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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097914
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20230703BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230703BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20230703BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61F13/532 210
A61F13/53 200
A61F13/534 110
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214291
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】武田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】福元 淳生
(72)【発明者】
【氏名】立堀 渉
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA01
3B200BA04
3B200BA13
3B200BA14
3B200BB03
3B200BB17
3B200BB20
3B200CA08
3B200DA14
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB15
3B200DB18
3B200DB23
3B200EA05
3B200EA23
(57)【要約】
【課題】液拡散性を向上するとともに液戻りを抑制する。
【解決手段】吸収コア4は、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との間に高吸収性材料413が固定された吸収体41を備える。吸収体において、高吸収性材料が固定される材料存在領域42が、幅方向に隙間を空けて配列され、隣接する材料存在領域の間に、高吸収性材料が非存在である材料非存在領域43が設けられる。各材料非存在領域において、上側吸収体シートと下側吸収体シートとが全体的に接合される。長手方向の所定範囲に注目した場合に、幅方向の中央の材料非存在領域43aにおいて、トップシート21と上側吸収体シートとが当該所定範囲の全体に亘って非接合とされ、中央の材料非存在領域の両側の材料存在領域において、トップシートと上側吸収体シートとが接合される。トップシートの不織布を幅方向に3%伸長した際の荷重が、上側吸収体シートの不織布の当該荷重よりも大きい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者からの排泄物を受ける吸収性物品であって、
透液性のトップシートと、
撥水性または不透液性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置され、長手方向に延びる吸収コアと、
を備え、
前記吸収コアが、上側吸収体シートと下側吸収体シートとの間に高吸収性材料が固定された吸収体を備え、
前記吸収体において、前記高吸収性材料が固定される複数の材料存在領域が、幅方向に隙間を空けて配列され、前記幅方向に隣接する2つの材料存在領域の間に、前記高吸収性材料が非存在である材料非存在領域が設けられ、各材料非存在領域において、前記上側吸収体シートと前記下側吸収体シートとが全体的に接合され、
前記長手方向において着用者からの排尿を受ける所定範囲に注目した場合に、前記幅方向の中央の材料非存在領域において、前記トップシートと前記上側吸収体シートとが前記所定範囲の全体に亘って非接合とされ、前記中央の材料非存在領域に対して前記幅方向の両側に隣接する2つの材料存在領域のそれぞれにおいて、前記トップシートと前記上側吸収体シートとが接合され、
前記トップシートを形成する不織布を前記幅方向に3%伸長した際の荷重が、前記上側吸収体シートを形成する不織布を前記幅方向に3%伸長した際の荷重よりも大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記トップシートを形成する不織布を前記幅方向に3%伸長した際の荷重が、前記上側吸収体シートを形成する不織布を前記幅方向に3%伸長した際の荷重の2.0倍以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記トップシートを形成する不織布の繊度が、前記上側吸収体シートを形成する不織布の繊度の1.1倍以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の吸収性物品であって、
前記トップシートを形成する不織布の目付が、前記上側吸収体シートを形成する不織布の目付の1.1倍以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の吸収性物品であって、
前記トップシートを形成する不織布の所定の荷重による圧縮率が、前記上側吸収体シートを形成する不織布の前記圧縮率よりも小さいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の吸収性物品であって、
前記吸収コアが、前記吸収体と前記バックシートとの間に配置され、シート状の繊維集合体を有するもう1つの吸収体をさらに備えることを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品であって、
前記もう1つの吸収体が、前記吸収体に接触する面上に前記バックシート側に窪む凹部を有し、
