(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098149
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/10 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
H01F41/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214724
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】設楽 昌史
【テーマコード(参考)】
5E062
【Fターム(参考)】
5E062FG12
(57)【要約】
【課題】小型のコイル部品を得ること。
【解決手段】基準となる鍔部14の第2面20と、銅または銀を含む導線40と、を備えるコイル部品100の製造方法において、鍔部14の第2面20の上部に位置する導線40を被加工部44aとし、被加工部44aに導線40が軟化する軟化温度以上の温度を加えて鍔部14の第2面20に沿うような加工部46aを得る、コイル部品100の製造方法。これにより、導線40のスプリングバックが抑制され、小型なコイル部品を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準となる一面と、銅または銀を含む導線と、を備えるコイル部品の製造方法において、
前記一面の上部に位置する前記導線を被加工部とし、前記被加工部に前記導線が軟化する軟化温度以上の温度を加えて前記一面に沿うような加工部を得る、コイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記加工部は、0.3J/mm2以上2.0J/mm2以下の熱エネルギーによる前記温度が前記被加工部に加えられ形成される、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記加工部は、レーザの照射によって前記温度が前記被加工部に加えられ形成される、請求項1または2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記レーザの照射位置は、前記被加工部から離れた位置である、請求項3に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記加工部は、600℃以上800℃以下の前記温度が前記被加工部に加えられ形成される、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記加工部は、加熱された金属体の接触によって前記温度が前記被加工部に加えられ形成される、請求項1または5に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
前記加工部は、前記温度以外に前記被加工部に荷重が掛けられて形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項8】
前記一面は、磁性材料から形成される基体の一部である、請求項1から7のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化等に伴い、電子機器に使用されるコイル部品の数が増大している。このため、コイル部品の更なる小型化が求められている。例えば、鍔部に形成された溝部に導線を引き出して外部電極を形成するコイル部品において、溝部内に位置する導線部分を軸部に巻回されている導線部分よりも薄くすることで小型化を図ることが知られている(例えば特許文献1)。また、鍔部に装着した金属片からなる外部電極と導線とがレーザ溶接による溶接玉により接続されたコイル部品において、溶接玉を鍔部の厚みの範囲内に形成することで小型化を図ることが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-109211号公報
【特許文献2】特開2016-134590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、導線を薄くし更に折り曲げ加工を施して溝部内に引き出すため、強度の低下が生じて断線の発生原因となる。特に、導線が細い場合に強度低下が生じやすいことから小型のコイル部品への採用は難しい。また、特許文献2に記載の方法では、金属片が板状で所定の厚みを有することから小型のコイル部品への採用が難しい。
【0005】
