。前記ブレーキ機構は、前記モータシャフトの回転を停止させる。前記ブレーキ機構は、止め板と、ロックシャフトと、弾性部材と、停止部と、を有する。前記止め板は、前記モータシャフトの軸方向一方端部に固定される。前記ロックシャフトは、前記止め板と軸方向に対向して、軸方向に移動する。前記弾性部材は、前記ロックシャフトに前記止め板へと向かう力を付与する。前記停止部は、前記ロックシャフトの軸方向における移動を停止させる。前記止め板は、板部と、第1凹部と、を有する。前記板部は、径方向に広がる。前記第1凹部は、前記板部の軸方向一方端面に配置されて軸方向他方に凹み、前記ロックシャフトの軸方向他方端部を収容可能である。前記停止部は、第1停止部と、第2停止部と、を有する。前記第1停止部は、前記第1凹部に収容された前記ロックシャフトを第1ソレノイド機構を用いて軸方向において固定する。前記第2停止部は、前記第1停止部よりも軸方向一方に配置され、前記第1凹部よりも軸方向一方に位置する前記ロックシャフトを第2ソレノイド機構を用いて軸方向において固定する。
【0007】
本発明の例示的な移動体は、上記の駆動装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の例示的な駆動装置、移動体によれば、ブレーキ機構のON/OFFに伴う消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る移動体の概略図である。
図2図2は、駆動装置の斜視図である。
図3図3は、駆動装置の断面図である。
図4図4は、実施形態に係るブレーキ機構の構成例を示す斜視図である。
図5図5は、ブレーキ機構の平面図である。
図6図6は、第1ソレノイド機構の構成例を示す断面図である。
図7図7は、第2ソレノイド機構の構成例を示す断面図である。
図8図8は、変形例に係るブレーキ機構の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0011】
なお、本明細書では、駆動装置10において、中心軸J1と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。軸方向のうち、後述するモータ部20からブレーキ機構70への向きを「軸方向一方D1」と呼び、ブレーキ機構70からモータ部20への向きを「軸方向他方D2」と呼ぶ。
【0012】
また、中心軸J1に直交する方向を「径方向」と呼び、中心軸J1を中心とする回転方向を「周方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸J1へと近づく向きを「径方向内方」と呼び、中心軸J1から離れる向きを「径方向外方」と呼ぶ。
【0013】
また、本明細書において、「環状」は、中心軸J1を中心とする周方向の全域に渡って切れ目の無く連続的に一繋がりとなる形状のほか、中心軸J1を中心とする全域の一部に1以上の切れ目を有する形状を含む。また、中心軸J1を中心として、中心軸J1と交差する曲面において閉曲線を描く形状も含む。
【0014】
また、方位、線、及び面のうちのいずれかと他のいずれかとの位置関係において、「平行」は、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に垂直である状態及び実質的に直交する状態を含む。つまり、「平行」、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。
【0015】
なお、これらは単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係、方向、及び名称などを限定する意図はない。
【0016】
<1.移動体100>
図1は、実施形態に係る移動体100の概略図である。本実施形態において、移動体100は着座状態で使用者を運搬する電動車椅子である。移動体100は、駆動装置10を有する。移動体100は、駆動装置10が後述する構成を有することによって、ブレーキ機構70のON/OFFに伴う駆動装置10の消費電力を低減することができる。
【0017】
本実施形態においては、図1に示すように、移動体100は、フレーム101と、電源102と、駆動装置10と、駆動車輪103と、従動車輪104と、をさらに有する。
【0018】
フレーム101は、棒状の金属を組み合わせていす状に形成される。フレーム101は、座部105、背もたれ部106と、ひじ掛け部107と、足置き部108とを有する。座部105は略水平に配置され、座部105の上面が移動体100の座面である。
【0019】
背もたれ部106は、座部105の後方Rに配置される。背もたれ部106は、座部105の後方Rの端部から上方に延びる。背もたれ部106は、着座した使用者の上半身、すなわち、背中を支持する。背もたれ部106の上端には、後方Rに突出する手押しハンドル109を有してもよい。手押しハンドル109は、使用者とは別の者(例えば、介護者)が手押しを行うときに用いられる。なお、手押しを行わない構成であれば、手押しハンドル109は省略されてもよい。
【0020】
ひじ掛け部107は、座部105の左右両側において座部105よりも上方に配置される。ひじ掛け部107は、着座した使用者の手の肘から先の部分を配置できる。座部105、背もたれ部106及びひじ掛け部107の使用者と接触する部分には、クッション部材が配置される。これにより、使用者が移動体100に長時間着座しても、痛みを感じにくい。また、ひじ掛け部107の上部には、使用者が操作可能な操作部1071が配置される。移動体100は、操作部1071を操作することで動作する。
【0021】
足置き部108は、座部105の前方Fの端部から下方に延びるフレームの先端に配置される。足置き部108の上部に使用者の足を配置可能である。足置き部108の上部に足を配置することで、移動体100が移動するときに、使用者の足が地面に接触することを抑制できる。
【0022】
