(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098075
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
G03G15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214583
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】村井 愛実
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 仁宏
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200FA09
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB20
2H200HB22
2H200HB45
2H200MA02
2H200MA03
2H200MA04
2H200MA11
2H200MA12
2H200MA20
(57)【要約】
【課題】表層材料による表層のクラックが抑えられる電子写真機器用帯電ロールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備え、表層16が、バインダーポリマーと、金属酸化物粒子と、を含み、その金属酸化物粒子の表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている、電子写真機器用帯電ロール10とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、
前記表層が、バインダーポリマーと、金属酸化物粒子と、を含み、
前記金属酸化物粒子の表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている、電子写真機器用帯電ロール。
【請求項2】
前記表層が、さらに、粗さ形成用粒子を含み、前記粗さ形成用粒子の表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている、請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
前記フッ素系のアニオン性表面改質剤が、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基およびカルボキシレート基を有する、請求項1または請求項2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子が、酸化スズ粒子である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロールの製造方法であって、
金属酸化物粒子とフッ素系のアニオン性表面改質剤とを混合して、金属酸化物粒子の表面の一部または全部をフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆う工程と、
フッ素系のアニオン性表面改質剤で表面の一部または全部が覆われた金属酸化物粒子とバインダーポリマーとを混合する工程と、を有する、電子写真機器用帯電ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真機器の帯電ロールとしては、芯金などの軸体の外周面上にゴム弾性を有する弾性体層を有し、その弾性体層の外周面上に表層を有するものが知られている。帯電ロールでは、例えば荷電特性などから、表層のバインダーポリマーに粗さ形成用粒子や、金属酸化物粒子などの導電剤などを配合することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
帯電ロールは、印刷時に、感光ドラムに接触した状態で連れ回る動作をする。印刷に伴うロール押圧回転のせん断応力は、帯電ロールの表層を構成する材料と材料の界面にかかる。表層には、粗さ形成用粒子や金属酸化物粒子が配合されることがあるが、1つあたりの粒子と表層のバインダーポリマーとの間の界面が大きいことから、この界面には特に強いせん断応力がかかる。そして、金属酸化物粒子の凝集により生じる凸形状には応力が集中しやすく、表層のバインダーポリマーがせん断応力に耐えられなくなることで、表層にクラックが発生する。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、表層材料による表層のクラックが抑えられる電子写真機器用帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、前記表層が、バインダーポリマーと、金属酸化物粒子と、を含み、前記金属酸化物粒子の表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていることを要旨とする。
【0007】
前記表層は、さらに、粗さ形成用粒子を含み、前記粗さ形成用粒子の表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていることが好ましい。前記フッ素系のアニオン性表面改質剤は、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基およびカルボキシレート基を有することが好ましい。前記金属酸化物粒子は、酸化スズ粒子であることが好ましい。
【0008】
