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特開2023-98188カーテンウォール用耐火ボード断熱構造、及び合成耐火被覆構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098188
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】カーテンウォール用耐火ボード断熱構造、及び合成耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20230703BHJP
   E04B 2/96 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E04B1/94 L
E04B2/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214792
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 修
(72)【発明者】
【氏名】伴野 綱亮
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA04
2E001GA12
2E001GA29
2E001HA03
2E001HA21
2E001HA32
2E001HA34
2E001HF12
2E002NA01
2E002NB02
2E002PA01
2E002QA04
2E002QC01
2E002RB03
2E002WA06
(57)【要約】
【課題】施工性を向上しつつ、カーテンウォールに設けられる耐火ボードの断熱性能を向上することを目的とする。
【解決手段】カーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、鉄骨梁10の室外側に配置されるカーテンウォール50と、カーテンウォール50に設けられる耐火ボード70と、耐火ボード70の室内側の内面70Aに取り付けられ、当該内面70Aを耐火ボード70の横幅方向の一端側から他端側に亘って被覆する巻付け耐火被覆材100と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の室外側に配置されるカーテンウォールと、
前記カーテンウォールに設けられる耐火ボードと、
前記耐火ボードの室内側の内面に取り付けられ、該内面を前記耐火ボードの横幅方向の一端側から他端側に亘って被覆する巻付け耐火被覆材と、
を備えるカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。
【請求項2】
前記巻付け耐火被覆材は、前記耐火ボードにビス留めされる、
請求項1に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。
【請求項3】
前記巻付け耐火被覆材の室内側の内面に取り付けられ、該内面を被覆する遮湿シートを備える、
請求項1又は請求項2に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。
【請求項4】
前記耐火ボードの下端部を保持する下端フック部と、前記下端フック部から前記耐火ボードにおける前記躯体側の前記内面に沿って上方へ延出するベース部と、を有し、前記躯体に支持される支持部材を備え、
前記巻付け耐火被覆材は、前記ベース部の上から前記耐火ボードの前記内面を被覆する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。
【請求項5】
前記カーテンウォールは、前記耐火ボードの横幅方向の側端部に沿って配置される方立を有し、
前記巻付け耐火被覆材における前記方立側の端部は、前記方立側へ延出し、該方立の室内側の内側面を覆う、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。
【請求項6】
前記カーテンウォールは、前記耐火ボードの横幅方向の側端部に沿って配置される方立を有し、
前記巻付け耐火被覆材の前記方立側の端部には、該端部に重ねられた状態でビス留めされるとともに、前記方立側へ延出し、該方立の室内側の内側面を覆う方立用巻付け耐火被覆材が設けられる、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。
【請求項7】
前記カーテンウォール及び前記巻付け耐火被覆材は、前記方立の両側にそれぞれ配置され、
両側の前記巻付け耐火被覆材の前記端部、又は両側の前記方立用巻付け耐火被覆材の端部は、前記方立の室内側で相じゃくりで組み合わされる、
請求項5又は請求項6に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。
【請求項8】
前記耐火ボードの室外側の外面を覆うとともに、該耐火ボードから下方へ延出する仕上げ材を備え、
前記巻付け耐火被覆材は、前記耐火ボードの前記内面から下方へ延出し、前記仕上げ材の室内側の内面を被覆する、
請求項1~請求項7の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造と、
前記躯体を構成する鉄骨梁における前記耐火ボードと反対側から該鉄骨梁の下を通って前記耐火ボード側に張り出すとともに、張り出した先端側が前記巻付け耐火被覆材に圧着接合される梁側巻付け耐火被覆材と、
を備える合成耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォール用耐火ボード断熱構造、及び合成耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カーテンウォールに耐火ボードを設ける耐火構造が知られている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-173379号公報
【特許文献2】特開2011-202353号公報
【特許文献3】特開2010-001646号公報
【特許文献4】特開2006-291621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カーテンウォールに設けられる耐火ボードに断熱性能が求められる場合がある。この場合、カーテンウォール及び耐火ボードを建て方した後、現場にて、耐火ボードの室内側の内面に吹付けロックウールを吹き付けることが考えられる。
【0005】
しかしながら、吹付けロックウールの施工には、手間がかかる。また、例えば、耐火ボードと、当該耐火ボードの室内側に設置された梁との間の施工スペースが狭い場合、吹付けロックウールの施工が難しい。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、施工性を向上しつつ、カーテンウォールに設けられる耐火ボードの断熱性能を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、躯体の室外側に配置されるカーテンウォールと、前記カーテンウォールに設けられる耐火ボードと、前記耐火ボードの室内側の内面に取り付けられ、該内面を前記耐火ボードの横幅方向の一端側から他端側に亘って被覆する巻付け耐火被覆材と、を備える。
