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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098100
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/10 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
B65D35/10 A ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214626
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 数広
(72)【発明者】
【氏名】宮 隆
【テーマコード(参考)】
3E065
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA16
3E065BA17
3E065BA18
3E065BB03
3E065CA09
3E065CA10
3E065DA05
3E065DB01
3E065DB05
3E065FA04
3E065FA12
3E065HA02
(57)【要約】
【課題】遮光性、ガスバリア性、並びに金属のような光沢を有するとともにリサイクル性を向上させたチューブ容器を提案する。
【解決手段】本開示に係るチューブ容器100は、内容物の収容空間Sを形成する胴部1aが複数材料による積層構造を有するチューブ容器100であって、積層構造は、光の透過を抑制する遮光層15と、遮光層15の外側に設けられベース材の少なくとも片面に金属蒸着膜を形成した高反射層17と、ガスの通過を抑制するバリア層21と、遮光層15と同種の樹脂を有する最外層及び最内層と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の収容空間を形成する容器本体の胴部が複数材料による積層構造を有するチューブ容器であって、
前記積層構造は、光の透過を抑制する遮光層と、前記遮光層の外側に設けられベース材の少なくとも片面に金属蒸着膜を形成した高反射層と、ガスの通過を抑制するバリア層と、前記遮光層と同種の樹脂を有する最外層及び最内層と、を備えるチューブ容器。
【請求項2】
前記積層構造は、内側から前記遮光層、前記高反射層、前記バリア層の順に配置されている、請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記金属蒸着膜はアルミニウム蒸着膜である、請求項1又は2に記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記積層構造の最外層及び最内層は、ポリエチレン系樹脂により形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記容器本体を構成する材料のうち、同種のポリオレフィン樹脂以外の材料の重量割合は、6重量パーセント未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載のチューブ容器。
【請求項6】
前記遮光層は、外側から順に白色、黒色、白色のポリエチレン系樹脂を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、胴部の押圧によって内容物を注出可能なチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、練り歯磨き、薬剤又は調味料等を内容物として充填し、容器の胴部を押圧することによって内容物を注出可能なチューブ容器は、内容物の劣化を抑制するために、外部の光に対する遮光性に優れると共に、ガスバリア性や水分バリア性を備えたものが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属箔を有するバリア層と、金属蒸着膜を有する高反射層とを備えたチューブ容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020- 19493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のチューブ容器では、金属箔を有するバリア層を中間層として備えているため、ポリエチレン系樹脂を最外層及び最内層に備える上記チューブ容器において、ポリエチレン系樹脂とは異材質である金属箔の重量割合が高まるため、チューブ容器のリサイクル性の点で、未だ改善の余地があった。
