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  • 特開-プレコートフィン材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009820
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】プレコートフィン材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/18 20060101AFI20230113BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20230113BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20230113BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230113BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230113BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230113BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20230113BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230113BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20230113BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20230113BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F28F13/18 B
F28F21/08 A
C23C26/00 A
C09D133/00
C09D175/04
B32B15/08 E
B05D7/14 101C
B05D3/00 F
B05D3/00 D
B05D5/00 Z
B05D3/02 Z
B05D7/24 302P
B05D7/24 302T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113420
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 涼子
(72)【発明者】
【氏名】荻原 加奈
(72)【発明者】
【氏名】小山 高弘
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4D075AC53
4D075BB24Z
4D075BB28Z
4D075BB33Z
4D075BB74X
4D075BB75X
4D075BB91Z
4D075BB93Z
4D075BB95Z
4D075CA33
4D075CA37
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB07
4D075DC16
4D075DC19
4D075EA06
4D075EB22
4D075EB38
4F100AB10A
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK51B
4F100BA02
4F100CC00B
4F100EH46
4F100EJ42
4F100GB51
4F100JB02
4F100YY00B
4J038CG141
4J038DG001
4J038NA03
4J038NA06
4J038PA19
4J038PB06
4J038PC02
4K044AA06
4K044AB10
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC02
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】簡素な工程で製造することができ、耐食性及び親水性に優れたプレコートフィン材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】プレコートフィン材1は、基材2と、基材2上に設けられた樹脂皮膜3とを有している。樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量は0.2g/m以上2.5g/m以下である。プレコートフィン材1は、pH3の5質量%NaCl水溶液中で測定した自然電位の測定開始時点から1時間経過時点までの平均値が、基材2の自然電位の平均値に対して+0.040V以上+0.2V以下となり、流水に10分間浸漬した後の水の接触角が20°以上40°以下となる特性を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムからなる基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けられ、最表面に露出した樹脂皮膜と、を有するプレコートフィン材であって、
前記樹脂皮膜の単位面積当たりの質量が0.2g/m以上2.5g/m以下であり、
pH3の5質量%NaCl水溶液に前記プレコートフィン材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値が、pH3の5質量%NaCl水溶液に前記基材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値に対して+0.040V以上+0.2V以下となり、かつ、