導線の端部を基体の一面上に引き出すコイル部品において、導線の端部を基体の一面上に引き出したときに、導線の端部が基体の一面に沿って形成されずに、導線の先端ほど基体の一面から離れて形成されることがある。この場合、コイル部品が大型化してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型のコイル部品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基準となる一面と、銅または銀を含む導線と、を備えるコイル部品の製造方法において、前記一面の上部に位置する前記導線を被加工部とし、前記被加工部に前記導線が軟化する軟化温度以上の温度を加えて前記一面に沿うような加工部を得る、コイル部品の製造方法である。
【0008】
上記構成において、前記加工部は、0.3J/mm2以上2.0J/mm2以下の熱エネルギーによる前記温度が前記被加工部に加えられ形成される構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記加工部は、レーザの照射によって前記温度が前記被加工部に加えられ形成される構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記レーザの照射位置は、前記被加工部から離れた位置である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記加工部は、600℃以上800℃以下の前記温度が前記被加工部に加えられ形成される構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記加工部は、加熱された金属体の接触によって前記温度が前記被加工部に加えられ形成される構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記加工部は、前記温度以外に前記被加工部に荷重が掛けられて形成される構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記一面は、磁性材料から形成される基体の一部である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型のコイル部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)から
図1(d)は、実施形態に係るコイル部品の製造方法を示す側面図である。
【
図2】
図2(a)から
図2(d)は、実施形態に係るコイル部品の製造方法を示す平面図である。
【
図3】
図3(a)から
図3(c)は、被加工部を鍔部の第2面に沿うような加工部に加工する他の方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を適宜参照しながら、本願発明の実施形態について説明する。但し、本願発明は図示された態様に限定される訳ではない。また、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0018】
[実施形態]
図1(a)から
図1(d)は、実施形態に係るコイル部品100の製造方法を示す側面図である。
図2(a)から
図2(d)は、実施形態に係るコイル部品100の製造方法を示す平面図である。
図1(a)から
図1(d)は、+X側から見たときの側面図であり、
図2(a)から
図2(d)は、+Z側から見たときの平面図である。X軸、Y軸、Z軸は互いに直交している。実施形態では、基体10としてドラムコアの場合を一例として示すが、鍔部を一方にしか有さないTコアの場合等、その他の場合でもよい。
図1(a)から
図1(d)において、図の明瞭化のために、構成部材にハッチングを付している(以下の同様な図においても同じ)。
図2(a)から
図2(d)においても、図の明瞭化のために、一部の構成部材にハッチングを付している。また、
図1(d)および
図2(d)において、外部電極60a、60bの一部に取り込まれている導線40の端部41a、41bも図示している。コイル部品は、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタであってもよいし、信号ラインにおいて用いられるインダクタであってもよいし、その他であってもよい。
【0019】
図1(a)および
図2(a)に示すように、Z軸方向に伸びた軸部12と、軸部12の+Z側の端に設けられた一方の鍔部14と、軸部12の-Z側の端に設けられた他方の鍔部16と、を有するドラムコアである基体10を準備する。以降においては基板に実装される場合の基板に近い側の一方の鍔部14を中心に説明を行う。鍔部14の外形は、例えば他方の鍔部16の外形と略同じ大きさであるが、他方の鍔部16の外形より大きい場合でも、小さい場合でもよい。また、鍔部14の厚みは、他方の鍔部16の厚みと同じ厚みでもよいし、異なる厚みでもよい。鍔部14は、軸部12側の第1面18と、軸部12と反対側の第2面20と、を有する。
