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特開2023-98192タイヤ加硫用ブラダー及び空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098192
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】タイヤ加硫用ブラダー及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214800
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】一柳 友洋
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AH20
4F202CB21
4F202CU12
4F202CU20
(57)【要約】
【課題】ブラダー外面の溝に対応してタイヤ内面に形成されるリッジにおいてその付け根部でのクラックの発生を抑制する。
【解決手段】グリーンタイヤを加硫するために用いられるタイヤ加硫用ブラダー10において、ブラダーの外面12には溝14が設けられている。溝14の断面における開口部22の曲率半径R1が0.8mm以上である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンタイヤを加硫するために用いられるタイヤ加硫用ブラダーであって、前記タイヤ用ブラダーの外面に溝が設けられ、前記溝の断面における開口部の曲率半径が0.8mm以上である、タイヤ加硫用ブラダー。
【請求項2】
前記溝の断面における溝底の角部の曲率半径が、前記開口部の曲率半径よりも小さい、請求項1に記載のタイヤ加硫用ブラダー。
【請求項3】
前記溝底の角部の曲率半径が0.5mm以上である、請求項2に記載のタイヤ加硫用ブラダー。
【請求項4】
前記溝の断面形状が、前記開口部を規定する第1円弧部と、溝底の角部を規定する第2円弧部と、前記第1円弧部と前記第2円弧部との間に介在し前記第1円弧部及び前記第2円弧部に接する直線部と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫用ブラダー。
【請求項5】
前記直線部が、前記開口部に近づくほど前記溝の幅方向中心から遠ざかるように傾斜している、請求項4に記載のタイヤ加硫用ブラダー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ加硫用ブラダーを用いて加硫成型され、タイヤ内面に前記タイヤ加硫用ブラダーの前記溝により成型されたリッジを備える、空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タイヤ加硫用ブラダー及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造工程は、グリーンタイヤ(未加硫タイヤ)を加硫成型する加硫工程を含む。加硫工程では、モールド内にグリーンタイヤがセットされ、グリーンタイヤの内部にゴム製袋からなるタイヤ加硫用ブラダー(以下、単にブラダーとも称する。)が挿入される。そして、ブラダーを膨張させてグリーンタイヤの内面とブラダーの外面とを密着させた状態でグリーンタイヤを加熱することにより加硫成型が行われる。
【0003】
従来、ブラダーの外面には溝が形成されている(例えば、特許文献1参照)。ブラダーの外面に設けられた溝は、例えば、ブラダーの外面とタイヤの内面との間の空気を逃がすことを目的としたエア抜き用の溝である。加硫時にブラダーの外面は未加硫状態のタイヤ内面に密着された状態で加硫成型がなされるので、加硫成型後のタイヤの内面には、ブラダーの溝に対応したリッジが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-111661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気入りタイヤは、その使用時に繰り返し変形を受けることから、タイヤ内面においてリッジの付け根部にクラックが発生することがある。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、ブラダー外面の溝に対応してタイヤ内面に形成されるリッジにおいてその付け根部でのクラックの発生を抑制することができる、タイヤ加硫用ブラダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るタイヤ加硫用ブラダーは、グリーンタイヤを加硫するために用いられるブラダーであって、前記タイヤ用ブラダーの外面に溝が設けられ、前記溝の断面における開口部の曲率半径が0.8mm以上である。
