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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098031
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】回転弁のステム延長構造と回転弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/44 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
F16K31/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214506
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】浅川 芳比古
(72)【発明者】
【氏名】和田 光史
(72)【発明者】
【氏名】中野 陸
【テーマコード(参考)】
3H063
【Fターム(参考)】
3H063AA06
3H063BB22
3H063DA03
(57)【要約】
【課題】ステムを長く延長した場合にも、延長用のステムの上下方向の移動や傾きによる位置ずれを抑えて弁開・弁閉位置まで正確に弁体を回転操作できる回転弁のステム延長構造と回転弁を提供する。
【解決手段】回転弁本体1のロングステム10の弁体4に対して反対側に設けた操作部11で弁体4を開閉操作する。ボデー2の上部にエクステンションボンネット12が固定され、その内部にロングステムが挿通され、ロングステム上部の支持部20がエクステンションボンネットの上部側に係合されてロングステムの重量が支えられる。ステムに固定されたストッパ40と、エクステンションボンネットの上部のストッパプレート41とが当接してステムを回転規制するストッパ機構13が、支持部に対して操作部に近い側に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転弁本体のロングステムの弁体に対して反対側に設けた操作部で弁体を開閉操作する回転弁のステム延長構造であって、前記回転弁本体のボデーの上部にエクステンションボンネットが固定され、このエクステンションボンネット内に前記ロングステムが挿通された状態で、このロングステムの上部に設けられた支持部が前記エクステンションボンネットの上部側に係合されて前記ロングステムの重量が支えられると共に、前記ステムと一体に回転可能に固定されたストッパと、前記エクステンションボンネットの上部に固定されたストッパプレートとからなり、これらが当接して前記ステムの回転を規制するストッパ機構を有し、このストッパ機構が、前記支持部に対して前記操作部に近い側に設けられていることを特徴とする回転弁のステム延長構造。
【請求項2】
前記ロングステムを軸受けするベアリングを備え、このベアリングが前記ロングステムと前記エクステンションボンネットとの間の前記弁体よりも前記操作部に近い側に配置され、このベアリングと前記操作部との間にこの操作部に近接して前記ストッパ機構が設けられた請求項1に記載の回転弁のステム延長構造。
【請求項3】
前記支持部が前記ロングステムの外径方向に突出形成され、この支持部が前記エクステンションボンネットの上端側に形成された段部面に係合して前記ロングステムが位置決め状態で回転可能に設けられると共に、前記支持部と前記段部面との間にスラストワッシャが装着された請求項1又は2に記載の回転弁のステム延長構造。
【請求項4】
請求項1に記載の回転弁のステム延長構造によりステムを延長したことを特徴とする回転弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールバルブ等の回転弁を地中に埋設する場合などにステムを延長する回転弁のステム延長構造に関し、特に、手動操作により弁体を操作し、操作部から弁体までの距離が長くなる場合に好適な回転弁のステム延長構造と回転弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、地中埋設用のボールバルブ等の回転弁に対し、地上からハンドル等の手動操作部で弁体を操作するためのステム延長構造が知られている。この場合、回転弁の弁棒の上部に延長弁棒が弁棒と一体に回転するように接続され、この延長弁棒の外周囲には、ロングネック構造の延長用ボンネットが設けられ、この延長用ボンネットの下端がフランジ接続などにより回転弁の弁箱に接続される。このような構造により、回転弁を地中深くに埋設してこの回転弁から地上の操作位置までの距離が長くなる場合にも、延長弁棒を介して離れた地上からハンドルで弁体を回転操作可能になっている。
