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  • 特開-グリース組成物および転がり軸受 図1
  • 特開-グリース組成物および転がり軸受 図2
  • 特開-グリース組成物および転がり軸受 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098171
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】グリース組成物および転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/00 20060101AFI20230703BHJP
   C10M 105/36 20060101ALI20230703BHJP
   C10M 115/08 20060101ALI20230703BHJP
   C10M 125/30 20060101ALI20230703BHJP
   C10M 133/12 20060101ALI20230703BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20230703BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20230703BHJP
   F16C 33/76 20060101ALN20230703BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20230703BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20230703BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230703BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
C10M169/00 ZAB
C10M105/36 ZHV
C10M115/08
C10M125/30
C10M133/12
F16C33/66 Z
F16C19/06
F16C33/76 Z
C10N50:10
C10N40:00 D
C10N30:00 Z
C10N30:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214765
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 武志
【テーマコード(参考)】
3J216
3J701
4H104
【Fターム(参考)】
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB29
3J216BA05
3J216BA19
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB12
3J216CC01
3J216CC03
3J216CC17
3J216CC33
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701EA63
3J701FA11
3J701FA31
3J701FA38
3J701GA24
4H104AA24C
4H104BB23A
4H104BE07C
4H104BE13B
4H104LA04
4H104LA20
4H104PA39
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】 転がり軸受における電食の発生を高温・高速条件下であっても長期間に亘って抑制することができるグリース組成物を提供する。
【解決手段】 基油、増ちょう剤、導電性添加剤(A)、及び酸化防止剤(B)を含むグリース組成物であって、基油はトリメリット酸エステルであり、増ちょう剤はジウレアであり、導電性添加剤(A)は、セピオライトとベントナイトとを含む混合物であって、有機変性された添加剤であり、酸化防止剤(B)は、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及び/又はアルキル化ジフェニルアミンであり、導電性添加剤(A)の含有割合は、基油と増ちょう剤との合計質量に対して3~10質量%であり、酸化防止剤(B)の含有割合は、基油と増ちょう剤との合計質量に対して1~5質量%である、グリース組成物。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油、増ちょう剤、導電性添加剤(A)、及び酸化防止剤(B)を含むグリース組成物であって、
前記基油は、トリメリット酸エステルであり、
前記増ちょう剤は、ジウレアであり、
前記導電性添加剤(A)は、セピオライトとベントナイトとを含む混合物であって、有機変性された添加剤であり、
前記酸化防止剤(B)は、ジフェニルアミン系酸化防止剤であり、
前記ジフェニルアミン系酸化防止剤は、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及びアルキル化ジフェニルアミンの一方又は両方であり、
前記導電性添加剤(A)の含有割合は、前記基油と前記増ちょう剤との合計質量に対して3~10質量%であり、
