(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097943
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】磁気特徴検出装置及び紙葉類識別装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20230703BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20230703BHJP
G07D 7/04 20160101ALI20230703BHJP
【FI】
G01R33/02 Q
G01R33/09
G07D7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214343
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川戸 良昭
(72)【発明者】
【氏名】近森 雅文
(72)【発明者】
【氏名】仙石 知之
(72)【発明者】
【氏名】上山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】林 正明
【テーマコード(参考)】
2G017
3E041
【Fターム(参考)】
2G017AA08
2G017AA10
2G017AC06
2G017AC09
2G017AD55
2G017BA15
2G017BA18
3E041AA01
3E041AA02
3E041BB07
3E041EA01
(57)【要約】
【課題】検出感度及び空間分解能の向上を両立させることができ、製造が容易な磁気特徴検出装置及び紙葉類識別装置を提供する。
【解決手段】搬送される紙葉類の磁気特徴を検出する磁気特徴検出装置であって、磁場を逆転して交互に配置された複数の磁石と、複数の前記磁石と、搬送される紙葉類との間に設けられて、複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の磁場が逆転する領域の磁界を検出する感磁素子と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙葉類の磁気特徴を検出する磁気特徴検出装置であって、
磁場を逆転して交互に配置された複数の磁石と、
複数の前記磁石と、搬送される紙葉類との間に設けられて、複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の磁場が逆転する領域の磁界を検出する感磁素子と、
を備える
ことを特徴とする磁気特徴検出装置。
【請求項2】
前記磁石は、一対の磁極を結ぶ軸が紙葉類と直交するように配置されており、
複数の前記磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が入れ替わるように配置され、
前記感磁素子は、複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項3】
複数の前記磁石は、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に磁場が逆転して交互に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項4】
前記搬送幅方向に配置された複数の前記磁石から構成される磁石アレイを前記搬送方向に複数備え、
異なる前記磁石アレイ間において、複数の前記磁石の前記搬送幅方向における位置は一致しており、
異なる前記磁石アレイに含まれる前記搬送幅方向における位置が一致する複数の前記磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が同じである
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項5】
前記搬送幅方向に配置された複数の前記磁石から構成される磁石アレイを前記搬送方向に複数備え、
異なる前記磁石アレイ間において、複数の前記磁石の前記搬送幅方向における位置は一致しており、
異なる前記磁石アレイに含まれる前記搬送幅方向における位置が一致する複数の前記磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が入れ替わる
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項6】
前記感磁素子は、前記搬送幅方向に配置された複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項7】
前記感磁素子は、異なる前記磁石アレイに含まれる前記搬送幅方向における位置が一致する複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項8】
前記感磁素子を複数備え、
前記複数の感磁素子は、前記搬送幅方向に配置された複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されている感磁素子と、前記搬送方向に配置された複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されている感磁素子と、を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項9】
複数の前記磁石は、紙葉類の搬送方向に配置され、
前記搬送方向に配置された複数の磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が入れ替わる
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項10】
前記搬送方向に配置された一対の前記磁石から構成される磁石対を、紙葉類と平行な方向であって前記搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に複数備え、
異なる前記磁石対間において、一対の前記磁石の前記搬送方向における位置は一致しており、
複数の前記磁石対に含まれる前記搬送方向における位置が一致する複数の前記磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が同じである
ことを特徴とする請求項9に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項11】
紙葉類に対向する側の磁極が入れ替わるように配置された複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間に配置された補助磁石を更に備え、
前記補助磁石は、一対の磁極を結ぶ軸が、紙葉類と平行な方向に配置されており、
前記補助磁石の一対の磁極と、前記補助磁石の隣に配置された前記2つの磁石の紙葉類に対向する側の磁極とは、前記補助磁石の隣に配置された前記2つの磁石が並ぶ方向において交互に入れ替わる
ことを特徴とする請求項2~10のいずれかに記載の磁気特徴検出装置。
【請求項12】
前記補助磁石の隣に配置された前記2つの磁石が並ぶ方向は、前記搬送方向である
請求項11に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項13】
前記磁石は、一対の磁極を結ぶ軸が、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に向くように配置されており、
複数の前記磁石は、前記搬送幅方向に、一対の磁極が交互に入れ替わるように配置され、
前記感磁素子は、複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心からずれた位置に重なるように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気特徴検出装置。
【請求項14】
前記感磁素子は、磁気抵抗効果素子である
ことを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の磁気特徴検出装置。
【請求項15】
複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石は接触していない
ことを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の磁気特徴検出装置。
【請求項16】
前記磁気特徴は、磁気モーメントの分布であり、
前記磁気モーメントの分布は、紙葉類に含まれる磁性体パターンの、紙葉類の搬送方向における両端部の磁気モーメントと、前記磁性体パターンの前記両端部に挟まれた部分の磁気モーメントと、を含む
ことを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の磁気特徴検出装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の磁気特徴検出装置と、
前記感磁素子の出力に基づいて、搬送される紙葉類を識別する制御部と、
を備える
ことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項18】
前記感磁素子は、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に複数設けられ、
前記制御部は、複数の前記感磁素子の出力に基づいて、磁気モーメントの分布に対応した画像データを生成する
ことを特徴とする請求項17に記載の紙葉類識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気特徴検出装置及び紙葉類識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣等の紙葉類を処理する紙葉類処理装置は、光学ラインセンサや磁気ラインセンサといった各種センサを有する紙葉類識別装置を備え、これらのセンサによる取得データに基づいて、紙葉類の搬送過程において、紙葉類の種類の識別や、正損判定、真偽判定等を行っている。
【0003】
紙葉類の磁気検出については通常、磁気ラインセンサが用いられる。
磁気ラインセンサでは、磁気ラインセンサが備える磁石によって紙葉類中の磁性体を一様に着磁し、着磁された磁性体による磁場変化を感磁素子により検出することで、紙葉類を識別することが行われていた。
【0004】
磁気ラインセンサは、一般的には微分出力であるため、磁石によって紙葉類の磁性体を一様に着磁した場合、磁気ラインセンサは、着磁された紙葉類の磁性体パターンの周縁部、すなわちエッジ部分における磁束の変化を検出できるものの、エッジ部分以外の磁束変化が小さい領域を検出できないという問題があった。
そのため、磁性体パターンが紙葉類全体に配置されている場合や、磁性体パターンがコードのないバー状や複雑な形状を成している場合、磁性体パターンの磁気特徴がグラデーション状に変化する場合等には、磁性体パターンの磁束の変化を充分に検出できないことがあった。また、磁気ラインセンサの出力変化が、紙葉類のエッジ部分に起因する磁束の変化によるのか、ノイズによるものであるかを判別することが困難であった。これらの理由から、磁性体パターンが多様化する近年では磁気特徴による紙葉類の真偽判定が難しくなっている。
そこで、エッジ部分のみならずエッジ部分以外の磁気特徴を検出する方法が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、複数の磁石を磁極逆転して交互に並べて配置し、前記磁石のNS方向を法線とし、前記磁石のN極とS極の中点を含む平面上に感磁素子を配置した磁界検出装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された磁界検出装置では、磁石と感磁素子とを、同一平面上に交互に配置している。換言すると、磁石と感磁素子が同じ高さに存在するため、磁着の大きさの確保と、感磁素子の配置密度を高めることを両立させることが困難であった。