【0003】
この種の延長弁棒を用いたステム延長構造では、延長弁棒が長尺化するにつれてその重量も大きくなる。延長弁棒の重量が弁体に加わった場合、弁体がボデー内部の弁座部に対して位置ずれし、シール性に悪影響を及ぼす可能性がある。これを防ぐため、ステム延長構造の回転弁において、延長弁棒の重量が弁体に加わることを回避する構造を備えたものが知られている。
【0004】
そのようなステム延長構造の回転弁として、例えば、特許文献1のバタフライ弁が開示されている。このバタフライ弁では、弁体に接続された弁棒の上部に、荷重受け手段を介して延長弁棒の下端部が連結され、この延長弁棒が弁棒と一体に回転可能に設けられている。荷重受け手段は、荷重受けスペーサーと、荷重受けスペーサーの上面に配置されたスラストベアリングとからなっている。この回転弁は、延長弁棒への弁棒の挿入部分の上端と延長弁棒の挿入空間部上面との間に隙間が設けられた状態で、荷重受け手段により延長弁棒の重量を受けてこの延長弁棒による弁体への負荷を低減しようとするものである。
【0005】
一方、特許文献1とは異なる弁体への延長弁棒の荷重による負荷を低減する回転弁のステム延長構造として、延長用ボンネットよりも下部の弁箱側に係合用の段差部を形成し、この段差部に対して延長弁棒の下部外周側に突出形成した支持部を係合させて、延長弁棒の荷重を弁箱側で受けるようにしたり、又は、延長用ボンネットの下部に弁箱との接続用ブラケットを設け、このブラケットに形成した係合用の段差部に、延長弁棒の下部外周側に突出形成した突出部を係合させ、延長弁棒の荷重をブラケット側で受けるようにした構造が知られている。
これらの回転弁では、通常、延長用ボンネットの上部に断面コ字形状のストッパ用プレート部材が固定され、このストッパ用プレート部材には延長弁棒の回転を90°に規制する規制部が形成され、一方、延長弁棒の当該位置にはこの延長弁棒と一体に回転可能なストッパ片が固定され、これらによってストッパ機構部が用いられる。そして、ストッパ機構部において、ストッパ片が規制部に当接することで、弁棒の回転範囲が略90°の範囲に回転規制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4113415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者の特許文献1のバタフライ弁には、延長弁棒の回転を90°に規制するストッパ機構部についての記載がなされておらず、ストッパ機構部が設けられていない場合、弁体を正確に開閉操作することができなくなり、所定の弁開又は弁閉状態に回転操作できない可能性がある。このステム延長構造では、荷重受けスペーサーとスラストベアリングとを必要とするため部品点数が多くなり、これらを弁棒と延長弁棒との間に装着しつつ、延長用ボンネットを弁箱にフランジ接続して一体化する必要があるため組立ても面倒になる。
【0008】
一方、後者のストッパ機構部を設けた構造の回転弁の場合には、延長弁棒の突出部と係合用段差部とが、延長用ボンネットよりも下部の弁箱又は延長ボンネット下部のブラケットの位置で係合するため、この係合位置と延長用ボンネット上部側のストッパ機構部とが離れた位置関係となる。通常、弁棒と弁箱との間にはクリアランスが設けられており、手動操作部に力を加えたときには、このクリアランスを通して弁棒が傾いたり、左右に振れたりすることがある。このとき、最上部側の手動操作部を力点、突出部の係合位置を支点、この支点に対し力点と反対端の弁体付近を作用点とすると、延長弁棒が長くなるにつれて支点から作用点までの距離に対する支点から力点までの距離も長くなる。このことから、力点側、すなわち弁棒の手動操作部側の振れが大きくなり、さらに、この手動操作部側の動きは、支点を介して反対側の作用点側にも大きな動きとして伝わりやすい。
【0009】
