(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098078
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20230703BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230703BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20230703BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20230703BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230703BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20230703BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
B60H1/22 671
B60K1/04 Z
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/625
H01M10/651
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214590
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】雨貝 太郎
(72)【発明者】
【氏名】南家 健志
【テーマコード(参考)】
3D235
3L211
5H031
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB36
3D235CC15
3D235FF38
3L211AA10
3L211AA12
3L211AA14
3L211BA02
3L211CA16
3L211CA18
3L211CA20
3L211DA28
3L211DA29
3L211EA50
3L211EA51
3L211GA26
5H031CC09
5H031HH06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の一つの態様は、圧縮機の加熱能力を高めることができる車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法の提供を目的の一つとする。
【解決手段】第1回路C1は、圧縮機72、および熱交換器7を通過して第1熱媒体を循環させる第1ループを有する。第2回路C2は、発熱部、および熱交換器を通過して第2熱媒体を循環させる第2ループと、発熱部5、バッテリ6、および熱交換器を通過して第2熱媒体を循環させる第3ループと、を有する。制御部は、第1回路で第1ループに第1熱媒体を循環させるとともに、第2回路で第2ループに第2熱媒体を循環させる第1モードと、第1回路で第1ループに第1熱媒体を循環させるとともに、第2回路で第3ループに第2熱媒体を循環させる第2モードと、を有する。第1センサS1における測定値が第1閾値を超えた場合に、第1モードから第2モードに切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱媒体が流れる第1回路と、
前記第1回路に配置され前記第1熱媒体を圧縮する圧縮機と、
第2熱媒体が流れる第2回路と、
前記第2回路に配置されるバッテリと、
前記第2回路に配置され前記バッテリから電力を供給される発熱部と、
前記第2回路に配置され前記第2熱媒体の温度を測定する第1センサと、
前記第1回路および前記第2回路に配置され前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記第1回路および前記第2回路を制御する制御部と、を備え、
前記第1回路は、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過して前記第1熱媒体を循環させる第1ループを有し、
前記第2回路は、
前記発熱部、および前記熱交換器を通過して前記第2熱媒体を循環させる第2ループと、
前記発熱部、前記バッテリ、および前記熱交換器を通過して前記第2熱媒体を循環させる第3ループと、を有し、
前記制御部は、
前記第1回路で前記第1ループに前記第1熱媒体を循環させるとともに、前記第2回路で前記第2ループに前記第2熱媒体を循環させる第1モードと、
前記第1回路で前記第1ループに前記第1熱媒体を循環させるとともに、前記第2回路で前記第3ループに前記第2熱媒体を循環させる第2モードと、を有し、
前記第1センサにおける測定値が第1閾値を超えた場合に、前記第1モードから前記第2モードに切り替える、
車両用温調装置。
【請求項2】
前記第1回路に配置され前記第1熱媒体の温度又は圧力を測定する第2センサを備え、
前記第2回路は前記熱交換器を迂回する迂回管路を有し、
前記第2回路は、前記発熱部、および前記迂回管路を通過して前記第2熱媒体を循環させる第4ループを有し、
前記制御部は、
前記第1回路で前記第1ループに前記第1熱媒体を循環させるとともに、前記第2回路で前記第4ループに前記第2熱媒体を循環させる第3モードを有し、
前記第2センサにおける測定値が第2閾値を超えた場合に、前記第3モードから前記第1モードに切り替える、
請求項1に記載の車両用温調装置。
【請求項3】
前記第2回路は、前記バッテリを通過して前記第2熱媒体を循環させる第5ループを有し、
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記第2回路で前記第2ループとともに前記第5ループに前記第2熱媒体を循環させる、
請求項1又は2に記載の車両用温調装置。
【請求項4】
前記発熱部は、車両を駆動するモータ、前記バッテリから供給される直流電流を交流電流に変換して前記モータに供給するインバータ、および前記バッテリから供給される直流電流を電圧の異なる直流電流に変換し補機に供給する電力制御装置のうち少なくとも1つである、
請求項1~3の何れか一項に記載の車両用温調装置。
【請求項5】
前記第1閾値は、10℃以上40℃以下の値である、
請求項1~4の何れか一項に記載の車両用温調装置。
【請求項6】
車両用温調装置の制御方法であって、
前記車両用温調装置は、
第1熱媒体が流れ、圧縮機、および熱交換器が配置される第1回路と、
第2熱媒体が流れ、バッテリ、発熱部、前記熱交換器、および前記第2熱媒体の温度を測定する第1センサが配置される第2回路と、を備え、
前記第1回路において、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過して前記第1熱媒体を循環させる第1ループを形成するとともに、前記第2回路において、前記発熱部、および前記熱交換器を通過して前記第2熱媒体を循環させる第2ループを形成する第1モードと、