前記プレコートフィン材を流水に10分間浸漬した後の水の接触角が20°以上40°以下となる特性を有する、プレコートフィン材。
【請求項2】
前記樹脂皮膜には、(メタ)アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の樹脂が含まれている、請求項1に記載のプレコートフィン材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプレコートフィン材の製造方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面上に、樹脂を含む塗料を塗布し、
前記塗料が塗布された前記基材を温度240℃以上300℃以下の加熱炉内で4秒以上20秒以下加熱して塗装焼付を行うことにより前記基材上に前記樹脂皮膜を形成する、プレコートフィン材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレコートフィン材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機や冷蔵庫等に搭載される熱交換器として、多数のフィンと、これらのフィンと交差したチューブとを有する、いわゆるフィンアンドチューブ型熱交換器が多用されている。フィンは、アルミニウム(純アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。以下同じ。)からなる基板と、基板上に設けられた樹脂皮膜とを有するプレコートフィン材にプレス加工を施すことにより作製されている。
【0003】
プレコートフィン材の樹脂皮膜は、結露水による腐食を抑制するための耐食性や、結露水によるフィン間の閉塞を回避するための親水性などの種々の特性をフィンに付与することができるように構成されている。例えば、特許文献1には、アルミニウム基材上にアクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびウレタン樹脂から選ばれる1種または2種以上を構成材料とする耐食性皮膜が形成され、前記耐食性皮膜の上層にアクリル樹脂を構成材料とする親水性皮膜が形成され、前記親水性皮膜の上層にポリエチレングリコールを構成材料とする水溶性潤滑剤層が形成されていることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-130320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のプレコートフィン材においては、フィンに要求される特性を付与するために、基材上に、互いに機能の異なる複数種の樹脂皮膜が設けられている。そのため、プレコートフィン材の製造工程が煩雑になりやすく、加工コストの上昇を招きやすい。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、簡素な工程で製造することができ、耐食性及び親水性に優れたプレコートフィン材及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、アルミニウムからなる基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けられた樹脂皮膜と、を有するプレコートフィン材であって、
前記樹脂皮膜の単位面積当たりの質量が0.2g/m以上2.5g/m以下であり、
pH3の5質量%NaCl水溶液に前記プレコートフィン材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値が、pH3の5質量%NaCl水溶液に前記基材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値に対して+0.040V以上+0.2V以下となり、かつ、
前記プレコートフィン材を流水に10分間浸漬した後の水の接触角が20°以上40°以下となる特性を有する、プレコートフィン材にある。
【0008】
また、本発明の他の態様は、前記の態様のプレコートフィン材の製造方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面上に、樹脂を含む塗料を塗布し、
前記塗料が塗布された前記基材を温度240℃以上300℃以下の加熱炉内で4秒以上20秒以下加熱して塗装焼付を行うことにより前記基材上に前記樹脂皮膜を形成する、プレコートフィン材の製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
前記プレコートフィン材は、基材と、基材の少なくとも一方の面上に設けられた樹脂皮膜と、を有している。また、前記プレコートフィン材は、前記特定の条件で測定した場合の基材との自然電位の平均値の差、及び、接触角がそれぞれ前記特定の範囲となる特性を有している。前記プレコートフィン材は、かかる構成を有することにより、耐食性と親水性との両方をバランスよく向上させることができる。
【0010】
また、前記プレコートフィン材における耐食性及び親水性は、単一の樹脂皮膜により実現されている。それ故、前記プレコートフィン材は、簡素な工程で作製可能であり、製造コストを容易に低減することができる。
【0011】
