(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098057
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】洗顔支援システムおよび洗顔支援方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230703BHJP
A47K 1/00 20060101ALI20230703BHJP
A47K 5/12 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A47K1/00 Z
A47K5/12 A
A47K5/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214555
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 勝男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】武重 日香里
(72)【発明者】
【氏名】竹内 光治
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB13
4C117XD05
4C117XE43
4C117XK09
(57)【要約】
【課題】消費者の洗顔を支援する技術を提供する。
【解決手段】洗顔支援システム10は、計測装置14とユーザ端末16を備える。ユーザ端末16には、洗顔支援App38がインストールされる。計測装置14は、ユーザの顔の肌の状態を計測する。ユーザ端末16の洗顔支援App38は、計測装置14により計測されたユーザの顔の肌の状態に基づいて、ユーザの顔の肌タイプを識別する。ユーザ端末16の洗顔支援App38は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔をユーザが実施することを支援するための処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの顔の肌の状態を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記ユーザの顔の肌の状態に基づいて、前記ユーザの顔の肌タイプを識別する診断部と、
前記ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔を前記ユーザが実施することを支援するための処理を実行する支援処理部と、
を備える洗顔支援システム。
【請求項2】
複数の肌タイプのそれぞれに適合する洗顔料の情報を記憶する第1記憶部をさらに備え、
前記支援処理部は、前記ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔料の情報を前記ユーザに提供する
請求項1に記載の洗顔支援システム。
【請求項3】
複数の肌タイプのそれぞれに適合する洗顔態様を定めた情報を記憶する第2記憶部をさらに備え、
前記支援処理部は、前記ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔態様に応じて、水栓から吐出される水の温度と、ディスペンサから吐出される洗顔料の濃度の少なくとも一方を制御する
請求項1または2に記載の洗顔支援システム。
【請求項4】
前記洗顔態様を定めた情報は、複数の洗顔ステップのそれぞれにおける前記水の温度と前記洗顔料の濃度の少なくとも一方を定めたものであり、
前記支援処理部は、前記複数の洗顔ステップのそれぞれにおける前記水の温度と前記洗顔料の濃度の少なくとも一方を制御する
請求項3に記載の洗顔支援システム。
【請求項5】
前記計測部は、前記ユーザの洗顔直前の顔の肌の状態に関するデータをさらに計測し、
前記支援処理部は、前記ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔態様を前記ユーザの洗顔直前の顔の肌の状態に応じて調整し、調整後の洗顔態様に応じて、前記水の温度と前記洗顔料の濃度の少なくとも一方を制御する
請求項3または4に記載の洗顔支援システム。
【請求項6】
所定の計測装置により計測されたユーザの顔の肌の状態に関するデータを取得するステップと、
前記ユーザの顔の肌の状態に関するデータに基づいて、前記ユーザの顔の肌タイプを識別するステップと、
前記ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔を前記ユーザが実施することを支援するための処理を実行するステップと、
をコンピュータが実行する洗顔支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ処理技術に関し、特に洗顔支援システムおよび洗顔支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