前記凹部が、少なくとも前記長手方向の前記所定範囲に広がるとともに、前記中央の材料非存在領域、および、前記中央の材料非存在領域の両側の前記2つの材料存在領域と重なることを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品が利用されている。このような吸収性物品において、着用者からの尿等を受ける部分に、高吸収性材料を含む吸収コアを配置することにより、吸収量の向上等が図られている。例えば、特許文献1の吸収性物品では、吸水性樹脂粉末を含むシート状吸水層と、パルプ繊維を含む繊維集合層とを有する吸収マット(吸収コア)が設けられる。シート状吸水層では、吸水性樹脂粉末が複数の不織布シート間に内包される。シート状吸水層は、吸水性樹脂粉末存在領域と、吸水性樹脂粉末非存在領域とを有し、不織布シートを吸水性樹脂粉末非存在領域において接合し、封止部が形成される。特許文献1では、体液を吸収して吸水性樹脂が膨潤すると、繊維集合層と封止部との間に空隙が生じる。これにより、繊維集合層から染み出した体液が、空隙部分を通じて拡散し、液の逆戻り(液戻り)が防止される。
【0003】
なお、特許文献2の吸収性物品では、吸収マットの繊維集合層が上下2層の繊維集合体からなり、上側繊維集合体には、開口部が設けられる。シート状吸水層の吸水性樹脂粉末非存在領域が当該開口部の上側に位置することにより、着用者から排泄された体液が、当該吸水性樹脂粉末非存在領域および開口部を介して下側繊維集合体に導かれる。これにより、吸収速度が速められる。特許文献3および4では、トップシートと吸収体との接着剤による接合について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4502586号公報
【特許文献2】特許第4416441号公報
【特許文献3】特開2008-149017号公報
【特許文献4】特開2001-17470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既述のように、特許文献1の吸収性物品では、繊維集合層と封止部との間に空隙が形成されるため、液拡散性の向上および液戻りの抑制が図られるが、必ずしも十分ではない。したがって、液拡散性を向上するとともに、液戻りを抑制することが可能な新規な手法が求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液拡散性を向上するとともに、液戻りを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、着用者からの排泄物を受ける吸収性物品であって、透液性のトップシートと、撥水性または不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置され、長手方向に延びる吸収コアとを備え、前記吸収コアが、上側吸収体シートと下側吸収体シートとの間に高吸収性材料が固定された吸収体を備え、前記吸収体において、前記高吸収性材料が固定される複数の材料存在領域が、幅方向に隙間を空けて配列され、前記幅方向に隣接する2つの材料存在領域の間に、前記高吸収性材料が非存在である材料非存在領域が設けられ、各材料非存在領域において、前記上側吸収体シートと前記下側吸収体シートとが全体的に接合され、前記長手方向において着用者からの排尿を受ける所定範囲に注目した場合に、前記幅方向の中央の材料非存在領域において、前記トップシートと前記上側吸収体シートとが前記所定範囲の全体に亘って非接合とされ、前記中央の材料非存在領域に対して前記幅方向の両側に隣接する2つの材料存在領域のそれぞれにおいて、前記トップシートと前記上側吸収体シートとが接合され、前記トップシートを形成する不織布を前記幅方向に3%伸長した際の荷重が、前記上側吸収体シートを形成する不織布を前記幅方向に3%伸長した際の荷重よりも大きい。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸収性物品であって、前記トップシートを形成する不織布を前記幅方向に3%伸長した際の荷重が、前記上側吸収体シートを形成する不織布を前記幅方向に3%伸長した際の荷重の2.0倍以上である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の吸収性物品であって、前記トップシートを形成する不織布の繊度が、前記上側吸収体シートを形成する不織布の繊度の1.1倍以上である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の吸収性物品であって、前記トップシートを形成する不織布の目付が、前記上側吸収体シートを形成する不織布の目付の1.1倍以上である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の吸収性物品であって、前記トップシートを形成する不織布の所定の荷重による圧縮率が、前記上側吸収体シートを形成する不織布の前記圧縮率よりも小さい。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の吸収性物品であって、前記吸収コアが、前記吸収体と前記バックシートとの間に配置され、シート状の繊維集合体を有するもう1つの吸収体をさらに備える。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の吸収性物品であって、前記もう1つの吸収体が、前記吸収体に接触する面上に前記バックシート側に窪む凹部を有し、前記凹部が、少なくとも前記長手方向の前記所定範囲に広がるとともに、前記中央の材料非存在領域、および、前記中央の材料非存在領域の両側の前記2つの材料存在領域と重なる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液拡散性を向上するとともに、液戻りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】吸収性物品を示す平面図である。