前記プレコートフィン材の製造方法においては、前記樹脂を含む塗料を基材上に塗布した後、前記特定の条件で塗装焼付を行うことにより、基材上に前記樹脂皮膜が形成される。このように、前記製造方法においては、塗料の塗布及び塗装焼付をそれぞれ1回ずつ行うという簡素な工程により、耐食性及び親水性に優れたプレコートフィン材を容易に得ることができる。
【0012】
以上のように、前記の態様によれば、簡素な工程で製造することができ、耐食性及び親水性に優れたプレコートフィン材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例におけるプレコートフィン材の断面図である。
図2図2は、実施例における自然電位の測定装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(プレコートフィン材)
前記プレコートフィン材は、基材と、基材の片面または両面上に設けられた樹脂皮膜とを有している。以下、プレコートフィン材の各部の構成について説明する。
【0015】
A.基材
前記プレコートフィン材において、基材を構成するアルミニウムは、純アルミニウムであってもよいし、アルミニウム合金であってもよい。例えば、基材は、A1200やA1050等の合金番号で表される化学成分を備えた純アルミニウムから構成されていてもよい。
【0016】
B.下地皮膜
基材の表面には、無機物からなる下地皮膜が設けられており、樹脂皮膜は下地皮膜上に積層されていてもよい。基材と樹脂皮膜との間に下地皮膜を設けることにより、樹脂皮膜の密着性をより向上させたり、基材の耐食性をより向上させたりすることができる。
【0017】
下地皮膜は、例えば、化成処理により形成された化成皮膜であってもよい。化成皮膜は、反応型化成処理によって形成されていてもよいし、塗布型化成処理によって形成されていてもよい。より具体的には、下地皮膜としては、リン酸クロメート等を用いたクロメート処理により形成されるクロム含有皮膜や、リン酸チタンやリン酸ジルコニウム、リン酸モリブデン、リン酸亜鉛及び酸化ジルコニウム等のクロム非含有化合物を用いたノンクロメート処理により形成されるクロムフリー皮膜等を採用することができる。
【0018】
C.樹脂皮膜
プレコートフィン材の少なくとも一方の面には、樹脂皮膜が設けられている。樹脂皮膜は、基材に直接積層されていてもよいし、下地皮膜上に積層されていてもよい。また、樹脂皮膜は、プレコートフィン材の最表面に露出していてもよい。
【0019】
樹脂皮膜には、(メタ)アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の樹脂が含まれていることが好ましい。これらの樹脂を含む樹脂皮膜は、耐食性及び親水性に優れていることに加えてプレス成型時の潤滑性にも優れている。そのため、前記樹脂皮膜を最表面に設けることによりプレコートフィン材のプレス成形性をより向上させることができる。
【0020】
かかる作用効果をより高める観点からは、(メタ)アクリル樹脂は、全反射測定法により得られるフーリエ変換赤外吸収スペクトルにおいて、波数1505~1515cm-1の範囲内に最も大きいピークの頂点を有し、波数1605~1615cm-1の範囲内に2番目に大きいピークの頂点を有し、波数1550~1560cm-1の範囲内に3番目に大きいピークの頂点を有していることが好ましい。また、同様の観点から、ウレタン樹脂は、全反射測定法により得られるフーリエ変換赤外吸収スペクトルにおいて、波数1505~1515cm-1の範囲内に最も大きいピークの頂点を有し、波数1360~1370cm-1の範囲内に2番目に大きいピークの頂点を有し、波数1555~1565cm-1の範囲内に3番目に大きいピークの頂点を有していることが好ましい。
【0021】
また、樹脂皮膜中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、塗料用の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、顔料、防錆剤、水性有機樹脂、界面活性剤、レオロジーコントロール剤、表面調整剤、イオン液体、消泡剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0022】
前記プレコートフィン材における前記樹脂皮膜の単位面積当たりの質量は、0.2g/m以上2.5g/m以下である。前記プレコートフィン材は、基材との電位差及び流水浸漬後の水の接触角が前記特定の範囲であるため、優れた耐水性と優れた親水性とを両立させつつ、樹脂皮膜の厚みを、単位面積当たりの質量が0.2g/mとなるようなごく薄い厚みとすることができる。これにより、プレコートフィン材の作製過程における塗料の使用量を容易に低減し、製造コストを低下させることができる。
【0023】
樹脂皮膜の単位面積当たりの質量が0.2g/m未満の場合には、樹脂皮膜の厚みが薄くなりすぎるため、プレコートフィン材の耐食性の悪化を招くおそれがある。一方、樹脂皮膜の単位面積当たりの質量が2.5g/mを超える場合には、プレコートフィン材の作製過程における塗料の使用量が多くなり、製造コストの増大を招くおそれがある。
【0024】
前記プレコートフィン材における前記樹脂皮膜の単位面積当たりの質量は、0.2g/m以上1.0g/m以下であることが好ましく、0.2g/m以上0.9g/m以下であることがより好ましい。この場合には、プレコートフィン材の耐食性及び親水性を確保しつつ、プレコートフィン材の作製過程における塗料の使用量をより低減することができる。これにより、プレコートフィン材の製造コストをより低減する効果を期待できる。
