(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097989
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20230703BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230703BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230703BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
H02K7/116
H02K7/14 B
H02K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214431
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 響
(72)【発明者】
【氏名】高村 建伍
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC08
5H605DD01
5H605DD09
5H605DD13
5H605EB01
5H605GG04
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC05
5H607DD04
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE31
5H607FF06
5H607GG01
5H609BB16
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ09
5H609RR01
5H609RR37
5H609RR41
5H609RR67
5H609RR71
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型化を図ることができる駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、ロータに接続されるギヤ機構と、モータを内部に収容するモータハウジング、およびギヤ機構を内部に収容するギヤハウジングを有するハウジングと、流体が流れる流路90と、流路に接続されるポンプ70と、を備える。ハウジングは、モータハウジングの内部空間とギヤハウジングの内部空間とを仕切る隔壁部を有する。ギヤハウジングは、ギヤハウジングの内部空間を介して隔壁部と対向するカバー壁部15を有する。ポンプは、カバー壁部に設けられる。流路は、ポンプの吐出口に接続されギヤハウジングの内部空間を軸方向に延びる中継流路部を有する。中継流路部は、カバー壁部に設けられ隔壁部側に延び出る第1中継管部92aと、隔壁部に設けられカバー壁部側に延び出て第1中継管部と対向し接続される第2中継管部92bとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、
前記ロータに接続されるギヤ機構と、
前記モータを内部に収容するモータハウジングおよび前記ギヤ機構を内部に収容するギヤハウジングを有するハウジングと、
流体が流れる流路と、
前記流路に接続されるポンプと、を備え、
前記ハウジングは、前記モータハウジングの内部空間と前記ギヤハウジングの内部空間とを仕切る隔壁部を有し、
前記ギヤハウジングは、前記ギヤハウジングの内部空間を介して前記隔壁部と対向するカバー壁部を有し、
前記ポンプは、前記カバー壁部に設けられ、
前記流路は、前記ポンプの吐出口に接続され前記ギヤハウジングの内部空間を軸方向に延びる中継流路部を有し、
前記中継流路部は、
前記カバー壁部に設けられ前記隔壁部側に延び出る第1中継管部と、
前記隔壁部に設けられ前記カバー壁部側に延び出て前記第1中継管部と対向し接続される第2中継管部と、を有する、
駆動装置。
【請求項2】
前記ギヤハウジングは、前記ギヤ機構を前記ギヤ機構の各ギヤの径方向外側から囲む包囲部を有し、
前記包囲部は、
前記カバー壁部から前記隔壁部側に突出する第1包囲壁と、
前記隔壁部から前記カバー壁部側に突出する第2包囲壁と、を有し、
前記第1包囲壁と前記第2包囲壁との境界面は、前記第1中継管部と前記第2中継管部との境界面と同一平面上に配置される、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ポンプは、前記モータまたは前記ギヤ機構に設けられた回転シャフトに接続されるメカニカルポンプである、
請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記モータハウジングの下端は、前記ギヤハウジングの下端より上側に配置され、
前記流路は、前記モータハウジングの壁内部、かつ前記モータの下側を軸方向に沿って延びる壁内流路部を有する、
請求項1~3の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記中継流路部は、前記ギヤ機構の全ての回転シャフトより下側に配置される、
請求項1~4の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記中継流路部は、前記隔壁部に設けられ前記ギヤハウジングの内部空間と前記モータハウジングの内部空間とを繋ぐ隔壁開口より下側に配置される、
請求項1~5の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ギヤ機構は、差動軸線を中心とする差動装置を有し、
軸方向から見て、前記差動軸線から前記ポンプの吸入口までの距離が、前記差動軸線から前記中継流路部までの距離より長い、
請求項1~6の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記ギヤ機構は、差動軸線を中心とする差動装置を有し、
前記流路は、
前記モータハウジングの壁内部を軸方向に沿って延びる壁内流路部と、
前記中継流路部と前記壁内流路部とを繋ぐ接続流路部と、を有し、
