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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097998
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】電池の製造設備および電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230703BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20230703BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/169
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214449
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前花 英一
(72)【発明者】
【氏名】沖田 功
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011DD13
5H011DD26
5H011FF03
5H011FF04
5H028BB05
5H028BB17
5H028CC08
(57)【要約】
【課題】生産性や溶接品質を維持しつつ、装置コストの増大を抑制して電池の製造コストを低減させることができる電池の製造設備を提供する。
【解決手段】二次電池を構成する複数の構成部品をレーザ溶接する二次電池1の製造設備10である。構成部品としてのバッテリケース2を保持する一対の治具9,9と、少なくとも一対の第一レール11,第二レール12間を有して、治具9,9をレールに沿わせて搬送する搬送機構17と、一対の第一レール11,第二レール12間に設けられてバッテリケース2および蓋体3間の溶接経路5に沿って溶接部位をレーザ溶接するレーザ溶接機15とを備える。レーザ溶接機15は、一対の第一レール11,第二レール12に沿ってそれぞれ搬送された構成部品間に位置する溶接部位をレーザ照射範囲S内に収めるスキャンエリアを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を構成する複数の構成部品をレーザ溶接する電池の製造設備であって、
前記構成部品を保持する複数の治具と、
少なくとも一対のレールを有して、前記複数の治具を前記レールに沿わせて搬送する搬送機構と、
前記一対のレール間に設けられて、前記複数の構成部品間の溶接部位をレーザ溶接するレーザ溶接機と、を備えて、
前記レーザ溶接機は、前記一対のレールのそれぞれに沿って搬送された前記溶接部位をレーザ照射範囲内に収めること、を特徴とする電池の製造設備。
【請求項2】
前記一対のレールは、何れか一方の搬送方向に前記治具を搬送する第一レールと、
前記第一レールと平行に設けられて前記治具を反対方向に搬送する第二レールと、を有し、
前記第一レールにおける前記治具の搬送方向終端と、前記第二レールにおける前記治具の搬送方向始端との間に設けられて前記第一レールから搬送された前記治具を前記第二レールへ循環させる折り返し部を設けて、
前記折り返し部は、折り返しの際、前記治具の方向を同じ方向に維持したまま折り返す折り返し機構を有すること、を特徴とする請求項1に記載の電池の製造設備。
【請求項3】
前記治具には、前記レールを間に挟んで両側にそれぞれ前記構成部品を保持するホルダ部が設けられていること、を特徴とする請求項1または2に記載の電池の製造設備。
【請求項4】
前記構成部品は、有底筒体のバッテリケースと、前記バッテリケースの開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、
前記溶接部位は、前記開口部周縁と、前記蓋体の外周縁との間に設けられることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の電池の製造設備。
【請求項5】
前記構成部品は、有底筒体のバッテリケースの開口部を塞ぐ蓋体と、前記蓋体の端子孔に挿通される端子と、を有し、
前記溶接部位は、前記端子孔の上面側開口部の周縁と、前記蓋体から突設された前記端子の周縁と、の間に設けられることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の電池の製造設備。
【請求項6】