前記酸化防止剤(B)の含有割合は、前記基油と前記増ちょう剤との合計質量に対して1~5質量%である、グリース組成物。
【請求項2】
前記ジウレアは、下記構造式(1)で表されるジウレアであり、
-NHCONH-R-NHCONH-R・・・(1)
(式中、R及びRは互いに独立して、オクチル基、又はシクロヘキシル基であり、Rは、-C-CH-C-である。)
前記構造式(1)で表されるジウレア全体において、前記オクチル基の割合は、前記オクチル基と前記シクロヘキシル基との合計100mol%に対して60~80mol%である、請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
前記アルキル化ジフェニルアミンは、N-フェニルベンゼンジアミンとスチレン、2,4,4-トリメチルペンタンの反応物である、請求項1又は2に記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記増ちょう剤の含有割合は、前記基油と前記増ちょう剤との合計質量に対して10~20質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のグリース組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のグリース組成物が封入された、転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物および当該グリース組成物が封入された転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(以下、EV車ともいう)やハイブリット車(以下、HV車ともいう)の駆動モータ用軸受は、軸受内部に電流が通過することで電食という不具合が発生することがある。軸受に電食が発生すると、軸受の軌道に波板状の電食痕が生じて凹凸ができることから、自動車走行時の異音や振動の原因になることがある。また、電食の発生は、軸受の早期損傷に繋がり、駆動モータのユニット機能に悪影響を及ぼすことがある。
【0003】
そこで、軸受に対する電食対策としては、例えば、転動体として絶縁性能を有するセラミックボールを使用することや、外輪外径にコーティングを施すことによって軸受に絶縁機能を付与することが提案されているが、いずれも高コストで,かつ量産性が乏しいという課題を抱えていた。
【0004】
また、導電性を有するグリース組成物を封入することで、軸受に耐電食性を付与することも検討されている。
特許文献1、2では、電食を防止するための導電性を有するグリース組成物として、カーボンブラックやイオン液体を採用したグリース組成物が提案されている。
また、特許文献3では、軸受に耐電食性を付与するグリース組成物として、基油としてのトリメリット酸エステルと、増ちょう剤と、導電性添加剤としての有機親和性フィロケイ酸塩とを含有するグリース組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-329264号公報
【特許文献2】特開2020-193287号公報
【特許文献3】国際公開第2021/034927号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、EV車やHV車に使用される駆動用モータは、小型化・軽量化と高出力化を両立するために高速回転化が求められている。
これには合わせて、上記駆動用モータに使用される軸受に封入されるグリース組成物は、耐電食性だけでなく、合わせて耐熱性や高速回転時の低トルク性(以下、高速性ともいう)が求められている。
【0007】
しかしながら、従来のグリース組成物では、このような要求に充分に応えられておらず、高温・高速条件下で使用された際に、長期間に亘って電気を安定して流すがことができず、早期に耐電食性が不十分になることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような状況のもと鋭意検討を行い、特定の基油、増ちょう剤及び導電性添加剤を含有しつつ、更に特定の酸化防止剤を含有するグリース組成物であれば、良好な耐導電性を示し、かつ、高温・高速条件下でも好適に使用することができること見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明のグリース組成物は、基油、増ちょう剤、導電性添加剤(A)、及び酸化防止剤(B)を含むグリース組成物であって、
上記基油は、トリメリット酸エステルであり、
上記増ちょう剤は、ジウレアであり、
上記導電性添加剤(A)は、セピオライトとベントナイトとを含む混合物であって、有機変性された添加剤であり、
上記酸化防止剤(B)は、ジフェニルアミン系酸化防止剤であり、
上記ジフェニルアミン系酸化防止剤は、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及びアルキル化ジフェニルアミンの一方又は両方であり、
上記導電性添加剤(A)の含有割合は、上記基油と上記増ちょう剤との合計質量に対して3~10質量%であり、
上記酸化防止剤(B)の含有割合は、上記基油と上記増ちょう剤との合計質量に対して1~5質量%である。
【0010】
