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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098000
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】支持装置及び高所降下登攀方法
(51)【国際特許分類】
   A62B 1/18 20060101AFI20230703BHJP
   F16M 11/24 20060101ALI20230703BHJP
   F16M 11/28 20060101ALI20230703BHJP
   F16M 11/32 20060101ALI20230703BHJP
   F16M 13/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A62B1/18 Z
F16M11/24 Z
F16M11/24 E
F16M11/28 C
F16M11/28 K
F16M11/32 Z
F16M13/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214456
(22)【出願日】2021-12-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2021年10月30日~31日 「GRIMP JAPAN Rope Rescue Competition 2021」において公開(株式会社ユニオンジャパン証明書) (2)2021年10月30日~31日 「GRIMP JAPAN Rope Rescue Competition 2021」において公開(GRIMP JAPAN実行委員会証明書)
(71)【出願人】
【識別番号】519230732
【氏名又は名称】株式会社ユニオンジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】早川 弘之
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184AA01
2E184AA19
2E184BB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、ロープの切断が可及的に防止される従来にない非常に実用的な支持装置及び高所降下登攀方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ロープ50を支持するロープ支持部1aが設けられる基部1と、この基部1に設けられる脚部2とから成る支持装置であって、少なくとも三本の脚部2が前記基部1に設けられ、前記脚部2のうち少なくとも一本の前記脚部2は、パイプ状の第一脚部材3と、この第一脚部材3内に摺動自在に設けられ該第一脚部材3の先端開口部から突出可能な第二脚部材4とを有し、前記第一脚部材3の周面には該第一脚部材3の長手方向に長さを有するガイド開口部5が設けられ、このガイド開口部5にガイドされてスライド移動するスライド部6が前記第二脚部材4の基端側周面に設けられ、前記スライド部6から延設された操作用紐材7を巻回して折り返す折り返し部8が前記第一脚部材3の先端側に設けられたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを支持するロープ支持部が設けられる基部と、この基部に設けられる脚部とから成る支持装置であって、少なくとも三本の脚部が前記基部に設けられ、前記脚部のうち少なくとも一本の前記脚部は、パイプ状の第一脚部材と、この第一脚部材内に摺動自在に設けられ該第一脚部材の先端開口部から突出可能な第二脚部材とを有し、前記第一脚部材の周面には該第一脚部材の長手方向に長さを有するガイド開口部が設けられ、このガイド開口部にガイドされてスライド移動するスライド部が前記第二脚部材の基端側周面に設けられ、前記スライド部から延設された操作用紐材を巻回して折り返す折り返し部が前記第一脚部材の先端側に設けられ、荷重が作用する使用状態において前記第一脚部材に対して前記第二脚部材は摺動せず、前記折り返し部で折り返した前記操作用紐材の折り返し側部位を荷重に抗して引動した場合、前記スライド部が前記ガイド開口部にガイドされてスライド移動し前記第一脚部材に対して前記第二脚部材が該第二脚部材の長さ方向に摺動するように構成されていることを特徴とする支持装置。
【請求項2】
請求項1記載の支持装置において、前記折り返し部は定滑車部であることを特徴とする支持装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の支持装置において、前記第一脚部材には紐材連結部が設けられ、また、前記スライドにはスライド折り返し部が設けられ、前記操作用紐材は前記紐材連結部に一端を止着し、前記スライド折り返し部で折り返し、前記折り返し部に巻回して折り返すように構成されていることを特徴とする支持装置。
【請求項4】