【0006】
本開示は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、遮光性、バリア性、並びに金属のような光沢を有するとともにリサイクル性を向上させたチューブ容器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のチューブ容器は、
内容物の収容空間を形成する容器本体の胴部が複数材料による積層構造を有するチューブ容器であって、
前記積層構造は、光の透過を抑制する遮光層と、前記遮光層の外側に設けられベース材の少なくとも片面に金属蒸着膜を形成した高反射層と、ガスの通過を抑制するバリア層と、前記遮光層と同種の樹脂を有する最外層及び最内層と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本開示のチューブ容器は、上記構成において、前記積層構造は、内側から前記遮光層、前記高反射層、前記バリア層の順に配置されていることが好ましい。
【0009】
また、本開示のチューブ容器は、上記構成において、前記金属蒸着膜はアルミニウム蒸着膜であることが好ましい。
【0010】
また、本開示のチューブ容器は、上記構成において、前記積層構造の最外層及び最内層は、ポリエチレン系樹脂により形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本開示のチューブ容器は、上記構成において、前記容器本体を構成する材料のうち、同種のポリオレフィン樹脂以外の材料の重量割合は、6重量パーセント未満であることが好ましい。
【0012】
また、本開示のチューブ容器は、上記構成において、前記遮光層は、外側から順に白色、黒色、白色のポリエチレン系樹脂を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、遮光性、バリア性、並びに金属のような光沢を有するとともにリサイクル性を向上させたチューブ容器を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係るチューブ容器の正面図である。
図2】本開示の一実施形態に係るチューブ容器を構成する容器本体の正面断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係るチューブ容器の胴部の層構成を示す図である。
図4】チューブ容器の実施例及び比較例における、胴部の層構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本開示をより具体的に説明する。
【0016】
図1は、本開示の一実施形態であるチューブ容器100の構成を示す正面図である。チューブ容器100は、内容物の収容空間S(図2参照)を形成する容器本体1と、容器本体1の口部42(図2参照)に装着される注出キャップ2と、注出キャップ2の注出孔を閉塞する蓋体3とを備えている。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、蓋体3が位置する側を上方(図1における上側)とし、容器本体1の底部1bが位置する側を下方(図1における下側)とする。また、容器本体1の層構成の説明においては、収容空間S側を内側とし、容器本体1の外周面側を外側とする。
【0017】
まず、容器本体1について説明する。容器本体1は、図1及び図2に示すように、内容物の収容空間Sを形成し、押圧することで内容物を注出する胴部1aと、上方に向けて開口し注出キャップ2を装着する口部42と、胴部1aの下端を閉塞する底部1bとを備えている。容器本体1の製造方法としては、例えば図2に示すようにチューブ体30とヘッド40を組み合わせて形成することができる。
【0018】
チューブ体30は、例えば、帯状に成形された積層構造を有するラミネートシート31を、その両側端31a,31bがオーバーラップ部32において周方向に僅かにオーバーラップするようにして丸め、当該オーバーラップ部32において高周波シールやヒートシール等の手段によって両側端31a,31bの両断面が露出しないように潰しながら溶着することによって略円筒状に形成することができる。その後、低密度ポリエチレン樹脂を押出機によって押出し胴部1a全体を被覆し、所定の長さに切断し、チューブ体30を形成する。なお、図2では、上述のオーバーラップ部32を図示するため、低密度ポリエチレン樹脂層(後述する外側押出被覆層)を描いていない。本実施形態において、チューブ体30は略円筒状とされているが、略筒状であれば、例えば略楕円筒状とすることもできる。