還元性で皮膚のトラブルが少なく、洗顔後も肌を乾燥させない保湿効果を有する洗顔に相応しい洗顔水の生成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、洗顔水(例えば浄水、軟水)に合わせた洗顔料を消費者が自ら知識を得て選択する必要があった。本発明者らは、情報処理技術を活用した、洗顔に関する便利で有益なサービスを消費者に提供することを課題として認識し、本開示の技術に想到した。
【0005】
本開示の目的は、消費者の洗顔を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の洗顔支援システムは、ユーザの顔の肌の状態を計測する計測部と、計測部により計測されたユーザの顔の肌の状態に基づいて、ユーザの顔の肌タイプを識別する診断部と、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔をユーザが実施することを支援するための処理を実行する支援処理部とを備える。
【0007】
本開示の別の態様は、洗顔支援方法である。この方法は、所定の計測装置により計測されたユーザの顔の肌の状態に関するデータを取得するステップと、ユーザの顔の肌の状態に関するデータに基づいて、ユーザの顔の肌タイプを識別するステップと、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔をユーザが実施することを支援するための処理を実行するステップとをコンピュータが実行する。
【0008】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を装置、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施例の洗顔支援システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1のユーザ端末の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図3】洗顔支援システムの動作を示すフローチャートである。
【
図4】肌タイプの分類基準を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示における装置または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがコンピュータプログラムを実行することによって、本開示における装置または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、コンピュータプログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、コンピュータプログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的な記録媒体に記録される。コンピュータプログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0011】
以下では、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0012】
<第1実施例>まず、第1実施例の概要を説明する。洗顔時、肌へのダメージを与える要因として、水道水中の金属イオンと洗顔料中の脂肪酸が石鹸カスを生成し、石鹸カスが肌表面に残って、乾燥感や皮膚刺激を引き起こすことがある。また、石鹸カスを作ることに洗浄成分が消費されるため、洗顔料には洗顔成分を予め高濃度で配合する必要があり、皮膚刺激を起こすことがある。従来技術として肌に優しい洗顔水を生成する技術は提案されているが、洗顔水に合わせた洗顔料の選定は、消費者が自ら知識を得て実施する必要があり、容易なことではなかった。
【0013】
また、洗顔時の水温が高すぎることによる角層細胞間脂質の流出、泡立て不足による洗顔料の高濃度化やすすぎ残し、すすぎ水量やすすぎ回数の不足による洗顔料のすすぎ残し等に起因して肌ダメージが起こる可能性がある。しかし、従来、消費者が適切な洗顔方法を実施することは容易でなかった。
【0014】
また、洗顔によって洗い落とす必要のある汚れ量や、洗浄による皮膚のダメージの受けやすさは、消費者個々に異なり、また日々変動する。しかし、従来技術では、日々の変動に応じた適切な洗顔方法を提案することはできなかった。
【0015】
第1実施例では、洗顔水(例えば浄水、軟水)および計測した個人の肌質に適合した洗顔料の提供を支援し、また、個人の肌質および日々の肌状態に応じた適切な洗顔方法を実施できるよう支援する洗顔ソリューションを提供する洗顔支援システムを提案する。以下、洗顔支援システムを利用して洗顔を行う消費者を「ユーザ」とも呼ぶ。
【0016】
第1実施例の詳細を説明する。