溶接部位を有する複数の構成部品をそれぞれ治具で保持して平行な一対のレールに沿わせて搬送する搬送工程と、
前記一対のレール間に配置されたレーザ溶接機を用いてそれぞれの前記構成部品間の前記溶接部位をレーザ照射範囲内に収めてレーザ溶接するレーザ溶接工程と、
前記治具を同じ方向に維持したまま、前記一対のレール間で移動させて前記構成部品を循環させる折り返し工程と、
を備えることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項7】
前記レーザ溶接工程は、前記レーザ溶接機の両側に搬送されたそれぞれの前記構成部品の溶接部位を片側ずつ交互に溶接することを特徴とする請求項6に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造設備および電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池の製造設備および電池の製造方法としては、電池を保持する治具を搬送装置により循環させるものが知られている。
このようなものでは、溶接工程の前工程で循環型の搬送装置により治具を移動させる(例えば特許文献1等参照)。前工程ではバッテリケースの内部に電解液等が注入されて上面の開口に蓋体が被せられて組付けられる。そして、前工程の後で行われる溶接工程において開口周縁に蓋体がレーザ溶接されてバッテリケースは、密閉される。
また、複数の構成部品を組み合わせる工程が設けられた搬送路も知られている(例えば特許文献2等参照)。このようなでは、搬送路の全長を短縮して、電池の製造に必要とされる時間の短縮を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-083151号公報
【特許文献2】特開2020-72017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の電池の製造設備および電池の製造方法では、前工程で効率良く電池が組み立てられてもレーザ溶接機によりレーザ溶接を行なう時間が高速化の妨げとなる場合がある。このような場合、電池を製造する際に掛かる時間が増大してしまう。
このため、従来の製造設備では、同一ライン上に複数のレーザ溶接機を配置して複数箇所で同様な溶接を実施している。これによりレーザ溶接を高速化することができ目標とされる単位時間あたりの生産量が達成される。
【0005】
一方、レーザ溶接機を構成するレーザ発振器およびガルバノスキャナは溶接用のレーザを高精度かつ高速で走査させる必要があり、設備を構成する機器のなかでも高額な機器である。
しかしながら、レーザ発振器またはガルバノスキャナの台数が増大すると、電池の製造コストを低減させることが困難となることがあった。したがって、さらなる改善が求められている。
そこで、本発明は、生産性および溶接品質を維持しつつ、装置コストの増大を抑制して電池の製造コストを低減させることができる電池の製造設備および電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電池の製造設備は、電池を構成する複数の構成部品をレーザ溶接する電池の製造設備である。製造設備は、構成部品を保持する複数の治具と、少なくとも一対のレールを有して、複数の治具をレールに沿わせて搬送する搬送機構と、構成部品間に位置する溶接部位をレーザ溶接するレーザ溶接機と、を備える。レーザ溶接機は、一対のレール間に設けられて、一対のレールのそれぞれに沿って搬送された構成部品間の溶接部位をレーザ照射範囲内に収めること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生産性および溶接品質を維持しつつ、装置コストの増大を抑制して電池の製造コストを低減させることができる電池の製造設備および電池の製造方法が提供される。
詳しくは、レーザ溶接機の数量を二台に増大させることなく、単数等に抑制することができる。このため、高価なレーザ溶接機を用いても台数が半減して機器コストを減少させることができる。
また、レーザ溶接機に付随するチラー(冷却水循環装置)および各主配管、配線等の数量も減少させることができる。そして、カメラを用いた画像処理システムまたは位置補正機構、シールドガス機能、集塵システム等の溶接品質を向上させるための機器コストを減少させることができる。
さらに、レーザ溶接機等のランニングコストおよびメンテナンスコストも半減させることができる。