【0019】
ヘッド40は、本実施形態では、円錐台形状に形成された肩部41を有している。ヘッド40は、例えば肩部41の外周縁がチューブ体30の上端に全周に亘って溶着されることで、チューブ体30に一体に連ねて設けることができる。ヘッド40は、また、上述のチューブ体30をヘッド40の材料と共に金型に装着し、圧縮成形を行うことによってチューブ体30と一体形成することもできる。
【0020】
肩部41の中心部分には、円筒状の口部42が上方に向かって突出して設けられている。口部42の先端は、内容物の収容空間Sに通じる開口42aとなっている。口部42の外周面には、口部42に注出キャップ2を装着するための環状突部42bが設けられている。
【0021】
このような略円筒形を有するチューブ体30の下部の開放端を通して内容物を収容空間S内に充填した後、当該開放端をヒートシール等の手段により閉塞して底部1bを形成することによって容器本体1を構成することができる。
【0022】
本実施形態において、容器本体1の胴部1aは、図3に示す層構成を有している。すなわち、容器本体1の胴部1aは、収容空間S側である内側より順に、内側シール層11、押出ポリエチレン(PE)樹脂層13、遮光層15、ドライラミネート(DL)接着層25、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの外側にアルミニウムを蒸着した高反射層17、押出ポリエチレン(PE)樹脂層19、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)/エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)/LLDPEの三層構造を有するバリア層21、及び外側押出被覆層23を備えている。なお、容器本体1における胴部1a以外の部位(ヘッド40など)は、胴部1aと同一の層構成を有していてもよいし、一部の層を省略したり、一部の層を付加した構成であってもよく、例えばポリエチレン(PE)樹脂等からなる単層で構成されていてもよい。
【0023】
内側シール層11は、柔軟性、耐内容物性及びシール性を備えた直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)によって構成されている。本実施形態において、内側シール層11の厚みは約80μmである。
【0024】
内側シール層11の外側面には、押出ポリエチレン樹脂層13を接着層として遮光層15が接着される。本実施形態では、遮光層15の厚みは約30μmである。
【0025】
遮光層15は、図3に示すように、外側から白色、黒色、白色のポリエチレン系樹脂を有する樹脂層である。遮光層15は、外側の白色のポリエチレン系樹脂層によって外側から入射する主に可視光線を反射する。また、外側の白色のポリエチレン系樹脂層を透過した光線を、中間位置に設けられている黒色のポリエチレン系樹脂層で吸収する。このようにして、遮光層15は、収容空間S内の内容物が外側から入射する光線に晒されないようにすることができる。
【0026】
遮光層15は、内容物に必要とされる遮光性のレベル等に応じて総厚みを変えたり、黒色のポリエチレン系樹脂層の割合を適宜変えてもよい。
【0027】
高反射層17は、耐熱性に優れたOPPフィルム製のベース材の一方の面(外側面)にアルミニウム蒸着膜が形成されている。本実施形態において、アルミニウム蒸着膜は、表面粗さが小さいベース材の片面に形成されるため同様に表面粗さが小さく入射光の散乱が少ないことから、薄肉でありながら高い光反射率(光沢度)を得ることができる。本実施形態では、ベース材の厚みは約25μmであり、アルミニウム蒸着膜の厚みは約50nmである。アルミニウム蒸着膜の厚みは、高反射率(金属のような光沢性)を得るために、10nm以上であることが好ましい。なお、アルミニウム蒸着膜に代えて、金、銀、白金、亜鉛、ニッケル等の他の金属蒸着膜を形成するように構成してもよい。
【0028】
本実施形態では、高反射層17のベース材にOPP樹脂を用いており、OPP樹脂は、内側シール層11や外側押出被覆層23を構成するポリエチレン系樹脂とは異なる材料ではあるものの、同じポリオレフィン系樹脂である。したがって、高反射層17のベース材にOPP樹脂を用いることによって、容器本体1のリサイクル性をより高めることができる。
【0029】
本実施形態では、ベース材の外側面にアルミニウム蒸着膜を施すことで容器本体1の金属光沢性を確保し、バリア性を向上させている。アルミニウム蒸着膜は、ベース材の内側面に設けてもよいし、ベース材の両面に形成してもよい。また、ベース材には、OPPフィルム以外の各種樹脂製フィルムを用いてもよく、金属蒸着膜を形成することができる程度の性能を備えていればよい。