磁石の大きさが充分に確保できないと、紙葉類を充分に着磁することができず、紙葉類の磁気特徴の検出が困難となる。また、感磁素子の配置密度が低いと、磁気ラインセンサの空間分解能が低下してしまう。
さらに、特許文献1に記載された磁界検出装置では、感磁素子と磁石とを交互に配列させる必要があるが、感磁素子を固定しつつ強力な磁石を配列させるという複雑な工程が要求され、製造が困難であるという問題があった。また、磁石-感磁素子間の距離を均一に調整することが難しく、磁石-感磁素子間の距離がばらつくと、感磁素子間で特性がばらついてしまうという問題があった。
【0008】
本開示は、上記現状に鑑みてなされたものであり、検出感度及び空間分解能の向上を両立させることができ、製造が容易な磁気特徴検出装置及び紙葉類識別装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、(1)本開示の第1の態様に係る磁気特徴検出装置は、搬送される紙葉類の磁気特徴を検出する磁気特徴検出装置であって、磁場を逆転して交互に配置された複数の磁石と、複数の前記磁石と、搬送される紙葉類との間に設けられて、複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の磁場が逆転する領域の磁界を検出する感磁素子と、を備える。
【0010】
(2)上記(1)に記載の磁気特徴検出装置において、前記磁石は、一対の磁極を結ぶ軸が紙葉類と直交するように配置されており、複数の前記磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が入れ替わるように配置され、前記感磁素子は、複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されていてもよい。
【0011】
(3)上記(2)に記載の磁気特徴検出装置において、複数の前記磁石は、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に磁場が逆転して交互に配置されていてもよい。
【0012】
(4)上記(3)に記載の磁気特徴検出装置において、前記搬送幅方向に配置された複数の前記磁石から構成される磁石アレイを前記搬送方向に複数備え、異なる前記磁石アレイ間において、複数の前記磁石の前記搬送幅方向における位置は一致しており、異なる前記磁石アレイに含まれる前記搬送幅方向における位置が一致する複数の前記磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が同じであってもよい。
【0013】
(5)上記(3)に記載の磁気特徴検出装置において、前記搬送幅方向に配置された複数の前記磁石から構成される磁石アレイを前記搬送方向に複数備え、異なる前記磁石アレイ間において、複数の前記磁石の前記搬送幅方向における位置は一致しており、異なる前記磁石アレイに含まれる前記搬送幅方向における位置が一致する複数の前記磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が入れ替わっていてもよい。
【0014】
(6)上記(5)に記載の磁気特徴検出装置において、前記感磁素子は、前記搬送幅方向に配置された複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されていてもよい。
【0015】
(7)上記(5)に記載の磁気特徴検出装置において、前記感磁素子は、異なる前記磁石アレイに含まれる前記搬送幅方向における位置が一致する複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されていてもよい。
【0016】
(8)上記(5)に記載の磁気特徴検出装置において、前記感磁素子を複数備え、前記複数の感磁素子は、前記搬送幅方向に配置された複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されている感磁素子と、前記搬送方向に配置された複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるように配置されている感磁素子と、を含んでいてもよい。
【0017】
(9)上記(2)に記載の磁気特徴検出装置において、複数の前記磁石は、紙葉類の搬送方向に配置され、前記搬送方向に配置された複数の磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が入れ替わっていてもよい。
【0018】
(10)上記(9)に記載の磁気特徴検出装置において、前記搬送方向に配置された一対の前記磁石から構成される磁石対を、紙葉類と平行な方向であって前記搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に複数備え、異なる前記磁石対間において、一対の前記磁石の前記搬送方向における位置は一致しており、複数の前記磁石対に含まれる前記搬送方向における位置が一致する複数の前記磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が同じであってもよい。
【0019】
(11)上記(2)~(10)のいずれかに記載の磁気特徴検出装置において、紙葉類に対向する側の磁極が入れ替わるように配置された複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間に配置された補助磁石を更に備え、前記補助磁石は、一対の磁極を結ぶ軸が、紙葉類と平行な方向に配置されており、前記補助磁石の一対の磁極と、前記補助磁石の隣に配置された前記2つの磁石の紙葉類に対向する側の磁極とは、前記補助磁石の隣に配置された前記2つの磁石が並ぶ方向において交互に入れ替わっていてもよい。
【0020】
(12)上記(11)に記載の磁気特徴検出装置において、前記補助磁石の隣に配置された前記2つの磁石が並ぶ方向は、前記搬送方向であってもよい。
【0021】
(13)上記(1)に記載の磁気特徴検出装置において、前記磁石は、一対の磁極を結ぶ軸が、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に向くように配置されており、複数の前記磁石は、前記搬送幅方向に、一対の磁極が交互に入れ替わるように配置され、前記感磁素子は、複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心からずれた位置に重なるように配置されていてもよい。
【0022】
(14)上記(1)~(13)のいずれかに記載の磁気特徴検出装置において、前記感磁素子は、磁気抵抗効果素子であってもよい。
【0023】
(15)上記(1)~(14)のいずれかに記載の磁気特徴検出装置において、複数の前記磁石のうちの隣り合う2つの磁石は接触していなくてもよい。
【0024】
(16)上記(1)~(15)のいずれかに記載の磁気特徴検出装置において、前記磁気特徴は、磁気モーメントの分布であり、前記磁気モーメントの分布は、紙葉類に含まれる磁性体パターンの、紙葉類の搬送方向における両端部の磁気モーメントと、前記磁性体パターンの前記両端部に挟まれた部分の磁気モーメントと、を含んでいてもよい。
【0025】
(17)本開示の第2の態様に係る紙葉類識別装置は、上記(1)~(16)のいずれかに記載の磁気特徴検出装置と、前記感磁素子の出力に基づいて、搬送される紙葉類を識別する制御部と、を備える。
【0026】
(18)上記(17)に記載の紙葉類識別装置において、前記感磁素子は、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に複数設けられ、前記制御部は、複数の前記感磁素子の出力に基づいて、磁気モーメントの分布に対応した画像データを生成してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、検出感度及び空間分解能の向上を両立させることができ、製造が容易な磁気特徴検出装置及び紙葉類識別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る磁気特徴検出装置の構成の一例を説明する模式図であり、斜め方向から見た図である。
【
図2】
図2は、
図1を紙葉類が搬送される側の面から見た図である。
【
図3】
図3は、
図1を紙葉類が搬送される面に平行で且つ2つの磁石が並ぶ方向に直交する方向から見た図である。
【
図4】
図4は、
図1を紙葉類が搬送される面に平行で且つ2つの磁石が並ぶ方向に平行な方向から見た図である。
【
図5】
図5は、
図3における磁力線の向きを模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す紙葉類の磁性体パターンが着磁されることにより生じる磁力線を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、磁石により生じる磁力線と、紙葉類を構成する磁性体パターンにより生じる磁力線の両方を併記した図である。
【
図9】
図9は、
図7において紙葉類をx方向に搬送した場合に、紙葉類の磁性体パターンが着磁される領域を模式的に示した図である。
【
図10-1】
図10-1は、
図7において紙葉類をy方向に搬送し、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中央に紙葉類の搬送方向の先端が重なる時点における、紙葉類の磁性体パターンが着磁される領域を模式的に示した図である。
【
図10-2】
図10-2は、
図7において紙葉類をy方向に搬送し、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中央に紙葉類の搬送方向の中央が重なる時点における、紙葉類の磁性体パターンが着磁される領域を模式的に示した図である。
【
図10-3】
図10-3は、
図7において紙葉類をy方向に搬送し、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中央に紙葉類が搬送方向の後端が重なる時点における、紙葉類の磁性体パターンが着磁される領域を模式的に示した図である。
【
図11】
図11は、比較例の磁気特徴検出装置の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、
図11に示す磁気特徴検出装置における磁力線の様子を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す磁気特徴検出装置により着磁される紙葉類を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、従来の方法で着磁された
図13に示す紙葉類を検出した感磁素子のセンサ出力と、本開示の磁気特徴検出装置を構成する磁石により着磁された
図8に示す紙葉類を検出した感磁素子のセンサ出力とを比較した図である。
【
図15】
図15は、磁気センサパッケージの一例を模式的に示す平面図である。
【
図16】
図16は、実装基板に直接実装される感磁素子の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図17】
図17は、
図16に示す感磁素子を実装基板上に実装する様子の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図18】
図18は、本開示の第2実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
