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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098205
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】光90度ハイブリッド
(51)【国際特許分類】
   G02F 2/00 20060101AFI20230703BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G02F2/00
G02B6/125 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214827
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147BA05
2H147BA06
2H147BB02
2H147BD01
2H147BE22
2H147CD02
2H147EA02A
2H147EA12A
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14A
2H147EA14B
2H147EA25B
2H147FC01
2H147FD20
2H147GA10
2H147GA19
2H147GA25
2K102BA03
2K102BA40
2K102BB04
2K102BC01
2K102BD01
2K102CA11
2K102DA02
2K102DB03
2K102EB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光90度ハイブリッドにおける位相誤差の波長依存性を抑制しつつ、製造誤差により生じる位相誤差を抑制する。
【解決手段】波長変化によって分波器で発生する位相誤差が、波長変化によってアーム導波路で発生する位相誤差で抑制され更に、製造誤差によって分波器で発生する位相誤差が、製造誤差によってアーム導波路で発生する位相誤差で抑制されるように、分波器およびアーム導波路を構成する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1出力ポートと、前記第1出力ポートとは異なる第2出力ポートとを有する第1分波器と、
第3出力ポートと、前記第3出力ポートとは異なる第4出力ポートとを有し、前記第1分波器とは異なる第2分波器と、
第1入力ポートと、前記第1入力ポートとは異なる第2入力ポートとを有する第1合波器と、
第3入力ポートと、前記第3入力ポートとは異なる第4入力ポートとを有し、前記第1合波器とは異なる第2合波器と、
前記第1出力ポートと前記第3入力ポートとを接続する第1アーム導波路と、
前記第2出力ポートと前記第2入力ポートとを接続する第2アーム導波路と、
前記第3出力ポートと前記第1入力ポートとを接続する第3アーム導波路と、
前記第4出力ポートと前記第4入力ポートとを接続する第4アーム導波路とを有し、
前記第1分波器は、第1光を第1分岐光と第2分岐光に分岐して、前記第1分岐光を前記第1出力ポートから出力し、前記第2分岐光を前記第2出力ポートから出力し、
前記第2分波器は、第2光を第3分岐光と第4分岐光に分岐して、前記第3分岐光を前記第3出力ポートから出力し、前記第4分岐光を前記第4出力ポートから出力し、
前記第1合波器は、前記第2アーム導波路を介して入射する前記第2分岐光と、前記第3アーム導波路を介して入射する前記第3分岐光とを合波して、第1干渉光および前記第1干渉光とは逆位相の第2干渉光を生成し、
前記第2合波器は、前記第4アーム導波路を介して入射する前記第4分岐光と、前記第1アーム導波路を介して入射する前記第1分岐光とを合波して、第3干渉光および前記第3干渉光とは逆位相の第4干渉光を生成し、
前記第1~第2分波器、前記第1~第4アーム導波路、および前記第1~第2合波器はそれぞれ、コアと前記コアを囲むクラッドとを有する光導波路の一部であり、
前記光導波路は、前記コアの断面の大きさ又は前記断面の形に基づくパラメータの第1の値からの偏差をXとすると、λが特定の波長であって且つXがゼロである場合に、次式(1)~(7)が満たされるように構成され、
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
ただし、λは前記第1光および前記第2光の波長であり、前記断面は前記コアを伝搬する光の進行方向に垂直な断面であり、ε1は前記第2分岐光の電界の第2位相に対する前記第1分岐光の電界の第1位相の差分であり、前記第1位相は前記第1出力ポートにおける位相であり、前記第2位相は前記第2出力ポートにおける位相であり、εは前記第4分岐光の電界の第4位相に対する前記第3分岐光の電界の第3位相の差分であり、前記第3位相は前記第3出力ポートにおける位相であり、前記第4位相は前記第4出力ポートにおける位相であり、Φは式(8)により与えられる位相であり、Φ1は前記第1分岐光に前記第1アーム導波路が与える位相であり、Φ2は前記第2分岐光に前記第2アーム導波路が与える位相であり、Φ3は前記第3分岐光に前記第3アーム導波路が与える位相であり、Φ4は前記第4分岐光に前記第4アーム導波路が与える位相であり、mは整数であり、kは+1または-1であり、位相の単位はラジアンである
光90度ハイブリッド。
【請求項2】
前記光導波路における前記パラメータの実際の値は、前記第1の値に特定の偏差を加えた値であることを
特徴とする請求項1に記載の光90度ハイブリッド。
【請求項3】
前記第1の値は、前記第1光、前記第2光、前記第1~第4分岐光それぞれの進路に沿って変化することを
特徴とする請求項1または2に記載の光90度ハイブリッド。
【請求項4】
前記パラメータは、前記コアの幅であることを
特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光90度ハイブリッド。
【請求項5】
前記第1分波器および前記第2分波器はそれぞれ、2×2多モード干渉計であり、
前記第1合波器および前記第2合波器はそれぞれ、2×2多モード干渉計であることを
特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光90度ハイブリッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光90度ハイブリッドに関する。
【背景技術】
【0002】
光90度ハイブリッドは、位相が90°ずつ異なる4つの干渉光(すなわち、光の干渉により発生する光)を、信号光と、信号光と略同じ波長を有する参照光とから生成する光学装置である(例えば、特許文献1~5参照)。光90度ハイブリッドは例えば、高速大容量通信が可能なデジタル・コヒーレント光通信の受信機に用いられる。光90度ハイブリッドから出力される干渉光は、バランス型光検出器により位相が略90°ずつ異なる2つの電気信号に変換される。この電気信号から、直交する2つの送信信号が復調される。
【0003】
光90度ハイブリッドは、信号光および参照光それぞれを2分割し、分割された参照光(または、信号光)に別々の位相を与える。その後、分割された参照光の一方と分割された信号光の一方とが合波され、更に分割された参照光の他方と分割された信号光の他方とが合波されて、位相が略90°ずつ異なる4つの干渉光が生成される。
【0004】
干渉光の位相差が90°からずれると、干渉光から得られる2つの電気信号の直交性が崩れその結果、復調された信号の波形が劣化する。従って、干渉光の位相差の90°からのずれ(以下、位相誤差と呼ぶ)は、小さいほど好ましい。
【0005】
ところで、信号光の波長が変化すると、干渉光の位相誤差も変化する。そこで、信号光の波長が変化しても、干渉光の位相誤差が略0°に保たれる技術が提案されている(例えば、特許文献3~5参照)。この技術は、波長多重通信(特に、Cバンドなどの広い波長範囲を用いる波長多重通信)において重要である。
【0006】
干渉光の位相誤差は、光90度ハイブリッドに含まれる光導波路の幅等が設計値からずれても変化する。設計値からのずれ(すなわち、製造誤差)が大きくなると、位相誤差も大きくなる。そこで、製造誤差が大きくなっても、干渉光の位相誤差が略0°に保たれる技術も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
ところで、多くの光90度ハイブリッドは例えば、多モード干渉導波路(例えば、非特許文献1参照)等により信号光および参照光を分割(または合波)する。光を分割(または合波)する光素子としては、多モード干渉導波路以外にも種々の素子が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-177109号公報
【特許文献2】米国特許第10731383号明細書
【特許文献3】特開2011-18002号公報
【特許文献4】国際公開第2011/010469号
【特許文献5】特開2021-148965号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lucas. B. Sodano and Erik C. M. Pennings, "Optical Multi-Mode Interference Devices Based on Self-Imaging", JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, vol. 13, no. 4, apri; 1995, pp.615-627.