【0025】
D.プレコートフィン材の特性
前記プレコートフィン材は、pH3の5質量%NaCl水溶液に前記プレコートフィン材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値が、pH3の5質量%NaCl水溶液に前記基材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値に対して+0.040V以上+0.2V以下となる特性を有している。また、前記プレコートフィン材は、プレコートフィン材を流水に10分間浸漬した後の水の接触角が20°以上40°以下となる特性を有している。
【0026】
プレコートフィン材と基材との電位差及び水の接触角がそれぞれ前記特定の範囲内であるプレコートフィン材は、高い耐食性と、高い親水性とを両立させることができる。プレコートフィン材の自然電位の平均値が基材の自然電位の平均値に対して+0.040V未満の場合には、プレコートフィン材の耐食性が不十分となるおそれがある。また、流水に浸漬した後のプレコートフィン材の水の接触角が40°を超える場合には、プレコートフィン材の親水性が不十分となるおそれがある。
【0027】
(プレコートフィン材の製造方法)
前記プレコートフィン材を作製するに当たっては、
前記基材の少なくとも一方の面上に、樹脂を含む塗料を塗布し、
前記塗料が塗布された前記基材を温度240℃以上300℃以下の加熱炉内で4秒以上20秒以下加熱して塗装焼付を行うことにより前記基材上に前記樹脂皮膜を形成すればよい。
【0028】
基材としては、例えば、アルミニウム板を使用することができる。基材の厚みは、例えば0.05~0.30mmの範囲内であればよい。また、基材には、塗料を塗布する前に、化成処理等の表面処理が施されていてもよい。予め、基材の表面に化成処理を施すことにより、基材上に下地皮膜を形成し、樹脂皮膜の密着性を向上させることができる。
【0029】
塗料には、樹脂及び必要に応じて配合される添加剤や溶媒等が含まれている。基材への塗料の塗布方法は特に限定されるものではなく、バーコーターやロールコーターなどの種々の方法を採用することができる。
【0030】
基材上に塗料を塗布した後、基材を温度240℃以上300℃以下の加熱炉内で4秒以上20秒以下加熱して塗装焼付を行う。これにより、前記樹脂皮膜を形成することができる。加熱炉内の温度が前記特定の範囲よりも低い場合、または、焼付時間が前記特定の範囲よりも短い場合には、塗料の加熱が不十分となり、プレコートフィン材の耐食性の悪化を招くおそれがある。また、加熱炉内の温度が前記特定の範囲よりも高い場合には、塗料が過度に加熱され、樹脂皮膜の劣化を招くおそれがある。
【0031】
前記塗装焼付においては、基材の乾燥状態における最高到達温度(Peak Metal Temperature,PMT)が170℃以上220℃以下の範囲内となるようにして基材を加熱することが好ましい。この場合には、樹脂皮膜を十分に硬化させ、優れた耐食性及び親水性を有するプレコートフィン材をより確実に得ることができる。
【実施例0032】
前記プレコートフィン材及びその製造方法の実施例を、図1図2を参照しつつ説明する。なお、本発明に係るプレコートフィン材及びその製造方法の具体的な態様は、実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0033】
本例のプレコートフィン材1は、図1に示すように、アルミニウムからなる基材2と、基材2の両面上に設けられた樹脂皮膜3と、を有している。基材2と樹脂皮膜3との間には、下地皮膜21が介在している。樹脂皮膜3には、樹脂が含まれている。本例においては、表1に示すように、樹脂の種類及び樹脂皮膜の単位面積当たりの質量の異なる12種類のプレコートフィン材(試験材A1~A12)を準備し、これらを用いて諸特性の評価を行う。試験材の具体的な構成及び作製方法を以下に説明する。
【0034】
A.基材2
本例の基材2は、A1050アルミニウムからなる厚み0.1mmのアルミニウム板である。基材2の表面は、下地皮膜21により覆われている。本例の下地皮膜21は、具体的には、リン酸クロメートを用いたクロメート処理により形成されるクロメート皮膜である。クロメート皮膜の付着量は、基材の片面当たり、Cr原子の質量として20mg/mである。
【0035】
B.樹脂皮膜3
本例の樹脂皮膜3には、アクリル樹脂またはウレタン樹脂のいずれかが含まれている。
【0036】
C.製造方法
まず、表1に記載した樹脂に、固形分量が7質量%となるように純水を加えて塗料を調製する。
【0037】
予め準備した基材2の下地皮膜21上に、バーコーターを用いて塗料を塗布した後、塗料を予備乾燥させる。その後、基材2を表1に示す温度に保持された加熱炉内に入れ、表1に示す時間加熱して塗装焼付を行う。なお、加熱炉内の雰囲気はファンにより強制対流している。炉内の温度及びファンの風速により算出される、基材の最高到達温度(PMT)は表1に示す通りである。
【0038】
塗装焼付が完了した後、加熱炉からプレコートフィン材1を取り出し、室温まで冷却する。以上により、表1に示す試験材A1~A12を得ることができる。
【0039】
なお、表1に示す試験材R1及び試験材R2は、試験材A1~A12との比較のための試験材である。試験材R1及び試験材R2は、塗装焼付の条件を表1に示すように変更する以外は、試験材A1~A9と同様の方法により作製することができる。
【0040】
D.評価
・プレコートフィン材と基材との電位差の測定