そして、製造設備は、レーザ溶接機を設置するスペースを縮小できる。このため、製造設備のスペース効率を向上させて、この点においても製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の電池の製造設備および電池の製造方法で、全体の構成を説明する上面図である。
図2】実施形態1の電池の製造設備で製造される二次電池の構成を説明する斜視図である。
図3】実施形態1の電池の製造設備で二次電池を保持する治具を両側に一対設けた循環治具の構成を説明する斜視図である。
図4】実施形態1の電池の製造方法で溶接順序を説明する模式的な上面図である。
図5】実施形態1の電池の製造工程を治具の進行順序に沿って説明するフローチャートである。
図6】実施形態2の電池の製造方法で端子が溶接される蓋体を治具に保持させた様子を示し、図3に対応する部分の斜視図である。
図7】電池の製造方法で蓋体および端子の構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電池の製造設備および電池の製造方法の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[実施形態1]
図1~5は、本発明の基本的な実施形態1の電池の製造設備10および製造方法を示している。
【0010】
製造設備10は、図1に示すように、環状に連設されたレール部と、レール部に沿って複数の治具6を循環させて搬送する搬送機構17と、を有している。
[レール部]
レール部は、少なくとも一対の第一レール11および第二レール12と、第一レール11および第二レール12の間に略直交して設けられる第三レール13および第四レール14と、を有して環状に接続されている。
【0011】
このうち、第一レール11は、待機している治具6を第一レール11に沿わせてR方向へ搬送する投入待機ステージ30を有している。また、第一レール11は、投入待機ステージ30から治具6が搬送されるR方向へ順次、電池搭載ステージ40、高さ計測調整ステージ50を所定の間隔で有している。
第二レール12は、治具6を第二レール12に沿わせてL方向へ搬送する。第二レール12は、治具6が搬送されるL方向に順次、電池排出ステージ60および、清掃ステージ70を所定の間隔で有している。第一レール11と第二レール12とは所定間隔を置いて平行に配置される。
そして、第二レール12が治具を搬送するL方向は、第一レール11が治具6を搬送するR方向に対して180度反対向きとなるように設定されている。
【0012】
さらに、第三レール13は、第一レール11の終端11aから第二レール12の始端12aに向けて電池を搭載した治具6をW方向へ搬送する。
また、第四レール14は、第二レール12の終端12bから第一レール11の始端11bに向けて電池を搭載していない治具6をWR方向へ搬送して投入待機ステージ30に戻す。
第四レール14が治具6を搬送するWR方向は、第三レール13が治具6を搬送するW方向に対して180度反対向きとなるように設定されている。
【0013】
実施形態1の製造設備10は、第一レール11と第二レール12とによって挟まれる略中間位置で、第三レール13側に溶接ステージ16を有している。溶接ステージ16は、後述するレーザ溶接機15を設けている。レーザ溶接機15は、一定のレーザ照射範囲S内に位置する溶接部位をレーザ溶接可能に構成されている。
【0014】
図3に示すように、搬送機構17は、略コ字状の摺動面を対向させて各第一レール11~第四レール14の上面に跨るスライダ17aを複数有している。スライダ17aは、それぞれ下方から治具6を支持するとともに、各第一レール11~第四レール14の長手方向に向けて摺動面を摺接させながら各治具6を個別に循環させる。
また、搬送機構17は、第一レール11または、第二レール12に沿って治具6を搬送する。そして、搬送機構17は、溶接ステージ16のスキャンエリア内に電池が到達すると、治具6を第一レール11または、第二レール12の上で一旦停止させる。
これにより、溶接ステージ16に設けられたレーザ溶接機15は、電池の構成部品間に位置する溶接部位をレーザ照射範囲S内に収めてレーザ溶接することが可能となる。
さらに、搬送機構17は、投入待機ステージ30、電池搭載ステージ40、計測調整ステージ50、電池排出ステージ60、清掃ステージ70のそれぞれに治具6を搬送する。
搬送機構17は、投入待機ステージ30、電池搭載ステージ40、計測調整ステージ50、電池排出ステージ60、清掃ステージ70を経て循環により再び投入待機ステージ30に戻る。そして、搬送機構17は、の各ステージで行われる各工程の作業に応じて治具6を各第一レール11~第四レール14の上で一旦停止させることができる。