【非特許文献2】Weijie Chang, et al., "Inverse design and demonstration of an ultracompact broadband dual-mode 3 dB power splitte", Optics Express, Vol. 26, No. 18, 2018, pp.24135-24144.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の技術には、波長変化(すなわち、波長の変化)による位相誤差の増加を抑制できても、製造誤差が大きくなると、位相誤差も大きくなるという問題がある。そこで、本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一つの実施の形態では、光90度ハイブリッド、第1出力ポートと、前記第1出力ポートとは異なる第2出力ポートとを有する第1分波器と、第3出力ポートと、前記第3出力ポートとは異なる第4出力ポートとを有し、前記第1分波器とは異なる第2分波器と、第1入力ポートと、前記第1入力ポートとは異なる第2入力ポートとを有する第1合波器と、第3入力ポートと、前記第3入力ポートとは異なる第4入力ポートとを有し、前記第1合波器とは異なる第2合波器と、前記第1出力ポートと前記第3入力ポートとを接続する第1アーム導波路と、前記第2出力ポートと前記第2入力ポートとを接続する第2アーム導波路と、前記第3出力ポートと前記第1入力ポートとを接続する第3アーム導波路と、前記第4出力ポートと前記第4入力ポートとを接続する第4アーム導波路とを有し、前記第1分波器は、第1光を第1分岐光と第2分岐光に分岐して、前記第1分岐光を前記第1出力ポートから出力し、前記第2分岐光を前記第2出力ポートから出力し、前記第2分波器は、第2光を第3分岐光と第4分岐光に分岐して、前記第3分岐光を前記第3出力ポートから出力し、前記第4分岐光を前記第4出力ポートから出力し、前記第1合波器は、前記第2アーム導波路を介して入射する前記第2分岐光と、前記第3アーム導波路を介して入射する前記第3分岐光とを合波して、第1干渉光および前記第1干渉光とは逆位相の第2干渉光を生成し、前記第2合波器は、前記第4アーム導波路を介して入射する前記第4分岐光と、前記第1アーム導波路を介して入射する前記第1分岐光とを合波して、第3干渉光および前記第3干渉光とは逆位相の第4干渉光を生成し、前記第1~第2分波器、前記第1~第4アーム導波路、および前記第1~第2合波器はそれぞれ、コアと前記コアを囲むクラッドとを有する光導波路の一部であり、前記光導波路は、前記コアの断面の大きさ又は前記断面の形に基づくパラメータの第1の値からの偏差をXとすると、λが特定の波長であって且つXがゼロである場合に、次式(1)~(7)が満たされるように構成され、
【0012】
【数1】
【0013】
【数2】
【0014】
【数3】
【0015】
【数4】
【0016】
【数5】
【0017】
【数6】
【0018】
【数7】
【0019】
【数8】
【0020】
ただし、λは前記第1光および前記第2光の波長であり、前記断面は前記コアを伝搬する光の進行方向に垂直な断面であり、ε1は前記第2分岐光の電界の第2位相に対する前記第1分岐光の電界の第1位相の差分であり、前記第1位相は前記第1出力ポートにおける位相であり、前記第2位相は前記第2出力ポートにおける位相であり、εは前記第4分岐光の電界の第4位相に対する前記第3分岐光の電界の第3位相の差分であり、前記第3位相は前記第3出力ポートにおける位相であり、前記第4位相は前記第4出力ポートにおける位相であり、Φは式(8)により与えられる位相であり、Φ1は前記第1分岐光に前記第1アーム導波路が与える位相であり、Φ2は前記第2分岐光に前記第2アーム導波路が与える位相であり、Φ3は前記第3分岐光に前記第3アーム導波路が与える位相であり、Φ4は前記第4分岐光に前記第4アーム導波路が与える位相であり、mは整数であり、kは+1または-1であり、位相の単位はラジアンである。
【発明の効果】
【0021】
一つの側面では、本発明によれば、波長変化に伴う位相誤差の増加(正確には、位相誤差の絶対値の増加)を抑制しつつ、構造パラメータの偏差(例えば、製造誤差)の増加(正確には、偏差の絶対値の増加)に伴う位相誤差の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、光90度ハイブリッド2の特徴を説明する図である。
図2図2は、実施の形態の光90度ハイブリッド8の一例を示す図である。
図3図3は、光90度ハイブリッド8の動作を説明する図である。
図4図4は、図2のIV,XII-IV,XII線に沿った断面図である。
図5図5は、ε '+ε 'と波長λの関係の一例を示す図である。
図6図6は、シミュレーションに用いた2×2MMIの平面図である。
図7図7は、位相シフト部32を有する第1~第4アーム導波路14を説明する図である。
図8図8はi番目の位相シフト部32のコア34の平面図である。
図9図9は、式(16)によって得られるΦと波長λの関係の一例を示す図である。
図10図10は、位相誤差Δθと波長λの関係の一例を示す図である。
図11図11は、第1~第2分波器10a,10bを1×2MMIで形成した光90度ハイブリッドの位相誤差Δθと波長λとの関係の一例を示す図である。
図12図12は、実施の形態の光90度ハイブリッド8の製造方法の一例を説明する図である。
図13図13は、光90度ハイブリッド8の変形例108の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。図面が異なっても同じ構造を有する部分等には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
(1)光90度ハイブリッドの説明
