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特開2023-98107車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098107
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 671
B60H1/22 651A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214638
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】南家 健志
(72)【発明者】
【氏名】雨貝 太郎
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA12
3L211AA14
3L211BA02
3L211CA16
3L211CA18
3L211CA20
3L211DA28
3L211DA29
3L211EA12
3L211EA16
3L211EA50
3L211EA51
3L211GA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の一つの態様は、圧縮機の加熱能力を高めることができる車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法の提供を目的の一つとする。
【解決手段】第1熱媒体が流れる第1回路C1と、第1回路に配置され第1熱媒体を圧縮する圧縮機72と、第1回路に配置され第1熱媒体の温度又は圧力を測定するセンサS1と、第2熱媒体が流れる第2回路C2と、第1回路および第2回路に跨って配置され第1熱媒体と第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器7とを備える。第2回路は、熱交換器を通過する第1管路12と、熱交換器を迂回する第2管路13と、第2管路を流れる第2熱媒体の流量に対する、第1管路を流れる第2熱媒体の流量の比率である流量比を調整するバルブ32と、第1管路又は第2管路の少なくとも一方を通過して第2熱媒体を循環させる第2ループと、を有する。制御部は、センサS1の測定値に基づいて、バルブによって流量比を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱媒体が流れる第1回路と、
前記第1回路に配置され、前記第1熱媒体を圧縮する圧縮機と、
前記第1回路に配置され、前記第1熱媒体の温度又は圧力を測定するセンサと、
第2熱媒体が流れる第2回路と、
前記第1回路および前記第2回路に跨って配置され前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
制御部と、を備え、
前記第1回路は、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過して前記第1熱媒体を循環させる第1ループを有し、
前記第2回路は、
前記熱交換器を通過する第1管路と、
前記熱交換器を迂回する第2管路と、
前記第1管路を流れる前記第2熱媒体の流量と、前記第2管路を流れる第2熱媒体の流量との比率である流量比を調整するバルブと、
前記第1管路又は前記第2管路の少なくとも一方を通過して前記第2熱媒体を循環させる第2ループと、
を有し、
前記制御部は、前記センサの測定値に基づいて、前記バルブによって前記流量比を調整する、車両用温調装置。
【請求項2】
車両用温調装置の制御方法であって、
前記車両用温調装置は、
第1熱媒体が流れ、圧縮機、熱交換器、および前記第1熱媒体の温度又は圧力を測定する第1センサが配置される第1回路と、
第2熱媒体が流れ、前記熱交換器が配置される第2回路と、
制御部と、
を有し、
前記熱交換器は、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行い、
前記第2回路は、
前記熱交換器を通過する第1管路と、
前記熱交換器を迂回する第2管路と、
前記第1管路を流れる前記第2熱媒体の流量と、前記第2管路を流れる第2熱媒体の流量との比率である流量比を調整するバルブと、
を有し、
前記第1回路において、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過する第1ループに前記第1熱媒体を循環させ、
前記第2回路において、前記第1管路又は前記第2管路の少なくとも一方を通過する第2ループに前記第2熱媒体を循環させ、
前記制御部は、前記第1センサの測定値である第1測定値に基づいて、前記バルブによって前記流量比を調整する、車両用温調装置の制御方法。
【請求項3】
前記車両用温調装置は、前記第1回路に配置され前記第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う空調用熱交換器と、前記空調用熱交換器に空気を送る送風機と、を有し、
前記第1熱媒体の温度又は圧力、前記空調用熱交換器を通過した空気の温度、車室内の空気の温度、のうちいずれかの目標値を設定する目標値設定工程と、
前記目標値と前記第1測定値との差分に基づいて、前記流量比を調整する第1調整工程と、
を有する、請求項2に記載の車両用温調装置の制御方法。
【請求項4】
前記車両用温調装置は、前記第2熱媒体の温度を測定する第2センサを有し、
前記目標値設定工程は、前記第2熱媒体の温度の測定値である第2測定値に基づいて、前記目標値を設定する工程である、請求項3に記載の車両用温調装置の制御方法。
【請求項5】
前記目標値は、少なくとも、第1目標値と、前記第1目標値よりも小さい第2目標値と、を含み、
前記第1調整工程において、前記制御部は、
前記第1測定値が、前記第1目標値に達すると、前記流量比を大きくし、
前記第1測定値が、前記第2目標値に達すると、前記流量比を小さくする、
請求項3または4に記載の車両用温調装置の制御方法。
【請求項6】
前記制御部は、前記目標値と前記第1測定値との差分に基づいて、前記第2回路において前記第2熱媒体を圧送するポンプの回転数を調整する第2調整工程を有する、請求項3から5のいずれか一項に記載の車両用温調装置の制御方法。
【請求項7】
前記目標値と前記第1測定値との差分に基づいて、前記送風機の回転数を調整する第3調整工程を有する、請求項3から6のいずれか一項に記載の車両用温調装置の制御方法。
【請求項8】
車両用温調装置の制御方法であって、
前記車両用温調装置は、
第1熱媒体が流れ、圧縮機、および熱交換器が配置される第1回路と、
第2熱媒体が流れ、前記第2熱媒体の温度を測定する第2センサ、および前記熱交換器が配置される第2回路と、
制御部と、
を有し、
前記熱交換器は、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行い、
前記第2回路は、
前記熱交換器を通過する第1管路と、
前記熱交換器を迂回する第2管路と、
前記第1管路を流れる前記第2熱媒体の流量と、前記第2管路を流れる第2熱媒体の流量との比率である流量比を調整するバルブと、
を有し、
前記第1回路において、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過する第1ループに前記第1熱媒体を循環させ、
前記第2回路において、前記第1管路又は前記第2管路の少なくとも一方を通過する第2ループに前記第2熱媒体を循環させ、
前記制御部は、少なくとも、前記第2センサの測定値である第2測定値に基づいて、前記バルブによって前記流量比を調整する、車両用温調装置の制御方法。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2測定値、および前記圧縮機の出力に基づいて、前記バルブによって前記流量比を調整する、請求項8に記載の車両用温調装置の制御方法。
【請求項10】
前記車両用温調装置は、
前記第1回路に配置され前記第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う空調用熱交換器と、
前記空調用熱交換器に空気を送る送風機と、
前記第1熱媒体の温度又は圧力、前記空調用熱交換器を通過した空気の温度、車室内の空気の温度、のうちいずれかを測定するセンサと、
を有し、
少なくとも、前記第2測定値に基づいて、前記流量比を設定する流量比設定工程と、
前記第1熱媒体の温度又は圧力、前記空調用熱交換器を通過した空気の温度、車室内の空気の温度、のうちいずれかの目標値を設定する目標値設定工程と、
前記センサの測定値である第1測定値と、前記目標値との差分に基づいて、前記流量比を調整する流量比調整工程と、
を有する、請求項8または9に記載の車両用温調装置の制御方法。
【請求項11】
車両用温調装置の制御方法であって、
前記車両用温調装置は、
第1熱媒体が流れ、圧縮機、熱交換器、および前記第1熱媒体の温度又は圧力を測定する第1センサが配置される第1回路と、
第2熱媒体が流れ、前記熱交換器が配置される第2回路と、
制御部と、
を有し、
前記熱交換器は、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行い、
前記第1回路において、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過する第1ループに前記第1熱媒体を循環させ、
前記第2回路において、前記熱交換器を通過する第2ループに前記第2熱媒体を循環させ、
前記制御部は、前記第1センサの測定値である第1測定値に基づいて、前記第2回路において前記第2熱媒体を圧送するポンプの回転数を調整する、車両用温調装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド自動車に搭載されるバッテリは、外気温や駆動状態に応じて加熱または冷却され最適な温度が保たれる。特許文献1には、圧縮機で冷媒を加熱し外部コンデンサを介して車室内の空気を温める冷媒回路が開示される。この冷媒回路の冷媒の熱を、バッテリ用熱交換器においてバッテリ冷却ラインの冷却水に伝熱させ、この熱によってバッテリを温める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-77880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機は、圧縮対象である熱媒体のエンタルピー(温度および圧力)が低すぎる場合、十分な加熱能力を発揮することができない。このため、1つの回路で熱媒体の熱を用いて空気を温めつつ、他の回路に熱を移動させる場合、熱媒体のエンタルピーが低下するため、圧縮機は加熱能力の低い運転状態から脱し難くなる。この場合、熱媒体の温度を十分に上昇させることができず、圧縮機が十分な加熱能力を発揮できないという問題が生じる。