【0008】
請求項1に係るカーテンウォール用耐火ボード断熱構造によれば、カーテンウォールは、躯体の室外側に配置される。このカーテンウォールには、耐火ボードが設けられる。耐火ボードの室内側の内面には、巻付け耐火被覆材が取り付けられる。
【0009】
ここで、巻付け耐火被覆材は、耐火性能だけでなく、断熱性能も有する。この巻付け耐火被覆材によって耐火ボードの室内側の内面を、当該耐火ボードの横幅方向の一端側から他端側に亘って被覆することにより、耐火ボードの断熱性能が高められる。
【0010】
また、巻付け耐火被覆材は、カーテンウォール及び耐火ボードの建て方前に、耐火ボードの室内側の内面に取り付けることができる。したがって、耐火ボードと、当該耐火ボードの室内側に設置された梁との間の施工スペースの有無に関わらず、耐火ボードの室内側の内面に取り付けることができる。
【0011】
このように本発明では、施工性を向上しつつ、カーテンウォールに設けられる耐火ボードの断熱性能を向上することができる。
【0012】
請求項2に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、請求項1に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造において、前記巻付け耐火被覆材は、前記耐火ボードにビス留めされる。
【0013】
請求項2に係るカーテンウォール用耐火ボード断熱構造によれば、巻付け耐火被覆材は、耐火ボードにビス留めされる。したがって、施工性が向上する。
【0014】
また、ビスは、接着剤等と比較して保持力が高く、また、加熱されても保持力が低下し難い。したがって、巻付け耐火被覆材を耐火ボードにビス留めすることにより、火災時における巻付け耐火被覆材の脱落等が抑制される。
【0015】
請求項3に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、請求項1又は請求項2に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造において、前記巻付け耐火被覆材の室内側の内面に取り付けられ、該内面を被覆する遮湿シートを備える。
【0016】
請求項3に係るカーテンウォール用耐火ボード断熱構造によれば、巻付け耐火被覆材の室内側の内面には、遮湿シートが取り付けられる。この遮湿シートによって、耐火ボードの室内側の内面を被覆することにより、耐火ボードの断熱性能がさらに高められる。
【0017】
また、遮湿シートは、接着剤等であらかじめ巻付け耐火被覆材に張り付けた状態で、ビス等によって、巻付け耐火被覆材と共に耐火ボードに取り付けることができる。したがって、施工性が向上する。
【0018】
請求項4に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造。において、前記耐火ボードの下端部を保持する下端フック部と、前記下端フック部から前記耐火ボードにおける前記躯体側の前記内面に沿って上方へ延出するベース部と、を有し、前記躯体に支持される支持部材を備え、前記巻付け耐火被覆材は、前記ベース部の上から前記耐火ボードの前記内面を被覆する。
【0019】
請求項4に係るカーテンウォール用耐火ボード断熱構造によれば、支持部材は、耐火ボードの下端部を保持する下端フック部と、下端フック部から耐火ボードにおける躯体側の内面に沿って上方へ延出するベース部と、を有し、躯体に支持される。この支持部材によって耐火ボードを支持することにより、火災時に、仮にカーテンウォールが溶融焼失したとしても、耐火ボードの脱落等が抑制される。
【0020】
さらに、巻付け耐火被覆材は、ベース部の上から耐火ボードの内面を被覆する。これにより、火災時におけるベース部の温度上昇が抑制されるため、火災時における耐火ボードの脱落等がさらに抑制される。
【0021】
請求項5に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造において、前記カーテンウォールは、前記耐火ボードの横幅方向の側端部に沿って配置される方立を有し、前記巻付け耐火被覆材における前記方立側の端部は、前記方立側へ延出し、該方立の室内側の内側面を覆う。
【0022】
請求項5に係るカーテンウォール用耐火ボード断熱構造によれば、カーテンウォールは、方立を有する。方立は、耐火ボードの横幅方向の側端部に沿って配置される。また、巻付け耐火被覆材における方立側の端部は、方立側へ延出し、当該方立の室内側の内側面を覆う。
【0023】
ここで、例えば、火災時に、方立が溶融焼失して空間が形成されると、当該空間を介して耐火ボードの室外側から室内側へ火災熱が侵入する可能性がある。
【0024】
これに対して本発明では、前述したように、巻付け耐火被覆材における方立側の端部によって方立の室内側の内側面が覆われる。これにより、火災時に、方立が溶融焼失して空間が形成されても、当該空間が巻付け耐火被覆材における方立側の端部によって遮蔽(遮熱)される。したがって、耐火性能が高められる。
【0025】
請求項6に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造において、前記カーテンウォールは、前記耐火ボードの横幅方向の側端部に沿って配置される方立を有し、前記巻付け耐火被覆材の前記方立側の端部には、該端部に重ねられた状態でビス留めされるとともに、前記方立側へ延出し、該方立の室内側の内側面を覆う方立用巻付け耐火被覆材が設けられる。
【0026】
請求項6に係るカーテンウォール用耐火ボード断熱構造によれば、カーテンウォールは、方立を有する。方立は、耐火ボードの横幅方向の側端部に沿って配置される。また、巻付け耐火被覆材の方立側の端部には、方立用巻付け耐火被覆材が設けられる。方立用巻付け耐火被覆材は、巻付け耐火被覆材の方立側の端部に重ねられた状態でビス留めされるとともに、方立側へ延出し、当該方立の室内側の内側面を覆う。
【0027】
ここで、例えば、火災時に、方立が溶融焼失して空間が形成されると、当該空間を介して耐火ボードの室外側から室内側へ火災熱が侵入する可能性がある。
【0028】
これに対して本発明では、前述したように、方立用巻付け耐火被覆材によって方立の室内側の内側面が覆われる。これにより、火災時に、方立が溶融焼失して空間が形成されても、当該空間が方立用巻付け耐火被覆材によって遮蔽(遮熱)される。したがって、耐火性能が高められる。
【0029】