電源102は、駆動装置10に接続され、駆動装置10に電力を供給する。電源102は、たとえばリチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池である。電源102は、座部105の下方側のフレーム101に配置される。駆動車輪103は、フレーム101の左右両側に、配置される。駆動車輪103は、後述する減速機構30の出力部35に固定される。駆動車輪103は、駆動装置10の出力部35(図2参照)に固定される。なお、駆動車輪103の回転中心は、駆動装置10の中心軸J1と一致する。駆動車輪103は、駆動装置10によって回転される。
【0023】
従動車輪104は、駆動車輪103の前方Fに配置される。従動車輪104は、鉛直方向に延びる取付フレーム1041に取り付けられ、取付フレーム1041と直交する従動軸周りに回転可能である。また、従動車輪104は、取付フレーム1041の中心線を中心に回転可能である。
【0024】
駆動装置10は、フレーム101に取り付けられる。駆動装置10は、出力部35に取り付けられた駆動車輪103を回転させる。駆動装置10の詳細は、後述する。
【0025】
移動体100は、座部105に着座し、背もたれ部106に上半身をもたれさせ、足置き部108に足を置いた使用者が、操作部1071を操作することで、電源102から駆動装置10に電力が供給される。これにより、出力部35が回転し、出力部35によって駆動車輪103が回転して、移動体100が移動する。移動体100において、左右の駆動車輪103の回転方向及び回転速度が同じである場合、移動体100は、前方F又は後方Rに真っすぐ移動する。また、左右の駆動車輪103の回転方向が逆又は回転速度に差がある場合に、移動体100は、左右方向に曲がる。
【0026】
<2.駆動装置10>
次に、駆動装置10の詳細について図面を参照して説明する。図2は、駆動装置10の斜視図である。図3は、駆動装置10の断面図である。
【0027】
図2及び図3に示すように、駆動装置10は、モータ部20と、減速機構30と、ハウジング50と、ブレーキ機構70と、を有する。
【0028】
<2-1.モータ部20>
モータ部20は、直流のブラシレスモータである。モータ部20は、電源102からの電力によって駆動される。モータ部20は、モータシャフト21と、ロータ22と、ステータ25と、を有する。モータシャフト21の一部、ロータ22及びステータ25は、ハウジング50の内部に配置される。モータ部20は、ステータ25の径方向内方に、ロータ22が配置されたインナーロータ型モータである。なお、モータ部20は、インナーロータ型モータに限定されず、アウターロータ型モータであってもよい。
【0029】
<2-1-1.モータシャフト21>
モータシャフト21は、円柱状である。図2及び図3に示すように、モータシャフト21は、中心軸J1に沿って軸方向に延び、中心軸J1周りに回転可能である。モータ部20は、中心軸J1に沿って軸方向に延びるモータシャフト21を回転可能である。
【0030】
図3に示すように、モータシャフト21の軸方向一方D1側の端部は、ハウジング50の軸方向一方D1に突出する。モータシャフト21の軸方向他方D2側の端部は、ハウジング50の軸方向他方D2に突出する。
【0031】
モータシャフト21は、ハウジング50に、シャフト軸受211を介して回転可能に支持される。シャフト軸受211は、軸方向に離れた2か所に配置され、モータシャフト21の軸方向に離れた2か所を回転可能に支持する。シャフト軸受211は、ここでは、玉軸受であるが、それに限定されない。モータシャフト21を円滑かつ正確に支持できる軸受構造を広く採用することができる。
【0032】
<2-1-2.ロータ22>
ロータ22は、モータシャフト21の外周に固定される。ロータ22は、ロータコア23と、ロータマグネット24と、を有する。ロータ22は、水平方向に延びる中心軸J1を中心としてモータシャフト21とともに回転可能である。
【0033】
ロータコア23は、薄板状の電磁鋼板を積層して形成される。ロータコア23は、軸方向に沿って延びる円柱体である。なお、ロータコア23は、磁性粉末を焼結して形成してもよい。ロータコア23には、複数のロータマグネット24が固定される。複数のロータマグネット24は、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0034】
<2-1-3.ステータ25>
ステータ25は、ステータコア26と、コイル27と、インシュレータ28とを有する。ステータ25は、ハウジング50に保持される。ステータコア26は、コアバック261と、複数のティース262とを有する。コアバック261は、円環状である。コアバック261の径方向外側面は、ハウジング50に固定される。ティース262は、コアバック261の径方向内側面から中心軸J1に近づく方向に突出する。複数のティース262は、周方向に等間隔で配置される。コイル27は、ティース262に導線を巻きつけることで形成される。
【0035】
<2-1-4.モータ部20のその他の構成>
ロータ22及びステータ25の軸方向一方D1側には、基板291、バスバ292等の補器類が配置される。基板291には、コイル27などに供給される電流を制御する制御回路が実装される。バスバ292は、基板291に実装された制御回路とコイル27とを接続する導電部材である。
【0036】
モータ部20は、電源102から供給される電力によって駆動される。つまり、電源102から供給される電流が、コイル27に供給されることで、コイル27は、励磁される。コイル27が励磁されることで、ロータ22のロータマグネット24との間に磁力が発生する。複数のコイル27を適切なタイミングで励磁することで、ロータ22に中心軸J1を中心とする周方向のトルクが発生する。このトルクによってモータシャフト21が中心軸J1周りに回転する。
【0037】
<2-2.減速機構30>
減速機構30は、モータ部20及びハウジング50の軸方向他方D2側に配置される。減速機構30は、いわゆる遊星歯車機構を用いて、モータシャフト21の回転を所定の減速比で減速して、出力部35に出力する。出力部35には、外部の機器が接続され、本実施形態では駆動車輪103(図1参照)が接続される。駆動装置10は、減速機構30によりモータシャフト21のトルクを増大させて出力部35に伝達し、駆動車輪103を回転させる。なお、減速機構30の構成は、本発明の主旨とは異なる。そのため、その説明は省略する。