本発明のグリース組成物は、基油、増ちょう剤、導電性添加剤(A)及び酸化防止剤(B)を含有するグリース組成物であって、基油がトリメリット酸エステルであり、導電性添加剤(A)がセピオライトとベントナイトとを含む混合物であって、有機変性された添加剤であり、酸化防止剤(B)が、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、及び/又は、アルキル化ジフェニルアミンである。
このような組成を有するグリース組成物は、良好な導電性を有するため、当該グリース組成物を封入した転がり軸受における電食の発生を抑制することができる。また、耐熱性及び高速性も良好である。
【0011】
更に、上記グリース組成物は、特定の酸化防止剤(B)を特定量含有しているため、高温・高速条件下でも、長期間に亘って劣化しにくく、安定した性能を発揮することができる。
【0012】
上記グリース組成物において、上記ジウレアは、下記構造式(1)で表されるジウレアであり、
-NHCONH-R-NHCONH-R・・・(1)
(式中、R及びRは互いに独立して、オクチル基、又はシクロヘキシル基であり、Rは、-C-CH-C-である。)
上記構造式(1)で表されるジウレア全体において、上記オクチル基の割合は、上記オクチル基と上記シクロヘキシル基との合計100mol%に対して60~80mol%である、ことが好ましい。
この場合、上記グリース組成物は、より良好な耐熱性を有し、このグリース組成物を封入した転がり軸受は、更に高速性と耐漏洩性とに優れる。
【0013】
上記グリース組成物において、上記アルキル化ジフェニルアミンは、N-フェニルベンゼンジアミンとスチレン、2,4,4-トリメチルペンタンの反応物である、ことが好ましい。
上記グリース組成物において、上記増ちょう剤の含有割合は、上記基油と上記増ちょう剤との合計質量に対して10~20質量%である、ことが好ましい。
本発明の転がり軸受は、本発明のグリース組成物が封入された、転がり軸受である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグリース組成物は、良好な導電性を有し、上記グリース組成物が封入された転がり軸受は電食が発生しにくい。
また、上記グリース組成物は、高温・高速条件下でも長期間に亘って劣化しにくく、安定した性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る玉軸受を示す断面図である。
図2】ベースグリースの調製工程を説明するための図である。
図3】実施例、及び比較例で製造したグリース組成物の酸化開始温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施形態に係る転がり軸受は、本発明の実施形態に係るグリース組成物からなるグリースが封入された玉軸受である。
図1は、本発明の一実施形態に係る玉軸受を示す断面図である。
玉軸受1は、内輪2と、この内輪2の径方向外側に設けられている外輪3と、これら内輪2と外輪3との間に設けられている複数の転動体としての玉4と、これらの玉4を保持している環状の保持器5とを備えている。また、この玉軸受1は、軸方向一方側及び他方側のそれぞれにシール6が設けられている。
さらに、内輪2と外輪3との間の環状の領域7は、本発明の実施形態に係るグリース組成物からなるグリースGが封入されている。
【0017】
内輪2は、その外周に玉4が転動する内軌道面21が形成されている。
外輪3は、その内周に玉4が転動する外軌道面31が形成されている。
玉4は、内軌道面21と外軌道面31との間に複数介在し、これら内軌道面21及び外軌道面31を転動する。
領域7に封入されたグリースGは、玉4と内輪2の内軌道面21との接触箇所、及び、玉4と外輪3の外軌道面31との接触箇所にも介在する。なお、グリースGは、内輪2と外輪3とシール6とで囲まれた空間から玉4と保持器5を除いた空間の容積に対して、20~40体積%を占めるように封入されている。
シール6は、環状の金属環6aと金属環6aに固定された弾性部材6bとを備えた環状の部材であり、径方向外側部が外輪3に固定され、径方向内側部のリップ先端が内輪2に摺接可能に取付けられている。シール6は、封入されたグリースGが外部へ漏れるのを防止している。
【0018】
このように構成された玉軸受1は、グリースGとして、後述する本発明の実施形態に係るグリース組成物からなるグリースが封入されている。そのため、グリースGが封入された玉軸受1は、電食の発生が抑制され、かつ高温・高速下の使用でも、長期間に亘って安定した性能を発揮することができる。
【0019】
次に、グリースGを構成するグリース組成物について詳細に説明する。
グリースGを構成するグリース組成物は、本発明の実施形態に係るグリース組成物であり、基油と、増ちょう剤と、少なくとも2種類の添加剤とを含有する。
【0020】
上記基油は、トリメリット酸エステルである。トリメリット酸エステルは、有機親和性フィロケイ酸塩と組み合わせて使用することで、グリースGに良好な導電性を付与するのに適している。また、基油としてトリメリット酸エステルを採用することは、グリースGに良好な耐熱性を付与する点でも適している。
更に、トリメリット酸エステルは、極性基を有することから金属との濡れ性も優れる。そのため、グリースGは、転がり軸受において、摩擦面への介入性が良好であり、発熱及び摩耗を抑制するのに適している。
よって、トリメリット酸エステルを基油として用いたグリースGは、安定して電気を流し続けるのに適している。