請求項3記載の支持装置において、前記スライド折り返し部は動滑車部であることを特徴とする支持装置。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の支持装置において、前記脚部は前記基部に対して上下方向に擺動自在に設けられていることを特徴とする支持装置。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の支持装置において、前記脚部は前記基部に対して着脱自在に設けられていることを特徴とする支持装置。
【請求項7】
高所平坦部を有する建物や崖などの高所構造部において請求項1~6いずれか1項に記載の支持装置を用いて降下登攀する方法であって、前記高所平坦部に前記支持装置を前記第一脚部材と前記第二脚部材を有する脚部が前記高所構造部の隅角部の反対側となるように設置し、続いて、前記基部から吊下げ状態となる前記ロープを使用して降下登攀する際、前記第二脚部材を前記第一脚部材から適宜摺動突出させることで、前記ロープ支持部で支承した前記ロープが前記高所平坦部の隅角部に当接しないように前記基部の水平方向位置を移動させることを特徴とする支持装置を用いた高所降下登攀方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持装置及び高所降下登攀方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、例えば建物や崖などの高所構造部を降下登攀する際に降下登攀用ロープを支持するものとして意匠登録第1640855号に開示される支持装置(以下、従来例という。)を提案している。
【0003】
この従来例は、図11に図示したように降下登攀用ロープ50を係止支持するロープ支持部71a(滑車)を有する基部71と、この基部71の側周面等間隔の位置に擺動自在(擺動方向は上下方向)に設けられる三本の脚部72とから成る三脚構造であり、例えば災害救助時に高所構造部60において降下登攀する場合、この従来例を高所平坦部60aの隅に設置し、この状態で高所平坦部60aのロープ固定箇所61(例えば自然の樹木)に固定された降下登攀用ロープ50を、基部71に設けられたロープ支持部71aに係止支持させて吊下げ状態とし、この吊下げられた降下登攀用ロープ50を使って降下したり登攀したりする。
【0004】
ところで、この従来例は、降下登攀用ロープ50を吊下げ支持する部位、即ち、ロープ支持部71aをできるだけ高所構造部60における高所平坦部60aの隅に近付け、隅角部60cに降下登攀用ロープ50が接触しにくい状態で使用するが、この隅角部60cに降下登攀用ロープ50が接触すると、この降下登攀用ロープ50が切断してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】意匠登録第1640855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、前述した支持装置について更なる研究・開発を進めた結果、ロープの切断が可及的に防止される従来にない非常に実用的な支持装置及び高所降下登攀方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
ロープ50を支持するロープ支持部1aが設けられる基部1と、この基部1に設けられる脚部2とから成る支持装置であって、少なくとも三本の脚部2が前記基部1に設けられ、前記脚部2のうち少なくとも一本の前記脚部2は、パイプ状の第一脚部材3と、この第一脚部材3内に摺動自在に設けられ該第一脚部材3の先端開口部から突出可能な第二脚部材4とを有し、前記第一脚部材3の周面には該第一脚部材3の長手方向に長さを有するガイド開口部5が設けられ、このガイド開口部5にガイドされてスライド移動するスライド部6が前記第二脚部材4の基端側周面に設けられ、前記スライド部6から延設された操作用紐材7を巻回して折り返す折り返し部8が前記第一脚部材3の先端側に設けられ、荷重が作用する使用状態において前記第一脚部材3に対して前記第二脚部材4は摺動せず、前記折り返し部8で折り返した前記操作用紐材7の折り返し側部位を荷重に抗して引動した場合、前記スライド部6が前記ガイド開口部5にガイドされてスライド移動し前記第一脚部材3に対して前記第二脚部材4が該第二脚部材4の長さ方向に摺動するように構成されていることを特徴とする支持装置に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の支持装置において、前記折り返し部8は定滑車部であることを特徴とする支持装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の支持装置において、前記第一脚部材3には紐材連結部9が設けられ、また、前記スライド6にはスライド折り返し部10が設けられ、前記操作用紐材7は前記紐材連結部9に一端を止着し、前記スライド折り返し部10で折り返し、前記折り返し部8に巻回して折り返すように構成されていることを特徴とする支持装置に係るものである。
【0011】