前記接続流路部は、前記モータ軸線と直交する平面に沿って延び、前記中継流路部から前記壁内流路部に向かうに従い前記差動軸線から離間する、
請求項1~7の何れか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車に搭載される駆動装置の開発が盛んに行われている。このような駆動装置には、オイルポンプを用いてモータにオイルを供給してモータを冷却する冷却構造が搭載される。特許文献1には、機械式オイルポンプ、および電動オイルポンプから吐出されるオイルをケースの外側を延びる油路を通過させてモータに供給する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の駆動装置では、流路がハウジングの外側を迂回して配置されていた。このため、流路長が長くなり圧力損失が高く、また駆動装置が大型化しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、小型化を図ることができる駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、モータ軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、前記ロータに接続されるギヤ機構と、前記モータを内部に収容するモータハウジング、および前記ギヤ機構を内部に収容するギヤハウジングを有するハウジングと、流体が流れる流路と、前記流路に接続されるポンプと、を備える。前記ハウジングは、前記モータハウジングの内部空間と前記ギヤハウジングの内部空間とを仕切る隔壁部を有する。前記ギヤハウジングは、前記ギヤハウジングの内部空間を介して前記隔壁部と対向するカバー壁部を有する。前記ポンプは、前記カバー壁部に設けられる。前記流路は、前記ポンプの吐出口に接続され前記ギヤハウジングの内部空間を軸方向に延びる中継流路部を有する。前記中継流路部は、前記カバー壁部に設けられ前記隔壁部側に延び出る第1中継管部と、前記隔壁部に設けられ前記カバー壁部側に延び出て前記第1中継管部と対向し接続される第2中継管部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の駆動装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のメカニカルポンプを示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の中継流路部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のハウジング本体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に関する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。Z軸の矢印が向く側(+Z側)は、鉛直方向上側であり、Z軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、X軸の矢印が向く側(+X側)は、車両における前側であり、X軸の矢印が向く側と逆側(-X側)は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、Y軸の矢印が向く側(+Y側)は、車両における左側であり、Y軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)は、車両における右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0011】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、X軸の矢印が向く側(+X側)が車両の後側であり、X軸の矢印が向く側と逆側(-X側)が車両の前側であってもよい。この場合には、Y軸の矢印が向く側(+Y側)は、車両の右側であり、Y軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0012】
適宜図に示すモータ軸線J1は、鉛直方向と交差する方向に延びる仮想軸である。より詳細には、モータ軸線J1は、鉛直方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸線J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸線J1を中心とする周方向、つまりモータ軸線J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。以下の実施形態においては、左側(+Y側)を「軸方向一方側」と呼び、右側(-Y側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。
【0013】
(駆動装置)
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸39を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。駆動装置100は、ハウジング10と、モータ20と、ギヤ機構30と、ポンプ70と、を備える。
【0014】
(ハウジング)
ハウジング10は、ハウジング本体10Bとモータカバー10Aとギヤカバー10Cとに分離可能である。ハウジング本体10B、モータカバー10A、およびギヤカバー10Cは、それぞれ別部材である。モータカバー10Aは、ハウジング本体10Bの軸方向他方側(-Y側)に配置される。ギヤカバー10Cは、ハウジング本体10Bの軸方向一方側(+Y側)に配置される。
【0015】
なお、本実施形態では、ハウジング10が上述の三部材(ハウジング本体10B、モータカバー10A、およびギヤカバー10C)から構成され互いに分離可能である場合について説明する。しかしながら、本実施形態のハウジング10の部材構成は本実施形態に限定されない。ハウジング10の各部材は、さらに分離可能であってもよい。また、ハウジング10は、さらにインバータ(図示略)を収容する部分を有していてもよい。