また、巻付け耐火被覆材の方立側の端部に方立用巻付け耐火被覆材を設けることにより、例えば、方立の内側面が、耐火ボードの外面よりも室内側で、かつ、耐火ボードの内面よりも室外側に位置する場合であっても、方立用巻付け耐火被覆材によって方立の内側面を覆うことができる。
【0030】
請求項7に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、請求項5又は請求項6に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造において、前記カーテンウォール及び前記巻付け耐火被覆材は、前記方立の両側にそれぞれ配置され、両側の前記巻付け耐火被覆材の前記端部、又は両側の前記方立用巻付け耐火被覆材の端部は、前記方立の室内側で相じゃくりで組み合わされる。
【0031】
請求項7に係るカーテンウォール用耐火ボード断熱構造によれば、カーテンウォール及び巻付け耐火被覆材は、方立の両側にそれぞれ配置される。また、両側の巻付け耐火被覆材の端部、又は両側の方立用巻付け耐火被覆材の端部は、方立の室内側で相じゃくりで組み合わされる。
【0032】
これにより、火災時に、方立が溶融焼失して空間が形成された場合、両側の巻付け耐火被覆材の端部の目地、又は両側の方立用巻付け耐火被覆材の端部の目地から、室内側に侵入する火災熱が抑制される。したがって、耐火性能がさらに高められる。
【0033】
請求項8に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造は、請求項1~請求項7の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造において、前記耐火ボードの室外側の外面を覆うとともに、該耐火ボードから下方へ延出する仕上げ材を備え、前記巻付け耐火被覆材は、前記耐火ボードの前記内面から下方へ延出し、前記仕上げ材の室内側の内面を被覆する。
【0034】
請求項8に係るカーテンウォール用耐火ボード断熱構造によれば、仕上げ材は、耐火ボードの室外側の外面を覆う。これにより、カーテンウォールの意匠性が向上する。
【0035】
また、仕上げ材は、耐火ボードから下方へ延出する。一方、巻付け耐火被覆材は、耐火ボードの室内側の内面から下方へ延出し、仕上げ材の室内側の内面を被覆する。つまり、仕上げ材は、巻付け耐火被覆材の下地材としても機能する。
【0036】
これにより、例えば、耐火ボードの高さを上階延焼防止のための必要な高さに抑えつつ、耐火ボードの内面から下方へ延出する巻付け耐火被覆材によって、耐火ボードの下方の断熱性能を確保することができる。したがって、耐火ボードの材料コストを削減することができる。
【0037】
請求項9に記載の合成耐火被覆構造は、請求項1~請求項8の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード断熱構造と、前記躯体を構成する鉄骨梁における前記耐火ボードと反対側から該鉄骨梁の下を通って前記耐火ボード側に張り出すとともに、張り出した先端側が前記巻付け耐火被覆材に圧着接合される梁側巻付け耐火被覆材と、を備える。
【0038】
請求項9に係る合成耐火被覆構造によれば、梁側巻付け耐火被覆材は、鉄骨梁における耐火ボードと反対側から当該鉄骨梁の下を通って耐火ボード側に張り出すとともに、張り出した先端側が巻付け耐火被覆材に圧着接合される。
【0039】
これにより、本発明では、例えば、梁側巻付け耐火被覆材の先端側を耐火ボードにビスで固定する場合と比較して、施工性が向上するとともに、耐火ボードの破損が抑制される。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、施工性を向上しつつ、カーテンウォールに設けられる耐火ボードの断熱性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】一実施形態に係る耐火ボード支持構造が適用された鉄骨梁、及びカーテンウォール用の耐火ボードを示す断面図である。
図2図1の一部拡大断面図である。
図3図1に示されるカーテンウォールユニット、及び耐火ボードを室内側から見た立面図である。
図4図3の4-4線断面図である。
図5図1に示されるカーテンウォールユニット、及び耐火ボードを室内側から見た立面図である。
図6】左右に隣り合う方立、耐火ボード、及び巻付け耐火被覆材を示す平断面図である。
図7】(A)は、一実施形態に係る耐火ボード支持構造の変形例が適用された耐火ボード、及び支持部材を示す立面図であり、(B)は、図7(A)の7B-7B線断面図である。
図8】一実施形態に係る耐火ボード支持構造の変形例が適用された左右に隣り合う方立、耐火ボード、及び巻付け耐火被覆材を示す平断面図である。
図9】一実施形態に係る耐火ボード支持構造の変形例が適用された左右に隣り合う方立、耐火ボード、及び巻付け耐火被覆材を示す平断面図である。
図10】一実施形態に係る耐火ボード支持構造の変形例が適用された左右に隣り合う方立、耐火ボード、及び巻付け耐火被覆材を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0043】
(耐火ボード支持構造)
図1には、本実施形態に係る耐火ボード支持構造が適用された鉄骨梁10、及びカーテンウォール50用の耐火ボード70が示されている。
【0044】
(鉄骨梁)
図1、及び図2に示されるように、鉄骨梁10は、H形鋼で形成されている。この鉄骨梁10は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部12、及び下側フランジ部14と、上側フランジ部12、及び下側フランジ部14を接続するウェブ部16とを有している。
【0045】
鉄骨梁10は、スラブ40の端部に沿って配置され、当該スラブ40の端部を支持している。スラブ40は、鉄筋コンクリート造とされており、複数階からなる構造物の所定階の床を形成している。これらの鉄骨梁10、及びスラブ40の室外側(矢印OUT側)には、カーテンウォール50、及び耐火ボード70が設置されている。なお、鉄骨梁10、及びスラブ40は、躯体の一例である。
【0046】
(カーテンウォール)
カーテンウォール50は、スラブ40の室外側に、構造物の上下階に亘って配置されており、構造物の外壁(外装)を構成している。このカーテンウォール50は、上下左右に配列された複数のカーテンウォールユニット50Uを組み付けることにより、壁状に形成されている。
【0047】
図3に示されるように、カーテンウォールユニット50Uは、一対の方立52と、一対の方立52を連結する複数(本実施形態では3本)の無目54と、方立52、及び無目54によって形成された枠内に設けられた窓ガラス56(図1参照)とを有している。方立52、及び無目54は、例えば、アルミ等によって形成されている。
【0048】