延長弁棒の手動操作部側の動きが大きくなると、この延長弁棒のストッパ片がストッパ用プレート部材に対して上下に移動したり傾いたりして位置ずれを起こし、これらが互いに当接できなくなったり、所定の位置で当接できなくなる可能性がある。これにより、ストッパ機構部が適切に機能せず、手動操作によって弁体を所定の弁開又は弁閉状態に停止できなくなるおそれがある。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、回転弁のステム延長構造であり、ステムを長く延長した場合にも、延長用のステムの上下方向の移動や傾きによる位置ずれを抑えて弁開又は弁閉位置まで正確に弁体を手動操作できる回転弁のステム延長構造と回転弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、回転弁本体のロングステムの弁体に対して反対側に設けた操作部で弁体を開閉操作する回転弁のステム延長構造であって、回転弁本体のボデーの上部にエクステンションボンネットが固定され、このエクステンションボンネット内にロングステムが挿通された状態で、このロングステムの上部に設けられた支持部がエクステンションボンネットの上部側に係合されてロングステムの重量が支えられると共に、ステムと一体に回転可能に固定されたストッパと、エクステンションボンネットの上部に固定されたストッパプレートとからなり、これらが当接してステムの回転を規制するストッパ機構を有し、このストッパ機構が、支持部に対して操作部に近い側に設けられている回転弁のステム延長構造である。
【0012】
請求項2に係る発明は、ロングステムを軸受けするベアリングを備え、このベアリングがロングステムとエクステンションボンネットとの間の弁体よりも操作部に近い側に配置され、このベアリングと操作部との間にこの操作部に近接してストッパ機構が設けられた回転弁のステム延長構造である。
【0013】
請求項3に係る発明は、支持部がロングステムの外径方向に突出形成され、この支持部がエクステンションボンネットの上端側に形成された段部面に係合してロングステムが位置決め状態で回転可能に設けられると共に、支持部と段部面との間にスラストワッシャが装着された回転弁のステム延長構造である。
【0014】
請求項4に係る発明は、回転弁のステム延長構造によりステムを延長した回転弁である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、回転弁のステムを延長可能な構造であり、ロングステム上部の支持部をエクステンションボンネットの上部側に係合してロングステムの重量を支えつつ、ステムの回転規制用のストッパ機構を支持部に対して操作部に近い側に設けていることにより、ステムを長く延長して操作部から弁体までの距離が長くなる場合であっても、ステムの上下方向の移動や傾きによる位置ずれを抑え、ステムの回転時にはストッパがストッパプレートに所定の位置で確実に当接することで、手動操作により弁開又は弁閉位置で正確に弁体の回転操作を停止できる。この場合、支持部をロングステムに一体に形成することで部品点数を抑えることができる。さらに、ストッパプレートをエクステンションボンネットの上部に固定し、このストッパプレートをロングステム上部に形成した支持部に近接させて配置し、さらにストッパをエクステンションボンネットの上部に係止される支持部を基準とし、そこから所定の高さ位置となるように設けることで、エクステンションボンネットの上部を共通の基準高さ位置としてこれらの高さ位置も正確に合わせることができるため、両部材の位置ずれを抑えつつ簡便に組立て可能となり、ストッパとストッパプレートとを正確に位置合わせしてストッパ機構としての精度を高めることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によると、ロングステムを軸受けするベアリングを設けていることで、例えば、操作部の動作によりステムの軸方向と交差する方向の動きが生じても、このベアリングによりロングステムの振れなどの動きを抑える。しかも、弁体よりも操作部に近い側にベアリングを設けていることで、操作部の回転操作による動きをベアリングで抑えた状態で弁体側に伝え、ステム全体の軸方向と交差する動きの抑制効果が高まる。ベアリングと操作部との間に、操作部に近接してストッパ機構を設けていることにより、ベアリングの機能によりストッパがストッパプレートに対して上下方向に移動したり傾いたりすることを防ぎ、このストッパ機構により弁開又は弁閉位置まで正確に操作できる。
【0017】