前記第1回路において、前記第1ループを形成するとともに、前記第2回路において、前記発熱部、前記バッテリ、および前記熱交換器を通過して前記第2熱媒体を循環させる第3ループを形成する第2モードと、を有し、
前記第1センサにおける測定値が第1閾値を超えた場合に、前記第1モードから前記第2モードに切り替える、
車両用温調装置の制御方法。
【請求項7】
前記車両用温調装置は、前記第1回路に配置され前記第1熱媒体の温度又は圧力を測定する第2センサを備え、
前記第2回路は、前記熱交換器を迂回する迂回管路を有し、
前記第1回路において、前記第1ループを形成するとともに、前記第2回路において、前記発熱部、および前記迂回管路を通過して前記第2熱媒体を循環させる第4ループを形成する第3モードを有し、
前記第2センサにおける測定値が第2閾値を超えた場合に、前記第3モードから前記第1モードに切り替える、
請求項6に記載の車両用温調装置の制御方法。
【請求項8】
前記第1モードにおいて、前記第2回路で前記第2ループとともに、前記バッテリを通過する第5ループに前記第2熱媒体を循環させる、
請求項6又は7に記載の車両用温調装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド自動車に搭載されるバッテリは、外気温や駆動状態に応じて加熱および冷却され最適な温度が保たれる。特許文献1には、圧縮機で冷媒を加熱し外部コンデンサを介して得た熱を使って車室内の空気を温める冷媒回路が開示される。また、この冷媒回路の熱は、バッテリ用熱交換器においてバッテリ冷却ラインの冷却水に移動させ、この熱によってバッテリが温められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機は、圧縮対象である熱媒体のエンタルピー(温度および圧力)が低すぎる場合、加熱能力を十分に発揮することができない。このため、熱媒体の熱を用いて空気を温めながらさらに他の回路に熱を移動させる場合、熱媒体のエンタルピーが低下し、圧縮機が加熱能力の低い運転から脱出し難くなる。この場合、熱媒体の温度を上昇させることができず、圧縮機が加熱能力を十分に発揮できないという問題が生じてしまう。
【0005】
本発明の一つの態様は、圧縮機の加熱能力を高めることができる車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用温調装置の一つの態様は、第1熱媒体が流れる第1回路と、前記第1回路に配置され前記第1熱媒体を圧縮する圧縮機と、第2熱媒体が流れる第2回路と、前記第2回路に配置されるバッテリと、前記第2回路に配置され前記バッテリから電力を供給される発熱部と、前記第2回路に配置され前記第2熱媒体の温度を測定する第1センサと、前記第1回路および前記第2回路に配置され前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、前記第1回路および前記第2回路を制御する制御部と、を備える。前記第1回路は、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過して前記第1熱媒体を循環させる第1ループを有する。前記第2回路は、前記発熱部、および前記熱交換器を通過して前記第2熱媒体を循環させる第2ループと、前記発熱部、前記バッテリ、および前記熱交換器を通過して前記第2熱媒体を循環させる第3ループと、を有する。前記制御部は、前記第1回路で前記第1ループに前記第1熱媒体を循環させるとともに、前記第2回路で前記第2ループに前記第2熱媒体を循環させる第1モードと、前記第1回路で前記第1ループに前記第1熱媒体を循環させるとともに、前記第2回路で前記第3ループに前記第2熱媒体を循環させる第2モードと、を有する。前記第1センサにおける測定値が第1閾値を超えた場合に、前記第1モードから前記第2モードに切り替える。
【0007】
本発明の車両用温調装置の制御方法の一つの態様は、車両用温調装置の制御方法である。前記車両用温調装置は、第1熱媒体が流れ、圧縮機、および熱交換器が配置される第1回路と、第2熱媒体が流れ、バッテリ、発熱部、前記熱交換器、および前記第2熱媒体の温度を測定する第1センサが配置される第2回路と、を備える。車両用温調装置の制御方法は、前記第1回路において、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過して前記第1熱媒体を循環させる第1ループを形成するとともに、前記第2回路において、前記発熱部、および前記熱交換器を通過して前記第2熱媒体を循環させる第2ループを形成する第1モードと、前記第1回路において、前記第1ループを形成するとともに、前記第2回路において、前記発熱部、前記バッテリ、および前記熱交換器を通過して前記第2熱媒体を循環させる第3ループを形成する第2モードと、を有する。前記第1センサにおける測定値が第1閾値を超えた場合に、前記第1モードから前記第2モードに切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、圧縮機の加熱能力を高めることができる車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の車両用温調装置の概略図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の車両用温調装置の冷房モードを示す概略図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の車両用温調装置の通常暖房モードを示す概略図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の車両用温調装置の第1ホットガス暖房モード(第3モード)の車両用温調装置の概略図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の車両用温調装置の第2ホットガス暖房モード(第1モード)の車両用温調装置の概略図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の車両用温調装置の第3ホットガス暖房モード(第2モード)の車両用温調装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る温調装置について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数などを異ならせる場合がある。
【0011】
図1は、一実施形態の車両用温調装置1の概略図である。
車両用温調装置1は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、等、モータを動力源とする車両に搭載される。
【0012】
車両用温調装置1は、第1回路C1と、アキュムレータ71と、圧縮機72と、第1空調用熱交換器73と、第2空調用熱交換器74と、ラジエータ77と、送風部80と、第1の膨張弁61と、第2の膨張弁62と、第3の膨張弁63と、第4の膨張弁64と、第2センサS2と、第2回路C2と、モータ2と、電力制御装置4と、インバータ3と、バッテリ6と、熱交換器7と、制御部60と、第1センサS1と、を備える。