【0005】
本発明の一つの態様は、圧縮機の加熱能力を高めることができる車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用温調装置の一つの態様は、第1熱媒体が流れる第1回路と、前記第1回路に配置され、前記第1熱媒体を圧縮する圧縮機と、前記第1回路に配置され、前記第1熱媒体の温度又は圧力を測定するセンサと、第2熱媒体が流れる第2回路と、前記第1回路および前記第2回路に跨って配置され前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、制御部と、を備える。前記第1回路は、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過して前記第1熱媒体を循環させる第1ループを有する。前記第2回路は、前記熱交換器を通過する第1管路と、前記熱交換器を迂回する第2管路と、前記第2管路を流れる前記第2熱媒体の流量に対する、前記第1管路を流れる前記第2熱媒体の流量の比率である流量比を調整するバルブと、前記第1管路又は前記第2管路の少なくとも一方を通過して前記第2熱媒体を循環させる第2ループと、を有する。前記制御部は、前記センサの測定値に基づいて、前記バルブによって前記流量比を調整する。
【0007】
本発明の車両用温調装置の制御方法の一つの態様は、車両用温調装置の制御方法であって、前記車両用温調装置は、第1熱媒体が流れ、圧縮機、熱交換器、および前記第1熱媒体の温度又は圧力を測定する第1センサが配置される第1回路と、第2熱媒体が流れ、前記熱交換器が配置される第2回路と、制御部と、を有する。前記熱交換器は、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行う。前記第2回路は、前記熱交換器を通過する第1管路と、前記熱交換器を迂回する第2管路と、前記第2管路を流れる前記第2熱媒体の流量に対する、前記第1管路を流れる前記第2熱媒体の流量の比率である流量比を調整するバルブと、を有する。車両用温調装置の制御方法は、前記第1回路において、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過する第1ループに前記第1熱媒体を循環させる。車両用温調装置の制御方法は、前記第2回路において、前記第1管路又は前記第2管路の少なくとも一方を通過する第2ループに前記第2熱媒体を循環させる。前記制御部は、前記第1センサの測定値である第1測定値に基づいて、前記バルブによって前記流量比を調整する。
【0008】
本発明の車両用温調装置の制御方法の一つの態様は、車両用温調装置の制御方法であって、前記車両用温調装置は、第1熱媒体が流れ、圧縮機、および熱交換器が配置される第1回路と、第2熱媒体が流れ、前記第2熱媒体の温度を測定する第2センサ、および前記熱交換器が配置される第2回路と、制御部と、を有する。前記熱交換器は、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行う。前記第2回路は、前記熱交換器を通過する第1管路と、前記熱交換器を迂回する第2管路と、前記第2管路を流れる前記第2熱媒体の流量に対する、前記第1管路を流れる前記第2熱媒体の流量の比率である流量比を調整するバルブと、を有する。車両用温調装置の制御方法は、前記第1回路において、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過する第1ループに前記第1熱媒体を循環させる。車両用温調装置の制御方法は、前記第2回路において、前記第1管路又は前記第2管路の少なくとも一方を通過する第2ループに前記第2熱媒体を循環させる。前記制御部は、少なくとも、前記第2センサの測定値である第2測定値に基づいて、前記バルブによって前記流量比を調整する。
【0009】
本発明の車両用温調装置の制御方法の一つの態様は、車両用温調装置の制御方法であって、前記車両用温調装置は、第1熱媒体が流れ、圧縮機、熱交換器、および前記第1熱媒体の温度又は圧力を測定する第1センサが配置される第1回路と、第2熱媒体が流れ、前記熱交換器が配置される第2回路と、制御部と、を有する。前記熱交換器は、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行う。前記第1回路において、前記圧縮機、および前記熱交換器を通過する第1ループに前記第1熱媒体を循環させる。前記第2回路において、前記熱交換器を通過する第2ループに前記第2熱媒体を循環させる。前記制御部は、前記第1センサの測定値である第1測定値に基づいて、前記第2回路において前記第2熱媒体を圧送するポンプの回転数を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一つの態様によれば、圧縮機の加熱能力を高めることができる車両用温調装置および車両用温調装置の制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態の車両用温調装置を示す概略図である。
図2図2は、第1実施形態の車両用温調装置の冷房モードを示す概略図である。
図3図3は、第1実施形態の車両用温調装置の通常暖房モードを示す概略図である。
図4図4は、第1実施形態の車両用温調装置のホットガス暖房モードを示す概略図である。
図5図5は、第1実施形態の車両用温調装置の制御方法を示すフローチャートである。
図6図6は、第1実施形態の第2測定値と目標値の関係を示す図である。
図7図7は、第1実施形態の目標値と流量比の関係を示す図である。
図8図8は、第1実施形態の第1熱媒体の吸入圧の推移の一例を示す図である。
図9図9は、第1実施形態の変形例の車両用温調装置の制御方法を示すフローチャートである。
図10図10は、第1実施形態の変形例のホットガス暖房モードの一例を示す概略図である。
図11図11は、第2実施形態の車両用温調装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両用温調装置について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数などを異ならせる場合がある。
【0013】
図1は、一実施形態の車両用温調装置1の概略図である。
車両用温調装置1は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、等、モータを動力源とする車両に搭載される。
【0014】
車両用温調装置1は、第1回路C1と、アキュムレータ71と、圧縮機72と、第1空調用熱交換器73と、第2空調用熱交換器74と、ラジエータ77と、送風部80と、第1の膨張弁61と、第2の膨張弁62と、第3の膨張弁63と、第4の膨張弁64と、第1センサ(センサ)S1と、第2回路C2と、モータ2と、インバータ3と、電力制御装置4と、バッテリ6と、熱交換器7と、制御部60と、第2センサS2と、を備える。
【0015】
(制御部)
制御部60は、第1回路C1と、圧縮機72と、ラジエータ77と、送風部80と、第1の膨張弁61と、第2の膨張弁62と、第3の膨張弁63と、第4の膨張弁64と、第2回路C2と、に接続され、これらの動作を制御する。また、制御部60は、第1センサS1、および第2センサS2に接続され、これらの測定値を監視する。
【0016】
(第1回路)
第1回路C1には、第1熱媒体が流れる。第1回路C1の経路中には、アキュムレータ71、圧縮機72、第1空調用熱交換器73、第2空調用熱交換器74、ラジエータ77、第1の膨張弁61、第2の膨張弁62、第3の膨張弁63、第4の膨張弁64、および第1センサS1が配置される。
【0017】
第1回路C1は、ヒートポンプ装置である。第1回路C1は、複数の管路9と、複数の開閉バルブ8Aと、複数のチャッキバルブ8Bと、を有する。複数の管路9は、互いに連結されて第1熱媒体を流すループを構成する。複数の管路9には、管路9a,9b,9d,9f,9g,9h,9i,9j,9k,9l,9mが含まれる。なお、本明細書において、ループとは、熱媒体を循環させるループ状の経路を意味する。
【0018】
開閉バルブ8Aは、制御部60に接続される。開閉バルブ8Aは、管路の経路に配置される。開閉バルブ8Aは、配置される管路の開放と閉塞とを切り替え可能である。第1回路C1は、開閉バルブ8Aおよび第1~第4の膨張弁61~64の動作を制御することによって、構成されるループが切り替えられる。複数の開閉バルブ8Aには、2個の開閉バルブ8a、8bが含まれる。
【0019】
チャッキバルブ8Bは、管路の経路に配置される。チャッキバルブ8Bは、配置される管路の上流側の一端から下流側の他端に向かう第1熱媒体の流動を許容し、管路の他端から一端に向かう流動を許容しない。複数のチャッキバルブ8Bには、2個のチャッキバルブ8g,8hが含まれる。
【0020】
次に、それぞれの管路9の構成について具体的に説明する。なお、それぞれの管路9の説明において、「一端」とは第1熱媒体の流動方向の上流側端部を示し、「他端」とは第1熱媒体の流動方向の下流側端部を示す。
【0021】
管路9aの一端は、管路9bの他端および管路9lの他端に接続される。管路9aの他端は、管路9bの一端および管路9dの一端に接続される。管路9aは、第1センサS1、アキュムレータ71および圧縮機72を通過する。第1熱媒体は、管路9aの一端から他端に向かって、第1センサS1、アキュムレータ71、圧縮機72の順で流れる。
【0022】
管路9bの一端は、管路9aの他端および管路9dの一端に接続される。管路9bの他端は、管路9aの一端および管路9lの他端に接続される。すなわち、管路9aと管路9bとは両端部が互いに繋がりループを構成する。管路9bは、第1の膨張弁61を通過する。
【0023】