図2】吸収性物品を示す断面図である。
図3】本体部を示す平面図である。
図4】吸収コアを拡大して示す断面図である。
図5】上側吸収体シートとトップシートとの接合を説明するための図である。
図6】高吸収性材料が膨潤した吸収コアを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一の形態に係る吸収性物品1を広げた状態で示す平面図である。吸収性物品1は、着用者が着用する使い捨ておむつ等の外装物品の内側(すなわち、着用者側)に取り付けられて着用者からの尿等の排泄物を受ける補助吸収パッドである。図1では、着用時に着用者に接する側の面を手前にして吸収性物品1を描いている。
【0017】
図2は、吸収性物品1を図1中に示すII-IIの位置で長手方向(図1中の上下方向)に垂直な面で切断した断面図である。図1および図2に示すように、吸収性物品1は、略シート状の本体部2と、一対のサイドシート3とを備える。本体部2は、透液性のトップシート21と、撥水性または不透液性のバックシート23と、トップシート21とバックシート23との間に配置された略シート状の吸収コア4とを備える。図2では、図示の都合上、吸収性物品1の各構成を厚さ方向に離して描いている。また、図1では、図の理解を容易にするために、吸収コア4の輪郭を太い破線にて描いている。
【0018】
図1に示すように、吸収コア4および本体部2は、平面視において長手方向に延びる略長方形である。詳細には、吸収コア4および本体部2は、長手方向における両端部の幅が、中央部の幅よりも大きい、いわゆる砂時計型である。吸収コア4の外形は、後述の下層吸収体46の外形である。本体部2は吸収コア4より一回り大きく、吸収コア4の全体が本体部2の外周縁の内側に位置する。本体部2の外形は、バックシート23の外形であり、バックシート23の長手方向の長さおよび幅方向の幅は、吸収コア4の長さおよび幅よりも大きい。図2に示すように、トップシート21は、吸収コア4の着用者側の主面を覆う。バックシート23は、吸収コア4のもう一方の主面、すなわち、着用者とは反対側の主面を覆う。本実施の形態では、トップシート21は、略矩形であり(後述の図3参照)、長手方向における吸収コア4の外側においてホットメルト接着剤等を介してバックシート23に接合される。
【0019】
トップシート21は透液性のシート部材であり、着用者からの排泄物の水分を速やかに捕捉して吸収コア4へと移動させる。吸収コア4は、トップシート21を透過した水分を吸収して迅速に固定する。バックシート23は、バックシート23に到達した排泄物の水分等が、本体部2の外側に染み出すことを防止する。吸収コア4の構造の詳細については後述する。
【0020】
図1および図2に示すように、一対のサイドシート3は、本体部2の両側部(すなわち、長手方向に垂直な幅方向の両側)上に配置され、長手方向における本体部2のおよそ全長に亘る。各サイドシート3は、サイドシート本体31と、側壁部弾性部材32とを備える。図2に示すように、サイドシート本体31は、固定部33と、側壁部34とを備える。固定部33は、本体部2の側部上において、長手方向における本体部2のおよそ全長に亘る。固定部33は、本体部2の当該側部上に固定される。固定部33と本体部2との固定は、ホットメルト接着剤等の接着剤を介して行われる。
【0021】
側壁部34は、固定部33の幅方向内側に連続し、固定部33と共に長手方向に延びる。側壁部34は、長手方向の両端部において本体部2上に重ねられ、ホットメルト接着剤等により固定される。吸収性物品1では、一対の側壁部34が、吸収コア4の両側部近傍においてトップシート21側に設けられる。各側壁部34の端部、すなわち、自由端には、長手方向に延びる側壁部弾性部材32がホットメルト接着剤等により伸張状態にて接合される。側壁部弾性部材32は、長手方向に延びる少なくとも1本の弾性要素を含む。側壁部弾性部材32が収縮することにより、側壁部34が着用者に向かって立ち上がり、立体ギャザーが形成される。
【0022】
上述のホットメルト接着剤としては、ポリオレフィン系、ゴム系、酢酸ビニル系等のものが利用される。トップシート21とバックシート23との接合、サイドシート3と本体部2との接合等は、熱融着接合や超音波接合等により行われてもよい。また、側壁部弾性部材32の接合が、超音波接合等により行われてもよい。
【0023】
トップシート21は、例えば、透液性の不織布により形成される。当該不織布は、例えば、表面が界面活性剤により親水処理された疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)により形成される。当該不織布は、セルロース、レーヨンまたはコットン等の親水性繊維により形成されてもよい。当該不織布は、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布またはスパンレース不織布等である。
【0024】
バックシート23は、例えば、疎水性繊維により形成された不透液性もしくは撥液性の不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布またはSMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布等)、または、不透液性もしくは撥液性のプラスチックフィルムにより形成される。バックシート23は、当該不織布と当該プラスチックフィルムとの積層体であってもよい。バックシート23にプラスチックフィルムが利用される場合、吸収性物品1のムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(すなわち、通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0025】
