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特開2023-97934被覆二酸化チタン微粒子及びその製造方法並びにそれを含む有機溶媒分散体、コーティング組成物、塗膜
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  • 特開-被覆二酸化チタン微粒子及びその製造方法並びにそれを含む有機溶媒分散体、コーティング組成物、塗膜 図1
  • 特開-被覆二酸化チタン微粒子及びその製造方法並びにそれを含む有機溶媒分散体、コーティング組成物、塗膜 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097934
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】被覆二酸化チタン微粒子及びその製造方法並びにそれを含む有機溶媒分散体、コーティング組成物、塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/08 20060101AFI20230703BHJP
   C01G 23/053 20060101ALI20230703BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20230703BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230703BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230703BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C09C3/08
C01G23/053
C09D17/00
C09D7/62
C09D201/00
C09C1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214324
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】滝本 理人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
【テーマコード(参考)】
4G047
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CA05
4G047CB05
4G047CC03
4G047CD03
4G047CD07
4J037AA22
4J037AA24
4J037AA25
4J037AA30
4J037CB23
4J037CB30
4J037DD05
4J037DD07
4J037DD23
4J037FF02
4J038GA09
4J038HA166
4J038JC30
4J038JC35
4J038KA06
4J038KA08
4J038NA01
(57)【要約】
【課題】 二酸化チタン微粒子の有機溶媒への分散性を改善することができ、それにより二酸化チタン微粒子が持つ機能や性能を充分に発揮させることができる被覆二酸化チタン微粒子及びその製造方法を提供する。また、透明性、屈折性に優れた有機溶媒分散体や塗膜を提供する。
【解決手段】 スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面に、アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどの分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応物を被覆する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応物を、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面に被覆した、被覆二酸化チタン微粒子。
【請求項2】
前記二酸化チタン微粒子は更にアルミニウム成分を含有している、請求項1に記載の被覆二酸化チタン微粒子。
【請求項3】
前記スズ成分の含有量は、前記二酸化チタン微粒子の二酸化チタンに対して、酸化物換算[SnO/TiO]で0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の被覆二酸化チタン微粒子。
【請求項4】
前記スズ成分と、前記アルミニウム成分との合計の含有量が、前記二酸化チタン微粒子の二酸化チタンに対して、酸化物換算[(SnO+Al)/TiO]で1質量%以上15質量%以下である、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の被覆二酸化チタン微粒子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の被覆二酸化チタン微粒子と有機溶媒とを含む、被覆二酸化チタン微粒子の有機溶媒分散体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の被覆二酸化チタン微粒子又は請求項5に記載の被覆二酸化チタン微粒子の有機溶媒分散体と、バインダー樹脂とを含むコーティング組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の被覆二酸化チタン微粒子とバインダー樹脂とを含む塗膜。
【請求項8】
スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子と、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物とを溶媒中で混合して、前記のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、前記の分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応物を前記二酸化チタン微粒子の表面に被覆する、被覆二酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記のスズ成分を含有した二酸化チタン微粒子は、(オキシ)塩化チタンと塩化スズの混合物を加水分解するか、又は、塩化スズを加水分解して得た核粒子の存在下で(オキシ)塩化チタンを加水分解し、次いで、該加水分解後の生成物を250℃以上1000℃以下の温度で焼成する、請求項8に記載の被覆二酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項10】
スズ成分とアルミニウム成分を含有した二酸化チタン微粒子は、前記請求項9に記載の加水分解後の生成物を、アルミニウム化合物の存在下で250℃以上1000℃以下の温度で焼成する、請求項8に記載の被覆二酸化チタン微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆二酸化チタン微粒子及びその製造方法、並びにそれを含む有機溶媒分散体、コーティング組成物、塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタン微粒子は、可視光透過性、紫外線遮蔽性、高屈折率などの優れた特性を有する材料である。その特性を用いるには、通常、二酸化チタン微粒子を有機溶媒に分散させて有機溶媒分散体やコーティング組成物を作製し、これらを基材に塗布したり吹き付けたりして、二酸化チタン微粒子を含む塗膜を形成する。