【0016】
ハウジング10は、モータ20を内部に収容するモータハウジング11、およびギヤ機構30を内部に収容するギヤハウジング12を有する。モータハウジング11、およびギヤハウジング12は、ハウジング本体10B、モータカバー10A、およびギヤカバー10Cの各部によって構成される。
【0017】
モータハウジング11は、ハウジング本体10Bの筒状部と、当該筒状部の軸方向他方側(-Y側)の開口を覆うモータカバー10Aとによって構成される。モータハウジング11は、ハウジング本体10Bとモータカバー10Aに囲まれた空間に配置される。
【0018】
ギヤハウジング12は、ハウジング本体10Bの軸方向一方側(+Y側)に開口する凹状部と、この凹状部の開口を覆うギヤカバー10Cとによって構成される。ギヤ機構30は、ハウジング本体10Bとギヤカバーとに囲まれた空間に配置される。
【0019】
ハウジング10は、モータ軸線J1と直交する平面に沿って延びるギヤカバー壁部(カバー壁部)15、隔壁部13、およびモータカバー壁部14と、ギヤ機構30を径方向外側から囲むギヤ包囲部(包囲部)16と、モータ20を径方向外側から囲むモータ包囲部17と、を有する。
【0020】
隔壁部13は、ハウジング本体10Bに設けられる。隔壁部13は、モータハウジング11の内部空間とギヤハウジング12の内部空間とを仕切る。隔壁部13は、モータハウジング11およびギヤハウジング12の一部を構成する。隔壁部13には、孔部13aと隔壁開口13bとが設けられる。孔部13aおよび隔壁開口13bは、モータハウジング11の内部空間とギヤハウジング12の内部空間とを繋ぐ。孔部13aには、モータシャフト23およびギヤシャフト33が挿通される。
【0021】
モータカバー壁部14は、モータカバー10Aに設けられる。モータカバー壁部14は、モータハウジング11の一部を構成する。モータカバー壁部14は、モータ20の軸方向他方側(-Y側)に配置される。モータカバー壁部は、モータハウジング11の内部空間を介して隔壁部13と対向する。
【0022】
ギヤカバー壁部15は、ギヤカバー10Cに設けられる。ギヤカバー壁部15は、ギヤハウジング12の一部を構成する。ギヤカバー壁部15は、ギヤ機構30の軸方向一方側(+Y側)に配置される。ギヤカバー壁部15は、ギヤハウジング12の内部空間を介して隔壁部13と対向する。
【0023】
図2に示すように、ギヤカバー壁部15は、ギヤカバー壁部15の軸方向他方側(-Y側)の面から軸方向一方側(+Y側)に窪む保持穴部15aを有する。保持穴部15aは、後述する中間軸線J2を中心とする円形状の穴である。保持穴部15aは、軸方向一方側に底部を有する穴である。保持穴部15aは、大径穴部15bと、小径穴部15cと、を有する。大径穴部15bは、ギヤカバー壁部15の軸方向他方側の面に開口している。小径穴部15cは、大径穴部15bの軸方向一方側に繋がっている。小径穴部15cの内径は、大径穴部15bの内径よりも小さい。小径穴部15cの内周面には、中間軸線J2回りに延びる円環状の溝部15dが設けられている。
【0024】
ギヤ包囲部16は、ギヤ機構30をギヤ機構30の各ギヤ34、35、36、38の径方向外側から囲む。ギヤ包囲部16は、軸方向に沿って延びる。ギヤ包囲部16は、ギヤカバー壁部15と隔壁部13とを繋ぐ。ギヤ包囲部16は、第1包囲壁16aと第2包囲壁16bとを有する。
【0025】
第1包囲壁16aは、ギヤカバー壁部15から隔壁部13側に突出する。第1包囲壁16aは、ギヤカバー10Cの一部である。すなわち、ギヤカバー10Cは、ギヤカバー壁部15および第1包囲壁16aを有する。
【0026】
第2包囲壁16bは、隔壁部13からギヤカバー壁部15側に突出する。第2包囲壁16bは、ハウジング本体10Bの一部である。ハウジング本体10Bは、隔壁部13、第2包囲壁16b、および後述のモータ包囲部17を有する。
【0027】
第1包囲壁16aは、隔壁部13側を向く第1対向面16fを有する。一方で、第2包囲壁16bは、ギヤカバー壁部15側を向く第2対向面16gを有する。第1対向面16fと第2対向面16gとは、軸方向において互いに対向する。第1対向面16fと第2対向面16gとは、ガスケットなどの封止部材を介して互いに接触する。これにより、第1包囲壁16aと第2包囲壁16bとが互いに連結する。
【0028】
モータ包囲部17は、ハウジング本体10Bに設けられる。モータ包囲部17は、モータハウジング11の一部を構成する。モータ包囲部17は、モータ軸線J1を中心として軸方向に沿って延びる筒状である。モータ包囲部17は、隔壁部13とモータカバー壁部14とを繋ぐ。モータ包囲部17は、モータ軸線J1の径方向外側からモータ20を囲む。
【0029】
図1に示すように、ギヤハウジング12の内部には、流体Oが収容されている。流体Oは、例えばオイルである。流体Oは、ギヤハウジング12内の下部領域に貯留されている。流体Oは、後述する流路90内を流れる。本実施形態において流体Oは、モータ20を冷却する冷媒として使用される。また、流体Oは、ギヤ機構30および後述する各ベアリングに対して潤滑油として使用される。流体Oとしては、例えば、冷媒および潤滑油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0030】
(モータ)
モータ20は、モータ軸線J1を中心として回転可能なロータ21と、ロータ21と隙間を介して対向するステータ22と、を有する。ロータ21は、中空のモータシャフト23と、モータシャフト23の外周面に固定されたロータコア24aと、ロータコア24aに固定されたマグネット24bと、を有する。モータシャフト23は、モータ軸線J1を中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。モータシャフト23は、モータシャフト23の内周面からモータシャフト23の外周面までモータシャフト23の壁部を径方向に貫通する貫通孔23aを有する。貫通孔23aは、周方向に間隔を空けて複数設けられている。