カーテンウォールユニット50Uは、方立側ファスナ60、耐火ボード70、仕上げ材72、一対の支持部材80、横繋ぎ材88、巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104を有している。これらの方立側ファスナ60、耐火ボード70、仕上げ材72、一対の支持部材80、横繋ぎ材88、巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104は、例えば、カーテンウォールユニット50Uの建て方前に、カーテンウォールユニット50Uに取り付けられている。
【0049】
なお、図3では、後述する巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104の図示が省略されている。
【0050】
(躯体側ファスナ、方立側ファスナ)
図2に示されるように、方立52は、躯体側ファスナ20、及び方立側ファスナ60を介して鉄骨梁10に支持されている。躯体側ファスナ20は、側面視にてL字形状の鋼板で形成されている。また、躯体側ファスナ20は、リブ21で補強されている。この躯体側ファスナ20の横フランジ部22は、鉄骨梁10に設けられたブラケット18の上面にボルト26、及びナット28によって接合されている。
【0051】
なお、ブラケット18は、スラブ40の端部に形成された切欠き42内に配置されている。また、ブラケット18を省略し、鉄骨梁10に躯体側ファスナ20を固定することも可能である。
【0052】
躯体側ファスナ20の縦フランジ部24は、方立52の室内側の内側面52Sと対向して配置されている。この縦フランジ部24には、方立側ファスナ60がボルト30、及びナット32によって接合されている。
【0053】
なお、縦フランジ部24には、隣り合う一対のカーテンウォールユニット50Uの方立52(図6参照)に設けられた一対の方立側ファスナ60が、ボルト30、及びナット32によって接合される。
【0054】
方立側ファスナ60は、方立52の室内側の内側面52Sにボルト64によって固定されている。また、方立側ファスナ60の上下方向の中間部は、室内側へ凸状に突出している。この方立側ファスナ60の中間部には、前述したナット32を回転不能に収納する収納室62が形成されている。このナット32に前述したボルト30を締め込むことにより、方立側ファスナ60が躯体側ファスナ20に接合されている。
【0055】
なお、方立側ファスナ60には、後述する支持部材80の取付部86が、ボルト30、及びナット32によって接合(共締め)されている。
【0056】
縦フランジ部24に形成されたボルト30用のボルト孔(図示省略)は、上下方向に延びる長孔とされている。また、方立側ファスナ60には、躯体側ファスナ20の縦フランジ部24の上端部に当接し、躯体側ファスナ20に対する方立側ファスナ60の高さを調整する高さ調整用ボルト66が設けられている。
【0057】
(耐火ボード)
図1に示されるように、耐火ボード(カーテンウォール用耐火ボード)70は、カーテンウォールユニット50Uのスパンドレル部に設けられている。この耐火ボード70は、例えば、繊維混入けい酸カルシウム板や、石膏ボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード、アルカリアースシリケートウールボード等によって形成されている。
【0058】
耐火ボード70は、カーテンウォールユニット50Uの室内側に、窓ガラス56と対向した状態で取り付けられている。この耐火ボード70の外周部は、方立52、及び無目54に沿って設けられた枠状のレール58等によって保持されている。
【0059】
耐火ボード70は、スラブ40の室外側に、構造物の上下階に亘って配置されるとともに、スラブ40の端部との間に空間を空けて配置されている。この空間には、ロックウール等の層間塞ぎ材44が設けられている。これにより、火災時に、耐火ボード70とスラブ40の端部との間の空間から、スラブ40の上階に熱気や炎が流入することが抑制されている。
【0060】
(仕上げ材)
耐火ボード70の室外側には、仕上げ材72が設けられている。仕上げ材72は、例えば、アルミ複合板によって形成されており、方立52、及び無目54に取り付けられている。この仕上げ材72は、耐火ボード70の室外側の外面70Bを全面に亘って覆っている。これにより、カーテンウォールユニット50Uの室外側から、耐火ボード70が見えなくなっている。
【0061】
仕上げ材72は、耐火ボード70の下端部よりも下方へ延出している。この仕上げ材72の下部における室内側の内面は、後述する巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104によって被覆されている。なお、仕上げ材72は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0062】
(支持部材)
図3に示されるように、一対の支持部材(支持金物)80は、鋼板等の金属板によって形成されており、耐火ボード70の横幅方向に間隔を空けて配置されている。各支持部材80は、ベース部82と、下端フック部84と、取付部86とを有している。
【0063】
ベース部82は、帯状に形成されており、耐火ボード70の高さ方向(上下方向)に沿って配置されている。また、ベース部82は、耐火ボード70の室内側(鉄骨梁10側)の内面70Aに沿って配置されている。このベース部82は、複数のビス90によって耐火ボード70にビス留めされている。
【0064】
なお、ビス90の配置は、適宜変更可能である。また、ベース部82は、少なくとも1つのビス90によって耐火ボード70に固定することができる。さらに、ビス90は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。また、後述するように支持部材80は巻付け耐火被覆材100等で耐火被覆し、火災時の強度低下を抑えることにより、耐火ボード70の支持能力を高めることができる。
【0065】
また、例えば、図4に示されるように、下端フック部84の下側にアルミ製の無目54が設置される場合、下端フック部84を耐火被覆できないことがある。下端フック部84が耐火被覆の無い状態で加熱されると変形や強度低下により耐火ボード70を支持することが難しくなり、耐火ボード70が脱落する恐れがある。この対策として、ビス90でベース部82と耐火ボード70を留め付けることで耐火ボード70の自重をベース部82で支持することが可能となるため、耐火ボード70の脱落が抑制される。
【0066】
図4に示されるように、ベース部82の下端部には、耐火ボード70の下端部を保持する下端フック部84が設けられている。下端フック部84は、側面視にて、L字形状に屈曲されており、その内側に耐火ボード70の下端部が挿入されている。
【0067】
下端フック部84は、ベース部82の下端部から耐火ボード70の下面に沿って室外側へ延出する延出部84Aと、延出部84Aの先端部から耐火ボード70の室外側の外面70Bに沿って上方へ延出する折返し部84Bとを有している。
【0068】