【0030】
本実施形態では、高反射層17は、図3に示すように、ドライラミネート(DL)接着層25により遮光層15の外側面と接着されている。ドライラミネート接着層25は、積層前の一方のフィルムに接着剤を塗布し乾燥させた後に、もう一方のフィルムに圧着により貼り合わせるための接着層である。
【0031】
また、高反射層17には、外面にアンカーコート(AC)層17aが塗布されている。そして、高反射層17は、押出ポリエチレン樹脂層19を接着層として、積層体であるバリア層21と接着される。本実施形態では、押出ポリエチレン樹脂層19の厚みは例えば約15μmとすることができる。
【0032】
バリア層21は、図3に示すように、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂層21a/エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂層21b/LLDPE樹脂層21cの三層構造を有している。例えば、LLDPE樹脂層21a,21cの厚みを約37μmとして、EVOH樹脂層21bの厚みを約6μmとすることができる。
【0033】
バリア層21がEVOH樹脂層21bを備えることによって、酸素などのガス透過に対するバリア性を高めて、内容物の酸化等を抑制することができる。
【0034】
ここで、EVOH樹脂層21bは、エチレン含有量が29~44mol%のEVOHにより形成されたものであるのが好ましい。エチレン含有量が29~44mol%のEVOHによりEVOH樹脂層21bを形成することにより、適度の酸素バリア性能を確保しつつ、内容物を絞り出す際にEVOH樹脂層21bにクラック等が発生することを防止することができる。これに対して、エチレン含有量が29mol%未満のEVOHによりEVOH樹脂層21bを構成すると、内容物を絞り出す際に、EVOH樹脂層21bにクラック等が発生するおそれがある。また、エチレン含有量が44mol%を超えるEVOHによりEVOH樹脂層21bを構成すると、酸素バリア性能が不足する可能性がある。
【0035】
なお、バリア層21には、EVOH樹脂層21bに代えて、例えばガスバリア性を有するナイロン樹脂層などを用いてもよい。
【0036】
外側押出被覆層23は、柔軟性、透明性及び印刷等の加飾性を備えた押出低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂によって構成されている。本実施形態において、外側押出被覆層23の厚みは約200μmとすることができる。外側押出被覆層23は、シート状の積層構造におけるバリア層21の外側に押出成形するほか、例えば、図3における内側の内側シール層11から外側のバリア層21までを積層した積層構造の周方向両端部を重ね合わせ、シールして筒状胴部を形成した後、さらに筒状胴部の外周面全体に押出により形成することもできる(この場合、図2における側端31aは外側押出被覆層23に覆われるため破線表示となる)。外側押出被覆層23の外面には、例えば、装飾のためのシルクスクリーン印刷、オフセット印刷やコーティングを施すようにしてもよい。
【0037】
外側押出被覆層23及び内側シール層11は、上述のようにLDPE系樹脂で形成することで容器本体1の胴部1aに高いスクイズ性を付与するように構成したが、この態様には限定されない。例えば、外側押出被覆層23及び内側シール層11に高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)などを用いるようにしてもよい。また、外側押出被覆層23及び内側シール層11の構成は上記態様には限定されず、ポリエチレン系樹脂以外のポリオレフィン樹脂であるポリプロピレン系樹脂等を用いてもよい。また、ポリオレフィン樹脂以外の各種樹脂を用いてもよい。
【0038】
次に、注出キャップ2について説明する。注出キャップ2は、容器本体1の収容空間S内の内容物を外部に注出するための注出孔を備えており、容器本体1の口部42の環状突部42bにアンダーカット係合により装着されている。また、注出キャップ2の上方には、注出孔を覆う蓋体3が設けられている。蓋体3は、図示しないヒンジによって注出キャップ2と一体的に形成されており、蓋体3をヒンジ周りに回動させることで、注出孔を開放したり、蓋体3で注出孔を閉塞することができる。なお、注出キャップ2の容器本体1への装着は、上述のアンダーカット係合に限定されず、容器本体1の口部42に形成された雄ねじ部に注出キャップ2をねじ係合させる等によって装着するように構成してもよい。