また、請求項3記載の支持装置において、前記スライド折り返し部10は動滑車部であることを特徴とする支持装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の支持装置において、前記脚部2は前記基部1に対して上下方向に擺動自在に設けられていることを特徴とする支持装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1~5いずれか1項に記載の支持装置において、前記脚部2は前記基部1に対して着脱自在に設けられていることを特徴とする支持装置に係るものである。
【0014】
また、高所平坦部60aを有する建物や崖などの高所構造部60において請求項1~6いずれか1項に記載の支持装置Hを用いて降下登攀する方法であって、前記高所平坦部60aに前記支持装置Hを前記第一脚部材3と前記第二脚部材4を有する脚部2が前記高所構造部60の隅角部60cの反対側となるように設置し、続いて、前記基部1から吊下げ状態となる前記ロープ50を使用して降下登攀する際、前記第二脚部材4を前記第一脚部材3から適宜摺動突出させることで、前記ロープ支持部1aで支承した前記ロープ50が前記高所平坦部60aの隅角部60cに当接しないように前記基部1の水平方向位置を移動させることを特徴とする支持装置を用いた高所降下登攀方法に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、ロープが切断したりすることがない非常に実用的な支持装置及び高所降下登攀方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例を示す斜視図である。
図2】本実施例の要部の説明図である。
図3】本実施例の要部の説明図である。
図4】本実施例の要部を説明する分解斜視図である。
図5】本実施例の要部の説明断面図である。
図6】本実施例の使用状態説明図である。
図7】本実施例の使用状態説明図である。
図8】本実施例の使用状態説明図である。
図9】本実施例の使用状態説明図である。
図10】本実施例の要部の動作説明図である。
図11】従来例の使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
本発明は、荷重が作用する使用状態において第一脚部材3に対して第二脚部材4は摺動しない。折り返し部8で折り返した操作用紐材7の折り返し側部位を荷重に抗して引動すると、第二脚部材4に設けられたスライド部6が第一脚部材3に設けられたガイド開口部5にガイドされてスライド移動し、第一脚部材3に対して第二脚部材4が該第二脚部材4の長さ方向に摺動し、第二脚部材4が第一脚部材3から突出し、基部1の水平方向位置が移動する。これは、例えば降下登攀での使用に有効である。
【0019】
具体的には、本発明の支持装置Hを、高所平坦部60aに第一脚部材3と第二脚部材4を有する脚部2が高所構造部60の隅角部60cの反対側となるように設置し、この第二脚部材4を第一脚部材3から適宜摺動突出させることで、基部1の水平方向位置を該隅角部60c側へ移動させてロープ支持部1aで支承したロープ50が高所平坦部60aの隅角部60cに当接しないようにすることができ、よって、ロープ50が切断したりすることが防止される。
【実施例0020】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施例は、ロープ50を支持するロープ支持部1aが設けられる基部1とこの基部1に設けられる少なくとも三本の脚部2とから成る支持装置Hである。
【0022】
尚、本実施例で使用されるロープ50は、建物や崖などの高所構造部60における降下登攀で使用する降下登攀用ロープであるが、本実施例の特性を発揮する用途に適用し得るものである。
【0023】
基部1は、図1,2に図示したように適宜な金属製の部材(アルミ/A5052)を切削加工により形成した板状体(表面アルマイト処理済み)であり、上面中央には、例えば固定用ロープを連結する環状連結体を連結する連結孔(ネジ孔)が設けられている。
【0024】
尚、基部1の成形は切削加工(材料の削り出し)に限らず、鋳造加工や鍛造加工で成形しても良い。
【0025】
また、基部1の側面には脚部2の先端部(上端部)が着脱自在に枢着される枢着部1cが突設されている。
【0026】
この枢着部1cは、図1に図示したように基部1の側面等間隔の位置(3箇所)に水平状にして放射方向に突設される左右一対の支持板材1c’で構成されており、この支持板材1c’間に水平状に架設される枢着軸材1dを介して脚部2の先端部が擺動自在に設けられている。
【0027】
本実施例では、脚部2における擺動は上下方向に180度擺動するように構成され、水平状態とした基部1に対して鉛直方向に垂下した状態から鉛直方向に立設した状態までの範囲で擺動規制されている。
【0028】
本実施例は、この同一平面上に軸心を有する枢着軸材1dを用いた枢着構造から、基部1に対して各脚部2を擺動させることで、フレキシブル(ねじれの位置関係)に形態を変形させることができる。
【0029】
