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特開2023-98032ワーク吸着ユニット並びにワーク搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098032
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ワーク吸着ユニット並びにワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/86 20060101AFI20230703BHJP
   B25J 15/06 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
B65G47/86 G
B25J15/06 L
B25J15/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214511
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390029090
【氏名又は名称】靜甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】前野 房枝
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟司
【テーマコード(参考)】
3C707
3F072
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS02
3C707FS01
3C707FT11
3C707FU01
3C707GU01
3C707HS14
3F072AA21
3F072KD03
3F072KD04
3F072KD12
(57)【要約】
【課題】 ワークの吸着にエアの供給を要しないワーク吸着ユニットと、そのワーク吸着ユニットを用いてワークを搬送するワーク搬送装置を提供すること。
【解決手段】
ダブルノック機構のノック棒11の押圧操作により、吸着パッド3内を連通させるエア通路4の開口端に対し、回転子2に配設されたテーブル部材13に設けられたキャップ部材7を接離させ、吸着対象のワークBが押し当てられた吸着パッド内の密閉状態を切替え、吸着パッド3内に発生する差圧によってワークBを吸着または開放する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
筐体のワーク吸着面に配設された吸着パッドと、
前記吸着パッド内空間を前記ワーク吸着面の裏面側へ連通させるエア通路と、
前記エア通路の開口端を開閉させるエア通路開閉手段と、
を備え、
前記エア通路開閉手段は、
ダブルノック機構を構成するカム本体、ノック棒並びに回転子と、
前記エア通路の開口端に対向させてキャップ部材が配設され、前記回転子に対して摺動回転自在に配設されたテーブル部材と、
常には、前記キャップ部材を前記エア通路の開口端に当接させて前記エア通路を閉状態とするように前記テーブル部材を付勢する付勢部材と、
からなり、
前記ノック棒の押圧操作による前記回転子の昇降によって、前記テーブル部材に配設された前記キャップ部材による前記エア通路の開口端の開閉状態を切替え可能に構成されていることを特徴とするワーク吸着ユニット。
【請求項2】
前記ダブルノック機構の
前記カム本体は、基軸の軸方向先端の太径円筒部に軸方向に延出する複数本の溝が形成され、かつ、太径円筒部の各溝間における基端には2連の山形歯状のカムが形成されており、
前記ノック棒は、前記カム本体の太径円筒部の外周に軸方向に昇降可能に嵌設され、基端に山形歯状のカムが形成されており、
前記回転子は、前記カム本体とノック棒とを配設させる円管状の空部の基端側内周面に前記溝と嵌合させる複数本の突状部が形成され、各突状部の先端は前記カム本体のカム並びに前記ノック棒のカムと係合する傾斜部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク吸着ユニット。
【請求項3】
前記ノック棒は、先端の操作部を前記筐体のワーク吸着面から外方へ突出させ、吸着対象物のワークを前記吸着パッドに押し当てる押圧操作によって昇降可能に配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワーク吸着ユニット。
【請求項4】
前記筐体には、前記テーブル部材を介して前記付勢部材に付勢された前記回転子の位置を規制するストッパが配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のワーク吸着ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のワーク吸着ユニットが、ワーク受取位置とワーク搬出位置が割り当てられたワーク搬送経路で循環走行可能に配設されていることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項6】