管路9dの一端は、管路9aの他端および管路9bの一端に接続される。管路9dの他端は、管路9fの一端および管路9gの一端に接続される。管路9dは、第1空調用熱交換器73を通過する。
【0024】
管路9fの一端は、管路9dの他端および管路9gの一端に接続される。管路9fの他端は、管路9hの一端および管路9jの一端に接続される。管路9fは、第2の膨張弁62およびラジエータ77を通過する。第1熱媒体は、管路9fの一端から他端に向かって、第2の膨張弁62、ラジエータ77の順で流れる。
【0025】
管路9gの一端は、管路9dの他端および管路9fの一端に接続される。管路9gの他端は、管路9jの他端および管路9kの一端に接続される。管路9gは、開閉バルブ8aを通過する。
【0026】
管路9hの一端は、管路9fの他端および管路9jの一端に接続される。管路9hの他端は、管路9iの一端および管路9mの他端に接続される。管路9hは、開閉バルブ8bを通過する。
【0027】
管路9iの一端は、管路9hの他端および管路9mの他端に接続される。管路9iの他端は、管路9bの経路中であって第4の膨張弁64の下流側に接続される。管路9iは、チャッキバルブ8gを通過する。チャッキバルブ8gは、管路9iの一端から他端に向かう第1熱媒体の流れを許容し、他端から一端に向かう第1熱媒体の流れを制限する。
【0028】
管路9jの一端は、管路9fの他端および管路9hの一端に接続される。管路9jの他端は、管路9gの他端および管路9kの一端に接続される。管路9jは、チャッキバルブ8hを通過する。チャッキバルブ8hは、管路9jの一端から他端に向かう第1熱媒体の流れを許容し、他端から一端に向かう第1熱媒体の流れを制限する。
【0029】
管路9kの一端は、管路9gの他端および管路9jの他端に接続される。管路9kの他端は、管路9lの一端および管路9mの一端に接続される。
【0030】
管路9lの一端は、管路9kの他端および管路9mの一端に接続される。管路9lの他端は、管路9aの一端および管路9bの他端に接続される。管路9lは、第1の膨張弁61、および熱交換器7を通過する。第1熱媒体は、管路9lの一端から他端に向かって、第1の膨張弁61、熱交換器7の順で流れる。
【0031】
管路9mの一端は、管路9kの他端および管路9lの一端に接続される。管路9mの他端は、管路9hの他端および管路9iの一端に接続される。管路9mは、第3の膨張弁63および第2空調用熱交換器74を通過する。第1熱媒体は、管路9mの一端から他端に向かって、第3の膨張弁63、第2空調用熱交換器74の順で流れる。
【0032】
アキュムレータ71は、圧縮機72の上流側に配置される。アキュムレータ71は、第1熱媒体を気液分離する。アキュムレータ71は、気相の第1熱媒体のみを圧縮機72に供給し、液相の第1熱媒体が圧縮機72に吸入されることを抑制する。
【0033】
圧縮機72は、通過する第1熱媒体を圧縮して温度を上昇させる。圧縮機72は、下流側に高圧かつ気相の第1熱媒体を吐出する。圧縮機72は、バッテリ6から供給される電力によって電気駆動される。
【0034】
第1センサS1は、管路9aに設けられる。第1センサS1は、管路9a内の第1熱媒体の温度又は圧力を測定する。第1センサS1は、温度センサ又は圧力センサである。第1センサS1は、制御部60に接続される。本実施形態において、第1センサS1は、アキュムレータ71の流入口に設けられ、アキュムレータ71に流入する第1熱媒体の圧力又は温度を測定する。なお、アキュムレータ71の通過前後で第1熱媒体の温度および圧力はほとんど変化しない。したがって、第1センサS1は、圧縮機72に流入する第1熱媒体の圧力又は温度を測定すると見做される。なお、第1センサS1は、圧縮機72の吸入口に設けられていてもよい。また、第1センサS1は、第1回路C1中の第1熱媒体の圧力又は温度を測定するものであれば他の管路に配置されていてもよい。この場合、第1センサS1が設けられる部分から圧縮機72の吸入口までの圧力変化又は温度変化を推定して、圧縮機72に吸入される第1熱媒体の温度又は圧力の推定値を算出できる。本実施形態において、第1センサS1は、第1熱媒体の圧力を測定する圧力センサである。つまり、第1センサS1は、圧縮機72に吸入される第1熱媒体の圧力を測定する。以下の説明では、第1センサS1の測定値、すなわち、圧縮機72に吸入される第1熱媒体の圧力を吸入圧Ps又は第1測定値Psとして説明する場合がある。
【0035】
ラジエータ77は、ファンを有し第1熱媒体の熱を車室外に放出することで第1熱媒体を冷却する。ラジエータ77は、第1熱媒体と車室外の空気との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0036】
熱交換器7は、第1回路C1および第2回路C2に跨って配置される。熱交換器7は、第1回路C1を流れる第1熱媒体と第2回路C2を流れる第2熱媒体との間で熱交換を行う。
【0037】
第1~第4の膨張弁61~64は、第1熱媒体を膨張させて第1熱媒体の温度を低下させる。さらに、第1~第4の膨張弁61~64は、完全に開放して大きな圧力変化を伴わず第1熱媒体を通過させること、および、完全に閉塞して第1熱媒体の通過を制限することもできる。第1~第4の膨張弁61~64は、制御部60によって開度調節され、下流側の第1熱媒体の圧力および温度を調整する。
【0038】
第1空調用熱交換器73は、圧縮機72を通過して温度が高められた第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う。すなわち、第1空調用熱交換器73は、第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う。これにより、第1空調用熱交換器73は、送風部80において送風機85から送られた空気流通路86f内の空気を温める。
【0039】
第2空調用熱交換器74は、第3の膨張弁63を通過して温度が低下した第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う。すなわち、第2空調用熱交換器74は、第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う。これにより、第2空調用熱交換器74は、送風部80において送風機85から送られた空気流通路86f内の空気を冷やす、又は除湿する。
【0040】
(送風部)
送風部80は、ダクト86と、送風機85と、第3センサS3とを有する。ダクト86の内部には、空気流通路86fが設けられる。空気流通路86fは、車外の空気を車内に供給する経路である。また、空気流通路86fは、車内の空気を取り込んで再び車内に供給する経路でもある。空気流通路86fの一端側には、車外および車内の空気を空気流通路86fに流入させる吸気口86aが設けられる。空気流通路86fの他端側には、空気流通路86fの空気を車内に排気する吹出口86bが設けられる。
【0041】
空気流通路86fの内部には、吸気口86a側から吹出口86b側に向かって送風機85、第2空調用熱交換器74、第1空調用熱交換器73、および第3センサS3が、この順で配置される。送風機85は、空気流通路86fの一端側から他端側に向かって空気を流通させる。すなわち、第2空調用熱交換器74、第1空調用熱交換器73、および第3センサS3は、送風機85の送風流路中に配置される。第2空調用熱交換器74は、送風機85によって送られる空気を冷却および除湿する。第1空調用熱交換器73は、送風機85によって送られる空気を加熱する。第3センサS3は、第1空調用熱交換器(空調用熱交換器)73を通過した空気の温度を測定する。第3センサS3は、制御部60に接続される。
【0042】
空気流通路86fには、第1空調用熱交換器73を迂回して空気を流すバイパス流通路86cが設けられる。また、バイパス流通路86cの上流側には、第2空調用熱交換器74を通過した空気のうち、第1空調用熱交換器73によって加熱される空気の割合を調整するエアミックスダンパ86dが設けられている。エアミックスダンパ86dは、制御部60に接続され制御される。
【0043】
なお、本実施形態の車両用温調装置は、車内の空気の温度を測定する第4センサS4を有する。第4センサS4は、制御部60に接続される。
【0044】
(第2回路)
第2回路C2には、第2熱媒体が流れる。第2回路C2の経路中には、モータ2、インバータ3、電力制御装置4、バッテリ6、および第2センサS2が配置される。第2回路C2は、複数の管路11,12,13,14,15と、第1切替部31と、第2切替部32と、第1ポンプ41と、第2ポンプ42と、を有する。第1ポンプ41および第2ポンプ42は、配置される管路において、第2熱媒体を一方向に圧送する。複数の管路は、互いに連結されて第2熱媒体を流すループを構成する。
【0045】
第1切替部31は、制御部60に接続され、開放又は閉塞を切り替えることで、第2熱媒体が通過する管路を切り替える。第1切替部31は、4つの管路が合流する部分に配置され、接続された複数の管路のうち何れか2つの管路を連通させる。第1切替部31は、四方弁である。第1切替部31は、4つの接続口A、B、C、Dを有する。第1切替部31は、4つの接続口A、B、C、Dのうち2つずつ二組の接続口同士を互いに連通させる。接続口A,Cには、管路11の両端部がそれぞれ接続される。接続口Bには管路14の他端が接続される、接続口Dには、管路15の一端部が接続される。
【0046】
第1切替部31は、2つの接続状態(第1接続状態および第2接続状態)の何れかに切り替え可能である。第1切替部31は、第1接続状態において、接続口Aと接続口C、および接続口Bと接続口Dをそれぞれ連通させる。第1接続状態の第1切替部31は、管路11の両端部を連通させつつ、管路14の他端と管路15の一端を連通させる。第1切替部31は、第2接続状態において、接続口Aと接続口B、および接続口Cと接続口Dをそれぞれ連通させる。第2接続状態の第1切替部31は、管路11の一端と管路14の他端とを連通させつつ、管路11の他端と管路15の一端とを連通させる。
【0047】
第2切替部32は、三方弁である。第2切替部32は、第1管路12および第2管路13と、管路15とを連通させる。第2切替部32は、制御部60からの信号に従って、第1管路12を流れる第2熱媒体の流量と、第2管路13を流れる第2熱媒体の流量と、の比率である流量比を調整する。本実施形態において、第2切替部32は、ミキシングバルブである。