そして、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールの製造方法は、金属酸化物粒子とフッ素系のアニオン性表面改質剤とを混合して、金属酸化物粒子の表面の一部または全部をフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆う工程と、フッ素系のアニオン性表面改質剤で表面の一部または全部が覆われた金属酸化物粒子とバインダーポリマーとを混合する工程と、を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールによれば、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、前記表層が、バインダーポリマーと、金属酸化物粒子と、を含み、前記金属酸化物粒子の表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていることから、表層材料による表層のクラックが抑えられる。
【0010】
前記表層がさらに粗さ形成用粒子を含む場合に、前記粗さ形成用粒子の表面の一部または全部がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていると、表層材料による表層のクラックを抑える効果が向上する。
【0011】
前記フッ素系のアニオン性表面改質剤が炭素数6以下のパーフルオロアルキル基およびカルボキシレート基を有するものであると、前記金属酸化物粒子の表面官能基と相互作用しやすく、被覆処理の効果を得られやすい。
【0012】
前記金属酸化物粒子が酸化スズ粒子であると、広い温度域で安定した相互作用を発揮する。
【0013】
そして、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールの製造方法によれば、金属酸化物粒子とフッ素系のアニオン性表面改質剤とを混合して、金属酸化物粒子の表面の一部または全部をフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆う工程と、フッ素系のアニオン性表面改質剤で表面の一部または全部が覆われた金属酸化物粒子とバインダーポリマーとを混合する工程と、を有することから、表層において、金属酸化物粒子の表面の一部または全部がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われるため、表層材料による表層のクラックが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、単に帯電ロールということがある。)について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【0016】
帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備える。弾性体層14は、帯電ロール10のベースとなる層(基層)である。表層16は帯電ロール10の表面に現れる層となっている。なお、特に図示しないが、必要に応じて、抵抗調整層等の中間層が、弾性体層14と表層16の間に形成されていてもよい。
【0017】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0018】
弾性体層14は、架橋ゴムを含有する。弾性体層14は、未架橋ゴムを含有する導電性ゴム組成物により形成される。架橋ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られる。未架橋ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。
【0019】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2-クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。極性ゴムのうちでは、体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。
【0020】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0021】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0022】
非極性ゴムとしては、シリコーンゴム(Q)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。非極性ゴムのうちでは、引張物性に優れているなどの観点から、イソプレンゴムがより好ましい。
【0023】
架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0024】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0025】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0026】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0027】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部の範囲内、より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0028】
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2-メルカプトベンゾチアゾール塩、2-メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0029】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、0.1~2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0030】