サイドシート本体31は、例えば、疎水性繊維にて形成された不透液性または撥液性の不織布(エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布またはSMS不織布等)により形成される。側壁部弾性部材32の弾性要素としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、または、糸状もしくは帯状の天然ゴム等が利用される。本実施の形態では、ポリウレタン糸が弾性要素として利用される。
【0026】
図3は、吸収性物品1の本体部2を示す平面図であり、サイドシート3の図示を省略している。図4は、図2中の吸収コア4を拡大して示す断面図である。吸収コア4は、上層吸収体41と、下層吸収体46とを備える。上層吸収体41は、下層吸収体46の上側(着用者側)に配置される。すなわち、下層吸収体46は、上層吸収体41の下側(外側)に配置される。図3では、上層吸収体41の外形を破線にて示している。例えば、幅方向における下層吸収体46の大きさは、上層吸収体41よりも大きく、長手方向における下層吸収体46の大きさは、上層吸収体41と略同じである。
【0027】
下層吸収体46は、上層吸収体41とバックシート23との間に配置され、一方または両方に接合される。図4の例では、下層吸収体46は、シート状の上側繊維集合体47と、シート状の下側繊維集合体48とを備える。上側繊維集合体47は、下側繊維集合体48の上側(着用者側)に配置され、下側繊維集合体48は、上側繊維集合体47とバックシート23との間に配置される。本実施の形態では、上側繊維集合体47の外形は、いわゆる砂時計型であり、下側繊維集合体48の外形は略矩形である。後述の開口部471と重なる部位を除く下側繊維集合体48の略全体が、厚さ方向(図4の上下方向)において上側繊維集合体47と重なる(上側繊維集合体47に覆われる。)。
【0028】
上側繊維集合体47は、図3および図4に示すように開口部471を有する。開口部471は、幅方向の略中央において長手方向に延びる。長手方向における開口部471の長さは、上層吸収体41の長さよりも小さい。長手方向における開口部471の存在範囲は、後述の排尿範囲R1と重なる。幅方向における開口部471の幅は、後述の材料非存在領域43の幅よりも大きい。開口部471は、上側繊維集合体47を貫通するスリットである。下側繊維集合体48は、開口部を有していない。したがって、上側繊維集合体47の開口部471の下側は、下側繊維集合体48により閉塞される。下層吸収体46における開口部471は、上層吸収体41に接触する面上にてバックシート23側に窪む凹部である。
【0029】
上側繊維集合体47および下側繊維集合体48のそれぞれは、例えば、セルロースやレーヨン、コットン等の再生親水性繊維、合成繊維、パルプ繊維等により形成される。上側繊維集合体47および下側繊維集合体48は、高吸収性材料を含んでもよい。典型的には、上側繊維集合体47および下側繊維集合体48は、ティッシュペーパーや透液性不織布等で包み込まれる。下層吸収体46の構造は、上記には限定されない。例えば、下層吸収体46が1つの繊維集合体のみを有し、当該繊維集合体において長手方向に延びる凹部が設けられてもよい。
【0030】
図4に示すように、上層吸収体41は、透液性の上側吸収体シート411と、透液性の下側吸収体シート412と、高吸収性材料413とを備える。上側吸収体シート411は、トップシート21側に配置され、下側吸収体シート412は、上側吸収体シート411に対してバックシート23側に配置される。上層吸収体41は、長手方向に長い略長方形であり、上側吸収体シート411および下側吸収体シート412は、共に長手方向に延びた形状である。上側吸収体シート411および下側吸収体シート412の外形は略同じである。上層吸収体41では、高吸収性材料413が固定された複数の材料存在領域42と、高吸収性材料413が非存在である複数の材料非存在領域43とが設けられる。図3では、材料存在領域42に平行斜線を付している。図3および図4(並びに、後述の図5および図6)では、1つの材料非存在領域に符号43aを付しているが、特に言及する場合を除き、材料非存在領域43aは他の材料非存在領域43と同じである。
【0031】
複数の材料存在領域42は、それぞれが長手方向に略平行に延びる帯状であり、幅方向に隙間を空けて(すなわち、互いに離れつつ)配列される。換言すると、長手方向に延びるストライプ状に配置された複数の材料存在領域42が設けられる。各材料存在領域42では、高吸収性材料413が、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との間に配置され、ホットメルト接着剤等により一方または両方に固定される。換言すれば、材料存在領域42に高吸収性材料413が固定される。図3および図4の例では、複数の材料存在領域42の幅は、互いにおよそ等しいが、これらは異なっていてもよい。
【0032】
複数の材料非存在領域43は、上層吸収体41において複数の材料存在領域42を除く領域である。複数の材料非存在領域43は、それぞれが長手方向に沿って延びる帯状である。図3および図4の例では、複数の材料非存在領域43の幅は、互いに等しいが、これらは異なっていてもよい。例えば、各材料非存在領域43の幅は、材料存在領域42の幅よりも小さい。材料非存在領域43と材料存在領域42は、幅方向に交互に配列される。すなわち、幅方向に隣接する2つの材料存在領域42の間に材料非存在領域43が設けられる。図3では、材料非存在領域43と材料存在領域42との境界線を、上層吸収体41の外形を示す破線よりも細い破線にて示している。