図1を参照する。洗顔支援システム10は、情報処理システムを含み、ユーザ宅に設けられた軟水供給装置12と計測装置14、および、ユーザにより操作される情報処理装置であるユーザ端末16を備える。軟水供給装置12、計測装置14、ユーザ端末16は、ユーザ宅に構築された第1通信網18(LAN等)に接続され、互いにデータを送受信可能である。
【0017】
ユーザ端末16は、例えば、コンピュータ、スマートフォン、タブレット端末である。ユーザ端末16には、ユーザの洗顔を支援する機能が実装されたアプリケーションプログラム(以下「洗顔支援App38」とも呼ぶ。)がインストールされる。
【0018】
計測装置14は、ユーザの顔の肌の状態を計測する。例えば、計測装置14は、肌水分量・油分量計、水分・皮脂チェッカー、マイクロスコープ等の機器であってもよい。実施例では、計測装置14は、少なくともユーザの顔の肌の水分量と油分量(「皮脂量」とも言える)を計測し、ユーザの顔の肌の水分量と油分量を示すデータをユーザ端末16へ送信する。
【0019】
軟水供給装置12は、洗顔水および洗顔料をユーザに供給する装置である。軟水供給装置12は、軟水保持部30、洗顔料保持部32、水栓部34、ディスペンサ36を備える。
図1には不図示だが、軟水供給装置12は、ユーザ端末16と通信する通信部をさらに備える。軟水供給装置12は、洗面台に組み込まれる装置でもよく、洗面台に据え置かれる据置型の装置でもよい。また、軟水供給装置12は、スタンドアロン型の装置であってもよく、水栓と連動した装置であってもよい。
【0020】
軟水保持部30は、洗顔水として、カルシウムやマグネシウム等の金属イオン含有量が少ない軟水を保持する。軟水保持部30に保持される軟水は、カルシウムやマグネシウム等の金属イオン含有量が一般的な軟水より少ない超軟水であることが望ましい。洗顔料保持部32は、軟水での洗顔に適した洗顔料であって、すなわち、軟水での洗顔を前提として成分配合された洗顔料を保持する。
【0021】
水栓部34とディスペンサ36のそれぞれは不図示の吐出口を備える。水栓部34は、ユーザの手動操作、または、ユーザ端末16の洗顔支援Appからの指示に応じて、軟水保持部30に保持された軟水を吐出口から吐出させる。ディスペンサ36は、ユーザの手動操作、または、ユーザ端末16の洗顔支援Appからの指示に応じて、洗顔料保持部32に保持された洗顔料を吐出口から吐出させる。
【0022】
洗顔支援システム10は、クラウド上の情報処理装置であるサーバ20をさらに備える。ユーザ端末16は、WANやインターネットを含む第2通信網22を介して、サーバ20とデータを送受信する。
【0023】
図2を参照する。
図2のブロック図等、本明細書のブロック図で示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU・メモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
ユーザ端末16は、制御部40、記憶部42、表示部44、スピーカ46、通信部48を備える。制御部40は、各種データ処理を実行する。記憶部42は、制御部40により参照または更新されるデータを記憶する。表示部44は、制御部40による制御にしたがって各種情報を表示する。表示部44は、タッチスクリーンを含む。表示部44は、タッチスクリーンにユーザが入力した操作に関するデータを制御部40に入力する。スピーカ46は、制御部40による制御にしたがって音声を出力する。通信部48は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。制御部40は、通信部48を介して、軟水供給装置12、計測装置14、サーバ20とデータを送受信する。
【0025】
記憶部42は、ユーザ情報記憶部50、洗顔料情報記憶部52、洗顔態様情報記憶部54を含む。ユーザ情報記憶部50は、ユーザに関する情報(「ユーザ情報」とも呼ぶ。)を記憶する。ユーザ情報は、ユーザの識別情報と肌タイプを含む。肌タイプは、予め定められた複数の肌タイプ(肌質とも言える)のうちユーザがいずれの肌タイプに該当するかを示す情報である。複数の肌タイプは、普通肌、乾燥肌、脂性肌、混合肌を含む。
【0026】
洗顔料情報記憶部52は、第1記憶部として、複数の肌タイプのそれぞれに適合する洗顔料に関する情報(「洗顔料情報」とも呼ぶ。)を記憶する。実施例では、それぞれの肌タイプに適合する洗顔料として、軟水での洗顔に適合した洗顔料が選定される。洗顔料情報は、例えば、商品名、メーカ、価格、成分を含む。
【0027】
洗顔態様情報記憶部54は、第2記憶部として、複数の肌タイプのそれぞれに適合する洗顔態様を定めた情報(「洗顔態様情報」とも呼ぶ。)を記憶する。実施例における洗顔態様情報は、軟水供給装置12の水栓部34から吐出される軟水の温度を定めた情報を含み、また、軟水供給装置12のディスペンサ36から吐出される洗顔料の濃度を定めた情報を含む。
【0028】