【0003】
例えば、合成樹脂製レンズやフィルムなどの表面には、高い可視光透過性(透明性)と高屈折率を有するハードコートや紫外線遮蔽被膜などが設けられるが、これらを形成するために二酸化チタン微粒子が用いられる。また、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの表示面には、光源や顔の映り込み防止などの目的で反射防止膜が設けられるが、反射防止膜を構成する高屈折率層にも二酸化チタン微粒子が用いられる。
【0004】
二酸化チタン微粒子は有機溶媒に分散させたときに凝集し易く、その凝集した二酸化チタン微粒子が塗膜を形成したときに含まれていると可視光透過性などが低下する。このため、二酸化チタン微粒子を高度に分散した有機溶媒分散体やコーティング組成物が検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、アミノシランをアクリレート化合物と反応させて得られる生成物を、二酸化チタン微粒子の表面に被覆させることが記載されている。こうすると、二酸化チタン微粒子の有機溶媒中での分散性が良好で、透明性に優れた有機溶媒分散体やコーティング組成物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/182378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の被覆二酸化チタン微粒子によれば、高い屈折率を有し、且つ可視光透過性(透明性)が改善された塗膜を形成することができる。しかしながら、今日では、高屈折率の塗膜の用途が広がる中で、より高い透明性が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、二酸化チタン微粒子を含有した塗膜の透明性を改善するため鋭意検討したところ、被覆二酸化チタン微粒子として、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子を用いることが効果的であり、その二酸化チタン微粒子の表面に、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物とを反応させて得られる反応物を被覆すると、透明性の高い有機溶媒分散体が得られ、しかも、塗膜でも高い透明性が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応物を、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面に被覆した、被覆二酸化チタン微粒子、
(2) 前記二酸化チタン微粒子は更にアルミニウム成分を含有している、(1)に記載の被覆二酸化チタン微粒子、
(3) 前記スズ成分の含有量は、前記二酸化チタン微粒子の二酸化チタンに対して、酸化物換算[SnO/TiO]で0.5質量%以上10質量%以下である、(1)又は(2)に記載の被覆二酸化チタン微粒子、
(4) 前記スズ成分と、前記アルミニウム成分との合計の含有量が、前記二酸化チタン微粒子の二酸化チタンに対して、酸化物換算[(SnO+Al)/TiO]で1質量%以上15質量%以下である、(1)~(3)の何れかに記載の被覆二酸化チタン微粒子、
(5) (1)~(4)の何れかに記載の被覆二酸化チタン微粒子と有機溶媒とを含む、被覆二酸化チタン微粒子の有機溶媒分散体、
(6) (1)~(4)の何れかに記載の被覆二酸化チタン微粒子又は(5)に記載の被覆二酸化チタン微粒子の有機溶媒分散体と、バインダー樹脂とを含むコーティング組成物、
(7) (1)~(4)の何れかに記載の被覆二酸化チタン微粒子とバインダー樹脂とを含む塗膜、
(8) スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子と、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物とを溶媒中で混合して、前記のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、前記の分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応物を前記二酸化チタン微粒子の表面に被覆する、被覆二酸化チタン微粒子の製造方法、
(9) 前記のスズ成分を含有した二酸化チタン微粒子は、(オキシ)塩化チタンと塩化スズの混合物を加水分解するか、又は、塩化スズを加水分解して得た核粒子の存在下で(オキシ)塩化チタンを加水分解し、次いで、該加水分解後の生成物を250℃以上1000℃以下の温度で焼成する、(8)に記載の被覆二酸化チタン微粒子の製造方法、
(10) スズ成分とアルミニウム成分を含有した二酸化チタン微粒子は、前記(9)に記載の加水分解後の生成物を、アルミニウム化合物の存在下で250℃以上1000℃以下の温度で焼成する、(8)に記載の被覆二酸化チタン微粒子の製造方法、などである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二酸化チタン微粒子を有機溶媒に対してより高度に分散させることができ、透明性の高い分散体が得られる。この有機溶媒分散体を用いることで、可視光透過性(透明性)が高く、しかも高屈折率の塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】製造例2の二酸化チタン微粒子の電子顕微鏡写真である。
図2】製造例3の二酸化チタン微粒子のX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応物を、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面に被覆した被覆二酸化チタン微粒子である。
【0013】
二酸化チタン微粒子の平均一次粒子径は3nm以上200nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。このような平均一次粒子径を有する二酸化チタン微粒子は、平均一次粒子径がより大きな二酸化チタン粒子(例えば、顔料用途に用いられる平均一次粒子径が0.2~0.5μm程度の二酸化チタン粒子)に比べて可視光透過性が高い。従って、上記の平均一次粒子径を有する二酸化チタン微粒子を用いることで、より透過率の高い有機溶媒分散体を製造することができる。二酸化チタン微粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡下でランダムに選択した200個の粒子径を計測し、その粒子径の平均値として算出する(これを、本願では「電子顕微鏡写真法」とも称する)。
【0014】
二酸化チタン微粒子の比表面積は15m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましく、100m/g以上であることが更に好ましい。一方、二酸化チタン微粒子の比表面積は、300m/g以下であることが好ましく、200m/g以下であることがより好ましい。二酸化チタン微粒子の比表面積は、流動式比表面積自動測定装置(FlowSorbII 2300、島津製作所社製)を用いて窒素吸着法(BET法)により求めることができる。このような比表面積を有する二酸化チタン微粒子を用いることで、より可視光透過性(透明性)が高い有機溶剤分散体を製造することができる。