【0020】
基体10は、例えば磁性粉末と樹脂を混合したペーストを金型のキャビティ内に充填してプレス成形することによって成形体を形成し、この成形体に対して例えば200℃の熱処理を行って樹脂を固めることで形成される。磁性粉末は、例えばフェライト磁性粉末または金属磁性粉末が用いられる。フェライト磁性粉末としては、例えばNi-Zn系またはMn-Zn系等のフェライト材料が挙げられる。金属磁性粉末としては、例えばFe-Si-Cr系、Fe-Si-Al系、またはFe-Si-Cr-Al系等の軟磁性合金材料、FeまたはNi等の磁性金属材料、アモルファス磁性金属材料、若しくはナノ結晶磁性金属材料等が挙げられる。樹脂は、例えばポリビニルブチラール(PVB)樹脂またはエポキシ樹脂等の絶縁性に優れた樹脂が用いられる。
【0021】
なお、基体10は、大きな塊の成形体を加工することで軸部12と鍔部14、16とを有する成形体とし、この成形体に対して熱処理を行うことで形成してもよい。熱処理は、軸部12と鍔部14、16とを有する成形体に加工する前に行ってもよい。また、基体10は、磁性粉末を樹脂で固めることによって形成する場合に限られず、磁性粉末同士を無機物で結合させることで形成してもよい。この場合、磁性粉末をプレス成形した成形体に対して例えば600℃~1100℃の熱処理を行うことで、基体10を形成する。また、基体10は、磁性体である場合に限られず、酸化アルミニウム(アルミナ)または酸化シリコン(ガラス)等により形成された非磁性体である場合でもよい。
【0022】
軸部12は、例えばXY平面に平行な断面形状が角部に丸みを帯びた略矩形となっている。鍔部14、16は、例えばXY平面に平行な断面形状が略矩形であり、例えばZ軸方向に厚みを有する板状である。なお、軸部12は、断面形状が円形、楕円形、略矩形、五角形以上の多角形又はこれらの組み合わせをしていてもよい。軸部12は、Z軸方向に見て、鍔部14、16の外形より小さく、また鍔部14、16の中央付近に設けられる。基体10のX軸方向の長さ寸法、Y軸方向の長さ寸法、およびZ軸方向の長さ寸法は適宜適切に設定される。
【0023】
基体10を準備した後、鍔部14の第2面20に金属膜30a、30bを形成する。鍔部14の第2面20に溝部(不図示)が形成されている場合には、金属膜30a、30bは2つの溝部それぞれの内面に形成される。2つの溝部は、互いに略平行に延びて、鍔部14の対向する2つの外周面22、24に開口する。金属膜30a、30bは、例えばスパッタリング法または導電性ペーストの塗布によって銅(Cu)または銀(Ag)等の下地層を形成した後、めっき法を用いて下地層上にニッケル(Ni)層および錫(Sn)層等のめっき層を形成することにより形成する。なお、金属膜30a、30bは、下地層上にめっき層が形成された複数層の場合に限られず、下地層だけからなる単層の場合でもよい。また、金属膜30a、30bは、鍔部14との密着性のために、チタン(Ti)またはクロム(Cr)等の密着層を有していてもよい。金属膜30a、30bの厚さは、例えば1μm~50μm程度である。
【0024】
金属膜30a、30bを形成した後、基体10の軸部12に導線40を巻回して導線40からなるコイル部42を形成する。コイル部42の一対の端部から導線40をそれぞれ鍔部14の外周面22より外側に引き出した後、導線40を折り曲げて、導線40の端部41a、41bを金属膜30a、30b上に位置するように鍔部14の第2面20上に引き出す。ここで、導線40の端部41a、41bを鍔部14の第2面20上に引き出すために、導線40を折り曲げた部分を折り曲げ部48a、48bとする。折り曲げ部48a、48bは、鍔部14の外周面22上付近に位置する。また、導線40のうち鍔部14の第2面20上に位置する部分、すなわち、導線40の端部41a、41bを被加工部44a、44bとする。
【0025】
コイル部42から引き出した導線40を折り曲げて端部41a、41bが鍔部14の第2面20に沿うように曲げ加工した場合でも、導線40はスプリングバックによって折り曲げ部48a、48bから先端43a、43bに向かうに従って鍔部14の第2面20から離れるように形成されてしまう。
【0026】
コイル部42は、導線40が軸部12の周りに1ターン以上巻回されていればよく、軸部12の周りに1層だけ巻回されている場合でもよいし、一部分または全ての部分が複数層に重ねられて巻回されている場合でもよい。なお、コイル部42は、導線40の中央部が初めに巻回され、次に導線40の両端に向かって巻回する、所謂α巻きによって形成されてもよい。
【0027】