【0038】
<2-3.ハウジング50>
図3に示すように、ハウジング50は、円筒状である。ハウジング50は、第1ハウジング51と、第2ハウジング52と、を有する。第1ハウジング51は、軸方向他方D2に底部511を有する有底筒状であり、軸方向一方D1側に開口を有する。第2ハウジング52は、軸方向一方D1に蓋部521を有する有蓋筒状であり、軸方向他方D2側に開口を有する。
【0039】
第1ハウジング51は、第2ハウジング52の軸方向他方D2側に配置される。このとき、第1ハウジング51の開口と、第2ハウジング52の軸方向他方D2側の開口とが軸方向に対向する。そして、第1ハウジング51と第2ハウジング52とは、ねじSc等の締結部で固定される。締結部はねじScに限定されず、第1ハウジング51と第2ハウジング52とを強固に固定できる構成を広く採用することができる。ハウジング50の内部において、ねじScは、ステータ25の固定にも利用される。
【0040】
ハウジング50は、第1ハウジング51と第2ハウジング52とで囲まれる内部空間500を有する。内部空間500には、モータシャフト21の軸方向における中間部と、ロータ22と、ステータ25と、が収容される。
【0041】
さらに説明すると、モータシャフト21は、第1ハウジング51の底部511に形成されて軸方向に貫通する貫通孔512を貫通する。また、モータシャフト21は、第2ハウジング52の蓋部521に形成されて軸方向に貫通する貫通孔522を貫通する。そして、モータシャフト21は、貫通孔512及び貫通孔522に取り付けられたシャフト軸受211を介して、回転可能に支持される。
【0042】
第1ハウジング51の底部511の軸方向他方D2側の端面には、ブラケット53が配置される。ブラケット53は、底部511の軸方向他方D2側の端面から中心軸J1に沿って軸方向他方D2に延びる円環状である。すなわち、ハウジング50は、モータシャフト21の一部の径方向外方を囲む。本実施形態において、ブラケット53は、モータシャフト21の一部の径方向外方を囲む。なお、ブラケット53は、周方向の一部に切り欠き等が設けられて不連続に形成されていてもよい。
【0043】
<2-4.ブレーキ機構70>
次に、図4及び図5を参照して、ブレーキ機構70を説明する。図4は、実施形態に係るブレーキ機構70の構成例を示す斜視図である。図5は、ブレーキ機構70の平面図である。なお、図4は、構成を見易くするため、後述する取付板76を透明で表示している。ケース75の図示を省略している。図5は、軸方向一方D1から軸方向他方D2を向いてブレーキ機構70を見ている。また、図4及び図5では、構成を見易くするため、後述するケース75の図示を省略している。
【0044】
ブレーキ機構70は、モータ部20及びハウジング50の軸方向一方D1側に配置される。ブレーキ機構70は、モータシャフト21の回転を停止させる。
【0045】
ブレーキ機構70は、止め板71は、ロックシャフト72と、弾性部材73と、停止部74と、ケース75と、を有する。
【0046】
止め板71は、モータシャフト21の軸方向一方D1側の端部に固定される。前述の如く、ブレーキ機構70は、止め板71を有する。止め板71は、板部711と、第1凹部712と、を有する。板部711は、径方向に広がる。第1凹部712は、板部711の軸方向一方D1側の端面に配置されて軸方向他方D2に凹み、ロックシャフト72の軸方向他方D2側の端部を収容可能である。
【0047】
また、止め板71は、中央凹部713と、溝部714と、をさらに有する。
【0048】
中央凹部713は、第1凹部712よりも径方向内方に位置する。軸方向から見て、中央凹部713は、板部711の軸方向一方D1側の端面の中央部に配置される。中央凹部713は、軸方向他方D2に凹み、第1凹部712と繋がる。
【0049】
溝部714は、板部711の軸方向一方D1側の端面に配置されて軸方向他方D2に凹む。溝部714は、第1凹部712から径方向外方に延びて、板部711の径方向外端部に開口する。溝部714が止め板71に配置されることにより、第1凹部712に対するロックシャフト72の軸方向他方D2側の端部の動作を、外部(たとえば止め板71よりも径方向外方側)から溝部714を通じて目視で確認できる。この効果は、ブレーキ機構70の試験時などに有効である。
【0050】
なお、本実施形態では、止め板71は、中央凹部713及び溝部714の両方を有する。但し、この例示に限定されず、中央凹部713及び溝部714のどちらかは省略されてもよい。つまり、止め板71は、中央凹部713と溝部714とのうちの少なくともどちらかを有すればよい。こうすれば、止め板71の体積を低減できるので、製造コストを削減できる。また、第1凹部712内の空気を中央凹部713又は溝部714に逃がすことができるので、よりスムーズにロックシャフト72の軸方向他方D2側の端部を第1凹部712に収容できる。なお、この例示は、止め板71が中央凹部713及び溝部714の両方を有さない構成を排除しない。
【0051】
ロックシャフト72は、軸方向に延びる柱状体であり、軸方向に延びる。ロックシャフト72は、止め板71と軸方向に対向して、軸方向に移動する。前述の如く、ブレーキ機構70は、ロックシャフト72を有する。
【0052】
ロックシャフト72は、第2凹部721と、第3凹部722と、を有する。第2凹部721及び第3凹部722はそれぞれ、ロックシャフト72の径方向外側面に配置され、径方向内方に凹む。第2凹部721及び第3凹部722はそれぞれ、周方向に延び、本実施形態では環状である。第2凹部721には、後述する第1柱部7411が嵌合可能である。第3凹部722は、第2凹部721よりも軸方向他方D2に配置される。第3凹部722には、後述する第3柱部7421が嵌合可能である。
【0053】