弾性体層14には、導電性付与のため、導電剤を配合することができる。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物が挙げられる。導電性金属酸化物としては、導電性チタン酸化物、導電性亜鉛酸化物、導電性スズ酸化物などが挙げられる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。また、弾性体層14には、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0031】
弾性体層14は、架橋ゴムの種類、イオン導電剤の配合量、電子導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。弾性体層14の体積抵抗率は、用途などに応じて102~1010Ω・cm、103~109Ω・cm、104~108Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。
【0032】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0033】
表層16は、バインダーポリマーと、金属酸化物粒子と、を含む。表層16は、さらに、粗さ形成用粒子を含んでいてもよい。
【0034】
バインダーポリマーは、表層16を構成するベースポリマーである。バインダーポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB)、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素ゴムとフッ素樹脂の混合物、シリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ニトリルゴム、ウレタンゴムなどを挙げることができる。
【0035】
バインダーポリマーとしては、カルボニル基を有するポリマーが好ましい。カルボニル基を有するポリマーは、比較的誘電率の高い材料であり、帯電ロール10が優れた帯電性を確保しやすいからである。カルボニル基を有するポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ウレタンゴムなどを挙げることができる。これらのうちでは、耐摩耗性に優れるなどの観点から、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマーが特に好ましい。ポリアミド樹脂は、変性されたものであってもよい。変性ポリアミドとしては、N-メトキシメチル化ナイロンなどのアルコキシ化ポリアミドなどを挙げることができる。
【0036】
金属酸化物粒子は、表層16の導電剤として機能する。金属酸化物粒子は、導電性の金属酸化物粒子である。金属酸化物粒子は、表層16において、表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている。金属酸化物粒子は、表面の一部がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていてもよいし、表面全部がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていてもよい。表面の一部とは、面積で、金属酸化物粒子の表面の30%以上であることが好ましい。より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。表面の一部が覆われている場合において、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている部分は、金属酸化物粒子の表面の全体に分散されていることが必要である。
【0037】
金属酸化物粒子の表面には、水酸基やカルボキシル基などの極性の官能基が存在している。フッ素系のアニオン性表面改質剤は、自身のアニオン性基と金属酸化物粒子の表面の官能基との静電的な相互作用によって金属酸化物粒子の表面を覆うことができる。これにより、金属酸化物粒子の凝集が抑えられる。このとき、自身のフッ素含有基は、金属酸化物粒子の外側を向くように配向する。金属酸化物粒子の表面に金属酸化物粒子の外側を向くように配向するフッ素含有基によって、金属酸化物粒子とバインダーポリマーの界面の摩擦が低減し、バインダーポリマーにかかるせん断応力を緩和することができる。これらにより、表層材料による表層16のクラックが抑えられる。表面改質剤がアニオン性ではなく、カチオン性やノニオン性であると、表面改質剤は金属酸化物粒子の表面の官能基と相互作用できず、金属酸化物粒子の表面を覆うことができない。また、表面改質剤がフッ素系ではなくシリコーン系などであると、金属酸化物粒子とバインダーポリマーの界面の摩擦を低減する効果が十分ではない。また、金属酸化物粒子ではなくカーボンブラックであると、カーボンブラックの表面官能基はフッ素系のアニオン性表面改質剤と相互作用しにくいため、フッ素系のアニオン性表面改質剤は、カーボンブラックの表面をうまく覆うことができない。
【0038】
金属酸化物粒子としては、導電性に優れるものであれば、特に限定されるものではない。金属酸化物粒子としては、酸化スズ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化インジウム粒子、酸化チタン粒子などが挙げられる。これらのうちでは、広い温度域で安定した相互作用を発揮するなどの観点から、酸化スズ粒子が特に好ましい。
【0039】