【
図19】
図19は、本開示の第3実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
【
図20】
図20は、本開示の第3実施形態に係る磁気特徴検出装置の変形例を+z方向側から見た図である。
【
図22】
図22は、本開示の第4実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
【
図23】
図23は、本開示の第4実施形態に係る磁気特徴検出装置の変形例を+z方向側から見た図である。
【
図25】
図25は、本開示の第5実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
【
図26】
図26は、本開示の第6実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
【
図27】
図27は、本開示の第7実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
【
図28】
図28は、本開示の第7実施形態に係る磁気特徴検出装置の変形例を+z方向側から見た図である。
【
図30】
図30は、本開示の第8実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
【
図31】
図31は、本開示の第9実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
【
図33】
図33は、本開示の第10実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を感磁素子側から見た図である。
【
図37】
図37は、
図36に示す紙葉類の磁性体パターンから生じる磁力線を模式的に示す図である。
【
図38】
図38は、本開示の実施形態11に係る磁気特徴検出装置の一例を感磁素子側から見た図である。
【
図39】
図39は、本開示の実施形態12に係る磁気特徴検出装置の外観の一例を示す斜視図である。
【
図41】
図41は、本開示の第2の態様である紙葉類識別装置の構成の一例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示に係る磁気特徴検出装置及び紙葉類識別装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。本開示の対象となる紙葉類としては、紙幣、小切手、商品券、手形、帳票、有価証券、カード状媒体等の様々な紙葉類が適用可能である。なお、以下の説明は、磁気特徴検出装置及び紙葉類識別装置の一例である。
【0030】
なお、以下の説明において、同一又は同様の機能を有する構成には同一の符号を異なる実施形態及び図面間で共通して適宜用い、その構成についての繰り返しの説明は適宜省略する。また、構造を説明する図面には、互いに直交するxyz座標系を適宜示している。
【0031】
<本実施形態の概要>
まず、
図1~
図4を用いて、本開示の磁気特徴検出装置における磁石及び感磁素子の配置について説明する。
【0032】
図1は、本開示の第1実施形態に係る磁気特徴検出装置の構成の一例を説明する模式図であり、斜め方向から見た図である。
図2は、
図1を紙葉類が搬送される側の面から見た図である。
図3は、
図1を紙葉類が搬送される面に平行で且つ2つの磁石が並ぶ方向に直交する方向から見た図である。
図4は、
図1を紙葉類が搬送される面に平行で且つ2つの磁石が並ぶ方向に平行な方向から見た図である。なお、
図3及び
図4では、搬送される紙葉類の位置を模式的に示している。
【0033】
図1に示すように、磁気特徴検出装置1は、2つの磁石(磁石10a、磁石10b)と、1つの感磁素子25を有し、搬送される紙葉類(図示しない)の磁気特徴を検出する。
感磁素子25は、磁束を検出する検出部(図示しない)を備えている。なお、感磁素子25は、所定の一軸方向(
図1においてはy方向)の磁束を検出することができる異方性の感磁素子である。ただし、
図1に示す感磁素子25は、x方向やz方向の磁束を検出できるものであってもよい。
【0034】
磁石10a及び磁石10bは、x方向、y方向、及びz方向に所定の寸法を有する直方体形状を有していてもよい。2つの磁石10a及び磁石10bは、y方向に並んで配置されていてもよい。
【0035】
図2及び
図3に示すように、感磁素子25は磁石10a及び磁石10bと重なっていない。ただし、感磁素子25は磁石10a及び/又は磁石10bと重なっていてもよい。
【0036】
図3及び
図4に示すように、紙葉類は、感磁素子25を介して磁石10a及び磁石10bと対向するように搬送されてもよい。この場合、感磁素子25は、磁石10a及び磁石10bと、搬送される紙葉類との間に設けられる。
磁石10aと磁石10bは、磁場を逆転して交互に配置されている。ここで、「複数の磁石が磁場を逆転して交互 に配置される」とは、隣り合う磁石においてN 極とS 極とが交互に入れ替わって配置されることを示す。なお、磁場を逆転して交互に配置される磁石の数は3つ以上であってもよい。磁場を逆転して交互に配置される磁石の数は3つ以上である場合の例については後述する。
感磁素子25は、磁石10aと磁石10b間の磁場が逆転する領域の磁界を検出することができる位置に設けられている。
なお、
図1には、感磁素子25が検出できる磁界の方向、すなわち磁界検出方向を両矢印で示している。
図1に示すように、感磁素子25が検出できる磁界の方向はy方向である。
【0037】
本開示の磁気特徴検出装置では、磁場を逆転して交互に配置された複数の磁石と、搬送される紙葉類との間に、複数の磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の磁場が逆転する領域の磁界を検出する感磁素子が設けられている。換言すると、感磁素子は、隣り合う磁石の間ではなく、複数の磁石よりも紙葉類側に設けられている。そのため、隣り合う2つの磁石の間に感磁素子を配置する特許文献1と比較して、磁石の体積を大きくして、検出感度を向上させることができる。また、感磁素子と紙葉類との距離を近づけることで検出感度を向上させることができる。
さらに、隣り合う磁石の間に感磁素子を設けないことで、感磁素子の配置密度を向上させて空間分解能を向上させることができる。
加えて、本開示の磁気特徴検出装置は、磁石よりも紙葉類側に感磁素子を設けるため、磁石を配列する工程と、感磁素子を配列する工程とを個別に実施することが可能となる。換言すると、磁気特徴検出装置を製造する際に、感磁素子を固定しつつ強力な磁石を配列させるという複雑な工程が不要となり、製造が容易である。
【0038】
続いて、
図5~
図8を用いて、本開示の第1実施形態に係る磁気特徴検出装置において生じる磁場について説明する。
【0039】
図5は、
図3における磁力線の向きを模式的に示す図である。
図5では、磁石10aによって、磁石10aの-z方向の磁極(N極)から、+z方向の磁極(S極)に向かって磁力線が生じている。また、磁石10bによって、磁石10bの+z方向の磁極(N極)から、-z方向の磁極(S極)に向かって磁力線が生じている。従って、y方向に隣り合う2つの磁石である磁石10aと磁石10bは、z方向の磁場を逆転して交互に配置されていてもよい。
【0040】
磁石10a及び磁石10bにより生じる磁力線の向きを、感磁素子25が配置されている平面(破線で示す基準面40)を基準として見ると、磁石間の磁場が逆転する領域30よりも+y方向側の領域では、基準面40を+z方向に磁力線が貫通している。一方で、磁石間の磁場が逆転する領域30よりも-y方向側の領域では、基準面40を-z方向に磁力線が貫通している。すなわち、基準面40において、磁石間の磁場が逆転する領域30よりも+y方向側の領域と-y方向側の領域とでは、磁力線の向きが逆転していてもよい。
【0041】
続いて、紙葉類を着磁する場合を
図6を用いて説明する。
図6は、
図5にさらに紙葉類を追加した図である。
図6に示すように、紙葉類50は、感磁素子25を挟んで磁石10a及び磁石10bと対向する位置に、x方向及びy方向に平行なxy平面に沿って搬送されてもよい。
図6に示すように、磁石10a及び磁石10bは、一対の磁極を結ぶ軸が紙葉類50と直交するように配置されていてもよい。さらに、磁石10a及び磁石10bは、紙葉類50に対向する側の磁極が交互に入れ替わるように配置されていてもよい。
ここで、「一対の磁極を結ぶ軸」とは、磁石のS極とN極とを結ぶ軸である。
図6に示す磁石10a及び磁石10bでは、一対の磁極を結ぶ軸はz方向に平行であり、紙葉類50と直交する。
【0042】
さらに、感磁素子25は、隣り合う2つの磁石である磁石10a及び磁石10b間の境界領域の中心35に重なるように配置されていてもよい。
このような位置に感磁素子25を配置すると、隣り合う2つの磁石(磁石10a及び磁石10b)間の磁場が逆転する領域30の磁界を検出しやすくなる。
すなわち、「隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なる位置」は、「隣り合う2つの磁石間の磁場が逆転する領域の磁界を検出することができる感磁素子の位置」の一具体例である。
ここで、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に重なるとは、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心に感磁素子のいずれかの部分が重なっている状態である。
なお、「境界領域」とは、隣り合う2つの磁石の間に隙間がある場合は、隣り合う2つの磁石の間に設けられた空間であり、「境界領域の中心」は、2つの磁石が隣り合う方向に境界領域を2等分する位置(面)である。
また、隣り合う2つの磁石の間には隙間がなく、互いに接触していてもよいが、その場合は、「隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心」とは、隣り合う2つの磁石の境界線(接触面)そのものを意味する。
【0043】
図7は、
図6に示す紙葉類の磁性体パターンが着磁されることにより生じる磁力線を模式的に示す図である。
磁石10a及び磁石10bが
図6に示すように配置されているとき、紙葉類50の磁性体パターンは、磁石間の磁場が逆転する領域30よりも+y方向側の領域で+z方向に着磁され、磁石間の磁場が逆転する領域30よりも-y方向側の領域で-z方向に着磁される。
図7中、大きい矢印は、紙葉類50の特定の領域が着磁される方向を示している。
すなわち、紙葉類50には、磁性体パターンが+z方向に着磁された第1の着磁領域51と、磁性体パターンが-z方向に着磁された第2の着磁領域53と、第1の着磁領域51と第2の着磁領域53との境界となる領域(以下、磁化遷移領域ともいう)55と、が形成される。
【0044】
隣り合う磁石10a及び磁石10b間の磁場が逆転する領域の磁界では、磁力線の向きが+z方向から-z方向に変化する過程で磁力線がy方向を向く。具体的には、
図7に示すように、磁化遷移領域55とz方向に重なる位置において磁力線がy方向を向く。
磁化遷移領域55は、紙葉類50側の磁極がN極である磁石10bによって+z方向に着磁された第1の着磁領域51と、紙葉類50側の磁極がS極である磁石10aによって-z方向に着磁された第2の着磁領域53との間に設けられるから、隣り合う磁石10a及び磁石10bとの境界領域32の中心は、z方向において磁化遷移領域55と重なる。そのため、境界領域32の中心に重なるように配置された感磁素子25によってy方向の磁束を検出することができる。
【0045】