【0021】
上記トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリエステルが好ましい。
上記トリメリット酸トリエステルとしては、例えば、トリメリット酸と炭素数6~18のモノアルコールとの反応物等が挙げられる。これらの中では、トリメリット酸と、炭素数8及び/又は10のモノアルコールとの反応物が好ましい。
上記トリメリット酸トリエステルの具体例としては、トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルアルキル(C8、C10)、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリノルマルオクチル等が挙げられる。
上記トリメリット酸トリエステルは、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記トリメリット酸トリエステルは、40℃における基油動粘度が、37~57mm/sであることが好ましい。この場合、耐熱性を確保しつつ、転がり軸受の低トルク化を図るのに適している。
上記基油動粘度は、JIS K 2283に準拠した値である。
【0023】
上記増ちょう剤は、ジウレアである。
上記ジウレアとしては、下記構造式(1)で表されるジウレアが好ましい。
-NHCONH-R-NHCONH-R・・・(1)
(式中、R及びRは互いに独立して、炭素数6~10の炭化水素基、Rは、-(CH-、-C(CH)-、又は、-C-CH-C-である。)
ここで、Rが-C(CH)-の場合、フェニレン基は、メチル基を1位として2,4位又は2,6位で結合していることが好ましい。また、Rが-C-CH-C-の場合、両フェニレン基は、どちらもパラ位で結合していることが好ましい。
上記構造式(1)において、Rは、-C-CH-C-が好ましい。
【0024】
上記構造式(1)において、R及びRのそれぞれを構成する炭素数6~10の炭化水素基としては、炭素数6~10のアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1~4のアルキル基1~4個を有するアルキルシクロシキシル基(アルキル基の炭素数の総数は4以下)が好ましい。この場合、上記構造式(1)で表されるジウレアを用いたグリース組成物は、チャンネリング性の指標の1つである粘性低下エネルギーが高く、低トルク化に適している。
粘性低下エネルギーは、チキソトロピー性の1つの指標であり、回転式レオメータを用いて取得することができる。
【0025】
上記グリース組成物において、上記増ちょう剤は、上記基油と上記増ちょう剤との合計質量に対する割合が10~20質量%であることが好ましい。
上記増ちょう剤の含有量が10質量%未満では、グリースGの基油を保持する能力が低下して、転がり軸受の回転中にグリースGから基油が離油する量が多くなる場合がある。一方、上記増ちょう剤の含有量が20質量%を超えると、転がり軸受の回転により生じる、内輪、外輪、玉、保持器の相対運動によるグリースGのせん断によって生じる撹拌抵抗が大きくなって転がり軸受のトルクが大きくなったり、グリースGのせん断によって生じる撹拌抵抗にともなうグリースGの発熱によるグリースGの酸化や基油の蒸発、離油によるグリースGの劣化が促進されたりする場合がある。
【0026】
上記構造式(1)で表されるジウレアは、より好ましくは、R及びRがそれぞれオクチル基、又はシクロヘキシル基であり、ジウレア全体では、オクチル基を有するジウレアと、シクロヘキシル基を有するジウレアとの混合物である。
この場合、上記グリース組成物に含まれる増ちょう剤としてのジウレアには、
(a)下記構造式(2)で表される、R及びRのいずれもがオクチル基であるジウレアと、
【化1】
【0027】
(b)下記構造式(3)で表される、R及びRのいずれもがシクロヘキシル基であるジウレアと、
【化2】
【0028】
(c)下記構造式(4)で表される、R及びRの一方がオクチル基で、他方がシクロヘキシル基であるジウレアと、
【化3】

のうちの少なくとも2種のジウレアが含まれており、上記(a)~(c)の3種のジウレアが含まれていることがより好ましい。
なお、上記構造式(2)~(4)において、Rは、上記構造式(1)のRと同様である。
【0029】
上記グリース組成物に含まれるジウレアが、上記(a)~(c)のうちの少なくとも2種のジウレアの混合物である場合、ジウレア全体において、上記オクチル基の割合は、上記オクチル基と上記シクロヘキシル基との合計100mol%に対して60~80mol%であることが好ましい。
これによって、良好な耐熱性、高速性(低トルク性)を確保することができる。また、ジウレアが脂肪族ジウレアのみで構成されたグリース組成物に比べて、転がり軸受に封入した際の耐漏洩性が良好になる。
【0030】
一方、オクチル基の割合が80mol%を超える場合(シクロヘキシル基の割合が20mol%未満の場合)は、耐漏洩性の向上効果が乏しくなる。
また、オクチル基の割合が60mol%未満の場合(シクロヘキシル基の割合が40mol%を超える場合)は、グリース組成物を封入した転がり軸受のトルクの低減効果が乏しくなったり、転がり軸受が高速回転した際に、発熱によりグリース組成物が熱劣化しやすくなったりすることがある。
【0031】