【0015】
二酸化チタン微粒子の形状は特に限定されず、球状、棒状、針状、紡錘状、板状などの任意の形状のものを用いることができる。球状以外の形状の場合の上記平均一次粒子径については、棒状、針状、紡錘状粒子の場合は短軸側の長さの平均で規定し、板状の場合は面の対角線長さの平均で規定する。
【0016】
二酸化チタン微粒子の結晶構造についても特に限定されず、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などのものを用いることができる。もっとも、ルチル型はアナターゼ型に比べて光触媒活性が低く、屈折率が高いことから、塗膜に高い耐光性、及び高屈折率をより効果的に持たせるためには、ルチル型結晶を有する二酸化チタン微粒子を用いることが好ましい。二酸化チタン微粒子の製造時にスズ成分を含有させると、好ましいルチル型二酸化チタンが生成し易い。二酸化チタン微粒子は、二酸化チタン(TiO)のほかに、メタチタン酸(TiO・nHO)、オルトチタン酸(Ti(OH))で表される化合物で構成されていてもよい。
【0017】
本発明の二酸化チタン微粒子には、スズ成分を含有しており、二酸化チタンの微粒子内部に含有していることが好ましく、二酸化チタン結晶に固溶していることがより好ましい。「固溶」とは、ある一つの結晶相の格子点にある原子が別の原子と置換するか、格子間隙に別の原子が入り込んだ相、すなわち、ある結晶相に他の物質が溶け込んだとみなされる混合相を有する状態であり、結晶相としては均一相である状態をいう。格子点にある溶媒原子が溶質原子と置換したものを置換型といい、格子間隙に溶質原子が入ったものを侵食型という。本明細書における「固溶」はこれらの何れの状態をも指す。固溶状態が置換型の場合、二酸化チタン微粒子の結晶格子のチタンサイトがスズ原子で置換される。固溶状態が浸入型の場合、二酸化チタン微粒子の結晶の格子間隙にスズ原子が入る。
【0018】
二酸化チタン微粒子にスズ成分が固溶されると、元素分析(蛍光X線分析やX線光電子分光法など)ではスズ成分が検出されるものの、X線回折などにより結晶相を測定した時に、酸化チタンの結晶相のピークのみが検出され、スズ原子由来の化合物のピークは検出されない。換言すれば、X線回折などにより結晶相を測定した際にスズ原子由来の化合物のピークが検出されない場合に、二酸化チタン粒子にスズ成分が固溶していると判断できる。
【0019】
スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子を用いると、スズ成分を含有していない二酸化チタン微粒子を用いた場合と比較して、有機溶媒分散体やコーティング組成物、ひいてはこれらを用いて形成した塗膜の可視光透過性(透明性)を向上させることができる。その理由は定かではないが、二酸化チタン微粒子にスズ成分を含有させることで、粗大粒子や、アスペクト比の大きな粒子などの存在量が小さくなり、その粒度分布改善効果が微粒子の分散性向上に寄与し、透明性を向上させると推測される。
【0020】
二酸化チタン微粒子におけるスズ成分の含有量は、二酸化チタン微粒子の二酸化チタンに対して、酸化物換算(SnO/TiO)で0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。スズ成分の含有量が0.5質量%以上であれば、上述の効果(可視光透過性の向上)を十分に確保することができる。一方で、スズ成分が10質量%を超えて含有しても、上述の効果の更なる向上は期待できないことから、前記範囲が好ましい。
【0021】
スズ成分を二酸化チタン粒子に含有させる方法は特に限定されないが、気相法(CVD法、PVD法など)、液相法(水熱法、ゾル・ゲル法、共沈殿法など)、固相法(高温焼成法)などの公知の方法を用いることができ、固溶させるには、前記の液相法や固相法を用いることができる。
【0022】
スズ成分を二酸化チタン粒子に含有させる方法として、塩化スズと(オキシ)塩化チタンの混合物を加水分解してもよく、また、塩化スズを加水分解して得た核粒子の存在下で(オキシ)塩化チタンを加水分解してもよい。(オキシ)塩化チタンとしては、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタンなどを用いることができる。中でも四塩化チタンが好ましい。(オキシ)塩化チタンとは、塩化チタン及び/又はオキシ塩化チタンのことを意味する。
【0023】
塩化スズと(オキシ)塩化チタンの混合物を加水分解するには、混合物を40℃以上110℃以下の温度で行うことが好ましく、60℃以上110℃以下の温度で行うことがより好ましく、80℃以上110℃以下の温度で行うことが更に好ましい。こうすると、スズ成分とチタン成分が同時期に加水分解し、共沈殿する。加水分解の時間は適宜設定することができる。
【0024】
核粒子の存在下で(オキシ)塩化チタンを加水分解する場合、核粒子としては、市販品を用いてもよいし、自ら合成してもよい。例えば、塩化スズ(例えば、SnCl)の塩酸水溶液を準備し、これを40℃以上80℃以下の温度で加熱することで、核粒子となるスズ化合物の微細粒子を得ることができる。次いで、この核粒子の存在下、(オキシ)塩化チタンの加水分解は、40℃以上110℃以下の温度で行うことが好ましく、60℃以上110℃以下の温度で行うことがより好ましく、80℃以上110℃以下の温度で行うことが更に好ましい。こうすると、スズ化合物の微細粒子を核として、(オキシ)塩化チタンを十分に加水分解できる。加水分解の時間は適宜設定することができる。
【0025】
上記の加水分解後の生成物を、必要に応じて濾過し洗浄し乾燥した後、250℃以上1000℃以下の温度で焼成すると、微細粒子が少なくでき、結晶性のよい二酸化チタン微粒子が得られることから好ましい。焼成の時間は適宜設定することができる。焼成することによって微細粒子が少なくなり結晶性がよくなると、二酸化チタン微粒子を含有する塗膜の屈折率を向上させる効果も期待できる。これは以下のような理由による。
【0026】
二酸化チタン微粒子を有機溶剤や塗料に分散させる際には、分散剤を用いることが通常である。一般に、より小さな粒子を分散させるためにはより多くの分散剤が必要となる。一方で、分散剤の添加量があまり多くなると、最終的に塗膜に含有される分散剤の量も多くなり、これが塗膜の屈折率を低下させることになる。この点で、上述のように、(オキシ)塩化チタンの加水分解後の生成物を焼成すれば、加水分解による粒子成長が十分でなかった一部の微細な粒子を、ある一定の大きさにまで成長させることができ、より少ない分散剤で二酸化チタン微粒子を有機溶媒分散体や塗料に分散させることができるので、塗膜の屈折率を向上させることが可能となる。
【0027】