図1は、光90度ハイブリッド2の特徴を説明する図である。光90度ハイブリッド2は、波長が同じ2つの光4,6が入力されると、2つの光4,6を混合して、位相が略90°ずつ異なる4つの干渉光Ip,In,Qp,Qnを出力するように構成された装置である。干渉光Ipと干渉光Inの位相差の絶対値は、略180°である。干渉光Qpと干渉光Qnの位相差の絶対値は、略180°である。干渉光Ipと干渉光Qpの位相差の絶対値は、略90°(好ましくは、85°以上95°以下)である。干渉光Inと干渉光Qnの位相差の絶対値は、略90°(好ましくは、85°以上95°以下)である。干渉光の位相差とは、干渉光の光強度(すなわち、パワー)の位相差のことである。実施の形態の光90度ハイブリッドは、これらの特性を有する装置である。
【0025】
(2)構造および動作
図2は、実施の形態の光90度ハイブリッド8の一例を示す図である。図3は、光90度ハイブリッド8の動作を説明する図である。図4は、図2のIV,XII-IV,XII線に沿った断面図である。
【0026】
光90度ハイブリッド8は、第1出力ポートPout1と第2出力ポートPout2とを有する第1分波器10aを備える。第1分波器10aは例えば、2×2多モード干渉計(Multimode Interferometer)である。2×2多モード干渉計は以下、2×2MMIと呼ばれる。第2出力ポートPout2は例えば、後述する第1入力光16a(図3参照)が入射する入力ポートPAに対するスルーポート(すなわち、入力ポートPAに対向する出力ポート)である。第1出力ポートPout1は例えば、入力ポートPAに対するクロスポート(すなわち、スルーポートとは別のもう一つの出力ポート)である。
【0027】
光90度ハイブリッド8は更に、第3出力ポートPout3と第4出力ポートPout4とを有する第2分波器10bを備える。第2分波器10bは例えば、2×2MMIである。第4出力ポートPout4は例えば、後述する第2入力光16bが入射する入力ポートPBに対するスルーポート(すなわち、入力ポートPBに対向する出力ポート)である。第3出力ポートPout3は例えば、入力ポートPBに対するクロスポートである。
【0028】
光90度ハイブリッド8は更に、第1入力ポートPin1と第2入力ポートPin2とを有する第1合波器12aを備える。第1合波器12aは例えば、2×2MMIである。
【0029】
光90度ハイブリッド8は更に、第3入力ポートPin3と第4入力ポートPin4とを有する第2合波器12bを備える。第2合波器12bは例えば、2×2MMIである。
【0030】
光90度ハイブリッド8は更に、第1出力ポートPout1と第3入力ポートPin3とを接続する第1アーム導波路14aを有する。光90度ハイブリッド8は更に、第2出力ポートPout2と第2入力ポートPin2とを接続する第2アーム導波路14bを有する。光90度ハイブリッド8は更に、第3出力ポートPout3と第1入力ポートPin1とを接続する第3アーム導波路14cを有する。光90度ハイブリッド8は更に、第4出力ポートPout4と第4入力ポートPin4とを接続する第4アーム導波路14dを有する。第1~第4アーム導波路14a,14b,14c,14dは例えば、チャネル導波路である。
【0031】
第1分波器10a(図3参照)は、第1光16a(以下、第1入力光と呼ぶ)を第1分岐光18aと第2分岐光18bに分岐して、第1分岐光18aを第1出力ポートPout1から出力し、第2分岐光18bを第2出力ポートPout2から出力する。第1分岐光18aおよび第2分岐光18bは、第1入力光16aの上記分岐によって得られる光である。第1入力光16aは例えば、参照光LOである。
【0032】
第2分波器10bは、第2光16b(以下、第2入力光と呼ぶ)を第3分岐光18cと第4分岐光18dに分岐して、第3分岐光18cを第3出力ポートPout3から出力し、第4分岐光18dを第4出力ポートPout4から出力する。第3分岐光18cおよび第4分岐光18dは、第2入力光16bの上記分岐によって得られる光である。第2入力光16bは例えば、信号光Sである。
【0033】
第1合波器12aは、第2アーム導波路14bを介して入射する第2分岐光18bと、第3アーム導波路14cを介して入射する第3分岐光18cとを合波して、第1干渉光IF1と第2干渉光IF2を生成する。第1合波器12aは、生成した第1干渉光IF1および同じく生成した第2干渉光IF2を出力する。第2干渉光IF2は、第1干渉光IF1とは逆位相の干渉光である。第1干渉光IF1および第2干渉光IF2は、第2分岐光18bと第3分岐光18cとの干渉によって発生す光である。第1干渉光IF1は、図1を参照して説明した干渉光Inである。第2干渉光IF2は、図1を参照して説明した干渉光Ipである。
【0034】
第2合波器12bは、第4アーム導波路14dを介して入射する第4分岐光18dと第1アーム導波路14aを介して入射する第1分岐光18aとを合波して、第3干渉光IF3と第4干渉光IF4とを生成する。第2合波器12bは、生成した第3干渉光IF3および同じく生成した第4干渉光IF4を出力する。第4干渉光IF4は、第3干渉光IF3とは逆位相の干渉光である。第3干渉光IF3および第4干渉光IF4は、第4分岐光18dと第1分岐光18aとの干渉によって発生す光である。第3干渉光IF3は、図1を参照して説明した干渉光Qnである。第4干渉光IF4は、図1を参照して説明した干渉光Qpである。
【0035】
第1~第2分波器10a,10b、第1~第4アーム導波路14a,14b,14c,14d、および第1~第2合波器12a,12bはそれぞれ、コア20(図4参照)とコア20を囲むクラッド22とを有する光導波路24の一部である。クラッド22は、コア20より屈折率が低い部材である。
【0036】
光導波路24は、構造パラメータ(例えば、コア20の幅W)の第1の値(例えば、設計値)からの偏差を変数Xとすると、波長λが特定の波長であって且つXがゼロである場合に、次式(1)~(7)が満たされるように構成された光素子である。当該場合は以下、最適条件と呼ばれる。