また、本実施例は、隣接する枢着部1c間には補強部1eが架設されている。
【0030】
この補強部1eは、図1,2に図示したように基部1と一体成形された板状体であり、基部1から放射方向に突出した状態で各支持板材1c’の外面側の上端部間に架設されており、この補強部1eの先端面が支持板材1c’の突出先端と連設状態となる位置まで突出した形状に構成されている。
【0031】
尚、補強部1eは、基部1と一体成形でなく別部材の板材を溶接するなどして構成しても良い。
【0032】
また、本実施例では、補強部1eにロープ50を支持するロープ支持部1a(滑車支持構造体)を連結する連結部11が設けられている。
【0033】
この連結部11は、各補強部1eの下面と支持板材1c’の外面との間に架設状態に設けられるコ字形状の第一連結部と、この第一連結部の内面同士間に架設され基部1の下面中央位置に突設される第二連結部とで構成されており、この第一連結部及び第二連結部には適宜な器具を係止連結する孔が設けられている。
【0034】
この連結部11を設けることによっても補強部1eの剛性が向上し、補強部1eとしての機能がより発揮されることになる。
【0035】
脚部2は、図1~6に図示したように適宜な金属製の部材で形成したパイプ状体であり、径の異なる複数の円形パイプ状の脚材2’を継合連結して伸縮自在に設けられている。
【0036】
符号2aは各脚材2’に設けられる連結孔、2bは合致させた連結孔2aに貫挿させて脚材2’同士を適宜な継合位置で止着する連結杆である。
【0037】
また、脚部2は、基端部(最下部の脚材2’の下端部)に連結杆2bを介して接地体2cが着脱自在に設けられている。この接地体2cは図示したものに限らず、例えば地面などの接地箇所に刺し入れ固定可能な先鋭形状など様々な形状のものが用意され、更に、適宜な固定手段(例えばペグ)を利用して差し込み固定されるように構成しても良い。
【0038】
また、本実施例は、不使用時には各脚部2を縮め束ねることでコンパクトな収納状態が得られる。
【0039】
ところで、本実施例は、前述した三本の脚部2のうち一本の脚部2は、最上段の脚材2’が後述する第一脚部材3と第二脚部材4とから成る二重管構造を有するものである。尚、全ての脚部2に二重管構造を具備せしめても良い。
【0040】
具体的には、この脚部2は、円形パイプ状の第一脚部材3と、この第一脚部材3内に摺動自在に設けられ該第一脚部材3の先端開口部から突出可能な(出し入れ自在となる)円形パイプ状の第二脚部材4とを有し、第一脚部材3の周面には該第一脚部材3の長手方向に長さを有するスリット状のガイド開口部5が設けられ、このガイド開口部5にガイドされてスライド移動するブロック状のスライド部6が第二脚部材4の基端側周面に突出状態に設けられ、スライド部6から延設された操作用紐材7を巻回して折り返す折り返し部8が第一脚部材3の先端側に設けられている。
【0041】
従って、折り返し部8で折り返した操作用紐材7の折り返し側部位を引動した場合、スライド部6がガイド開口部5にガイドされてスライド移動することに伴い第二脚部材4が該第二脚部材4の長さ方向に摺動するように構成されている。
【0042】
この第一脚部材3の先端側周面に設けられた折り返し部8は滑車であり、定滑車部として構成されている。
【0043】
従って、操作用紐材7の円滑な折り返し状態における送り動が可能となる。
【0044】
また、本実施例では、第一脚部材3の先端側周面にして折り返し部8の近傍には、操作用紐材7の基端部が連結される紐材連結部9が設けられ、更に、第一脚部材3の基端側周面には折り返し部8で折り返した操作用紐材7の折り返し側部位を巻回止着する紐材止着部13が突出状態に設けられている。
【0045】
スライド部6は、図1~5に図示したようにブロック状部材6’を第二脚部材4の基端側周面に設けて構成されており、更に、このスライド部6よりも基端側には操作用紐材7を巻回止着する紐材止着部12が設けられている。
【0046】
また、本実施例では、スライド部6には、第一脚部材3に設けられた紐材連結部9から延設された操作用紐材7を巻回して折り返すスライド折り返し部10が設けられ、このスライド折り返し部10で折り返すことでスライド部6から延設された操作用紐材7を折り返し部8に巻回して折り返すように構成されている。
【0047】
このスライド部6に設けられたスライド折り返し部10は滑車であり、動滑車部として構成されている。
【0048】
従って、前述した折り返し部8(定滑車部)とスライド折り返し部10(動滑車部)とから成る滑車の原理により、操作用紐材7を楽な力で引動することで第一脚部材3に対して第二脚部材4を摺動させることができる。
【0049】
また、本実施例では、ガイド開口部5の長さは、第一脚部材3に対して第二脚部材4を最大限伸ばしても基部1で荷重を支持する三脚としての機能が破綻しない(倒れない)程度まで当該第二脚部材4を摺動させられることが考慮されて設定されている。
【0050】
符号15は三本の脚部2夫々の間に架設され該脚部2同士の開脚を防止する開脚防止用ロープである。