隣り合う磁石間の境界領域の中心に重なるように感磁素子を配置する場合、感磁素子を構成する検出部がその境界領域の中心に重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。
また、1つの感磁素子が複数の検出部を有している場合、複数の検出部のうちの少なくとも1つが、隣り合う磁石間の境界領域の中心に重なっていてもよいし、複数の検出部のいずれもが、その境界領域の中心に重なっていなくてもよい。
また、2つの磁石が隣り合う方向に直交する方向における感磁素子の位置は、同方向における磁石の両端部よりも外側にはみ出すように配置されていてもよく、磁石の両端部の内側に位置するように配置されていてもよい。
【0046】
図8は、磁石により生じる磁力線と、紙葉類を構成する磁性体パターンにより生じる磁力線の両方を併記した図である。
図8に示すように、感磁素子25が検出する磁界は、磁石10a及び磁石10bから発生する磁場(磁力線)と、着磁された紙葉類50の磁性体パターンから発生する磁場(磁力線)との合成となる。従って、紙葉類50が配置される前に感磁素子25が検出していた磁界(
図5に示した磁力線の状態)と、紙葉類50が配置された後に感磁素子25が検出した磁界(
図8に示した磁力線の状態)との差が、紙葉類50の磁性体パターンの磁気特徴として検出される。
なお、
図8では、磁石10a及び磁石10bにより生じる磁力線と、着磁された紙葉類の磁性体パターンにより生じる磁力線とを区別するため、両者から生じる磁力線を合成することなく、そのまま重ねている。
【0047】
紙葉類50が搬送される方向は、x方向及びy方向のどちらであってもよい。
紙葉類50がx方向に搬送される場合、x方向が紙葉類の搬送方向(以下、単に搬送方向ともいう)となり、y方向が、搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向となる。
紙葉類50がy方向に搬送される場合、y方向が搬送方向となり、x方向が搬送幅方向となる。
なお、紙葉類の形状と紙葉類が搬送される方向は無関係である。従って、紙葉類の長手方向が搬送方向であってもよく、紙葉類の短手方向が搬送方向であってもよい。
【0048】
紙葉類は、本開示の磁気特徴検出装置を備える本開示の紙葉類識別装置の搬送部により搬送されてもよい。搬送部は、例えば、複数のローラ等の搬送手段と、搬送手段を駆動する、モータ等の駆動装置とを有している。
【0049】
図9は、
図7において紙葉類をx方向に搬送した場合に、紙葉類の磁性体パターンが着磁される領域を模式的に示した図である。
図9に示すように、紙葉類をx方向に搬送した場合、紙葉類50の磁性体パターンが+z方向に着磁された第1の着磁領域51と、紙葉類50の磁性体パターンが-z方向に着磁された第2の着磁領域53との境界である磁化遷移領域55に沿って、紙葉類50の磁性体パターンからy方向の磁力線が生じる。なお、
図9では、第1の着磁領域51及び第2の着磁領域53に、着磁方向を示す記号を付している。
【0050】
図10-1は、
図7において紙葉類をy方向に搬送し、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中央に紙葉類の搬送方向の先端が重なる時点における、紙葉類の磁性体パターンが着磁される領域を模式的に示した図である。
図10-2は、
図7において紙葉類をy方向に搬送し、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中央に紙葉類の搬送方向の中央が重なる時点における、紙葉類の磁性体パターンが着磁される領域を模式的に示した図である。
図10-3は、
図7において紙葉類をy方向に搬送し、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中央に紙葉類が搬送方向の後端が重なる時点における、紙葉類の磁性体パターンが着磁される領域を模式的に示した図である。
図10-1~
図10-3の中では、
図10-1が最も早い時点の状態を示しており、
図10-3が最も遅い時点の状態を示している。また、
図10-1~
図10-3では、第1の着磁領域51及び第2の着磁領域53に、着磁方向を示す記号を付している。
図10-1~
図10-3に示すように、紙葉類50をy方向に搬送した場合、紙葉類50中の、第1の着磁領域51、第2の着磁領域53及び磁化遷移領域55の位置は、搬送とともに変化する。なお、紙葉類の磁性体が強磁性である場合には、
図10-2において、
図10-1で着磁された領域の磁化が残存している場合があるが、
図10-2ではこの磁化の残存については省略している。
図10-3でも同様に、
図10-1及び
図10-2で着磁された領域の磁化が残存している場合があるが、省略している。なお、着磁された領域の磁化が残存している場合であっても、後述する紙葉類の磁性体パターンを比較する際には問題とならない。
【0051】
図11は、比較例の磁気特徴検出装置の一例を示す図である。
図11に示す比較例の磁気特徴検出装置8では、2つの磁石10aがy方向に配置されており、2つの磁石10aの磁極を結ぶ軸はz方向に平行である。ただし、
図11では、隣り合う2つの磁石10aの磁極の向きが、いずれも同じ向きである。従って、隣り合う2つの磁石の磁極の向きが逆転する領域は存在しない。
【0052】
図12は、
図11に示す磁気特徴検出装置における磁力線の様子を模式的に示す図である。
図12に示すように、感磁素子25が配置された基準面40の全ての領域で、磁力線は+z方向から-z方向に向かって貫通している。従って、紙葉類の磁性体パターンは-z方向に着磁される。
【0053】
図13は、
図12に示す磁気特徴検出装置により着磁される紙葉類を模式的に示す図である。
図13に示す紙葉類は、-z方向に一様に着磁されている。従って、y方向の磁力線が生じるのは、磁性体パターンのエッジ部分のみとなる。エッジ部分では、紙葉類の一方の表面から他方の表面に回り込む磁力線が生じるため、磁力線にy方向の成分が含まれ、これを感磁素子で検出することができる。しかし、エッジ部分以外ではこのような回り込む磁力線が生じないため、磁気特徴を検出することができない。
【0054】
図14は、従来の方法で着磁された
図13に示す紙葉類を検出した感磁素子のセンサ出力と、本開示の磁気特徴検出装置を構成する磁石により着磁された
図8に示す紙葉類を検出した感磁素子のセンサ出力とを比較した図である。
図8に示す紙葉類50では、+z方向に着磁された第1の着磁領域51と-z方向に着磁された第2の着磁領域53との境界(磁化遷移領域)55が搬送方向と同じx方向に延びている。そのため、紙葉類がx方向に搬送されている間もy方向に延びる磁力線が発生し続け、その磁力線による磁界の変化を感磁素子25が検出できるため、紙葉類をx方向に搬送した場合に、磁束の変化をレベル出力で得ることができる。すなわち、感磁素子25の出力は、ベースラインから一方向に振れる量的な波形となり、また、磁性体パターンのエッジ部分のみならずエッジ部分以外の磁気特徴を検出することができる。
図8に示す紙葉類50をy方向に搬送した場合には、第1の着磁領域51と第2の着磁領域53の大きさは紙葉類の搬送に従って変化するものの、感磁素子25に対する第1の着磁領域51と第2の着磁領域53との境界(磁化遷移領域)55の相対的な位置は変わらないため、紙葉類50がy方向に搬送されている間もy方向に伸びる磁力線が発生し続け、その磁力線による磁界の変化を感磁素子25が検出できる。従って、感磁素子25の出力は、紙葉類50がx方向に搬送される場合と同様にレベル出力となる。
一方、
図13に示す紙葉類では、y方向に伸びる磁力線が発生するのは、z方向に伸びる磁力線が回り込むエッジ部分だけである。y方向の磁力線は、z方向に伸びる磁力線が回り込む際のy方向の変化量(微分成分)としてしか得ることができないため、センサ出力が微分出力となる。
従って、本開示の磁気特徴検出装置では、磁性体パターンが紙葉類全体に含まれる場合や、紙葉類の磁性体パターンがコードのないバー状や複雑な形状を成している場合、磁性体パターンの磁気特徴がグラデーション状に変化する場合等であっても、感磁素子25は、磁性体パターンの磁気特徴を高感度にレベル出力することができる。
【0055】
本開示の磁気特徴検出装置に用いられる磁石は、永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。
永久磁石としては、例えばフェライト磁石、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等が挙げられる。
【0056】
磁石の形状は、例えば立方体や直方体等の六面体形状であってもよい。
【0057】
また、2つの磁石10a及び磁石10b、互いに接触していてもよく、接触していなくてもよい。
2つの磁石10a及び磁石10b間の距離は、例えば0mm~10mmであってもよい。
【0058】
感磁素子25としては、被検出対象の磁束密度の変化を電圧の変動として出力する磁気検出素子が挙げられる。具体的には、異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)、トンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)等の磁気抵抗効果素子(MR素子)であってよい。
【0059】
本開示の磁気特徴検出装置において、感磁素子は、磁気センサパッケージに含まれていてもよい。
図15は、磁気センサパッケージの一例を模式的に示す平面図である。
図15に示す磁気センサパッケージ28は、パッケージ基板26と、パッケージ基板26上に実装される感磁素子25とを有していてもよい。感磁素子25は、基板23と、基板23上に配置された4つの検出部21とを有していてもよい。各検出部21は、基板23上に配置された端子24と接続されていてもよい。
4つの検出部21の磁界検出方向はいずれも同じ方向(
図14中、両矢印で示す方向)である。
【0060】
ただし、単一の基板23上に複数の検出部21が配置されている場合、複数の検出部21の磁界検出方向は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
検出部21は、例えば、基板23上に形成されたミアンダ配線で構成されていてもよい。ミアンダ配線の延伸方向に直交する方向が、検出部21の磁界検出方向となる。
基板23は、例えばシリコン製の基板であってよい。検出部21は、シリコン製基板の表面に、フォトリソグラフィ等の方法により形成されたものであってもよい。
端子24は、例えば、感磁素子25をパッケージ基板26に実装する際に、ワイヤボンディングによる接続の為に用いられる。パッケージ基板26には、感磁素子25以外の他の電子部品、例えばメモリやマイコンが実装されていてもよい。
磁気センサパッケージ28は、感磁素子25や他の電子部品がパッケージ基板26に実装されて、必要に応じて封止樹脂で封止され、外部接続用の電極が引き出されたものであってもよい。
【0062】
本開示の磁気特徴検出装置において、感磁素子は、パッケージに封入されるのではなく、実装基板に直接実装されるものであってもよい。
図16は、実装基板に直接実装される感磁素子の一例を模式的に示す斜視図である。
図16に示すように、感磁素子125は、シリコン基板126と、シリコン基板126上の略中央部に配置された4つの検出部121a、121bとを有していてもよい。検出部121aの磁界検出方向はx方向であり、検出部121bの磁界検出方向はy方向である。
シリコン基板126上の四隅には、さらに各検出部121a、121bと接続される端子124が形成されていてもよい。感磁素子125の第1主面125aに、検出部121a、121b及び端子124が形成されている場合、第1主面125aと反対側の主面である第2主面125bには何も形成されていなくてもよい。