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
【0039】
【数11】
【0040】
【数12】
【0041】
【数13】
【0042】
【数14】
【0043】
【数15】
【0044】
【数16】
【0045】
ただし、λは第1光16aおよび第2光16bの波長である(以下、同様)。「構造パラメータ」とは、コア20の断面の大きさ又は当該断面の形に基づくパラメータのことである。当該「断面」とは、コア20(図4参照)を伝搬する光の進行方向(換言するならば、進路)に垂直な断面のことである。
【0046】
「コアの大きさ」に基づくパラメータとは例えば、コア20の寸法(例えば、幅Wや厚さT)のことである。「コアの形」に基づくパラメータとは例えば、コア20の側壁と底面との角度(すなわち、側壁角)である。
【0047】
コア20の幅Wとは、上記「断面」(すなわち、コア20を伝搬する光の進行方向に垂直な断面)の寸法であって、光導波路24が配置された基板Subに平行な方向Hの寸法である。コア20の厚さTとは、上記「断面」の寸法であって、光導波路24が配置された基板Subに垂直な方向Vの寸法である。
【0048】
上述したように、「第1の値」は例えば、光90度ハイブリッド8の製造に用いられる設計値(すなわち、光90度ハイブリッド8の設計の結果得られる構造パラメータの目標値)である。上記「偏差」は例えば、製造誤差である。製造誤差とは例えば、コア20の幅W(又は、厚さT)の設計値Aと、コア20の幅W(又は、厚さT)の実際の値Bの差(=B-A)である。多くの場合、製造誤差は、素子内の位置に拘わらず略一定になる。
【0049】
構造パラメータの値xは、上記「第1の値」Xに偏差Xを加えた値である。換言するならば、構造パラメータの値xは、x=X+Xと表せる。従って、光導波路24における構造パラメータの実際の値は、特定の偏差(例えば、製造誤差25nm)を第1の値X(例えば、設計値1.136μm)に加えることで得られる値(例えば、1.161μm)である。特定の偏差は、種々の値(例えば、-25nm、0nm、+25nm等)をとり得る。
【0050】
「第1の値」Xは、第1光16a、第2光16b、第1~第4分岐光18a,18b,18c,18dそれぞれの進路に沿って変化する。例えば、第1分波器10aにおけるコア幅の第1の値X(例えば、設計値)は、第1アーム導波路14aにおけるコア幅の第1の値X(例えば、設計値)より大きい。「コア幅」とは、コアの幅のことである。
【0051】
ε1は、第2分岐光18bの電界の第2位相Ph2に対する第1分岐光18aの電界の第1位相Ph1の差分(=Ph1-Ph2)である。ただし第1位相Ph1は、第1出力ポートPout1における位相である。第2位相Ph2は、第2出力ポートPout2における位相である。
【0052】
εは、第4分岐光18dの電界の第4位相Ph4に対する第3分岐光18cの電界の第3位相Ph3の差分(=Ph3-Ph4)である。ただし第3位相Ph3は、第3出力ポートPout3における位相である。第4位相Ph4は、第4出力ポートPout4における位相である。
【0053】
Φは、式(8)により与えられる位相である。Φ1は、第1分岐光18aに第1アーム導波路14aが与える位相(すなわち、第1分岐光18aが第1アーム導波路14aを通過する事で、第1分岐光18aの位相に生じる変化量;以下、同様)である。Φ2は、第2分岐光18bに第2アーム導波路14bが与える位相である。Φ3は、第3分岐光18cに第3アーム導波路14cが与える位相である。Φ4は、第4分岐光18dに第4アーム導波路14dが与える位相である。mは整数である。kは、+1または-1である。位相の単位は、特に断らない限りラジアンである(以下、同様)。なお、上記「位相」には、時間と共に変化するωt(ωは光の角周波数、tは時間)は含まれない。
【0054】
ε1~ε2およびΦ1~Φ4は、λおよびXの関数である。ただし、ε1~ε2およびΦ1~Φ4は、第1入力光16aの波長および第2入力光16bの波長が一致する場合に得られる関数である。
【0055】
以下の説明では、第1合波器12aと第2合波器12bとは、同じ構造を有する2×2MMIとする。しかし、第1合波器12aと第2合波器12bとが同じ構造を有する2×2MMIでなくても、以下に説明する結論は変わらない。だだし、第1合波器12aは、第1干渉光IF1と、第1干渉光IF1とは逆位相の第2干渉光IF2を出力するように構成された光素子である。同様に、第2合波器12bは、第3干渉光IF3と、第3干渉光IF3とは逆位相の第4干渉光IF4とを出力するように構成された光素子である。
【0056】
式(9)は、第2干渉光IF2(すなわち、干渉光Ip)と第4干渉光IF4(すなわち、干渉光Qp)の位相差ΔPを与える式である。
【0057】
【数17】
【0058】
式(7)から明らかなように、波長λが上記「特定の波長」であって且つ上記構造パラメータが第1の値に一致する場合、位相差ΔPは-k×π/2-2mπ(kは1または-1,mは整数)になる。しかし、構造パラメータが第1の値からズレたり、波長λが「特定の波長」からずれると、位相差ΔPは変化し、-k×π/2-2mπ-Δθになる。Δθは以下、位相誤差と呼ばれる。従って、式(10)が得られる。
【0059】
【数18】
【0060】
ここで、k=-1およびm=0とすると、位相誤差Δθは、式(11)で表される。
【0061】
【数19】
【0062】
k=-1およびm=0でなくても、以下に説明する結論は変わらない。Φは、式(8)に示した関数である。
【0063】
式(12)は、位相誤差Δθの全微分δ(Δθ)を示す式である。
【0064】
【数20】
【0065】
ただし、δλはλの変化量である。δXはXの変化量である。
【0066】