【0008】
前記タイヤ加硫用ブラダーにおいて、前記溝の断面における溝底の角部の曲率半径は、前記開口部の曲率半径よりも小さくてもよい。また、その場合、前記溝底の角部の曲率半径は0.5mm以上でもよい。
【0009】
前記タイヤ加硫用ブラダーにおいて、前記溝の断面形状は、前記開口部を規定する第1円弧部と、溝底の角部を規定する第2円弧部と、前記第1円弧部と前記第2円弧部との間に介在し前記第1円弧部及び前記第2円弧部に接する直線部と、を含んでもよい。また、その場合、前記直線部は、前記開口部に近づくほど前記溝の幅方向中心から遠ざかるように傾斜していてもよい。
【0010】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、前記タイヤ加硫用ブラダーを用いて加硫成型されたものであって、タイヤ内面に前記タイヤ加硫用ブラダーの前記溝により成型されたリッジを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態によれば、ブラダー外面の溝においてその断面における開口部の曲率半径を0.8mm以上に設定したことにより、当該溝に対応してタイヤ内面に形成されるリッジにおいてその付け根部でのクラックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るタイヤ加硫用ブラダーの断面図
図2】同タイヤ加硫用ブラダーの外面の一部を示す展開図
図3】同タイヤ加硫用ブラダーの溝を示す断面図
図4】他の実施形態に係るタイヤ加硫用ブラダーの溝を示す断面図
図5】一実施形態に係る空気入りタイヤの断面図
図6】同空気入りタイヤのリッジを示す断面図
図7】他の実施形態に係る空気入りタイヤのリッジを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係るタイヤ加硫用ブラダー10(以下、単にブラダー10という。)を示す。ブラダー10は、軸方向中央部が軸直角方向外側に張り出した形状を持つ筒状のゴム部材である。図1は、ブラダー10をその周方向における一箇所で切断した断面図(子午線断面図)である。図1において、符号Xがブラダー10の軸方向を示し、加硫成型するタイヤの軸方向と一致する。また、符号Yが軸直角方向外側(即ち、半径方向外側)を示す。ブラダー10を構成するゴム材料は、特に限定されず、例えばブチルゴムやフッ素ゴムが挙げられる。
【0015】
ブラダー10は、不図示のモールドとともにタイヤ加硫装置を構成する。ブラダー10は、シェーピングガスや加熱媒体(例えば蒸気)が供給されることによって膨張し、加硫時にはグリーンタイヤの内面に押し当てられる。グリーンタイヤの内面に押し当てられた状態において、ブラダー10は空気入りタイヤの内面形状に沿う馬蹄形状をなす。ブラダー10の軸方向Xにおける両端部には被クランプ部11,11が設けられている。ブラダー10は、タイヤ加硫装置のクランプ部によって該被クランプ部11が把持されることで、タイヤ加硫装置に組み込まれる。なお、モールド及びタイヤ加硫装置については公知の構造を適用することができ、特に限定されない。
【0016】
図1に示すように、ブラダー10の外面12には、複数のエア抜き用の溝14が設けられている。溝14は、図2に示すように、ブラダー10の周方向Zに対して交差する方向(即ち、軸方向X)に延在している。そのため、加硫時にグリーンタイヤとブラダー10との間にある空気を、溝14を通って外側に逃がすことができる。
【0017】