本発明の二酸化チタン微粒子には、スズ成分に加えて、アルミニウム成分を含有していてもよく、二酸化チタンの微粒子内部に含有していることが好ましく、二酸化チタン結晶に固溶していることがより好ましい。二酸化チタン微粒子におけるアルミニウム成分の固溶状態や、固溶していることの確認方法は、上述したスズ成分の場合と同様である。アルミニウム成分を含有させることで、二酸化チタン粒子の光触媒活性を更に抑えることができる。その結果、この有機溶媒分散体を用いて形成した塗膜に、より高い耐光性を持たせることができる。
【0028】
二酸化チタン微粒子におけるアルミニウム成分の含有量は、二酸化チタン微粒子の二酸化チタンに対してAl換算で0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
二酸化チタン微粒子におけるスズ成分及びアルミニウム成分の含有量は、二酸化チタン微粒子の二酸化チタンに対して、酸化物換算((SnO+Al)/TiO)で1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。スズ成分及びアルミニウム成分の含有量が1質量%以上であれば、上述の効果(スズ成分による粗大粒子の低減、アルミニウム成分による耐光性など)を十分に確保することができる。一方で、これらの成分が15質量%を超えて含有されると、酸化チタン成分の含有比率が相対的に小さくなり、結果として、塗膜の屈折率が低下することが懸念されることから、上記範囲が好ましい。
【0030】
アルミニウム成分を二酸化チタン粒子に含有させる方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、(オキシ)塩化チタンと塩化スズの混合物を加水分解するか、塩化スズを加水分解して得た核粒子の存在下で(オキシ)塩化チタンを加水分解して得た生成物(加水分解後の生成物)に、アルミニウム化合物を処理する方法を用いてもよい。
【0031】
より具体的には、当該加水分解後の生成物を含む水溶液にアルミニウム化合物を添加し、酸又はアルカリを用いて中和することで、加水分解後の生成物の表面に水酸化アルミニウムを析出させることができる。更に、これを250℃以上1000℃以下の温度で焼成することで、スズ成分及びアルミニウム成分が含有(固溶)した二酸化チタン微粒子を得ることができる。焼成の時間は適宜設定することができる。
【0032】
本発明の二酸化チタン微粒子には、スズ成分及びアルミニウム成分に加えて、耐光性の向上や焼成時の粒子形状制御の目的で第三成分が固溶していてもよい。第三成分の具体例としては、Zn、Co、Nbなどが挙げられる。
【0033】
これらの第三成分の含有量は、二酸化チタン微粒子に含まれる二酸化チタンの量に対して、酸化物換算((SnO+Al+第三成分の酸化物)/TiO)で1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。このような含有量であれば、上述の効果(スズ成分による可視光透過性の向上、アルミニウム成分、第三成分によるによる耐光性など)を十分に確保しつつ、塗膜の屈折率の低下を抑制することができる。
【0034】
スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面に被覆される反応物は、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応で得られる。このような反応は、マイケル付加反応といい、分子内にC=C結合を一つ有するモノα,β-不飽和カルボニル化合物(すなわち、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物)に対してアミノ基を有する化合物を付加させる反応である。このようなことから、該反応物をマイケル付加物ということがある。該反応物は、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物にアミノ基を介してアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物が付加した化合物であると理解される。
【0035】
前記のマイケル付加反応は、アルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物が有するアミノ基(NH)のうち、アミノ基の水素が残らない反応、すなわちアミノ基の水素2個がα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物2モルに付加されてアミノ基の水素が残らない反応でもよいが、アミノ基の水素(NH)が残る反応、すなわちアミノ基の水素1個がα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物1モルに付加されアミノ基の水素1個が残る反応が好ましい。このため、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物のアミノ基をaモル、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物をbモルとすると、0.8≦a/b≦10となるようなモル比での反応が好ましく、1≦a/b≦10がより好ましく、1≦a/b≦8が更に好ましく、1≦a/b≦6が最も好ましい。
【0036】
アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、具体的に-C-Si(OH)のシラノール化合物、-C-Si(OR)のアルコキシシラン化合物、-C-Si(OR)R´3-xのアルキルアルコキシシラン化合物(xは1~3(すなわち、1以上3以下)の整数)などを含み、下記一般式(1)で示されるアルコキシ基などの加水分解性基を含むものがより好ましい。
一般式(1):
【0037】
【化1】
【0038】
上記一般式(1)中、xは1~3(すなわち、1以上3以下)の整数を表し、yは0~2(すなわち、0以上2以下)の整数を表し、zは0~1(すなわち、0又は1)の整数を表す。ただし、x+y+z=3である。R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4(すなわち、1以上4以下)のアルキル基を表す。
【0039】
アミノ基を有するアルコキシシラン化合物として、具体的には、アミノ基含有アルコキシシランやアミノ基含有ジ(アルコキシシラン)が挙げられ、前者としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(トリメトキシシリルプロピル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノプロピルトリエトキシシラン、2-(トリメトキシシリルプロピル)アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-(トリエトキシシリルプロピル)アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシランなどが例示される。また、後者としては、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンなどが例示され、それらの加水分解生成物を調製して用いることができる。
【0040】