プレコートフィン材及び基材の自然電位の測定には、図2に示す測定装置4が用いられる。測定装置4は、試験片5を浸漬するための溶液を入れる第1の容器41と、参照電極6を浸漬するための溶液を入れる第2の容器42と、第1の容器41内の溶液と第2の容器42内の溶液とを電気的に接続するための塩橋43と、参照電極6に対する試験片5の電位を測定するためのポテンシオスタット44と、測定した電位を記録するための記録装置45と、を有している。
【0041】
自然電位の測定に当たっては、まず、試験材または基材から縦40mm、横10mmの長方形状の試験片5を採取する。この試験片5の長手方向の一端にポテンシオスタット44との接続部51、他端に一辺5mmの正方形状の電位測定部52を設ける。そして、図2に示すように、接続部51及び電位測定部52以外の部分に絶縁塗料53を塗布する。
【0042】
これとは別に、第1の容器41内に酢酸を用いてpHを3に調整した5%NaCl水溶液を準備するとともに、第2の容器42内に飽和NaCl水溶液を準備する。そして、第1の容器41内の溶液と第2の容器42内の溶液とを塩橋43を介して電気的に接続する。
【0043】
次に、試験片5の接続部51及び参照電極6をそれぞれポテンシオスタット44に接続する。なお、参照電極6としては、例えば、Ag/AgCl電極を使用することができる。
【0044】
この状態で第1の容器41内の5%NaCl水溶液に試験片5の電位測定部52を浸漬するととともに、第2の容器42内の飽和NaCl水溶液に参照電極6を浸漬することにより、参照電極6を基準としたときの試験片5の自然電位を測定することができる。本例においては、3分ごとに試験片5の自然電位を測定し、記録装置45に記録する。
【0045】
試験片の自然電位は、測定開始時点から時間が経過するにつれて徐々に低下し、10時間経過した時点で概ね一定の値となる傾向を示す。本例では、測定開始時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値を、試験材の自然電位の値とする。各試験材の自然電位の値を表1に示す。
【0046】
また、上記と同様の測定を、樹脂皮膜3を形成する前の基材2を用いて行う。そして、測定開始時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値を基材の自然電位の値とする。なお、基材の自然電位は、-0.725V vs Ag/AgClである。表1の「電位差」欄に、試験材の自然電位から基材2の自然電位を差し引いた値を示す。
【0047】
なお、基材2の自然電位の測定には、プレコートフィン材1の表面を研磨し、樹脂皮膜3及び下地皮膜21を除去することによって作製された基材2を用いることもできる。
【0048】
・水の接触角
各試験材から試験片を採取したのち、温度25℃、流速5L/分の流水中に10分間浸漬する。流水から取り出した試験材の表面に2μLの純水を滴下し、滴下した時点から30秒後に水の接触角を測定する。表1に、各試験材の水の接触角を示す。
【0049】
・樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量
各試験材から一辺100mmの正方形状の試験片を採取する。この試験片の質量W1(単位:g)を測定した後、500℃の電気炉内で試験片を15分間加熱する。電気炉から取り出した試験片の質量W2(単位:g)を測定した後、加熱前からの質量の減少量W1-W2(単位:g)を算出する。この質量の減少量W1-W2を、試験片上に形成された樹脂皮膜3の総面積S(単位:cm)で除することにより、樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量を算出することができる。表1に、各試験材における樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量を示す。
【0050】
・耐食性
試験材から、基材2の圧延方向と長手方向とが並行になるようにして縦100mm、横50mmの長方形状の試験片を採取する。この試験片を用い、JIS Z2371:2000に準拠した方法により塩水噴霧試験を実施する。試験時間は1000時間とする。試験後の試験材の腐食面積率を算出し、JIS Z2371:2000のレイティングナンバ法によりレイティングナンバを決定する。レイティングナンバは、値が大きいほど優れた耐食性を有することを示す。表1に、各試験材のレイティングナンバを示す。
【0051】
・外観
試験材の表面を目視により観察し、樹脂皮膜3の性状を評価する。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、試験材A1~A12における樹脂皮膜の単位面積当たりの質量、基材との電位差及び流水浸漬後の水の接触角は、それぞれ前記特定の範囲内である。それ故、これらの試験材は、優れた耐食性及び親水性を有している。
【0054】
一方、試験材R1の樹脂皮膜は、試験材A1~A12に比べて低い炉内温度で加熱されることによって形成されている。そのため、試験材R1における基材との電位差は前記特定の範囲よりも小さくなる。その結果、試験材R1の耐食性は、試験材A1~A12に比べて劣っている。
【0055】
試験材R2の樹脂皮膜は、試験材A1~A12に比べて高い炉内温度で加熱されることによって形成されている。そのため、加熱中に樹脂皮膜が劣化し、変色する。
【符号の説明】
【0056】
1 プレコートフィン材
2 基材
3 樹脂皮膜
図1
図2