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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097938
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】車載装置および姿勢変換方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/16 20060101AFI20230703BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20230703BHJP
【FI】
G01C21/16
G01P15/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214335
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 昭弘
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB22
2F129BB26
2F129BB39
2F129BB48
(57)【要約】
【課題】車両に任意の姿勢で取り付けられているセンサから得られる第1のセンサ情報を、センサが車両に所定の姿勢で取り付けられたときの第2のセンサ情報に変換し得る車載装置を提供する。
【解決手段】センサから得られた加速度情報の重力成分から重力方向の加速度情報を学習する第1の学習部と、第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、センサから得られた加速度情報とから、車両の進行方向の加速度情報を学習する第2の学習部と、第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、第2の学習部により学習された進行方向の加速度情報とを用いて、センサから得られる第1の加速度情報を車載装置が車両に所定の姿勢で取り付けられたときの第2の加速度情報に変換するための姿勢変換パラメータを算出する算出部と、を設けるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に搭載されたセンサとともに車両に任意の姿勢で取り付けられ、当該任意の姿勢で取り付けられたときに前記センサから得られる第1のセンサ情報を、前記車両に所定の姿勢で取り付けられたときの第2のセンサ情報に変換する車載装置であって、
前記センサは、加速度情報を取得し、
前記センサから得られた加速度情報の重力成分から重力方向の加速度情報を学習する第1の学習部と、
前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、前記センサから得られた加速度情報とから、前記車両の進行方向の加速度情報を学習する第2の学習部と、
前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、前記第2の学習部により学習された進行方向の加速度情報とを用いて、前記センサから得られる第1の加速度情報を前記車載装置が前記車両に前記所定の姿勢で取り付けられたときの第2の加速度情報に変換するための姿勢変換パラメータを算出する算出部と、
を備える車載装置。
【請求項2】
前記センサは、3つの軸が互いに直交する3方向の加速度情報を取得可能であり、
前記算出部は、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報の単位ベクトルεと、前記第2の学習部により学習された進行方向の加速度情報の単位ベクトルεとを用いて、姿勢変換パラメータとして回転行列[ε ε×ε εを算出する、
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記センサは、3つの軸が互いに直交する3方向の角速度情報を取得可能であり、加速度情報を取得するための3つの軸と角速度情報を取得するための3つの軸とが一致している、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記第1の学習部は、前記車両の速度が一定速度であり、かつ、前記車両が旋回していない場合に、前記センサから得られた加速度情報の重力成分から重力方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項5】
前記第2の学習部は、前記車両が加速中であり、かつ、前記車両が旋回していない場合に、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、前記センサから得られた加速度情報とから、前記車両の進行方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項6】
前記第2の学習部は、前記車両が減速中であり、かつ、前記車両が旋回していない場合に、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、前記センサから得られた加速度情報とから、前記車両の進行方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項7】
前記第2の学習部は、