溝14は、成型するタイヤの赤道面位置に相当するブラダー10の軸方向中央16には設けられておらず、軸方向中央16から所定間隔G1をあけた位置を起点18として、当該起点18から軸方向X両側にそれぞれ延在して設けられている。軸方向中央16から起点18までの所定間隔G1は、例えば5~30mmでもよく、10~20mmでもよい。溝14は、起点18から軸方向X外側に延び、被クランプ部11に達する前に終端する。溝14の終点20と被クランプ部11との間隔G2(図1参照)は、例えば5~30mmでもよく、10~30mmでもよい。
【0018】
溝14は、ブラダー10の軸方向Xに平行に設けられてもよいが、この例では図2に示すように軸方向Xに対して傾斜して設けられている。溝14の軸方向Xに対する傾斜角度(厳密にはブラダー10の外面12に沿った子午線方向に対する傾斜角度)θは、例えば10°~60°でもよく、好ましくは35°~55°である。なお、この例では、溝14は図2に示す展開図において直線状に延びているが、湾曲して延びてもよい。
【0019】
溝14は、ブラダー10の周方向Zに間隔を開けて複数本設けられている。溝14は、周方向Zに等間隔で配置してもよいが、間隔をずらして配置してもよい。溝14の配設間隔は、例えば、溝14の幅方向中心線同士の間隔で、5~30mmでもよく、好ましくは10~15mmである。
【0020】
図3は、溝14の断面形状を示すブラダー10の断面図であり、溝14はその延在方向において一定の断面形状に形成されている。溝14の断面における開口部22の曲率半径R1は0.8mm以上に設定されている(R1≧0.8mm)。詳細には、溝14の延在方向に垂直な断面において、ブラダー10の外面12に開口する開口部22における両側の角部(即ち、溝14の側壁とブラダー10の外面12とが交わる部分)が、0.8mm以上の曲率半径R1を持つ円弧状に形成されている。ここで、曲率半径R1を持つ曲率円の中心はブラダー10の内部に位置する。
【0021】
このように開口部22の曲率半径R1が0.8mm以上であることにより、溝14に対応してタイヤ内面に形成されるリッジの付け根部の曲率半径が大きくなり、付け根部におけるクラックの発生を抑制することができる。曲率半径R1は大きいほどクラックの発生抑制効果に優れるため、上限は特に限定されず、例えば2.0mm以下でもよく、1.5mm以下でもよく、1.2mm以下でもよい。
【0022】
この例ではまた、溝14の断面における溝底24の角部24Aの曲率半径R2が、開口部22の曲率半径R1よりも小さく形成されている(R2<R1)。詳細には、溝14の延在方向に垂直な断面において、溝底24の両側の角部24A,24A(即ち、溝14の側壁と溝底24とが交わる部分)が曲率半径R2の円弧状に形成され、該曲率半径R2が開口部22の曲率半径R1よりも小さい。ここで、曲率半径R2を持つ曲率円の中心はブラダー10の外部、詳細には溝14内(空間内)に位置する。このように、開口部22の曲率半径R1を溝底24の曲率半径R2よりも大きくすることで、上記のクラックの発生抑制効果を高めることができる。
【0023】
溝底24の角部24Aの曲率半径R2は、0.2mm以上でもよいが、好ましくは0.5mm以上である。曲率半径R2が0.5mm以上であることにより、上記のクラックの発生抑制効果をより高めることができる。
【0024】
図3に示すように、この例では、溝14の断面形状は、開口部22を規定する曲率半径R1の第1円弧部26と、溝底24の角部24Aを規定する曲率半径R2の第2円弧部28と、第1円弧部26と第2円弧部28との間に介在する直線部30とを含む。詳細には、溝14は、その延在方向に垂直な断面において、開口側から順に、曲率半径R1を持つ一対の第1円弧部26,26と、溝14の両側壁を規定する一対の直線部30,30と、曲率半径R2を持つ一対の第2円弧部28,28と、溝底24の中央部を規定する直線部32とからなる。第1円弧部26は、その一端においてブラダー10の外面12を規定する直線部に接するとともに、他端において溝14の側壁を規定する直線部30に接する。第2円弧部28は、その一端において溝14の側壁を規定する直線部30に接するとともに、他端において溝底24の中央部を規定する直線部32に接する。なお、一実施形態において直線部30及び/又は直線部32は設けなくてもよい。
【0025】