ワーク受取位置および/またはワーク搬出位置には、吸着パッドに対するワークの押圧操作および/またはノック棒の押圧操作を行うロボットが配設されていることを特徴とする請求項5に記載のワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着用のエアを用いることなく充填容器などのワークを吸着・離脱可能なワーク吸着ユニットと、そのワーク吸着ユニットを用いてワークを搬送するワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークを吸着パッドに吸着させるワーク吸着ユニットを備え、ワークをそのワーク吸着ユニットに保持した状態で所望の位置へ搬送し、受け渡しや振り分けを行うワーク搬送装置が用いられている(特許文献1, 2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたワーク搬送装置は、ワークとしての容器を保持する複数の保持手段を有する回転体と、その回転体の2つのステーションに配置したラベル貼り付け機構を備え、容器にラベルを貼付するように搬送する装置であるが、前記回転体の隣接位置には第1受け渡し機構が設けてあり、さらにその隣接位置に容器を搬送する供給コンベヤとロボットが設けられている。そして、このロボットは、供給コンベヤが搬送する横転状態の容器を吸着保持してから正立状態に起立させ、受け渡し領域において前記第1受け渡し機構の保持手段へ受け渡すように構成されている。
【0004】
ワーク搬送装置に用いられるロボットとしては、公知の6軸のロボットであり、ハンドを水平方向および垂直方向に回転可能とされ、そのハンドの先端には、ワーク吸着ユニットを構成する支持フレームとその支持フレームに設けられた吸着パッドが設けられ、吸着パッドには吸引ポンプに連通接続されたエアホースが接続され、吸着パッドに負圧を供給することでワークを吸着保持し、他方、吸着パッドへの負圧の供給を停止させることでワークの保持状態を解放する構成の産業用ロボットが多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-008641号公報
【特許文献2】WO2018/078780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、吸着パッドにエアホースを介して供給した負圧を用いてワークを吸着する構成のワーク吸着ユニットは、そのエアホースの取り回しが必要になる。
【0007】
前述の特許文献1に示すワーク吸着ユニットは、4つの吸着パッドがハンドにそれらの吸着面を同一平面上に配列させて設けられており、供給コンベヤが搬送する横転状態の容器の胴部にロボットのハンドを追従させながら、吸着パッドが下方を向いた状態のハンドを容器の向きに応じて水平方向に回転させ、容器の頭部が同一方向となるように方向を揃えて吸着保持するように構成されている。このようにハンドを追従させたり、水平方向に回転させたりする際には特に、ハンドは各吸着パッドに接続されたエアホースを引き延ばしたり、巻き付けたりする必要もあり、その取り回しが煩雑となっていた。
【0008】
また、吸着したワークを搬送するワーク搬送装置は、必ずしも上述のようなハンドを有するロボットに限られず、ワークの搬送範囲も前述のようなロボットの本体の回転範囲、並びに、ハンドの水平方向および垂直方向の移動範囲に限らない。例えば、特許文献2に示すように、走行レール上を移動する走行台の下方に吸着パッドからなるワーク吸着部を上下動可能に設けたワーク吸着ユニットを用意し、コンプレッサエアをエジェクタに供給して真空を作ることで吸着パッドにワークを吸着させて、その状態で走行レールに沿ってワーク吸着ユニットを、ロボットのハンドを用いる移送が困難な直線距離を搬送するようなワーク搬送装置も提案されている。
【0009】