導線40は、例えば銅(Cu)または銀(Ag)の金属線が用いられる。導線40は、断面として0.02~0.6mmの直径の太さである。また、この断面は、円形、正方形、長方形、六角形のものである。導線40は、金属線を芯に周面がウレタンからなる絶縁被膜で覆われている。なお、絶縁被膜は、ウレタン以外の絶縁材料で形成されてもよく、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、またはポリエステル等の樹脂材料で形成されてもよい。金属線の断面形状は、例えば円形であるが、矩形の場合でもよい。
【0028】
なお、図示は省略するが、コイル部42を覆う外装部を形成してもよい。外装部は、例えば刷毛塗り、ローラー転写、またはディスペンス等により樹脂材料を塗布し、その後、樹脂材料を硬化させることで形成される。樹脂材料の樹脂成分は、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂である場合が好ましく、例えばエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂が用いられる。なお、樹脂材料は、平均粒径が10μm以下の磁性粒子等の磁性材料のフィラーを含んでいてもよい。例えば、樹脂材料は、磁性材料と樹脂を混合して形成されてもよく、例えば磁性材料としてフェライトが用いられ、樹脂成分としてエポキシ樹脂が用いられてもよい。また、樹脂材料は、シリカ粒子等の非磁性材料のフィラーを含んでいる場合でもよいし、磁性材料と非磁性材料を組み合わせてもよいし、混合して含んでいる場合でもよい。
【0029】
鍔部14の第2面20上に被加工部44a、44bを設けた後、被加工部44a、44bの少なくとも一部に導線40が軟化する軟化温度以上の温度を加える処理を行う。この処理について
図1(b)および
図2(b)を用いて説明するが、これは軟化温度以上の温度を加える処理の一例であり、その他の方法によって軟化温度以上の温度を加えてもよい。
図1(b)および
図2(b)に示すように、被加工部44a、44bの少なくとも一部に導線40が軟化する軟化温度以上の温度が加わるように、導線40にレーザ50を照射する。例えば、被加工部44a、44bの折り曲げ部48a、48b側の一部と折り曲げ部48a、48bとに跨るようにレーザ50を照射する。導線40のうちレーザ50が照射された領域を領域32a、32bとして図示している。これにより、被加工部44a、44bのうち少なくともレーザ50が照射された部分の温度は、導線40が軟化する軟化温度以上となる。レーザ50を出力するレーザ装置として、例えば1064nmの波長のレーザ50を出射するYAGレーザ装置が用いられる。例えば、銅または銀を含む導線40の直径が0.6mm以下の場合、領域32a、32bがレーザ50から受ける単位面積当たりの熱エネルギーが0.3J/mm
2以上2.0J/mm
2以下となるようにレーザ50を照射する。この場合、例えばレーザ50の出力を0.1kW以上0.3kW以下とし、照射時間を1msec以上10msec以下としてもよい。
【0030】
図1(c)および
図2(c)に示すように、被加工部44a、44bに導線40の軟化温度以上の温度が加わることで、被加工部44a、44bは自重によって鍔部14の第2面20に沿うような形状に変形する。ここで、導線40のうち鍔部14の第2面20に沿うように加工された部分、すなわち、導線40の端部41a、41bを加工部46a、46bとする。加工部46a、46bにおいては、被加工部44a、44bのときと比べて、導線40の先端43a、43bが鍔部14の第2面20に近づき、例えば、金属膜30a、30bに接するようになる。また、加工部46a、46bの大部分が金属膜30a、30bに接していてもよい。鍔部14の第2面20に沿うような加工部46a、46bを得ることで、
図1(a)のように、折り曲げ部48a、48bから先端43a、43bに向かうに従って鍔部14の第2面20から離れる形状の被加工部44a、44bのときと比べて、コイル部品が小型化する。
【0031】
図1(d)および
図2(d)に示すように、金属膜30a、30bの表面に、例えばディスペンスまたは転写等によりはんだ膜62a、62bを塗布する。はんだ膜62a、62bは、例えば錫銀はんだまたは錫銀銅はんだであり、フラックス成分を含有する。その後、はんだ膜62a、62bを融点以上の温度、例えば、220℃~230℃以上で加熱して溶融させる。はんだ膜62a、62bに含まれるフラックス成分が導線40の端部41a、41bにおける絶縁被膜を剥離し、導線40の端部41a、41bにおいて金属線が露出する。これにより、導線40の端部41aと金属膜30aとはんだ膜62aとが接合して、コイル部42に電気的に接続された外部電極60aが形成される。同様に、導線40の端部41bと金属膜30bとはんだ膜62bとが接合して、コイル部42に電気的に接続された外部電極60bが形成される。以上により、実施形態に係るコイル部品100が形成される。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、