制御部40は、肌状態取得部56、診断部58、支援処理部60を含む。洗顔支援Appには、これら複数の機能ブロックの機能が実装される。ユーザ端末16のプロセッサ(例えばCPU)は、ストレージにインストールされた洗顔Appをメインメモリに読み出して実行することにより上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0029】
肌状態取得部56は、計測装置14により計測されたユーザの顔の肌の状態に関するデータを計測装置14から取得する。診断部58は、計測装置14により計測されたユーザの顔の肌の状態に基づいて、ユーザの顔の肌タイプを識別する。支援処理部60は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔をユーザが実施することを支援するための情報処理を実行する。
【0030】
支援処理部60は、レコメンド部62、調整部64、制御部66、ガイド部68を含む。レコメンド部62は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔料の情報をユーザに提供する。制御部66は、軟水供給装置12の動作を制御する。制御部66は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔態様に応じて、軟水供給装置12の水栓部34から吐出される水の温度と、軟水供給装置12のディスペンサ36から吐出される洗顔料の濃度とを制御する。
【0031】
実施例では、調整部64は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔態様を、ユーザの顔の肌の洗顔直前の状態に応じて調整する。制御部66は、調整部64による調整後の洗顔態様に応じて、軟水供給装置12の水栓部34から吐出される水の温度と、軟水供給装置12のディスペンサ36から吐出される洗顔料の濃度とを制御する。
【0032】
ガイド部68は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔態様(言い換えれば洗顔方法)に関する情報を音声または画像を用いてユーザに提示することによりユーザの洗顔をガイドする。例えば、ガイド部68は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔の手順や時間、注意点等を示す音声をスピーカ46から出力させる。
【0033】
なお、ユーザ端末16が備える複数の機能ブロックのうち少なくとも一部の機能ブロックの機能は、サーバ20に実装されてもよい。例えば、第1の態様として、(1)各種データの記憶をサーバ20が担当し、(2)肌タイプの診断等の判断処理、軟水供給装置12の動作態様を決定する処理、ユーザに提示する画像データや音声データの生成処理をユーザ端末16(洗顔支援App38)が担当してもよい。この場合、ユーザ端末16は、サーバ20からデータを取得し、または、サーバ20が記憶するデータを参照して、(2)の各処理を実行してもよい。
【0034】
また、第2の態様として、(1)各種データの記憶、および(2)肌タイプの診断等の判断処理、軟水供給装置12の動作態様を決定する処理、ユーザに提示する画像データや音声データの生成処理をサーバ20が担当してもよい。この場合、ユーザ端末16(洗顔支援App38)は、サーバ20により生成された画像や音声を出力する処理、および、サーバ20により決定された態様で軟水供給装置12を動作させる処理を実行してもよい。
【0035】
以上の構成による洗顔支援システム10の動作を説明する。
図3を参照する。洗顔支援システム10を利用するため、ユーザは、ユーザ端末16に洗顔支援App38をインストールする。そしてユーザは、洗顔支援App38に対して初期診断の開始を指示する操作をユーザ端末16の表示部44に入力する。初期診断の開始を指示するユーザ操作が入力されると(S10のY)、ユーザ端末16の肌状態取得部56は、計測データの受付待ちの状態に移行する。
【0036】
計測装置14は、ユーザの顔の肌状態(ここでは水分量と油分量)を計測する(S11)。計測装置14は、ユーザの顔の肌状態を示すデータをユーザ端末16へ送信する。肌状態は、肌の拡大画像が示すキメや荒れ、肌の色、凹凸の分布、血流量、肌温度をさらに含んでもよい。なお、ユーザの顔の肌状態を計測する機能の少なくとも一部(例えば、肌の撮像機能および肌画像の解析機能)は、ユーザ端末16および洗顔支援App38により実現されてもよい。すなわち、ユーザ端末16および洗顔支援App38は、計測装置14の機能を含んでもよい。
【0037】
ユーザ端末16の肌状態取得部56は、計測装置14から送信されたユーザの顔の肌状態を示すデータを取得する。ユーザ端末16の診断部58は、計測装置14から送信されたユーザの顔の肌状態と、予め定められた分類基準とにしたがって、複数の肌タイプの中からユーザの顔の肌タイプを識別する(S12)。診断部58は、ユーザの顔の肌タイプを示すデータをユーザ情報記憶部50に格納する。