【0033】
典型的には、各材料非存在領域43では、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との間に、高吸収性材料413は存在しない。高吸収性材料413は実質的に存在しなければよく、少量の高吸収性材料413は存在してもよい。材料非存在領域43では、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412とが互いに接合された接合部44が設けられる。接合部44は、互いに接合された上側吸収体シート411および下側吸収体シート412の材料非存在領域43の部位である。一例では、接合部44は、ホットメルト接着剤等を用いた接着接合により形成される。接着接合は、例えば、スロットコート塗工、カーテン塗工等により行われ、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との間において材料非存在領域43の全体に接着剤が塗布される。好ましくは、接着接合に加えて、ヒートシール(熱融着接合)が行われる。この場合、接合部44は、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との複合的な接合により形成される。接合部44では、必ずしも複合的な接合が行われる必要はない。
【0034】
接合部44では、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412とが材料非存在領域43の全体に亘って接合される。材料非存在領域43の極一部において、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412とが非接合であってもよい。材料非存在領域43において、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との間における接着剤の付着面積の、当該材料非存在領域43の面積に対する割合、すなわち、材料非存在領域43における上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との接合領域の面積率は、例えば80%以上であり、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。既述のように、材料非存在領域43が、高吸収性材料413を僅かに含む領域、すなわち、材料存在領域42よりも高吸収性材料413の密度が十分に低い領域(すなわち、材料低密度領域)であってもよい。
【0035】
上側吸収体シート411は、トップシート21と接合される。上側吸収体シート411とトップシート21との接合は、例えば、図5に示すスパイラル塗工により行われる。スパイラル塗工では、ホットメルト接着剤等の接着剤451が長手方向に沿ってスパイラル状に塗布されたスパイラルパターンが、幅方向に配列される。したがって、図4に示すように、上側吸収体シート411とトップシート21とは、接着剤451により部分的に接合される。
【0036】
ここで、幅方向の中央の材料非存在領域43a(以下、単に「中央の材料非存在領域43a」という。)に注目する。中央の材料非存在領域43aは、本体部2における幅方向中央に最も近接する材料非存在領域である。2つの材料非存在領域が幅方向中央の両側近傍に位置する場合、当該2つの材料非存在領域が中央の材料非存在領域43aとして特定されてもよい。図5に示すように、中央の材料非存在領域43aは、厚さ方向において接着剤451のパターンのいずれとも重ならない。したがって、中央の材料非存在領域43aでは、トップシート21と上側吸収体シート411とが長手方向の全体に亘って非接合とされる。
【0037】
中央の材料非存在領域43aを除く材料非存在領域43(以下、「中央以外の材料非存在領域43」という。)のそれぞれは、接着剤451のパターンのいずれかと長手方向の全体に亘って重なる。すなわち、中央以外の各材料非存在領域43では、トップシート21と上側吸収体シート411とが長手方向の全体に亘って接合される。実際には、中央以外の材料非存在領域43では、幅方向における一部のみに接着剤451が存在し、トップシート21と上側吸収体シート411とが部分的に接合される。一方、各材料存在領域42は、接着剤451のパターンのいずれかと長手方向の全体に亘って重なり、トップシート21と上側吸収体シート411とが長手方向の全体に亘って接合される。材料存在領域42においても、幅方向における一部のみに接着剤451が存在し、トップシート21と上側吸収体シート411とが部分的に接合される。中央以外の材料非存在領域43および材料存在領域42では、長手方向または幅方向に離散的に接着剤451が存在してもよい。
【0038】
図4に示すように、中央の材料非存在領域43aは、厚さ方向において上側繊維集合体47の開口部471と重なる。中央の材料非存在領域43aに対して幅方向の両側に隣接する2つの材料存在領域42では、中央の材料非存在領域43a側の部位が開口部471と重なり、中央の材料非存在領域43aとは反対側の部位は開口部471と重ならない。既述のように、長手方向における開口部471の長さは、上層吸収体41の長さよりも小さく、中央の材料非存在領域43aの長手方向における両端部は、開口部471と重ならない。
【0039】