式(12)に示すようにδλの係数は、λに対するΦの偏微分と、λに対するε1+ε2の偏微分との和である。式(1)~(3)から明らかなように、λが特定の波長であって且つ偏差Xがゼロの場合(すなわち、上記「最適条件」)、Φのλに対する偏微分と、λに対するε1+ε2の偏微分とは互いに逆符号になる。従って、λが上記「特定の波長」であって且つ偏差Xがゼロの場合、式(12)のδλの係数は小さくなる。式(12)のδXの係数についても同様である。
【0067】
従って、実施の形態によれば、波長λの変化に伴う位相誤差Δθの変化(すなわち、位相誤差の波長依存性)を抑制しつつ、偏差X(例えば、製造誤差)の増加(正確には、偏差Xの絶対値の増加)に伴う位相誤差Δθの増大を抑制できる。なお、λが上記「特定の波長」であって且つ偏差Xがゼロの場合に、δλの係数およびδXの係数をゼロにすることは容易である(「(4)アーム導波路の具体例」参照)。
【0068】
(3)分波器
「(2)構造および動作」で例示したように、第1~第2分波器10a,10b(図3参照)は例えば、2×2MMIにより実現される。そこで、2×2MMIにより実現された第1~第2分波器10a,10bが、式(1)、(2)、(4)、(5)を満たすことを説明する。
【0069】
2×2MMIにより実現された第1分波器10aのεは、略-π/2である。別の2×2MMIにより実現された第2分波器10bのεも、略-π/2である。そこで、εの-π/2からの偏差ε 'と、εの-π/2からの偏差ε 'とを用いて、式(11)を以下のように変形する。
【0070】
【数21】
【0071】
ただし、ε 'およびε 'は、ε=-π/2+ε 'およびε=-π/2+ε 'を満たす変数である。
【0072】
図5は、ε '+ε 'と波長λ(すなわち、第1~第2入力光16a,16bの波長)の関係の一例を示す図である。図5は、シミュレーションにより算出されたグラフである。当該シミュレーションでは、第1分波器10aと第2分波器10bとは、同じ構造を有する2×2MMIとした。縦軸は、ε '+ε 'である。横軸は、波長λである。横軸の範囲は、Cバンドを含む広い範囲(1.525~1.57μm)である(図9~11についても同様)。ε '+ε 'は、位相誤差Δθのうち分波器10(すなわち、第1~第2分波器10a,10b)で発生する部分である。
【0073】
図6は、シミュレーションに用いた2×2MMIの平面図である。当該2×2MMIは、コアがSiでクラッドがSiOのチャネル導波路である。コア20の厚さは、220nmである。第1入力光16aおよび第2入力光16bのモードは、TE0とした。コア20の各部分の寸法は、図6に示されている。
【0074】
図5の実線26は、コア20の幅Wの偏差X(例えば、製造誤差)が0nmの場合に得られるグラフである。当該グラフは、ε '+ε 'と波長λの関係を示すグラフである(以下、同様)。破線28は、コア20の幅Wの偏差Xが25nmの場合に得られるグラフである。一点鎖線30は、コア20の幅Wの偏差Xが-25nmの場合に得られるグラフである。
【0075】
実線26が示すように、偏差Xが0nmの場合、ε '+ε 'は、横軸の中心波長1.5475μm近くの波長λで0度となる。更に実線26が示すように、λ=λ且つX=0の場合、波長λに対するε '+ε 'の偏微分の符号はプラスである。
【0076】
上述したように、第1分波器10aを実現する2×2MMIと第2分波器10bを実現する2×2MMIとは同じ構造を有するので、ε 'とε 'は一致する。従って、λ=λおよびX=0における波長λに対するε 'の偏微分はプラスである。波長λに対するε 'の偏微分についても、同様である。
【0077】
ところで、ε 'の定義から明らかなように、ε 'の偏微分とεの偏微分とは一致する。ε 'の偏微分についても同様である。従って第1~第2分波器10a,10bは、λ=λ且つX=0である場合、εの偏微分に関する式(1)およびεの偏微分に関する式(2)を満たす。
【0078】
更に、破線28と一点鎖線30から明らかなように、偏差Xに対するε ' ε 'の偏微分の符号はマイナスである。従って、第1~第2分波器10a,10bは、λ=λ且つX=0である場合、式(4)および(5)を満たす。
【0079】
すなわち2×2MMIによれば、λが特定の波長λであって且つ偏差Xがゼロの場合に、式(1),(2),(4),(5)を満たす分波器10(すなわち、第1~第2分波器10a,10b)を実現できる。
【0080】
付言するならば、図5に示す例で式(1),(2),(4),(5)が満たされる範囲は、λが1.525nm以上1.57nm以下であって且つ偏差Xが-25nm以上で25nm以下の広い範囲である。
【0081】
―ε 'およびε 'の波長依存性―
2×2MMIでは、入力光の波長(図5ではλ)が最適波長(図5に示す例ではλ)から離れると、出力ポートに結像する電界分布(以下、結像分布と呼ぶ)の中心が出力ポートの中心からずれる。その結果、2つの出力ポートそれぞれから出射する導波モード(すなわち、出力光)の位相差εに変化が生じる。すなわち、入力光の波長λが変化すると、出力光の位相差εの変化量(すなわち、ε 'およびε ')が、ゼロからゼロ以外の値に変化する。
【0082】
従って、ε 'の波長λに対する偏微分は、ゼロ以外の値になる。ε 'の波長λに対する偏微分についても同様である。すなわち、ε 'およびε 'は波長依存性を持つ。ε 'およびε 'は、図5に示すように、波長λと共に増加するので、εは式(1),(2)を満たす。
【0083】
―ε 'およびε 'の製造誤差(偏差X)依存性―
式(14)は、MMIの損失が最小となる素子長L(図6参照)を示す数式である。
【0084】
【数22】
【0085】
ただし、nはMMIの実効屈折率である。Weは、MMIの実効的なコア幅、Λは入力光の波長である。式(14)は、非特許文献1の式(6)、(19)から容易に得られる(ただし、p=1とする)。
【0086】
MMIの素子長Lが式(14)を満たすと、損失が最小になると共に、出力ポートから出射する導波モードの位相差は略-π/2になる。すなわち、ε 'およびε 'は略ゼロになる。従って、式(14)を満たすΛ(以下、ゼロ位相差波長と呼ぶ)は、ε 'およびε 'が略ゼロになる波長である。