分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物は、分子内に、C=C結合を一つ有するモノα,β-不飽和カルボニル化合物であれば、特に制限はなく、下記一般式(2)で示される骨格を有するものが好ましい。また、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物は、分子内に更にエーテル結合を有する化合物であることがより好ましく、エーテル結合を有する化合物として、重合数n=2~10(すなわち、2以上10以下)のエチレングリコール鎖、重合数n=2~10(すなわち、2以上10以下)のプロピレングリコール鎖又は5~6員環状基(すなわち、5又は6員環状基)を有する化合物がより好ましく、5~6員環状基を有する(メタ)アクリレート類又はアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類が更に好ましい。「(メタ)アクリレート」との表示は、アクリレート及び/又はメタクリレート(メタアクリレートと称することもある)を意味する。
一般式(2):
【0041】
【化2】
【0042】
上記一般式(2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~4(すなわち、1以上4以下)のアルキル基を表す。
【0043】
分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物としては、具体的に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの5~6員環状基を有する(メタ)アクリレート類;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの水酸基含有の(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどのN置換型(メタ)アクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリレート類;などが挙げられる。更に、上記したような化合物の他、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化マレイン酸変性ポリブタジエンなどが挙げられる。これらの中でも、5~6員環状基を有する(メタ)アクリレート類又はアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類が好ましく、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート又はメトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートが更に好ましく、更に好ましいものの中でも、アクリレートであるテトラヒドロフルフリルアクリレート(以下、「THF-A」と記載することもある)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(以下、「メトキシ-トリエチレングルコールアクリレート」又は「MTG-A」と記載することもある)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(以下、「130A」と記載することもある)又はメトキシジプロピレングリコールアクリレート(以下、「メトキシジプロピレングルコールアクリレート」又は「DPM-A」と記載することもある)が最も好ましい。
【0044】
上記マイケル付加物としては、例えば、以下のような一般式(3)の化学構造式を持つ化合物が挙げられる。
一般式(3):
【0045】
【化3】
【0046】
式中、R、R、R、R、x、y、zは上述の通りであり、pは1又は2であり、qは0又は1である。但し、p+q=2である。Rはエチレンオキシド重合部((CHCHO)CH)、又はプロピレンオキシド重合部(CHCHCHO)CH)であり、nは2以上10以下である。
【0047】
上記一般式(3)の具体例としては、以下のような化合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0048】
【化4】
【0049】
【化5】
【0050】
ここで、上記マイケル付加物は、異なるマイケル付加物のシラノール基同士が縮合、或いは重縮合した以下のような化合物を含んでいてもよい。
【0051】
【化6】
【0052】
前記の反応物(マイケル付加物)は、二酸化チタン微粒子の表面に吸着したり、析出したり、反応したりして、前記反応物若しくは、その反応物の一部分が変形した状態(例えば、アルコキシ基が分解し、アルコールと水酸基に分離し、水酸基によって微粒子に吸着した状態(-Si-OH)、該反応物が脱水縮合した状態などで、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面に存在している状態)で存在している。前記反応物(マイケル付加物)は、炭素数3~100(すなわち、3以上100以下)の低分子アルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物が好ましく、炭素数3~50(すなわち、3以上50以下)がより好ましく、炭素数3~40(すなわち、3以上40以下)が更に好ましい。
【0053】
前記反応物(マイケル付加物)の被覆は、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面の少なくとも一部に存在している状態であればよく、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子を有機溶媒に十分に分散させるためには、可能な限り緻密に被覆するのが好ましい。被覆量は、二酸化チタン微粒子100質量部に対して、0.1~50質量部(すなわち、0.1質量部以上50質量部以下)が好ましく、0.5~40質量部(すなわち、0.5質量部以上40質量部以下)がより好ましく、1~30質量部(すなわち、1質量部以上30質量部以下)が更に好ましい。
【0054】
次に、前記の被覆二酸化チタン微粒子を有機溶媒に分散した分散体について説明する。本願では、前記の被覆二酸化チタン微粒子を有機溶媒に分散した分散体を有機溶媒分散体と称するが、該有機溶媒は適宜選択することができ、具体的にはトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカンなどの炭化水素系溶媒;メタノール、EtOH(エタノール)、ブタノール、IPA(イソプロピルアルコール)、ノルマルプロピルアルコール、2-ブタノール、TBA(ターシャリーブタノール)、ブタンジオール、エチルヘキサノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)などのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ―ブチルラクトンなどのエステル系容媒;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)、ブチルカルビトールなどのエーテル系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール系溶媒;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