このように、第1円弧部26と第2円弧部28を両者に接する直線部30で繋いだ断面形状とすることにより、溝14の深さを確保しやすく、また加硫時におけるゴム流れが良好となる。ここで、ゴム流れとは、加硫時にグリーンタイヤを構成する未加硫ゴムが流動することをいい、この例では未加硫ゴムが溝14内に進入しやすいことをいう。
【0026】
図3に示す例において、第1円弧部26と第2円弧部28に接する直線部30は、開口部22に近づくほど溝14の幅方向中心から遠ざかるように傾斜している。すなわち、溝底24側から開口部22側に向かって、溝14の幅が広くなるように傾斜している。これにより、上記のクラックの発生抑制効果をより高めることができる。
【0027】
なお、第1円弧部26の高さH1(溝14の深さ方向における第1円弧部26の寸法)は、例えば0.3~1.0mmでもよく、0.3~0.8mmでもよく、0.4~0.6mmでよい。
【0028】
溝14の深さHは、例えば0.5mm以上でもよく、0.8mm以上でもよく、また2.0mm以下でもよく、1.5mm以下でもよい。溝14の幅Wは、例えば0.5~2.0mmでもよく、0.8~1.5mmでもよい。ここで、溝14の幅Wは、溝底24の角部24Aを湾曲状に形成していないと仮定したときの溝底24の幅であり、図3に示すように、一対の直線部30,30をそれぞれ延長した仮想線L1,L1と溝底24の基準線L2との交点間の距離である。
【0029】
なお、ブラダー10の厚みTは、例えば4~10mmでもよく、5~7mmでよい。
【0030】
図4は、ブラダー10の外面12に設ける溝14Aの変更例を示した図である。この例では、第1円弧部26と第2円弧部28に接する直線部30Aが、ブラダー10の外面12に対して垂直に形成されている。このように溝14Aの両側壁を規定する直線部30A,30Aは、傾斜させずに垂直な側壁として形成してもよい。但し、上記のクラックの発生抑制効果としては、傾斜した直線部30を持つ図3に示す実施形態の方が優れる。
【0031】
ブラダー10を用いて空気入りタイヤを製造する方法としては、使用するブラダーが異なることを除いて、公知のタイヤの製造方法を採用することができる。すなわち、例えば、グリーンタイヤを作製した後、該グリーンタイヤを加硫成型する加硫工程を行う。加硫工程では、ブラダー10とともに不図示のモールドを備えるタイヤ加硫装置を用いる。モールド内にグリーンタイヤをセットし、グリーンタイヤの内部にブラダー10を挿入してから、ブラダー10内にシェーピングガスを供給してグリーンタイヤの内面にブラダー10の外面を密着させるシェーピングを行う。次いで、モールドを加熱するとともに、ブラダー10内に高温の加熱媒体を供給してグリーンタイヤを加熱し、加硫成型を行う。加硫終了後にモールドを開くとともにブラダー10から排気することより、加硫済のタイヤを取り出す。これにより、空気入りタイヤが得られる。
【0032】
図5は、このようにして得られる空気入りタイヤ50(以下、単にタイヤ50という。)の一例を示した図である。タイヤ50は、リムに固定される左右一対のビード部52,52と、該一対のビード部52,52からそれぞれタイヤ半径方向外側に連なる左右一対のサイドウォール54,54と、該一対のサイドウォール54,54の間に跨がって延び接地面を構成するトレッド56とを有する。図5は、タイヤ回転軸を含む子午線断面でタイヤ50を切断した断面図である。
【0033】
図中、符号CLは、タイヤ軸方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、図において符号ADで示す。タイヤ半径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいい、図において符号RDで示す。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0034】
タイヤ50は、左右一対のビードコア58,58と、該一対のビードコア58,58間にトロイド状に掛け渡されたカーカスプライ60と、カーカスプライ60のクラウン部のタイヤ半径方向RD外側に配置されたベルト62と、を備える。本実施形態において、タイヤ50は、その内面64以外の構造については、特に限定されるものではない。