なお、ベース部82の上下方向の長さは、例えば、耐火ボード70の高さ(上下方向の長さ)の1/2以上が好ましい。また、折返し部84Bの上下方向の長さは、耐火ボード70の厚み以上が好ましい。
【0069】
下端フック部84の延出部84Aの下には、カーテンウォールユニット50Uの無目54が配置されている。この無目54は、下端フック部84を介して耐火ボード70の下端部を支持している。
【0070】
図3に示されるように、ベース部82の上端部には、取付部86が設けられている。取付部86は、ベース部82の上端部から耐火ボード70の内面70Aに沿って方立52側へ延出し、方立側ファスナ60の収納室62(図2参照)に挿入されている。
【0071】
図2に示されるように、取付部86は、ボルト30、及びナット32によって、方立側ファスナ60と共に躯体側ファスナ20に接合(共締め)されている。これにより、支持部材80が、方立側ファスナ60、及び躯体側ファスナ20を介して鉄骨梁10に支持されている。
【0072】
なお、取付部86には、耐火ボード70の内面70Aと収納室62との段差を吸収する図示しない段部が形成されている。また、取付部86は、ボルト30、及びナット32、方立側ファスナ60と共に躯体側ファスナ20に共締めせずに、別のボルト、及びナットによって躯体側ファスナ20に接合しても良い。さらに、支持部材80は、躯体側ファスナ20とは別のファスナを介して、鉄骨梁10やスラブ40等の躯体に支持させても良い。
【0073】
図3に示されるように、一対の支持部材80のベース部82同士は、横繋ぎ材88によって連結されている。横繋ぎ材88は、鋼板等の金属板によって形成されており、耐火ボード70の内面70Aに沿って配置されている。この横繋ぎ材88によって、一対の支持部材80のベース部82同士を連結することにより、一対の支持部材80の剛性が高められている。
【0074】
なお、横繋ぎ材88は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0075】
(巻付け耐火被覆材)
図5に示されるように、耐火ボード70の内面70Aは、巻付け耐火被覆材100によって被覆されている。巻付け耐火被覆材100は、シート状に成形されたロックウールや、セラミックウール、アルカリアースシリケートウール等によって形成されている。この巻付け耐火被覆材100は、耐火性能、及び断熱性能を有している。また、巻付け耐火被覆材100に高耐熱ロックウールを用いることで耐火性能をさらに高めることが出来る。
【0076】
巻付け耐火被覆材100は、耐火ボード70の横幅方向の一端側から他端側に亘っており、耐火ボード70の内面70Aを全面に亘って被覆している。これにより、耐火ボード70の耐火性能、及び断熱性能が高められている。
【0077】
また、巻付け耐火被覆材100は、支持部材80のベース部82、及びビス90(図3参照)の上から、耐火ボード70の内面70Aを耐火被覆している。つまり、巻付け耐火被覆材100は、支持部材80のベース部82、及びビス90を耐火被覆している。
【0078】
なお、本実施形態では、図4に示されるように、下端フック部84の延出部84A、及び折返し部84Bの耐火被覆が省略されているが、下端フック部84の延出部84A、及び折返し部84Bを耐火被覆することも可能である。
【0079】
図5に示されるように、巻付け耐火被覆材100の横幅方向の端部100Eは、耐火ボード70から方立52側へ延出し、方立52の内側面52Sを覆っている。なお、巻付け耐火被覆材100の横幅方向の端部100Eには、方立側ファスナ60を露出させる切欠き102が形成されている。この方立側ファスナ60は、図示しない耐火被覆材によって耐火被覆される。
【0080】
図6に示されるように、左右に隣り合うカーテンウォールユニット50Uにおける方立52は、互いに組み付けられる。この際、隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100E同士が接触又は圧接され、その間に目地Mが形成される。これにより、火災時に、方立52が溶融焼失し、隣り合う耐火ボード70の間に空間が形成されたとしても、当該空間が巻付け耐火被覆材100の端部100Eによって遮蔽される。
【0081】
なお、本実施形態では、耐火ボード70の内面70Aと方立52の内側面52Sとが、略面一とされているが、耐火ボード70の内面70Aと方立52の内側面52Sとの間には段差があっても良い。また、方立52は、巻付け耐火被覆材100に限らず、巻付け耐火被覆材100とは別の耐火被覆材、例えば吹付けロックウール等の吹付け系耐火被覆で耐火被覆しても良い。
【0082】
図1に示されるように、巻付け耐火被覆材100は、耐火ボード70の内面70Aから下方へ延出し、仕上げ材の下部における室内側の内面を被覆している。これにより、仕上げ材72の断熱性能が高められている。また、巻付け耐火被覆材100は、支持部材80が火災時に加熱されて耐火ボード70が脱落するのを防ぐ役割も果たしている。
【0083】
(遮湿シート)
図1、及び図5に示されるように、巻付け耐火被覆材100の室内側の内面には、当該内面を被覆する遮湿シート104が取り付けられている。遮湿シート104は、例えば、遮湿性を有するアルミシート等によって形成されている。この遮湿シート104によって、巻付け耐火被覆材100の内面を被覆することにより、巻付け耐火被覆材100、及び仕上げ材72の断熱性能が高められている。
【0084】
巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104は、例えば、カーテンウォールユニット50Uの建て方前に、複数のビス106によって耐火ボード70にビス留めされる。これらのビス106のピッチは、例えば、300mm以下とされる。また、遮湿シート104は、接着剤等であらかじめ巻付け耐火被覆材100に張り付けておき、巻付け耐火被覆材100と一緒に耐火ボード70にビス留め固定される。巻付け耐火被覆材100の切断面については、巻付け耐火被覆材100を耐火ボード70にビス留めした後に遮湿シート104を隙間なく貼り付けることで遮湿効果を高めることが出来る。
【0085】
なお、遮湿シート104は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0086】
(合成耐火被覆構造)
図1、及び図2に示されるように、鉄骨梁10は、耐火ボード70、及び梁側巻付け耐火被覆材110の合成耐火被覆構造によって耐火被覆されている。具体的には、耐火ボード70は、鉄骨梁10の室外側(矢印OUT側)の側方に配置され、鉄骨梁10の室外側の側面と対向している。この耐火ボード70によって、鉄骨梁10の室外側の側面が耐火被覆されている。
【0087】