上記構造式(1)で表されるジウレアは、アミンと、ジイソシアネート化合物とが反応して生成した生成物である。このとき、アミンとしては、アンモニアの水素原子の1つが炭素数6~10の炭化水素基で置換されたアミンを用いる。
ここで、上記アミン及びジイソシアネート化合物は、生成するジウレアの構造を考慮として選択する。例えば、R、Rにオクチル基が含まれるジウレアを生成する場合は、上記アミンとして1-アミノオクタンを使用し、R、Rにシクロヘキシル基が含まれるジウレアを生成する場合は、上記アミンとしてシクロヘキシルアミンを使用する。
また、例えば、Rが-C-CH-C-であるジウレアを生成する場合は、上記ジイソシアネート化合物として4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を使用する。
【0032】
上記構造式(1)で表されるジウレアを得るために、上記アミンと上記ジイソシアネート化合物とは種々の条件下で反応させることができるが、増ちょう剤としての均一分散性が高いジウレア化合物が得られることから、基油中で反応させることが好ましい。
また、上記アミンと上記ジイソシアネート化合物との反応は、アミンを溶解した基油中に、ジイソシアネート化合物を溶解した基油を添加して行ってもよいし、ジイソシアネート化合物を溶解した基油中に、アミンを溶解した基油を添加して行ってもよい。
【0033】
上記のアミンとジイソシアネート化合物との反応における温度及び時間は特に制限されず、通常この種の反応で採用される条件と同様の条件を採用すればよい。
反応温度は、アミン及びジイソシアネート化合物の溶解性、揮発性の点から、150℃~170℃が好ましい。
反応時間は、アミンとジイソシアネート化合物との反応を完結させるという点や、製造時間を短縮してグリース組成物の製造を効率良く行うという点から、0.5~2.0時間が好ましい。
【0034】
上記グリース組成物が含有する2種類の添加剤は、導電性添加剤(A)及び酸化防止剤(B)である。
上記導電性添加剤(A)は、セピオライトとベントナイトとを含む混合物であって、有機変性された添加剤である。この添加剤は、有機親和性フィロケイ酸塩ともいう。
セピオライトは鎖状の構造を有する鉱物であり、ベントナイトは層状又は板状の構造を有する鉱物である。鉱物系の添加剤である上記有機親和性フィロケイ酸塩は、導電性の付与だけでなく、耐熱性の向上にも寄与することができる。
【0035】
上記有機親和性フィロケイ酸塩は、セピオライトと、ベントナイトとが複雑に絡み合った三次元網目構造が構築されたものである。上記有機親和性フィロケイ酸塩は、上記三次元網目構造によって導電パスが形成されるため、導電性を有する。また、上記有機親和性フィロケイ酸塩は、有機変性されているため基油との親和性にも優れる。
そのため、上記有機親和性フィロケイ酸塩を配合することでグリース組成物に良好な導電性を付与することができる。
また、上記有機親和性フィロケイ酸塩は、上記グリース組成物のチャンネリング性を向上させ、転がり軸受の低トルク化に寄与することができる。
【0036】
上記有機親和性フィロケイ酸塩において、上記セピオライトと上記ベントナイトとは、両方が有機変性されていても良く、いずれか一方のみが有機変性されていてもよい。
上記有機親和性フィロケイ酸塩は、セピオライト及びベントナイトの両方が有機変性されていることが好ましい。この場合、上記グリース組成物が封入された軸受の低トルク化により適している。
【0037】
上記セピオライトや上記ベントナイトが有機変性されているとは、例えば、カチオン界面活性剤で処理されていることをいう。
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、よう化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、臭化ジアルキルジメチルアンモニウム、よう化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤;モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩等のアルキルアミン塩型のカチオン系界面活性剤などが挙げられる。
これらの中では、第4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤が好ましい。
【0038】
上記セピオライトとベントナイトとを含む混合物であって、有機変性されたもの(有機親和性フィロケイ酸塩)としては、市販品を使用することもできる。
市販品の具体例としては、例えば、GARAMITE(登録商標) 1958(BYK社製)、GARAMITE(登録商標) 2578(BYK社製)、GARAMITE(登録商標) 7303(BYK社製)、GARAMITE(登録商標) 7305(BYK社製)、等が挙げられる。
【0039】
上記導電性添加剤(A)である上記有機親和性フィロケイ酸塩の含有割合は、上記基油、上記増ちょう剤及び上記導電性添加剤(A)の合計質量に対して、3~10質量%である。
上記導電性添加剤(A)の含有割合が上記範囲にあると、上記グリース組成物は、転がり軸受に封入した際に、電食の発生を抑制し、かつ低トルク化に有用なグリース組成物となる。