請求項3に係る発明によると、支持部をロングステムに一体に形成でき、この支持部をエクステンションボンネットの段部面に係合し、ロングステムを位置決め状態で回転可能とすることでステム側への振れを抑えつつ操作可能となる。支持部と段部面との間にスラストワッシャを装着していることにより、ロングステムの荷重が段部面に加わるときの回転トルクを小さく抑えて操作性を向上することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によると、ステムを長く延長して操作部から弁体までの距離が長くなる場合にも、延長用のステムの上下方向の移動や傾きによる位置ずれを抑え、弁開又は弁閉位置まで正確に弁体を回転操作できる。この場合、支持部をロングステムに一体に形成することで部品点数を抑えることができる。さらに、ストッパプレートをロングステム上部に形成した支持部に近接させて配置し、これらの高さ位置も合わせることができるため、両部材の位置ずれを抑えつつ簡便に組立て可能となり、ストッパとストッパプレートとを正確に位置合わせしてストッパ機構としての精度を高めた回転弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の回転弁のステム延長構造を用いた回転弁を示す縦断面図である。
図2図1のA部拡大断面図である。
図3】回転弁の平面図である。
図4図1の回転弁の一部省略分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明における回転弁のステム延長構造と回転弁を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の回転弁のステムの延長構造を用いた回転弁の縦断面図であり、図2は、図1のA部拡大断面図を示している。図3は、回転弁の平面図を示し、図4は、回転弁の一部省略分離斜視図を示している。
図において、回転弁(以下、回転弁本体1という)は、例えば、ボールバルブからなり、地中に埋設されて使用される。回転弁本体1は、ボデー2、ステム3、弁体4、弁座であるシートリング5を備え、ボデー2内に、ステム3を介して弁体4がシートリング5に回転可能に装着され、ステム3を90°回転して弁体4によりボデー内流路2aが開閉される、いわゆるクォーターターン型のバルブよりなっている。
【0021】
本発明の回転弁のステム延長構造は、回転弁本体1に、ロングステム10、操作部11、エクステンションボンネット12、ストッパ機構13を用いて構成され、回転弁本体1のステム3にロングステム10が連結されてステム3が延長され、ロングステム10の延長側に設けた操作部11により弁体4を開閉操作可能に設けている。なお、本実施形態では、ステム3に別体のロングステム10を連結させたステム延長構造を例に説明するが、本発明のステム延長構造はこれに限らず、ステム自体が長く一体形成されていて、連結構造となっていないものであってもよい。
【0022】
ロングステム10は、例えば、回転弁に要求される回転弁本体1から操作部11までの距離を確保できるような長さに設けられる。例えば、回転弁が低温弁として用いられる場合は、ISO規格(ISO28921-1)に求められる延長ボンネットの条件を満たすような長さであり、それ以外の場合でも、回転弁が用いられる場所に応じて求められるボンネット長さ、例えば、流路中心から操作部までの距離が、好ましくは200mm以上、より好ましくは300mm以上、さらに好ましくは500mm以上、とりわけ1000mm以上となるような長さが挙げられる。
このようなロングステムが適用されるバルブのサイズは、1/2~6インチが想定される。また、流路中心から操作部までの距離は、特に限定されないが、例えば最大でも3000mmとすることが考えられる。
【0023】
また、ロングステム10は、その下部がステム3の上部と凹凸嵌合可能に設けられる。ロングステム10の上部側には、外径方向に突出形成する環状の支持部20が設けられ、この支持部20の底面21は、エクステンションボンネット12の上方側に係合可能な平面に設けられる。一方、支持部20の外周面は、操作部側に向けて縮径するテーパ形状に形成される。ロングステム10の支持部20よりも上部には、このロングステム10のステム軸10aの外径よりも縮径した円筒部22が形成され、この円筒部22の外周に平行二面部23が設けられる。
【0024】