上層吸収体41の上側吸収体シート411および下側吸収体シート412は、例えば、トップシート21と同様に、透液性の不織布により形成される。当該不織布は、例えば、表面が界面活性剤により親水処理された疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)により形成される。当該不織布は、セルロース、レーヨンまたはコットン等の親水性繊維により形成されてもよい。当該不織布は、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布またはスパンレース不織布等である。高吸収性材料413としては、例えば、粒状の高吸収性ポリマー(SAP(Super Absorbent Polymer))、または、繊維状の高吸収性ファイバー(SAF(Super Absorbent Fiber))が利用される。
【0040】
ここで、トップシート21を形成する不織布と、上側吸収体シート411を形成する不織布とを比較する。吸収性物品1では、トップシート21の不織布の繊度が、上側吸収体シート411の不織布の繊度よりも大きい。一例では、トップシート21の不織布の繊度は、4.4dtex以上である。トップシート21の不織布の繊度は、上側吸収体シート411の不織布の繊度に対して、例えば1.1倍以上であり、好ましくは1.5倍以上である。上限は特に限定されないが、例えば3.5倍であり、好ましくは3.0倍である。また、トップシート21の不織布の目付が、上側吸収体シート411の不織布の目付よりも大きい。一例では、トップシート21の不織布の目付は、25g/m以上である。トップシート21の不織布の目付は、上側吸収体シート411の不織布の目付に対して、例えば1.1倍以上であり、好ましくは1.2倍以上である。上限は特に限定されないが、例えば2.5倍であり、好ましくは2.0倍である。
【0041】
さらに、トップシート21の不織布の所定の荷重による圧縮率が、上側吸収体シート411の不織布の圧縮率よりも小さい。圧縮率の測定では、例えば、カトーテック株式会社製の圧縮試験機(KES-G5)が用いられる。トップシート21の不織布、および、上側吸収体シート411の不織布のそれぞれについて、50×50mmの試料を準備し、圧縮試験機により、加圧面積2cmにて最大荷重50gf/cmまで加圧した時の試料厚さの変化率(すなわち、(加圧による厚さの変化量の絶対値/加圧前の厚さ))が、圧縮率として測定される。圧縮試験機における測定条件は、SENS:2、圧縮速度:0.02mm/secである。
【0042】
吸収性物品1の一例では、トップシート21の不織布の繊維配向(典型的には、ロールから引き出される不織布の長手方向)が、本体部2の長手方向に略平行であり、上側吸収体シート411の不織布の繊維配向も、本体部2の長手方向に略平行である。したがって、トップシート21の不織布、および、上側吸収体シート411の不織布は共に、本体部2の長手方向に対応する方向(以下、単に「長手方向」という。)に伸長しにくい。
【0043】
また、後述の引張試験において、トップシート21の不織布を、本体部2の幅方向に対応する方向(以下、単に「幅方向」という。)に3%伸長した際の荷重(以下、単に「3%伸長荷重」という。)は、上側吸収体シート411の不織布の幅方向における3%伸長荷重よりも大きい。幅方向におけるトップシート21の3%伸長荷重は、上側吸収体シート411の3%伸長荷重に対して、例えば2.0倍以上であり、好ましくは2.2倍以上である。上限は特に限定されないが、例えば10.0倍である。以上のように、トップシート21は、上側吸収体シート411よりも幅方向に伸長しにくい。換言すると、上側吸収体シート411は、トップシート21よりも幅方向に伸長しやすい。実際には、下側吸収体シート412も同様に、トップシート21よりも幅方向に伸長しやすい。
【0044】
吸収性物品1では、着用者から尿等の排泄物が排泄されると、トップシート21を介して吸収コア4に到達する水分の一部が、材料非存在領域43を通過して下層吸収体46に導かれ、下層吸収体46により吸収される。典型的には、本体部2における幅方向中央近傍において排泄物が受けられるため、吸収コア4に到達する水分は、中央の材料非存在領域43aを通過して下層吸収体46の開口部471およびその近傍に導かれ、上側繊維集合体47における開口部471近傍の部位、および、下側繊維集合体48により吸収される。また、水分の他の一部は、上層吸収体41の材料存在領域42において高吸収性材料413により吸収される。詳細には、図6に示すように、中央の材料非存在領域43aに対して幅方向の両側に隣接する2つの材料存在領域42の高吸収性材料413により、水分が吸収され、当該高吸収性材料413が膨潤する。
【0045】
このとき、上側吸収体シート411および下側吸収体シート412が幅方向に伸長しやすいため、当該2つの材料存在領域42では、上側吸収体シート411および下側吸収体シート412が、膨潤した高吸収性材料413に合わせて変形する。また、材料非存在領域43では、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との接合(接合部44)がおよそ維持される。
【0046】
一方、トップシート21は幅方向に伸長しにくい。したがって、中央の材料非存在領域43aでは、隣接する材料存在領域42における高吸収性材料413の膨潤率(吸水量)が大きくなると、トップシート21が高吸収性材料413の変形に追随しなくなり、中央の材料非存在領域43aにおいてトップシート21が上側吸収体シート411から離れる。これにより、中央の材料非存在領域43aでは、トップシート21と上側吸収体シート411との間に空間81が形成される。実際には、長手方向における材料非存在領域43aの全体に亘ってトップシート21と上側吸収体シート411とが離れるわけではなく、隣接する材料存在領域42における高吸収性材料413の膨潤率が大きい領域で、トップシート21と上側吸収体シート411との離隔が生じる。
【0047】