【0063】
図17は、
図16に示す感磁素子を実装基板上に実装する様子の一例を模式的に示す斜視図である。
図17に示すように、感磁素子125は、検出部121a、121b及び端子124が設けられた第1主面125aを実装基板200に向けて、実装基板200上に設けられたランド210と端子124が電気的に接続されるように、実装基板200に直接実装されてもよい。
図17に示すように、感磁素子125を直接、実装基板200に実装する方法をベアチップ実装ともいう。また、検出部121a、121b及び端子124が配置された表面である第1主面125aを実装基板200側に向けて感磁素子125を実装する方法をフリップチップ実装ともいう。
図16に示した感磁素子を用いると、パッケージを経ることなく実装基板上に感磁素子を実装することが可能となり、感磁素子が磁気センサパッケージに含まれる場合と比較して、後述する感磁素子の配置間隔を狭くすることができる。
図17では、実装基板上に合計5つの感磁素子を実装したものを開示しているが、実装基板に実装される感磁素子の数及び配置間隔は、所望の磁気検出特性に応じて適宜調整することができる。
【0064】
なお、
図16では、検出部121a、121b及び端子124が感磁素子125の同じ主面(この場合は第1主面125a)に配置される例について説明したが、検出部121a、121bが配置される主面と、端子124が配置される主面は、異なっていてもよい。この場合、例えば、シリコン基板126を厚さ方向に貫通するビア導体を介して、検出部121a、121bと端子124とが接続されていてもよい。
なお、
図17では、感磁素子125が実装基板200にフリップチップ実装される例を説明したが、
図16に示す感磁素子125は、ワイヤボンディングにより実装基板に実装されていてもよい。
【0065】
感磁素子25が検出する磁気特徴は、磁気モーメントであってよい。
搬送される紙葉類の磁気モーメントを感磁素子25によって検出することで、磁気モーメントの搬送方向における分布(以下、単に磁気モーメントの分布ともいう)を、磁気モーメントの時間変化として検出することができる。
【0066】
感磁素子が検出する磁気特徴は、磁気モーメントの分布であり、磁気モーメントの分布は、紙葉類に含まれる磁性体パターンの、紙葉類の搬送方向における両端部の磁気モーメントと、磁性体パターンの両端部に挟まれた部分の磁気モーメントと、を含んでいてもよい。
磁気特徴が磁気モーメントの分布であり、紙葉類に含まれる磁性体パターンの、紙葉類の搬送方向における両端部の磁気モーメントだけでなく、磁性体パターンの両端部に挟まれた部分の磁気モーメントを含んでいると、磁性体パターン全体の磁気モーメントを検出することができる。そのため、磁性体パターンが紙葉類全体に配置されている場合、磁性体パターンがコードのないバー状や複雑な形状を成している場合、磁性体パターンの磁気特徴がグラデーション状に変化する場合等であっても、磁性体パターンの磁束の変化を充分に検出することができる。
【0067】
続いて、本開示の磁気特徴検出装置の他の実施形態について説明する。
【0068】
図18は、本開示の第2実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
図18に示す磁気特徴検出装置1Aは、y方向に並ぶ複数の磁石と、複数の磁気センサパッケージ28とを備える。磁気センサパッケージ28は感磁素子25を備える。y方向に並ぶ複数の磁石をまとめて磁石アレイともいう。
y方向に並ぶ複数の磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が異なる磁石10a及び磁石10bを含んでいてもよい。
なお、
図18では、磁気センサパッケージ28の構成について、
図15に説明した検出部21等の構成は省略し、感磁素子25と、磁界検出方向だけを図示している。
【0069】
図18に示す磁気特徴検出装置1Aは、
図1~4に示した磁気特徴検出装置1において、感磁素子25に代わって磁気センサパッケージ28を用い、磁石と感磁素子(磁気センサパッケージ)の数を増やして、y方向に沿って直線状に配置したものに相当する。
従って、磁石10a及び磁石10bの磁極の向き及び配置、並びに感磁素子25の配置は、
図1~
図4に示す磁気特徴検出装置1と同様である。なお、感磁素子25の磁界検出方向はy方向であり、紙葉類はx方向に搬送される。従って、磁界検出方向と紙葉類の搬送方向の関係は、
図9で説明した場合と同様である。
【0070】
図18に示すように、磁石10a及び磁石10bは、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向(x方向)に対して直交する方向である搬送幅方向(y方向)に磁場が逆転して交互に配置されていてもよい。
【0071】
なお、
図18では、y方向に並ぶ磁石及び感磁素子の一部を省略している。これは、後述する
図19~
図20、
図22~
図23、
図25~
図28、
図30~
図31及び
図38でも同様である。
また、
図18に示す磁気特徴検出装置1Aのように、搬送幅方向に複数の感磁素子25が直線状(ライン状)に並ぶ磁気特徴検出装置のことを、磁気ラインセンサともいう。
【0072】
感磁素子25のy方向における配置間隔(ピッチ)は、例えば2mm~5mmであってよく、3mm~4mmであってよく、3.5mmであってもよい。
【0073】
感磁素子25の搬送幅方向(y方向)における配置間隔は、5~200dpiとなる間隔であってよい。
搬送幅方向(y方向)における感磁素子25の配置間隔は等間隔であってよい。
【0074】
図19は、本開示の第3実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
図19に示す磁気特徴検出装置1Bは、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ28とを有している。
図19に示す磁気特徴検出装置1Bでは、感磁素子25の磁界検出方向はy方向であり、紙葉類はx方向に搬送される。従って、磁界検出方向と紙葉類の搬送方向の関係は、
図9で説明した場合と同様である。
【0075】
本開示の第3実施形態に係る磁気特徴検出装置では、
図19に示すように磁石アレイを搬送方向に複数備えていてもよい。
図19では、複数の磁石のうち、感磁素子25の+x方向側に配置された磁石10a及び磁石10bが、磁石アレイ110aを構成していてもよい。また、複数の磁石のうち、感磁素子25の-x方向側に配置された磁石10a及び磁石10bが、磁石アレイ110bを構成していてもよい。磁石アレイ110a及び磁石アレイ110bを構成する各磁石は、搬送方向(x方向)に並んでいてもよい。磁石アレイ110a及び磁石アレイ110bを構成する磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が交互に入れ替わるよう配置されていてもよい。
【0076】
図19に示すように、異なる磁石アレイである磁石アレイ110a及び磁石アレイ110b間において、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)の搬送幅方向(y方向)における位置は一致していてもよい。また、異なる磁石アレイに含まれる搬送幅方向における位置が一致する複数の磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が同じであってよい。
【0077】
なお、「搬送幅方向(y方向)における位置が一致する」とは、x方向からみたときに複数の磁石の少なくとも一部が重なっている状態を指し、搬送幅方向における位置が必ずしも完全に一致する必要はない。
また、「搬送幅方向(y方向)における位置が完全に一致する」とは、x方向からみたときに複数の磁石が完全に重なっている状態を指す。この場合、異なる磁石アレイに含まれる複数の磁石同士が、磁石アレイ同士が隣り合う搬送方向(x方向)に直交し、かつ磁石アレイ同士の搬送方向(x方向)の中間地点を通る直線に対して線対称に配置されているともいえる。
例えば、
図19では、磁石アレイ110aを構成する複数の磁石のうち最も-y方向側に配置されている磁石10bと、磁石アレイ110bを構成する複数の磁石のうち、最も-y方向側に配置されている磁石10bとで、搬送幅方向(y方向)における位置が完全に一致している。
【0078】
図19に示すような磁石の配置においても、感磁素子25は、搬送幅方向に配置された複数の磁石のうち隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心35に重なるように配置されていてもよい。
上記配置であると、感磁素子25は、搬送幅方向に隣り合う2つの磁石間の磁場が逆転する領域の磁界を検出することができる。
【0079】
なお、
図19では、磁石アレイを搬送方向に2つ備える例について説明したが、磁石アレイを搬送方向に3つ以上備えていてもよい。
【0080】
図20は、本開示の第3実施形態に係る磁気特徴検出装置の変形例を+z方向側から見た図である。
図21は、
図20を-y方向側から見た図である。
図20に示す磁気特徴検出装置1B’は、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ28とを有している。
図19に示した磁気特徴検出装置1Bでは、搬送方向に2つの磁石アレイ110a及び磁石アレイ110bが並んでいたのに対して、
図20に示す磁気特徴検出装置1B’では、搬送方向に+x方向側から順に4つの磁石アレイ110c、磁石アレイ110a、磁石アレイ110c及び磁石アレイ110dが並んでいる。そのため、
図20に示す磁気特徴検出装置1B’は、
図19に示す磁気特徴検出装置1Bの、磁石アレイ110aよりも+x方向側に磁石アレイ110cを配置し、磁石アレイ110bよりも-x方向側に磁石アレイ110dを配置したものであるともいえる。
【0081】
各磁石アレイを構成する磁石は、他の磁石アレイを構成する磁石と、搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよい。例えば、
図20に示すように、各磁石アレイを構成する磁石のうち最も-y方向側に配置される4つの磁石10bc、10ba、10bb、10bdは、搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよいし、各磁石アレイを構成する磁石のうち最も+y方向側に配置される4つの磁石10bは搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよい。
【0082】
図21は、
図20において各磁石アレイ110c、110a、110b、110dを構成する磁石のうち、最も-y方向側に配置された4つの磁石10bが搬送方向(x方向)に並ぶ様子を示している。
図21に示すように、搬送幅方向における位置が完全に一致している4つの磁石10bc、10ba、10bb、10bdは、紙葉類50に対向する側の磁極が同じであってもよい。
搬送幅方向における位置が完全に一致している4つの磁石の紙葉類に対向する側の磁極が同じであると、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0083】
図21に示すように、搬送幅方向における位置が完全に一致している4つの磁石10bc、10ba、10bb、10bdのうち、搬送方向において感磁素子25から遠い2つの磁石、すなわち、最も+x方向に配置される磁石10bc及び最も-x方向に配置される磁石10bdは、感磁素子25に近い位置に配置される2つの磁石10ba及び磁石10bbよりも、紙葉類50により近い位置(より+z方向側)に配置されていてもよい。