金属酸化物粒子の粒子径(一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、画像均一性などの観点から、0.001μm以上0.5μm以下が好ましい。より好ましくは0.005μm以上0.1μm以下である。また、金属酸化物粒子の凝集する凝集体の径(二次粒子径)は、分散性の観点から、0.002μm以上0.7μm以下が好ましい。より好ましくは0.6μm以下である。金属酸化物粒子の凝集体の径は、金属酸化物粒子の表面がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われることにより、小さく抑えることができる。
【0040】
表層16において、金属酸化物粒子の含有量は、導電性などの観点から、バインダーポリマー100質量部に対し、30質量部以上が好ましい。より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上である。また、表層16において、金属酸化物粒子の含有量は、応力分散性などの観点から、バインダーポリマー100質量部に対し、200質量部以下が好ましい。より好ましくは150質量部以下である。
【0041】
フッ素系のアニオン性表面改質剤は、金属酸化物粒子の表面を覆って、金属酸化物粒子の凝集を抑えたり、金属酸化物粒子の表面を改質するなどの目的で用いられる。また、表層16に粗さ形成用粒子が含まれる場合には、粗さ形成用粒子の表面を覆って、粗さ形成用粒子の凝集を抑えたり、粗さ形成用粒子と金属酸化物粒子の相互作用を抑えたり、粗さ形成用粒子の表面を改質するなどの目的で用いられる。
【0042】
フッ素系のアニオン性表面改質剤は、アニオン性の基を有するものである。アニオン性の基としては、カルボキシレート基(-COO-)、スルホネート基(-SO4
2-)、リン酸基などが挙げられる。これらのうちでは、金属酸化物の表面の官能基との相互作用のバランスに優れるなどの観点から、カルボキシレート基が特に好ましい。
【0043】
フッ素系のアニオン性表面改質剤は、フッ素を含有する有機基を有する化合物(フッ素含有基を有する化合物)からなる。フッ素含有基としては、炭素数1~20のフルオロアルキル基が挙げられる。フルオロアルキル基は、アルキル基のすべての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基であってもよいし、アルキル基の一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフルオロアルキル基であってもよい。これらのうちでは、フッ素含有基による金属酸化物粒子の表面の改質効果に優れるなどの観点から、パーフルオロアルキル基がより好ましい。また、フッ素含有基は、炭素数6以下であることが好ましい。より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数2~6である。フッ素含有基の炭素数が8以上であると環境規制への懸念が強いことから、フッ素含有基の炭素数は6以下であることが好ましい。また、フッ素含有基の炭素数が2以上であると、表面張力を低下させる作用において優れる点で好ましい。
【0044】
フッ素系のアニオン性表面改質剤は、分子内にフッ素含有基を1つ以上有するとよいが、被覆処理にて表面改質剤が金属酸化物粒子の表面に配向する際の立体障害が小さく被覆効率に優れるなどの観点から、分子内にフッ素含有基を1つ有するものが特に好ましい。また、フッ素系のアニオン性表面改質剤は、分子内にアニオン性基を1つ以上有するとよいが、金属酸化物粒子との相互作用の均一性に優れるなどの観点から、分子内にアニオン性基を1つ有するものが特に好ましい。
【0045】
フッ素系のアニオン性表面改質剤は、単分子体であってもよいし、重合体であってもよい。フッ素系のアニオン性表面改質剤は、被覆処理にて表面改質剤が金属酸化物粒子の表面に配向する際の障害が小さいなどの観点から、重合体よりも単分子体が好ましい。フッ素系のアニオン性表面改質剤の分子量(数平均分子量)は、相互作用状態の安定性などの観点から、400以上が好ましい。より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上である。また、フッ素系のアニオン性表面改質剤の分子量(数平均分子量)は、反応基数の観点から、3000未満が好ましい。より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下である。
【0046】
フッ素系のアニオン性表面改質剤の量は、金属酸化物粒子100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3質量部以上3.0質量部以下、さらに好ましくは、0.5質量部以上3.0質量部以下である。また、表層16がさらに粗さ形成用粒子を含む場合には、フッ素系のアニオン性表面改質剤の量は、金属酸化物粒子100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3質量部以上3.0質量部以下、さらに好ましくは、0.5質量部以上3.0質量部以下である。また、表層16がさらに粗さ形成用粒子を含む場合には、フッ素系のアニオン性表面改質剤の量は、金属酸化物粒子100質量部に対し、合計で、5.0質量部以下であることが好ましい。
【0047】
粗さ形成用粒子は、表層16の表面に粗さを付与するための粒子である。つまり、表層16の表面に凹凸を付与するための粒子である。表層16の表面凹凸は、感光体と帯電ロール10との間における放電空間を増加させ、放電を促す。これにより、帯電性を向上させ、横スジやムラなどの画像不具合を抑えることができる。
【0048】