【0013】
(制御部)
制御部60は、第1回路C1と、圧縮機72と、ラジエータ77と、送風部80と、第1の膨張弁61と、第2の膨張弁62と、第3の膨張弁63と、第4の膨張弁64と、第2回路C2と、に接続され、これらを制御する。また、制御部60は、第1センサS1、および第2センサS2に接続され、これらの測定値を監視する。
【0014】
(第1回路)
第1回路C1には、第1熱媒体が流れる。第1回路C1の経路中には、アキュムレータ71、圧縮機72、第1空調用熱交換器73、第2空調用熱交換器74、ラジエータ77、第1の膨張弁61、第2の膨張弁62、第3の膨張弁63、第4の膨張弁64、および第2センサS2が配置される。
【0015】
第1回路C1は、ヒートポンプ装置である。第1回路C1は、複数の管路9と、複数の開閉バルブ8Aと、複数のチャッキバルブ8Bと、を有する。複数の管路9は、互いに連結されて第1熱媒体を流すループを形成する。複数の管路9には、管路9a、9b、9d、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9mが含まれる。
なお、本明細書において、ループとは、熱媒体を循環させるループ状の経路を意味する。
【0016】
開閉バルブ8Aは、制御部60に接続される。開閉バルブ8Aは、管路の経路中に配置される。開閉バルブ8Aは、配置される管路の開放と閉塞とを切り替え可能である。第1回路C1は、開閉バルブ8Aおよび第1~第4の膨張弁61~64の制御によって、形成されるループが切り替えられる。複数の開閉バルブ8Aには、2個の開閉バルブ8b、8cが含まれる。
【0017】
チャッキバルブ8Bは、管路の経路中に配置される。チャッキバルブ8Bは、配置される管路の上流側の一端から下流側の他端に向かう第1熱媒体の流動を許容し、他端から一端に向かう流動を許容しない。複数のチャッキバルブ8Bには、2個のチャッキバルブ8g、8hが含まれる。
【0018】
次に、それぞれの管路9の構成について具体的に説明する。なお、それぞれの管路9の説明において、「一端」とは第1熱媒体の流動方向の上流側端部を示し、「他端」とは第1熱媒体の流動方向の下流側端部を示す。
【0019】
管路9aの一端は、管路9bの他端および管路9lの他端に接続される。管路の9aの他端は、管路9bの一端および管路9dの一端に接続される。管路9aは、第2センサS2、アキュムレータ71および圧縮機72を通過する。第1熱媒体は、管路9aの一端から他端に向かってアキュムレータ71、圧縮機72の順で流れる。
【0020】
管路9bの一端は、管路9aの他端および管路9dの一端に接続される。管路9bの他端は、管路9aの一端および管路9lの他端に接続される。すなわち、管路9aと管路9bとは両端部が互いに繋がりループを形成する。
【0021】
管路9dの一端は、管路9aの他端および管路9bの一端に接続される。管路9dの他端は、管路9gの一端および管路9fの一端に接続される。管路9dは、第1空調用熱交換器73を通過する。
【0022】
管路9fの一端は、管路9dの他端および管路9gの一端に接続される。管路9fの他端は、管路9jの一端および管路9hの一端に接続される。管路9fは、第3の膨張弁63およびラジエータ77を通過する。第1熱媒体は、管路9fの一端から他端に向かって第3の膨張弁63、ラジエータ77の順で流れる。
【0023】
管路9gの一端は、管路9dの他端および管路9fの一端に接続される。管路9gの他端は、管路9jの他端および管路9kの一端に接続される。
【0024】
管路9hの一端は、管路9fの他端および管路9jの一端に接続される。管路9hの他端は、管路9iの一端および管路9mの他端に接続される。管路9hは、開閉バルブ8cを通過する。
【0025】
管路9iの一端は、管路9hの他端および管路9mの他端に接続される。管路9iの他端は、管路9bの経路中であって第2の膨張弁62の下流側に接続される。管路9iは、チャッキバルブ8gを通過する。チャッキバルブ8gは、管路9iの一端から他端に向かう第1熱媒体の流れを許容し、他端から一端に向かう第1熱媒体の流れを制限する。
【0026】
管路9jの一端は、管路9fの他端および管路9hの一端に接続される。管路9jの他端は、管路9gの他端および管路9kの一端に接続される。管路9jは、チャッキバルブ8hを通過する。チャッキバルブ8hは、管路9jの一端から他端に向かう第1熱媒体の流れを許容し、他端から一端に向かう第1熱媒体の流れを制限する。
【0027】
管路9kの一端は、管路9gの他端および管路9jの他端に接続される。管路9kの他端は、管路9lの一端および管路9mの一端に接続される。
【0028】
管路9lの一端は、管路9kの他端および管路9mの一端に接続される。管路9lの他端は、管路9aの一端および管路9bの他端に接続される。管路9lは、第1の膨張弁61、熱交換器7を通過する。第1熱媒体は、管路9lの一端から他端に向かって第1の膨張弁61、熱交換器7の順で流れる。
【0029】
管路9mの一端は、管路9kの他端および管路9lの一端に接続される。管路9mの他端は、管路9hの他端および管路9iの一端に接続される。管路9mは、第4の膨張弁64および第2空調用熱交換器74を通過する。第1熱媒体は、管路9mの一端から他端に向かって第4の膨張弁64、第2空調用熱交換器74の順で流れる。
【0030】
アキュムレータ71は、圧縮機72の上流側に配置される。アキュムレータ71は、第1熱媒体を気液分離する。アキュムレータ71は、気相の第1熱媒体のみを圧縮機72に供給し、液相の第1熱媒体が圧縮機72に吸入されることを抑制する。
【0031】
圧縮機72は、通過する第1熱媒体を圧縮して温度を上昇させる。圧縮機72は、下流側に高圧かつ気相の第1熱媒体を吐出する。圧縮機72は、バッテリ6から供給される電力によって電気駆動される。
【0032】
第2センサS2は、管路9aに設けられ管路9a内の第1熱媒体の温度又は圧力を測定する。第2センサS2は、温度センサ又は圧力センサである。第2センサS2は、制御部60に接続される。本実施形態の第2センサS2は、アキュムレータ71の流入口に設けられ、アキュムレータ71に流入する第1熱媒体の圧力又は温度を測定する。なお、アキュムレータ71の通過前後で第1熱媒体の温度および圧力はほとんど変化しない。したがって、第2センサS2は、圧縮機72に流入する第1熱媒体の圧力又は温度を測定すると見做される。なお、第2センサS2は、圧縮機72の吸入口に設けられていてもよい。また、第2センサS2は、第1回路C1中の第1熱媒体の圧力又は温度を測定するものであれば他の管路に配置されていてもよい。この場合、第2センサS2が設けられる部分から圧縮機72の吸入口までの圧力変化および温度変化を推定して、圧縮機72に吸入される第1熱媒体の温度又は圧力の推定値を算出できる。
【0033】