梁側巻付け耐火被覆材110は、シート状に成形されたロックウールや、セラミックウール、アルカリアースシリケートウール等によって形成されている。また、ロックウールには、より高い耐火性能を確保するため、高耐熱ロックウールを用いることが望ましい。この梁側巻付け耐火被覆材110は、鉄骨梁10における耐火ボード70と反対側(矢印IN側)の側面、及び鉄骨梁10の下面を耐火被覆するとともに、鉄骨梁10の下を通って耐火ボード70側に張り出している。
【0088】
具体的には、梁側巻付け耐火被覆材110は、鉄骨梁10の材軸方向から見て、全体として、L字形状に屈曲されている。この梁側巻付け耐火被覆材110は、鉄骨梁10の室内側の側面を耐火被覆する側面被覆部112と、鉄骨梁10の下面を耐火被覆する下面被覆部114とを有している。
【0089】
図2に示されるように、側面被覆部112は、鉄骨梁10の室内側の側面を覆うように、鉄骨梁10の梁成方向に沿って配置されている。また、側面被覆部112は、鉄骨梁10の上側フランジ部12と下側フランジ部14とに亘って配置されており、その上端側が溶接固定ピン116によって上側フランジ部12の端部に取り付けられている。
【0090】
下面被覆部114は、鉄骨梁10の下側フランジ部14の下面を覆うように、鉄骨梁10の梁幅方向に沿って配置されている。また、下面被覆部114は、側面被覆部112の下端部から下側フランジ部14の下面に沿って耐火ボード70側へ延出している。この下面被覆部114は、溶接固定ピン116によって、下側フランジ部14の下面に取り付けられている。
【0091】
下面被覆部114の先端側114Tは、遮湿シート104、及び巻付け耐火被覆材100の上から耐火ボード70の内面70Aに重ねられている。また、下面被覆部114の先端側114Tは、遮湿シート104及び巻付け耐火被覆材100に圧着接合されている。この下面被覆部114によって、耐火ボード70と鉄骨梁10との間の空間が塞がれている。
【0092】
具体的には、梁側巻付け耐火被覆材110(下面被覆部114)の先端側114T、及び巻付け耐火被覆材100は、弾性を有している。これらの梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114T、及び巻付け耐火被覆材100は、互いに厚み方向に圧縮した状態で圧着されている。そして、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114T、及び巻付け耐火被覆材100の弾性力(復元力、反発力)と摩擦力によって、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114T、及び巻付け耐火被覆材100の圧着状態が保持されている。
【0093】
なお、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114T、及び巻付け耐火被覆材100の圧着力は、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114T、及び巻付け耐火被覆材100の厚みや、溶接固定ピン116から巻付け耐火被覆材100までの距離G、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114T、及び巻付け耐火被覆材100の上下方向の接触長さLによって適宜調整される。
【0094】
本実施形態では、一例として、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114Tの厚みが65mm以上、巻付け耐火被覆材100の厚みが、40mm以上とされる。また、溶接固定ピン116から巻付け耐火被覆材100までの距離Gが、170mm以上とされる。さらに、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114T、及び巻付け耐火被覆材100の上下方向の接触長さLが、155mm以上とされる。
【0095】
上記諸元にて、耐火実験を実施した結果、2時間の加熱に対し、巻付け耐火被覆材100及び梁側巻付け耐火被覆材110の圧着接合力が保持され、鉄骨梁10の温度上昇を効果的に抑制できることが確認された。
【0096】
なお、巻付け耐火被覆材100(下面被覆部114)の先端側114Tは、例えば、ビス等によって耐火ボード70に固定しても良い。また、耐火ボード70の室内側に鋼製プレートを設置し、これに溶接固定ピンで巻付け耐火被覆材100の先端側114Tを固定しても良い。
【0097】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0098】
(耐火ボード支持構造)
図1、及び図2に示されるように、本実施形態によれば、鉄骨梁10の室外側に、カーテンウォールユニット50U、及びカーテンウォールユニット50Uのスパンドレル部に取り付けられた耐火ボード70が配置されている。
【0099】
耐火ボード70は、カーテンウォールユニット50U、方立側ファスナ60、及び躯体側ファスナ20を介して鉄骨梁10に支持されるとともに、一対の支持部材80、方立側ファスナ60、及び躯体側ファスナ20を介して鉄骨梁10に支持されている。
【0100】
図4に示されるように、支持部材80は、下端フック部84、及びベース部82を有している。下端フック部84の内側には、耐火ボード70の下端部が挿入されている。この下端フック部84によって耐火ボード70の下端部が下から支持されるとともに、下端フック部84、及びベース部82によって、耐火ボード70の下端部が面外方向の両側から保持されている。
【0101】
これにより、火災時に、カーテンウォールユニット50Uの方立52等が溶融焼失したとしても、耐火ボード70が一対の支持部材80、方立側ファスナ60、及び躯体側ファスナ20を介して鉄骨梁10に支持される。したがって、火災時における耐火ボード70の脱落が抑制される。
【0102】
また、図6に示されるように、カーテンウォールユニット50Uの方立52の内側面52Sは、巻付け耐火被覆材100の横幅方向の端部100Eによって覆われている。そのため、火災時に、カーテンウォールユニット50Uの方立52等が溶融焼失し、隣り合う耐火ボード70の間に空間が形成されたとしても、当該空間が巻付け耐火被覆材100の端部100Eによって遮蔽される。したがって、隣り合う耐火ボード70の間に形成された空間から、室内側へ侵入する火災熱がされるため、鉄骨梁10の耐火性能が向上する。
【0103】
また、図4に示されるように、支持部材80のベース部82は、下端フック部84から耐火ボード70における鉄骨梁10側の内面に沿って上方へ延出する。このベース部82によって、耐火ボード70の鉄骨梁10側への傾き等がさらに抑制される。したがって、火災時における耐火ボード70の脱落が抑制される。
【0104】
さらに、ベース部82は、複数のビス90によって耐火ボード70にビス留めされている。ここで、ベース部82に耐火ボード70がビス留めされていない場合、火災時に、下端フック部84が熱劣化すると、耐火ボード70の荷重によって下端フック部84が下方へ変形し、耐火ボード70が脱落する可能性がある。