操作部11は、手動操作用のレバーハンドルからなり、このレバーハンドル11のロングステム10への取付け側には、平行二面部23に嵌合する嵌合穴24が形成される。操作部11は、嵌合穴24に平行二面部23を嵌合した状態でロングステム10の上端側に固着ボルト25で固定され、これにより、操作部11から手動操作でロングステム10を回転操作可能になっている。
【0025】
エクステンションボンネット12は、ボデー2の上部に固着可能な枠状のブラケット26の上部に、下部フランジ部30を介して取付ボルト・ナット27により接続される。エクステンションボンネット12がブラケット26を通して回転弁本体1の上部に固定可能に設けられることで、回転弁本体1のステム3が、軸装方向に延長可能に設けられる。
【0026】
エクステンションボンネット12の上部には上部フランジ部32が設けられ、この上部フランジ部32の上面側に、上部フランジ部32と略同一の外径に形成された環状の板状カバー33が取付け可能に設けられる。
カバー33の内径側には環状の段部面34が形成され、カバー33をエクステンションボンネット12に固定したときに、この段部面34がエクステンションボンネット12の上部側に配置される。
【0027】
エクステンションボンネット12のボデー2への取付け時には、ロングステム10が、エクステンションボンネット12内に挿通された状態で、その支持部20がエクステンションボンネット上端側の段部面34に係合される。これにより、ロングステム10は、支持部20を通してその重量がエクステンションボンネット12側で支えられ、しかも、段部面34によって位置決め状態で回転可能になっている。
【0028】
なお、支持部20は、上記の通り、外周面が縮径テーパ形状に形成されるが、必ずしもそのような形状に限られず、断面四角形状に張り出したようなものであってもよい。ただし、本実施形態のように縮径テーパ形状とすることで、その上面に異物が堆積することを防ぎやすくなるほか、段部面34に支持部20が収まっていることが目視で確認しやすくなる。特に、後者の効果は本発明において重要であり、支持部20が確実に段差面34に収まることを確認できることで、ロングステム10がエクステンションボンネット12に対し、傾き等が無い状態で且つ正確な位置に支持されるようになり、その結果、ロングステム10に設けたストッパ40とエクステンションボンネット12に固定したストッパプレート41を確実に当接させることが可能となる。
【0029】
図4において、ストッパ機構13は、ストッパ40とストッパプレート41とにより構成される。
ストッパ40は、略環状の薄板によって形成され、その中央にはロングステム10の平行二面部23に嵌合する嵌合穴部42が設けられ、一方、外周側には突出片43が180°間隔で2箇所に形成される。ストッパ40は、平行二面部23への嵌合穴部42の嵌合により、ロングステム10と一体に回転可能に固定される。
【0030】
ストッパプレート41は、断面略コ字形状に形成され、その下部面側がエクステンションボンネット12の上部に固定用ボルト・ナット31によってカバー33を介して固定される。ストッパプレート41の上部面側は、組付け後の前記ストッパ40の高さ位置に一致するように予め折り曲げ形成され、ストッパ40の収容位置には挿通穴部44がくり抜き形成されてこの挿通穴部44内をストッパ40が回動可能に設けられる。なお、固定用ボルト・ナット31を、前述した取付ボルト・ナットとして共用することも可能である。
【0031】
挿通穴部44の内周には、突出片43の端面が当接してロングステム10の回転を規制可能な当接部45が突出形成される。当接部45は、2つの突出片43、43がそれぞれ当接可能に略180°の間隔で2箇所に形成され、ロングステム10の回転操作時には、ストッパ機構13において、ストッパ40の各突出片43の一端側が、ストッパプレート41の各当接部45にそれぞれ当接してストッパ40の回転可能な範囲が略90°に規制され、これによってステム3も弁開から弁閉までの略90°の回転角度に規制される。ストッパ機構13は、ストッパプレート41の上部側に設けられ、このストッパプレート41上部側の近接位置に操作部11が固定されていることで、支持部20に対して操作部11側により近い側に設けられている。
【0032】