ラジエータ77は、ファンを有し第1熱媒体の熱を外気に放出することで第1熱媒体を冷却する。ラジエータ77は、第1熱媒体と車室外の空気との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0034】
熱交換器7は、第1回路C1および第2回路C2に配置される。熱交換器7は、それぞれ第1回路C1を流れる第1熱媒体と第2回路C2を流れる第2熱媒体と、の間で熱交換を行う。
【0035】
第1~第4の膨張弁61~64は、第1熱媒体を膨張させて第1熱媒体の温度を低下させる。さらに、第1~第4の膨張弁61~64は、完全に開放して大きな圧力変化を伴わず第1熱媒体を通過させること、完全に閉塞して第1熱媒体の通過を制限することもできる。第1~第4の膨張弁61~64は、は、制御部60によって開度調節されており、下流側の第1熱媒体の圧力および温度を調整する。
【0036】
第1空調用熱交換器73は、圧縮機72を通過して温度が高められた第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う。すなわち、第1空調用熱交換器73は、第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う。これにより、第1空調用熱交換器73は、送風部80において送風機85から送られた空気流通路86f内の空気を温める。
【0037】
第2空調用熱交換器74は、第4の膨張弁64を通過して温度が低下した第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う。すなわち、第2空調用熱交換器74は、第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う。これにより、第2空調用熱交換器74は、送風部80において送風機85から送られた空気流通路86f内の空気を冷やす、又は除湿する。
【0038】
(送風部)
送風部80は、ダクト86と送風機85とを有する。ダクト86の内部には、空気流通路86fが設けられる。空気流通路86fは、車外の空気を車内に供給する経路である。また、空気流通路86fは、車内の空気を取り込んで再び車内に供給する経路でもある。空気流通路86fの一端側には、車外又は車内の空気を空気流通路86fに流入させる吸気口86aが設けられる。また、空気流通路86fの他端側には、空気流通路86fの空気を車内に排気する吹出口86bが設けられる。
【0039】
空気流通路86fの内部には、吸気口86a側から吹出口86b側に向かって送風機85、第2空調用熱交換器74、および第1空調用熱交換器73が、この順で配置される。
送風機85は、空気流通路86fの一端側から他端側に向かって空気を流通させる。すなわち、第2空調用熱交換器74、および第1空調用熱交換器73は、送風機85の送風流路中に配置される。第2空調用熱交換器74は、送風機85によって送られる空気を冷却および除湿する。一方で、第1空調用熱交換器73は、送風機85によって送られる空気を加熱する。
【0040】
空気流通路86fには、第1空調用熱交換器73を迂回して空気を流すバイパス流通路86cが設けられる。また、バイパス流通路86cの上流側には、第2空調用熱交換器74を通過した空気のうち、第1空調用熱交換器73によって加熱される空気の割合を調整するエアミックスダンパ86dが設けられている。エアミックスダンパ86dは、制御部60に接続され制御される。
【0041】
(第2回路)
第2回路C2には、第2熱媒体が流れる。第2回路C2の経路中には、熱交換器7、モータ2、電力制御装置4、インバータ3、バッテリ6、および第1センサS1が配置される。第2回路C2は、複数の管路11、12、13、14、15と、切替部31、32と、第1ポンプ41と、第2ポンプ42と、を有する。第1ポンプ41および第2ポンプ42は、配置される管路の第2熱媒体を一方向に圧送する。複数の管路は、互いに連結されて第2熱媒体を流すループを形成する。
【0042】
切替部31、32は、制御部60に接続され、開放又は閉塞を切り替えることで、第2熱媒体が通過する管路を切り替える。切替部31、32は、3つ以上の管路が合流する部分に配置され、接続された複数の管路のうち何れか2つの管路を連通させる。以下の説明において、複数の切替部31、32を互いに区別する場合、これらを第1切替部31、および第2切替部32と呼ぶ。
【0043】
第1切替部31は、四方弁である。第1切替部31は、4つの接続口A、B、C、Dを有する。第1切替部31は、4つの接続口A、B、C、Dのうち2つずつ二組の接続口同士を互いに連通させる。接続口Aには、管路15の一端が接続される。接続口Cには、管路11の他端が接続される。接続口B、Dには、管路12の両端部がそれぞれ接続される。
【0044】
第1切替部31は、2つの接続状態(第1接続状態および第2接続状態)の何れかに切り替え可能である。第1切替部31は、第1接続状態において、接続口A、C、および接続口B、Dをそれぞれ連通させる。第1接続状態の第1切替部31は、管路12の両端部を連通させつつ管路15の一端と管路11の他端とを連通させる。第1切替部31は、第2接続状態において、接続口A、B、および接続口C、Dをそれぞれ連通させる。第2接続状態の第1切替部31は、管路12の他端と管路15の一端とを連通させつつ、管路11の他端と管路12の一端とを連通させる。
【0045】
第2切替部32は、三方弁である。第2切替部32は、管路13、又は管路14の何れか一方を管路15と連通させる。第2切替部32は、制御部60からの信号に従って、管路15を流れる第2熱媒体を管路13、又は管路14の何れか一方に流す。したがって、第2切替部32は、管路13および管路14に流れる第2熱媒体の流量の比率を、100:0と0:100との何れかに調整する。なお、第2切替部32は、管路13および管路14に流れる第2熱媒体の流量の比率を線形で調整するミキシングバルブであってもよい。
【0046】
次に、それぞれの管路11~15の構成について具体的に説明する。
なお、それぞれの管路11~15の説明において、「一端」とは第2熱媒体の流動方向の上流側端部を示し、「他端」とは第2熱媒体の流動方向の下流側端部を示す。
【0047】
管路11の一端は、管路13の他端、および管路14の他端に接続される。管路11の他端は、第1切替部31の接続口Cに接続される。管路11は、第1ポンプ41と電力制御装置4とインバータ3とモータ2とを通過する。第1ポンプ41は、管路11において一端側から他端側に向かって第2熱媒体を圧送する。
【0048】
管路12の一端は、第1切替部31の接続口Dに接続される。管路12の他端は、第1切替部31の接続口Bに接続される。管路12は、第2ポンプ42とバッテリ6を通過する。第2ポンプ42は、管路12において一端側から他端側に向かって第2熱媒体を圧送する。
【0049】
管路13の一端は、第2切替部32を介して、管路15の他端、および管路14の一端に接続される。管路13の他端は、管路14の他端、および管路11の一端に接続される。管路13は、熱交換器7を通過する。
【0050】