粗さ形成用粒子は、樹脂製粒子や無機粒子などが用いられる。粗さ形成用粒子の材料は、特に限定されるものではない。粗さ形成用粒子は、カルボニル基を有するポリマーで構成されることが好ましい。カルボニル基を有するポリマーは、比較的誘電率の高い材料であり、帯電ロール10が優れた帯電性を確保しやすいからである。カルボニル基を有するポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ウレタンゴムなどを挙げることができる。これらのうちでは、耐摩耗性に優れるなどの観点から、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマーが特に好ましい。
【0049】
粗さ形成用粒子は、表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われているとよい。粗さ形成用粒子の表面がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていると、粗さ形成用粒子の表面に存在する極性官能基と金属酸化物粒子の表面の官能基との相互作用が小さくなり、粗さ形成用粒子の表面に金属酸化物粒子が集まりにくくなって、粗さ形成用粒子の表面における金属酸化物粒子の凝集による応力集中が抑えられ、表層16のバインダーポリマーのせん断応力によるクラックの発生が抑えられやすい。また、粗さ形成用粒子の表面の摩擦も低減するため、粗さ形成用粒子とバインダーポリマーの界面におけるせん断応力によるクラックの発生も抑えられる。表面の一部とは、面積で、粗さ形成用粒子の表面の30%以上であることが好ましい。より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。表面の一部が覆われている場合において、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている部分は、粗さ形成用粒子の表面の全体に分散されていることが必要である。
【0050】
粗さ形成用粒子の表面を覆うフッ素系のアニオン性表面改質剤は、上記する、金属酸化物の表面を覆うものに用いられるものと同様のものである。粗さ形成用粒子の表面を覆うフッ素系のアニオン性表面改質剤は、金属酸化物の表面を覆うフッ素系のアニオン性表面改質剤と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0051】
粗さ形成用粒子の大きさは、特に限定されるものではないが、均一な帯電性を確保しやすいなどの観点から、平均粒子径3.0μm以上50μm以下のものが好ましい。より好ましくは、平均粒子径5.0μm以上30μm以下のものが好ましい。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、表層16の表面をレーザー顕微鏡にて観察し、表面観察時に見える粗さ形成用粒子16の直径を粒径とし、任意の20点の平均で表す。
【0052】
粗さ形成用粒子の表層16における含有量は、特に限定されるものではないが、均一な帯電性を確保しやすいなどの観点から、表層16のバインダーポリマー100質量部に対し、3質量部以上50質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0053】
表層16には、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、可塑剤、レベリング剤、充填剤、加硫促進剤、加工助剤、離型剤などを挙げることができる。
【0054】
表層16の体積抵抗率は、帯電性などの観点から、半導電領域に設定するとよい。具体的には、例えば、1.0×107~1.0×1010Ω・cmの範囲内に設定するとよい。体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定することができる。表層16の厚さは、特に限定されるものではなく、0.1~30μmの範囲などに設定するとよい。表層16の厚さは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製「VK-9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、弾性体層14の表面から表層16の表面までの距離をそれぞれ測定し、その平均によって表すことができる。
【0055】
弾性体層14は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に未架橋の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成する。
【0056】
表層16は、表層16の形成材料を用い、これを弾性体層14の外周面に塗工し、乾燥処理などを適宜行うことにより形成することができる。表層16の形成材料は、希釈溶媒を含んでもよい。希釈溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、イソプロピルアルコール(IPA),メタノール,エタノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン,トルエンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチルなどの酢酸系溶媒、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。
【0057】
表層16の形成材料は、バインダーポリマーと、金属酸化物粒子と、を含む。表層16の形成材料は、必要に応じ、さらに、粗さ形成用粒子を含んでいてもよい。金属酸化物粒子は、上記するように、表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている。また、粗さ形成用粒子は、上記するように、表面の一部または全部が、フッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている。