一方、上記導電性添加剤(A)の含有割合が3質量%未満では、グリース組成物の導電性が充分に高くならない。また、上記グリース組成物を転がり軸受に封入した際に、当該転がり軸受のトルクが大きくなってしまうことがある。
また、上記導電性添加剤(A)の含有割合が10質量%を超えると、上記グリース組成物が硬くなり、上記グリース組成物を封入した転がり軸受のトルクが大きくなりすぎてしまうことがある。
上記有機親和性フィロケイ酸塩のより好ましい含有割合は、上記基油と上記増ちょう剤との合計量に対して、4~6質量%である。
【0040】
上記酸化防止剤(B)は、ジフェニルアミン系酸化防止剤である。
上記ジフェニルアミン系酸化防止剤は、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及びアルキル化ジフェニルアミンの一方又は両方である。
上記アルキル化ジフェニルアミンとしては、例えば、N-フェニルベンゼンジアミンとスチレン、2,4,4-トリメチルペンタンの反応物(CAS登録番号 68921-45-9)が挙げられる。
【0041】
上記ジフェニルアミン系酸化防止剤としては、市販品を使用することもできる。
上記4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの市販品としては、例えば、大内新興化学工業社製、ノクラック(登録商標) CDがある。
上記N-フェニルベンゼンジアミンとスチレン、2,4,4-トリメチルペンタンの反応物の市販品としては、例えば、大内新興化学工業社製、ノクラック(登録商標) ODAがある。
【0042】
上記酸化防止剤(B)の含有割合は、上記基油と上記増ちょう剤との合計質量に対して1~5質量%である。ここで、上記酸化防止剤(B)として、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及びアルキル化ジフェニルアミンの両方を併用している場合は、その合計質量の割合が、上記基油と上記増ちょう剤との合計質量に対して1~5質量%である。
【0043】
上記酸化防止剤(B)の含有割合が1質量%未満では、酸化抑制効果が低く、高温・高速条件下で使用した場合に、早期に劣化しやすくなる。一方、上記酸化防止剤(B)の含有割合が5質量%を超えても、酸化抑制効果の飛躍的向上はない。また、含有割合が5質量%を超えると、グリース組成物が軟化し、上記グリース組成物を封入した転がり軸受から漏洩するおそれがある。
上記酸化防止剤(B)の好ましい含有割合は、上記基油と上記増ちょう剤との合計質量に対して1~3質量%である。
【0044】
上記酸化防止剤(B)として、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及び上記アルキル化ジフェニルアミンの両方を併用する場合、両者の含有量比(質量基準)は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
上記グリース組成物は、基油としてのトリメリット酸と、増ちょう剤としてのジウレアと、導電性添加剤としての有機親和性フィロケイ酸塩とに加えて、特定のジフェニルアミン系酸化防止剤を特定量含有させることが重要であり、このような組成とすることによって、格別に酸化劣化しにくくなり、耐熱性が向上する。
【0046】
上記グリース組成物は、上記導電性添加剤(A)、上記酸化防止剤(B)以外に、本発明のグリース組成物の要求特性を損なわない範囲で、他の添加剤を含有していてもよい。
上記他の添加剤としては、例えば、防錆剤、極圧剤、油性剤、耐摩耗剤、染料、色相安定剤、増粘剤、構造安定剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤等が挙げられる。
上記グリース組成物は、カーボンブラックを含有しないことが好ましい。転がり軸受から漏洩してしまった際に、周辺部材を黒く汚染してしまうことを回避するためである。
【0047】
次に、上記グリース組成物の製造方法について説明する。
上記グリース組成物の製造は、例えば、最初に、基油及び増ちょう剤からなるベースグリースを調製し、その後、得られたベースグリースに導電性添加剤(A)、酸化防止剤(B)、及び必要に応じて含有させる任意の成分を投入し、自転・公転ミキサー等で撹拌して各成分を混合することによって行うことができる。
【0048】
この実施形態によれば、玉軸受1に封入されたグリースGを構成するグリース組成物として、基油としてのトリメリット酸エステル及び増ちょう剤としてのジウレアに加えて、上述した有機親和性フィロケイ酸塩と特定のジフェニルアミン系酸化防止剤とを含有するものを採用する。このようなグリース組成物を採用することにより、上記グリースGが封入された玉軸受1では、高速・高温条件下で使用した場合にも、長期間に亘って、電食の発生を抑制することができる。
また、上記グリースGを用いることで、玉軸受1の低トルク化を図ることができる。
【0049】
本発明は、上記の実施形態に制限されることなく、他の実施形態で実施することもできる。
本発明の実施形態に係る転がり軸受は、本発明の実施形態に係るグリース組成物からなるグリースが封入された玉軸受に限定されず、上記転がり軸受は、本発明の実施形態に係るグリース組成物からなるグリースが封入されたものであれば、転動体として玉以外のものが使用された、ころ軸受等、他の転がり軸受であってもよい。