管路(迂回管路)14の一端は、第2切替部32を介して、管路15の他端、および管路13の一端に接続される。管路14の他端は、管路13の他端、および管路11の一端に接続される。すなわち、管路14の一端および他端は、それぞれ管路13の一端および他端に接続される。これにより、管路14は、熱交換器7を迂回する。
【0051】
管路15の一端は、第1切替部31の接続口Aに接続される。管路15の他端は、第2切替部32を介して管路13の一端、および管路14の一端に接続される。
【0052】
モータ2は、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機である。モータ2は、図示略の減速機構を介して、車両の車輪に接続される。モータ2は、インバータ3から供給される交流電流により駆動し、車輪を回転させる。これにより、モータ2は、車両を駆動する。また、モータ2は、車輪の回転を回生し交流電流を発電する。発電された電力は、インバータ3を通じてバッテリ6に蓄えられる。モータ2のハウジング内には、モータの各部を冷却および潤滑させるオイルが貯留される。
【0053】
インバータ3は、バッテリ6の直流電流を交流電流に変換する。インバータ3は、モータ2と電気的に接続される。インバータ3によって変換された交流電流は、モータ2に供給される。すなわち、インバータ3は、バッテリ6から供給される直流電流を交流電流に変換してモータ2に供給する。
【0054】
電力制御装置4は、IPS(Integrated Power System)とも呼ばれる。電力制御装置4は、AC/DC変換回路およびDC/DC変換回路を有する。AC/DC変換回路は、外部電源から供給される交流電流を直流電流に変換しバッテリ6に供給する。すなわち、電力制御装置4は、AC/DC変換回路において、外部電源から供給される交流電流を直流電流に変換しバッテリ6に供給する。DC/DC変換回路は、バッテリ6から供給される直流電流を電圧の異なる直流電流に変換し、制御部60などに供給する。
【0055】
モータ2、インバータ3、および電力制御装置4は、バッテリ6から電力を供給されて発熱する。以下の説明において、第2回路C2に配置される構成部のうち、バッテリ6から電力を供給されて発熱する構成部を発熱部5と呼ぶ。したがって本実施形態の発熱部5は、車両を駆動するモータ2、バッテリ6から供給される直流電流を交流電流に変換してモータ2に供給するインバータ3、およびバッテリ6から供給される直流電流を電圧の異なる直流電流に変換し補機に供給する電力制御装置4のうち少なくとも1つである。
【0056】
バッテリ6は、インバータ3を介してモータ2に電力を供給する。また、バッテリ6は、モータ2によって発電された電力を充電する。バッテリ6は、外部電源によって充填されていてもよい。バッテリ6は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ6は、繰り返し充電および放電が可能な二次電池であれば、他の形態であってもよい。
【0057】
第1センサS1は、管路15に設けられ管路15内の第2熱媒体の温度を測定する温度センサである。第1センサS1は、制御部60に接続される。本実施形態の第1センサS1は、管路15の下流側の端部近傍であって第2切替部32の流入口に設けられる。第1センサS1は、第2切替部32に流入する第2熱媒体の温度を測定する。すなわち、第1センサS1は、熱交換器7に流入又は熱交換器7を迂回する第2熱媒体の温度を測定する。なお、第1センサS1は、第2回路C2中の第2熱媒体の温度を測定するものであれば、他の管路に配置されていてもよい。この場合であっても、第1センサS1から熱交換器7の流入口までの温度変化を推定して、熱交換器7に流入、又は熱交換器7を迂回する第2熱媒体の温度の推定値を算出できる。
【0058】
(各モード)
本実施形態の車両用温調装置1は、冷房モード、通常暖房モードと、第1ホットガス暖房モード(第3モード)と、第2ホットガス暖房モード(第1モード)と、第3ホットガス暖房モード(第2モード)と、を有する。各モードは、開閉バルブ8A、および切替部31、32の切り替えによって互いに遷移可能である。なお、車両用温調装置1は、開閉バルブ8A、および切替部31、32を切り替えることで構成し得る他のモードを有していてもよい。
なお、以下の説明において、第1ホットガス暖房モード、第2ホットガス暖房モード、および第3ホットガス暖房モードを、まとめてホットガス暖房モードと呼ぶ場合がある。
【0059】
(冷房モード)
図2は、冷房モードの車両用温調装置1の概略図である。
冷房モードの車両用温調装置1において第1熱媒体は、第2空調用熱交換器74で空気流通路86f内を流れる車内の空気から吸熱してラジエータ77で車外に放熱する。すなわち、第1熱媒体は、車内から車外に熱を移送する。これにより、第1熱媒体は、車内の空気を冷却する。
【0060】
冷房モードの第1回路C1は、冷房用ループLcを有する。冷房用ループLcは、アキュムレータ71、圧縮機72、第1空調用熱交換器73、第3の膨張弁63、ラジエータ77、第4の膨張弁64、および第2空調用熱交換器74、の順で通過して第1熱媒体を循環させる。
【0061】
なお、冷房モードにおいて、第1回路C1と第2回路C2との間に熱のやり取りは発生しない。したがって、冷房モードにおいて、第2回路C2に形成されるループは限定されない。
【0062】
車両用温調装置1は、開閉バルブ8A、および第1~第4の膨張弁61~64を以下のように切り替えることで冷房モードとされる。すなわち、冷房モードの車両用温調装置1は、開閉バルブ8bを閉塞し、開閉バルブ8cを閉塞する。さらに、冷房モードの車両用温調装置1は、第1の膨張弁61を完全に閉塞し、第2の膨張弁62を完全に閉塞し、第3の膨張弁63を完全に開放し、第4の膨張弁64において開度を調整し通過する第1熱媒体を減圧させる。
【0063】
また、冷房モードにおいて、送風部80のエアミックスダンパ86dは、吹出口86b側の流路口を塞ぎ、バイパス流通路を開放する。これにより、送風部80は、第2空調用熱交換器74によって冷却された空気を、第1空調用熱交換器73を通過させることなく車室内に送る。
【0064】
冷房モードにおいて圧縮機72を動作させると、圧縮機72から吐出された高圧気相の第1熱媒体は、第1空調用熱交換器73およびラジエータ77を通過する過程で放熱し液化する。高圧液相の第1熱媒体は、第4の膨張弁64を通過することで減圧され、さらに第2空調用熱交換器74において気化するとともに、空気流通路86f内の空気から吸熱する。さらに、低圧気相の第1熱媒体は、アキュムレータ71を経て再び圧縮機72吸入される。
【0065】
(通常暖房モード)
図3は、通常暖房モードの車両用温調装置1の概略図である。
通常暖房モードの車両用温調装置1において第1熱媒体は、ラジエータ77で外気から吸熱して第1空調用熱交換器73で空気流通路86f内に放熱する。すなわち、第1熱媒体は、車外から車内に熱を移送する。これにより、第1熱媒体は、車内の空気を加熱する。