【0015】
[折り返し機構]
図1に示す実施形態1の電池の製造設備は、第一レール11における治具6の搬送方向Rの終端11aと、第二レール12における治具6の搬送方向Lの始端12aとの間に、折り返し部20を設けている。折り返し部20には、第一レール11の終端11aと、第二レール12の始端12aとの間の二か所の接続部にてそれぞれ略直交するように第三レール13が設けられている。これにより、第三レール13は、第一レール11から搬送された治具6を第二レール12へ続けて搬送することができる。
【0016】
さらに、第二レール12の終端12bと第一レール11の始端11bの間には、折り返し部20Rが設けられている。折り返し部20Rには、第二レール12の終端12bと第一レール11の始端11bとの間の二か所の接続部にてそれぞれ略直交するように第四レール14が設けられている。これにより、第四レール14は、第二レール12から第一レール11へ二次電池1を搭載していない複数の治具6を続けて搬送して投入待機ステージ30に戻すことができる。
【0017】
これらの折り返し部20,20Rは、折り返し機構をそれぞれ有している。折り返し機構は、治具6を折り返す際、治具6の方向を同じ方向に維持したまま、すなわち、治具6の向きを変えることなく、第一レール11および第二レール12間でそれぞれ折り返すことができる。
【0018】
実施形態1の折り返し機構は、スライダ17aに設けられた鉛直の回動軸を回転中心としてそれぞれ下方から治具6を回動可能に支持している。治具6は、製造される電池を着脱可能に保持している。そして、折り返し機構はスライダ17aが各折り返し部20,20Rの直交する各接続部に到達すると、スライダ17aに対して治具6を鉛直の回動軸を回動中心として90度回動させる。
【0019】
実施形態1の折り返し部20は、第一レール11と第三レール13との間、および第三レール13と第二レール12との間がそれぞれ90度相違する搬送方向に接続されている。実施形態1の搬送機構17は、治具6を第一レール11から第三レール13に移動する際、スライダ17aの向きが90度回転すると、折り返し機構は治具6をスライダ17aの回転方向(図1中左廻方向り)と反対方向(図1中右廻り方向)に90度回転させる。また、治具6を第三レール13から第二レール12に移動する際、スライダ17aの向きが90度回転すると、折返し機構17は治具6をスライダ17aの回転方向と反対方向に90度回転させる。よって、搬送機構17は治具6の方向を同じ方向に維持したまま、治具6を折り返し部20にて第一レール11から第二レール12へ移動させる。
折り返し部20Rは、第二レール12と第四レール14との間、および第四レール14と第一レール11との間がそれぞれ90度相違する搬送方向に接続されている。搬送機構17は、折り返し部20と同様に治具6の方向を同じ方向に維持したまま、治具6を折り返し部20Rにて第二レール12から第一レール11へ移動させる。
すなわち、搬送機構17は、折り返し機構により搬送方向R,Lが180度異なる第一レール11および第二レール12間を移動させる。搬送方向で次のレールに移動する際、各折り返し部20,20Rでは、スライダ17aの回転方向と反対の方向に180度、治具6を回転させる。これにより、治具6は、同じ方向に維持したまま、搬送方向が異なる各第一レール11~第四レール14に沿って電池を保持して搬送することができる。
【0020】
[電池の構成]
製造設備10によって製造される電池は、主に二次電池1である(図2参照)。二次電池1は、有底筒体のバッテリケース2と、バッテリケース2の内部に収容される正極と負極とをセパレータを介して積層した電極体等の電池構成要素と、バッテリケース2の上面に開口形成された開口部4を覆う蓋体3とを有している。実施形態1では、バッテリケース2および蓋体3をレーザ溶接される構成部品としている。
このうち、蓋体3は、平面視略長方形の板状に形成されている。また、蓋体3は、長手方向に所定寸法離間させて後述する一対の電極3a,3aを有している。また、蓋体3は、開口部4の周囲との間に環状に形成される溶接経路5を設けている。実施形態1では、溶接経路5を溶接部位として、溶接経路5に沿って溶接部位を溶接することにより、開口部4が蓋体3により塞がれる。
【0021】
[レーザ溶接機]
実施形態1の製造設備10は、さらにレーザ溶接機15を備えている。