【0039】
本実施形態では、注出キャップ2及び蓋体3は、ポリプロピレン樹脂によって形成されているが、使用後は容器本体1から取り外せる。また、図3に示す胴部1aの層構成では、約93重量%がポリエチレン系樹脂によって形成されている。そして、ヘッド40についてもポリエチレン系樹脂によって形成されている。これらの構成によって、容器本体1におけるポリエチレン系樹脂の使用割合は、95重量%を超えている。したがって、チューブ本体1は、リサイクルする際に、ポリエチレン系樹脂からなる単一素材としてリサイクルすることが可能である。また、本実施形態ではキャップとしての要求性能を確保するために、注出キャップ2及び蓋体3にポリプロピレン樹脂を使用したが、ポリエチレン樹脂によって形成すれば、よりリサイクル性を向上することができる。
【0040】
なお、図3におけるポリエチレン系樹脂からなる樹脂層は、内側から、内側シール層11、押出ポリエチレン(PE)樹脂層13、遮光層15、押出ポリエチレン(PE)樹脂層19、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂層21a、LLDPE樹脂層21c及び外側押出被覆層23である。
【0041】
上記のように構成されるチューブ容器100から内容物を注出するにあたっては、蓋体3をヒンジ周りに回動させて注出孔を開放状態とした後、注出孔が塗布領域に対向するようにチューブ容器100を姿勢変更して、胴部1aを押圧(スクイズ)する。これにより、容器本体1の収容空間S内の圧力が高まり、内容物が注出孔から外部に注出される。
【0042】
所要量の内容物を注出した後は、胴部1aへの押圧を解除する。これによって収容空間S内の圧力が外気圧へと戻り、容器本体1の胴部1aは、それ自身の復元力により元の形状へと戻る。容器本体1の胴部1aは、図3に示すように、90%以上がポリエチレン系樹脂によって形成されている。そのため、胴部1aの押圧の解除に伴い、ポリエチレン系樹脂の材料特性に起因した変形に対する優れた復元性により胴部1aは押圧前の元の形状へと戻る。
【0043】
以上述べたように、本実施形態に係るチューブ容器100は、内容物の収容空間Sを形成する胴部1aが複数材料による積層構造を有するチューブ容器100であって、積層構造は、光の透過を抑制する遮光層15と、遮光層15の外側に設けられベース材の少なくとも片面に金属蒸着膜を形成した高反射層17と、ガスの通過を抑制するバリア層21と、遮光層15と同種の樹脂を有する最外層及び最内層と、を備えるように構成した。このような構成の採用によって、遮光層15によって容器本体1の遮光性を高め、高反射層17により容器本体1の光沢性を高めるとともに、バリア層21によって容器本体1の酸素バリア性及び水分バリア性を高めつつ、遮光層15、最外層及び最内層を同種の樹脂で形成することで容器本体1のリサイクル性を向上させることができる。なお、遮光層15は、可視光に加えて紫外光の透過を抑制することが好ましく、これによって内容物や容器の劣化を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、積層構造は、内側から遮光層15、高反射層17、及びバリア層21の順に配置されるように構成した。このような構成の採用によって、遮光層15の影響を受けずに、高反射層17での反射光によって容器本体1の光沢性を高めることができる。また、高反射層17の外側に透明なバリア層21が配置されている為、光沢性を損なうことなく金属蒸着膜を保護できる。
【0045】
また、本実施形態では、金属蒸着膜はアルミニウム蒸着膜であるように構成した。このような構成の採用によって、チューブ容器100に量産性が高いアルミニウム蒸着膜を用いることが出来るので、大量生産に適した安価なチューブ容器100を提供することができる。なお、アルミニウム蒸着膜の基材に延伸ポリプロピレン樹脂(OPP)を使用することによって、ポリエチレン系樹脂と同系のオレフィン系樹脂であるため、リサイクル性に問題が生じにくくすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、積層構造の最外層及び最内層は、ポリエチレン系樹脂により形成されるように構成した。このような構成の採用によって、内容物を注出させるために容器本体1の胴部1aを押圧した後に押圧解除すると、ポリエチレン系樹脂の材料特性に起因した変形に対する優れた復元性によって、胴部1aを押圧前の元の形状へと戻すことができる。