【0066】
通常暖房モードの第1回路C1は、暖房用ループLhを有する。暖房用ループLhは、アキュムレータ71、圧縮機72、第1空調用熱交換器73、第3の膨張弁63、およびラジエータ77、の順で通過して第1熱媒体を循環させる。
【0067】
なお、通常暖房モードにおいて、第1回路C1と第2回路C2との間に熱のやり取りは発生しない。したがって、通常暖房モードにおいて、第2回路C2に形成されるループは限定されない。
【0068】
車両用温調装置1は、開閉バルブ8A、および第1~第4の膨張弁61~64を以下のように切り替えることで通常暖房モードとされる。すなわち、通常暖房モードの車両用温調装置1は、開閉バルブ8bを閉塞し、開閉バルブ8cを開放する。さらに、通常暖房モードの車両用温調装置1は、第1の膨張弁61を完全に閉塞し、第2の膨張弁62を完全に閉塞し、第3の膨張弁63において開度を調整し通過する第1熱媒体を減圧させ、第4の膨張弁64を完全に閉塞する。
【0069】
また、通常暖房モードにおいて、送風部80のエアミックスダンパ86dは、吹出口86b側の流路口を開放させる。これにより、送風部80は、第1空調用熱交換器73によって加熱された空気を車室内に送る。
【0070】
通常暖房モードにおいて圧縮機72を動作させると、圧縮機72から吐出された高圧気相の第1熱媒体は、第1空調用熱交換器73を通過する過程で放熱し液化する。高圧液相の第1熱媒体は、第3の膨張弁63を通過することで減圧され、さらにラジエータ77において気化するとともに外気から吸熱する。さらに、低圧気相の第1熱媒体は、アキュムレータ71を経て再び圧縮機72吸入される。
【0071】
なお、図示を省略するが、車室内の暖房とともに除湿を行う場合には、除湿暖房モードを選択してもよい。この場合、通常暖房モードから、開閉バルブ8cを閉塞し、開閉バルブ8bを開放し、第3の膨張弁63を完全に閉塞し、第4の膨張弁64において開度を調整しながら開放して通過する第1熱媒体を減圧させる。これにより、第1熱媒体は、ラジエータ77で気化することなく、第2空調用熱交換器74を通過する際に気化して空気流通路86f内の空気から吸熱し結露を生じさせることで空気を除湿する。
【0072】
(ホットガス暖房モード)
図4は、第1ホットガス暖房モード(第3モード)の車両用温調装置1の概略図であり、
図5は、第2ホットガス暖房モード(第1モード)の車両用温調装置1の概略図であり、
図6は、第3ホットガス暖房モード(第2モード)の車両用温調装置1の概略図である。
図4~
図6に示すように、第1~第3ホットガス暖房モードにおいて、第1回路C1に形成されるループは、共通している。また、第1~第3ホットガス暖房モードは、第2回路に形成されるループが互いに異なる。ここでは、第1~第3ホットガス暖房モードに共通する第1回路C1に形成されるループについて説明した後に、それぞれのモードに固有の第2回路C2に形成されるループについて説明する。
【0073】
ホットガス暖房モード(すなわち、第1~第3ホットガス暖房モード)の車両用温調装置1において第1熱媒体は、圧縮機72から熱を取り出し、熱交換器7において第2回路C2から熱を受け取り、第2空調用熱交換器74で空気流通路86f内の空気に放熱することで車内を暖房する。ホットガス暖房モードは、外気温が極端に低く、ラジエータ77での吸熱が難しい場合に選択される。
【0074】
本実施形態によれば、第1回路C1は、ホットガス用ループL1および蓄熱用ループL1aに第1熱媒体を同時に循環させるホットガス暖房モードと、暖房用ループLhに第1熱媒体を循環させる通常暖房モードと、の間を切り替え可能である。このため、外気温が著しく低くラジエータ77における外気からの吸熱が難しい場合に、ホットガス暖房モードを選択することで車室内を安定的に暖房できる。
【0075】
ホットガス暖房モードの第1回路C1は、第1熱媒体を同時に循環させるホットガス用ループ(第1ループ)L1および蓄熱用ループL1aを有する。
【0076】
ホットガス用ループL1は、アキュムレータ71、圧縮機72、第1空調用熱交換器73、第1の膨張弁61、および熱交換器7の順で通過して第1熱媒体を循環させる。蓄熱用ループL1aは、アキュムレータ71、圧縮機72、および第2の膨張弁62の順で通過して第1熱媒体を循環させる。
【0077】
車両用温調装置1は、開閉バルブ8A、および第1~第4の膨張弁61~64を以下のように切り替えることでホットガス暖房モードとされる。すなわち、ホットガス暖房モードの車両用温調装置1は、開閉バルブ8bを開放し、開閉バルブ8cを閉塞する。さらに、ホットガス暖房モードの車両用温調装置1は、第1の膨張弁61において開度を調整し通過する第1熱媒体を減圧させ、第2の膨張弁62において開度を調整し通過する第1熱媒体を減圧させ、第3の膨張弁63を完全に閉塞し、第4の膨張弁64を完全に閉塞する。
【0078】
ホットガス暖房モードにおいて、送風部80のエアミックスダンパ86dは、吹出口86b側の流路口を開放させる。これにより、送風部80は、第1空調用熱交換器73によって加熱された空気を車室内に送る。
【0079】
ホットガス暖房モードにおいて、ホットガス用ループL1と蓄熱用ループL1aとの共通部分である管路9aには、アキュムレータ71および圧縮機72が配置される。圧縮機72から吐出された第1熱媒体は、管路9dと管路9bとに分岐して流れる。管路9dに流れた第1熱媒体は、ホットガス用ループL1を循環しアキュムレータ71に戻る。管路9bに流れた第1熱媒体は、蓄熱用ループL1aを循環しアキュムレータ71に戻る。すなわち、管路9dと管路9bとに分岐して流れた第1熱媒体は、アキュムレータ71の上流側で合流した後に、アキュムレータ71および圧縮機72に吸入される。
【0080】
蓄熱用ループL1aにおいて、圧縮機72から吐出された高圧気相の第1熱媒体は、第2の膨張弁62を通過することで減圧されて低圧気相とされ、アキュムレータ71を経て再び圧縮機72に吸入される。
【0081】
蓄熱用ループL1aにおいて、第1熱媒体は、第2の膨張弁62で減圧されるものの放熱を行うことがない。このため、蓄熱用ループL1aを循環する第1熱媒体は、圧縮機72のエネルギを熱として蓄える。すなわち、蓄熱用ループL1aは、圧縮機72から熱を取り出して蓄えるループである。本実施形態によれば、第1熱媒体を蓄熱用ループL1aで循環させることで、第1熱媒体の温度を高めることができる。
【0082】
ホットガス用ループL1において、圧縮機72から吐出された高圧気相の第1熱媒体は、第1空調用熱交換器73を通過する過程で放熱し液化する。高圧液相の第1熱媒体は、第1の膨張弁61を通過することで減圧され、熱交換器7において気化するとともに第2回路C2の第2熱媒体から吸熱する。さらに、低圧気相の第1熱媒体は、アキュムレータ71を経て再び圧縮機72吸入される。
【0083】