感磁素子から遠い位置に配置される2つの磁石が、それ以外の磁石よりも紙葉類に近い位置に配置されていると、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0084】
図21に示すように、搬送方向(x方向)において感磁素子25により近い側の磁石、すなわち磁石10ba及び磁石10bbは、感磁素子から遠い側の磁石、すなわち磁石10bc及び磁石10bdよりも大きくてもよい。感磁素子25により近い側の磁石を大きくすることで、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0085】
なお、上述した磁石アレイの追加は、後述する第5実施形態に係る磁気特徴検出装置についても適用することができる。また、上述した第2実施形態に係る磁気特徴検出装置を構成するy方向に並ぶ複数の磁石を磁石アレイと捉え、この磁石アレイの-x方向側及び+x方向側に磁石アレイを追加する変形を行ってもよい。
【0086】
図22は、本開示の第4実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
図22に示す磁気特徴検出装置1Cは、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ28とを備える。
図22に示す磁気特徴検出装置1Cでは、感磁素子25の磁界検出方向はy方向であり、紙葉類はx方向に搬送される。従って、磁界検出方向と紙葉類の搬送方向の関係は、
図9で説明した場合と同様である。
【0087】
磁気特徴検出装置1Cは、搬送方向(x方向)に隣り合う2つの磁石アレイ(磁石アレイ110及び磁石アレイ111)を備えてもよい。磁石アレイ110及び磁石アレイ111は、いずれも、搬送幅方向(y方向)に配置された複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)を備えていてもよい。
【0088】
図22に示すように、異なる磁石アレイ(磁石アレイ110及び磁石アレイ111)間において、複数の磁石の搬送幅方向(y方向)における位置が一致していてもよい。また、異なる磁石アレイに含まれる搬送幅方向における位置が一致する複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)は、紙葉類に対向する側の磁極が交互に入れ替わっていてもよい。
上記配置であると、感磁素子25は、搬送幅方向に隣り合う2つの磁石間の磁場が逆転する領域の磁界を検出することができる。さらに、感磁素子のセンサ出力を低下させる原因となる搬送幅方向のバイアス磁界を抑制することができる。
【0089】
図22に示すような磁石の配置においても、感磁素子25は、搬送幅方向に配置された複数の磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心35に重なるように配置されていてもよい。
【0090】
なお、
図22では、磁石アレイを搬送方向に2つ備える例について説明したが、磁石アレイを搬送方向に3つ以上備えていてもよい。
【0091】
図23は、本開示の第4実施形態に係る磁気特徴検出装置の変形例を+z方向側から見た図である。
図24は、
図23を-y方向側から見た図である。
図23に示す磁気特徴検出装置1C’は、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ28とを有している。
図22に示した磁気特徴検出装置1Cでは、搬送方向に2つの磁石アレイ110及び磁石アレイ111が並んでいたのに対して、
図23に示す磁気特徴検出装置1C’では、搬送方向に+x方向側から順に4つの磁石アレイ112、磁石アレイ110、磁石アレイ111及び磁石アレイ113が並んでいる。
図23に示す磁気特徴検出装置1C’は、
図22に示す磁気特徴検出装置1Cの、磁石アレイ110よりも+x方向側に磁石アレイ112を配置し、磁石アレイ111よりも-x方向側に磁石アレイ113を配置したものであるともいえる。
【0092】
各磁石アレイを構成する磁石は、他の磁石アレイを構成する磁石と、搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよい。例えば、
図23に示すように、各磁石アレイを構成する磁石のうち最も-y方向側に配置される4つの磁石10b2、10b0、10a1、10a3は、搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよいし、各磁石アレイを構成する磁石のうち最も+y方向側に配置される4つの磁石10b、10b、10a、10aは搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよい。
【0093】
図24は、
図23において各磁石アレイ112、110、111、113を構成する磁石のうち、最も-y方向側に配置された4つの磁石10b2、10b0、10a1、10a3が搬送方向(x方向)に並ぶ様子を示している。
図24に示すように、感磁素子25に対して搬送方向の同じ側に配置される2つの磁石、すなわち、感磁素子25よりも+x方向側に配置される2つの磁石10b2及び磁石10b0、並びに感磁素子25よりも-x方向側に配置される2つの磁石10a1及び磁石10a3は、それぞれ、紙葉類50に対向する側の磁極が同じであってもよい。
感磁素子に対して搬送方向(x方向)の同じ側に配置される2つの磁石の紙葉類に対向する側の磁極が同じであると、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0094】
図24に示すように、搬送幅方向における位置が完全に一致している4つの磁石10b2、10b0、10a1、10a3のうち、搬送方向において感磁素子25から遠い2つの磁石、すなわち、最も+x方向に配置される磁石10b2及び最も-x方向に配置される磁石10a3は、感磁素子25に近い位置に配置される2つの磁石10b0及び磁石10a1よりも、紙葉類50により近い位置(より+z方向側)に配置されていてもよい。
感磁素子から遠い位置に配置される2つの磁石が、それ以外の磁石よりも紙葉類に近い位置に配置されていると、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0095】
図24に示すように、搬送方向(x方向)において感磁素子25により近い側の磁石、すなわち磁石10ba及び磁石10bbを、感磁素子から遠い側の磁石、すなわち磁石10bc及び磁石10bdよりも大きくしてもよい。
感磁素子25により近い側の磁石を大きくすることで、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0096】
なお、上述した磁石アレイの追加は、後述する本開示の第5実施形態及び第6実施形態に係る磁気特徴検出装置にも適用することができる。
【0097】
図25は、本開示の第5実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
図25に示す磁気特徴検出装置1Dは、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ(第1の磁気センサパッケージ28a及び第2の磁気センサパッケージ28b)とを有している。
図25に示す磁気特徴検出装置1Dにおいて、配置される磁石の数及び磁極の向き、並びに紙葉類の位置及び搬送方向は、第4実施形態に係る磁気特徴検出装置と同様である。
第1の磁気センサパッケージ28aは、第1の感磁素子25aを含む。第1の感磁素子25aの磁界検出方向は、y方向である。
第2の磁気センサパッケージ28bは、第2の感磁素子25bを含む。第2の感磁素子25bの磁界検出方向は、x方向である。
図25に示す磁気特徴検出装置1Dでは、第1の感磁素子25aの磁界検出方向はy方向であり、紙葉類はx方向に搬送される。従って、磁界検出方向と紙葉類の搬送方向の関係は、
図9で説明した場合と同様である。また、第2の感磁素子25bの磁界検出方向はx方向であり、紙葉類はx方向に搬送される。従って、磁界検出方向と紙葉類の搬送方向の関係は、
図10-1~
図10-3で説明した場合と同様である。ただし、
図10-1~
図10-3とは、x方向とy方向が入れ替わっている。
【0098】
第1の感磁素子25aは、搬送幅方向(y方向)に配置された複数の磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心35aに重なるように配置されていてもよい。
第2の感磁素子25bは、紙葉類の搬送方向(x方向)に配置された複数の磁石のうちの隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心35bに重なるように配置されていてもよい。
上記配置であれば、第1の感磁素子25a及び第2の感磁素子25bの両方で紙葉類の磁性体パターンの磁気特徴を検出することができる。そのため、
図25に示す磁気特徴検出装置1Dは、
図19に示す磁気特徴検出装置1B、
図20に示す磁気特徴検出装置1B’、
図22に示す磁気特徴検出装置1C及び
図23に示す磁気特徴検出装置1C’よりも、y方向の単位長さあたりに配置される感磁素子の数を多くすることができ、空間分解能にさらに優れる。
【0099】
図26は、本開示の第6実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
図26に示す磁気特徴検出装置1Eは、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ28とを有している。
図26に示す磁気特徴検出装置1Eにおいて、配置される磁石の数及び磁極の向き、並びに紙葉類の位置及び搬送方向は、第4実施形態に係る磁気特徴検出装置と同様である。
図26に示す磁気特徴検出装置1Eでは、感磁素子25の磁界検出方向はx方向であり、紙葉類はx方向に搬送される。従って、磁界検出方向と紙葉類の搬送方向の関係は、
図10-1~
図10-3で説明した場合と同様である。ただし、
図10-1~
図10-3とは、x方向とy方向が入れ替わっている。
【0100】
図26に示すように、複数の磁石は搬送方向に配置されていてもよく、搬送方向に配置された複数の磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が交互に入れ替わっていてもよい。
なお、搬送方向に並ぶ複数の磁石のうち、隣り合う2つの磁石のペアをまとめて、磁石対ともいう。 ここで、搬送方向に配置される磁石は3つ以上であってもよく、その場合には、それらの磁石のうち、搬送方向に隣り合う2つの磁石のペアを磁石対とする。
【0101】
磁気特徴検出装置1Eを構成する複数の磁石のうち、感磁素子25の+x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がN極である磁石10bと、感磁素子25の-x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がS極である磁石10aの組み合わせが磁石対115である。また、感磁素子25の+x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がS極である磁石10aと、感磁素子25の-x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がN極である磁石10bの組み合わせが磁石対116である。
磁気特徴検出装置1Eでは、複数の磁石対115と複数の磁石対116とが、搬送幅方向(y方向)に交互に並んでいるともいえる。