【0048】
本実施形態において、流量比Rfは、管路15を流れる第2熱媒体の流量に対する、第1管路12を流れる第2熱媒体の流量の比率である。例えば、流量比Rfが70%の場合、第1管路12には管路15を流れる第2熱媒体の流量の70%の流量の第2熱媒体が流れる。一方、第2管路13には管路15を流れる第2熱媒体の流量の30%の流量の第2熱媒体が流れる。本実施形態において、第2切替部32は、0%から100%の範囲で流量比Rfを調整できる。
【0049】
次に、管路11~15の構成について具体的に説明する。なお、管路11~15の説明において、「一端」とは第2熱媒体の流動方向の上流側端部を示し、「他端」とは第2熱媒体の流動方向の下流側端部を示す。
【0050】
管路11の一端は、第1切替部31の接続口Aに接続される。管路11の他端は、第1切替部31の接続口Cに接続される。管路11は、第1ポンプ41と電力制御装置4とインバータ3とモータ2とを通過する。第2熱媒体は、管路11の一端から他端に向かって、第1ポンプ41、電力制御装置4、インバータ3、モータ2の順で流れる。第1ポンプ41は、管路11において一端側から他端側に向かって第2熱媒体を圧送する。
【0051】
第1管路12の一端は、第2切替部32を介して、第2管路13の一端および管路15の他端に接続される。第1管路12の他端は、第2管路13の他端および管路14の一端に接続される。第1管路12は、熱交換器7を通過する。そのため、第1管路12を流れる第2熱媒体は、第1回路C1を流れる第1熱媒体との間で熱交換される。上述のように、第1管路12を流れ、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量は、第2切替部32によって調整される。熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を調整することにより、第2熱媒体と第1熱媒体との間の熱交換量が調整される。
【0052】
第2管路13の一端は、第2切替部32を介して、第1管路12の一端および管路15の他端に接続される。第2管路13の他端は、第1管路12の他端および管路14の一端に接続される。第2管路13は、熱交換器7を迂回する。
【0053】
管路14の一端は、第1管路12の他端および第2管路13の他端と接続される。管路14の他端は、第1切替部31の接続口Bに接続される。すなわち、管路14には、第1管路12および第2管路13のそれぞれを流れる第2熱媒体が合流して流れる。
【0054】
管路15の一端は、第1切替部31の接続口Dに接続される。管路15の他端は、第2切替部32を介して、第1管路12の一端および第2管路13の一端と接続される。管路15は、第2ポンプ42とバッテリ6と第2センサS2とを通過する。第2熱媒体は、管路15の一端から他端に向かって、第2ポンプ42、バッテリ6、第2センサS2の順で流れる。第2ポンプ42は、管路15において一端側から他端側に向かって第2熱媒体を圧送する。
【0055】
モータ2は、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機である。モータ2は、図示略の減速機構を介して、車両の車輪に接続される。モータ2は、インバータ3から供給される交流電流により駆動し、車輪を回転させる。これにより、モータ2は、車両を駆動する。また、モータ2は、車輪の回転を回生し交流電流を発電する。
発電された電力は、インバータ3を通じてバッテリ6に蓄えられる。モータ2のハウジング内には、モータの各部を冷却および潤滑させるオイルが貯留される。
【0056】
インバータ3は、バッテリ6の直流電流を交流電流に変換する。インバータ3は、モータ2と電気的に接続される。インバータ3によって変換された交流電流は、モータ2に供給される。すなわち、インバータ3は、バッテリ6から供給される直流電流を交流電流に変換してモータ2に供給する。
【0057】
電力制御装置4は、IPS(Integrated Power System)とも呼ばれる。電力制御装置4は、AC/DC変換回路およびDC/DC変換回路を有する。AC/DC変換回路は、外部電源から供給される交流電流を直流電流に変換しバッテリ6に供給する。すなわち、電力制御装置4は、AC/DC変換回路において、外部電源から供給される交流電流を直流電流に変換しバッテリ6に供給する。DC/DC変換回路は、バッテリ6から供給される直流電流を電圧の異なる直流電流に変換し、制御部60などに供給する。
【0058】
バッテリ6は、インバータ3を介してモータ2に電力を供給する。また、バッテリ6は、モータ2によって発電された電力を充電する。バッテリ6は、外部電源によって充填されていてもよい。バッテリ6は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ6は、繰り返し充電および放電が可能な二次電池であれば、他の形態であってもよい。
【0059】
第2センサS2は、管路15に設けられる。第2センサS2は、管路15内を通過する第2熱媒体の温度を測定する温度センサである。第2センサS2は、制御部60に接続される。本実施形態において、第2センサS2は、管路15の下流側の端部近傍であって第2切替部32の流入口に設けられる。第2センサS2は、第2切替部32に流入する第2熱媒体の温度を測定する。第2切替部32の通過前後で第2熱媒体の温度はほとんど変化しない。したがって、第2センサS2は、熱交換器7に流入する第12媒体の温度を測定すると見做される。なお、第2センサS2は、第2回路C2中の第2熱媒体の温度を測定できるならば、他の管路に配置されていてもよい。この場合、第2センサS2から熱交換器7の流入口までの温度変化を推定して、熱交換器7に流入する第2熱媒体の温度の推定値を算出できる。
【0060】
(各モード)
本実施形態の車両用温調装置1は、冷房モード、通常暖房モードと、ホットガス暖房モードと、を有する。各モードは、第1~第4の膨張弁61~64、開閉バルブ8A、および切替部31、32の切り替えによって互いに遷移可能である。なお、車両用温調装置1は、第1~第4の膨張弁61~64、開閉バルブ8A、および切替部31、32を切り替えることで構成し得る他のモードを有していてもよい。
【0061】
(冷房モード)
図2は、冷房モードの車両用温調装置1の概略図である。
冷房モードの車両用温調装置1において第1熱媒体は、第2空調用熱交換器74で空気流通路86f内を流れる車内の空気から吸熱してラジエータ77で車外に放熱する。すなわち、第1熱媒体は、車内から車外に熱を移送する。これにより、第1熱媒体は、車内の空気を冷却する。
【0062】
冷房モードの第1回路C1は、冷房用ループLcを構成する。冷房用ループLcは、アキュムレータ71、圧縮機72、第1空調用熱交換器73、第2の膨張弁62、ラジエータ77、第3の膨張弁63、および第2空調用熱交換器74、の順で通過して第1熱媒体を循環させる。
【0063】
なお、冷房モードにおいて、第1回路C1と第2回路C2との間に熱のやり取りは発生しない。したがって、冷房モードにおいて、第2回路C2に構成されるループは限定されない。
【0064】
車両用温調装置1は、開閉バルブ8A、および第1~第4の膨張弁61~64を以下のように切り替えることで冷房モードとされる。すなわち、冷房モードの車両用温調装置1は、開閉バルブ8aおよび開閉バルブ8bを閉塞する。さらに、冷房モードの車両用温調装置1は、第1の膨張弁61を完全に閉塞し、第2の膨張弁62を完全に開放し、第3の膨張弁63において開度を調整し通過する第1熱媒体を減圧させ、第4の膨張弁64を完全に閉塞する。
【0065】
また、冷房モードにおいて、送風部80のエアミックスダンパ86dは、吹出口86b側の流路口を塞ぎ、バイパス流通路86cを開放する。これにより、送風部80は、第2空調用熱交換器74によって冷却された空気を、第1空調用熱交換器73を通過させることなく車室内に送る。
【0066】
冷房モードにおいて圧縮機72を動作させると、圧縮機72から吐出された高圧気相の第1熱媒体は、第1空調用熱交換器73およびラジエータ77を通過する過程で放熱し液化する。高圧液相の第1熱媒体は、第3の膨張弁63を通過することで減圧され、さらに第2空調用熱交換器74において気化するとともに、空気流通路86f内の空気の熱を吸熱する。低圧気相の第1熱媒体は、アキュムレータ71を経て再び圧縮機72に吸入され、圧縮される。
【0067】
(通常暖房モード)
図3は、通常暖房モードの車両用温調装置1の概略図である。
通常暖房モードの車両用温調装置1において第1熱媒体は、ラジエータ77で外気の熱を吸熱して、第1空調用熱交換器73で空気流通路86f内に放熱する。すなわち、第1熱媒体は、車外から車内に熱を移送する。これにより、第1熱媒体は、車内の空気を加熱する。
【0068】
通常暖房モードの第1回路C1は、暖房用ループLhを有する。暖房用ループLhは、アキュムレータ71、圧縮機72、第1空調用熱交換器73、第2の膨張弁62、およびラジエータ77、の順で通過して第1熱媒体を循環させる。
【0069】
なお、通常暖房モードにおいて、第1回路C1と第2回路C2との間に熱のやり取りは発生しない。したがって、通常暖房モードにおいて、第2回路C2に構成されるループは限定されない。
【0070】
車両用温調装置1は、開閉バルブ8A、および第1~第4の膨張弁61~64を以下のように切り替えることで通常暖房モードとされる。すなわち、通常暖房モードの車両用温調装置1は、開閉バルブ8aを閉塞し、開閉バルブ8bを開放する。さらに、通常暖房モードの車両用温調装置1は、第1の膨張弁61を完全に閉塞し、第2の膨張弁62において開度を調整し通過する第1熱媒体を減圧させ、第3の膨張弁63を完全に閉塞し、第4の膨張弁64を完全に閉塞する。
【0071】
また、通常暖房モードにおいて、送風部80のエアミックスダンパ86dは、吹出口86b側の流路口を開放させる。これにより、送風部80は、第1空調用熱交換器73によって加熱された空気を車室内に送る。
【0072】
通常暖房モードにおいて圧縮機72を動作させると、圧縮機72から吐出された高圧気相の第1熱媒体は、第1空調用熱交換器73を通過する過程で放熱し液化する。高圧液相の第1熱媒体は、第2の膨張弁62を通過することで減圧され、さらにラジエータ77において気化するとともに外気の熱を吸熱する。さらに、低圧気相の第1熱媒体は、アキュムレータ71を経て再び圧縮機72に吸入され、圧縮される。