弾性部材73は、ロックシャフト72に止め板71へと向かう力を付与する。前述の如く、ブレーキ機構70は、弾性部材73を有する。本実施形態では、弾性部材73は、スプリングコイルである。たとえば、弾性部材73の一方端部は、ロックシャフト72に接する。弾性部材73の他方端部は、ケース75などに固定される。但し、この例示に限定されず、弾性部材73は、スプリングコイル以外の高い弾性を有する部材であってもよく、たとえば板バネ、ゴムであってもよい。
【0054】
ロックシャフト72は、弾性部材73によって止め板71に向けて押される。ロックシャフト72の軸方向他方D2側の端部は、回転する止め板71の第1凹部712と位置が合うと、第1凹部712に収容される。ブレーキ機構70は、この状態でロックシャフト72を固定することで、止め板71及びモータシャフト21の回転を停止させることができる。つまり、ブレーキ機構70がONとなる。なお、ブレーキ機構70の「ON」とは、ブレーキ機構70がモータシャフト21の回転を停止させることにより、たとえば駆動装置10により回転する駆動車輪103へのブレーキ機能が有効になることを指す。
【0055】
一方、ロックシャフト72の固定が解除された状態において、モータシャフト21とともに止め板71が回転すると、ロックシャフト72の軸方向他方D2側の端部は、第1凹部712の内側面(たとえば後述するテーパ面7121)に沿って軸方向一方D1(つまり止め板71から離れる方向)に押し上げられる。そして、ロックシャフト72の軸方向他方D2側の端部は、第1凹部712よりも軸方向一方D1の位置まで移動する。この際、ブレーキ機構70は、この状態でロックシャフト72を固定することで、止め板71及びモータシャフト21の回転を解放することができる。つまり、ブレーキ機構70がOFFとなる。なお、ブレーキ機構70の「OFF」とは、ブレーキ機構70がモータシャフト21の回転を解放することにより、たとえば駆動装置10により回転する駆動車輪103へのブレーキ機能が無効になることを指す。
【0056】
ブレーキ機構70は、上述のように電力消費を伴わない機械的な機構を用いて、ロックシャフト72を止め板71に対して進退できる。従って、駆動装置10は、モータシャフト21の回転の停止/解放に伴う消費電力を低減することができる。
【0057】
次に、停止部74は、ロックシャフト72の軸方向における移動を停止させる。前述の如く、ブレーキ機構70は、停止部74を有する。図4及び図5に示すように、停止部74は、第1停止部741と、第2停止部742と、を有する。第1停止部741は、第1凹部712に収容されたロックシャフト72を第1ソレノイド機構80を用いて軸方向において固定する。第2停止部742は、たとえば第1停止部741よりも軸方向他方D2に配置され、第1凹部712よりも軸方向一方D1に位置するロックシャフト72を第2ソレノイド機構90を用いて軸方向において固定する。
【0058】
本実施形態によれば、停止部74は、消費電力の少ないソレノイド機構80,90を用いて、ロックシャフト72の軸方向における移動を停止させ、ブレーキ機構70のON/OFFを切り替えることができる。従って、駆動装置10は、ブレーキ機構70のON/OFFに伴う消費電力を低減することができる。
【0059】
たとえば、ブレーキ機構70をONにする際、第1停止部741は、第1ソレノイド機構80を用いて、軸方向他方D2側の端部が第1凹部712に収容されたロックシャフト72を軸方向において固定して、軸方向一方D1に移動不能にする。なお、この際、第2停止部742は、ロックシャフト72を軸方向において固定しない。
【0060】
一方、ブレーキ機構をOFFにする際、第1停止部741は、ロックシャフト72の固定を解除し、ロックシャフト72を軸方向一方D1に移動可能にする。そして、ロックシャフト72が第1凹部712よりも軸方向一方D1に移動すると、第2停止部742は、第2ソレノイド機構90を用いて、ロックシャフト72を軸方向において固定し、軸方向他方D2に移動不能にする。
【0061】
好ましくは、図4及び図5に示すように、第1凹部712は、複数であって、周方向に並ぶ。こうすれば、回転する止め板71の第1凹部712にロックシャフト72が嵌ることができるタイミングの間隔をより短くできる。従って、駆動装置10はより速く、ブレーキ機構70をONにして、止め板71及びモータシャフト21の回転を停止させることができる。なお、第1凹部712の数は、図4及び図5では、6個である。但し、この例示に限定されず、第1凹部712の数は、単数であってもよいし、6以外の複数であってもよい。
【0062】
より好ましくは、第1凹部712の数は、ロックシャフト72の数よりも多い。こうすれば、止め板71が回転する際、第1凹部712にロックシャフト72が嵌ることができるタイミングの間隔をさらに短くできる。なお、この例示は、第1凹部712の数がロックシャフト72の数よりも多くはない構成を排除しない。たとえば、第1凹部712の数は、ロックシャフト72の数と同じであってもよい。
【0063】
さらに好ましくは、少なくとも一部の第1凹部712において、隣り合う第1凹部712は、周方向において、互いに接する。周方向に隣り合う第1凹部712間の間隔を空けないことで、止め板71が回転する際に第1凹部712にロックシャフト72が嵌ることができるタイミングの間隔をさらに短くできる。従って、駆動装置10はさらに速く、ブレーキ機構70をONにできる。なお、この例示は、周方向において、隣り合う第1凹部712の全てが互いに接しない構成を排除しない。つまり、周方向に並ぶ全ての第1凹部712は、隙間を空けて周方向に隣り合っていてもよい。
【0064】
また、さらに好ましくは、少なくとも一部の第1凹部712において、第1凹部712は、周方向において等間隔に並ぶ。こうすれば、回転する止め板71の各々の第1凹部712にロックシャフト72が嵌ることができるタイミングの間隔を均一にできる。従って、駆動装置10は、ブレーキ機構70をONにするタイミングのばらつきを防止できる。なお、この例示は、周方向に並ぶ第1凹部712の間隔が全て異なる構成を排除しない。
【0065】