図1(b)、
図1(c)および
図2(b)、
図2(c)のように、鍔部14の第2面20上に位置する導線40の端部41a、41bである被加工部44a、44bに導線40が軟化する軟化温度以上の温度を加えて鍔部14の第2面20に沿うような加工部46a、46bを得る。例えば、荷重を加えて導線40を曲げ加工する場合ではスプリングバックが生じ易いが、温度を加えて導線40を加工することでスプリングバックを抑制でき、小型なコイル部品100を得ることができる。また、温度を加えて導線40を加工することで、荷重を加えて導線40を加工する場合より導線40および基体10への機械的負荷が低減されるため、小型のコイル部品の製造に適用することができる。また、導線40がスプリングバックによって折り曲げ部48a、48bから先端43a、43bに向かうに従って鍔部14の第2面20から離れるように形成されている場合、先端43a、43bの位置が安定せず、寸法への影響や外部電極60a、60bとの接続への影響などを生じることになるが、本実施形態ではこのようなことも抑制される。
【0033】
また、本実施形態では、加工部46a、46bは、0.3J/mm2以上2.0J/mm2以下の熱エネルギーによる導線40の軟化温度以上の温度が被加工部44a、44bに加えられて形成される。これにより、直径が0.6mm以下で銅または銀を含む導線40を用いた小型のコイル部品に対して、鍔部14の第2面20に沿うような加工部46a、46bを得ることができる。熱エネルギーは、好ましくは、0.4J/mm2以上1.8J/mm2以下、より好ましくは0.5J/mm2以上1.6J/mm2以下である。このような熱エネルギーの範囲とすることは、被加工部44a、44b以外の部位への熱の影響を抑えることができる。例えば、被加工部44a、44bとつながるコイル部42の絶縁を維持することができる。
【0034】
また、本実施形態では、
図1(b)、
図1(c)および
図2(b)、
図2(c)のように、加工部46a、46bは、レーザ50の照射によって導線40の軟化温度以上の温度が被加工部44a、44bに加えられることで形成される。これにより、短時間の作業時間で鍔部14の第2面20に沿うような加工部46a、46bを得ることができ、これによっても被加工部44a、44b以外の部位への熱の影響を抑えることができる。導線40が太いものであっても熱の伝導を少なくすることができ、例えば、熱の伝わり易い0.6mmの太さの導線40を用いたとしても、基体10の温度を300℃以下に抑えることができる。また、エネルギー源の被加工部44a、44bへの直接の接触がないため、被加工部44a、44bにおける導線40の損傷を抑制でき、細い導線40にも対応することができる。
【0035】
なお、上記実施形態において、被加工部44a、44bの折り曲げ部48a、48b側の一部と折り曲げ部48a、48bとに跨るようにレーザ50を照射する場合を例に示したが、レーザ50は折り曲げ部48a、48bには照射されずに被加工部44a、44bにのみ照射される場合でもよい。
【0036】
なお、上記実施形態において、導線40にレーザ50を照射する前に、導線40の端部41a、41bおよび折り曲げ部48a、48bにおいて絶縁被膜を除去しておいてもよい。これにより、導線40にレーザ50を照射した場合でも、絶縁被膜の飛散を抑制することができる。反対に、絶縁被膜を持った状態で導線40にレーザ50を照射してもよい。この場合、鍔部14の第2面20に沿うような加工部46a、46bを得ることと、絶縁被膜を除去することと、を同時に行うことができる。
【0037】
[被加工部の他の加工方法の例]
図3(a)から
図3(c)は、被加工部44aを鍔部14の第2面20に沿うように加工する他の方法を示す側面図である。なお、
図3(a)から
図3(c)では、被加工部44aについて図示して説明するが、被加工部44bについても同じ方法により加工される。
【0038】