図2に示すように、ロングステム10とエクステンションボンネット12側(カバー33)との間には、弁体4よりも操作部11に近い側にベアリング50が装着され、このベアリング50によってロングステム10が軸受けされる。ベアリング50と操作部11との間において、操作部11側に近接する位置に上記ストッパ機構13が設けられる。
【0033】
支持部20の底面21と段部面34との間にはスラストワッシャ51が装着され、このスラストワッシャ51を介してロングステム10がカバー33(エクステンションボンネット12)に支受けされている。本実施形態において、スラストワッシャ51は、ベアリング50に一体に形成されている。
【0034】
図3図4において、ストッパ40と操作部11との間のストッパプレート41の上面側には、ロック用プレート部材52がロングステム10と一体に回転可能に取り付けられ、このロック用プレート部材52の先端側にはロック用の貫通穴53が形成されている。
【0035】
一方、ストッパプレート41において、貫通穴53が対応する弁開及び弁閉位置には貫通穴部54が形成され、ロングステム10を回転したときには、貫通穴53を弁開又は弁閉の何れかの位置の貫通穴部54に合わせた状態にし、図示しない南京錠によってこれら貫通穴53、貫通穴部54をロック可能にしている。
【0036】
なお、上記実施形態において、回転弁本体1をボールバルブとしているが、バタフライバルブ等の異なる回転弁本体に対しても前記と同様にステムを延長できる。何れの場合にも、その使用場所としては、地中への埋設に限ることなくあらゆる場所に設置でき、例えば、グレーチングの下の配管に設けられたバルブから操作部までの距離が長い場合や、保温用などとしても使用でき、また、回転弁本体1内を流れる流体としては、オイルやガス、薬品などの様々な種類のものを流すことができる。
【0037】
本発明の回転弁のステム延長構造を設ける場合、回転弁本体1の組み立てと同時にステム3をロングステム10で延長できることは勿論、製造後の回転弁本体1や、配管に設置された既設の回転弁本体1に対しても、あらたにロングステム10を接続して延長することができる。
【0038】
また、ベアリング50とスラストワッシャ51とを一体に形成しているが、これらを別体に形成してもよく、この場合、これらベアリング50とスラストワッシャ51とをロングステム10に対して異なる位置に装着することも可能となる。
【0039】
図1に示すように、ロングステム10は、内部に空洞を設けることで軽量化や材料の削減を図ることができる。ロングステム10の支持部20の底面21側の外径、及び支持部20の断面形状は、ロングステム10の長さや重量に応じて任意に設定でき、これによって支持部20の外周面をテーパ形状以外の形状に設けることも可能である。
【0040】
次いで、本発明の回転弁のステム延長構造と回転弁の上記実施形態における作用を説明する。
図1図4において、上述したように、回転弁本体1のステム3にロングステム10を連結し、このロングステム10の延長側に設けた操作部11で弁体を開閉操作する回転弁のステム延長構造であり、ロングステム10の上部の支持部20をエクステンションボンネット12上部側の段部面34に係合してロングステム10を支えつつ延長しているので、ロングステム10の重量が弁体4側に加わることを防ぎ、弁体4の位置ずれなどを阻止してシートリング5とのシール性を維持した状態で弁体を開閉操作できる。支持部20を外方より目視しつつ、ロングステム10をエクステンションボンネットに挿入できるため組立て性も向上する。
【0041】
ストッパ40とストッパプレート41とよりなるストッパ機構13を、支持部20に対して操作部11に近い側に設けているので、これら操作部11、ストッパ機構13、支持部20を近接した位置に配置し、操作部11を力点、支持部20と段部面34との係合位置を支点、ストッパ機構13を作用点としたときに、力点11側に加えた力により作用点13側に出力される振れなどの影響を小さく抑えることができる。
【0042】
しかも、ロングステム10の支持部20をエクステンションボンネット12上部の段部面34に位置決めし、かつ、作用点となるストッパ機構13のストッパ40が、支点である支持部20に対して、力点である操作部11の側に位置しているため、操作部11の回転操作によりロングステム10に傾き方向の力が加わったとしても、ストッパ40の傾き動作を操作部11側の傾き動作と同程度以下に抑えている。
【0043】