【0073】
なお、図示を省略するが、車室内の暖房とともに除湿を行う場合には、除湿暖房モードを選択してもよい。この場合、通常暖房モードから、開閉バルブ8bを閉塞し、開閉バルブ8aを開放し、第2の膨張弁62を完全に閉塞し、第3の膨張弁63において開度を調整しながら開放して通過する第1熱媒体を減圧させる。これにより、第1熱媒体は、ラジエータ77で気化することなく、第2空調用熱交換器74を通過する際に気化して空気流通路86f内の空気の熱を吸熱し結露を生じさせることで空気を除湿する。
【0074】
(ホットガス暖房モード)
図4は、ホットガス暖房モードの車両用温調装置1の概略図である。
ホットガス暖房モードの車両用温調装置1において第1熱媒体は、圧縮機72から熱を与えられ、熱交換器7において第2回路C2に熱を与えてバッテリ6を温めるとともに、第1空調用熱交換器73で空気流通路86f内の空気に放熱することで車内を暖房する。ホットガス暖房モードは、外気温が低く、ラジエータ77での吸熱が難しい場合に選択される。なお、本実施形態におけるホットガス暖房モードは、熱交換器7において第2回路C2に熱を与えてバッテリ6を温める機能のみを有していても良く、第1空調用熱交換器73で空気流通路86f内の空気に放熱することで車内を暖房する機能のみを有していても良い。
【0075】
本実施形態によれば、第1回路C1は、ホットガス用ループL1および蓄熱用ループL1aに第1熱媒体を同時に循環させるホットガス暖房モードと、暖房用ループLhに第1熱媒体を循環させる通常暖房モードと、の間を切り替え可能である。このため、外気温が著しく低くラジエータ77において外気からの吸熱がしづらい場合に、ホットガス暖房モードを選択することで、バッテリ6を温めたり、車室内を安定的に暖房できたりする。
【0076】
ホットガス暖房モードの第1回路C1は、第1熱媒体を同時に循環させる第1ループ(ホットガス用ループ)L1および蓄熱用ループL1aを有する。
【0077】
第1ループL1は、アキュムレータ71、圧縮機72、第1空調用熱交換器73、第1の膨張弁61、および熱交換器7、の順で通過して第1熱媒体を循環させる。つまり、第1回路C1は、圧縮機72、および熱交換器7を通過して第1熱媒体を循環させる第1ループL1を有する。また、本実施形態の車両用温調装置1の制御方法は、第1回路C1において、圧縮機72、および熱交換器7を通過する第1ループL1に第1熱媒体を循環させる。
【0078】
蓄熱用ループL1aは、アキュムレータ71、圧縮機72、および第4の膨張弁64、の順で通過して第1熱媒体を循環させる。
【0079】
ホットガス暖房モードの第2回路C2は、第2ループP2を有する。
なお、ホットガス暖房モードの第2回路C2は、バッテリループP3とモータループP4とを有していてもよい。ここでは、第2ループP2について説明し、バッテリループP3およびモータループP4については、後段において詳細に説明する。
【0080】
第2ループP2は、第2ポンプ42、バッテリ6、熱交換器7、第1ポンプ41、電力制御装置4、インバータ3、およびモータ2を通過して第2熱媒体を循環させる。ホットガス暖房モードにおいて、モータ2、インバータ3、および電力制御装置4で発生する熱は第2熱媒体に伝熱され、バッテリ6の加熱に利用される。また、熱交換器7において、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱も、バッテリ6の加熱に利用される。
【0081】
車両用温調装置1は、開閉バルブ8A、および第1~第4の膨張弁61~64を以下のように切り替えることで第1回路C1に第1ループL1および蓄熱用ループL1aを構成する。すなわち、ホットガス暖房モードの車両用温調装置1は、開閉バルブ8aを開放し、開閉バルブ8bを閉塞する。さらに、ホットガス暖房モードの車両用温調装置1は、第1の膨張弁61において開度を調整し通過する第1熱媒体を減圧させ、第2の膨張弁62を完全に閉塞し、第3の膨張弁63を完全に閉塞し、第4の膨張弁64において開度を調整し通過する第1熱媒体を減圧させる。
【0082】
さらに、車両用温調装置1は、切替部31,32を以下のように切り替えることで第2回路C2に第2ループP2を構成する。第1切替部31は、接続口A,B、および接続口C.Dをそれぞれ連通させる第2接続状態とする。これにより、管路11の一端と管路14の他端とを連通させつつ、管路11の他端と管路15の一端とを連通させる。
【0083】
第2切替部32は、第1管路12を流れる第2熱媒体の流量と、第2管路13を流れる第2熱媒体の流量との比率を調整する。第2切替部32によって、流量比Rfが0%に調整されると、第1管路12と管路15との連通は遮断され、第2管路13と管路15のみが連通される。そのため、第1管路12には第2熱媒体が流れず、管路15を流れる第2熱媒体は全て第2管路13を流れる。このとき、全ての第2熱媒体が熱交換器7を迂回して流れるため、熱交換器7において第1熱媒体と第2熱媒体との間で熱交換が行われない。すなわち、流量比Rfが0%の場合、熱交換器7を通過する前後における第1熱媒体のエンタルピーはほぼ変動しない。
【0084】
第2切替部32によって、流量比Rfが10%から90%の間に調整されると、第1管路12および第2管路13は、それぞれ、管路15と連通され、第1管路12および第2管路13の両方に第2熱媒体が流れる。また、流量比Rfが大きくなるほど、第2管路13に流れる第2熱媒体の量に対する、第1管路12に流れる第2熱媒体の量の比率が大きくなる。そのため、流量比Rfが大きくなるほど、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量が多くなり、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量は大きくなる。すなわち、流量比Rfが大きくなるほど、熱交換器7を通過した後の第1熱媒体のエンタルピーが低下する。
【0085】
第2切替部32によって、流量比が100%に調整されると、第2管路13と管路15との連通は遮断され、第1管路12と管路15のみが連通される。そのため、第2管路13には第2熱媒体が流れず、管路15を流れる第2熱媒体は全て第1管路12を流れる。このとき、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量は最大になり、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量は最大になる。すなわち、流量比Rfが100%の場合、熱交換器7を通過した後の第1熱媒体のエンタルピーが最も低下する。制御部60が、第2切替部32によって流量比Rfを切り替える手順については後述する。
【0086】
上述のように、第2ループP2では、管路15の他端と管路14の一端との間において、第2熱媒体は、第1管路12又は第2管路13の少なくとも一方を通過する。つまり、本実施形態の車両用温調装置は、第1管路12又は第2管路13の少なくとも一方を通過して第2熱媒体を循環させる第2ループP2を有する。また、本実施形態の車両用温調装置の制御方法は、第2回路C2において、第1管路12又は第2管路13の少なくとも一方を通過する第2ループP2に第2熱媒体を循環させる。
【0087】
ホットガス暖房モードにおいて、送風部80のエアミックスダンパ86dは、吹出口86b側の流路口を開放させる。これにより、送風部80は、第1空調用熱交換器73によって加熱された空気を車室内に送る。
【0088】
ホットガス暖房モードにおいて、ホットガス用ループL1と蓄熱用ループL1aとの共通部分である管路9aには、アキュムレータ71および圧縮機72が配置される。圧縮機72から吐出された第1熱媒体は、管路9dと管路9bとに分岐して流れる。管路9dに流れた第1熱媒体は、ホットガス用ループL1を循環しアキュムレータ71に戻る。管路9bに流れた第1熱媒体は、蓄熱用ループL1aを循環しアキュムレータ71に戻る。すなわち、管路9dと管路9bとに分岐して流れた第1熱媒体は、アキュムレータ71の上流側で合流した後に、アキュムレータ71および圧縮機72に吸入される。
【0089】
蓄熱用ループL1aにおいて、圧縮機72から吐出された高圧気相の第1熱媒体は、第4の膨張弁64を通過することで減圧されて低圧気相とされ、アキュムレータ71を経て再び圧縮機72に吸入される。
【0090】
蓄熱用ループL1aにおいて、第1熱媒体は、第4の膨張弁64で減圧されるものの放熱を行うことがない。このため、蓄熱用ループL1aを循環する第1熱媒体は、圧縮機72のエネルギを熱として蓄える。すなわち、蓄熱用ループL1aは、圧縮機72から熱を取り出して蓄えるループである。本実施形態によれば、第1熱媒体を蓄熱用ループL1aで循環させることで、第1熱媒体の温度を高めることができる。
【0091】
ホットガス用ループL1において、圧縮機72から吐出された高圧気相の第1熱媒体は、第1空調用熱交換器73を通過する過程で放熱し一部が液化する。高圧液相の第1熱媒体は、第1の膨張弁61を通過することで減圧され、熱交換器7において気化するとともに第2回路C2の第2熱媒体から吸熱する。さらに、低圧気相の第1熱媒体は、アキュムレータ71を経て再び圧縮機72吸入される。
【0092】
本実施形態によれば、ホットガス暖房モードの車両用温調装置1は、ホットガス用ループL1とともに蓄熱用ループL1aにおいて第1熱媒体を循環させる。このため、アキュムレータ71を介して圧縮機72には、ホットガス用ループL1と蓄熱用ループL1aとをそれぞれ循環する第1熱媒体が混合して吸入される。このため、圧縮機72に流入する第1熱媒体をエンタルピーの高い状態に保ちやすく、圧縮機72の加熱効率を高めることができる。
【0093】