【実施例0050】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
ここでは、複数のグリース組成物を調製し、各グリース組成物の特性を評価した。各グリース組成物の組成は、表1、2に示した。
【0051】
実施例/比較例で使用した添加剤は、下記の通りである。
導電性添加剤(A):
・有機親和性フィロケイ酸塩:ビックケミー社製 GARAMITE(登録商標) 7303
【0052】
酸化防止剤(B):
・4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン:大内新興化学工業社製、ノクラック(登録商標) CD
・アルキル化ジフェニルアミン:大内新興化学工業社製、ノクラック(登録商標) ODA
・2,6-di-tert-butyl-4-(4,6-bis(octylthio)-1,3,5-triazin-2-ylamino)phenol
・2-メルカプトメチルベンズイミダゾール
・2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩
【0053】
(ベースグリースAの調製)
ベースグリースAとして、基油としてのトリメリット酸トリエステルと、増ちょう剤としてのジウレアとを含有するグリース組成物を下記の工程を経て調製した。
図2は、ベースグリースAの調製工程を説明するための図である。
【0054】
(1)トリメリット酸トリエステルの1種であるトリメリット酸トリノルマルアルキル(C8,C10)(花王社製、(登録商標)トリメックス N-08NB)を基油とし、この基油を100℃に加熱しておく。
【0055】
(2)基油、1-アミノオクタン、シクロヘキシルアミン、及び、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を計量する。
このとき、1-アミノオクタンとシクロヘキシルアミンとのモル比は、1-アミノオクタン:シクロヘキシルアミン=7:3となるように計量する。
【0056】
(3)ステンレス容器Aに、半量の基油(100℃)とMDIとを投入し、100℃で30分間撹拌する。
(4)別のステンレス容器Bに、残りの半量の基油(100℃)と1-アミノオクタンとシクロヘキシルアミンとを投入し、100℃で30分間撹拌する。
上記工程(3)及び(4)を一次工程という。
【0057】
(5)ステンレス容器B内のアミン溶液を、ステンレス容器Aに滴下し、イソシアネート溶液に徐々に投入する。このとき、反応熱により液温は20℃程度昇温する。
(6)ステンレス容器B内のアミン溶液が、ステンレス容器A内に全量投入されたことを確認した後、170℃まで昇温する。
(7)加熱しながら撹拌し、30分間、温度を170℃に保持する。本工程(7)を二次工程という。
(8)加熱を止め、撹拌しながら自然放冷し、100℃まで冷却する。
(9)温度が100℃以下になったことを確認した後、撹拌を停止し、そのまま常温になるまで自然放冷する。
(10)三本ロールミルで均質化処理を実施する。このとき、処理条件は、
ロール間すき間:-50μm
ロール間圧力:1MPa
回転速度:200r/min
処理温度:25℃
とする。
このような工程(1)~(10)を経て、増ちょう剤が15質量%、基油が85質量%であるベースグリースAを調製した。
【0058】
生成したベースグリースAの増ちょう剤は、構造式(5)~(7)で表されるジウレアの混合物である。
【0059】
【化4】
【0060】
【化5】
【0061】
【化6】
【0062】
(ベースグリースBの調製)
基油として、トリメリット酸トリエステルに代えて、PAO8(INEOS Oligomers製、Durasyn(登録商標) 168 Polyalphaolefin、動粘度(40℃)45~49mm/s)を使用した以外は、ベースグリースAの調製方法と同様の方法で、ベースグリースBを調製した。
【0063】
(実施例1)
上記ベースグリース100質量部と、有機親和性フィロケイ酸塩5質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン1質量部とを下記の手法で混合してグリース組成物を調製した。
自転・公転ミキサーを使用し、回転数:2000rpm、時間:3分間の条件で導電性添加剤及び酸化防止剤をベースグリースに混合した。
【0064】
(実施例2)
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの配合量を、2質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0065】
(実施例3)
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの配合量を、3質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0066】
(実施例4)
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの配合量を、5質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0067】
(実施例5)