ホットガス用ループL1を循環する第1熱媒体は、第1空調用熱交換器73で放熱して液化し、熱交換器7において第2回路C2の第2熱媒体から吸熱して気化する。しかしながら、第2回路C2から十分な吸熱を得ることができない場合に、第1熱媒体の温度が高まらず第1熱媒体の気化が進みにくい。この場合、アキュムレータ71から圧縮機72に、気相の第1熱媒体を十分に供給できなくなる虞がある。
【0084】
本実施形態によれば、ホットガス暖房モードの車両用温調装置1は、ホットガス用ループL1とともに蓄熱用ループL1aにおいて第1熱媒体を循環させる。このため、アキュムレータ71を介して圧縮機72には、ホットガス用ループL1と蓄熱用ループL1aとをそれぞれ循環する第1熱媒体が混合して吸入される。このため、アキュムレータ71には、温度が十分に高く気化が進んだ第1熱媒体が流入する。本実施形態の車両用温調装置1によれば、圧縮機72の機能を十分に発揮させ高温高圧の第1熱媒体を第1空調用熱交換器73に供給することで、外気温が極低温の場合でも車室内の暖房を行うことができる。
【0085】
ホットガス暖房モードでは、第1の膨張弁61および第2の膨張弁62の開度を調整することで、ホットガス用ループL1および蓄熱用ループL1aを循環する第1熱媒体の流量の比率を調整できる。制御部60は、第2センサS2の測定結果を基に、ホットガス用ループL1と蓄熱用ループL1aとをそれぞれ循環する第1熱媒体の比率を決める。より具体的には、第1回路C1は制御部60で、圧縮機72に流入する第1熱媒体の圧力又は温度が低い場合に、蓄熱用ループL1aを循環する第1熱媒体の比率を高める。これにより、圧縮機72に流入する第1熱媒体の圧力又は温度が低くなりすぎることを抑制して、圧縮機72の機能を十分に発揮させることができる。
【0086】
本実施形態において、ホットガス用ループL1の第1熱媒体は、第1の膨張弁61の下流側かつアキュムレータ71の上流側で熱交換器7を通過する。熱交換器7は、第1回路C1の第1熱媒体と第2回路C2の第2熱媒体との間で熱交換を行う。すなわち、ホットガス用ループL1の第1熱媒体は、熱交換器7において第2熱媒体から熱を受け取る。
【0087】
本実施形態の車両用温調装置1によれば、ホットガス用ループL1において、第1の膨張弁61で減圧された低圧液相の第1熱媒体に、第2回路の第2熱媒体から熱を受け取らせることができる。これにより車両用温調装置1は、第2回路C2の熱を第1回路C1で効率的に利用して、アキュムレータ71に流入する第1熱媒体の気化を進行させることができる。
【0088】
(第1ホットガス暖房モード(第3モード))
図4に示すように、第1ホットガス暖房モードの第2回路C2は、第1モータループ(第4ループ)P4と、バッテリループ(第5ループ)P5と、を有する。
【0089】
車両用温調装置1は、切替部31、32を以下のように切り替えることで第2回路C2に第1モータループP4、およびバッテリループP5を形成する。すなわち、第1切替部31は、第2接続状態として、管路12と管路15とを連通させ、管路14と管路15とを連通させる。第2切替部32は、管路15と管路14とを連通させ、管路13を閉塞する。
【0090】
第1モータループP4は、第1ポンプ41、電力制御装置4、インバータ3、およびモータ2を通過し、熱交換器7を迂回して第2熱媒体を循環させる。すなわち、第1モータループP4は、発熱部5、および管路(迂回管路)14を通過して第2熱媒体を循環させる。第1モータループP4において、発熱部5の熱は、第2熱媒体に移動して第2熱媒体の温度を高める。
【0091】
バッテリループP5は、第2ポンプ42、およびバッテリ6を通過して第2熱媒体を循環させる。バッテリループP5は、他の回路から熱を受け取ることがなく、熱的に独立したループである。
【0092】
本実施形態によれば、制御部60は、第1ホットガス暖房モードにおいて、第2ポンプ42を駆動させる。制御部60は、第1ホットガス暖房モードにおいて、第2回路C2で第1モータループP4とともにバッテリループP5に第2熱媒体を循環させる。バッテリループP5は、バッテリ6のセル間の温度分布を均一にする。バッテリ6は、構成される複数のセルの温度分布にばらつきが生じると、局所的な特性の低下を生じる場合がある。本実施形態によれば、バッテリループP5によってバッテリ6のセル間の温度分布のばらつきを抑制することで、バッテリ6の性能を安定させることができる。
【0093】
このように、第1ホットが暖房モードは、第1回路C1において、ホットガス用ループL1を形成するとともに、第2回路C2において、発熱部5、および管路14を通過して第2熱媒体を循環させる第1モータループP4を形成する。
【0094】
(第2ホットガス暖房モード(第1モード))
図5に示すように、第2ホットガス暖房モードの第2回路C2は、第2モータループ(第2ループ)P2と、バッテリループ(第5ループ)P5と、を有する。
【0095】
車両用温調装置1は、切替部31、32を以下のように切り替えることで第2回路C2に第2モータループP2、およびバッテリループP5を形成する。すなわち、第1切替部31は、第2接続状態として、管路12と管路15とを連通させ、管路14と管路15とを連通させる。第2切替部32は、管路15と管路13とを連通させ、管路14を閉塞する。
【0096】
第2モータループP2は、第1ポンプ41、電力制御装置4、インバータ3、モータ2、および熱交換器7を通過して第2熱媒体を循環させる。すなわち、第2モータループP2は、発熱部5、および熱交換器7を通過して第2熱媒体を循環させる。第2モータループP2において、発熱部5の熱は、第2熱媒体に移動して第2熱媒体の温度を高める。また、第2熱媒体に移動した熱は、熱交換器7から第1回路C1に受け渡される。
【0097】
バッテリループP5は、第1ホットガス暖房モードのみならず第2ホットガス暖房モードにおいても、第2回路C2に形成される。本実施形態によれば、制御部60は、第2ホットガス暖房モードにおいて、第2ポンプ42を駆動させる。制御部60は、第2ホットガス暖房モードにおいて、第2回路C2で第2モータループP2とともにバッテリループP5に第2熱媒体を循環させる。これにより、バッテリ6のセル間の温度分布のばらつきを抑制し、バッテリ6の性能を安定させることができる。
【0098】
このように、第2ホットガス暖房モードは、第1回路C1において、圧縮機72、および熱交換器7を通過して第1熱媒体を循環させるホットガス用ループL1を形成するとともに、第2回路C2において、発熱部5、および熱交換器7を通過して第2熱媒体を循環させる第2モータループを形成するモードである。
【0099】
(第3ホットガス暖房モード(第2モード))
図6に示すように、第3ホットガス暖房モードの第2回路C2は、全体ループ(第3ループ)P3を有する。
【0100】
車両用温調装置1は、切替部31、32を以下のように切り替えることで第2回路C2に全体ループP3を形成する。すなわち、第1切替部31は、第1接続状態として、管路12と管路15とを連通させ、管路11と管路12とを連通させる。第2切替部32は、管路15と管路13とを連通させ、管路14を閉塞する。
【0101】