レーザ溶接機15は、一対の第一レール11,第二レール12間で、かつ第三レール13に近接して設けられている。
レーザ溶接機15は、レーザ照射範囲Sの上方位置に配置されて、ガルバノスキャナからなるガルバノスキャナ機構を走査手段として有している。これにより、レーザ溶接機15は、照射するレーザ光を高精度かつ高速で走査させることができる。
【0022】
図1に示すように、レーザ溶接機15は、ガルバノスキャナによって走査可能な一定のスキャンエリアを有している。
スキャンエリアは、一対の第一レール11,第二レール12のそれぞれに沿って搬送される内側のバッテリケース2の溶接地点A,Bがレーザ照射範囲S内に収まるように設定されている。なお、実施形態1のレーザ溶接機15では、理解を容易化する為、スキャンエリアの範囲をレーザ照射範囲Sとほぼ同様として説明する。
そして、スキャンエリア内に位置するバッテリケース2の溶接経路5に沿い、溶接部位がレーザ溶接機15によって環状にレーザ溶接される。
【0023】
[治具]
製造設備10は、バッテリケース2を保持する複数の治具6を有している。
図3に示すように、各治具6は、第一レール11,第二レール12に沿って搬送機構17により搬送される循環治具7と、それぞれバッテリケース2,2を保持する位置決め治具9,9とを有している。これらの位置決め治具9,9は、循環治具7の第一レール11,第二レール12を間に挟んで両側に設けられている。そして、各位置決め治具9,9には、凹状のホルダ部8,8が設けられている。ホルダ部8は、それぞれバッテリケース2を所定の高さ位置まで没入させて、所定の対称位置に保持する。
【0024】
次に、実施形態1の電池の製造工程について図1図4を参照しつつ、図5のフローチャートの順序に沿って説明する。
実施形態1の製造設備10を用いた電池の製造方法は、環状の溶接経路5からなる溶接部位を有する複数のバッテリケース2をそれぞれ治具6で保持する(ケース保持工程S1)。そして、平行な一対の第一レール11または第二レール12に沿わせて各治具6を反対の搬送方向L,Rへ向けて搬送する(搬送工程S2)。
搬送工程では、搬送機構17が投入待機ステージ30にて待機している治具6を第一レール11に沿わせてR方向へ搬送する。
【0025】
電池搭載ステージ40では、搬入された治具6の位置決め治具9,9の各ホルダ部8,8に二次電池1を構成するバッテリケース2が投入されて保持される。実施形態1の電池搭載ステージ40で投入されて保持されるバッテリケース2の内部には正極と負極とをセパレータを介して積層した電極体等の電池構成要素が挿入されて上面の開口部4に蓋体3が被せられている。
【0026】
高さ計測調整ステージ50に治具6が搬送されると、主に開口部4の周囲に環状に形成される溶接部位である溶接経路5の高さ位置あるいは水平状態が調整される。この高さ調整がレーザ溶接工程の前工程で行われることにより溶接品質および溶接速度を向上させることが出来る。
【0027】
次に、溶接ステージ16にてレーザ溶接機15を用いたバッテリケース2の密封が行われる(レーザ溶接工程A:S3)。すなわち、図4に示す第一レール11,第二レール12間に配置されたレーザ溶接機15を用いて溶接部位Aがレーザ溶接される。実施形態1の製造設備10では、それぞれのバッテリケース2の開口部周縁の溶接地点A,Bがレーザ照射範囲S内に収められる。
まず、片側の第一レール11を移動する治具6d~6fは、保持する電池の溶接部位Aがそれぞれレーザ照射範囲S内に収まる。次に、図2に示す各バッテリケース2上面にそれぞれの蓋体3が溶接経路5に沿ってレーザ溶接される。
この際、折り返し部20では、治具6を同じ方向に維持したまま、回転させることなく、第一レール11から第二レール12間で移動させてバッテリケース2を循環させる(折り返し工程S4)。
【0028】
折り返し後、図4に示す第二レール12を移動する治具6a~6cは、バッテリケース2の開口部周縁の溶接部位Bをそれぞれレーザ照射範囲S内に収める。そして、片側ずつ蓋体3が溶接経路5に沿ってバッテリケース2上面にレーザ溶接される(レーザ溶接工程B:S5)。
【0029】
そして、バッテリケース2が蓋体3により密封された二次電池1は、電池排出ステージ60で排出される(バッテリ排出工程S6)。
ホルダ部8が空となった治具6は、清掃ステージ70で清掃される(清掃工程S7)。清掃された治具6は、第三レール13と略同様の構造の折り返し機構を有する折り返し部20Rにより第四レール14へ移動する(折り返し工程S8)。これによりホルダ部8が空の治具6は、清掃ステージ70から、投入待機ステージ30に戻り循環する。