図3(a)に示すように、鍔部14の外周面22の上方から、外周面22上に位置する折り曲げ部48aにレーザ50を照射して、被加工部44aの少なくとも一部に導線40が軟化する軟化温度以上の温度が加わるようにする。このように、レーザ50を被加工部44aに直接照射せずに、被加工部44aから離れた位置に照射することで、被加工部44aへのダメージを抑制することができる。例えば、被加工部44aにレーザ50を直接照射した場合、被加工部44aにおける導線40の絶縁被膜が炭化したり、金属線の表面が酸化したりすることがあるがレーザ50を被加工部44aから離れた位置に照射することで、このような絶縁被膜の炭化および金属線の表面の酸化を抑制できる。これにより、電気的および機械的に安定した外部電極60aを得ることができる。また、レーザ50を被加工部44aから離れた位置に照射することで、レーザ50が鍔部14の第2面20に向けて照射されることが抑制され、鍔部14の第2面20および金属膜30aのレーザ50によるダメージを抑制することができる。
【0039】
図3(b)に示すように、被加工部44aのうちの折り曲げ部48a側に位置する部分の近傍に加熱された金属体52、例えば、はんだごて等を接触させて、被加工部44aの少なくとも一部に導線40が軟化する軟化温度以上の温度が加わるようにする。加熱された金属体52を接触させることで、被加工部44aの少なくとも一部に600℃以上800℃以下の温度が加わるようにする。このように、被加工部44aに600℃以上800℃以下の温度が加わることで、直径が0.6mm以下で銅または銀を含む導線40が用いられた場合に、鍔部14の第2面20に沿うような加工部46aを得ることができる。また、加熱された金属体52の接触によって導線40の軟化温度以上の温度を被加工部44aに加えることで、被加工部44aに加わる温度の制御性が向上する。なお、加熱された金属体52は、
図3(a)の場合と同様に、被加工部44aには直接接触せずに、被加工部44aから離れた箇所、例えば、折り曲げ部48aに接触してもよい。この場合、被加工部44aの機械的負荷を低減できる。
【0040】
図3(c)に示すように、導線40にレーザ50を照射して被加工部44aの少なくとも一部に導線40が軟化する軟化温度以上の温度が加わるようにすることに加え、+Z方向から-Z方向に向けて被加工部44aに荷重Fを加える。このように、被加工部44aに導線40の軟化温度以上の温度を加えることの他に、被加工部44aに荷重Fを加えることで、鍔部14の第2面20に沿うような加工部46aを安定して得ることができる。なお、荷重Fは+Z側から-Z側に向けて斜めに加えてもよい。これにより、荷重Fを加えた方向に向けて被加工部44aを動かすことができる。また、荷重Fは、レーザ50が照射されている最中に加える場合に限られず、被加工部44aの温度が導線40の軟化温度以上に保っている間であれば、レーザ50の照射が終わった後に加えてもよい。また、
図3(b)のように、加熱された金属体52を導線40に接触させる場合でも、加熱された金属体52を導線40に接触させている最中または接触後に荷重Fを被加工部44aに加えてもよい。
【0041】
なお、上記実施形態では、基体10の表面に導線40が巻回されてコイル部42が形成されたコイル部品を例に示したが、基体10にコイル部42が内蔵されたコイル部品等、巻線、積層、薄膜等のいずれのコイル部品であってもよい。
【実施例0042】
直径が0.6mmの銅を金属線に有する導線40を用い、上記の
図1(a)から
図1(d)および
図2(a)から
図2(d)で説明した方法を用いて加工を行った。このとき、レーザ50は、YAGレーザ装置を用い、0.2kWのパワーで5msecの間、被加工部44a、44bの折り曲げ部48a、48b側の一部と折り曲げ部48a、48bとに跨って照射するようにした。レーザ50が照射された領域32a、32bがレーザ50から受ける単位面積当たりの熱エネルギーは1.3J/mm
2であった。
【0043】
このような条件で被加工部44a、44bを加工することで、鍔部14の第2面20に沿うような加工部46a、46bが得られた。この時の、導線40の端部41a、41bと金属膜30a、30bとの距離は、最大の部分で0.1mm以下となった。また、直径が0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、0.1mmの他の導線40についても、同様の結果が得られ、導線40の端部41a、41bと金属膜30a、30bとの距離は金属線の太さより小さい範囲とすることができた。また、更に直径が0.05mm、0.02mmの導線40についても、同様の結果が得られ、外部電極60a、60bの厚みに影響しない範囲とすることができた。このようにして、このコイル部品は、導線40の端部41a、41bは位置精度の良いものとなり、また外部電極60a、60bとの接続を行う場合でも、外部電極60a、60bの厚みに影響を与えることなくコイル部品を作ることができた。
【0044】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。