【0031】
モータシャフト23の軸方向他方側(-Y側)の端部は、ベアリング41を介して、モータカバー壁部14に支持されている。モータシャフト23の軸方向一方側(+Y側)の端部は、ベアリング42を介して、隔壁部13に支持されている。ベアリング41,42によって、ロータ21がモータ軸線J1回りに回転可能に支持されている。ベアリング41は、モータカバー壁部14の保持穴部14a内に保持され、モータシャフト23における軸方向他方側の端部を支持している。ベアリング42は、隔壁部13の孔部13a内に保持され、モータシャフト23の軸方向一方側の端部を支持している。ベアリング41,42は、例えば、ボールベアリングである。
【0032】
ステータ22は、ロータ21の径方向外側に位置する。ステータ22は、モータハウジング11の内部に固定されている。ステータ22は、ロータ21を囲む環状のステータコア25と、ステータコア25に取り付けられた複数のコイル26と、を有する。
【0033】
(ギヤ機構)
ギヤ機構30は、ロータ21に接続されている。より詳細には、ギヤ機構30は、モータシャフト23の軸方向一方側(+Y側)の端部に接続されている。ギヤ機構30は、減速装置31と、差動装置32と、を有する。減速装置31は、モータシャフト23の軸方向一方側の端部に接続されている。減速装置31は、第1ギヤシャフト33と、第1ギヤ34と、第2ギヤ35と、第3ギヤ36と、第2ギヤシャフト37と、を有する。
【0034】
第1ギヤシャフト33は、モータシャフト23の軸方向一方側(+Y側)に繋がっている。第1ギヤシャフト33は、軸方向に延びる中空のシャフトである。第1ギヤシャフト33は、モータ軸線J1と中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。第1ギヤシャフト33の軸方向他方側(-Y側)の端部は、モータシャフト23の内部に嵌め合わされている。本実施形態において第1ギヤシャフト33の軸方向他方側の端部は、モータシャフト23の軸方向一方側の端部に、スプライン嵌合により連結されている。第1ギヤシャフト33は、隔壁部13の孔部13aに保持されたベアリング43とギヤカバー壁部15に保持されたベアリング44とによって、モータ軸線J1回りに回転可能に支持されている。ベアリング43,44は、例えば、ボールベアリングである。
【0035】
第1ギヤ34は、第1ギヤシャフト33の外周面に固定されている。これにより、第1ギヤ34は、第1ギヤシャフト33を介して、ロータ21に接続されている。第1ギヤシャフト33および第1ギヤ34は、ロータ21と共にモータ軸線J1回りに回転する。
【0036】
第2ギヤシャフト37は、軸方向に延びている。第2ギヤシャフト37は、軸方向に延びる中間軸線J2を中心とする円柱状である。中間軸線J2は、モータ軸線J1と平行な仮想軸である。中間軸線J2は、例えば、モータ軸線J1よりも下側に位置する。本実施形態において第2ギヤシャフト37は、ギヤ機構30に設けられ第2ギヤ35と共に回転するシャフトである。本実施形態において第2ギヤシャフト37は、「回転シャフト」に相当する。
図2に示すように、第2ギヤシャフト37は、軸方向に延びる第2ギヤシャフト本体37aと、第2ギヤシャフト本体37aの軸方向一方側(+Y側)に繋がるポンプ連結部37bと、を有する。
【0037】
第2ギヤシャフト本体37aの軸方向一方側(+Y側)の端部は、ギヤカバー壁部15に保持されたベアリング45によって回転可能に支持されている。ベアリング45は、大径穴部15b内に保持されている。
図1に示すように、第2ギヤシャフト本体37aの軸方向他方側(-Y側)の端部は、隔壁部13に保持されたベアリング46によって回転可能に支持されている。ベアリング45,46は、例えば、ボールベアリングである。
図2に示すように、第2ギヤシャフト本体37aは、連結穴37eを有する。連結穴37eは、第2ギヤシャフト本体37aの軸方向一方側の端面から軸方向他方側に窪んでいる。
【0038】
ポンプ連結部37bは、中間軸線J2を中心として軸方向に延びる円柱状である。ポンプ連結部37bの外径は、第2ギヤシャフト本体37aの外径よりも小さい。ポンプ連結部37bは、第1連結部37cと、第2連結部37dと、を有する。第1連結部37cは、第2ギヤシャフト本体37aよりも軸方向一方側(+Y側)に突出している。第1連結部37cの軸方向一方側の端部は、ポンプ70に接続されている。第2連結部37dは、第1連結部37cの軸方向他方側(-Y側)に繋がっている。第2連結部37dは、連結穴37e内に嵌め合わされている。第2連結部37dは、第2ギヤシャフト本体37aの軸方向一方側の端部にスプライン嵌合により連結されている。第2連結部37dの外径は、第1連結部37cの外径よりも大きい。
【0039】
図1に示すように、第2ギヤ35および第3ギヤ36は、第2ギヤシャフト37の外周面に固定されている。より詳細には、第2ギヤ35および第3ギヤ36は、第2ギヤシャフト本体37aの外周面に固定されている。第2ギヤ35は、第1ギヤ34に噛み合っている。第3ギヤ36は、差動装置32の後述するリングギヤ38に噛み合っている。
【0040】
差動装置32は、リングギヤ38を有する。リングギヤ38には、モータ20から出力されるトルクが減速装置31を介して伝えられる。リングギヤ38の下側の端部は、ギヤハウジング12内に貯留された流体Oに浸漬している。リングギヤ38が回転することで、流体Oがかき上げられる。かき上げられた流体Oは、例えば、減速装置31および差動装置32に潤滑油として供給される。差動装置32は、差動軸線J3回りに車軸39を回転させる。すなわち、差動装置32は、差動軸線J3を中心とする。差動軸線J3は、モータ軸線J1と平行に延びる仮想軸である。
【0041】
(ポンプ)