【0030】
図4に示すように、実施形態1の電池の製造設備10は、レーザ溶接機15が一対の第一レール11,第二レール12を間に挟んで設けられている。二次電池1は、レーザ溶接機15の両側に設けられた一対の第一レール11,第二レール12に沿って搬送される治具6により保持されている。
このため、レーザ溶接工程では、スキャンエリア内に両側の治具6が保持する二つの二次電池1の溶接地点A,Bを捉えられてレーザ溶接することができる。
【0031】
レーザ溶接工程は、レーザ溶接機15の両側に搬送されたそれぞれのバッテリケース2を片側ずつ交互に溶接する。
たとえば、第二レール12では、治具6aの二次電池1のレーザ溶接が終了すると、治具6aがスキャンエリアから図中左の搬送方向Lへ移動される。この際、治具6b,6cは第二レール12に沿ってそれぞれ次のステージ等に向けて図中左の搬送方向Lへ移動する。
この間にすでに第一レール11では、治具6eの二次電池1が前工程から図中右の搬送方向Rへ移動してスキャンエリア内に到達している(図4中、溶接部位A参照)。このため、レーザ溶接機15は、連続させてレーザ光の照射をレーザ照射範囲S内に位置する治具6a,6eに保持されている二次電池1に対して行える。したがって、レーザ溶接機15は、レーザ光を照射しない休止時間を短縮できる。
【0032】
治具6eの二次電池1のレーザ溶接中に治具6bの二次電池1は、図中左の搬送方向Lへ移動してスキャンエリア内に到達している(図4中、溶接部位B参照)。このため、治具6eの二次電池1と連続させてレーザ溶接機15によるレーザ照射範囲S内に反対側の治具6bの二次電池1を収めてレーザ溶接出来、レーザ溶接機15が休止している時間を短縮できる。
【0033】
第一レール11にて治具6eの二次電池1のレーザ溶接が終了すると、治具6eがスキャンエリアから図中右の搬送方向Rへ移動される。この際、治具6d,6fは第一レール11に沿ってそれぞれ次のステージ等に向けて図中右の搬送方向Rへ移動する。
この間にすでに第二レール12では、スキャンエリア内に治具6cの二次電池1が到達する。これらの上記工程を繰り返すことにより製造設備10は、連続させてレーザ溶接機15によるレーザ光の照射をレーザ照射範囲S内に位置する二次電池1に対して行えて休止時間を短縮できる。
【0034】
そして、図1に示す搬送機構17は、折り返し機構を用いることにより治具6の方向を同じ方向に維持したまま、折り返し部20で折り返して、第一レール11から第二レール12へ移動させて循環させることが出来る。
図3に示すように治具6には、第一レール11または第二レール12を間に挟んで循環治具7の両側にそれぞれバッテリケース2を保持するホルダ部8が設けられている。このため、単一のレーザ溶接機15を用いても休止時間を短縮させた連続的なレーザ光の照射が可能となる。したがって、この製造方法では、レーザ溶接により生じる従来の高速化の妨げを容易に解消できる。
【0035】
[実施形態2]
図6は実施形態2で電極3aが溶接される蓋体3を治具6に保持させた様子を示し、図7は、本発明の実施形態2の蓋体3に固定された状態の電極3aを示す斜視図である。
なお、実施形態2の説明では、実施形態1の電池の製造設備と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。また、実施形態2では、実施形態1と相違する部分を中心に図1図5を参照しつつ説明する。
【0036】
実施形態2の電池の製造設備では、図1に示す実施形態1の電池搭載ステージ40とほぼ同様に構成されている。このうち、搬送機構17は、各第一レール11~第四レール14の長手方向に向けてスライダ17aの摺動面を摺接させながら各治具6を個別に循環させる。
図6に示すように、治具6に設けられた位置決め治具9,9は、それぞれホルダ部18,18を有している。搬送機構17により治具6が投入待機ステージ30から電池搭載ステージ40へ搬送されると、各ホルダ部18に構成部品が投入される。
実施形態2では、構成部品となる蓋体3と電極3a,3aとが二組投入されて位置決め治具9,9に保持される。この際、蓋体3と電極3a,3aとが組付けられる。また、二次電池1のバッテリケース2(図2参照)は、投入されていない。このため、図6に示すように、バッテリケース2は投入および組付けされず未装着状態のまま、蓋体3は電極3aとともにホルダ部18に保持される。
【0037】
[電極]