【0038】
図4を参照する。実施例では、以下の基準にて肌タイプが分類される。水分量>30%かつ油分量<35%の場合、普通肌に分類される。水分量<30%かつ油分量<30%の場合、乾燥肌に分類される。水分量>30%かつ油分量>35%の場合、脂性肌に分類される。水分量<30%かつ油分量>30%の場合、混合(インナードライ)肌に分類される。
【0039】
変形例として、洗顔支援App38は、ユーザに対するアンケート(言い換えればヒアリング)機能を備えてもよい。アンケート機能は、ユーザの好みの洗顔料タイプや洗顔時の感触、自覚している肌悩み等についてユーザの回答を受け付けてもよい。診断部58は、肌計測結果の水分量および油分量と、アンケート結果とに基づいて、ユーザの顔の肌タイプを決定してもよい。
【0040】
図3に戻り、ユーザ端末16のレコメンド部62は、洗顔料情報記憶部52に記憶された洗顔料情報を参照して、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔料を識別する。レコメンド部62は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔料の情報を表示部44に表示させる(S13)。例えば、ユーザの顔の肌タイプが乾燥肌と診断された場合、レコメンド部62
は、軟水での洗顔に適した乾燥肌用の洗顔料の情報をユーザに提示する。
【0041】
なお、レコメンド部62は、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔料の購入画面を表示部44に表示させてもよい。ユーザ端末16(洗顔支援App38)は、購入支援部をさらに備えてもよい。購入支援部は、不図示の通信販売システムや決済システムと連携して、ユーザが購入画面に入力した決済手段情報(クレジットカード情報等)を用いて、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔料の購入処理や販売処理を実行してもよい。
【0042】
上記のS11~S13の処理は、初期診断の処理として実行されてよい。洗顔支援App38に対する初期診断の開始指示が未入力であれば(S10のN)、S11~S13の処理はスキップされる。第1実施例の洗顔支援システム10によると、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔料であり、かつ、軟水での洗顔に適合する洗顔料の情報をユーザに提示でき、ユーザが適切な洗顔を実施できるよう支援できる。
【0043】
ユーザは、日常の洗顔を開始する直前に、洗顔支援App38に対して日常洗顔支援の開始を指示する操作をユーザ端末16の表示部44に入力する。日常洗顔支援の開始を指示するユーザ操作が入力されると(S14のY)、ユーザ端末16の肌状態取得部56は、計測データの受付待ちの状態に移行する。
【0044】
計測装置14は、ユーザの顔の洗顔直前の肌状態(ここでは水分量と油分量)を計測する(S15)。ここでの肌状態は、S11での肌状態の項目に加えて、表層および毛穴の汚れ量(言い換えれば酸化した皮膚の量)を含んでもよい。ユーザ端末16の肌状態取得部56は、計測装置14から送信されたユーザの顔の洗顔直前の肌状態を示すデータを取得する。ユーザ端末16の調整部64は、ユーザの顔の洗顔直前の肌状態に応じて、ユーザの洗顔態様(言い換えれば軟水供給装置12の動作態様)を調整する(S16)。
【0045】
具体的には、ユーザ端末16の洗顔態様情報記憶部54には、第1の洗顔態様情報として、肌タイプごとの標準的な洗顔態様(標準洗顔態様)を定めた標準洗顔態様情報が格納される。
図5を参照する。
図5に示す標準洗顔態様情報は、肌タイプごとに、複数の洗顔ステップのそれぞれにおける洗顔水の温度の標準値と、洗顔料の濃度の標準値の一方または両方を定めた情報を含む。
【0046】
実施例では、複数の洗顔ステップは、予洗い(洗顔前のすすぎ)、洗顔料洗顔(洗顔料を用いた洗顔)、すすぎを含む。
図5の標準洗顔態様情報では、第1ステップ「予洗い」での水温、第2ステップ「洗顔料洗顔」での洗顔料濃度と洗顔時間、第3ステップ「すすぎ」での水温とすすぎ時間が規定されている。なお、標準洗顔態様情報では、第1ステップ「予洗い」でのすすぎ時間と、第2ステップ「洗顔料洗顔」での水温がさらに規定されてもよい。
【0047】
ユーザ端末16の調整部64は、洗顔態様情報記憶部54に記憶された標準洗顔態様情報を参照して、ユーザ情報記憶部50に記憶されたユーザの顔の肌タイプに適合する標準洗顔態様を識別する。