本実施形態のポンプ70は、回転シャフトに接続され、当該回転シャフトの動力によって駆動するメカニカルポンプである。ポンプ70は、後述する流路90に接続されている。ポンプ70は、ギヤカバー壁部15に設けられている。本実施形態によれば、ポンプ70をギヤカバー壁部15に設けることで、ポンプ70としてメカニカルポンプを採用し易くなる。
【0042】
ポンプ70は、第2ギヤシャフト37の軸方向一方側(+Y側)の端部に接続されている。
図2に示すように、ポンプ70は、インナーロータ71と、インナーロータ71を囲むアウターロータ72と、ポンプカバー79と、を有する。
【0043】
ポンプカバー79は、ギヤハウジング12の外側から、ギヤカバー壁部15に固定される。ポンプカバー79は、ギヤハウジング12の外側から、インナーロータ71およびアウターロータ72を覆う。このため、メンテナンスを行う作業者は、ポンプカバー79をギヤカバー壁部15から取り外すことで、インナーロータ71およびアウターロータ72を、ギヤハウジング12の外側に露出させることができる。
【0044】
インナーロータ71およびアウターロータ72は、中間軸線J2を囲む環状である。インナーロータ71の内側には、ポンプ連結部37bの第1連結部37cが嵌め合わされている。インナーロータ71は、ポンプ連結部37bに対して、中間軸線J2回りに相対回転不能に連結されている。図示は省略するが、インナーロータ71の外周面およびアウターロータ72の内周面には、それぞれ複数の歯部が設けられている。インナーロータ71の歯部とアウターロータ72の歯部とは、互いに噛み合っている。
【0045】
インナーロータ71およびアウターロータ72は、保持穴部15aの小径穴部15c内に位置する。本実施形態においてインナーロータ71およびアウターロータ72は、保持部材76によって保持穴部15a内に保持されている。保持部材76は、軸方向一方側(+Y側)に開口する円筒状の部材である。保持部材76は、小径穴部15c内に嵌め合わされている。保持部材76は、インナーロータ71およびアウターロータ72の軸方向他方側(-Y側)に位置する円板部76aと、円板部76aの外周縁部から軸方向一方側に突出する筒状部76bと、を有する。
【0046】
円板部76aは、インナーロータ71およびアウターロータ72を軸方向他方側(-Y側)から支持している。円板部76aの軸方向他方側の面のうち外周縁部には、軸方向一方側(+Y側)に窪む環状凹部76cが設けられている。円板部76aは、円板部76aを軸方向に貫通する孔部76dを有する。孔部76dには、第1連結部37cが軸方向に通されている。筒状部76bの内側には、インナーロータ71およびアウターロータ72が収容されている。筒状部76bの軸方向一方側の端部は、例えば、保持穴部15aの軸方向一方側の底面に接触している。
【0047】
保持部材76は、溝部15d内に嵌め込まれたスナップリング77によって、軸方向他方側(-Y側)から支持されている。これにより、保持部材76が軸方向他方側に移動することが阻止されている。図示は省略するが、スナップリング77は、中間軸線J2を囲むC字形状である。スナップリング77は、環状凹部76cを軸方向他方側から支持している。保持部材76の軸方向一方側(+Y側)の開口が保持穴部15aの軸方向一方側の底面によって塞がれることで、インナーロータ71およびアウターロータ72を内部に収容するポンプ室73が構成されている。
【0048】
ポンプ70は、流体Oを流入させる流入部74と、流体Oを吐出する吐出部75と、を有する。本実施形態において吐出部75は、流入部74よりも上側に位置する。第2ギヤシャフト37が回転することでインナーロータ71が回転すると、インナーロータ71に噛み合うアウターロータ72も回転する。インナーロータ71およびアウターロータ72が回転すると、流入部74を介してインナーロータ71とアウターロータ72との間に流体Oが吸入される。インナーロータ71とアウターロータ72との間に吸入された流体Oは、インナーロータ71およびアウターロータ72の回転と共に吐出部75まで送られ、吐出部75からポンプ70の外部に吐出される。
【0049】
本実施形態のポンプ70は、ギヤ機構30に設けられた回転シャフトとしての第2ギヤシャフト37に接続されるメカニカルポンプである。そのため、モータ20の駆動に伴い第2ギヤシャフト37が回転することで、ポンプ70を駆動させて流路90内に流体Oを流すことができる。これにより、電動ポンプを用いることなく、流路90内に流体Oを流すことができる。したがって、電動ポンプを制御する回路および電動ポンプに接続される配線などが不要となり、駆動装置100の部品点数を少なくできる。また、駆動装置100の製造コストを低減できる。また、電動ポンプを設ける場合に比べて、駆動装置100を小型化しやすい。
【0050】
また、本実施形態によれば、ポンプ70は、ギヤカバー壁部15に設けられている。このため、ポンプ70をハウジング10の外側から分解することが可能となり、ポンプ70のメンテナンス性を高めることができる。
【0051】
(貯留部)
図1に示すように、本実施形態において駆動装置100は、第1貯留部61と、第2貯留部62と、を備える。第1貯留部61、および第2貯留部62は、流体Oを貯留可能である。第1貯留部61および第2貯留部62は、ギヤハウジング12の内部に設けられている。
【0052】
第1貯留部61は、ギヤハウジング12の下側部分によって構成されている。第1貯留部61の内部は、ギヤハウジング12の内部における下部領域である。第1貯留部61の一部は、ギヤハウジング12の底部によって構成されている。第1貯留部61に流体Oが貯留されることで、ギヤハウジング12の内部における下部領域には、流体溜りPが設けられる。第1貯留部61の内部には、リングギヤ38の下側の端部が位置する。リングギヤ38の下側の端部は、ギヤ機構30における下側の端部である。つまり、本実施形態においてギヤ機構30の下側の端部は、第1貯留部61内に位置する。これにより、リングギヤ38の下側の端部は、流体溜りPに浸漬される。
【0053】