【0058】
表層16の形成材料は、次のように調製するとよい。まず、金属酸化物粒子とフッ素系のアニオン性表面改質剤とを混合して、金属酸化物粒子の表面の一部または全部をフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆う。次いで、フッ素系のアニオン性表面改質剤で表面の一部または全部が覆われた金属酸化物粒子とバインダーポリマーとを混合する。このように、金属酸化物粒子をバインダーポリマーと混合する前に、金属酸化物粒子とフッ素系のアニオン性表面改質剤とを先に混合することで、金属酸化物粒子の表面の一部または全部をフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆うことができる。
【0059】
表層16の形成材料に粗さ形成用粒子が含まれる場合には、粗さ形成用粒子も、バインダーポリマーと混合する前に、フッ素系のアニオン性表面改質剤と混合するとよい。これにより、粗さ形成用粒子の表面の一部または全部をフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆うことができる。粗さ形成用粒子の表面もフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆う場合、バインダーポリマーと混合する前に、金属酸化物粒子と粗さ形成用粒子を一緒にフッ素系のアニオン性表面改質剤と混合してもよいし、別々にフッ素系のアニオン性表面改質剤と混合してもよい。別々のほうが、各粒子の表面を被覆する効果や、粗さ形成用粒子の表面に金属酸化物粒子が凝集するのを抑える効果が高まる。
【0060】
以上の構成の帯電ロール10によれば、表層16に含まれる金属酸化物粒子の表面の一部または全部がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていることから、金属酸化物粒子の凝集が抑えられる。また、金属酸化物粒子の外側を向くように配向するフッ素含有基によって、金属酸化物粒子とバインダーポリマーの界面の摩擦が低減し、バインダーポリマーにかかるせん断応力を緩和することができる。これにより、表層材料による表層16のクラックが抑えられる。
【0061】
金属酸化物粒子の凝集が抑えられると、表層16の抵抗ムラが小さくなる。表層16の抵抗ムラは、AFMでランダムに表層16の表面の100点の抵抗を測定し、100点の抵抗の平均値に対する、抵抗の最大値と最小値の差の割合((抵抗最大値-抵抗最小値)/抵抗平均値)により表すことができる。上記割合は、表層16に含まれる金属酸化物粒子の表面の一部または全部がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている場合、15%程度に小さくなり、表層16に含まれる金属酸化物粒子の表面の一部または全部がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われていない場合(抵抗ムラが大きい場合)、30%程度に大きくなる。
【0062】
さらに、表層16に含まれる粗さ形成用粒子の表面の一部または全部がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われることで、粗さ形成用粒子の表面に金属酸化物粒子が集まりにくくなって、粗さ形成用粒子の表面における金属酸化物粒子の凝集による応力集中が抑えられ、表層16のバインダーポリマーのせん断応力によるクラックの発生が抑えられやすい。また、粗さ形成用粒子の表面の摩擦も低減するため、粗さ形成用粒子とバインダーポリマーの界面におけるせん断応力によるクラックの発生も抑えられる。
【実施例0063】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0064】
(実施例1)
<弾性体層用組成物の調製>
ヒドリンゴム(ECO、ダイソー製「エピクロマーCG102」)100質量部に対し、加硫助剤(酸化亜鉛、三井金属製「酸化亜鉛2種」)を5質量部、カーボン(ケッチェンブラックインターナショナル製「ケッチェンブラックEC300J」)を10質量部、加硫促進剤(2-メルカプトベンゾチアゾール、大内新興化学工業社製「ノクセラーM-P」)を0.5質量部、硫黄(鶴見化学工業社製、「サルファックスPTC」)を2質量部、充填剤(炭酸カルシウム、白石工業製「白艶華CC」)を50質量部添加し、これらを攪拌機により撹拌、混合して導電性ゴム組成物を調製した。
【0065】
<弾性体層の作製>
鉄製芯金にニッケルめっきを施した軸体(直径8mm)を成形金型(パイプ状)にセットし、上記の弾性体層用組成物を注入し、180℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.9mmの導電性ゴム弾性体からなる弾性体層を形成した。
【0066】
<粒子の被覆処理>
金属酸化物100質量部に対し、フッ素系のアニオン性表面改質剤0.7質量部を配合し、MEK100質量部を添加して、40℃以下で30分攪拌した。以上により、フッ素系のアニオン性表面改質剤で被覆された金属酸化物を得た。
また、粗さ形成用粒子(アルケマ製「オルガソール2001UDNAT1」)50質量部に対し、フッ素系のアニオン性表面改質剤0.3質量部を配合し、MEK50質量部を添加して、40℃以下で30分攪拌した。以上により、フッ素系のアニオン性表面改質剤で被覆された粗さ形成用粒子を得た。
【0067】
<表層の作製>