【0051】
以上の構成から成る本実施例に係る支持装置Hを用いた高所構造部60における降下方法について説明する。尚、高所構造部60は、高所平坦部60aとこの高所平坦部60aから隅角部60cを介して落ち込む落ち込み部60bとを有する建物や崖などの高所構造部60である。
【0052】
先ず、高所平坦部60aの隅に支持装置Hを設置する(図6参照)。この際、第一脚部材3と第二脚部材4を有する脚部2が高所構造部60の隅角部60cの反対側の位置となり、それ以外の二本の脚部2が隅角部60cの近傍位置となるように設置する。
【0053】
この状態で高所平坦部60aのロープ固定箇所61(例えば自然の樹木)にロープ50を固定し、このロープ50を基部1に設けられたロープ支持部1aに係止支持させて落ち込み部60bへ吊下げ状態とする。
【0054】
続いて、降下者Mは、基部1で支持されて落ち込み部60bへ吊下げ状態となるロープ50を使用して降下する(図7図8図10(a)参照)。この際、ロープ50を介して基部1へ荷重が掛かる。
【0055】
続いて、降下者Mが更に降下して、いずれロープ50が隅角部60cに当接してしまうと判断した場合、補助者(図示省略)は操作用紐材7を荷重に抗して引動して第一脚部材3に対して第二脚部材4を摺動させると(図9図10(b),図10(c)参照)、基部1(ロープ支持部1a)の水平方向位置が移動して該基部1(ロープ支持部1a)は隅角部60cの上方鉛直位置へ接近するように移動し、この基部1(ロープ支持部1a)から吊下げ状態となるロープ50は、隅角部60cから離れる方向へ移動して該隅角部60cへの接触が防止される。この補助者による操作用紐材7の引動は、支持装置Hが倒れないことを確認しつつ、ロープ50が隅角部60cに接触するのを防止するように基部1を移動させる操作となる。即ち、前述した三本の脚部2を基部1に連結した構成の支持装置Hの脚部2を伸縮させた場合、基部1が少なくとも各脚部2の基端部に設けられた接地体2c同士を結ぶ仮想三角形の内側上方領域に位置する場合には倒れる(三脚としての機能が破綻する)ことは無い為、この点を考慮して後述する補助者は操作するのが望ましい。
【0056】
一方、登攀する場合には、前述した降下時の工程と逆の工程を行うことになる。登攀の場合、基部1(ロープ支持部1a)が隅角部60cの上方鉛直位置から離反する方向に移動させる。基部1(ロープ支持部1a)が隅角部60cから離れていた方が、降下者Mは降下開始時は降下し易く、登攀者は高所平坦部60aに上がり易いからである。
【0057】
本実施例は上述のように構成したから、高所構造部60における降下登攀で使用した場合、基部1のロープ支持部1aでロープ50を支持することにより該基部1に荷重が掛かった状態であっても脚部2を簡易且つ確実に伸長させることができ、つまり、降下登攀の最中であっても基部1の水平方向位置を移動させることで、ロープ50が高所構造部60の隅角部60cに接したりせず、降下登攀が良好に行える位置へ移動させることができる。
【0058】
また、本実施例は、三本の脚部2が基部1に設けられ、脚部2のうち少なくとも一本の脚部2は第一脚部材3と第二脚部材4を有する構造であるから、ロープ50の安定的支持状態が得られるのは勿論、この安定支持状態を維持した状態のまま基部1の水平方向位置を良好に移動させることができる。
【0059】
また、本実施例は、折り返し部8は定滑車部であるから、操作用紐材7に掛かる摩擦を低減することができ、該操作用紐材7が破損(切断)するのを可及的に防止することができる。
【0060】
また、本実施例は、第一脚部材3には紐材連結部9が設けられ、また、スライド6にはスライド折り返し部10が設けられ、操作用紐材7は紐材連結部9に一端を止着し、スライド折り返し部10で折り返し、折り返し部8に巻回して折り返すように構成されているから、操作用紐材7を軽い力で引動して確実に第一脚部材3に対して第二脚部材4を突出させることができる。
【0061】
また、本実施例は、スライド折り返し部10は動滑車部であるから、操作用紐材7に掛かる摩擦を低減することができ、該操作用紐材7が破損(切断)するのを可及的に防止することができる。
【0062】
また、本実施例は、脚部2は基部1に対して上下方向に180度擺動自在に設けられているから、設置場所に合わせた使用形態が得られ易く非常に使い勝手が良い。
【0063】
また、本実施例は、脚部2は基部1に対して着脱自在に設けられているから、用途に合わせた脚部2に適宜変更することができる。
【0064】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0065】
H 支持装置
1 基部
1a ロープ支持部
2 脚部
3 第一脚部材
4 第二脚部材
5 ガイド開口部
6 スライド部
7 操作用紐材
8 折り返し部
9 紐材連結部
10 スライド折り返し部
50 ロープ
60 高所構造部
60a 高所平坦部
60c 隅角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11