前記車両が加速中であり、かつ、前記車両が旋回していない場合に、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報のベクトルを、前記センサから得られた加速度情報のベクトルから引いた相対ベクトルから、前記車両の進行方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習し、
前記車両が減速中であり、かつ、前記車両が旋回していない場合に、前記センサにより取得された加速度情報のベクトルの正負を反転し、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報のベクトルを、正負を反転した加速度情報のベクトルから引いた相対ベクトルから、前記車両の進行方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項8】
車載装置とともに車両に任意の姿勢で取り付けられているときにセンサから得られる第1のセンサ情報を、前記車両に所定の姿勢で取り付けられたときの第2のセンサ情報に変換する姿勢変換方法であって、
前記センサが、加速度情報を取得することと、
第1の学習部が、前記センサから得られた加速度情報の重力成分から重力方向の加速度情報を学習することと、
第2の学習部が、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、前記センサから得られた加速度情報とから、前記車両の進行方向の加速度情報を学習することと、
算出部が、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、前記第2の学習部により学習された進行方向の加速度情報とを用いて、前記センサから得られる第1の加速度情報を前記車載装置が前記車両に前記所定の姿勢で取り付けられたときの第2の加速度情報に変換するための姿勢変換パラメータを算出することと、
を含む姿勢変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両に取り付けられたセンサのセンサ情報を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーションシステムを含むIVI(In-Vehicle Infotainment)、ECU(Electronic Control Unit)等の車載装置において、車両の位置姿勢推定は、重要な機能の1つである。その機能を実現するためには、車両の挙動を観測するためのデバイスとして、加速度センサ、角速度センサ等が使用される。近年、センサとしては、6自由度(加速度3軸、角速度3軸)以上のセンサが使われるようになっている。車両の挙動としてセンサを利用する際、車両とセンサとの姿勢関係を示すパラメータが既知である必要があり、指定された姿勢でセンサを車両に取り付けなければならない。しかしながら、指定された姿勢でセンサを車両に取り付ける作業は繊細な作業であり、センサが車両に適切に取り付けられない場合がある。
【0003】
この点、車両に対して前後方向に傾いていたとしても、その傾き角を検出して車両のピッチ角を正確に検出することができるカーナビゲーション装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-20207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、車両の左右方向に傾いてセンサが取り付けられてしまった場合、センサで取得されたセンサ情報が正しく使用されなくなってしまう。
【0006】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、車両に任意の姿勢で取り付けられているセンサから得られる第1のセンサ情報を、センサが車両に所定の姿勢で取り付けられたときの第2のセンサ情報に変換し得る車載装置等を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、内部に搭載されたセンサとともに車両に任意の姿勢で取り付けられ、当該任意の姿勢で取り付けられたときに前記センサから得られる第1のセンサ情報を、前記車両に所定の姿勢で取り付けられたときの第2のセンサ情報に変換する車載装置であって、前記センサは、加速度情報を取得し、前記センサから得られた加速度情報の重力成分から重力方向の加速度情報を学習する第1の学習部と、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、前記センサから得られた加速度情報とから、前記車両の進行方向の加速度情報を学習する第2の学習部と、前記第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、前記第2の学習部により学習された進行方向の加速度情報とを用いて、前記センサから得られる第1の加速度情報を前記車載装置が前記車両に前記所定の姿勢で取り付けられたときの第2の加速度情報に変換するための姿勢変換パラメータを算出する算出部と、を設けるようにした。
【0008】