第2貯留部62は、第1貯留部61よりも上側に位置する。本実施形態において第2貯留部62は、ギヤ機構30よりも上側に位置する。第2貯留部62は、上側に開口している。第2貯留部62は、例えば、樋状である。第2貯留部62の内部には、リングギヤ38によってかき上げられた流体Oの少なくとも一部が貯留される。第2貯留部62は、複数の供給口62aを有する。第2貯留部62に貯留された流体Oは、供給口62aから第1ギヤシャフト33および第2ギヤシャフト37を回転可能に支持する各ベアリング43,44,45,46、およびギヤ機構30に供給される。
【0054】
(流路)
本実施形態において駆動装置100は、ハウジング10によって少なくとも一部が構成される流路90を備える。流路90には、流体Oが流れる。本実施形態において流路90は、オイルが流れる油路である。
【0055】
流路90は、吸入流路部91Aと、吐出流路部91Bと、中継流路部92と、接続流路部93と、壁内流路部94と、モータカバー流路部97と、シャフト内流路部95と、ロータコア内流路部96と、を有する。
【0056】
吸入流路部91Aは、ギヤカバー壁部15に設けられている。吸入流路部91Aは、鉛直方向に延びている。吸入流路部91Aの上流側の端部は、第1貯留部61の内部に開口している。ここで、吸入流路部91Aの上流側の端部に位置する開口を吸入口91pと呼ぶ。ポンプ70は、吸入口91pから流体溜りPに溜る流体Oを吸入する。吸入口91pには、図示略のストレーナが配置される。吸入流路部91Aの下流側の端部は、ポンプ70の流入部74に繋がっている。
【0057】
吐出流路部91Bは、ギヤカバー壁部15に設けられている。吐出流路部91Bは、鉛直方向に延びている。吐出流路部91Bの上流側の端部は、ポンプ70の吐出部75に繋がっている。吐出流路部91Bの下流側の端部は、中継流路部92に繋がっている。
【0058】
図2に示すように、吸入流路部91Aおよび吐出流路部91Bは、ギヤカバー壁部15とポンプカバー79との間に設けられる。なお、
図2において、吐出流路部91Bは、模式的に示されており、ポンプ70に対して上側に延びるように図示されている。しかしながら、実際の吐出流路部91Bは、
図1に示すように、ポンプ70に対して下側に延びる。
【0059】
中継流路部92は、ギヤカバー壁部15と隔壁部13との間を延びる流路である。中継流路部92は、吐出流路部91Bと接続流路部93とを繋いでいる。中継流路部92は、吐出流路部91Bを介して、ポンプ70の吐出口に接続される。また、中継流路部92は、ギヤハウジング12の内部空間を軸方向に延びる。
【0060】
本実施形態の中継流路部92は、ギヤハウジング12の内部空間を軸方向に延びる。本実施形態によれば、ギヤハウジング12の内部空間の各ギヤの間の隙間を有効利用して流路90を配置することができ、流路90を設けることに伴うハウジング10の大型化を抑制できる。
【0061】
本実施形態によれば、中継流路部92がギヤハウジング12の内部空間に配置されるため、ギヤハウジング12の壁内部にギヤカバー壁部15と隔壁部13とを繋ぐ流路部を設ける場合と比較して、ハウジング10の壁を薄くすることができ、駆動装置100の小型化および軽量化を図ることができる。
【0062】
本実施形態によれば、流路90が、中継流路部92においてギヤハウジング12の内部空間を横切って延びる。このため、流路90が、ギヤハウジング12の内周面に沿って延びる、すなわち、内部空間の周りを迂回して延びる場合と比較して、流路90を短く、かつも直線的に配置することができる。これにより、流路90を流れる流体Oの圧力損失が低減される。
【0063】
図1に示すように、中継流路部92は、第1中継管部92aと第2中継管部92bとを有する。第1中継管部92aおよび第2中継管部92bは、それぞれ軸方向に沿って延びる管状である。第1中継管部92aと第2中継管部92bとは、ギヤハウジング12の内部空間において互いに接続される。
【0064】
第1中継管部92aは、ギヤカバー壁部15から隔壁部13側に延び出る。第1中継管部92aは、ギヤカバー10Cの一部である。第1中継管部92aは、吐出流路部91Bに接続され、吐出流路部91Bの下流側の端部から軸方向に延びる。
【0065】
第2中継管部92bは、隔壁部13からギヤカバー壁部15側に延び出る。第2中継管部92bは、ハウジング本体10Bの一部である。第2中継管部92bは、接続流路部93に繋がる。
【0066】
第1中継管部92aは、隔壁部13側を向く第1先端面92fを有する。一方で、第2中継管部92bは、ギヤカバー壁部15側を向く第2先端面92gを有する。第1先端面92fと第2先端面92gとは、軸方向において互いに対向し接続される。すなわち、第2中継管部92bは、第1中継管部92aと対向し接続される。
【0067】
第1中継管部92aと第2中継管部92bとは、先端面92f、92g同士を対向して配置することで接続される。一般的に、管部同士を嵌め合わせる場合、管部同士の中心を合わせることが難しい。本実施形態によれば、先端面92f、92f同士を突き合わせることで、第1中継管部92aと第2中継管部92bとを接続することができ、ハウジング10の組み立て工程を簡素化できる。
【0068】
第1先端面92fと第2先端面92gとは、互いに接触していてもよく、また、微細な隙間を介して離間して対向していてもよい。本実施形態によれば、中継流路部92は、ギヤハウジング12の内部空間に配置される。したがって、第1先端面92fと第2先端面92gとの間に隙間が設けられていても、隙間から漏出した流体Oを流体溜りPで回収することができる。また、本実施形態の第1中継管部92aと第2中継管部92bとは、接続部分から漏出する流体Oを回収できるため、例えば中心位置が若干ずれて配置されてもよい。本実施形態によれば、ハウジング10の組み立て工程において、管部92a、92b同士の位置合わせを厳密に行う必要がなく、組み立て工程を簡素化できる。
【0069】