このように搬送距離が長いとか、または、搬送経路が複雑であるといった駆動条件であっても、エアホースを介したエアの供給を要せず、静音、かつ、安定したワークの吸着搬送が実行されるのであれば、それは頗る望ましい。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、ワークの吸着にエアの供給を要しないワーク吸着ユニットと、そのワーク吸着ユニットを用いてワークを搬送するワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明のワーク吸着ユニットは、筐体と、筐体のワーク吸着面に配設された吸着パッドと、前記吸着パッド内空間を前記ワーク吸着面の裏面側へ連通させるエア通路と、前記エア通路の開口端を開閉させるエア通路開閉手段と、を備え、前記エア通路開閉手段は、ダブルノック機構を構成するカム本体、ノック棒並びに回転子と、前記エア通路の開口端に対向させてキャップ部材が配設され、前記回転子に対して摺動回転自在に配設されたテーブル部材と、常には、前記キャップ部材を前記エア通路の開口端に当接させて前記エア通路を閉状態とするように前記テーブル部材を付勢する付勢部材と、からなり、前記ノック棒の押圧操作による前記回転子の昇降によって、前記テーブル部材に配設された前記キャップ部材による前記エア通路の開口端の開閉状態を切替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
前記ダブルノック機構の前記カム本体は、基軸の軸方向先端の太径円筒部に軸方向に延出する複数本の溝が形成され、かつ、太径円筒部の各溝間における基端には2連の山形のカム歯が形成されており、前記ノック棒は、前記カム本体の太径円筒部の外周に軸方向に移動可能に嵌設され、基端に山形のカム歯が形成されており、前記回転子は、前記カム本体とノック棒とを配設させる円管状の空部の基端側内周面に、前記溝と嵌合させる複数本の突状部が形成され、各突状部の先端は前記カム本体のカム歯並びに前記ノック棒のカム歯と係合する傾斜部として形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記ノック棒は、先端の操作部を前記筐体のワーク吸着面から外方へ突出させ、吸着対象物のワークを前記吸着パッドに押し当てる押圧操作によって昇降可能に配設されていることを特徴とする。
【0014】
前記筐体には、前記テーブル部材を介して前記付勢部材に付勢された前記回転子の位置を規制するストッパが配設されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のワーク吸着ユニットによれば、吸着対象物のワークを前記吸着パッドに押し当てる際にその吸着パッドとともに押圧するなど、前記ノック棒の押圧操作による前記回転子の昇降により、前記キャップ部材による前記エア通路の開口端の開閉状態を切替え、前記ワークが押し当てられた前記吸着パッド内に発生する差圧によって前記ワークを吸着・開放することができる。
【0016】
そして、本発明のワーク搬送装置は、前述のワーク吸着ユニットがワーク受取位置とワーク搬出位置が割り当てられたワーク搬送経路で循環走行可能に配設されていることを特徴とする。
【0017】
本発明のワーク搬送装置によれば、エアホースを介したエアの供給を要せずに、ワーク受取位置とワーク搬出位置とがどのような距離・位置関係にあったとしても静音、かつ、安定してワークの吸着搬送を実行することができる。
【0018】
ワーク受取位置および/またはワーク搬出位置には、吸着パッドに対するワークの押圧操作および/またはノック棒の押圧操作を行うロボットが配設されていることを特徴とする。
【0019】
本発明のワーク搬送装置によれば、人手に頼ることなく、制御によって簡便にワークの吸着搬送を実行することができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明のワーク吸着ユニットによれば、エアホースを介したエアの供給を要せず、ダブルノック機構のノック棒の押圧操作により吸着パッド内に発生する差圧を利用してワークの吸着・離脱を行うことができる。そして、このワーク吸着ユニットを用いた本発明のワーク搬送装置によれば、搬送距離の長短や経路の単純・複雑等に拘わらず、安定してワークの吸着搬送を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るワーク吸着ユニットの実施形態の要部構成を説明する縦断面図
図2】本実施形態のワーク吸着ユニットのダブルノック機構を構成するカム本体、ノック棒並びに回転子の分解図
図3】本実施形態のワーク吸着ユニットのダブルノック機構を構成するカム本体、ノック棒並びに回転子の組み込み図
図4】本実施形態のワーク吸着ユニットでワークを吸着させる為のノック棒の押圧操作時の状態を示す説明図
図5】本実施形態のワーク吸着ユニットでワークを吸着させる為の差圧発生時の状態を示す説明図
図6】本実施形態のワーク吸着ユニットでワークの吸着を解除させる為のノック棒の押圧操作時の状態を示す説明図
図7】本実施形態のワーク吸着ユニットでワークを吸着させる為の差圧開放時の状態を示す説明図
図8】本発明に係るワーク搬送装置の実施形態の要部構成を説明する一部断面説明図