【0087】
多くのMMIでは、コアの幅W(図6参照)は十分大きいので、実効的なコア幅Weと実際のMMIの幅Wは略一致する。式(14)から明らかなように、幅Wにプラスの偏差Xが発生すると、ゼロ位相差波長Λは長波長側にシフトする。従って、プラスの製造誤差が発生すると、図5の実線26は、長波長側にシフトする(図5の破線28参照)。
一方、幅Wにマイナスの偏差Xが発生すると、ゼロ位相差波長Λは短波長側にシフトする。従って、マイナスの製造誤差が発生すると、図5の実線26は、短波長側にシフトする(図5の一点鎖線30参照)。
【0088】
このため、ε 'およびε 'の製造誤差(例えば、偏差X)に対する偏微分は、マイナスになる。すなわち、2×2MMIによれば、偏差Xに関する式(4),(5)が満たされる。
【0089】
以上の説明では、偏差Xは、コアの幅Wの偏差である。しかし、別の偏差X(例えば、コアの厚さTの製造誤差やコアの側壁角の製造誤差)についても、同様の結論が得られる。
【0090】
付言するならば、TE0モードは、コアの幅方向に平行な電界を有するので、コアの幅方向の製造誤差の影響を受け易い。一方、TM0モードは、コアの厚さ方向に平行な電界を有するので、コアの厚さ方向の製造誤差の影響を受け易い。従って、第1~第2入力光16a,16bがTM0モードの場合には、コア20の厚さT(図4参照)の偏差Xに対して、式(4),(5)が満たされることが好ましい。
【0091】
(4)アーム導波路
第1~第4アーム導波路14(図3参照)は例えば、位相シフト部(特許文献5参照)を有するチャネル導波路によって実現される。ここでは、位相シフト部を有するチャネル導波路によって実現された第1~第4アーム導波路14が、式(3),(6)を満たすことを示す。
【0092】
図7は、位相シフト部32を有する第1~第4アーム導波路14を説明する図である。位相シフト部32とは、あるアーム導波路(例えば、第1アーム導波路14a)の一部であって、当該アーム導波路14に他のアーム導波路14(例えば、第2アーム導波路14b)とは異なる光路長を与える部分である。アーム導波路14の位相シフト部以外の部分は以下、非位相シフト部と呼ばれる。あるアーム導波路14(例えば、第1アーム導波路14a)の非位相シフト部は、他のすべてのアーム導波路14(例えば、第2~第4アーム導波路14b,14c,14d)の非位相シフト部と同じ光路長を有する。
【0093】
以下の説明では、第1アーム導波路14a(図7参照)の位相シフト部を、第1位相シフト部32aと呼ぶ。他のアーム導波路14の位相シフト部についても、同様である。図8はi番目(iは1~4の整数、以下同様)の位相シフト部32のコア34の平面図である。図8に示すように、i番目の位相シフト部32は例えば、幅Wiと長さLiとを有するチャネル導波路である。コア34は、図4を参照して説明した光導波路24のコア20の一部である。
【0094】
式(15)は、第i番目のアーム導波路(例えば、第1アーム導波路14a)が、第i番目の分岐光(例えば、第1分岐光18a)に与える位相Φiを示す式である。
【0095】
【数23】
【0096】
ただしΦは、各アーム導波路14(例えば、第1アーム導波路14a)の非位相シフト部が、当該アーム導波路を伝搬する分岐光(例えば、第1分岐光18a)に与える位相である。Neff(λ,W)は、第i番目のアーム導波路を伝搬する分岐光の実効屈折率である。当該Neff(λ,W)は、波長λとコア34の幅Wの関数である。
【0097】
eff(λ,W)は、例えば有限要素法(Finite Element Method)により算出できる。Neff(λ,W)は、コア34の断面の大きさ(例えば、幅や厚さ)および形(例えば、側壁角)と、コア34の材料屈折率と、コア34を囲むクラッドの材料屈折率とに基づいて算出される。
【0098】
式(15)により与えられるΦ1~Φ4を式(8)に代入すると、式(16)が得られる。ただし、説明を簡単にするため、Φ1=Φ3およびΦ2=Φ4とする。
【0099】
【数24】
【0100】
図9は、式(16)によって得られるΦと波長λの関係の一例を示す図である。図9は、シミュレーションにより算出されたグラフである。縦軸は、Φ-π/2である。横軸は、波長λである。Φ-π/2は、位相誤差Δθのうち第1~第4アーム導波路14a,14b,14c,14dで発生する部分である。
【0101】
図9のシミュレーションに用いたアーム導波路14は、コアがSiでクラッドがSiOのチャネル導波路である。当該アーム導波路14のコアは、図5のシミュレーションに用いた2×2MMIのコアと同じ厚さ(すなわち、220nm)を有する。アーム導波路14を伝搬する光のモードは、図5のシミュレーションに用いたモード(すなわち、TE0)とした。式(17)は、シミュレーションに用いた位相シフト部32の寸法を示す複数の式である。
【0102】
【数25】
【0103】
式(17)の示すWiおよびLiの値は、|Δθ|のワースト値(すなわち、最大値)が最小となるように、遺伝的アルゴリズムによって求められた値である。Δθは、式(11)、式(16)、および、図5に示すε’+ε’と波長λとの関係に基づいて算出される。
【0104】
ただし、上記ワースト値の最小化に用いられるWiおよびLiは、偏差Xがゼロでλ=λの場合に、Φ(式(7)参照)がゼロになるように選ばれる。λは、「(3)分波器」で説明した波長である。ワースト値を最小化した範囲は、1.525μm≦λ≦1.57μm且つ-25nm≦X≦25nmを満たす範囲である。
【0105】
図9の実線36は、各位相シフト部の幅Wi(図8参照)の偏差X(例えば、製造誤差)が0nmの場合に得られるグラフである。破線38は、各位相シフト部の幅Wiの偏差Xが25nmの場合に得られるグラフである。一点鎖線40は、各位相シフト部の幅Wiの偏差Xが-25nmの場合に得られるグラフである。
【0106】