磁石対115及び磁石対116を構成する2つの磁石の紙葉類と対向する側の磁極は、それぞれ異なっている。そのため、磁石対115及び磁石対116を構成する2つの磁石間にはそれぞれ、磁石間の磁場が逆転する領域が存在する。
図26では、搬送幅方向(y方向)における位置が一致する複数の磁石のうちの隣り合う2つの磁石(磁石10a及び磁石10b)間の境界領域の中心35に重なるように感磁素子25が配置されている。
なお、磁石対を構成する2つの磁石は搬送方向(x方向)に並んでいるから、この2つの磁石間の境界領域の中心35に重なるよう配置される感磁素子25は、磁界検出方向をx方向とする。
【0102】
図27は、本開示の第7実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
図27に示す磁気特徴検出装置1Fは、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ28とを有している。
磁気特徴検出装置1Eにおいて、紙葉類の位置及び搬送方向、並びに感磁素子が配置される位置及び磁界検出方向は、第6実施形態に係る磁気特徴検出装置と同様である。
【0103】
磁気特徴検出装置1Fは、+x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がN極である磁石10bと、-x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がS極である磁石10aの組み合わせからなる磁石対115を有する。磁石対115は、搬送幅方向(y方向)に複数並んでいる。
磁石対115に含まれる搬送方向(x方向)における位置が一致する複数の磁石は、紙葉類に対向する側の磁極が一致していてもよい。なお、「搬送方向(x方向)における位置が一致する」とは、y方向からみたときに複数の磁石の少なくとも一部が重なっている状態を指し、搬送幅方向における位置が必ずしも完全に一致する必要はない。
また、「搬送方向(x方向)における位置が完全に一致する」とは、y方向からみたときに複数の磁石が完全に重なっている状態を指す。
例えば、
図27では、磁石対115を構成する2つの磁石のうち+x方向側に配置される磁石10bはすべて、y方向から見たときにその位置が完全に一致しており、さらに紙葉類と対向する側の磁極がN極である。
【0104】
磁石対の+x方向側及び-x方向側には、さらに磁石が配置されていてもよい。
磁石対を構成する2つの磁石と、磁石対の+x方向側に配置された磁石と、磁石対の-x方向側に配置された磁石とを、あわせて磁石群ともいう。
【0105】
図28は、本開示の第7実施形態に係る磁気特徴検出装置の変形例を+z方向側から見た図である。
図29は、
図28を-y方向側から見た図である。
図28に示す磁気特徴検出装置1F’は、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ28とを有している。
【0106】
図28に示す磁気特徴検出装置1F’は、感磁素子25よりも+x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がN極である磁石10b1と、感磁素子25よりも-x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がS極である磁石10a1に加えて、さらに、磁石10b1よりも+x方向側に配置されて、紙葉類と対向する側の磁極が磁石10b1と同じである磁石10b2と、磁石10a1よりも-x方向側に配置されて、紙葉類と対向する側の磁極が磁石10a1と同じである磁石10a2の組み合わせからなる磁石群115’を有する。
磁石群115’は、搬送幅方向(y方向)に複数並んでいてもよい。
【0107】
図28に示す磁気特徴検出装置1F’は、
図27に示す磁気特徴検出装置1Fの磁石対115を構成する磁石10bの+x方向側にさらに磁石10bを配置し、磁石10aの-x方向側にさらに磁石10aを配置したものであるといえる。
【0108】
磁気特徴検出装置を構成するすべての磁石群において、磁石群を構成する4つの磁石の搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよい。例えば、
図28に示すように、磁石群115’を構成する4つの磁石は、搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよい。
また、磁気特徴検出装置を構成する一部の磁石群について、磁石群を構成する4つの磁石の搬送幅方向における位置が完全に一致していてもよい。
【0109】
図29は、
図28において磁石群115’を構成する4つの磁石10b2、10b1、10a1、10a2が搬送方向(x方向)に並ぶ様子を示している。
図29に示すように、感磁素子25に対して搬送方向の同じ側に配置される2つの磁石、すなわち、感磁素子25よりも+x方向側に配置される2つの磁石10b2及び磁石10b1、並びに感磁素子25よりも-x方向側に配置される2つの磁石10a1及び磁石10a2は、それぞれ、紙葉類50に対向する側の磁極が同じであってもよい。
感磁素子に対して搬送方向(x方向)の同じ側に配置される2つの磁石の紙葉類に対向する側の磁極が同じであると、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0110】
図29に示すように、搬送幅方向における位置が完全に一致している4つの磁石10b2、10b1、10a1、10a2のうち、搬送方向において感磁素子25から遠い2つの磁石、すなわち、最も+x方向に配置される磁石10b2及び最も-x方向に配置される磁石10a2は、感磁素子25に近い位置に配置される2つの磁石10b1及び磁石10a1よりも、紙葉類50により近い位置(より+z方向側)に配置されていてもよい。
感磁素子から遠い位置に配置される2つの磁石が、それ以外の磁石よりも紙葉類に近い位置に配置されていると、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0111】
図29に示すように、搬送方向(x方向)において感磁素子25により近い側の磁石、すなわち磁石10b1及び磁石10a1を、感磁素子から遠い側の磁石、すなわち磁石10b1及び磁石10a1よりも大きくしてもよい。
感磁素子25により近い側の磁石を大きくすることで、紙葉類をより強く着磁することができる。
【0112】
なお、上述した磁石対を磁石群とする変形は、後述する本開示の第8実施形態及び第9実施形態に係る磁気特徴検出装置においても適用することができる。
【0113】
図30は、本開示の第8実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
図30に示す磁気特徴検出装置1Gは、複数の磁石(磁石10a及び磁石10b)と、複数の磁気センサパッケージ28とを有している。
磁気特徴検出装置1Gは、+x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がN極である磁石10bと、-x方向側に配置された、紙葉類と対向する側の磁極がS極である磁石10aからなる磁石対115を有する。磁石対115は、搬送幅方向(y方向)に複数並んでいる。
図30に示す磁気特徴検出装置1Gのように、磁石対を構成する2つの磁石(磁石10a及び磁石10b)間に、複数の磁気センサパッケージ28が配置されていてもよい。
図30に示す磁気特徴検出装置1Gは、
図27に示した磁気特徴検出装置1Fにおいて、搬送幅方向に隣接する2つの磁石を1つの磁石で代用したものに相当する。すなわち、
図30に示す磁気特徴検出装置1Gでは、搬送幅方向に隣接する複数の磁石を1つの磁石で代用してもよい。
【0114】
図31は、本開示の第9実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を+z方向側から見た図である。
図32は、
図31を-y方向側から見た図である。
図31及び
図32に示す磁気特徴検出装置1Hは、
図30に示した磁気特徴検出装置1Gを構成する、x方向に隣り合う2つの磁石(磁石10a及び磁石10b)間にさらに補助磁石13を配置したものである。すなわち、紙葉類に対向する側の磁極が交互に入れ替わるよう配置された複数の磁石のうちの隣り合う2つの磁石間に配置された補助磁石を更に備えていてもよい。
【0115】
補助磁石13の一対の磁極を結ぶ軸は、紙葉類と平行な方向(xy方向)に配置されていてもよい。
補助磁石13の一対の磁極と、補助磁石13の隣に配置された2つの磁石(磁石10a及び磁石10b)の紙葉類に対向する側の磁極とは、補助磁石13の隣に配置された2つの磁石(磁石10a及び磁石10b)が並ぶ方向において交互に入れ替わっていてもよい。
図31に示すように、補助磁石13の隣に配置された2つの磁石のうち、磁石10aの紙葉類に対向する側の磁極はS極となっている。これに対して、補助磁石13の磁石10a側の磁極はN極であり、磁石10aの紙葉類に対向する側の磁極と異なっている。
また、補助磁石13の隣に配置された2つの磁石のうち、磁石10bの紙葉類に対向する側の磁極はN極となっている。これに対して、補助磁石13の磁石10b側の磁極はS極であり、磁石10bの紙葉類に対向する側の磁極と異なっている。
紙葉類に対向する側の磁極が交互に入れ替わっている磁石間に上記補助磁石が配置されていると、感磁素子のセンサ出力を低下させる原因となるバイアス磁界を抑制することができる。
【0116】
また、
図32に示すように、補助磁石13のz方向の長さ寸法は、磁石10a及び磁石10bのz方向の長さ寸法よりも短くてもよい。換言すると、補助磁石13は、2つの磁石の紙葉類から遠い側の磁極間には配置されなくてもよい。
【0117】
補助磁石の隣に配置された2つの磁石が並ぶ方向は、
図31に示すように搬送方向(x方向)であってもよく、搬送幅方向であってもよいが、磁気特徴検出装置の空間分解能を低下させない観点からは、搬送方向としてもよい。
補助磁石の隣に配置された2つの磁石が並ぶ方向が搬送幅方向である場合の例としては、例えば、
図18に示す磁気特徴検出装置1Aを構成する搬送幅方向(y方向)に隣り合う2つの磁石(磁石10a及び磁石10b)の間に、磁極の向きがy方向となるように補助磁石を設けた構成が挙げられる。
【0118】
本開示の磁気特徴検出装置では、一対の磁極を結ぶ軸が、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に向くように配置されていてもよい。
磁石の磁極を結んだ線が紙葉類に平行に配置されている磁気特徴検出装置の例について、
図33、
図34、
図35、及び
図36を参照しながら説明する。
【0119】
図33は、本開示の第10実施形態に係る磁気特徴検出装置の一例を感磁素子側から見た図である。
図34は、
図33を-x方向側から見た図である。
図33及び
図34に示す磁気特徴検出装置2は、2つの磁石(磁石10c及び磁石10d)と、1つの磁気センサパッケージ28を有する。
2つの磁石10c及び磁石10dはいずれも、x方向、y方向、及びz方向に所定の寸法を有する直方体形状を有していてもよい。2つの磁石10c及び磁石10dは、y方向に並んで配置されていてもよい。
【0120】
図33及び
図34に示すように、2つの磁石10c及び磁石10dの、一対の磁極を結ぶ軸の方向は、y方向を向いていてもよい。y方向は、紙葉類の搬送方向であるx方向に対して直交する搬送幅方向である。
磁石10c及び磁石10dは、搬送幅方向に、一対の磁極が交互に入れ替わるように配置されていてもよい。なお、「搬送幅方向に一対の磁極が交互に入れ替わる」とは、磁石の搬送幅方向の磁極の向きが、交互に入れ替わっている状態を指す。
図33及び
図34では、磁石10cのS極及びN極が+y方向にこの順に並んでおり、磁石10dのN極及びS極が+y方向にこの順に並んでいる。そのため、磁石10cと磁石10dは、搬送幅方向に一対の磁極が交互に入れ替わっているといえる。