本実施形態の中継流路部92は、ギヤカバー壁部15から突出する第1中継管部92aと、隔壁部13から突出する第2中継管部92bとが、先端面92f、92gで突き合わされる。本実施形態によれば、ギヤカバー壁部15、又は隔壁部13の何れか一方のみから管部が延び出る場合と比較して、各管部92a、92bの突出長さを短くすることができる。これにより、製造工程における各管部92a、92bの成形が容易となる。加えて、管部92a、92bの突出長さを抑えたことで、ハウジング10の組立工程において、ハウジング本体10Bおよびギヤカバー10Cのハンドリングが容易となり、組立工程を簡素化できる。
【0070】
図3に示すように、第1中継管部92aの第1先端面92fは、第1包囲壁16aの第1対向面16fと同一平面上に配置される。同様に、第2中継管部92bの第2先端面92gは、第2包囲壁16bの第2対向面16gと同一平面上に配置される。
【0071】
ここで、第1対向面16fと第2対向面16gとの境界面を第1境界面(境界面)F1と呼び、第1先端面92fと第2先端面92gとの境界面を第2境界面(境界面)F2と呼ぶ。第1境界面F1は、ギヤ包囲部16において、第1包囲壁16aと第2包囲壁16bとを分ける面である。また、第2境界面F2は、中継流路部92において、第1中継管部92aと第2中継管部92bとを分ける面である。
【0072】
本実施形態によれば、第1包囲壁16aと第2包囲壁16bとの第1境界面F1は、第1中継管部92aと第2中継管部92bとの第2境界面F2と同一平面上に配置される。本実施形態によれば、ギヤカバー10Cの加工時に、第1先端面92fと第1対向面16fとをフライス等の加工工程で同時に加工することができる。同様に、ハウジング本体10Bの加工時に第2先端面92gと第2対向面16gとを同時に加工できる。このため、第1先端面92fと第1対向面16fとの相対的な位置精度、および第2先端面92gと第2対向面16gとの相対的な位置精度を高めることができる。結果的に、ハウジング本体10Bとギヤカバー10Cとを組み付ける際に、第1対向面16fと第2対向面16gとの間、および第1先端面92fと第2先端面92gとの間に不均一な隙間生じることを抑制することができる。
【0073】
図1に示すように、本実施形態の中継流路部92は、ギヤ機構30の全ての回転シャフト(第1ギヤシャフト33、第2ギヤシャフト37、車軸39)より下側に配置される。本実施形態によれば、ギヤハウジング12の内部空間で中継流路部92と各ギヤ34、35、36、38との距離を確保し易く、各ギヤとの干渉を抑制できる。
【0074】
本実施形態によれば、中継流路部92を全ての回転シャフト(第1ギヤシャフト33、第2ギヤシャフト37および車軸39)より下側に配置することで、中継流路部92をギヤハウジング12の内部空間の下部領域に配置しやすい。上述したように、ギヤハウジング12の内部における下部領域には、流体溜りPが設けられる。本実施形態によれば、中継流路部92を流体溜りP内に浸漬させることができる。すなわち、本実施形態の中継流路部92は、ギヤハウジング12内の流体溜りPの液面Sより下側に配置される。このため、第1先端面92fと第2先端面92gとの間に隙間が設けられていても、隙間には流体溜りPの液圧が付与されるため、中継流路部92からの流体Oの漏出量を抑制できる。
【0075】
流体溜りPの液面Sの高さは、モータ2の駆動状態などによって変化する。本実施形態の中継流路部92は、液面Sが最も高い場合に、少なくとも第1中継管部92aと第2中継管部92bとの接続部分全体が液面Sより下側に位置していればよい。また、中継流路部92は、液面Sの高さの変化に関わらず、第1中継管部92aと第2中継管部92bとの接続部分全体が、常に液面Sより下側に位置していることがより好ましい。
【0076】
図4に示すように、本実施形態の中継流路部92は、隔壁部13に設けられる隔壁開口13bより下側に配置される。本実施形態によれば、ギヤハウジング12の内部空間で中継流路部92と各ギヤ34、35、36、38との距離を確保し易く、各ギヤとの干渉を抑制できる。また、本実施形態によれば、中継流路部92をギヤハウジング12の内部空間の下部領域に配置しやすく、中継流路部92を流体溜りP内に浸漬させることができる。
【0077】
モータ軸線J1の軸方向から見て、差動軸線J3からポンプ70の吸入口91pまでの距離D2は、差動軸線J3から中継流路部92までの距離D1より長い。上述したように、ギヤハウジング12の内部空間に溜る流体Oは、差動軸線J3周りを回転するリングギヤ38によって撹拌される。本実施形態によれば、ポンプ70の吸入口91pが差動軸線J3から十分に離れて配置されるため、リングギヤ38による撹拌で生じる気泡が、吸入口91pからポンプ70に流入することを抑制できる。加えて、吸入口91pとリングギヤ38との間に、中継流路部92が配置されることで、リングギヤ38から吸入口91pに向かって流れる流体Oを中継流路部92の外周面によって整流することができる。これにより、吸入口91pに気泡が達することを抑制できる。
【0078】
図1に示すように、接続流路部93は、隔壁部13に設けられている。接続流路部93は、モータ軸線J1と直交する平面に沿って延びる。接続流路部93は、中継流路部92と壁内流路部94とを繋ぐ。
【0079】
図4に示すように、接続流路部93は、第1領域93aと第2領域93bとを有する。第1領域93aは接続流路部93の上流側の領域であり、第2領域93bは接続流路部93の下流側の領域である。第1領域93aと第2領域93bとは、ドリルなどによって隔壁部13に設けられる。第1領域93aおよび第2領域93bは、それぞれ直線状に延びる。また、接続流路部93は、第1領域93aと第2領域93bとの接続部分で流体Oの流動方向が折れ曲がる。
【0080】
本実施形態において、第1領域93aは、中継流路部92との接続部から車両前方側(+X側)に向かって延びる。第1領域93aは、中継流路部92から壁内流路部94側に向かうに従い差動軸線J3から離間する方向に延びる。また、第2領域93bは、第1領域93aとの接続部から壁内流路部94に近づくに従い上側に延びる。
【0081】