図5に示したように、標準洗顔態様は、複数の項目を含み、例えば、予洗い水温、すすぎ水温、洗顔料濃度、洗顔料洗顔時間、すすぎ時間を含む。変形例として、調整部64は、初期診断で識別されたユーザの肌タイプに加えて、ユーザの日常肌計測データの統計値(例えば平均値)や、ユーザと同年代かつ同肌タイプの複数のユーザに関する統計データに基づいて、標準洗顔態様を決定してもよい。
【0048】
また、洗顔態様情報記憶部54には、第2の洗顔態様情報として、ユーザの顔の洗顔直前の肌状態に応じて標準洗顔態様を調整するための情報(以下「洗顔態様調整情報」とも呼ぶ。)が格納される。
図6を参照する。
図6に示す洗顔態様調整情報は、ユーザの顔の肌の洗浄強度レベル(レベルが高いほど強度が高いことを示す)ごとに、予洗い水温、すすぎ水温、洗顔料濃度、洗顔料洗顔時間、すすぎ時間を増減させる調整値を定めたものである。
図6では、標準洗顔態様の値のまま維持する項目は「-」で示している。なお、洗顔態様調整情報では、第1ステップ「予洗い」でのすすぎ時間の調整値と、第2ステップ「洗顔料洗顔」での水温の調整値がさらに規定されてもよい。
【0049】
調整部64は、ユーザの顔の洗顔直前の肌状態(例えば水分量と油分量)に応じて、ユーザの顔の肌の油分の多寡を導出し、油分が多いほど高い洗浄強度レベルに決定する。変形例として、調整部64は、ユーザの顔の洗顔直前の肌状態(例えば水分量と油分量)に応じて、ユーザの顔の肌の乾燥度合いを導出し、乾燥度合いが高いほど低い洗浄強度レベルに決定してもよい。
【0050】
調整部64は、ユーザの顔の肌タイプに適合する標準洗顔態様を、ユーザの顔の洗顔直前の肌状態に応じて決定した洗浄強度レベルで規定された調整値を用いて調整する。例えば、ユーザの顔の肌タイプが「乾燥肌」で、かつ洗浄強度レベルが「レベル1」の場合、すすぎ水温を33℃から30℃に変更する。また、洗顔料洗顔時間を20秒から10秒に変更する。また、すすぎ時間を40秒から50秒に変更する。以下、ユーザの顔の洗顔直前の肌状態に応じて調整された洗顔態様を「調整洗顔態様」とも呼ぶ。
【0051】
図3に戻り、ユーザ端末16の制御部66は、調整部64により決定された調整洗顔態様にしたがって、洗顔ステップごとに、吐出する軟水の温度および/または洗顔料濃度の指定を含む吐出指示信号を軟水供給装置12へ送信する。これにより、制御部66は、複数の洗顔ステップのそれぞれで、軟水供給装置12に吐出させる洗顔水の温度と洗顔料濃度の少なくとも一方を制御する(S17)。なお、洗顔態様情報は洗顔ステップごとの継続時間を含んでもよく、制御部66が送信する洗顔ステップごとの吐出指示信号は、軟水および/または洗顔料の吐出を継続させる時間を含んでもよい。
【0052】
S17の処理と並行して、ユーザ端末16のガイド部68は、調整洗顔態様にしたがって、洗顔ステップごとに、推奨時間やすすぎ回数、注意点等を示す音声をスピーカ46から出力させる(S18)。注意点は、例えば、洗顔動作の力加減や速度に関するアドバイスでもよい。変形例として、ガイド部68は、音声でのガイドに代えて、または音声でのガイドとともに、洗顔ステップごとの推奨時間やすすぎ回数、注意点等を示す画像を表示部44に表示させてもよい。
【0053】
上記のS15~S18の処理は、日常洗顔支援の処理として実行されてよい。洗顔支援App38に対する日常洗顔支援の開始指示が未入力であれば(S14のN)、S15~S18の処理はスキップされる。第1実施例の洗顔支援システム10によると、ユーザの顔の肌タイプおよび洗顔直前の肌状態に適合する洗顔をユーザが容易に実施できるよう支援できる。
【0054】
第1実施例の洗顔支援システム10によると、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔をユーザが実施することを支援できる。なお、洗顔支援システムは、1台の情報処理装置(例えばユーザ端末16)により実現されてもよく、複数台の情報処理装置(例えばユーザ端末16およびサーバ20)の連携により実現されてもよい。また、洗顔支援システム10によると、ユーザの顔の肌タイプに適合する洗顔料の情報をユーザに提示でき、ユーザが適切な洗顔を実施できるよう支援できる。
【0055】
また、洗顔支援システム10によると、洗顔水の温度と洗顔料の濃度の少なくとも一方をユーザの顔の肌タイプに適合するよう制御することで、ユーザが適切な洗顔を実施できるよう支援できる。また、洗顔支援システム10によると、洗顔のステップごとに洗顔水の温度と洗顔料の濃度の少なくとも一方をユーザの顔の肌タイプに適合するよう制御することで、ユーザが適切な洗顔を実施できるよう一層効果的に支援できる。また、洗顔支援システム10によると、洗顔水の温度と洗顔料の濃度の少なくとも一方をユーザの顔の肌タイプおよび洗顔直前の肌状態に適合するよう制御することで、ユーザが適切な洗顔を実施できるよう一層効果的に支援できる。
【0056】