図9】本発明に係るワーク搬送装置のワークの受取位置におけるワーク吸着ユニットと移動子の姿勢を説明する一部断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、発明に係るワーク吸着ユニット1の実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0023】
本実施形態のワーク吸着ユニット1は、ワークとしての食器用洗剤等を充填する容器Bを吸着保持するためものである。
【0024】
本実施形態のワーク吸着ユニット1は、図1に示すように、略長方体の外形を有する筐体2を備えており、その筐体2の一面(図における上面)には、容器Bを吸着させるための吸着パッド3が2個、吸着させる容器Bの軸方向に、共に容器Bの胴部を吸着可能な距離を以て配設されている(以降、この吸着パッド3が配設される筐体の面をワーク吸着面として説明する)。なお、本実施形態において、吸着パッド3は容器Bの胴部の太さや重さを勘案して直径30mmの多段ベローズパッドを用いているが、使用する吸着パッド3の種類やサイズはこれに限るものではなく、その配設数や配設位置もワークに合わせて変更可能とする。
【0025】
筐体2の前記ワーク吸着面を構成する部材の厚み内には、各吸着パッド3のベローズによって形成されたパッド内空間を前記ワーク吸着面の裏面側へ連通させるエア通路4が形成されている。
【0026】
そして、本実施形態のワーク吸着ユニット1は筐体2内に開口するエア通路4の開口端を開閉させるエア通路開閉手段8を備えている。
【0027】
本実施形態において、エア通路開閉手段8は、いわゆるダブルノック機構9を構成するカム本体10、ノック棒11並びに回転子12と、回転子12に対して摺動回転自在に配設されたテーブル部材13と、テーブル部材13を前記ワーク吸着面側へ付勢する付勢部材(14)とから構成されている。
【0028】
ダブルノック機構9のカム本体10は、図2図3に示すように、基軸10aの軸方向先端の太径円筒部10bに軸方向に延出する複数本の溝10cが形成され、かつ、太径円筒部10bの各溝10c間における基端には2連の山形のカム歯10dが形成されている。
【0029】
また、ノック棒11は、カム本体10の太径円筒部10bの外周に嵌設され、長孔11cとカム本体10のビス孔10fとを貫くビス18で連結されており、基端には山形のカム歯11aが形成されている。そして、先端の操作部11bを筐体2の前記ワーク吸着面から外方へ突出させ、吸着対象物の容器Bの胴部を吸着パッド3に押し当てる押圧操作によってビス18を長孔11c内を滑らせ、所定量を移動可能に配設されている。また、本実施形態において、ノック棒11は、2つの吸着パッド3,3間に先端の操作部11bが突出するように配設されている。
【0030】
そして、本実施形態において、回転子12は、カム本体10とノック棒11とを配設させる円管状の空部12aを有する円柱状に形成されている。空部12aの基端側内周面には、溝10cと嵌合させる複数本の突状部12bが形成され、各突状部12bの先端はカム本体10のカム歯10d並びにノック棒11のカム歯11aと係合する傾斜部12cとして形成されている。
【0031】
テーブル部材13は、環状部13aを回転子12に対してベアリング15を介して摺動回転自在に嵌着させて配設されており、環状部13aから外方へ延出するテーブル部13bには、エア通路4のそれぞれの開口端に対向させてニトリルやシリコンなどの樹脂材からなるキャップ部材7が配設されている。
【0032】
本実施形態において前記付勢部材(14)はコイルばね14からなり、テーブル部材13のテーブル部13bと筐体2の内底面との間に配設され、常には、キャップ部材7をエア通路4の開口端に当接させてそのエア通路4を閉状態とするように、テーブル部材13を付勢するように配設されている。つまり、本実施形態においては、コイルばね14の付勢力と、テーブル部13bの裏面と筐体2の内底面とにそれぞれ設けられたコイルばね係止部16によってコイルばね14の配設位置が固定されていることにより、回転子12の回転は阻害されず、テーブル部材13自体の回転が規制される。
【0033】
また、筐体2には、テーブル部材13を介してコイルばね14に付勢された回転子12の位置を規制するストッパ17が配設されている。
【0034】
そして、エア通路開閉手段8は、ノック棒11の押圧操作による回転子12のスライド移動によって、テーブル部材13に配設されたキャップ部材7によるエア通路4の開口端の開閉状態を切替え可能に構成されている。
【0035】
ここで、ダブルノック機構は公知の機構ではあるが、本実施形態のワーク吸着ユニット1のエア通路開閉手段8におけるダブルノック機構の動作について簡単に説明する。