圧縮機72は、第1熱媒体のエンタルピー(温度および圧力)が低すぎる場合、第1熱媒体を加熱する能力(以下、加熱能力と称す場合がある)が低下する。この場合、圧縮機72から吐出される第1熱媒体の温度が低いため、第1空調用熱交換器73において十分に空気を暖めることができず、車室内を十分に暖房できない虞がある。ホットガス暖房モードでは、第1熱媒体は、第1空調用熱交換器73において空気を暖めつつ、熱交換器7において第2熱媒体を暖めるため、第1熱媒体のエンタルピーは上昇しづらい。特に、車両が起動された直後など、第2熱媒体の温度が低い場合は、第1熱媒体温度と第2熱媒体の温度との温度差が大きいため、熱交換器7において第2熱媒体に与える熱量が増加する。そのため、第1熱媒体のエンタルピーは特に上昇しづらく、圧縮機72は加熱能力の低い状態から脱しづらい。そのため、後述するように、本実施形態の車両用温調装置の制御方法では、第1熱媒体のエンタルピーに基づいて流量比Rfを調整して、第1熱媒体のエンタルピーが低下しすぎることを抑制する。
【0094】
図5に、本実施形態のホットガス暖房モードのフローチャートを示す。本実施形態のホットガス暖房モードは、目標値設定工程S01と、流量比設定工程S02と、第1調整工程S03と、を有する。
【0095】
目標値設定工程S01は、第1熱媒体の温度又は圧力の目標値を設定する工程である。目標値設定工程S01は、第2熱媒体の温度を測定する第2センサS2の測定値である第2測定値T2に基づいて、第1熱媒体の温度又は圧力の目標値Pstを設定する工程である。なお、本実施形態では、目標値Pstとして、圧縮機72に吸入される第1熱媒体の圧力である吸入圧Psを用いる。つまり、目標値設定工程S01では、第2熱媒体の温度T2に基づいて、第1熱媒体の吸入圧Psの目標値Pstを設定する。なお、目標値は吸入圧に限定されず、圧縮機72から吐出される第1熱媒体の圧力である吐出圧や第1熱媒体の温度を用いることができる。また、目標値として、第1空調用熱交換器73を通過した空気の温度T3を用いることができる。第1空調用熱交換器73を通過した空気は、第1空調用熱交換器73における第1熱媒体との熱交換によって暖められた空気である。したがって、第1空調用熱交換器73を通過した空気の温度T3によって、第1熱媒体の温度又は圧力を推定できる。第1空調用熱交換器73を通過した空気の温度T3は、第3センサS3の測定値である。また、目標値として、車室内の空気の温度T4を用いることができる。車室内の空気は、第1空調用熱交換器73を通過した空気の熱によって暖められる。したがって、車室内の空気の温度T4によって、第1熱媒体の温度又は圧力を推定できる。車室内の空気の温度T4は、第4センサS4の測定値である。
【0096】
車両が起動されると、車両用温調装置の制御が開始される。制御部60は、第2センサS2によって第2測定値T2を取得し、第2測定値T2に基づいて、第1熱媒体の吸入圧の目標値Pstを設定する。図6は、第2測定値T2と目標値Pstとの関係を示す図である。横軸は、第2測定値T2である。縦軸は、目標値Pstである。本実施形態では、目標値Pstは、第1目標値Psuと、第2目標値Pslと、第3目標値Psmとを含む。第2目標値Pslは、第1目標値Psuよりも小さい吸入圧である。第3目標値Psmは、第1目標値Psuよりも小さく、第2目標値Pslよりも大きい吸入圧である。制御部60は、取得した第2測定値T2に基づいて、第1目標値Psu、第2目標値Psl、および第3目標値Psmをそれぞれ設定する。
【0097】
第1目標値Psuは、圧縮機72が所望の加熱効率を発揮しつつ、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量が所望の熱量となる上限の吸入圧である。第2目標値Pslは、圧縮機72が所望の加熱効率を確保しつつ、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量が所望の熱量となる下限の吸入圧である。つまり、吸入圧Psが第1目標値Psuから第2目標値Pslの範囲であるとき、圧縮機72が十分な加熱効率を発揮しつつ、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量は所望の熱量となる。第3目標値Psmは、第1目標値Psuと第2目標値Pslの間の吸入圧である。
【0098】
流量比設定工程S02は、目標値Pstに基づいて、流量比Rfの最初の設定値である第1流量比Rf1を設定する工程である。本実施形態では、目標値Pstとして第3目標値Psmを用いる。これにより、第1熱媒体の吸入圧Psを、第1目標値Psuから第2目標値Pslの範囲に維持しやすくなる。図7は、第3目標値Psmと第1流量比Rf1との関係を示す図である。横軸は、第3目標値Psmである。縦軸は、第1流量比Rf1である。制御部60は、設定された第3目標値Psmに基づいて、第1流量比Rf1を設定する。
【0099】
第1調整工程S03は、目標値Pstと第1センサS1の測定値である第1測定値Psとの差分に基づいて、流量比Rfを調整する工程である。図8は、本実施形態における、第1測定値Psの推移の一例を示す図である。横軸は時間tである。縦軸は、第1測定値Psである。なお、この一例において、第2測定値T2は-10℃である。第1目標値Psu、第2目標値Psl、第3目標値Psmは、それぞれ、0.61MPaA、0.51MPaA、0.56MPaAに設定される。第1流量比Rf1は60%に設定される。
【0100】
時間tが0において車両が起動されると、制御部60は、上述のように目標値設定工程S01および流量比設定工程S02によって、目標値Pstと第1流量比Rf1とを設定する。制御部60は、第2切替部32によって、流量比Rfを第1流量比Rf1の60%に調整する。本例では、流量比Rfが60%において、第1熱媒体が圧縮機72で与えられる熱量よりも、第1熱媒体が第1空調用熱交換器73および熱交換器7で失う熱量の和の方が小さいため、第1測定値Psは上昇する。
【0101】
時間t1において、第1測定値Psが第1目標値Psuに達すると、制御部60は、第2切替部32によって、流量比Rfを大きくする。本例では、制御部60は、流量比Rfを70%に調整する。つまり、制御部60は、第1測定値Psに基づいて、第2切替部(バルブ)32によって流量比Rfを調整する。
【0102】
時間t1からt2において、第1測定値Psは、時間tが経過するにしたがって低下する。流量比Rfを60%から70%に調整したため、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量が増加し、熱交換器7において、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量が増加したためである。つまり、第1熱媒体が圧縮機72で与えられる熱量よりも、第1熱媒体が第1空調用熱交換器73および熱交換器7で失う熱量の和の方が大きいためである。
【0103】
時間t2において、第1測定値Psが第2目標値Pslに達すると、制御部60は、第2切替部32によって、流量比Rfを小さくする。本例では、制御部60は、流量比Rfを60%に調整する。そのため、第1測定値Psは、時間tが経過するにしたがって上昇する。流量比Rfを70%から60%に調整したため、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量が減少し、熱交換器7において、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量が減少したためである。
【0104】
以降は、第1測定値Psが第1目標値Psuに達すると、制御部60は、第2切替部32によって、流量比Rfを大きくし、第1測定値Psが第2目標値Pslに達すると、制御部60は、第2切替部32によって、流量比Rfを小さくして、流量比Rfを調整する。そのため、第1熱媒体の吸入圧Psを第1目標値Psuと第2目標値Pslとの間の吸入圧に維持できる。よって、圧縮機72が十分な加熱効率を発揮しつつ、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を所望の熱量に維持できる。その後、制御部60が、車両の動作を停止する信号を取得すると(S04)、制御部60は、車両用温調装置1の制御を停止する。
【0105】
本実施形態によれば、第1熱媒体が流れる第1回路C1と、第1回路C1に配置され、第1熱媒体を圧縮する圧縮機72と、第1回路C1に配置され、第1熱媒体の温度又は圧力を測定するセンサ(第1センサ)S1と、第2熱媒体が流れる第2回路C2と、第1回路C1および第2回路C2に跨って配置され第1熱媒体と第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器7と、制御部60と、を備える。第1回路C1は、圧縮機72、および熱交換器7を通過して第1熱媒体を循環させる第1ループL1を有し、第2回路C2は、熱交換器7を通過する第1管路12と、熱交換器7を迂回する第2管路13と、第2管路13を流れる第2熱媒体の流量に対する、第1管路12を流れる第2熱媒体の流量の比率である流量比を調整する第2切替部(バルブ)32と、第1管路12又は第2管路13の少なくとも一方を通過して第2熱媒体を循環させる第2ループP2と、を有し、制御部60は、センサS1の測定値Psに基づいて、第2切替部32によって流量比Rfを調整する。よって、第1熱媒体の温度又は圧力に基づいて、第2切替部32によって、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を調整できる。つまり、第1熱媒体の温度又は圧力に基づいて、熱交換器7における第1熱媒体と第2熱媒体との間の熱交換量を調整できる。そのため、ホットガス暖房モードにおいて、特に、車両が起動された直後など、第2熱媒体の温度が低い場合に、第1熱媒体のエンタルピーが低下しすぎることを抑制できる。したがって、圧縮機72が、第1熱媒体を加熱する加熱能力が低下することを抑制でき、圧縮機72の加熱能力を高めることができる。そのため、車室内を十分に暖房できる。また、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を所望の熱量に維持できる。したがって、バッテリ6を早期に暖めることができる。
【0106】
また、本実施形態では、第1熱媒体の吸入圧Ps(エンタルピー)が高まると、制御部60は、第2切替部32によって、流量比Rfを大きくして、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を増加させることができる。そのため、熱交換器7を介して、第1回路C1の第1熱媒体から第2回路C2の第2熱媒体に与える熱量を増加させることができる。したがって、バッテリ6を早期に暖めることができる。つまり、圧縮機72の加熱能力を十分に活用できる。