実線36が示すように、偏差Xが0nmの場合、Φ-π/2は、横軸の中心波長1.5475μmに近い波長λで0度となる。更に実線36が示すように、波長λ=λ且つ偏差X=0の場合、波長λに対するΦの偏微分の符号はマイナスである。
【0107】
更に、破線38と一点鎖線40から明らかなように、波長λ=λ且つ偏差X=0の場合、偏差Xに対するΦの偏微分の符号はプラスである。従って、上記アーム導波路14は、波長λ=λ且つ偏差X=0の場合、式(3)および(6)を満たす。
【0108】
すなわち、位相シフト部を有するチャネル導波路によれば、λが特定の波長λであって且つ偏差X(ここでは、コア幅の製造誤差)がゼロの場合に、式(3),(6)を満たすアーム導波路14を実現できる。付言するならば、図9に示す例で式(3),(6)が満たされる範囲は、λが1.525nm以上1.57nm以下であって且つ偏差Xが-25nm以上で25nm以下の広い範囲である。
【0109】
―Φの波長依存性―
式(3)は、Φが満たす波長依存性を示す式である。位相シフト部32を有するアーム導波路14によれば、式(3)を満たせる理由を説明する。先ず、式(16)内の最も右側の式をλで偏微分して、λに対するΦの偏微分(すなわち、式(3)の左辺)を求める。式(18)は、当該偏微分によって得られる式である。
【0110】
【数26】
【0111】
良く知られているように、波長λが増加するほど、クラッドへの電界の浸み出しは増加する。上記「電界」とは、コアを伝搬する光の電界を意味する(以下、同様)。
【0112】
従って、波長λが増加するほど、コアの実効屈折率は、クラッドの材料屈折率の影響を強く受ける。クラッドの材料屈折率はコアの材料屈折率より低いので、波長λが増加するほど、コアの実効屈折率は減少する。従って、波長λに対する実効屈折率Neff(λ,W1)の偏微分はマイナスである。同様に、波長λに対する実効屈折率Neff(λ,W2)の偏微分もマイナスである。
【0113】
コアの断面積が広く電界がコアに集中しているほど、波長λの増加による実効屈折率の減少量は小さくなる。従って、位相シフト部32がW1<W2を満たす場合、式(19)が成立する。
【0114】
【数27】
【0115】
式(18)~(19)から明らかなように、位相シフト部32が更にL2/L1≦1を満たす場合には、λに対するΦの偏微分は必ずマイナスになる。すなわち、式(3)が成立する。ただし、L2/L1≦1でなくても、式(3)が成立する場合は存在する。
【0116】
―Φの製造誤差(偏差X)依存性―
式(6)は、Φが満たす製造誤差(すなわち、偏差X)依存性を示す式である。位相シフト部32を有するアーム導波路14によれば、式(6)を満たせる理由を説明する。
【0117】
先ず、式(16)内の最も右側の式をコアの幅Wの偏差wで偏微分して、wに対するΦの偏微分を求める。式(20)は、当該偏微分によって得られる式である。
【0118】
偏差wは、偏差Xの一形態である。式(20)に関する説明では、混乱を避けるため、コアの幅Wの偏差は「w」で表す。
【0119】
【数28】
【0120】
良く知られているように、コアの断面積が増加するほど、コアへの電界の閉じ込めは強くなる。従って、コアの断面積が増加するほど、コアの実効屈折率は、コアの材料屈折率の影響を強く受ける。コアの材料屈折率はクラッドの材料屈折率より高いので、偏差w(すなわち、幅Wの変化量)が増加するほど、コアの実効屈折率は増加する。従って、偏差wに対する実効屈折率Neff(λ,W1)の偏微分はプラスである。同様に、偏差wに対する実効屈折率Neff(λ,W2)の偏微分はプラスである。
【0121】
コアの断面積(以下、コア断面積と呼ぶ)が広く電界がコアに集中しているほど、コア断面積の増加によってコアから新たに浸み出す電界は減少する。このため、コア断面積が広いほど、コア断面積の増加量に対する実効屈折率の増加量は小さくなる。従って、位相シフト部32がW1<W2を満たす場合には、式(21)が成立する。
【0122】
【数29】
【0123】
式(20)~(21)から明らかなように、位相シフト部32が更にL2/L1≦1を満たす場合には、wに対するΦの偏微分(すなわち、式(20)の左辺)は必ずプラスになる。wは構造パラメータの偏差Xの一形態なので、L2/L1≦1であれば式(6)は成立する。ただし、L2/L1≦1でなくても、式(6)が成立する場合は存在する。
【0124】
W1<W2およびL2/L1≦1は、式(3)が成立する為の条件(「―Φの波長依存性―」参照)と同一である。
【0125】
(5)位相誤差Δθ
2×2MMIで実現された分波器10(「(3)分波器」参照)と、位相シフト部を有するチャネル導波路で実現されたアーム導波路14(「(4)アーム導波路」参照)とを有する光90度ハイブリッドにおける位相誤差Δθを示す。図10は、位相誤差Δθ(式(13)参照)と波長λの関係の一例を示す図である。縦軸は、位相誤差Δθである。横軸は、波長λである。図10は、シミュレーションにより算出されたグラフである。
【0126】
シミュレーションに用いた分波器10(図3参照)は、図5のシミュレーションに用いた2×2MMIである。シミュレーションに用いたアーム導波路14(図7参照)は、図9のシミュレーションに用いたチャンル導波路である。
【0127】
図10の実線42は、分波器10およびアーム導波路14それぞれのコア幅の偏差X(例えば、製造誤差)が0nmの場合に得られるグラフである。破線44は、当該偏差Xが25nmの場合に得られるグラフである。一点鎖線46は、当該偏差Xが-25nmの場合に得られるグラフである。
【0128】
実線42が示すように、偏差Xが0nmの場合、位相誤差Δθは、横軸が示す広い波長範囲(1.525μm~1.57μm)に亘って略ゼロである。更に、破線44と一点鎖線46が示すように、コア幅の偏差Xが±25nmであっても、横軸が示す波長範囲における位相誤差Δθは高々±0.72度である。この値は、光90度ハイブリッドの位相誤差Δθとして許容される変動幅±5度より十分小さい。
【0129】