【0047】
また、本実施形態では、容器本体1を構成する材料のうち、同種のポリオレフィン樹脂以外の材料の重量割合は、6重量パーセント未満であるように構成した。このような構成の採用によって、容器本体1を実質的に単一材料で形成されているとして取り扱うことができるので、容器本体1のリサイクル性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、遮光層15は、外側から順に白色、黒色、白色のポリエチレン系樹脂を有するように構成した。このような構成の採用によって、外側の白色のポリエチレン系樹脂層によって外側からの入射光線を反射し、白色のポリエチレン系樹脂層を透過した光線を中間位置に設けられている黒色のポリエチレン系樹脂層で吸収することによって、収容空間S内の内容物が外側から入射する光線に晒されないようにすることができる。
【0049】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0050】
例えば、本実施形態では、積層構造の外側押出被覆層23(最外層)に押出LDPE樹脂層を用いるように構成したが、この場合、例えば外側押出被覆層23の外側面にオフセット印刷、コーティングやホットスタンプなどによる装飾を施すなどしてもよい。この場合も、オフセット印刷、コーティングやホットスタンプは樹脂層であるとは考えず、外側押出被覆層23が最外層となる。
【0051】
上述した本実施形態のチューブ容器100を構成する各樹脂層の厚みは例示に過ぎず、各樹脂層の機能を果たすことができる範囲で任意に変更可能である。
【実施例0052】
次に、図1に示すチューブ容器100の胴部1aの層構成について、図4に示すような4通りの層構成を用意し、各層構成について光沢性、酸素バリア性及び水分バリア性、遮光性、異材質重量比(リサイクル性)について評価をおこなった(表1参照)。図4は、4通りの層構成のうち、本開示のチューブ容器100の実施例を最上段に示し、2段目以降に、比較例1から3を示している。なお、各チューブ容器ともに、容器本体1の最大直径は19[mm]であり、容器高さ(図1における蓋体3の上端部から容器本体1の底部1bの下端部までの高さ方向距離)は65[mm]である。
【0053】
実施例は、図3に示す本開示の実施形態と同一の層構成であり、収容空間側である内側より順に、内側シール層(LLDPE:80μm)、押出ポリエチレン(PE)層:15μm、遮光層(遮光性PE樹脂層)、ドライラミネート(DL)接着層、高反射層(AL蒸着+OPP樹脂層)、押出ポリエチレン(PE)層:15μm、バリア層(LLDPE37μm/EVOH6μm/LLDPE37μm)、及び外側押出被覆層(押出LDPE樹脂層:200μm)を備えている。
【0054】
比較例1は、図4に示すように、上述の実施例の高反射層、バリア層及び遮光層の代わりに、AL箔12μmを設けている。
【0055】
比較例2は、実施例と比較して、バリア層の代わりに、EVOH樹脂層30μmを設けている。実施例における遮光層及び高反射層に対応する樹脂層は設けられていない。
【0056】
比較例3は、LDPE樹脂層400μmのみから構成されており、実施例における遮光層、高反射層及びバリア層に対応する樹脂層は設けられていない。
【0057】
表1は、実施例、及び比較例1から3について、光沢性、酸素バリア性[cc/day/pkg]及び水分バリア性、遮光性、異材質重量比(リサイクル性)を評価し、判定結果を示している。
【0058】
表1における光沢性は目視による金属のような光沢の有無により評価した。
【0059】
表1における酸素バリア性(酸素透過量)[cc/day/pkg]は、MOCON社製酸素透過量測定装置(OX-TRAN2/20)を用いて測定された、容器外雰囲気:大気(O:21%)、容器外温度:23℃、容器外相対湿度:55%、容器内雰囲気:N、容器内温度:23℃、容器内相対湿度:90%の条件下で、容器外から容器内に1日あたりに入り込む酸素量[cc]である。酸素バリア性:0.03[cc/day/pkg]未満が、内容物の変質を抑制するために必要とされる酸素バリア性の目安である。
【0060】
表1における水分バリア性(水分透過率)は、40℃の保管温度において収容空間S内に水を充填し4週間後における収容空間S内の水の重量変化率[%]を測定した。
【0061】