この状態で、前述したように操作部(力点)11と支持部(支点)20とを近接させて配置していることで、支持部(支点)20に対する操作部(力点)11の傾きを小さく抑え、支持部(支点)20に近接したストッパ(作用点)40の傾きをさらに小さく抑えることが可能となる。これにより、ロングステム10を手動操作で回転操作するときに、ストッパプレート41に対して、ステム3に固定されたストッパ40の上下方向への移動や傾きによる位置ずれを防止し、ストッパ40の突出片43をストッパプレート41の当接部45に確実に当接させ、弁体4を所定の弁開又は弁閉状態まで正確に操作可能となる。
【0044】
突出片43をストッパ40に対して180°間隔で2箇所に設け、ロングステム10の回転規制時には、各突出片43をステム3の軸芯に対して点対称の位置でストッパプレート41の当接部45に均等に当接させていることで、ストッパプレート41への偏荷重を防いでロングステム10の傾きも阻止できる。
【0045】
ストッパプレート41をステム3の支持部20と同様にエクステンションボンネット12の上部側に設けているので、これら両部材を近くに配置でき、これに加えて、エクステンションボンネット12の高さを基準として、ストッパプレート41、支持部20の高さ位置を合わせた状態で容易に組み立て可能となる。
【0046】
このとき、ストッパプレート41の上部側底面にロングステム10のステム軸10aの上面側を係合させた状態でストッパプレート41をカバー33に固定し、ロングステム10の支持部底面21を段部面34に係合させている。これにより、ロングステム10を上下方向に位置決めしつつ装着でき、このロングステム10に固定したストッパ40と、ストッパプレート41とを調整した状態で当接させ、ロングステム10(ステム3)が所定の範囲以上に回転することを確実に阻止している。
【0047】
また、ロングステム10を軸受けするベアリング50を、ロングステム10とエクステンションボンネット12との間の弁体4よりも操作部11に近い側に配置し、ベアリング50と操作部11との間に操作部11に近接してストッパ機構13を設けているので、例えば、操作部11の回転動作でロングステム10に横方向の動きが生じても、ベアリング50によってその動きを抑える。これにより、ベアリング50よりも操作部11に近いストッパ40の動きを抑制し、このストッパ40とストッパプレート41とによるストッパ機構13の機能性がさらに向上する。弁体4よりも操作部11の近くにベアリング50を配置していることで、操作部11側で弁体4の傾きを効果的に抑制する。
【0048】
ロングステム10の外径方向に突出形成した支持部20を段部面34に係合してロングステム10を位置決め状態で回転可能に設けているので、エクステンションボンネット12に対して軸芯を合わせた状態でロングステム10を取り付け、このロングステム10をステム3に対して調心しつつ接続できる。このため操作部11からの回転力を効率的に伝達可能な状態で、ステム3の延長を図ることが可能になる。
【0049】
支持部20と段部面34との間にスラストワッシャ51を装着しているので、ロングステム10を長く延長してその重量が増加する場合にも、スラストワッシャ51によってロングステム10(ステム3)の回転トルクを小さく抑える。
【0050】
さらに、スラストワッシャ51をベアリング50に一体に設けていることで、部品点数を少なくして簡素化を図ることができ、これらベアリング50とスラストワッシャ51とを同時に装着して簡便に組み立てできると同時に、スラストワッシャ51の段部面34への装着によりベアリング50を正確に芯出しした状態でエクステンションボンネット12側に装着し、ロングステム10及びステム3のぐらつきを防いで回転弁本体1を高精度に延長することが可能になる。
【0051】
ベアリング50やスラストワッシャ51などの消耗部品が回転弁本体1の上部側に配置されるため、メンテナンス性が向上し、これら部品の消耗度合い等を上方から容易に目視によって確認でき、その交換も簡単になる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 回転弁本体
2 ボデー
3 ステム
4 弁体
10 ロングステム
11 レバーハンドル(操作部)
12 エクステンションボンネット
13 ストッパ機構
20 支持部
34 段部面
40 ストッパ
41 ストッパプレート
50 ベアリング
51 スラストワッシャ
図1
図2
図3
図4