本実施形態の接続流路部93は、中継流路部92から壁内流路部94に向かうに従い差動軸線J3から離間して延びる。このため、中継流路部92の下流側に繋がる壁内流路部94を、差動軸線J3を中心とする車軸39から離間して配置することができる。車軸39と壁内流路部94が設けられる部分のハウジング10との距離を十分に確保することができ、車軸39とハウジング10との干渉を抑制できる。
【0082】
図1に示すように、壁内流路部94は、モータハウジング11の壁内部に設けられる。より具体的には、壁内流路部94は、モータ包囲部17の壁内部に設けられる。壁内流路部94は、モータ20の下側を軸方向に沿って延びる。壁内流路部94は、接続流路部93の第2領域93bとモータカバー流路部97とを繋ぐ。
【0083】
本実施形態において、モータハウジング11の下端は、ギヤハウジング12の下端より上側に配置される。このため、モータハウジング11内に溜まる流体Oを積極的にギヤハウジング12内へと戻すことができる。また、本実施形態において、壁内流路部94は、モータ20の下側を軸方向に沿って延びる。このため、モータハウジング11の下側の空間を利用して、壁内流路部94を配置することができる。結果的に、駆動装置100が大型化することを抑制しつつ流路90を効率的に配置することができる。
【0084】
上述したように、本実施形態の中継流路部92は、ギヤハウジング12の内部空間において下部領域に配置される。このため、壁内流路部94をモータ20の下側に配置することで、中継流路部92と壁内流路部94とを繋ぐ接続流路部93を短くすることができる。これにより、流路90の全長を短くして流路90の圧力損失を低減できる。
【0085】
モータカバー流路部97は、モータカバー壁部14に設けられる。モータカバー流路部97は、壁内流路部94とシャフト内流路部95とを繋ぐ。モータカバー流路部97の上流側の端部は、壁内流路部94の軸方向他方側(-Y側)の端部に繋がる。モータカバー流路部97の下流側の端部は、保持穴部14aに接続されている。これにより、モータカバー流路部97を流れる流体Oは、保持穴部14aを介してシャフト内流路部95に流入する。
【0086】
シャフト内流路部95は、少なくとも一部がモータシャフト23の内部によって構成されている。本実施形態においてシャフト内流路部95は、モータシャフト23の内部と第1ギヤシャフト33の内部とによって構成されている。シャフト内流路部95は、モータカバー壁部14から隔壁部13を軸方向に貫通してギヤカバー壁部15まで延びている。
【0087】
ロータコア内流路部96は、ロータコア24aに設けられている。ロータコア内流路部96は、貫通孔23aを介して、シャフト内流路部95に繋がっている。ロータコア内流路部96は、ロータコア24aの軸方向両端部に開口している。
【0088】
モータ20が駆動して第2ギヤシャフト37が中間軸線J2回りに回転すると、インナーロータ71が中間軸線J2回りに回転し、ポンプ70が駆動する。ポンプ70が駆動すると、吸入流路部91Aの上流側の端部に設けられる吸入口91pから、流体溜りP内の流体Oが流路90内に吸入される。流路90内に吸入された流体Oは、吸入流路部91A、ポンプ70、吐出流路部91B、中継流路部92、接続流路部93、壁内流路部94、モータカバー流路部97を介して、シャフト内流路部95に流入する。シャフト内流路部95に流入した流体Oの一部は、貫通孔23aを介してロータコア内流路部96に流入する。ロータコア内流路部96に流入した流体Oは、ロータコア24aの軸方向両端部から径方向外側に飛散し、コイル26に供給される。これにより、ステータ22を流体Oでより冷却できる。ロータコア内流路部96からコイル26に供給された流体Oは、隔壁開口13bを介してギヤハウジング12内に戻る。
【0089】
シャフト内流路部95に流入した流体Oの他の一部は、モータシャフト23と第1ギヤシャフト33とがスプライン嵌合された部分に供給される。シャフト内流路部95に流入した流体Oのさらに他の一部は、モータシャフト23の内部から第1ギヤシャフト33の内部へと流れ、第1ギヤシャフト33の軸方向一方側(+Y側)の端部からギヤハウジング12内に戻る。
【0090】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0091】
例えば、上述の実施形態では、ポンプとしてメカニカルポンプを用いる場合について説明した。しかしながら、ポンプは、電動ポンプであてもよい。また、メカニカルポンプが接続される回転シャフトは、モータまたはギヤ機構に設けられているシャフトであれば、どのようなシャフトであってもよい。メカニカルポンプが接続される回転シャフトは、モータシャフトであってもよいし、ギヤ機構のうちモータシャフトに接続された第1ギヤシャフトであってもよい。メカニカルポンプは、回転シャフトに接続され、かつ、ギヤハウジングのギヤカバー壁部に設けられているならば、どのような構成であってもよい。メカニカルポンプの構造は、特に限定されない。
【0092】
本発明が適用される駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。駆動装置が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。モータの中心軸は、鉛直方向と直交する水平方向に対して傾いていてもよいし、鉛直方向に延びてもよい。以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0093】
10…ハウジング、11…モータハウジング、12…ギヤハウジング、13…隔壁部、13b…隔壁開口、15…ギヤカバー壁部(カバー壁部)、16…ギヤ包囲部(包囲部)、16a…第1包囲壁、16b…第2包囲壁、20…モータ、21…ロータ、30…ギヤ機構、32…差動装置、33…回転シャフト、34…ギヤ、70…ポンプ、90…流路、91p…吸入口、92…中継流路部、92a…第1中継管部(管部)、92b…第2中継管部(管部)、93…接続流路部、94…壁内流路部、100…駆動装置、D1,D2…距離、F1…第1境界面(境界面)、F2…第2境界面(境界面)、J1…モータ軸線、J3…差動軸線、O…流体