ポリアミド樹脂(バインダーポリマー)100質量部に対し、メラミン樹脂を50質量部、フッ素系のアニオン性表面改質剤で被覆された金属酸化物粒子を100質量部、フッ素系のアニオン性表面改質剤で被覆された粗さ形成用粒子を50質量部配合し、MEK100質量部に混合して、表層形成用組成物を調製した。次いで、表層形成用組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に厚さ10μmの表層を形成した。これにより、帯電ロールを作製した。
【0068】
(実施例2-8、10)
表1に記載の配合組成にて表層材料を構成した。
【0069】
(実施例9)
弾性体層用組成物において、ベースポリマーをヒドリンゴムからイソプレンゴム(IR、JSR製「JSR IR2200」)に変更した。
【0070】
(比較例1)
表層材料において、金属酸化物粒子の被覆処理を実施しなかった以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0071】
(比較例2)
表層材料において、導電剤として金属酸化物粒子に代えてカーボンブラックを用いた以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0072】
(比較例3)
表層材料において、導電剤としてのカーボンブラックに被覆処理を実施しなかった以外は比較例2と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0073】
(比較例4-7)
表層材料において、表面改質剤を変更した以外は実施例10と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0074】
表層材料に用いた材料は以下の通りである。
・金属酸化物粒子<1>:導電性酸化スズ、(石原産業製「SN-100P」)、平均粒子径0.01-0.03μm
・金属酸化物粒子<2>:導電性酸化亜鉛、(ハクスイテック製「Pazet GK-40」)、平均粒子径0.02-0.04μm
・カーボンブラック:(キャボットジャパン製「ショウブラックN762」)
・表面改質剤<1>:フッ素系、アニオン性(カルボキシレート基含有)、(DIC製「メガファックF-410」)
・表面改質剤<2>:フッ素系、アニオン性(スルホネート基含有)、(ネオス製「フタージェント110」)
・表面改質剤<3>:フッ素系、カチオン性(第4級アンモニウム基含有)、(ネオス製「フタージェント300」)
・表面改質剤<4>:フッ素系、ノニオン性、(DIC製「メガファックF-554」)
・表面改質剤<5>:カルボキシル基含有シリコーン系表面改質剤(信越シリコーン製「X-22-3710」)を水酸化ナトリウムでケン化してアニオン性基(カルボキシレート基)を有するとしたもの
・粗さ形成用粒子<1>:ポリウレタン製、(根上工業製「アートパールC-800T」)、平均粒子径6μm
・粗さ形成用粒子<2>:ポリアミド製、(アルケマ製「オルガソール2001UDNAT1」)、平均粒子径5μm
・バインダーポリマー<1>:ポリアミド、(鉛市製「ファインレジンFR-101」)
・バインダーポリマー<2>:ポリウレタン、(ウレタン樹脂、東ソー製「ニッポラン5196」)
【0075】
作製した帯電ロールを用いて、表層のクラック発生を調べた。
【0076】
(画像評価)
作製した帯電ロールを実機(RICOH製「MP C6004」)のユニット(ブラック)に取り付け、10℃×10%RH環境下にて25%濃度ハーフトーンにて画出し50万枚耐久後の評価(スジ評価)を行った。表層のクラックに起因するスジ画像の発生がなかったものを「〇」、表層のクラックに起因するスジ画像の発生があったものを「×」とした。
【0077】
【0078】
比較例1では、金属酸化物粒子の表面に表面改質剤を被覆処理していない。このため、金属酸化物粒子の凝集が抑えられず、表層材料による表層のクラックが抑えられていない。比較例2,3は、導電剤がカーボンブラックである。比較例2では、表面改質剤を用いてカーボンブラックの表面処理を行っているが、カーボンブラックの表面官能基は表面改質剤と相互作用し辛いことから、被覆処理の効果が発揮されず、凝集が抑えられていない。このため、比較例2では、表層材料による表層のクラックが抑えられていない。比較例3では、カーボンブラックの表面に表面改質剤を被覆処理していない。このため、カーボンブラックの凝集が抑えられず、表層材料による表層のクラックが抑えられていない。
【0079】
比較例4,5は、表面改質剤がフッ素系のカチオン性表面改質剤である。また、比較例6は、表面改質剤がフッ素系のノニオン性表面改質剤である。比較例4-6では、表面改質剤は金属酸化物粒子の表面官能基と相互作用しないため、金属酸化物粒子は表面改質剤により被覆されておらず、金属酸化物粒子の凝集が抑えられていない。このため、比較例4-6では、表層材料による表層のクラックが抑えられていない。比較例7は、表面改質剤がシリコーン系のアニオン性表面改質剤である。比較例7では、金属酸化物粒子は表面改質剤により被覆されているものの、金属酸化物粒子の外側を向くように配向するフッ素含有基が存在していないため、金属酸化物粒子とバインダーポリマーの界面の摩擦の低減効果が不十分で、表層材料による表層のクラックが抑えられていない。
【0080】
これに対し、実施例は、導電剤として金属酸化物粒子が用いられており、その金属酸化物粒子の表面がフッ素系のアニオン性表面改質剤で覆われている。このため、金属酸化物粒子の凝集が抑えられている。また、金属酸化物粒子の外側を向くように配向するフッ素含有基によって、金属酸化物粒子とバインダーポリマーの界面の摩擦が低減し、バインダーポリマーにかかるせん断応力が緩和されている。これにより、表層材料による表層のクラックが抑えられている。
【0081】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。