上記構成によれば、姿勢変換パラメータによりセンサ情報の姿勢変換が行われるので、センサの取り付け姿勢の制限がなくなり、例えば、センサの設置者は、センサを任意の姿勢で車両に取り付けることができる。また、上記構成では、重力方向の加速度情報と進行方向の加速度情報とが学習される、つまり姿勢変換パラメータが学習されるので、例えば、センサの取り付け姿勢によって正しい加速度情報が得られない事態を低減することができる。また、各学習部は、例えば、車両がユーザに渡った後であっても、車両が普通に道路を走行する際に通常発生する特定のタイミングで自動的に学習を行なうことができるので(例えば、第1の学習部は、車両が一定速度で走行中または停止中であり、かつ、旋回していないときに学習を行なうことができ、第2の学習部は、車両が加速中または減速中であり、かつ、旋回していないときに学習を行なうことができる。)、車載装置の取り付け作業者による事前作業は必要なくなり、また、車載装置の取り付け姿勢が変えられても、いつでも再学習が可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサの取り付け姿勢の制限をなくすための車載装置を実現することができる。上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態による車載装置の一例を示す図である。
図2】第1の実施の形態による車載装置に係る構成の一例を示す図である。
図3】第1の実施の形態による姿勢変換パラメータ学習部に係る構成の一例を示す図である。
図4】第1の実施の形態による算出ブロックを説明するための図である。
図5】第1の実施の形態による第1の学習処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
図6】第1の実施の形態による第2の学習処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(I)第1の実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。ただし、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施の形態に係る車載装置は、車両に任意の姿勢で取り付けられているときにセンサから得られる第1のセンサ情報を、センサが車両に所定の姿勢で取り付けられたときの第2のセンサ情報に変換する。所定の姿勢は、例えば、水平方向0度、走行方向0度、傾き20度等、取り付け姿勢が制限された従来の取り付け姿勢であってもよいし、予め指定された取り付け姿勢であってもよい。ここで、取り付け対象のセンサには、加速度情報を取得する加速度センサが含まれている。
【0013】
例えば、車載装置は、センサから得られた加速度情報の重力成分から重力方向の加速度情報を学習する。この際、車載装置は、加速度情報を学習しやすくするために、加速度情報を一定の規則に基づいて加工(正規化等)してもよいし、車両が停止している等、所定の条件を満たす場合に学習するようにしてもよい。また、車載装置は、学習した重力方向の加速度情報と、センサから得られた加速度情報とから、車両の進行方向の加速度情報を学習する。この際、車載装置は、加速度情報を学習しやすくするために、正規化等してもよいし、車両が直進して加速している等、所定の条件を満たす場合に学習するようにしてもよい。また、車載装置は、学習した重力方向の加速度情報と、学習した進行方向の加速度情報とを用いて、センサから得られる第1の加速度情報をセンサが車両に所定の姿勢で取り付けられたときの第2の加速度情報に変換するための姿勢変換パラメータを算出する。
【0014】
上記構成では、姿勢変換パラメータを車両の挙動から学習することにより、センサをどのような姿勢でも固定できるようになる。これにより、例えば、センサの設置者は、取り付け姿勢を気にすることなく、センサを車両に取り付けることができるとともに、センサの性能を維持できる。
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。なお、以下の説明では、図面において同一要素については、同じ番号を付し、説明を適宜省略する。
【0016】
また、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は、文脈毎に用いられ、1つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0017】
図1は、第1の実施の形態による車載装置100の一例を示す図である。
【0018】
車載装置100は、任意の姿勢で車両101に取り付けられる。車載装置200に固定されたセンサ120は、車両101の挙動を観測するためのデバイス(センサ)として、加速度センサを含んで構成される。また、センサ120には、角速度センサ等、他のセンサが含まれていてもよい。以下では、センサ120には、加速度センサと角速度センサとが含まれている構成を例に挙げて説明する。なお、車両101については、自動車を例に挙げて説明するが、自動車に限らない。
【0019】
図2は、図1に示したセンサ120が含まれる車載装置100に係る構成の一例を示す図である。
【0020】
図1の車載装置100の一例である車載装置200は、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ210と、6DoF(Six Degrees of Freedom)センサ220と、コンピュータ230と、位置姿勢使用部240とを含んで構成される。
【0021】
GNSSレシーバ210は、衛星測位システムの電波を受信して車両101の位置を計測可能(位置情報を取得可能)な機器である。
【0022】