吸収性物品1では、空間81により長手方向への水分の拡散が促進され、吸収コア4の広範囲を水分の吸収に利用することが可能となる。また、着用者の体圧等により下層吸収体46から水分が染み出した場合でも、当該水分を空間81にて保持することにより、トップシート21の着用者側の面への水分の染み出し(すなわち、液戻り)が抑制される。また、中央の材料非存在領域43aおよびその両側の材料存在領域42が、厚さ方向において下層吸収体46の開口部471と重なるため、下層吸収体46に開口部471を設けない場合に比べて、上層吸収体41における中央の材料非存在領域43aの部位が、バックシート23側に配置されやすくなる。換言すると、中央の材料非存在領域43aの部位が、トップシート21に対して開口部471側に離れやすくなり(開口部471に落ち込みやすくなり)、空間81が厚さ方向に広がる。既述のように、トップシート21では、所定の荷重による圧縮率が上側吸収体シート411よりも小さいため、トップシート21が圧縮されにくく剛性が高くなり、空間81が維持されやすくなる。
【0048】
ところで、吸収性物品1では、長手方向における所定範囲(以下、「排尿範囲」という。)が、着用者からの排尿を受けやすい。例えば、図3の本体部2において下側の端部が着用者の腹側(前側)に配置され、上側の端部が着用者の背側(後側)に配置されるものとする。この場合に、長手方向において、上層吸収体41の腹側の端縁を0とし、背側の端縁を100とすると、図3中に矢印にて示すように、排尿範囲R1は20~40の範囲となる。したがって、上述の空間81による液拡散性の向上および液戻りの抑制を図るには、中央の材料非存在領域43aでは、トップシート21と上側吸収体シート411とが排尿範囲R1の全体に亘って非接合とされ、中央の材料非存在領域43aの両側の材料存在領域42では、排尿範囲R1においてトップシート21と上側吸収体シート411とが接合されていることが好ましい。既述のように、中央の材料非存在領域43aにおいて空間81が形成される部位が、下層吸収体46の開口部471と厚さ方向に重なることにより、空間81が厚さ方向に広がりやすくなる。したがって、下層吸収体46の開口部471も、長手方向の排尿範囲R1の全体に亘って広がっていることが好ましい。
【0049】
吸収性物品1では、長手方向における各端部を、腹側および背側のいずれに配置する場合も許容する設計が採用されてもよい。また、吸収性物品1の使用状況によっては、設計上の腹側の端部を着用者の背側に配置して吸収性物品1を使用することも考えられる。さらに、便等の排泄物は長手方向の略中央において受けられる。これらの点を考慮すると、中央の材料非存在領域43aにおいてトップシート21と上側吸収体シート411とが非接合とされる範囲は、20~80の範囲であることが好ましく、0~100の範囲であることがより好ましい。中央の材料非存在領域43aの両側の材料存在領域42においてトップシート21と上側吸収体シート411とが接合とされる範囲も同様である。
【0050】
なお、図6の吸収コア4において、中央以外の材料非存在領域43では、トップシート21と上側吸収体シート411とが部分的に接合されているのみであるため、隣接する材料存在領域42における高吸収性材料413の膨潤により、当該材料非存在領域43においてトップシート21が上側吸収体シート411から剥離し、空間が形成されることもある。このようなトップシート21と上側吸収体シート411との剥離は、中央の材料非存在領域43aの両側の材料存在領域42において発生してもよく、この場合、トップシート21と上側吸収体シート411との間において、さらに大きい空間81が形成される。もちろん、中央以外の材料非存在領域43においても、トップシート21と上側吸収体シート411とが排尿範囲R1の全体(0~100の範囲全体であってもよい。)に亘って非接合とされ、空間81が形成されてもよい。
【0051】
次に、吸収性物品1に係る実験例について説明する。ここでは、トップシート21および上側吸収体シート411の引張特性の測定を行った。引張特性の測定では、吸収性物品1のトップシート21を形成する不織布、および、上側吸収体シート411を形成する不織布を準備した。トップシート21の不織布の繊度は4.4dtexであり、上側吸収体シート411の不織布の繊度は2.0dtexである。また、トップシート21の不織布の目付は25g/mであり、上側吸収体シート411の不織布の目付は17g/mである。なお、吸収性物品1におけるトップシート21および上側吸収体シート411のそれぞれの繊度および目付は、上記には限定されない。そして、各不織布において、長手方向および幅方向のそれぞれに関して、JIS L1913 6.3.1に準拠して引張試験を行い、3%伸長荷重、引張強度および引張伸度を引張特性として測定した。表1は、引張特性の測定結果を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
既述のように、長手方向は、不織布の繊維配向(典型的には、ロールから引き出される不織布の長手方向)に略平行であり、幅方向は、不織布の繊維配向に略垂直である。3%伸長荷重は、試験前の試料長さを基準として、各方向に3%伸長した際の荷重である。各方向の3%伸長荷重が大きい不織布ほど、基準長さの3%の伸長に大きな力が必要となり、当該方向に伸長しにくいといえる。引張強度は、引張試験において試料が破断するまで伸長した際の荷重を試料の幅(50mm)で割った値である。引張伸度は、引張試験において試料が破断するまでの試料の伸長率である。
【0054】
幅方向のみに注目する場合に、トップシート21の不織布は、3%伸長荷重、引張強度および引張伸度のいずれについても、上側吸収体シート411の不織布よりも大きくなった。詳細には、トップシート21の不織布の幅方向における3%伸長荷重は、上側吸収体シート411の不織布の2.0倍以上である。このように、トップシート21は、幅方向に関して上側吸収体シート411よりも大幅に伸長しにくいことが確認された。なお、トップシート21の不織布の幅方向における引張強度も、上側吸収体シート411の不織布よりも十分に大きい(実際には、2.0倍以上である)。