【0105】
これに対して本実施形態では、前述したように、ベース部82が耐火ボード70にビス留めされており、耐火ボード70が複数のビス90を介してベース部82に支持されている。これにより、耐火ボード70から下端フック部84に作用する荷重が低減される。したがって、火災時に、下端フック部84が熱劣化しても、下端フック部84の下方への変形が抑制される。
【0106】
また、前述したように、下端フック部84、及びベース部82によって、耐火ボード70における下端部の面外方向の移動を拘束することにより、耐火ボード70とビス90との接合部に発生する応力が緩和される。したがって、耐火ボード70からビス90が外れることが抑制される。
【0107】
さらに、ビス90は、接着剤等と比較して保持力が高く、また、加熱されても保持力が低下し難い。したがって、火災時における耐火ボード70の脱落がさらに抑制される。
【0108】
また、支持部材80は、耐火ボード70の下部側に取り付けられ、耐火ボード70の上部側には取り付けられないため、耐火ボード70に容易に取り付けることができる。したがって、耐火ボード70の施工性が向上する。
【0109】
また、本実施形態では、支持部材80のベース部82が、カーテンウォールユニット50Uの建て方前に、耐火ボード70にビス留めされている。そのため、本実施形態では、カーテンウォールユニット50Uの建て方後に、耐火ボード70にベース部82をビス留めする場合と比較して、施工し易い状態で、耐火ボード70にベース部82をビス留めすることができる。したがって、耐火ボード70の破損が抑制される。
【0110】
また、カーテンウォールユニット50Uの建て方後に、耐火ボード70が破損すると、耐火ボード70の交換に手間がかかる。これに対して本実施形態では、カーテンウォールユニット50Uの建て方前に、耐火ボード70にベース部82をビス留めすることにより、仮に耐火ボード70が破損したとしても、耐火ボード70を容易に交換することができる。したがって、耐火ボード70の施工性が向上する。
【0111】
さらに、支持部材80の取付部86は、カーテンウォールユニット50Uの建て方前に、方立側ファスナ60の収納室62に挿入されている。この状態で、カーテンウォールユニット50Uが建て方される。そして、方立側ファスナ60を躯体側ファスナ20に接合する際に、ボルト30、及びナット32によって、方立側ファスナ60、及び支持部材80の取付部86を躯体側ファスナ20に共締めする。
【0112】
これにより、カーテンウォールユニット50U、及び支持部材80が、方立側ファスナ60、及び躯体側ファスナ20を介して鉄骨梁10に支持される。したがって、本実施形態では、方立52、及び支持部材80を、別々のファスナを介して鉄骨梁10に支持させる場合と比較して、耐火ボード70の施工性が向上する。
【0113】
また、耐火ボード70の内面70A、ベース部82、及びビス90は、巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104によって被覆されている。これにより、火災時におけるベース部82、ビス90、及び耐火ボード70の温度上昇が低減されるため、ビス90と耐火ボード70との接合強度の低下が抑制される。したがって、火災時における耐火ボード70の脱落がさらに抑制される。
【0114】
さらに、巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104は、カーテンウォールユニット50Uの建て方前に、耐火ボード70の内面70Aにビス留めされている。これにより、本実施形態では、カーテンウォールユニット50Uの建て方後に、耐火ボード70の内面70Aに巻付け耐火被覆材100をビス留めし、又は耐火ボード70の内面70Aに吹付けロックウールを吹き付ける場合と比較して、施工性が向上する。
【0115】
また、耐火ボード70と鉄骨梁10との間隔(施工スペース)が狭い場合、カーテンウォールユニット50Uの建て方後では、耐火ボード70の内面70Aに、巻付け耐火被覆材100や吹付けロックウールを施工することが困難になる可能性がある。このような場合に、本実施形態は特に有効である。
【0116】
さらに、前述したように、カーテンウォールユニット50Uの建て方後に、耐火ボード70が破損すると、耐火ボード70の交換に手間がかかる。これに対して本実施形態では、前述したように、カーテンウォールユニット50Uの建て方前に、耐火ボード70に巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104ビス留めすることにより、仮に耐火ボード70が破損したとしても、耐火ボード70を容易に交換することができる。したがって、耐火ボード70の施工性が向上する。
【0117】
また、耐火ボード70の室外側には、仕上げ材72が設けられている。仕上げ材72は、耐火ボード70の外面70Bを略全面に亘って覆っている。これにより、カーテンウォールユニット50Uの意匠性が向上する。
【0118】
さらに、仕上げ材72は、耐火ボード70から下方へ延出している。また、巻付け耐火被覆材100は、耐火ボード70の内面70Aから下方へ延出し、仕上げ材72の室内側の内面70Aも被覆している。つまり、仕上げ材72は、巻付け耐火被覆材の下地材としても機能する。
【0119】
これにより、例えば、耐火ボード70の高さを上階延焼防止のための必要な高さ(例えば、900mm)に抑えつつ、耐火ボード70の内面70Aから下方へ延出する巻付け耐火被覆材100によって、耐火ボード70の下方の断熱性能を確保することができる。したがって、耐火ボード70の材料コストを削減することができる。
【0120】
(合成耐火被覆構造)
図1に示されるように、本実施形態の耐火ボード70は、梁側巻付け耐火被覆材100と共に鉄骨梁10の複合耐火被覆構造を構成している。具体的には、梁側巻付け耐火被覆材110は、鉄骨梁10における耐火ボード70と反対側から鉄骨梁10の下を通って耐火ボード70側に張り出している。
【0121】
梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114Tは、遮湿シート104の上から巻付け耐火被覆材100に圧着接合されている。これにより、梁側巻付け耐火被覆材110によって鉄骨梁10と耐火ボード70との間の空間が塞がれ、梁側巻付け耐火被覆材110及び耐火ボード70によって鉄骨梁10が耐火被覆(合成耐火被覆)される。したがって、鉄骨梁10の耐火性能が向上する。
【0122】
また、本実施形態では、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114Tが、巻付け耐火被覆材100に圧着接合されている。これにより、本実施形態では、例えば、梁側巻付け耐火被覆材110の先端側114Tをビスによって耐火ボード70に固定する場合と比較して、耐火ボード70の破損が抑制されるとともに、施工性が向上する。