全体ループP3は、第1ポンプ41、電力制御装置4、インバータ3、モータ2、第2ポンプ42、バッテリ6、および熱交換器7を通過して第2熱媒体を循環させる。すなわち、全体ループP3は、発熱部5、バッテリ6、および熱交換器7を通過して第2熱媒体を循環させる。全体ループP3において、発熱部5の熱は、第2熱媒体に移動して第2熱媒体の温度を高める。また、第2熱媒体に移動した熱は、熱交換器7から第1回路C1に受け渡されるとともに、バッテリ6の加熱に利用される。
【0102】
このように、第3ホットガス暖房モードは、第1回路C1において、ホットガス用ループL1を形成するとともに、第2回路C2において、発熱部5、バッテリ6、および熱交換器7を通過して第2熱媒体を循環させる全体ループP3を形成するモードである。
【0103】
(ホットガス暖房モードにおける制御方法)
次に、本実施形態の車両用温調装置1のホットガス暖房モードにおける制御方法について説明する。本実施形態の制御部60は、外気温が低温の場合に、第1ホットガス暖房モード、第2ホットガス暖房モード、および第3ホットガス暖房モードを実行する。第1ホットガス暖房モード、第2ホットガス暖房モード、および第3ホットガス暖房モードは、主にこの順で実行される。
【0104】
制御部60は、外気温が極低温の場合に、車両の暖房がONにされると、まず
図4に示す第1ホットガス暖房モードを実行する。第1ホットガス暖房モードの制御部60は、第1回路C1でホットガス用ループL1および蓄熱用ループL1aに第1熱媒体を循環させるとともに、第2回路C2で第1モータループP4に第2熱媒体を循環させる。第2回路C2の第1モータループP4は、熱交換器7を迂回して第2熱媒体を循環させるループである。このため、第1ホットガス暖房モードにおいて、第1回路C1と第2回路C2との間に、熱のやり取りはほとんど発生しない。
【0105】
外気温が極低温の場合、第1熱媒体および第2熱媒体の温度も低い状態となる。第1回路C1に配置される圧縮機72は、第1熱媒体のエンタルピー(温度および圧力)が低すぎる場合、第1熱媒体を加熱する能力(加熱能力)が低くなる。このため圧縮機72による第1熱媒体の加熱を実行し、第1空調用熱交換器73で空気を温めながら、第2回路C2に熱を奪われてしまうと、第1熱媒体のエンタルピーが上昇せず、圧縮機72が加熱能力の低い運転から脱出しにくい。
【0106】
本実施形態では、第1ホットガス暖房モードにおいて、第1回路C1を熱的に独立させることで、第1熱媒体から第2回路C2への熱の移動を制限し、第1熱媒体のエンタルピーを上昇させやすくすることができる。これにより、第1熱媒体および第2熱媒体が低温の状態においても、圧縮機72の加熱能力を十分に発揮させることができる。
【0107】
制御部60は、第2センサS2における測定値が予め設定された閾値(以下、第2閾値と呼ぶ)を超えた場合に、第1ホットガス暖房モード(
図4)から第2ホットガス暖房モード(
図5)に切り替える。
【0108】
第2ホットガス暖房モードの制御部60は、第1回路C1でホットガス用ループおよび蓄熱用ループL1aに第1熱媒体を循環させるとともに、第2回路C2で第2モータループP2に第2熱媒体を循環させる。
【0109】
上述したように、第2センサS2は、第1回路C1に配置され第1熱媒体の温度又は圧力を測定する。第2閾値としては、圧縮機72の加熱能力が十分に発揮できる程度の第1熱媒体の温度又は圧力が設定される。
【0110】
第2ホットガス暖房モードにおいて、第2回路C2で熱交換器7に接続される第2モータループP2は、発熱部5を通過するが、吸熱するバッテリ6を通過しない。このため、第2ホットガス暖房モードでは、熱交換器7で第1熱媒体から第2熱媒体に移動する熱量は限定的である。このため、圧縮機72に吸入される第1熱媒体の温度又は圧力が、第2閾値を超えていれば、第2熱媒体が熱交換器7を通過しても、圧縮機72が加熱能力を十分に維持できる。
【0111】
また、発熱部5としてのモータ2、インバータ3、および電力制御装置4の発熱量は、駆動開始から時間が経過するごとに高まる。このため、駆動開始から十分な時間を経ることで、第2モータループP2を循環する第2熱媒体の温度が高くなり、熱交換器7において第1熱媒体に多くの熱を受け渡すことが可能となる。これにより、第1熱媒体のエンタルピーがさらに高まり、圧縮機72の加熱能力を安定させることができる。結果的に、第1回路C1において、第1空調用熱交換器73で第1熱媒体から空気への放熱量を高めることができ、車室内を高速に温めることができる。
【0112】
制御部60は、第1センサS1における測定値が予め設定された閾値(以下、第1閾値と呼ぶ)を超えた場合に、第2ホットガス暖房モード(
図5)から第3ホットガス暖房モード(
図6)に切り替える。
【0113】
第3ホットガス暖房モードの制御部60は、第1回路C1でホットガス用ループおよび蓄熱用ループL1aに第1熱媒体を循環させるとともに、第2回路C2で全体ループP3に第2熱媒体を循環させる。
【0114】
上述したように、第1センサS1は、第2回路C2に配置され第2熱媒体の温度を測定する。第1閾値としては、発熱部5からの発熱によってバッテリ6を十分に加熱できることが確認できる程度の第2熱媒体の温度が設定される。
【0115】
第3ホットガス暖房モードにおいて、第2回路C2に形成される全体ループP3は、熱交換器7とバッテリ6とを通過する。このため、第2熱媒体の温度が十分に高まっていない場合、バッテリ6の吸熱量が発熱部5の発熱量を上回り、熱交換器7において第1熱媒体の熱を第2熱媒体が奪ってしまう。本実施形態によれば、第1センサS1における測定値が第1閾値を超えた場合に、第3ホットガス暖房モードとすることで、第1回路C1から第2回路C2への熱の移動を抑制し、圧縮機72の加熱能力を維持できる。
【0116】
第1閾値は、10℃以上40℃以下の値であることが好ましい。第1閾値を10℃以上とすることで、第2回路C2においてバッテリ6を十分に加熱することができ、バッテリ6の性能を安定させやすい。一方で、第1閾値が40℃を超える温度である場合、第2ホットガス暖房モードから第3ホットガス暖房モードに切り替えた際に、熱交換器7において第1熱媒体が急激に温められて圧縮機72に負荷がかかる虞がある。このため、第1閾値は、40℃以下とすることが好ましい。
【0117】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態および変形例おける各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0118】
1…車両用温調装置、2…モータ、3…インバータ、4…電力制御装置、5…発熱部、6…バッテリ、7…熱交換器、14…管路(迂回管路)、60…制御部、72…圧縮機、C1…第1回路、C2…第2回路、L1…ホットガス用ループ(第1ループ)、P2…第2モータループ(第2ループ)、P3…全体ループ(第3ループ)、P4…第1モータループ(第4ループ)、P5…バッテリループ(第5ループ)、S1…第1センサ、S2…第2センサ