【0055】
以上に説明したように、吸収性物品1では、吸収コア4が、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との間に高吸収性材料413が固定された上層吸収体41を備える。上層吸収体41において、高吸収性材料413が固定される複数の材料存在領域42が、幅方向に隙間を空けて配列され、幅方向に隣接する2つの材料存在領域42の間に、高吸収性材料413が非存在である材料非存在領域43が設けられる。また、各材料非存在領域43において、上側吸収体シート411と下側吸収体シート412とが全体的に接合される。長手方向において着用者からの排尿を受ける排尿範囲R1に注目した場合に、幅方向の中央の材料非存在領域43aにおいて、トップシート21と上側吸収体シート411とが排尿範囲R1の全体に亘って非接合とされ、中央の材料非存在領域43aに対して幅方向の両側に隣接する2つの材料存在領域42のそれぞれにおいて、トップシート21と上側吸収体シート411とが接合される。そして、トップシート21を形成する不織布を幅方向に3%伸長した際の荷重が、上側吸収体シート411を形成する不織布を幅方向に3%伸長した際の荷重よりも大きい。
【0056】
吸収性物品1では、高吸収性材料413の膨潤により中央の材料非存在領域43aにおいてトップシート21が上側吸収体シート411から離隔し、トップシート21と上側吸収体シート411との間に空間81を形成することができる。その結果、空間81により液拡散性を向上するとともに、液戻りを抑制することができる。また、中央の材料非存在領域43aにおいてトップシート21が吸収コア4側に大きく窪むことを防止して、着用感の低下を抑制することができる。
【0057】
好ましくは、トップシート21を形成する不織布を幅方向に3%伸長した際の荷重が、上側吸収体シート411を形成する不織布を幅方向に3%伸長した際の荷重の2.0倍以上である。これにより、中央の材料非存在領域43aにおいて空間81をより確実に形成することができる。
【0058】
好ましくは、トップシート21を形成する不織布の繊度が、上側吸収体シート411を形成する不織布の繊度の1.1倍以上である、または/および、トップシート21を形成する不織布の目付が、上側吸収体シート411を形成する不織布の目付の1.1倍以上である。このように、トップシート21の繊度または/および目付が大きいことにより、トップシート21の剛性を上側吸収体シート411よりも高くし、中央の材料非存在領域43aにおいて空間81をより確実に形成することができる。
【0059】
好ましくは、トップシート21を形成する不織布の所定の荷重による圧縮率が、上側吸収体シート411を形成する不織布の圧縮率よりも小さい。このように、トップシート21が圧縮されにくく剛性が高いため、空間81をより確実に保持することができる。
【0060】
好ましくは、吸収コア4が、上層吸収体41とバックシート23との間に配置され、シート状の繊維集合体を有する下層吸収体46をさらに備える。これにより、吸収コア4における吸収量を増大することができる。
【0061】
好ましくは、下層吸収体46が、上層吸収体41に接触する面上にバックシート23側に窪む凹部(上記の例では、開口部471)を有し、当該凹部が、少なくとも長手方向の排尿範囲R1に広がるとともに、中央の材料非存在領域43a、および、中央の材料非存在領域43aの両側の2つの材料存在領域42と重なる。これにより、上記空間81を厚さ方向に大きくすることができ、液拡散性をさらに向上するとともに、液戻りをさらに抑制することができる。
【0062】
上記吸収性物品1では様々な変形が可能である。
【0063】
中央の材料非存在領域43aにおいて、上記空間81が形成可能であるならば、トップシート21の不織布の幅方向における3%伸長荷重が、上側吸収体シート411の不織布の3%伸長荷重の2.0倍未満であってもよい。同様に、トップシート21の不織布の繊度が、上側吸収体シート411の不織布の繊度の1.1倍未満であってもよく、トップシート21の不織布の目付が、上側吸収体シート411の不織布の目付の1.1倍未満であってもよい。また、トップシート21の不織布の所定の荷重による圧縮率が、上側吸収体シート411の不織布の圧縮率以上であってもよい。
【0064】
吸収性物品1の設計によっては、下層吸収体46の凹部が省略されてもよい。また、吸収コア4において、下層吸収体46が省略されてもよい。
【0065】
上側吸収体シート411と下側吸収体シート412との接合、および、トップシート21と上側吸収体シート411との接合は、接着接合以外であってもよい。
【0066】
吸収コア4に設けられる材料存在領域42の数や形状は様々に変更されてよい。材料非存在領域43は、線状以外であってもよく、例えば、長手方向に沿って網目状に連続して広がってもよい。
【0067】
吸収性物品1からサイドシート3が省略されてもよい。上記吸収性物品1の構造は、補助吸収パッド以外の吸収性物品、例えば、パンツタイプやテープタイプの使い捨ておむつ等に利用されてもよい。
【0068】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0069】
1 吸収性物品
2 本体部
4 吸収コア
21 トップシート
23 バックシート
41 上層吸収体
42 材料存在領域
43,43a 材料非存在領域
46 下層吸収体
411 上側吸収体シート
412 下側吸収体シート
413 高吸収性材料
471 開口部
R1 排尿範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6