【0107】
さらに、本実施形態では、第2切替部32は、第2管路13を流れる第2熱媒体の流量に対する、第1管路12を流れる第2熱媒体の流量の比率を調整可能なミキシングバルブである。つまり、第2切替部32は、熱交換器7に第2熱媒体を継続して流しつつ、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を調整できる。そのため、第2切替部32によって、第2熱媒体が流れる管路を第1管路12および第2管路13との間で断続的に切り替えて、単位時間当たりに熱交換器7を通過する流量を調整する構成と比較して、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量の変動が抑制される。そのため、熱交換器7における第1熱媒体と第2熱媒体との熱交換量の変動が抑制される。したがって、第1熱媒体のエンタルピーを好適に安定させることができる。よって、圧縮機72の加熱能力を好適に安定させることができる。
【0108】
本実施形態によれば、第1熱媒体の温度又は圧力の目標値を設定する目標値設定工程S01と、目標値と第1測定値とに基づいて、流量比Rfを調整する第1調整工程S03と、を有する。つまり、第1熱媒体の温度又は圧力が目標値となるように、第2切替部32によって、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を調整できる。したがって、第1熱媒体のエンタルピーを好適に安定させることができる。したがって、圧縮機72が、第1熱媒体を加熱する加熱能力が低下することを抑制でき、圧縮機72の加熱能力を高めることができる。
【0109】
本実施形態によれば、第2熱媒体の温度を測定する第2センサS2を有し、目標値設定工程S01は、第2熱媒体の温度の測定値である第2測定値T2に基づいて、目標値Pstを設定する工程である。よって、第2熱媒体の温度T2に基づいて、熱交換器7での熱交換量を予測して、流量比Rfを調整できる。そのため、第2熱媒体の温度T2が低い場合は、流量比Rfを小さくして、熱交換器7における熱交換量を減少させて、第1熱媒体のエンタルピーが下がりすぎることを抑制できる。また、第2熱媒体の温度T2が高い場合は、流量比Rfを大きくして、熱交換器7における熱交換量を増加させて、第2熱媒体およびバッテリ6の温度を速やかに高めることができる。したがって、圧縮機72が、第1熱媒体を加熱する加熱能力が低下することを抑制できるとともに、圧縮機72の加熱能力を最大化できる。
【0110】
本実施形態によれば、目標値Pstは、少なくとも、第1目標値Psuと、第1目標値よりも小さい第2目標値Pslと、を含み、第1調整工程S03において、制御部60は、第1測定値Psが、第1目標値Psuに達すると流量比Rfを大きくする。そのため、熱交換器7における熱交換量が増加するため、第1測定値Psが第1目標値Psuを上回ることを抑制できる。また、第1測定値Psが、第2目標値Pslに達すると、流量比Rfを小さくする。そのため、熱交換器7における熱交換量が減少するため、第1測定値Psが、第2目標値Pslを下回ることを抑制できる。つまり、第1熱媒体の吸入圧Psを、第1目標値Psuから第2目標値Pslの範囲に維持できる。よって、圧縮機72が十分な加熱効率を発揮しつつ、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を所望の熱量に維持できる。そのため、バッテリ6を早期に暖めることができる。
【0111】
<変形例>
第1実施形態に採用可能な変形例の構成について説明する。なお、第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
図9に示すように、本変形例の車両用温調装置の制御方法では、上述の実施形態の制御方法と比較して、第1調整工程S03の後に実行する、第2調整工程S104、および、第3調整工程S105を有する点が異なる。
【0113】
第2調整工程S104は、目標値Pstと第1測定値Psとの差分に基づいて、第2ポンプ42の回転数を調整する工程である。第2ポンプ42で圧送される第2熱媒体は、熱交換器7を通過する。このため、第2ポンプ42の回転数を変化させることで、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を調整することができ、熱交換器7における熱交換量を調整できる。これにより、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を調整できるため、第1熱媒体のエンタルピーをより精度よく調整でき、第1熱媒体の吸入圧Psを目標値Pstにより好適に近づけることができる。
【0114】
第2調整工程S104において、第1測定値Psが、第1目標値Psuに達すると、第2ポンプ42の回転数を増加させ、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を増加させる。これにより、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量が増加し、第1熱媒体の吸入圧Psを低下させることができる。したがって、第1測定値Psが第1目標値Psuを超えることをより好適に抑制できる。
【0115】
第1測定値Psが、第2目標値Pslに達すると、第2ポンプ42の回転数を減少させ、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を減少させる。これにより、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量が減少し、第1熱媒体の吸入圧Psを増加させることができる。したがって、第1測定値Psが第2目標値Pslを下回ることをより好適に抑制できる。つまり、第1熱媒体の吸入圧Psを、第1目標値Psuから第2目標値Pslの範囲により好適に維持できる。よって、圧縮機72が十分な加熱効率を発揮しつつ、熱交換器7において第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を所望の熱量に維持できる。
【0116】
なお、本変形例において、第2調整工程S104は、第1調整工程S03の後に行われるが、第2調整工程S104は、流量比設定工程S02の後に行われるものであれば、第1調整工程S03よりも前に行われてもよいし、第1調整工程S03と同時に行われてもよい。
【0117】
図10に示すように、第2調整工程S104を行う場合、第2回路C2には、バッテリループP3、およびモータループP4を構成してもよい。バッテリループP3は、第2ポンプ42、バッテリ6、熱交換器7を通過して第2熱媒体を循環させる。モータループP4は、第1ポンプ41、電力制御装置4、インバータ3、およびモータ2を通過して第2熱媒体を循環させる。バッテリループP3、およびモータループP4は、第1切替部31を、接続口A,C、および接続口B,Dをそれぞれ連通させる第1接続状態とすることで構成される。
【0118】
第2調整工程S104を行う場合に、第2回路C2にバッテリループP3を構成することで、第2ポンプ42は、バッテリループP3に第2熱媒体を循環させる。このため、第2ポンプ42による第2熱媒体の流量調整が、電力制御装置4、インバータ3、およびモータ2の冷却効率に影響を与えることを抑制できる。また、バッテリループP3とともに、モータループP4を構成することで、第1ポンプ41によってモータループP4に第2熱媒体を循環させることができる。これにより、モータループP4において電力制御装置4、インバータ3、およびモータ2を適切に冷却できる。
【0119】
なお、第2調整工程S104を行う場合、流量比設定工程S02、第1調整工程S03、および第3調整工程S105は行われなくてもよい。この場合、第1センサS1の測定値である第1測定値Psに基づいて、第2ポンプ42の回転数を調整することによって、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量が調整される。これにより、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を調整できるため、第1熱媒体の吸入圧Psを、第1目標値Psuから第2目標値Pslの範囲に維持できる。また、この場合、第2回路C2には、第2管路13、および第2切替部32は設けられなくてもよい。
【0120】
図9に示すように、第3調整工程S105は、目標値Pstと第1測定値Psとの差分に基づいて、送風機85の回転数を調整する工程である。送風機85から送られる空気は、第1空調用熱交換器73を通過する。このため、送風機85の回転数を調整して、第1空調用熱交換器73を通過する風量を調整することで、第1空調用熱交換器73における第1熱媒体と空気との熱交換量を調整できる。これにより、第1熱媒体のエンタルピーを調整でき、第1測定値Psを目標値Pstにより近づけることができる。
【0121】
なお、本変形例において、第3調整工程S105は、第2調整工程S104の後に行われるが、第3調整工程S105は、流量比設定工程S02の後に行われるものであれば、第1調整工程S03、および第2調整工程S104よりも前に行われてもよいし、第1調整工程S03、および第2調整工程S104と同時に行われてもよい。
【0122】
第3調整工程S105において、制御部60は、送風機85の回転数を第3目標値Psmと第1測定値Psとの差分に基づいて調整する。より詳細には、制御部60は、第1測定値Psが第3目標値Psmよりも高い場合、送風機85の回転数を増加させる。これにより、第1空調用熱交換器73における第1熱媒体と空気との熱交換量が増加するため、第1測定値Psを第3目標値Psmにより好適に近づけることができる。また、第1測定値Psが第3目標値Psmよりも低い場合、送風機85の回転数を減少させる。これにより、第1空調用熱交換器73における第1熱媒体と空気との熱交換量が減少するため、第1測定値Psを第3目標値Psmにより好適に近づけることができる。なお、送風機85の回転数を調整する方法はこれに限定されず、例えば、第1測定値Psと第3目標値Psmとの差分に比例して、調整する送風機85の回転数を設定してもよい。