また、好ましくは、第1凹部712は、テーパ面7121を有する。テーパ面7121は、軸方向から見た第1凹部712の中央部よりも径方向外方に配置され、軸方向一方D1に向かうにつれて径方向外方に広がる。本実施形態では、テーパ面7121は、第1凹部712の内側面のうちの周方向一方を向く領域と、周方向他方を向く領域とに配置される。こうすれば、止め板71の回転により、ロックシャフト72の軸方向他方D2側の端部は、第1凹部712のテーパ面7121に沿って軸方向一方D1(つまり止め板71から離れる方向)へとスムーズに押し上げられる。つまり、駆動装置10は、第1凹部712に対するロックシャフトの72の嵌合をスムーズに解除できる。また、ロックシャフト72が第1凹部712へ軸方向他方D2(つまり止め板71に近づく方向)に移動する際にも、ロックシャフト72は、スムーズに押し下げられる。
【0066】
次に、ブレーキ機構70は、ケース75をさらに有する。ケース75は、ロックシャフト72及び停止部74などを収容する。ケース75の配置により、ロックシャフト72及び停止部74に対する塵埃、水分などの付着を防止できる。従って、ロックシャフト72及び停止部74(たとえば各々の柱部)などをスムーズに移動させることができる。
【0067】
また、ブレーキ機構70は、取付板76をさらに有する。取付板76は、止め板71よりも軸方向一方D1に配置されて、中心軸J1と交差する方向に広がる。取付板の軸方向一方D1側の端面には、ケース75が配置される。取付板76は、モータ部20に取り付けられる。こうすれば、ブレーキ機構70をモータ部20に安定的して固定できる。
【0068】
取付板76は、ロックシャフト72が挿通される開口部761を有する。開口部761は、取付板76を軸方向に貫通する。また、取付板76は、ロックシャフト72の軸方向一方D1側の端部及び停止部74よりも軸方向他方D2に位置する。ロックシャフト72は、開口部761を通じて、止め板71に対して進退可能である。
【0069】
<2-4-1.第1停止部741>
次に、図4から図6を参照して、第1停止部741を説明する。図6は、第1ソレノイド機構80の構成例を示す断面図である。
【0070】
第1停止部741は、第1柱部7411と、弾性部材7412と、第2柱部7413と、弾性部材7414と、を有する。
【0071】
第1柱部7411は、柱状体である。第1柱部7411は、ロックシャフト72に向かって延び、特に第2凹部721に向かって延びる。第1柱部7411は、本実施形態ではロックシャフト72の軸中心と直交する方向に延びる。第1柱部7411は、ロックシャフト72に対して進退する。前述の如く、第1停止部741は、第1柱部7411を有する。ロックシャフト72の第2凹部721は、第1柱部7411の先端を収容可能である。なお、第1柱部7411において、先端は、第1柱部7411の一方端部であり、ロックシャフト72側の端部を指す。一方、第1柱部7411の他方端部は、ロックシャフト72とは反対側の端部を指す。
【0072】
弾性部材7412は、第1柱部7411の外側面に配置され、第1柱部7411にロックシャフト72の第2凹部721へと向かう力を付与する。本実施形態では、弾性部材7412は、第1柱部7411が挿通される円筒形状のスプリングコイルである。但し、この例示に限定されず、弾性部材7412は、スプリングコイル以外の高い弾性を有する部材であってもよく、たとえばゴムであってもよい。
【0073】
たとえば、弾性部材7412の一方端部は、第1柱部7411の当接面(符号省略)に当接する。この当接面は、第1柱部7411の軸中心と平行な方向において、ロックシャフト72とは反対側を向く。弾性部材7412の他方端部は、ケース75又は取付板76に配置された保持部(図示省略)により、移動不能に保持される。なお、弾性部材7412の一方端部は、ロックシャフト72側の端部を指す。一方、弾性部材7412の他方端部は、ロックシャフト72とは反対側の端部を指す。
【0074】
第2柱部7413は、柱状体である。第2柱部7413は、第1柱部7411の他方端部に向かって延びる。第2柱部7413は、本実施形態では第1柱部7411の軸中心と直交する方向に延びる。第2柱部7413は、第1ソレノイド機構80により駆動される。第2柱部7413は、第1柱部7411との当接によりロックシャフト72に対する第1柱部7411の後退を阻止する。
【0075】
たとえば、駆動装置10は、ブレーキ機構70をONにする際、第2凹部721に嵌る第1柱部7411の他方端部(特に第1柱部7411の他方端面)に対して、第1ソレノイド機構80の駆動により第2柱部7413を当接させる。これにより、駆動装置10は、第2凹部721に対する第1柱部7411の後退を第2柱部7413で阻止し、第1柱部7411を第2凹部721から離間不能にする。駆動装置10は、ロックシャフト72を軸方向において移動不能にすることで、ロックシャフト72を第1凹部712から離間不能にできる。つまり、駆動装置10は、第1凹部712に軸方向他方D2側の端部が収容されたロックシャフト72を強固に固定できる。従って、駆動装置10は、ブレーキ機構がONである際、ロックシャフト72の軸方向一方D1への移動(つまりブレーキONの解除)を確実に防止できる。
【0076】
一方、駆動装置10は、ブレーキ機構70をOFFにする際、第1ソレノイド機構80の駆動により、第1柱部7411の他方端部から第2柱部7413を離間させる。これにより、駆動装置10は、第1柱部7411を後退可能にし、第1柱部7411を第2凹部721から離間可能にする。これにより、ロックシャフト72は、止め板71の回転に応じて、第1凹部712から離間可能となる。
【0077】
好ましくは、第2柱部7413の第1柱部7411側の一方端部は、軟質部材7415で覆われる。本実施形態では、第1停止部741は、軟質部材7415をさらに有する。こうすれば、第1柱部7411及び第2柱部7413の当接による両者の損耗を防止できる。軟質部材7415は、たとえば第1柱部7411の材料よりもモース硬度が低い樹脂などの材料で構成され、高い摺動性を示す。但し、この例示は、軟質部材7415が省略される構成を排除しない。