、PGME(1-メトキシ-2-プロパノール、すなわちプロピレングリコールモノメチルエーテル)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどのグリコールエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル系溶媒;DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DEF(N,N-ジエチルホルムアミド)、DMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)、NMP(N-メチルピロリドン)などのアミド系溶媒;などから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの溶媒の中でも、アルコール系溶媒又はグリコールエーテル系溶媒を使用するのが好ましく、その中でも、メタノール、エタノール、ブタノール、IPA(イソプロピルアルコール)又はPGME(1-メトキシ-2-プロパノール、すなわちプロピレングリコールモノメチルエーテル)を使用するのが更に好ましい。被覆二酸化チタン微粒子の含有量は、有機溶媒の質量100質量部に対して、0.1~95質量部(すなわち、0.1質量部以上95質量部以下)が好ましく、10~90質量部(すなわち、10質量部以上90質量部以下)がより好ましく、15~90質量部(すなわち、15質量部以上90質量部以下)が更に好ましい。
【0055】
次に、前記の被覆二酸化チタン微粒子と、有機溶媒と、バインダー樹脂とを含むコーティング組成物、又は、前記の有機溶媒分散体と、バインダー樹脂とを含むコーティング組成物について説明する。有機溶媒としては前記のものを用いることができる。バインダー樹脂としては、どのような樹脂でも用いることができ、例えば、低極性非水溶媒に対する溶解型、エマルジョン型、コロイダルディスパージョン型などを制限なく用いることができる。また、樹脂種としては、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステルなどの各種変性ポリエステル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロース-アセテート-ブチレート(CAB)、セルロース-アセテート-プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。樹脂の配合量は、被覆二酸化チタン微粒子100重量部に対し0.5~100質量部程度の範囲が好ましく、より好ましい範囲は1~50質量部程度であり、2~25質量部程度であれば更に好ましい。
【0056】
バインダー樹脂として具体的には、例えばアロニックス(登録商標)シリーズのB-309、B-310、M-430、M-406、M-460、M-1100(東亞合成社製);ライトアクリレート(登録商標)シリーズのMTG-A、DPM-A、THF-A、IB-XA、HOA-HH(N)、1,6HX-A、1,9ND-A、PE-3A、PE-4A(共栄社化学社製);エポライト(商品名)シリーズの40E、4000、3002(N)(共栄社化学社製);NKエステル(登録商標)シリーズのA-TMM-3、A-9550、A-DPH(新中村化学社製);KAYARAD(登録商標)シリーズのDPHA、DPEA-12、DPCA-60(日本化薬社製)などが挙げられる。
【0057】
前記の有機溶媒分散体又はコーティング組成物は、基材上に塗布又はスプレーして二酸化チタン微粒子の層とし、必要に応じて硬化することができる。可視光透過性(透明性)の高い塗膜を形成することができ、ハードコート、高屈折率層、紫外線遮蔽層として用いることができる。基材は特に制限はなく、ガラス、プラスチック、セラミック、金属などを用いることができる。膜厚などは適宜設定することができる。
【0058】
被覆二酸化チタン微粒子は、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の存在下、好ましくはスズ成分を含有した二酸化チタン微粒子を含む有機溶媒の存在下において、予め調製したマイケル付加物(アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応物)を混合して、その反応物(マイケル付加物)をスズ成分が含有した二酸化チタン微粒子の表面に被覆させることができる。この混合は、室温で混合し撹拌するだけでもよいが、熱をかけると被覆はより早く進行する。室温から150℃の範囲で10分から20時間で行うのが好ましい。分散させながら混合すると被覆は更に進行するので好ましい。分散させながら行う際には、公知の分散機を使用することができる。具体的には、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機などが挙げられる。被覆は、反応物が有するアルコキシ基を加水分解することによっても進行するが、この加水分解反応に一定量の水分が必要であり、アルコキシシランの加水分解性基に対して0.5~1.5当量(すなわち、0.5当量以上1.5当量以下)添加する。また、加水分解反応を促進させるために、触媒として酸やアルカリを添加してもよい。このようにして、被覆二酸化チタン微粒子を製造できるとともに、被覆二酸化チタン微粒子を有機溶媒に分散した分散体も製造することができる。
【0059】
また、別の方法として、スズを含有した二酸化チタン微粒子と、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物とを溶媒中で混合することで、被覆二酸化チタン微粒子を得ることもできる。溶媒には有機溶媒や水性溶媒を用いることができる。この方法における混合は、前記と同じように室温で混合し撹拌するだけでもよいが、熱をかけると反応はより早く進行する。室温から150℃の範囲で10分から20時間で行うのが好ましい。分散させながら混合すると被覆は更に進行するので好ましい。分散させながら行う際には、公知の分散機を使用することができる。具体的には、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機などが挙げられる。被覆は、反応物が有するアルコキシ基を加水分解することによっても進行するが、この加水分解反応に一定量の水分が必要であり、アルコキシシランの加水分解性基に対して0.5~1.5当量(すなわち、0.5当量以上1.5当量以下)添加する。また、加水分解反応を促進させるために、触媒として酸やアルカリを添加してもよい。このようにして、被覆二酸化チタン微粒子を製造できるとともに、被覆二酸化チタン微粒子を有機溶媒に分散した分散体も製造することができる。
【0060】
また、被覆二酸化チタン微粒子と前記の有機溶媒とバインダー樹脂とを混合したり、前記の有機溶媒分散体にバインダー樹脂を混合したりして、コーティング組成物を製造することができる。また、被覆二酸化チタン微粒子とバインダー樹脂とを混合したり、前記の有機溶媒を含有したコーティング組成物を製造した後に有機溶媒を除去したりして無溶剤型のコーティング組成物を製造することができる。混合工程では、例えば、上述のディゾルバーや高速撹拌機を用いるのが好ましい。本発明の有機溶媒分散体は高い可視光透過性を有するので、この有機溶剤分散体を用いたコーティング剤組成物を用いることで、透明性の高い塗膜を形成することができる。