酸化防止剤として、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンに代えて、アルキル化ジフェニルアミン(ノクラック ODA)を使用した以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0068】
(実施例6)
アルキル化ジフェニルアミンの配合量を、2質量部に変更した以外は実施例5と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0069】
(実施例7)
アルキル化ジフェニルアミンの配合量を、3質量部に変更した以外は実施例5と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0070】
(実施例8)
アルキル化ジフェニルアミンの配合量を、5質量部に変更した以外は実施例5と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0071】
(実施例9)
上記ベースグリース100質量部と、有機親和性フィロケイ酸塩5質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン1質量部と、アルキル化ジフェニルアミン(ノクラック ODA)1質量部とを、実施例1と同様の手法で混合してグリース組成物を調製した。
【0072】
(比較例1)
上記ベースグリース100質量部と、有機親和性フィロケイ酸塩5質量部とを、実施例1と同様の手法で混合してグリース組成物を調製した。
【0073】
(比較例2)
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの配合量を、0.5質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0074】
(比較例3)
アルキル化ジフェニルアミンの配合量を、0.5質量部に変更した以外は実施例5と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0075】
(比較例4)
酸化防止剤として、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンに代えて、2,6-di-tert-butyl-4-(4,6-bis(octylthio)-1,3,5-triazin-2-ylamino)phenolを使用した以外は、実施例2と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0076】
(比較例5)
酸化防止剤として、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンに代えて、2-メルカプトメチルベンズイミダゾールを使用した以外は、実施例2と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0077】
(比較例6)
酸化防止剤として、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンに代えて、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩を使用した以外は、実施例2と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0078】
(比較例7)
ベースグリースAに代えて、ベースグリースBを使用した以外は、比較例1と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0079】
(比較例8)
ベースグリースAに代えて、ベースグリースBを使用した以外は、実施例2と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0080】
(比較例9)
ベースグリースAに代えて、ベースグリースBを使用した以外は、実施例6と同様にしてグリース組成物を調製した。
【0081】
(グリース組成物の評価)
実施例及び比較例で調製したグリース組成物を評価した。
ここでは、グリース組成物の酸化開始温度を測定した。結果を表1、2及び図3に示した。
上記酸化開始温度の測定は、ASTM E2009-08(2014)「Standard Test Methods for Oxidation Onset Temperature of Hydrocarbons by Differential Scanning Calorimetry」に準拠して実施した。
このとき、測定条件は、下記の条件とした。
・昇温速度:10℃/min
・温度範囲:30~300℃
・酸素圧力:3.5MPa
・酸素流量:100mL/min
・試料量:約2mg
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表1、2及び図3に示した通り、本発明の実施形態に係るグリース組成物は、基油がトリメリット酸であり、特定のジフェニルアミン系酸化防止剤を特定量含有するため、酸化開示温度が格別高く、耐熱性に優れることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0085】
1:玉軸受、2:内輪、3:外輪、4:玉、5:保持器、6:シール、7:領域、100:回転式レオメータ、G:グリース
図1
図2
図3