6DoFセンサ220は、図1のセンサ120の一例であり、3軸の加速度と3軸の角速度とを計測可能なセンサである。例えば、6DoFセンサ220は、加速度センサの3軸が互いに直交し、角速度センサの3軸が互いに直交し、加速度センサの3軸と角速度センサの3軸とが一致している6自由度の慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。以下では、加速度センサの3軸と角速度センサの3軸とが一致し、かつ、右手系座標系で構成されているものを前提として説明する。ただし、6DoFセンサ220は、単一のセンサを同様に配置する構成(例えば、一軸のセンサを3つ直交にした構成)であってもよいし、多軸が合成されて同様の変換がされている構成(例えば、8軸の加速度センサであった場合、出力が直交3軸である構成)であってもよい。付言するならば、6DoFセンサ220は、アナログ出力であってもよいし、デジタル出力であってもよい。
【0023】
コンピュータ230は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶装置とを含んで構成される。コンピュータ230の機能(姿勢変換部231、姿勢変換パラメータ学習部232、位置姿勢推定部233等)は、例えば、CPUがROMに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。なお、コンピュータ230の1つの機能は、複数の機能に分けられていてもよいし、複数の機能は、1つの機能にまとめられていてもよい。また、コンピュータ230の機能の一部は、別の機能として設けられてもよいし、他の機能に含められていてもよい。
【0024】
姿勢変換部231は、6DoFセンサ220により取得された加速度情報および角速度情報を、6DoFセンサ220を基準にしたフレーム(センサフレーム)から車両101を基準にしたフレーム(車両フレーム)への姿勢変換のための姿勢変換パラメータを用いて位置姿勢推定部233が必要とする車両101の加速度情報および角速度情報に変換する。
【0025】
姿勢変換パラメータ学習部232は、6DoFセンサ220により取得された加速度情報および角速度情報、並びに、車両101の速度情報を用いて、姿勢変換パラメータを学習する。なお、姿勢変換パラメータについては、車両101の出荷直後、工場内での組み立て完了後等、車両101が使われるようになったタイミングから学習し続けられてよい。なお、車両101の速度情報は、例えば、図示は省略する車速センサにより取得され、車載装置200に入力される。
【0026】
位置姿勢推定部233は、GNSSレシーバ210からの位置情報と、姿勢変換部231からの車両101の加速度情報および角速度情報と、車両101の速度情報とを入力する。位置姿勢推定部233は、姿勢変換パラメータ学習部232により学習された姿勢変換パラメータを用いて、入力した情報から車両101の位置および姿勢を推定し、位置姿勢使用部240に出力する。
【0027】
位置姿勢使用部240は、IVI、ECU等、車両101の位置および/または姿勢を使用する1以上のアプリケーションソフトウェアまたは1以上の装置である。
【0028】
コンピュータ230は、電源が投入されてから、サンプリングレートごとに、6DoFセンサ220からセンサ情報をとり続けている。コンピュータ230は、6DoFセンサ220から得られたセンサ情報が所定の条件を満たした場合、姿勢変換パラメータを学習し、当該センサ情報が所定の条件を満たさない場合、姿勢変換パラメータを学習しない。コンピュータ230は、姿勢変換パラメータを学習した場合、当該姿勢変換パラメータを使って動作し、姿勢変換パラメータを学習しなかった場合、過去の姿勢変換パラメータ(例えば、直近に学習された姿勢変換パラメータ)を使って動作する。
【0029】
なお、車載装置200には、GNSSレシーバ210と、6DoFセンサ220と、位置姿勢使用部240とのうち少なくとも1つの構成要素が含まれることなく、含まれない構成要素が車両101における別の車載装置に含まれていてもよい。また、コンピュータ230は、ECUであってもよいし、6DoFセンサ220に含まれていてもよいし、位置姿勢使用部240に含まれていてもよい。
【0030】
図3は、姿勢変換パラメータ学習部232に係る構成の一例を示す図である。
【0031】
姿勢変換パラメータ学習部232は、重量方向単位ベクトル学習部310と、進行方向単位ベクトル学習部320と、姿勢変換パラメータ算出部330と、を含んで構成される。
【0032】
重量方向単位ベクトル学習部310は、第1の学習部の一例であり、重力方向に対して6DoFセンサ220がどの程度傾いて取り付けられているのかを学習(推定)する。重量方向単位ベクトル学習部310は、例えば、車両101が一定速度で走行中または停止中であり、かつ車両101が旋回していないと判断されるとき、6DoFセンサ220の加速度センサにより検出された加速度情報(例えば、加速度ベクトル)に現れる重力成分から、重力方向の単位ベクトルを学習する。
【0033】
進行方向単位ベクトル学習部320は、第2の学習部の一例であり、車両101の進行方向に対して6DoFセンサ220がどの程度ずれて取り付けられているのかを学習する。進行方向単位ベクトル学習部320は、例えば、車両101に加速度が発生し(車両101が加速中または減速中であり)、かつ、車両101が旋回していないと判断されるとき、加速度センサの過去値(例えば、重力方向の加速度情報)と現在値(6DoFセンサ220により検出された加速度情報)との差分を進行方向成分とし、進行方向の単位ベクトルを学習する。
【0034】
姿勢変換パラメータ算出部330は、算出部の一例であり、重量方向単位ベクトル学習部310により学習された重力方向の単位ベクトルと、進行方向単位ベクトル学習部320により学習された進行方向の単位ベクトルとから、姿勢変換パラメータとして回転行列を算出する。
【0035】
図4は、姿勢変換パラメータの算出に係る算出ブロック400を説明するための図である。