【0061】
コーティング組成物に用いられるバインダー樹脂としては、コーティング組成物より得られる塗膜の安定性、高屈折率、及び可視光透過性(透明性)が確保される限り、特に限定されない。バインダー樹脂としては、例えばアルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂などを使用することができる。また、ポリエステル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂なども使用することができる。更に、各種のアクリル酸系モノマー、アクリレート系モノマーも適用可能である。バインダー樹脂として特に好ましい樹脂、モノマーとしては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル酸系モノマー、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
更に、コーティング組成物は、バインダー樹脂以外に各種の添加剤を配合してもよい。具体的には、分散剤、顔料、充填剤、骨材、増粘剤、フローコントロール剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、硬化用触媒などを配合することができる。
【0063】
本発明の有機溶媒分散体又はコーティング組成物を基材に塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は焼成することで、基材上に塗膜を形成することができる。基材は特に限定されず、ガラス、ポリマー、セラミック、金属などの種々の材質を用いることができる。塗布方法は特に制限されず、公知の方法を使用することが可能である。例えば、スピンコーター、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法、LB(ラングミュア-ブロジェット)膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法が挙げられる。
【0064】
乾燥方法、焼成方法についても特に制限なく、公知の方法が用いられる。例えば、常圧下や減圧下での加熱乾燥、自然乾燥などが挙げられる。加熱乾燥、焼成における加熱方法としても特に限定されず、例えば、ホットプレート、オーブンなどの装置を用いて加熱する方法が挙げられる。乾燥温度は80~150℃程度が好ましく、焼成温度は150~400℃程度が好ましい。
【0065】
塗膜の厚みは用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、0.005μm~100μm(0.005μm以上100μm以下)であることが好ましく、0.05μm~50μm(0.05μm以上50μm以下)がより好ましい。塗膜の可視光透過率はヘーズとしてヘーズメーターにて測定することができ、膜厚にも影響されるが、ヘーズは5%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、1.5%以下が更に好ましい。また、塗膜の屈折率は、被膜を高屈折率層として用いるには1.60以上が好ましく、1.80以上が好ましい。屈折率はエリプソメトリーによって測定して算出することができる。
【0066】
基材に形成した塗膜は、多層に積層してもよい。多層に積層する場合、各層は同質の塗膜であってもよいし、異なる塗膜の組合せでもよい。また、基材上に上記高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層することで、基材上に反射防止膜を形成することができる。反射防止膜は、上記高屈折率層を含む限りどのような構成としてもよく、例えば、基材上に、高屈折率層と、低屈折率層とをこの順で有する反射防止膜であってもよいし、基材上に、低屈折率層と、高屈折率層と、低屈折率層とをこの順で有する反射防止膜であってもよい。このような層構成において、各層の膜厚及び屈折率を調整することにより、所望の反射防止膜を設計することができる。
【実施例0067】
以下に実施例と比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
〔製造例1〕
TiOに換算して192.7g相当の四塩化チタン水溶液を用意した。一方で、SnOに換算して1.93gの四塩化スズと塩酸(35%)14.4gとを純水に溶解して1Lとした。この四塩化スズ水溶液を撹拌しながら60℃に加熱し、四塩化スズを加水分解して微細な核粒子を得た。この核粒子を含む溶液に前記の四塩化チタン水溶液を添加し、その後、100℃に加熱し1時間維持して、四塩化チタンを加水分解して生成物を得た。この生成物を含む溶液を70℃まで冷却しながら水酸化ナトリウムで溶液のpHを7.0に中和した。次いでAlに換算して15.4gのアルミン酸ナトリウム水溶液を添加し、更に硫酸でpH5.5となるまで中和することで、生成物の粒子表面に水酸化アルミニウムを析出させた。このスラリーを濾過洗浄して固形分を回収し、150℃で乾燥して、スズ成分を含有し、且つ水酸化アルミニウムで被覆した二酸化チタン微粒子を得た。
【0069】
前記の二酸化チタン微粒子を電気炉で600℃で1時間焼成し、製造例1のスズ成分とアルミニウム成分とが固溶した二酸化チタン微粒子を得た。
【0070】
〔製造例2〕
製造例1において、四塩化スズ水溶液に含まれる四塩化スズの量をSnOに換算して5.8gに変更したこと、アルミン酸ナトリウムの添加量をAlに換算して12gに変更したこと以外は同様にして、製造例2のスズ成分とアルミニウム成分とが固溶した二酸化チタン微粒子を得た。この二酸化チタン微粒子の電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0071】
〔製造例3〕
製造例1において電気炉での焼成温度を400℃に変更したこと以外は同様にして、製造例3のスズ成分とアルミニウム成分とが固溶した二酸化チタン微粒子を得た。
【0072】
<評価1:結晶型>
製造例1~3の二酸化チタン微粒子を試料として、X線回折装置(UltimaIV、リガク社製)を用いて、X線管球:Cukα、管電圧:40kV、管電流:40mA、発散スリット:1/2°、散乱スリット:8mm、受光スリット:開放、サンプリング幅:0.020度、走査速度:10.00度/分の条件でX線回折スペクトルを測定した。参考までに、製造例3のX線回折スペクトルを図2に示す。図2に示されているように、製造例3の二酸化チタン微粒子では、ルチル型二酸化チタンに対応するピークが検出される一方で、酸化スズや酸化アルミニウムに対応するピークは検出されないことが分かった。このことは、製造例1、2の試料においても同様であった(図示は省略)。
【0073】
<評価2:元素分析>
製造例1~3の二酸化チタン微粒子の粉末を圧成型にてペレット状の測定試料とし、蛍光X線分析装置(ZSX PrimusIV、リガク社製)にて全元素オーダー(半定量)分析を行い、TiO、SnO、Alの質量比を求めた。測定結果を表1に示す。
【0074】
<評価3:BET比表面積>