【0078】
弾性部材7414は、第2柱部7413の外側面に配置され、第1柱部7411の他方端部へと向かう力を第2柱部7413に付与する。本実施形態では、弾性部材7414は、第2柱部7413が挿通されるは、円筒形状のスプリングコイルである。但し、この例示に限定されず、弾性部材7414は、スプリングコイル以外の高い弾性を有する部材であってもよく、たとえばゴムであってもよい。
【0079】
たとえば、弾性部材7414の一方端部は、第2柱部7413の鍔部74131に当接する。鍔部74131は、弾性部材7414よりも第1柱部7411側に配置され、第2柱部7413の外側面において径方向外方に広がる。弾性部材7412の他方端部は、本実施形態では第1ソレノイド機構80の後述するケーシング81に当接する。なお、弾性部材7414の一方端部は、第1柱部7411側の端部を指す。一方、弾性部材7414の他方端部は、第1柱部7411とは反対側の端部を指す。
【0080】
<2-4-1-1.第1ソレノイド機構80>
また、第1停止部741は、第1ソレノイド機構80をさらに有する。第1ソレノイド機構80は、いわゆるソレノイドアクチュエータである。たとえば図6に示すように、第1ソレノイド機構80は、ケーシング81と、移動コア部82と、固定コア部83と、コイル部84と、を有する。第1ソレノイド機構80は、これらと、弾性部材7414と、で構成される。また、第1ソレノイド機構80の構成はさらに、第2柱部7413を含んでもよい。
【0081】
ケーシング81は、移動コア部82、固定コア部83、及びコイル部84を収容する。ケーシング81は、筒部811と、蓋部812,813と、を有する。筒部811は、筒状であり、第2柱部7413の軸中心と平行な方向に延びる。蓋部812は、筒部811の第1柱部7411側の端部から径方向内方に広がる。蓋部813は、筒部811の第1柱部7411とは反対側の端部から径方向内方に広がる。蓋部812,813の中央には、蓋部812,813を貫通する開口(符号省略)がそれぞれ配置される。ケーシング81と蓋部812,813の開口とには、第2柱部7413が移動可能に挿通される。
【0082】
移動コア部82は、第2柱部7413を囲む環状であり、磁性体から成る。移動コア部82は、ケーシング81の内部において第2柱部7413の外周面に固定される。本実施形態では、移動コア部82は、第2柱部7413と一体である。但し、この例示に限定されず、移動コア部82は、第2柱部7413とは別体であってもよい。
【0083】
固定コア部83は、第2柱部7413を囲む環状であり、磁性体から成る。固定コア部83は、移動コア部82よりも第1柱部7411とは反対側に配置されて、ケーシング81の蓋部813に固定される。
【0084】
コイル部84は、筒部811の内周面に配置される。コイル部84は、たとえばモータ部20の基板291と電気的に接続され、基板291に搭載された駆動部により通電制御される。コイル部84は、第2柱部7413、移動コア部82、及び固定コア部83を囲む。
【0085】
移動コア部82及び固定コア部83は、コイル部84の通電により発生する磁界に応じて磁化し、互いに引き付け合う。これにより、第2柱部7413は、第1柱部7411から離間する方向に移動する。
【0086】
なお、磁界が消えると、両者の磁化は解除される。そのため、第2柱部7413は、弾性部材7414の弾性力により、第1柱部7411に近付く方向に移動する。
【0087】
本実施形態では、ブレーキ機構70をONにする際、第1ソレノイド機構80は、第2柱部7413を第1柱部7411の他方端部に向かって移動させる。たとえば、コイル部84の通電は、OFFとされる。第2柱部7413は、弾性部材7414の弾性力により、第1柱部7411の他方端部に向かって移動可能となる。第1柱部7411の一方端部と第2凹部721との軸方向位置が合うと、第1柱部7411は、第2凹部721に向かって移動し、第2凹部721に嵌る。これにより、第2柱部7413の一方端部(の軟質部材7415)は、第1柱部7411の他方端部と当接し、第2凹部721に対して第1柱部7411を後退不能にする。そのため、ロックシャフト72は、第1凹部712に嵌った状態で固定される。従って、止め板71及びモータシャフト21は回転不能となり、ブレーキ機構70がONとなる。
【0088】
一方、ブレーキ機構70をOFFにする際、第1ソレノイド機構80は、第2柱部7413を第1柱部7411の他方端部から離間させる。たとえば、コイル部84の通電は、ONとされる。第2柱部7413は、移動コア部82が固定コア部83に引き付けられることにより、第1柱部7411の他方端部から離れる。これにより、第1柱部7411は、第2凹部721に対して後退可能となる。つまり、第1柱部7411によるロックシャフト72の固定が解除され、止め板71及びモータシャフトは回転可能となる。止め板71の回転によりロックシャフト72が押し上げられると、第1柱部7411は、第2凹部721から離れる。
【0089】
<2-4-2.第2停止部742>
次に、図4から図5及び図7を参照して、第2停止部742を説明する。図7は、第2ソレノイド機構90の構成例を示す断面図である。
【0090】
第2停止部742は、第3柱部7421と、弾性部材7422と、を有する。
【0091】
第3柱部7421は、柱状体である。第3柱部7421は、ロックシャフト72に向かって延び、特に第3凹部722に向かって延びる。第3柱部7421は、本実施形態ではロックシャフト72の軸中心と直交する方向に延びる。第3柱部7421は、ロックシャフト72に対して進退する。前述の如く、第2停止部742は、第3柱部7421を有する。ロックシャフト72の第3凹部722は、第3柱部7421の先端を収容可能である。なお、第3柱部7421において、先端は、第3柱部7421の一方端部であり、ロックシャフト72側の一方端部を指す。一方、第3柱部7421において、他方端部は、ロックシャフト72とは反対側の端部を指す。
【0092】