表1における遮光性(光線透過率)[%]は、紫外光から可視光の領域である200nm~700nmの波長範囲における最大透過率を示しており、遮光性:0.3%未満が、内容物の変質を抑制するために必要とされる遮光性の目安である。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に評価結果を示す。金属のような光沢の尺度となる光沢性については、層構成にアルミニウム蒸着膜を含む実施例、アルミニウム箔を含む比較例1において良好な結果が得られている。アルミニウムは銀白色を有し、素材として反射率が高くなり易い。従って、所定の入射角からの入射光があまり散乱されず所定の受光角で反射されるため、光沢性に優れるものと考えられる。
【0064】
酸素バリア性については、層構成にEVOH樹脂層を含む実施例及び比較例2、並びにアルミニウム箔を含む比較例1において0.03[cc/day/pkg]以下の良好な結果が得られている。実施例より、EVOH樹脂層は、約6μmという薄い肉厚でも十分なガスバリア性を有することが分かった。比較例1については、アルミニウム箔が、光沢性に加えて酸素バリア性の向上にも寄与していると考えられる。
【0065】
遮光性については、表1に示すように、実施例では、アルミニウム箔を有する比較例1と同様に0.3%未満という良好な結果が得られた。これは、実施例において、遮光層のうちの外側の白色のポリエチレン系樹脂層が外側から入射する主に可視光線を反射し、外側の白色のポリエチレン系樹脂層を透過した光線を、中間位置に設けられている黒色のポリエチレン系樹脂層で吸収するからであると考えられる。
【0066】
異材質重量/容器本体重量比については、比較例1では、7.59[%]という結果になったのに対して、実施例では、4.77[%]となり、単一材料としてリサイクル可能な目安となる6.0[%]未満を達成した。比較例1では、樹脂層と比べて比重が大きいアルミニウム箔(比重:約2.71):12μmを用いているために、最外層及び最内層を構成するポリエチレン系樹脂とは異材質の重量割合が高まったのに対して、実施例では、ポリエチレン系樹脂層以外の樹脂層をEVOH樹脂層:6μmと、アルミニウム蒸着膜を有するOPP樹脂層:25μmのみとすることによって、異材質の重量割合を低く抑えることができたためであると考えられる。
【0067】
以上の測定結果より、光沢性、酸素バリア性、水分バリア性、遮光性及び異材質重量/容器本体重量比(リサイクル性)の全ての項目において、実施例では「良」の判定結果を得ることができた。光沢性、酸素バリア性、水分バリア性及び遮光性の各項目について「良」の結果を得た比較例1と比べて、実施例では、光沢性の効果をアルミニウム箔に代えてアルミニウム蒸着膜付きOPP樹脂層で得るようにし、酸素バリア性、水分バリア性の各効果を、アルミニウム箔に代えてEVOH樹脂層及びアルミニウム蒸着膜を有するOPP樹脂層で得るようにし、遮光性の効果をアルミニウム箔に代えて白/黒/白の三層構造を有する遮光性PE樹脂層で得るように構成した。このような構成の採用によって、比較例1において比重が樹脂層に比べて大きく異材質重量/容器本体重量比が増大する要因であったアルミニウム箔を比重が相対的に小さいアルミニウム蒸着膜付きOPP樹脂層、EVOH樹脂層及び遮光性PE樹脂層に置換して異材質重量/容器本体重量比を低減し、チューブ容器のリサイクル性を高めることができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示によれば、遮光性、バリア性、並びに金属のような光沢を有するとともにリサイクル性を向上させたチューブ容器100を提案することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1 容器本体
1a 胴部
1b 底部
2 注出キャップ
3 蓋体
11 内側シール層(最内層)
13 押出ポリエチレン樹脂層
15 遮光層
17 高反射層
17a アンカーコート層
19 押出ポリエチレン樹脂層
21 バリア層
21a 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層
21b エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂層
21c 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層
23 外側押出被覆層(最外層)
25 ドライラミネート接着層
30 チューブ体
31 ラミネートシート
31a,31b 側端
32 オーバーラップ部
40 ヘッド
41 肩部
42 口部
42a 開口
42b 環状突部
100 チューブ容器
S 収容空間
図1
図2
図3
図4