図7に示すようにそれぞれの電極3aは、蓋体3の上面に配置されて絶縁を行う端子台3bと、端子台3bの上面に固着される端子接続板3eとを有している。また、電極3aは、端子接続板3eに電気的に接続されて蓋体3の上面から上方に凸設される円柱状の一対のターミナル3cと、端子3d,3dとを有している。
【0038】
蓋体3には、長手方向の両側縁近傍で各ターミナル3cの外側に一対の端子孔3h,3hが形成されている。
それぞれの端子孔3h,3hには、+,-極となる電極3a,3aの一部を構成する端子3d,3dが挿通される。各端子3dは、後の製造工程でバッテリケース2内に収容される正極と負極とをセパレータを介して積層した電極体等に接続される集電板3fと、集電板3fの上部に一体に形成されて略円柱状に形成される溶着釦部3gとを有している。
【0039】
溶着釦部3gは、上端部がほぼ平担となるように形成されていて、端子孔3hの内径寸法と同等若しくはやや小さな外径寸法を有している。
そして、電極3aは、端子孔3hの下方から溶着釦部3gが挿入されると上端部を端子接続板3e上面側開口から突設させる。この際、上端部の外周縁3iは、上面側の端子孔3hの内周縁とほぼ高さ位置に揃えられて隣接配置される。
【0040】
端子孔3hの上面側には、端子接続板3eが端子台3bを介して蓋体3の上面に一体となるように配設されている。すなわち、実施形態2では、端子孔3hの上面側開口が端子接続板3eに形成されている。
そして、この端子接続板3eに形成された上面側開口の周縁と、上面側開口から一部突設された溶着釦部3gの上端部側の外周縁3iと、の間にレーザ溶接される溶接部位3jが設けられている。
【0041】
実施形態2では、溶着釦部3gの対角に一対の溶接部位3j,3jが形成されている。しかしながら、特にこれに限らず、例えば3箇所以上若しくは、溶着釦部3gの上端部の外周縁3iの全周に連続させて溶接部位3jを設けてもよい。
そして、集電板3fの溶着釦部3gは、上端部を端子孔3hから外部に突出させた状態で、溶接部位3jがレーザ溶接される。これにより、集電板3fは、蓋体3の裏面側に固定される。また、集電板3fは、溶着釦部3gが溶接部位3jにて溶接された端子接続板3eを介してターミナル3cに電気的に接続される。
【0042】
[ホルダ部]
図6に示すように実施形態2の治具6は、それぞれ蓋体3を保持する一対の治具9,9に蓋体用のホルダ部18を備える。
ホルダ部18は、治具6の幅方向に対となる保持片が設けられている。保持片の少なくとも一方は、対向する他方の保持片に対して近接離反可能に形成されている。
例えば、電池搭載ステージ40では、ホルダ部18の一対の保持片間を拡開させて蓋体3を保持片間に投入する。そして、ホルダ部18は、対向する保持片間を近接方向に移動させて、蓋体3の両側面に幅方向から各保持片を当接させる。これにより、蓋体3は、ホルダ部18内の所望の位置にて保持片により両側から挟持されて保持される。
【0043】
そして、図1に示す実施形態1と同様に、治具6は搬送機構17により第一レール11に沿って電池搭載ステージ40から高さ計測調整ステージ50、溶接ステージ16等へ順次搬送される。
折り返し部20,20Rでは、の折り返し機構が治具6の方向を同じ方向に維持したまま、第一レール11から第二レール12へまたは、第二レール12から第一レール11へ折り返す。折り返しにより搬送機構17は、90度ずつ異なるように環状に接続された各レールに沿って搬送方向L,Rまたは、搬送方向W,WRへ治具6の方向を同じ方向に維持したままを連続して移動させる。
【0044】
図7に示す溶接部位3jは溶接ステージ16にてレーザ溶接機15によってレーザ溶接される。この際、各溶接地点A,B(図4参照)にて片側ごとの位置決め治具9に保持されたそれぞれの蓋体3および各電極3a,3a間の溶接部位3jがレーザ照射範囲S内に収まる。このため、一台のレーザ溶接機15で交互に溶接部位3jがレーザ溶接されて蓋体3に各電極3a,3aを接続することができる。
他の構成、および作用効果については実施形態1の電池の製造設備および製造方法とほぼ同じである。
【0045】
なお、同じ二次電池1では、バッテリケース2の幅方向外寸法と比して蓋体3の幅方向外寸法が同等かあるいは、やや小さいものが知られている。このような場合には、図3に示す実施形態1の治具6のホルダ部8として図7に示す実施形態2のホルダ部18と同じものを用いることができる。
すなわち、ホルダ部18は、対向する保持片間を近接方向に移動させる移動量を変更して、バッテリケース2または蓋体3の幅方向外形寸法に対応させる。これにより外形寸法の異なるいずれの構成部品も保持できる。したがって実施形態1および実施形態2の製造設備および製造方法は、治具6を共通の設備として使用することが可能となり、さらに機器コストの増大を抑制できる。