また、第3柱部7421は、第2ソレノイド機構90により駆動される。第3柱部7421は、第3凹部722への嵌合により、ロックシャフト72が第1凹部712に向かって移動することを阻止する。
【0093】
たとえば、駆動装置10は、ブレーキ機構70をOFFにする際、第2ソレノイド機構90の駆動により、第3柱部7421を第3凹部722に向けて移動させ、第3凹部722に第3柱部7421の先端を収容させる。これにより、駆動装置10は、ロックシャフト72を軸方向において移動不能にする。こうすれば、駆動装置10は、第1凹部712よりも軸方向一方D1にあるロックシャフト72を強固に固定し、ロックシャフト72を第1凹部712に接近不能にできる。従って、駆動装置10は、ブレーキ機構70がOFFである際、ロックシャフト72の軸方向他方D2への移動(つまりブレーキOFFの解除)を確実に防止できる。
【0094】
一方、駆動装置10は、ブレーキ機構70をONにする際、第2ソレノイド機構90の駆動により、第3凹部722から第3柱部7421を離間させる。これにより、ロックシャフト72は、止め板71の回転に応じて、第1凹部712に嵌合可能となる。
【0095】
弾性部材7422は、第3柱部7421の外側面に配置され、第3柱部7421にロックシャフト72の第3凹部722から離れる方に向く力を付与する。本実施形態では、弾性部材7422は、第3柱部7421が挿通される円筒形状のスプリングコイルである。但し、この例示に限定されず、弾性部材7422は、スプリングコイル以外の高い弾性を有する部材であってもよく、たとえばゴムであってもよい。
【0096】
たとえば、弾性部材7422の一方端部は、本実施形態では、第2ソレノイド機構90の後述するケーシング91に当接する。弾性部材7422の他方端部は、第3柱部7421の鍔部74211に当接する。鍔部74211は、弾性部材7422よりもロックシャフト72とは反対側に配置され、第3柱部7421の外側面において径方向外方に広がる。なお、弾性部材7422の一方端部は、ロックシャフト72側の端部を指す。一方、弾性部材7422の他方端部は、ロックシャフト72とは反対側の端部を指す。
【0097】
<2-4-2-1.第2ソレノイド機構90>
また、第2停止部742は、第2ソレノイド機構90をさらに有する。第2ソレノイド機構90は、いわゆるソレノイドアクチュエータである。たとえば図7に示すように、第2ソレノイド機構90は、ケーシング91と、移動コア部92と、固定コア部93と、コイル部94と、を有する。第2ソレノイド機構90は、これらと、弾性部材7422と、で構成される。また、第2ソレノイド機構90の構成はさらに、第3柱部7421を含んでもよい。
【0098】
ケーシング91は、移動コア部92、固定コア部93、及びコイル部94を収容する。ケーシング91は、筒部911と、蓋部912,913と、を有する。筒部911は、筒状であり、第2柱部7413の軸中心と平行な方向に延びる。蓋部912は、筒部911の第3柱部7421側の端部から径方向内方に広がる。蓋部913は、筒部911の第3柱部7421とは反対側の端部から径方向内方に広がる。蓋部912,913の中央には、蓋部912,913を貫通する開口(符号省略)がそれぞれ配置される。ケーシング911と蓋部912,913の開口とには、第3柱部7421が移動可能に挿通される。
【0099】
移動コア部92は、第3柱部7421を囲む環状であり、磁性体から成る。移動コア部92は、ケーシング91の内部において第3柱部7421の外周面に固定される。本実施形態では、移動コア部92は、第3柱部7421と一体である。但し、この例示に限定されず、移動コア部92は、第3柱部7421とは別体であってもよい。
【0100】
固定コア部93は、第3柱部7421を囲む環状であり、磁性体から成る。固定コア部93は、移動コア部92よりもロックシャフト72とは反対側に配置されて、ケーシング91の蓋部913に固定される。
【0101】
コイル部94は、筒部911の内周面に配置される。コイル部94は、たとえばモータ部20の基板291と電気的に接続され、基板291に搭載された駆動部により通電制御される。コイル部94は、第3柱部7421、移動コア部92、及び固定コア部93を囲む。
【0102】
移動コア部92及び固定コア部93は、コイル部94の通電により発生する磁界に応じて磁化し、互いに引き付け合う。これにより、第3柱部7421は、ロックシャフト72に近付く方向に移動する。
【0103】
なお、磁界が消えると、両者の磁化は解除される。そのため、第3柱部7421は、弾性部材7422の弾性力により、ロックシャフト72から離間する方向に移動する。
【0104】
本実施形態では、ブレーキ機構70をONにする際、第2ソレノイド機構90は、第3柱部7421をロックシャフト72から離間させる。たとえば、コイル部94の通電は、OFFとされる。第3柱部7421は、弾性部材7422の弾性力により、ロックシャフト72の第3凹部722から離れる。これにより、第3柱部7421によるロックシャフト72の固定が解除され、ロックシャフト72は、軸方向に移動可能となる。止め板71の回転によりロックシャフト72の軸方向他方D2側の端部の周方向位置が第1凹部712の周方向位置と合うと、ロックシャフト72は、第1凹部712に嵌る。
【0105】
一方、ブレーキ機構70をOFFにする際、第2ソレノイド機構90は、第2柱部7413をロックシャフト72に向かって移動させる。たとえば、コイル部94の通電は、ONとされる。第3柱部7421は、移動コア部92が固定コア部93に引き付けられることにより、ロックシャフト72の第3凹部722に向かって移動可能となる。第3柱部7421の一方端部と第3凹部723との軸方向位置が合うと、第3柱部7421は、第3凹部722に嵌る。そのため、ロックシャフト72は、第1凹部712から離れた状態で固定される。従って、止め板71及びモータシャフトは回転可能となり、ブレーキ機構70がOFFとなる。
【0106】
<2-5.ブレーキ機構70の変形例>