<第2実施例>第2実施例の洗顔支援システム10は、第1実施例の洗顔支援システム10の機能に加えて、日常部位別診断の機能をさらに備える。具体的には、計測装置14は、ユーザの顔の部位ごとに肌状態を計測する。ユーザ端末16の診断部58は、初期診断処理において、ユーザの顔の部位ごとに肌タイプを識別する。ユーザ端末16の調整部64は、ユーザの顔の部位ごとに標準洗顔態様を選択し、また、洗顔直前の肌状態に応じてユーザの顔の部位ごとに調整洗顔態様を決定する。
【0057】
第2実施例での複数の洗顔ステップには、互いに異なる部位を洗顔やすすぎの対象とする複数のステップが含まれる。ユーザ端末16の制御部66は、洗顔ステップごとに、対象となる部位の調整洗顔態様にしたがって、軟水供給装置12に吐出させる軟水の温度と洗顔料の濃度の少なくとも一方を制御する。並行して、ユーザ端末16のガイド部68は、洗顔ステップごとに、対象となる部位の調整洗顔態様にしたがって、洗顔の対象部位や推奨時間、すすぎ回数、注意点をユーザに提示する。第2実施例の洗顔支援システム10によると、ユーザの顔の部位ごとに、肌タイプおよび洗顔直前の肌状態に適合する洗顔をユーザが容易に実施できるよう支援できる。
【0058】
<第3実施例>第3実施例の洗顔支援システム10は、第1実施例の洗顔支援システム10の機能に加えて、シーズン別診断の機能をさらに備える。具体的には、ユーザ端末16の診断部58は、計測装置14によるユーザの日常肌計測データ(例えば
図3のS15で計測されたデータ)の統計データに基づいて、直近3か月分の肌状態を、それ以前の計測データや、それ以前の同時期データ等と比較して、シーズン別診断を実行する。診断部58は、3か月単位での肌状態の変化、季節変化、長期変化(例えば年齢の変化)を診断してもよい。
【0059】
ユーザ端末16のレコメンド部62は、診断部58によるシーズン別診断(例えば3か月単位での診断)の結果にしたがって、ユーザにレコメンする洗顔料を選定してもよい。ユーザ端末16の調整部64は、診断部58によるシーズン別診断(例えば3か月単位での診断)の結果にしたがって、ユーザの標準洗顔態様を設定または決定してもよい。
【0060】
以上、本開示を第1~第3実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0061】
変形例を説明する。洗顔支援システム10は、ユーザに対する洗顔支援サービスをサブスクリプション方式(すなわち定額料金の支払いに応じて一定期間サービスを提供する方式)で提供してもよい。洗顔支援システム10(例えばユーザ端末16の洗顔支援App38)は、サービス可否判断部をさらに備えてもよく、サービス可否判断部の機能は、ユーザ端末16の洗顔支援App38に実装されてもよく、サーバ20に実装されてもよい。サービス可否判断部は、洗顔支援サービスの利用料金(例えば月額)をユーザが支払った場合に、所定期間(例えば1か月)の洗顔支援サービスの利用を許可し、サービスを利用可能な期間が終了するタイミング(「サービス利用終了日時」とも呼ぶ。)を決定してもよい。
【0062】
ユーザ端末16の洗顔支援App38は、サービス可否判断部により洗顔支援サービスの利用が許可され、かつ、サービス利用終了日時を徒過していなければ、ユーザの操作に応じて、実施例に記載の初期診断処理および日常洗顔支援処理を実行する。一方、洗顔支援App38は、サービス可否判断部により洗顔支援サービスの利用が許可されておらず、または、サービス利用終了日時を徒過していれば、実施例に記載の初期診断処理および日常洗顔支援処理の実行を抑制(禁止)してもよい。
【0063】
別の変形例を説明する。上記実施例では言及していないが、軟水供給装置12は、軟水の保持機能(軟水保持部30)に加えて、軟水の製造機能(軟水製造部)を備えてもよい。軟水製造部は、フィルターを用いて、水道水または硬水を軟水へと精製してもよい。軟水保持部30は、軟水製造部により製造された軟水を保持してもよい。
【0064】
さらに別の変形例を説明する。上記実施例では言及していないが、軟水供給装置12が吐出するすすぎ水にはスキンケア化粧品成分が混合されてもよく、ユーザは、スキンケア化粧品成分が混合された水を用いてすすぎを行ってもよい。軟水供給装置12は、すすぎのタイミングにおいて、軟水にスキンケア化粧品成分を混合したすすぎ水を水栓部34から吐出してもよい。
【0065】
さらに別の変形例を説明する。軟水供給装置12が吐出するすすぎ水にスキンケア化粧品成分が混合されない場合、軟水供給装置12は、すすぎ水の吐出後(すなわちユーザがすすぎを行った後)、スキンケア化粧品成分を吐出させてもよい。
【0066】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0067】
10 洗顔支援システム、 12 軟水供給装置、 14 計測装置、 16 ユーザ端末、 20 サーバ、 34 水栓部、 36 ディスペンサ、 52 洗顔料情報記憶部、 54 洗顔態様情報記憶部、 56 肌状態取得部、 58 診断部、 60 支援処理部、 62 レコメンド部、 64 調整部、 66 制御部。