【0035】
本実施形態に係るタイヤ50は、その内面64にブラダー10の溝14により成型されたリッジ66を複数備える。リッジ66は、溝14を備えるブラダー10の外面12が未加硫状態のタイヤ内面64に密着された状態で加硫成型されることにより形成されるものであり、溝14を反転させた形状に形成される。
【0036】
そのため、リッジ66は、タイヤ周方向に対して交差する方向(即ち、タイヤ軸方向AD)に延在している。図5に示すように、リッジ66は、赤道面CLに相当する軸方向ADの中央67には設けられておらず、当該中央67から所定間隔G3をあけた位置を起点69として、当該起点69から軸方向AD外側にそれぞれ延在し、ビード部52のビードトウまで延びている。中央67から起点69までの所定間隔G3は、例えば5~30mmでもよく、10~20mmでもよい。
【0037】
リッジ66は、タイヤ50の軸方向ADに平行に設けられてもよいが、この例では、上記の溝14と同様、軸方向ADに対して傾斜して設けられる。リッジ66の軸方向ADに対する傾斜角度(厳密にはタイヤ50の内面64に沿った子午線方向に対する傾斜角度)は、例えば10°~60°でもよく、好ましくは35°~55°である。なお、リッジ66は展開視において直線状に延びてもよく、湾曲して延びてもよい。
【0038】
リッジ66は、溝14と同様、タイヤ50の周方向に間隔を開けて複数本設けられている。リッジ66は、タイヤ50の周方向に等間隔で配置してもよいが、間隔をずらして配置してもよい。リッジ66の配設間隔は、例えば、リッジ66の幅方向中心線同士の間隔で、5~30mmでもよく、好ましくは10~15mmである。
【0039】
図6は、リッジ66の断面形状を示す断面図であり、リッジ66はその延在方向において一定の断面形状に形成されている。リッジ66は、図3に示す実施形態の溝14を反転させた形状を持つため、リッジ66の断面における付け根部68の曲率半径R3は0.8mm以上に形成される(R3≧0.8mm)。詳細には、リッジ66の延在方向に垂直な断面において、タイヤ50の内面64に対するリッジ66の両側の付け根部68(即ち、リッジ66の側壁とタイヤ50の内面64とが交わる部分)が、0.8mm以上の曲率半径R3を持つ円弧状に形成されている。ここで、曲率半径R3を持つ曲率円の中心はタイヤ50の外部に位置する。
【0040】
このようにリッジ66の曲率半径R3が0.8mm以上であることにより、リッジ66の付け根部68におけるクラックの発生を抑制することができる。曲率半径R3は大きいほどクラックの発生抑制効果に優れるため、上限は特に限定されないが、例えば2.0mm以下でもよく、1.5mm以下でもよく、1.2mm以下でもよい。
【0041】
この例ではまた、リッジ66の断面における頂部70の角部70Aの曲率半径R4が、付け根部68の曲率半径R3よりも小さく形成されている(R4<R3)。詳細には、リッジ66の延在方向に垂直な断面において、頂部70の両側の角部70A,70A(即ち、リッジ66の側壁と頂部70とが交わる部分)が曲率半径R4の円弧状に形成され、該曲率半径R4が付け根部68の曲率半径R3よりも小さい。ここで、曲率半径R4を持つ曲率円の中心はタイヤ50の内部、詳細にはリッジ66の内部に位置する。このように付け根部68の曲率半径R3を頂部70の曲率半径R4よりも大きくすることで、上記のクラックの発生抑制効果を高めることができる。
【0042】
リッジ66の頂部70の角部70Aの曲率半径R4は、0.2mm以上でもよいが、好ましくは0.5mm以上である。曲率半径R4が0.5mm以上であることにより、上記クラックの発生抑制効果をより高めることができる。
【0043】
図6に示すように、この例では、リッジ66の断面形状は、付け根部68を規定する第3円弧部72と、頂部70の角部70Aを規定する第4円弧部74と、第3円弧部72と第4円弧部74との間に介在する直線部76とを含む。詳細には、リッジ66は、その延在方向に垂直な断面において、付け根側から順に、曲率半径R3を持つ一対の第3円弧部72,72と、リッジ66の両側壁を規定する一対の直線部76,76と、曲率半径R4を持つ一対の第4円弧部74,74と、頂部70の中央部を規定する直線部78とからなる。第3円弧部72は、その一端においてタイヤ50の内面64を規定する直線部に接するとともに、他端においてリッジ66の側壁を規定する直線部76に接する。第4円弧部74は、その一端においてリッジ66の側壁を規定する直線部76に接するとともに、他端において頂部70の中央部を規定する直線部78に接する。なお、一実施形態において直線部76及び/又は直線部78は設けなくてもよい。