【0036】
まず、姿勢変換パラメータの算出に用いるパラメータを説明する。図4に示すΣCARは、車両101前方をX軸の正方向、車両101上方をZ軸の正方向にとった右手系フレームを示す。なお、車両101の左右方向(幅方向)をY軸とする。ΣSENSORは、任意に取り付けられた6DoFセンサ220の右手系フレームを示す。ΣGROUNDは、理想地面401の接線方向(例えば、理想地面401に投影された車両101の進行方向の単位ベクトル)をX軸とし、重力方向(例えば、重力加速度gの単位ベクトル)をZ軸にとった右手系フレームを示す。
【0037】
εは、重力方向の加速度を示す単位ベクトルを示す。εは、車両101の進行方向の加速度を示す単位ベクトルを示す。 Rは、行列Rの添字表現(フレームAから見たフレームBの姿勢行列の表現)を示す。v、ベクトルvの添字表現(フレームA上で定義される任意のベクトルの表現)を示す。また、行列R、ベクトルvの様に、右上の添字表現のTは、それぞれ、行列R、ベクトルvの転置であることを示す。
【0038】
次に、姿勢変換パラメータを算出するアルゴリズムについて説明する。ここで、姿勢変換パラメータの算出において以下の(問題a)が考えられる。
(問題a)
6DoFセンサ220を任意の姿勢で取り付けたときに、6DoFセンサ220の検出軸に現れるセンサフレーム上の検出値を車両フレーム上の検出値として表せること
【0039】
例えば、6DoFセンサ220のセンサフレーム上のベクトルをaとし、これが、車両フレーム上から見たベクトルaに写像されるとする場合、車両フレームから見たセンサフレームの姿勢行列を用いて以下の(式1)が成立する。
a= a ・・・(式1)
【0040】
したがって、(問題a)は、以下の(問題a’)に置き換えることができる。
(問題a’)
車両フレームから見たセンサフレームの姿勢の写像である変換行列 Rを求めること
【0041】
ここで、センサフレームと車両フレームとが直交3軸の右手系のフレームであるとすると、 Rは、回転行列である。
【0042】
直進加速中の条件下において、車両101の加速度の加速方向を正とする車両101から見た単位ベクトルをεとし、6DoFセンサ220から見た単位ベクトルをεとする。また、水平面上に車両101があるとき、すなわち、ΣCAR=ΣGROUNDの条件下において、重力加速度の加速方向を正(地球地面の上方法線)とする車両101から見た単位ベクトルをεとし、6DoFセンサ220から見た単位ベクトルをεとする。この場合、(式1)より、以下の(式2)および(式3)が成り立つ。
ε ε ・・・(式2)
ε ε ・・・(式3)
【0043】
ここで、ε=[1 0 0]であり、ε=[0 0 1]である。回転行列の特性とフレームのすべての軸が直交している仮定とを用いると、以下のように変形できる。
ε ε×ε ε]= R[ε ε×ε ε
I= R[ε ε×ε ε
R=[ε ε×ε ε
【0044】
即ち、以下の2つのベクトルを導出することで、 Rを一意に導出できる。つまり、姿勢変換パラメータを算出するアルゴリズムは、算出ブロック400のようになる。
水平面上の条件下における重力加速度のセンサフレームから見た単位ベクトルε
直進加速中の条件下における車両加速度のセンサフレームから見た単位ベクトルε
【0045】
付言するならば、取り付け対象のセンサ120は、6DoFセンサ220に限らない。取り付け対象のセンサ120は、3つの軸が互いに直交する3方向の加速度情報を取得可能な加速度センサであってもよい。この場合、算出部は、第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報の単位ベクトルεと、第2の学習部により学習された進行方向の加速度情報の単位ベクトルεとを用いて、姿勢変換パラメータとして回転行列[ε ε×ε εを算出する。
上記構成では、センサ120により取得される加速度情報が3つの軸が互いに直交する3方向の加速度情報であるので、重力方向の単位ベクトルと進行方向の単位ベクトルとを算出することで姿勢変換パラメータを算出することができる。
【0046】
また、取り付け対象の上記センサ120は、3つの軸が互いに直交する3方向の角速度情報を取得可能な角速度センサを含んでいてもよい。この場合、加速度情報の3つの軸と角速度情報の3つの軸とが一致しているものとする。
上記構成では、センサ120により取得される角速度情報が3つの軸が互いに直交する3方向の角速度情報であり、かつ、加速度情報の3つの軸と角速度情報の3つの軸とが一致しているので、角速度情報の姿勢変換パラメータとして加速度情報の姿勢変換パラメータと同じ回転行列を用いることができる。また、上記構成によれば、例えば、回転行列が学習されるので、センサ120の取り付け姿勢により正しい角速度情報が得られない事態を低減することができる。
【0047】
図5は、重力方向の単位ベクトルを学習する処理(第1の学習処理)に係るフローチャートの一例を示す図である。第1の学習処理では、車載装置200は、車両101が一定速度(停止を含む。)であり、かつ、車両101が旋回していない場合に、重力方向の単位ベクトルを学習している。
【0048】
S501では、車載装置200は、車両101の速度情報の微分の絶対値(加減速量)を計算する。
【0049】
S502では、車載装置200は、加減速量が閾値を超えたか否かを判定する。車載装置200は、加減速量が閾値を超えたと判定した場合、第1の学習処理を終了し、加減速量が閾値を超えていないと判定した場合、S503に処理を移す。車両101が加減速していると、6DoFセンサ220の出力が揺れる。つまり、どれが真値の重力方向のベクトルであったかが分からなくなるので、一定速度を学習の条件とすることが好適である。