次に、図8を参照して、ブレーキ機構70の変形例について説明する。図8は、変形例に掛かるブレーキ機構70aの構成例を示す平面図である。図8では、ブレーキ機構70aを軸方向一方D1から軸方向他方D2に向かって見ている。なお、図8は、軸方向一方D1から軸方向他方D2を向いてブレーキ機構70aを見ている。
【0107】
以下では、変形例のうちの上述の実施形態と異なる構成を説明する。また、上述の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略することがある。
【0108】
変形例に係るブレーキ機構70aでは、取付板76aの軸方向一方D1側の端面には、ガイド溝762aが配置される。ガイド溝762aは、軸方向他方D2に凹み、軸方向から見て第2柱部7413aに向かって延びる。
【0109】
変形例に係るブレーキ機構70aは、ロック解除部77aをさらに有する。ロック解除部77aは、第1停止部741aによるロックシャフト72aの固定を解除可能である。
【0110】
ロック解除部77aは、第1レバー771aを有する。第1レバー771aは、ケース75aの内部から外部に延びる。第1レバー771aの外端部は、ケース75aの外部に配置される。第1レバー771aの内端部は、ケース75aの内部に配置される。
【0111】
図8に示すように、第1レバー771aは、支点部7711aを有する。支点部7711aは、取付板76aの軸方向一方D1側の端面に接続される。第1レバー771aは、軸方向から見て、支点部7711aを中心にして回転可能である。
【0112】
また、ロック解除部77aは、第2レバー772aをさらに有する。第2レバー772aは、第1レバー771aの内端部から延びる。
【0113】
図8に示すように、第2レバー772aは、凸部7721aを有する。凸部7721aは、ガイド溝762aに嵌るとともに、ガイド溝762aに沿って移動可能である。第2レバー772aの一方端は、第1レバー771aの内端部に接続されるとともに、第1レバー771aの内端部に対して回転可能である。第2レバー772aの他方端は、ガイド溝762aに沿う凸部7721aの移動に応じて、第1柱部7411aから第2柱部7413aを後退させる方向において、第2柱部7413aに対して接離可能である。
【0114】
こうすれば、ブレーキ機構70aは、たとえば第1レバー771aの手動操作に応じて、第1柱部7411aから第2柱部7413aを後退させて、第2凹部721aに収容された第1柱部7411aを第2凹部721aから後退可能にできる。従って、ブレーキ機構70aは、たとえば緊急時などおいて、第1ソレノイド機構80aに依らず機械的に、第1停止部741aによるロックシャフト72aの固定を直ちに解除できる。
【0115】
<3.その他>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0116】
たとえば、上述の実施形態及びその変形例では、ブレーキ機構70,70aは、単数のロックシャフト72,72aを有する。但し、この例示に限定されず、ロックシャフト72,72aは、複数であってもよい。こうすれば、複数のロックシャフト72,72aが第1凹部712に嵌った状態で固定されることにより、ブレーキ機構70,70aは、止め板71及びモータシャフト21の回転をより確実に防止でき、つまり、より大きな制動力を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、たとえば電動アシスト自転車、電動スクータ、電動車椅子、配送ロボット等の電力によって駆動力を得る移動体に利用することができる。
【符号の説明】
【0118】
100・・・移動体、101・・・フレーム、102・・・電源、103・・・駆動車輪、104・・・従動車輪、1041・・・取付フレーム、105・・・座部、106・・・背もたれ部、107・・・ひじ掛け部、1071・・・操作部、108・・・足置き部、109・・・手押しハンドル、10・・・駆動装置、20・・・モータ部、21・・・モータシャフト、211・・・シャフト軸受、22・・・ロータ、23・・・ロータコア、24・・・ロータマグネット、25・・・ステータ、26・・・ステータコア、261・・・コアバック、262・・・ティース、27・・・コイル、28・・・インシュレータ、291・・・基板、292・・・バスバ、30・・・減速機構、35・・・出力部、50・・・ハウジング、500・・・内部空間、51・・・第1ハウジング、511・・・底部、512・・・貫通孔、52・・・第2ハウジング、521・・・蓋部、522・・・貫通孔、53・・・ブラケット、70,70a・・・ブレーキ機構、71・・・止め板、711・・・板部、712・・・第1凹部、7121・・・テーパ面、713・・・中央凹部、714・・・溝部、72,72a・・・ロックシャフト、721,721a・・・第2凹部、722・・・第3凹部、73・・・弾性部材、74・・・停止部、741,741a・・・第1停止部、7411,7411a・・・第1柱部、7412・・・弾性部材、7413,7413a・・・第2柱部、74131・・・鍔部、7414・・・弾性部材、7415・・・軟質部材、742・・・第2停止部、7421・・・第3柱部、74211・・・鍔部、7422・・・弾性部材、75,75a・・・ケース、76,76a・・・取付板、761・・・、開口部、762a・・・ガイド溝、77a・・・ロック解除部、771a・・・第1レバー、7711a・・・支点部、772a・・・第2レバー、7721a・・・凸部、80a・・・第1ソレノイド機構、81・・・ケーシング、811・・・筒部、812,813・・・蓋部、82・・・移動コア部、83・・・固定コア部、84・・・コイル部、90・・・第2ソレノイド機構、91・・・ケーシング、911・・・筒部、912,913・・・蓋部、92・・・移動コア部、93・・・固定コア部、94・・・コイル部、J1・・・中心軸、Sc・・・ねじ、F・・・前方、R・・・後方、D1・・・軸方向一方、D2・・・軸方向他方
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8