【0044】
図6に示す例において、第3円弧部72と第4円弧部74に接する直線部76は、付け根部68に近づくほどリッジ66の幅方向中心から遠ざかるように傾斜している。すなわち、頂部70側から付け根部68側に向かって、リッジ66の幅が広くなるように傾斜している。これにより、上記のクラックの発生抑制効果をより高めることができる。
【0045】
なお、第3円弧部72の高さH2は、例えば0.3~1.0mmでもよく、0.3~0.8mmでもよく、0.4~0.6mmでよい。
【0046】
リッジ66の高さH0は、例えば0.5mm以上でもよく、0.8mm以上でもよく、また2.0mm以下でもよく、1.5mm以下でもよい。リッジ66の幅W0は、例えば0.5~2.0mmでもよく、0.8~1.5mmでもよい。ここで、リッジ66の幅W0は、頂部70の角部70Aを湾曲状に形成していないと仮定したときの頂部70の幅であり、図6に示すように、一対の直線部76,76をそれぞれ延長した仮想線L3,L3と頂部70の基準線L4との交点間の距離である。
【0047】
図7は、図4に示す実施形態の溝14Aにより形成されるリッジ66Aの断面形状を示す断面図である。リッジ66Aは、該溝14Aを反転させた形状を持つため、第3円弧部72と第4円弧部74に接する直線部76Aが、タイヤ50の内面64に対して垂直に形成されている。このようにリッジ66Aの両側壁を規定する直線部76A,76Aは、傾斜させずに垂直な側壁として形成してもよい。
【0048】
本実施形態において、ブラダーの厚みや、溝についての傾斜角度、間隔、曲率半径、幅、深さ等の各寸法は、ブラダーをタイヤ加硫装置に組み込んでいないフリーな状態で測定される値である。また、空気入りタイヤのリッジについての傾斜角度、間隔、曲率半径、幅、高さ等の各寸法は、空気入りタイヤをリム組みしていないフリーな状態で測定される値である。
【実施例0049】
本実施形態による効果を示すための実施例について説明する。実施例1では、図3に示す断面形状を持つ溝14を設けたブラダーを試作し、該ブラダーを用いて空気入りタイヤを試作した。実施例2では、図4に示す断面形状を持つ溝14Aを設けたブラダーを試作し、該ブラダーを用いて空気入りタイヤを試作した。タイヤサイズは、11R22.5 16PRとした。溝14,14Aについての曲率半径R1,R2、幅W、深さH、ブラダーの厚みT、溝本数(ブラダー外面の全周における溝の本数)は下記表1に示す通りである。比較例1では、実施例1に対して曲率半径R1及びR2を表1の通りに変更し、その他は同様にして空気入りタイヤを試作した。
【0050】
実施例1,2及び比較例1で試作したタイヤについて、タイヤ内面のリッジの付け根部におけるクラックの発生状態を評価した。評価は、試作タイヤをトラックに装着し、10万km走行後にタイヤ内面における観察し、下記基準により評価した。
○:リッジの付け根部におけるクラック発生なし
△:リッジの付け根部に使用するのに問題ない程度の微小クラックが発生
×:リッジの付け根部に上記微小クラックよりも大きなクラックが発生
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、曲率半径R1が0.8mm以上である実施例1,2であると、比較例1よりもクラックの発生抑制効果に優れていた。
【符号の説明】
【0053】
10…タイヤ加硫用ブラダー、12…外面、14,14A…溝、22…開口部、24…溝底、24A…角部、26…第1円弧部、28…第2円弧部、30…直線部、50…空気入りタイヤ、64…内面、66…リッジ、R1…開口部の曲率半径、R2…溝底の曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7