【0046】
上述してきたように、実施形態1,2の電池の製造設備10および製造方法は、生産性および溶接品質を維持しつつ、装置コストの増大を抑制する。これにより電池の製造コストを低減させることができる、といった実用上有益な作用効果を発揮することができる。
詳しくは、レーザ溶接機15の数量を二台等、複数として増大させることなく、単数等に抑制することができる。このため、ガルバノスキャナ等を有する高価なレーザ溶接機15を用いても台数が半減して機器コストを減少させることができる。
【0047】
また、レーザ溶接機15に付随するチラー(冷却水循環装置)および各主配管、配線等の数量も減少させることができる。そして、カメラを用いた画像処理システムまたは位置補正機構、シールドガス機能、集塵システム等の溶接品質を向上させるための機器コストを減少させることができる。
さらに、レーザ溶接機15等のランニングコストおよびメンテナンスコストも半減させることができる。
そして、製造設備10は、レーザ溶接機15を設置するスペースを縮小できる。このため、製造設備のスペース効率を向上させて、この点においても製造コストを低減させることができる。
【0048】
また、各治具6の両側に設けられたホルダ部8がそれぞれバッテリケース2を保持している。
このため、重量バランスが良好で、一基の治具6で二個の二次電池1を安定させて搬送出来る。したがって実施形態1,2の製造設備10は、さらに製造効率を向上させて目標とされる単位時間あたりの生産量を達成可能である。
【0049】
以上、本発明について、各実施形態1,2に基づいて説明したが、本発明は、実施形態1,2に記載した構成に限定されるものではない。本発明は、実施形態1,2に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成変更することができるものである。また、実施形態1,2の構成の一部について、追加、削除、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態1,2に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0050】
すなわち、実施形態1,2のレーザ溶接機15は、一対の第一レール11,第二レール12間に設けられている。しかしながら、本発明は特にこれに限らない。たとえば三本以上の複数本のレールが配置されている場合であってもよい。すなわち、少なくとも何れか一対のレール間にレーザ溶接機15が設けられていればよく、レーザ溶接するレーザ溶接機の形状、数量および型式が特に限定されるものではない。
【0051】
また、実施形態1,2の折り返し部20,20Rには、スライダ17aに対して治具6を鉛直の回動軸を回動中心として90度回動させる折り返し機構が設けられている。しかしながら折り返し機構の構成は、特にこれに限らない。たとえば、折り返しの際、治具9の方向を同じ方向に維持したまま折り返す機構であれば、どのような構成の折り返し機構であってもよい。
【0052】
さらに、複数の構成部品として実施形態1では、図2に示すようにバッテリケース2および開口部4を塞ぐ蓋体3をレーザ溶接で固定している。また実施形態2では、蓋体3および電極3aをレーザ溶接で固定するものを示して説明してきたが特にこれに限らない。たとえば、電池を構成する構成部品であれば、他のどのような電池の構成部品間であってもよく、構成部品の数量、形状または、材質が特に限定されるものではない。
【0053】
そして、実施形態1では、環状の溶接経路5をまた実施形態2では、対角に位置する一対の溶接部位3jをそれぞれ構成部品間に位置する溶接部位として例示して説明してきたが特にこれに限らない。例えば、溶接部位は、環状または、スポット状に限らず、どのような径状のものであってもよく、レーザ溶接の数量、形状または、レーザ溶接の種別が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
1 二次電池(電池)
2 バッテリケース(構成部品の一つ)
3 蓋体(構成部品の一つ)
9 治具
10 製造設備
11,12 第一,第二レール(一対のレール)
15 レーザ溶接機
17 搬送機構
S レーザ照射範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7