【0050】
S503では、車載装置200は、6DoFセンサ220により取得された角速度情報の角速度成分の二乗和平方根(RMS:Root Mean Square)を計算する。以下では、RMSを旋回量と記す。なお、車載装置200は、旋回量に代えて、S603において後述するように、横方向加速度量を計算して用いてもよい。
【0051】
S504では、車載装置200は、旋回量が閾値を超えたか否かを判定する。車載装置200は、旋回量が閾値を超えたと判定した場合、第1の学習処理を終了し、旋回量が閾値を超えていないと判定した場合、S505に処理を移す。車両101が旋回していると、車両101の横方向のベクトルが生じてしまい、合成角になってしまう。つまり、真値に近づき難いので、車両101が旋回していないことを学習の条件とすることが好適である。
【0052】
S505では、車載装置200は、重力方向の単位ベクトルを学習する。車載装置200は、6DoFセンサ220の加速度ベクトルの正規化値を入力とし、前学習値との差分により収束させる。収束フィルタ(制御器)は、本実施の形態では、学習ゲインK(<1)として説明するが、ウイナーフィルタ、カルマンフィルタ、アダプティブフィルタ等を用いてもよい。
【0053】
例えば、車載装置200は、6DoFセンサ220の加速度ベクトルを向きが同じで長さが「1」のベクトルに変換(例えば、累積平均フィルタで正規化)し、以下の(式4)より現在の学習値を算出する。
現在の学習値
=前回の学習値+学習ゲインK(今回のセンサ値-前回の学習値) ・・・(式4)
【0054】
このように、車載装置200は、車両101の速度情報を入力する入力部を備え、第1の学習部は、入力部により入力された速度情報から車両101の進行方向の加速度または減速度が閾値を超えたか否かを判定する。また、第1の学習部は、6DoFセンサ220により取得された角速度情報をもとに車両101が旋回しているか否かを判定する。また、第1の学習部は、車両101の進行方向の加速度または減速度が閾値を超えていないと判定し、かつ、車両101が旋回していないと判定した場合に、6DoFセンサ220から得られた加速度情報の重力成分から重力方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する。
上記構成では、例えば、重力方向への影響が小さい場合に、重力方向の単位ベクトルεが学習されるので、当該学習の収束を速めることができる。
【0055】
図6は、進行方向の単位ベクトルを学習する処理(第2の学習処理)に係るフローチャートの一例を示す図である。第2の学習処理は、車両101が加速中または減速中で横方向にコリオリ力が発生していないとき(車両101が向心加速していないとき)に現れる6DoFセンサ220の加速度センサの3軸成分の変化を進行方向のベクトルとし、進行方向の単位ベクトルを学習している。
【0056】
S601では、車載装置200は、車両101の速度情報の微分の絶対値(加減速量)を計算する。
【0057】
S602では、車載装置200は、加減速量が閾値を超えたか否かを判定する。車載装置200は、加減速量が閾値を超えたと判定した場合、S603に処理を移し、加減速量が閾値を超えていないと判定した場合、第2の学習処理を終了する。
【0058】
S603では、車載装置200は、6DoFセンサ220の角速度センサの角速度情報のベクトルと重力方向の単位ベクトル(学習値)との内積に車両101の速度を掛けた値の絶対値(横方向加速度量)を計算する。
【0059】
S604では、車載装置200は、横方向加速度量が閾値を超えたか否かを判定する。車載装置200は、横方向加速度量が閾値を超えたと判定した場合、第2の学習処理を終了し、横方向加速度量が閾値を超えていないと判定した場合、S605に処理を移す。
【0060】
なお、車載装置200は、S603およびS604の処理に代えて、S503およびS604の処理を行ってもよい。
【0061】
S605では、車載装置200は、進行方向の単位ベクトルを学習する。例えば、車載装置200は、前回の重力方向の単位ベクトルを方向ベクトルとして加速度に単位変換する。重力方向の単位ベクトルは、正規化されているが、加速度センサのベクトルは、正規化されていないので、車載装置200は、重力方向の単位ベクトルを加速度の次元にする(単位の次元を合わせている)。車載装置200は、単位変換した方向ベクトルと、現在の加速度ベクトルとの差分(相対ベクトル)を求める。続いて、車載装置200は、相対ベクトルを正規化し、減速時と加速時とのベクトルの方向をそろえるため、正規化したベクトルを、車両101の速度の微分値の符号で、減速時については正負を反転する。続いて、車載装置200は、正規化して符号を揃えたベクトルを入力とし、前回の進行方向の単位ベクトル(前回の学習値)との差分により収束させる。収束フィルタ(制御器)は、本実施の形態では、一般的な学習ゲインKで構成されているとするが、ウイナーフィルタ、カルマンフィルタ、アダプティブフィルタ等を用いてもよい。
【0062】
なお、第2の学習処理は、上述の処理に限らない。例えば、車載装置200は、重力方向の単位ベクトル(学習値)の単位変換値に対する現在の加速度ベクトルとの相対ベクトルを、加速時のときはそのまま、減速時のときは正負を反転し、方向をそろえた相対ベクトルを正規化し、上記(式4)より現在の学習値を算出してもよい。