製造例1~3の二酸化チタン微粒子の粉末について、流動式比表面積自動測定装置(FlowSorbII 2300、島津製作所社製)を用いて、窒素吸着法(BET法)によりBET比表面積(m/g)を求めた。このとき、脱離は窒素ガス流通下、室温の温度条件で行い、吸着は77Kの温度条件で行った。測定結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
〔実施例1〕
3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-903、以下「KBM-903」と記載)1.026gと、メトキシジプロピレングルコールアクリレート(共栄社化学社製:ライトアクリレート(商標登録)DPM-A、以下「DPM-A」と記載)0.926gと、メチルエチルケトン(以下「MEK」と記載)とエタノール(以下「EtOH」と記載)を質量比で1:1とした混合溶媒20.29gとを混合し、得られた溶液に対して、製造例1の二酸化チタン微粒子9.76gと、0.05mmジルコニアビーズ100gとを入れ、ビーズミルで分散処理した。ビーズ除去後、遠心分離を行い、上澄みを回収し、実施例1の有機溶媒分散体を得た。
【0077】
〔実施例2〕
実施例1において、二酸化チタン微粒子を製造例2のものに変更したこと以外は同様にして、実施例2の有機溶媒分散体を得た。
【0078】
〔実施例3〕
実施例1において、二酸化チタン微粒子を製造例2のものに変更するとともに、有機溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下「PGME」と記載)に変更したこと以外は同様にして、実施例3の有機溶媒分散体を得た。
【0079】
〔実施例4〕
KBM-903を1.109gと、メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製:ライトアクリレート(商標登録)130A、以下「130A」と記載)を0.995gと、MEKとEtOHを質量比で1:1とした混合溶媒21.48gとを混合し、得られた溶液に対して、製造例3の二酸化チタン微粒子8.416gと、0.05mmジルコニアビーズ100gとを入れ、ビーズミルで分散処理した。ビーズ除去後、遠心分離を行い、上澄みを回収し、実施例4の有機溶媒分散体を得た。
【0080】
〔比較例1〕
KBM-903を1.370gと、130Aを1.230gと、MEKとEtOHを重量比で1:1とした混合溶媒19.00gとを混合し、得られた溶液に対して、スズ成分を含まない市販の二酸化チタン微粒子(石原産業社製:TTO-51(N))10.40gと、0.05mmジルコニアビーズ100gとを入れ、ビーズミルで分散処理した。ビーズ除去後、遠心分離を行い、上澄みを回収し、比較例1の有機溶媒分散体を得た。
【0081】
〔比較例2〕
実施例2において、DPM-Aの添加を省略したこと以外は同様にして、比較例2の有機溶媒分散体を得た。
【0082】
<評価4:分散体の透過率>
分光光度計(日本分光社製:V-770、石英セル厚さ1mm)を用いて、分散体の二酸化チタン微粒子の濃度を12g/Lに調整して分散体の透過率を測定した。分散体の二酸化チタン微粒子の濃度は800℃での加熱残分より求めた。測定波長は420nmと可視光を用い、可視光の場合は平均透過率で表す。結果を表2に示す。
【0083】
〔塗料の調製〕
実施例1~4、及び比較例1、2で得た二酸化チタン微粒子を含む有機溶媒分散体に対し、全固形分に対する二酸化チタン微粒子濃度が63質量%となるよう、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製:KAYARAD(登録商標) DPHA)を混合し、Omnirad(登録商標)-907を前記DPHAに対して5質量%添加して硬化性コーティング組成物を調製した。
【0084】
〔塗膜の作製〕
上記の硬化性コーティング組成物を適宜PGMEで希釈してガラス基板に塗布し、110℃で3分間、予備乾燥した後、高圧水銀灯を照射して硬化させて塗膜を作製した。尚、塗膜は各実施例及び比較例の硬化性コーティング組成物ごとに、膜厚の異なる3種類の塗膜を作製した。
【0085】
<評価5:塗膜のヘーズ及び屈折率>
ヘーズメーター(COH-7700 日本電色工業社製)を用いて、上記の塗膜のヘーズを測定した。また、塗膜の膜厚及び測定波長589nmでの屈折率を、エリプソメーター(SmartSE 堀場製作所製)を用いて測定した。膜厚とヘーズをプロットし、直線近似で膜厚3μmのヘーズを算出した。結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

*評価不能とは塗料が直ちに固化(ゲル化)してコーティング不可能であったことを示す。
【0087】
実施例1~4の有機溶剤分散体に含まれる二酸化チタン微粒子は、何れもスズ成分が固溶しており、且つ、二酸化チタン微粒子の粒子表面に、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物(KBM-903)と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(DPM-A又は130A)との反応物が被覆されていることを確認した。このような実施例1~4の有機溶剤分散体は、可視光の平均透過率や、波長420nmでの透過率が、比較例の有機溶媒分散体と比べて何れも高いことから、二酸化チタン微粒子に固溶したスズ成分や、粒子表面を被覆した前記反応物が、有機溶媒分散体の透明性向上に寄与していることが分かる。
【0088】
また、実施例1~4の有機溶媒分散体を用いて作製した塗膜では、比較例の塗膜と比較して、屈折率を十分に高い値に維持したまま、ヘーズが低く、目視での塗膜の透明性も大きく向上していた。二酸化チタン微粒子に固溶したスズ成分や、粒子表面を被覆した前記反応物が、塗膜の透明性向上にも寄与していることが分かる。
【0089】
加えて、実施例1~4の二酸化チタン微粒子には、スズ成分や、第三成分としてのアルミニウム成分が固溶されているが、比較例と比べても、これらの成分によって、二酸化チタンの屈折能(ひいては、これを含む塗膜の屈折率)が阻害されていないことが分かる。これは、スズ成分やアルミニウム成分の総含有量が、二酸化チタン成分に対して比較的少ない量に制御されているためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、スズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面にアミノ基を有するアルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物と、分子内に一つのα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物との反応物をスズ成分を含有した二酸化チタン微粒子の表面に被覆した被覆二酸化チタン微粒子であって、二酸化チタン微粒子の有機溶媒への分散性を十分に改善することができ、それにより二酸化チタン微粒子が持つ機能や性能を十分に発揮させることができる。また、得られた被覆二酸化チタン微粒子の有機溶媒分散体や塗膜は透明性、屈折性に優れたものである。
図1
図2