ノック棒11の押圧操作によってノック棒11の基端のカム歯11aと回転子2の突状部12bの先端の傾斜部12cとが当接した状態で回転子12がコイルばね14の付勢に抗しつつ突状部12bをカム本体10の溝10cに沿わせた状態で溝10c内を移動して軸方向基端側へ移動(この方向への移動を「下降」といい、逆の方向への移動を「上昇」という)する。
【0036】
ノック棒11と回転子2が所定量下降し、突状部12bが溝10cを外れ、ノック棒11の押圧力よりもコイルばね14の付勢力が勝ると、ノック棒11と回転子2は上昇する。その際に、ノック棒11のカム歯11aとカム本体10のカム歯10cが同位に位置した状態で、回転子2の傾斜部12cがノック棒11のカム歯11aのカム面からカム本体10のカム歯10dのカム面に渡り、さらにカム本体10の2連の山形歯状の谷部10eへ移動することで回転子2は回転する。傾斜部12cが谷部10eに位置すると、回転子2とノック棒11は上昇を停止してその高さ位置にとどまる。本実施形態においては、この状態を容器Bの吸着時に利用する。
【0037】
そして、ノック棒11の再度の押圧操作によって、ノック棒11の基端のカム歯11aが谷部10eに位置する傾斜部12cに当接することで、回転子2がコイルばね14の付勢に抗しつつ軸方向基端側へ一旦、下降する。それにより、傾斜部12cは谷部10eを抜ける。
【0038】
その後、ノック棒11の押圧力よりもコイルばね14の付勢力が勝ると、回転子12とノック棒11は再び軸方向先端側へ上昇するが、その際に、回転子12の傾斜部12cは、ノック棒11のカム歯11aのカム面からカム本体10のカム刃11aのカム面に案内され、さらには、回転方向に形成されている各溝10c内へ案内される。このとき、回転子2は回転し、ノック棒11と回転子12の位置・係合関係は元の状態に戻る。本実施形態においては、この状態を容器Bの吸着前後に利用する。
【0039】
以下、本実施形態のワーク吸着ユニット1における容器Bの吸着と開放のシステムを説明する。
まず初めに、図4に示すように、エア通路4の開放端を揺動プレート13のキャップ部材7が塞いでいる状態において、筐体2に設けられた吸着パッド3に対して容器Bの胴部分を押し当てる。その時、多段ベローズからなる吸着パッド3を容器Bの胴部分で塞ぎ、押しつぶすようにしながら、ノック棒11を軸方向基端側へ押圧する。
【0040】
ノック棒11と回転子2が所定量(ノック棒の最下降位置)下降し、突状部12bが溝10cを外れたところで、ノック棒11の押圧力を弱め、コイルばね14の付勢力を勝らせると、ノック棒11と回転子12は上昇するとともに、回転子12は回転し、傾斜部12cが谷部10eに位置すると、回転子12とノック棒11は上昇を停止してその高さ位置にとどまる。そのとき、図5に示すように、一旦、エア通路4の開放端から離間したキャップ部材7が、エア通路4の開放端を再び塞ぎ、容器Bの胴部が押し付けられた吸着パッド3のパッド内空間とそれに連通するエア通路4を密閉空間とする。その際、吸着パッド3が元に戻ろうとする力を利用して差圧を作り、容器Bを吸着パッド3に吸着させる。
【0041】
そして、容器Bの吸着を解除するときは、図6に示すように、吸着パッド3に吸着されている容器Bで再び、ノック棒11を軸方向基端側へ押圧する。ノック棒11の再度の押圧操作によって、回転子2がコイルばね14の付勢に抗しつつ軸方向基端側へ再度下降する。これにより、キャップ部材7はエア通路4の開放端から離間し、吸着パッド3のパッド内空間とそれに連通するエア通路4の密閉空間を開放する。これにより、容器Bの吸着は解除される。
【0042】
そして、ワーク吸着ユニット1は、突状部12bが谷部10eを外れたところで、ノック棒11の押圧力を弱めてコイルばね14の付勢力を勝らせると、図7に示すように、回転子12とノック棒11は再び軸方向先端側へ上昇し、その際に回転子12の傾斜部12cは回転方向にある各溝10c内へ案内され、ノック棒11と回転子12の位置・係合関係は元の状態に戻る。このようにノック棒11の押圧操作を繰り返すことにより、容器Bの吸着と解除を連続的に行うことが可能となる。
【0043】
次に、本実施形態のワーク搬送装置20について簡単に説明する。
本実施形態のワーク搬送装置20は、公知の構成のリニア搬送装置を採用し、容器Bを保持して搬送しながら容器Bの姿勢を横転状態から正立状態に変更させる姿勢切替装置であり、前述のワーク吸着ユニット1を循環走行させる経路内に、容器Bの受取位置から搬出位置までの容器搬送経路が割り当てられたワーク搬送装置20である。
【0044】