【0063】
このように、車載装置200は、車両101の速度情報を取得する入力部を備え、第2の学習部は、入力部により入力された速度情報から車両101の進行方向の加速度が閾値を超えたか否かを判定する。また、第2の学習部は、入力部により入力された速度情報から車両101の進行方向の減速度が閾値を超えたか否かを判定する。また、第2の学習部は、6DoFセンサ220により取得された角速度情報をもとに車両101が旋回しているか否かを判定する。また、第2の学習部は、車両101の進行方向の加速度が閾値を超えたと判定し、かつ、車両101が旋回していないと判定した場合、第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報のベクトルを、6DoFセンサ220から得られた加速度情報のベクトルから引いた相対ベクトルを用いて、車両101の進行方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する。また、第2の学習部は、車両101の進行方向の減速度が閾値を超えたと判定し、かつ、車両101が旋回していないと判定した場合、6DoFセンサ220により取得された加速度情報の正負を反転し、第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報のベクトルを、正負を反転した加速度情報のベクトルから引いた相対ベクトルを用いて、車両101の進行方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する。
上記構成によれば、例えば、車両101の加速時の加速度情報と、車両101の減速時の加速度情報とが用いられて進行方向の単位ベクトルεが学習されるので、当該学習の収束を速めることができる。
【0064】
ここで、第2の学習処理では、加速時および減速時の何れのタイミングにおいても、進行方向の単位ベクトルを学習する場合について説明したが、加速時と減速時との何れか一方のタイミングにおいて、進行方向の単位ベクトルを学習するようにしてもよい。
【0065】
例えば、第2の学習部は、車両101の進行方向の加速度が閾値を超えたと判定し、かつ、車両101の横方向の加速度が閾値を超えていないと判定した場合に、第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、6DoFセンサ220から得られた加速度情報とから、車両101の進行方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する。
上記構成では、例えば、進行方向の加速度が大きく、かつ、横方向への影響が小さい場合に、進行方向の単位ベクトルεが学習されるので、当該学習の収束を速めることができる。
【0066】
また、例えば、第2の学習部は、車両101の進行方向の減速度が閾値を超えたと判定し、かつ、車両101の横方向の加速度が閾値を超えていないと判定した場合に、第1の学習部により学習された重力方向の加速度情報と、6DoFセンサ220から得られた加速度情報とから、車両101の進行方向の加速度情報の単位ベクトルεを学習する。
上記構成では、例えば、進行方向の減速度が大きく、かつ、横方向への影響が小さい場合に、進行方向の単位ベクトルεが学習されるので、当該学習の収束を速めることができる。
【0067】
(II)付記
上述の実施の形態には、例えば、以下のような内容が含まれる。
【0068】
上述の実施の形態においては、本発明を車載装置に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々のシステム、装置、方法、プログラムに広く適用することができる。
【0069】
また、上述の実施の形態において、プログラムの一部またはすべては、プログラムソースから、車載装置を実現するコンピュータのような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、ネットワークで接続されたプログラム配布サーバまたはコンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。また、上述の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0070】
また、上記の説明において、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0071】
また上述した構成については、本発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み替えたり、組み合わせたり、省略したりしてもよい。
【0072】
「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式におけるリストに含まれる項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができると理解されたい。同様に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」の形式においてリストされた項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができる。
【符号の説明】
【0073】
100、200……車載装置、101……車両、120……センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6