【0123】
ところで、火災時に、耐火ボード70が室外側から加熱されると、耐火ボード70の内面70Aの温度が上昇し、耐火ボード70と鉄骨梁10との間の空間が加熱される。この場合、鉄骨梁10の耐火性能(例えば、1~3時間耐火)が低下する可能性がある。
【0124】
これに対して本実施形態では、前述したように、耐火ボード70の内面70Aが、巻付け耐火被覆材100、及び遮湿シート104によって被覆されている。これにより、火災時に、耐火ボード70が室外側から加熱されたとしても、耐火ボード70と鉄骨梁10との間の空間の温度上昇が低減される。したがって、鉄骨梁10の耐火性能(例えば、1~3時間耐火)を確保することができる。
【0125】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0126】
図7(A)、及び図7(B)に示される変形例では、支持部材80のベース部82に、耐火ボード70の横幅方向の側端部を保持する側端フック部92が設けられている。側端フック部92は、耐火ボード70の側端部に沿って配置されている。また、側端フック部92は、横断面視にて、L字形状に形成されている。この側端フック部92の内側に、耐火ボード70の側端部が挿入されている。
【0127】
これにより、側端フック部92、及びベース部82によって、耐火ボード70の側端部が面外方向の両側から保持されている。そのため、耐火ボード70の室内側、及び室外側への傾き等が抑制される。したがって、火災時における耐火ボード70の脱落が抑制される。なお、本変形例では、ベース部82のビス留めが省略されている。
【0128】
また、上記実施形態では、図6に示されるように、左右に隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100Eの目地Mが、平面視にて直線状に形成されている。しかし、例えば、図8に示される変形例のように、左右に隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100Eを相じゃくり(相欠き)で組み合わせても良い。
【0129】
相じゃくりでは、隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100Eの厚みを略半分とし、当該端部100Eを厚み方向に互いに重ね合わせることにより組み合わせる。これにより、巻付け耐火被覆材100の端部100E同士の目地Mが、平面視にてクランク状に屈曲する。この結果、火災時に、目地Mから室内側へ侵入する火災熱が低減される。
【0130】
また、上記実施形態では図6に示されるように、左右に隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100Eの目地Mが、方立52の室内側に位置する。しかし、例えば、図9に示される変形例のように、左右に隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100Eの目地Mが、一方(図9において右側)の耐火ボード70の室内側に位置するようにしても良い。これにより、一方の耐火ボード70によって、室外側から目地Mが覆われる。この結果、火災時に、目地Mから室内側へ侵入する火災熱が低減される。
【0131】
また、例えば、図10に示される変形例のように、方立52の内側面52Sが、耐火ボード70の外面70Bよりも室内側で、かつ、耐火ボード70の内面70Aよりも室外側に位置する場合、隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100Eに、一対の方立用巻付け耐火被覆材130を設けても良い。
【0132】
一対の方立用巻付け耐火被覆材130は、巻付け耐火被覆材100と同様に、シート状に成形されたロックウールや、セラミックウール、アルカリアースシリケートウール等によって形成されている。この一対の方立用巻付け耐火被覆材130は、隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100Eに重ねられた状態で、ビス106によって耐火ボード70にビス留めされている。なお、方立用巻付け耐火被覆材130にロックウールを用いる場合は、高耐熱ロックウールを用いることで耐火性能をさらに高めることが出来る。
【0133】
また、一対の方立用巻付け耐火被覆材130は、隣り合う巻付け耐火被覆材100の端部100Eから方立52側へそれぞれ延出し、方立52の室内側において、各々の端部130Eが互いに接触又は圧接され、その間に目地Mが形成されている。これにより、火災時に、方立52が溶融焼失し、隣り合う耐火ボード70の間に空間が形成されたとしても、当該空間が一対の方立用巻付け耐火被覆材130によって遮蔽される。
【0134】
なお、一対の方立用巻付け耐火被覆材130の端部130Eは、前述した相じゃくりで組み合わせても良い。また、左右に隣り合う巻付け耐火被覆材100のうち、一方の巻付け耐火被覆材100に、当該一方の巻付け耐火被覆材100から他方の巻付け耐火被覆材100に亘る方立用巻付け耐火被覆材130を設けても良い。
【0135】
また、上記実施形態では、カーテンウォールユニット50Uが、方立側ファスナ60、及び躯体側ファスナ20を介して鉄骨梁10に支持されている。しかし、カーテンウォールユニット50Uは、方立側ファスナ60、及び躯体側ファスナ20を介して、例えば、スラブ40に支持されても良い。
【0136】
また、上記実施形態では、耐火ボード70、及び梁側巻付け耐火被覆材110によって、鉄骨梁10の合成耐火被覆構造が構成されている。しかし、鉄骨梁10側の耐火被覆材は、梁側巻付け耐火被覆材110に限らず、例えば、吹付けロックウール等の吹付け耐火被覆材や、繊維混入けい酸カルシウム板等のボード系耐火被覆材等であっても良い。
【0137】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態、及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0138】
10 鉄骨梁(躯体)
40 スラブ(躯体)
50 カーテンウォール
52 方立
52S 内側面(方立の室内側の内側面)
70 耐火ボード
70A 内面(耐火ボードの室内側の内面)
72 仕上げ材
80 支持部材
82 ベース部
84 下端フック部
90 ビス
100 巻付け耐火被覆材
100E 端部(巻付け耐火被覆材の端部)
104 遮湿シート
110 梁側巻付け耐火被覆材
114T 先端側(梁側巻付け耐火被覆材の先端側)
130 方立用巻付け耐火被覆材
130E 端部(方立用巻付け耐火被覆材の端部)

図1
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