【0123】
<第2実施形態>
図11に示すように、本実施形態の車両用温調装置の制御方法は、第1実施形態の制御方法と比較して、ホットガス暖房モードにおいて、予め用意した流量比設定テーブルTBを用いて流量比Rfの制御を行う点が主に異なる。本実施形態の車両用温調装置の制御方法は、流量比設定工程S201と、目標値設定工程S202と、流量比調整工程S203とを有する。なお、本実施形態の車両用温調装置1の構成は、第1実施形態の車両用温調装置1(図1)の構成と同じであり、制御方法のみが異なる。
【0124】
流量比設定工程S201は、第2熱媒体の温度を測定する第2センサS2の第2測定値T2と、圧縮機72の出力Pwとに基づいて流量比Rfを設定する工程である。なお、本実施形態において、出力Pwは圧縮機72において出力される目標値(加熱量)である。圧縮機72が第1熱媒体を加熱する加熱能力は、出力Pwと相関する。より詳細には、出力Pwが大きいほど、圧縮機72の加熱能力が大きくなり、圧縮機72が第1熱媒体に与える熱量が大きくなる。一方、出力Pwが小さいほど、圧縮機72の加熱能力は小さくなり、圧縮機72が第1熱媒体に与える熱量は小さくなる。なお、出力Pwは圧縮機72において出力される目標値(加熱量)に限定されず、例えば、圧縮機72の回転数などの目標値であってもよい。
【0125】
【表1】
【0126】
表1は、第2測定値T2および出力Pwと、設定される流量比Rfとの関係を示す流量比設定テーブルTBである。本実施形態において、流量比Rfは、第2測定値T2および出力Pwに基づいて調整される。流量比設定テーブルTBの各流量比A%~R%は、第2測定値T2が小さいほど小さな流量比に設定される。つまり、第2熱媒体の温度T2が低いほど、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量が少なくなるように、各流量比A%~R%が設定されている。すなわち、制御部60は、少なくとも、第2センサS2の測定値である第2測定値T2に基づいて、第2切替部(バルブ)32によって流量比Rfを調整する。このように、本実施形態の車両用温調装置の制御方法は、少なくとも、第2測定値T2に基づいて、流量比Rfを設定する流量比設定工程S201を有する。そのため、第2熱媒体の温度T2が高い場合であっても低い場合であっても、熱交換器7において、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を所望の範囲の熱量にできる。よって、第2熱媒体の温度T2が低い場合、第1熱媒体のエンタルピーが低下しすぎることを抑制できる。また、第2熱媒体の温度T2が高い場合に、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量が低下することを抑制できる。
【0127】
一方、流量比設定テーブルTBの各流量比A~R%は、出力Pwが小さいほど、小さな流量比に設定されている。つまり、圧縮機72の出力Pwが小さいほど、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量が少なくなるように設定されている。すなわち、制御部60は、第2測定値T2、および圧縮機の出力Pwに基づいて、第2切替部(バルブ)32によって流量比Rfを調整する。上述のように、圧縮機72において第1熱媒体に与えられる熱量は、出力Pwと相関する。そのため、出力Pwが小さくなるほど、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を減少させ、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を減少させて、第1熱媒体のエンタルピーが低下しすぎることを抑制できる。また、出力Pwが大きいほど、熱交換器7を通過する第2熱媒体の流量を増加させ、第1熱媒体から第2熱媒体に与えられる熱量を増加させて、第1熱媒体のエンタルピーが低下しすぎることを抑制しつつ、第2熱媒体およびバッテリ6を速やかに暖めることができる。なお、出力Pwに対する第1熱媒体に与えられえる熱量の変動が小さい場合や、圧縮機72が駆動される際の出力Pwが一定である場合では、流量比Rfは第2測定値T2のみに基づいて設定されてもよい。
【0128】
目標値設定工程S202は、第1熱媒体の温度又は圧力の目標値を設定する工程である。本実施形態では、第1実施形態と同様に、第1熱媒体の温度又は圧力として、第1熱媒体の吸入圧Psを用いる。目標値設定工程S202では、第1実施形態の目標値設定工程S01と同様に、第2測定値T2に基づいて、目標値Pstを設定する。すなわち、目標値Pstは、図6に示した第2測定値T2と目標値Pstとの関係を示す図によって設定される。目標値Pstは、第1目標値Psuと、第2目標値Pslと、第3目標値Psmとを含む。なお、本実施形態において、目標値設定工程S202は、流量比設定工程S201の後に行われる。目標値設定工程S202は、流量比調整工程S203の前に行われるものであれば、流量比設定工程S201よりも前に行われてもよいし、流量比設定工程S201と同時に行われてもよい。なお、第1実施形態と同様に、目標値は吸入圧に限定されず、圧縮機72から吐出される第1熱媒体の圧力である吐出圧や第1熱媒体の温度を用いることができる。また、目標値として、第1空調用熱交換器73を通過した空気の温度T3、又は、車室内の空気の温度T4を用いることができる。
【0129】
流量比調整工程S203は、第1センサS1の測定値である第1測定値Psと、目標値Pstとの差分に基づいて、流量比Rfを調整する工程である。流量比調整工程S203は、第1実施形態の第1調整工程S03と同様である。すなわち、第1測定値Psが第1目標値Psuに達すると、制御部60は、第2切替部32によって、流量比Rfを大きくして、流量比Rfを調整する。また、第1測定値Psが第2目標値Pslに達すると、制御部60は、第2切替部32によって、流量比Rfを小さくして、流量比Rfを調整する。そのため、第1熱媒体の吸入圧Psを第1目標値Psuと第2目標値Pslとの間に維持できる。その後、制御部60は、車両の動作を停止する信号を取得すると(S04)、車両用温調装置1の制御を停止する。
【0130】
なお、本実施形態では、流量比設定工程S201において、流量比設定テーブルTBに基づいて設定される流量比Rfによって、第1熱媒体の吸入圧Psを第1目標値Psuから第2目標値Pslの範囲に維持できる場合、目標値設定工程S202および流量比調整工程S203は設けられなくてもよい。これにより、車両用温調装置の制御の簡略化を図ることができる。
【0131】
また、本実施形態の車両用温調装置の制御方法においても、図9に示す、第1実施形態の変形例の第2調整工程S104および第3調整工程S105と同様の工程を行ってもよい。この場合、第1熱媒体の吸入圧Psを第1目標値Psuから第2目標値Pslの範囲により好適に維持できる。
【0132】
本実施形態によれば、制御部60は、少なくとも、第2センサS2の測定値である第2測定値T2に基づいて、第2切替部(バルブ)32によって流量比を調整する。そのため、ホットガス暖房モードにおいて、特に、車両が起動された直後など、第2熱媒体の温度が低い場合に、流量比Rfを小さくできる。よって、第1熱媒体のエンタルピーが低下しすぎることを抑制できる。したがって、圧縮機72の第1熱媒体を加熱する加熱能力が低下することを抑制でき、圧縮機72の加熱能力を高めることができる。また、第2熱媒体の温度T2が高い場合は、流量比Rfを大きくできる。よって、第1熱媒体のエンタルピーが低下しすぎることを抑制しつつ、第2熱媒体およびバッテリ6の温度を速やかに暖めることができる。したがって、圧縮機72の加熱能力を十分に活用できる。
【0133】
本実施形態によれば、制御部60は、第2測定値T2、および圧縮機72の出力Pwに基づいて、第2切替部(バルブ)32によって流量比Rfを調整する。よって、熱交換器7において、第1熱媒体が第2熱媒体に与える熱量、および、圧縮機72において、第1熱媒体に与えられる熱量に基づいて、流量比Rfを調整できる。そのため、第1熱媒体のエンタルピーを好適に安定させることができる。したがって、圧縮機72の加熱能力を好適に安定させることができる。
【0134】
本実施形態によれば、少なくとも、第2測定値T2に基づいて、流量比Rfを設定する流量比設定工程S201と、第1熱媒体の温度又は圧力の目標値を設定する目標値設定工程S202と、第1センサS1の測定値である第1測定値と、目標値との差分に基づいて、流量比Rfを調整する流量比調整工程S203と、を有する。そのため、流量比設定工程S201において設定した流量比Rfでは、第1測定値Psと目標値Pstとの間に差分が生じる場合に、流量比調整工程S203において、第1測定値Psと目標値Pstとの間に差分基づいて流量比Rfを調整できる。つまり、熱交換器7における第1熱媒体と第2熱媒体との熱交換量を調整できる。したがって、第1熱媒体の温度又は圧力を目標値Pstにより好適に維持できる。よって、圧縮機72の加熱能力を好適に高めることができる。
【0135】
また、本実施形態では、流量比設定工程S201において、予め用意した流量比設定テーブルTBを用いて流量比Rfの設定を行っている。そのため、例えば、第2熱媒体の温度T2等に基づいて、流量比Rfを設定する場合よりも、車両用温調装置の制御の簡略化を図ることができる。
【0136】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0137】
1…車両用温調装置、7…熱交換器、12…第1管路、13…第2管路、32…バルブ(第2切替部)、42…ポンプ(第2ポンプ)、60…制御部、72…圧縮機、73…空調用熱交換器(第1空調用熱交換器)、85…送風機、C1…第1回路、C2…第2回路、L1…第1ループ、P2…第2ループ、Pst…目標値、Psu…第1目標値、Psl…第2目標値、S1…センサ(第1センサ)、S2…第2センサ、S01…目標値設定工程、S03…第1調整工程、S104…第2調整工程、S105…第3調整工程、S201…流量比設定工程、S202…目標値設定工程、S203…流量比調整工程、T2…第2測定値
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