【0121】
磁石10cは、-y方向の磁極がS極、+y方向の磁極がN極となっていてもよく、磁石10dは、-y方向の磁極がN極、+y方向の磁極がS極となっていてもよい。
感磁素子25は、隣り合う2つの磁石10c及び磁石10d間の境界領域32の中心35からずれた位置に重なるように配置されていてもよい。
感磁素子が、隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心からずれた位置に重なるように配置されているとは、隣り合う2つの磁石の間に隙間がある場合は、境界領域の中心に、感磁素子が重ならない状態を指し、感磁素子は中心以外の境界領域に重なっていてもよい。隣り合う2つの磁石の間に隙間がない場合は、境界領域の中心、すなわち隣り合う2つの磁石の境界線に、感磁素子が重ならない状態を指す。
感磁素子が配置される位置が境界領域の中心からずれた位置であると、隣り合う2つの磁石間の磁場が逆転する領域の磁界を検出できる。
また感磁素子は、直下に配置された磁石を一対の磁極が延びる方向に二等分する直線と、境界領域の中心との間に、上記直線及び上記境界領域の中心のいずれとも重ならないように設けられていてもよい。
【0122】
図33及び
図34に示す磁気特徴検出装置により生じる磁力線について、
図35、
図36、及び
図37を用いて説明する。
図35は、
図34において、磁石から生じる磁力線を模式的に示した図である。
図36は、
図35に紙葉類をさらに配置した場合の例を示す図である。
図37は、
図36に示す紙葉類の磁性体パターンから生じる磁力線を模式的に示す図である。
【0123】
図35に示すように、磁石10cの+y方向の磁極(N極)から-y方向の磁極(S極)に向かって伸びる磁力線は、磁石10cの+z方向側では-y方向を向いている。一方、磁石10dの-y方向の磁極(N極)から+y方向の磁極(S極)に向かって延びる磁力線は、磁石10cの+z方向側では+y方向を向いている。
【0124】
従って、
図36に示すように、紙葉類50のうち、磁石10cと対向する領域には、紙葉類50の磁性体パターンが-y方向に着磁された第3の着磁領域57が形成される。また、磁石10dと対向する領域には、紙葉類50の磁性体パターンが+y方向に着磁された第4の着磁領域59が形成される。そして、第3の着磁領域57と第4の着磁領域59との間には、境界となる磁化遷移領域55が形成される。磁化遷移領域55は、第3の着磁領域57及び第4の着磁領域59が着磁される-y方向及び+y方向とは異なる方向に着磁される。
【0125】
図37に示すように、磁化遷移領域55は-y方向及び+y方向とは異なる方向に着磁されているから、隣り合う2つの磁石10c及び磁石10d間の境界領域32の中心からずれた位置に感磁素子25が配置されていると、感磁素子25が磁化遷移領域55から出る磁界の面内成分、すなわちy方向の磁力線を検出することができる。
【0126】
なお、搬送幅方向に隣り合う2つの磁石(磁石10c及び磁石10d)は、搬送幅方向における磁極の向きが逆転しているから、磁石10aと磁石10bとの間には、磁石間の磁場が逆転する領域30が存在する。しかし、磁石間の境界領域の中心に重なる位置においては、磁化遷移領域が-y方向及び+y方向とは異なる方向に着磁されている。そのため、感磁素子を磁石間の境界領域の中心に重なるように配置してしまうと、感磁素子がy方向の磁力線を検出することができない。
一方で、感磁素子を配置する位置を、磁石間の境界領域の中心からずれた位置に配置すると、磁化遷移領域から回り込むy方向の磁界を感磁素子によって検出することができる。
このようにして、感磁素子25は、磁石間の磁場が逆転する領域30において磁界の変化を検出することができる。
【0127】
図38は、本開示の実施形態11に係る磁気特徴検出装置の一例を感磁素子側から見た図である。
図38に示す磁気特徴検出装置2Aは、搬送幅方向(y方向)に並んだ複数の磁石(磁石10c及び磁石10d)と感磁素子25とを有してもよい。
磁気特徴検出装置2Aでは、
図37に示した磁気特徴検出装置2の、搬送幅方向(y方向)に並んだ複数の磁石10a及び磁石10bがさらに搬送方向(x方向)に2つ並んでいるといえる。
【0128】
すべての磁石は、一対の磁極を結ぶ軸が搬送幅方向に向くように配置されていてよい。さらに、磁石10cと磁石10dは、搬送幅方向に一対の磁極が交互に入れ替わるように配置されていてよい。従って、磁石10cのS極と磁石10dのS極、又は磁石10cのN極と磁石10dのN極とが搬送幅方向に対向するよう配置されてもよい。
【0129】
感磁素子25は、搬送幅方向に隣り合う2つの磁石(磁石10c及び磁石10d)間の境界領域の中心35からずれた位置に重なるよう配置されていてもよい。
図38に示すように、搬送方向に隣り合う2つの磁石(磁石10c及び磁石10d)間の境界領域の中心35から感磁素子25をずらす方向は、-y方向であってもよく+y方向であってもよい。
なお、感磁素子25の磁界検出方向は、y方向であってよい。
【0130】
感磁素子25は、x方向に隣り合う2つの磁石を跨ぐように配置されていてもよい。この時、x方向に隣り合う2つの磁石は、一対の磁極の向きが同じであってもよい。
また、
図38に示す磁気特徴検出装置において感磁素子25が配置されている位置のうち、最も-y側の位置及び+y側の位置には、感磁素子25が配置されていなくてもよい。
【0131】
図38に示す磁気特徴検出装置2Aは、y方向に2つ以上の磁石が配置されている点、感磁素子がx方向に隣り合う2つの磁石間にまたがって配置されている点、及び、搬送方向に隣り合う2つの磁石間の境界領域の中心からずれた両方の位置に感磁素子が配置されている点において、
図37に示す磁気特徴検出装置Aと相違する。
【0132】
図39は、本開示の実施形態12に係る磁気特徴検出装置の外観の一例を示す斜視図である。
図40は、
図39のA-B線断面図である。
図39及び
図40に示す磁気特徴検出装置3は、例えば、
図19に示す磁気特徴検出装置1Bを構成する磁石10a及び磁石10bを保持体62によりその位置を保持した状態で、保護カバー61を有する筐体に収容したものに相当する。筐体は側面67a及び底面67bからなる。
y方向に隣り合う磁石10a及び磁石10bの境界領域の中心に重なる位置には、磁気センサパッケージ28が例えば合計30個配置されている。
【0133】
磁気センサパッケージ28は、例えば感磁素子25が封止樹脂等で封止されて構成されたものであってよい。また、磁気センサパッケージ28は、回路基板27に実装されていてもよい。
x方向に搬送された紙葉類50は、保護カバー61を介して磁気センサパッケージ28と対向していてもよい。このとき、筐体内に収容された磁石10a及び磁石10bによって、紙葉類50の磁性体パターンがy方向に着磁されるとともに、着磁された磁性体パターンの磁束が感磁素子25により検出される。
【0134】
本開示の第2の態様に係る紙葉類識別装置は、本開示の第1の態様に係る磁気特徴検出装置と、上記感磁素子の出力に基づいて、搬送される紙葉類を識別する制御部と、を備えている。
【0135】
図41は、本開示の第2の態様である紙葉類識別装置の構成の一例を説明するブロック図である。
図41に示すように、紙葉類識別装置100は、本開示の第1の態様に係る磁気特徴検出装置1と、感磁素子の出力に基づいて、搬送される紙葉類を識別する制御部80とを備える。
【0136】
本開示の第2の態様に係る紙葉類識別装置では、上記感磁素子は、紙葉類と平行な方向であって紙葉類の搬送方向に対して直交する方向である搬送幅方向に複数設けられ、上記制御部は、複数の上記感磁素子の出力に基づいて、磁気モーメントの分布に対応した画像データを生成してもよい。
【0137】
制御部による画像データの生成の一例について、
図39を参照しながら説明する。
図39に示す磁気特徴検出装置3は、搬送幅方向であるy方向の位置が異なる複数、例えば合計30個の磁気センサパッケージ28を有している。
搬送方向であるx方向に紙葉類50が搬送されると、磁気センサパッケージ28を構成する感磁素子25は、それぞれ、紙葉類50の異なるy座標における磁気モーメントの変化を検出する。従って、各感磁素子25が検出した磁気モーメントの時間変化から、紙葉類のx方q向の磁気モーメントの分布が得られる。
そして、各感磁素子25が検出した磁気モーメントの分布を、各感磁素子25の位置に対応させてy方向にプロットすることで、紙葉類50のy方向の磁気モーメントの分布が得られる。
従って、各感磁素子25が検出した磁気モーメントの時間変化をx座標に、各感磁素子25のy方向の位置をy方向にプロットすることで、紙葉類50の磁気モーメントのx方向の分布及びy方向の分布の両方が反映された対応した画像データ(磁気画像データともいう)を生成することができる。磁気画像データは、紙葉類50の磁気モーメントの分布に応じた濃淡画像(グレースケール画像)となる。
【0138】
本開示の紙葉類識別装置では、例えば、制御部に予め、市場に流通している紙葉類の磁気モーメントの分布に対応した基準の磁気画像データを記録しておき、測定した紙葉類の磁気モーメントの分布に対応した磁気画像データを記録された基準の磁気画像データと比較することにより、紙葉類を識別してもよい。
【0139】
紙葉類の識別にあたっては、本開示の磁気特徴検出装置以外のセンサにより検出された画像データを併用してもよい。
例えば、本開示の第2の態様に係る紙葉類識別装置が光学センサを備えている場合、基準の磁気画像データに加えて、市場に流通している紙葉類の基準の画像データ(以下、光学画像データともいう)を制御部に予め記録しておき、測定した紙葉類の磁気画像データ及び光学画像データを記録された基準の磁気画像データ及び光学画像データと比較することで、紙葉類を識別してもよい。
【0140】
以上、図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上のように、本開示は、紙葉類に設けられた磁性体パターンの磁気特徴を検出するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0142】
1、1A、1B、1B’、1C、1C’1D、1E、1F、1F’、1G、1H、2、2A、3:磁気特徴検出装置
8:従来の磁気特徴検出装置
10、10a、10a1、10a2、10b、10ba、10bb、10bc、10bd、10b0、10b1、10b2、10b3、10c、10d:磁石
110、110a、110b、110c、110d、111、112、113:磁石アレイ
115、116:磁石対
115’:磁石群
13:補助磁石
21:検出部
23:基板
24:端子
25:感磁素子
25a:第1の感磁素子
25b:第2の感磁素子
26:パッケージ基板
27:回路基板
28:磁気センサパッケージ
28a:第1の磁気センサパッケージ
28b:第2の磁気センサパッケージ
30:磁石間の磁場が逆転する領域
32:境界領域
35、35a、35b:境界領域の中心
40:基準面
50:紙葉類
51:紙葉類の磁性体パターンが+z方向に着磁された第1の着磁領域
53:紙葉類の磁性体パターンが-z方向に着磁された第2の着磁領域
55:磁化遷移領域
56:紙葉類のエッジ部分
57:紙葉類の磁性体パターンが-y方向に着磁された第3の着磁領域
59:紙葉類の磁性体パターンが+y方向に着磁された第4の着磁領域
61:保護カバー
62:保持体
67a:筐体の側面
67b:筐体の底面
80:制御部
100:紙葉類識別装置
121a、121b:検出部
124:端子
125:感磁素子
125a:感磁素子の第1主面
125b:感磁素子の第2主面
126:シリコン基板
200:実装基板
210:ランド