すなわち、ワーク搬送装置20は、図8に示すように、無端状の循環経路をなすガイドレール(不図示)と、このガイドレールに沿って移動される複数の移動子21と、それぞれの移動子21にステイ22を介して取り付けられたワーク吸着ユニット1と、移動子21を前記ガイドレールに沿って移動させるリニアモータ(不図示)とを備えている。
【0045】
前記リニアモータは、それぞれの移動子21に固定される永久磁石(不図示)と、前記ガイドレールの長手方向に沿って等ピッチで配置された多数の電磁コイル(不図示)とを備え、前記各電磁コイルへの電流の供給と停止を制御部で制御することにより、各移動子21の移動と停止を個別に制御可能とされている。
【0046】
前記ガイドレールは、トラック形状に形成されており、前記供給コンベヤと並行して水平に配置された上部直線部と、その斜め下方に配置され搬出コンベアと並行させて配置された下部直線部と、前記上部直線部と下部直線部の一端部を繋ぎ、容器Bを前記受取位置から搬出位置へ案内する際に容器Bの姿勢を横転状態から正立状態に変更させる搬送湾曲部と、下部直線部と上部直線部の他端部を繋ぐ戻り湾曲部とから構成されている。
【0047】
容器Bの受取位置には、前記供給コンベヤ上に横転状態で供給される容器Bを把持し、吸着パッド3に押圧するとともに、把持した容器Bでノック棒11を押圧操作するロボット(不図示)が配置されている。また、容器Bの搬出位置には、吸着されている容器Bを把持するとともに、その容器Bでノック棒11をも押圧し、容器Bを正立状態で前記搬送コンベアへ直立させ、転載するロボット(不図示)が配設されている。
【0048】
続いて、本実施形態のワーク搬送装置20の作用を説明する。
本実施形態のワーク搬送装置20は、前記ガイドレールの上部直線部に設けられた容器Bの受取位置において、前記ロボットにより把持した容器Bを、図9に示すように、停止している移動子20に接続されたワーク吸着ユニット1の吸着パッド3に上方から押しつけ、吸着パッド3を潰すとともに、ノック棒11を押圧操作してダブルノック機構を作用させながら吸着パッド3内に差圧を発生させ、吸着させる。
【0049】
吸着パッド3に容器Bを吸着したワーク吸着ユニット1を支承する移動子21を、前記制御部の制御により、下部直線部の容器Bの搬出位置へ向けて走行させる。その際、容器Bは移動子21が前記搬送湾曲部を通過する際にも吸着されたままの状態で搬送され、容器Bの搬出位置に至る。
【0050】
移動子21が搬出位置に至ると、前記ロボットにより、吸着パッド3に吸着されている容器Bを側方から押しつけ、吸着パッド3を潰すとともに、ノック棒11を押圧操作してダブルノック機構を作用させながら吸着パッド3内の差圧を開放して吸着を解除させ、容器Bを正立状態のまま前記搬送コンベア上に移載させて搬出する。
【0051】
このように構成されたワーク搬送装置20であれば、エアホースを介したエアの供給を要せず、静音かつ安定したワークの吸着搬送が実行されるので、搬送距離が長いとか、または、搬送経路が複雑であるといった条件下における駆動にも適したものとなる。
【0052】
なお、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0053】
例えば、ワーク吸着ユニットの吸着対象のワークは容器に限られない。
【0054】
ノック棒の押圧操作やワークの押圧操作は、ロボットによる操作に限ることはなく、人手によるものであってもよい。また、ノック棒の配設位置や突出寸法は上記実施形態に限るものではない。さらには、ノック棒の押圧操作はワークによってなされる必要はなく、例えば、ワークを把持する装置にノック棒を押圧する部位を設けてもよい。
【0055】
さらには、ワーク搬送装置も、前述のリニア式の搬送装置に限らないし、ワークの姿勢を横転状態から正立状態に替える搬送装置に限らない。例えば、階を異ならせたり、壁を隔てるようなガイドレールを用いた搬送であっても、そのガイドレールを移動する移動子に本発明のワーク吸着ユニットを備えることで、ワークの吸着搬送を実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 ワーク吸着ユニット
2 筐体
3 吸着パッド
4 エア通路
7 キャップ部材
8 エア通路開閉手段
9 ダブルノック機構
10 カム本体
10a 基軸
10b 太径円筒部
10c 溝
10d カム歯
10e 谷部
10f ビス孔
11 ノック棒
11a カム歯
11b 操作部
11c 長孔
12 回転子
12a 空部
12b 突状部
12c 傾斜部
13 テーブル部材
13a 環状部
13b テーブル部
14 付勢部材(コイルバネ)
15 ベアリング
16 ばね係止部
17 ストッパ
18 ビス
20 ワーク搬送装置
21 移動子
22 ステイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9