この様に、実施の形態によれば、波長変化に伴う位相誤差Δθの増加(正確には、Δθの絶対値の増加)を抑制しつつ、構造パラメータの偏差X(例えば、製造誤差)の増加(正確には、偏差の絶対値の増加)に伴う位相誤差Δθの増大を抑制できる。
【0130】
図11は、第1~第2分波器10a,10bを1×2MMIで形成した光90度ハイブリッドの位相誤差Δθと波長λとの関係の一例を示す図である。縦軸は、位相誤差Δθである。横軸は、波長λである。
【0131】
図11の実線48は、コア幅の偏差Xが0nmの場合に得られるグラフである。破線50は、コア幅の偏差Xが25nmの場合に得られるグラフである。一点鎖線52は、コア幅の偏差Xが-25nmの場合に得られるグラフである。
【0132】
実線48が示すように、コア幅の偏差Xが0nmの場合には位相誤差Δθは、横軸が示す広い波長範囲(1.525μm~1.57μm)に亘って略ゼロである。しかし、破線50と一点鎖線52が示すように、コア幅の偏差X(例えば、製造誤差)が25nmの場合には-2.7度の位相誤差Δθが発生し、コア幅の偏差Xが-25nmの場合には2.8度の位相誤差Δθが発生する。これは、1×2MMIで形成した第1~第2分波器10a,10bでは、式(4),(5)を満たせないためである。
【0133】
(6)使用方法
実施の形態の光90度ハイブリッド8は例えば、4値位相変調方式(Quadrature Phase Shift Keying)の受信機に用いられる。具体的には、第1分波器10a(図3参照)に参照光LOが入力され、第2分波器10bに位相が変調された信号光Sが入力される。参照光LOは、信号光Sと略同じ波長を有する光である。信号光Sの位相は、90度ずつ異なる4つの値(すなわち、0度、90度、180度、270度)で変調される。
【0134】
第1分波器10aは、参照光LOを分割して、分割された参照光LOを、第1~第2アーム導波路14a,14bを介して第1~第2合波器12a,12bに入力する。同様に、第2分波器10bは、信号光Sを分割して、分割された信号光Sを、第3~第4アーム導波路14c,14dを介して第1~第2合波器12a,12bに入力する。第1~第2合波器12a,12bはそれぞれ、分割された参照光LOと分割された信号光Sとを混合し、位相が略90度ずつ異なる4つの干渉光In,Ip,Qn,Qpを出力する。
【0135】
干渉光Inと干渉光Ipは、バランス型光検出器(図示せず)に入力され第1電気信号に変換される。干渉光Qnと干渉光Qpは、別のバランス型光検出器(図示せず)に入力され第2電気信号に変換される。第1~第2電気信号から、直交する2つの送信信号が復調される。
【0136】
以上の例では、第1分波器10aに参照光LOが入力され、第2分波器10bに信号光Sが入力される。しかし、第1分波器10aに信号光Sが入力され、第2分波器10bに参照光LOが入力されても良い。
【0137】
(7)製造方法
図12は、実施の形態の光90度ハイブリッド8の製造方法の一例を説明する図である。図12は、図2のIV,XII-IV,XII線に沿った断面図である。図4を参照して説明したように、光90度ハイブリッド8は、コア20とコアを囲むクラッド22とを有する。クラッド22は例えば、下部クラッド層54と上部クラッド層56とを有する。
【0138】
先ず、SOI(Silicon-On-Insulator)ウェハの上部Si層を部分的にエッチングして、コア20を形成する。更に、コア20が形成されたSOIウェハ上にSiO膜を堆積して、上部クラッド層56を形成する。以上の工程により、光90度ハイブリッド8が形成される。下部クラッド層54は、SOIウェハのBOX(Buried Oxide)層である。
【0139】
(8)変形例
図13は、光90度ハイブリッド8の変形例108の平面図である。変形例108の構造は、図2~3を参照して説明した光90度ハイブリッド8に類似している。従って、光90度ハイブリッド8と共通する部分については説明を省略または簡単にする。
【0140】
図2~3を参照して説明した光90度ハイブリッド8は、互に交差する第1および第3アーム導波路14a,14c(図3参照)を有する。一方、変形例108は、中央で90度曲がる4本のアーム導波路114を有する。変形例108は、この4本のアーム導波路114により、第1入力光16aの分岐光と第2入力光16bの分岐光を、第1~第2合波器12a,12bに入力する。
【0141】
変形例108によれば、アーム導波路114が交差しないので、交差損失(すなわち、光導波路の交差部分で発生する損失)の発生を回避できる。変形例108によれば更に、アーム導波路の交差部分で発生するクロストークも回避できる。
【0142】
アーム導波路114のコアをSi(または、SiN)で形成し、クラッドをSiOで形成すると、クラッドとコアとの比屈折率差が大きくなるので、アーム導波路114の屈曲部の曲率半径を小さくできる。この様な構成によれば、アーム導波路114の小型化が容易になるので、アーム導波路114の伝搬損失を更に抑制できる。
【0143】
実施の形態1の光90度ハイブリッド8は、図2~10を参照して説明した様に、分波器10で発生する位相誤差(ε +ε )が、アーム導波路で発生する位相誤差(Φ-π/2)によって相殺される様に構成される。従って、実施の形態によれば、波長変化に伴う位相誤差Δθの増加(正確には、Δθの絶対値の増加)を抑制しつつ、構造パラメータの偏差の増加(正確には、偏差の絶対値の増加)に伴う位相誤差の増大(すなわち、Δθの絶対値の増加)を抑制できる。
【0144】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施の形態は、例示であって制限的なものではない。例えば、第1~第2分波器10a,10bは、2×2MMI以外の光素子であっても良い。第1~第2分波器10a,10bは例えば、非特許文献2に開示された分波器であっても良い。非特許文献2には、コアに複数の孔を設けることで損失の波長依存性を制御可能とした分波器が開示されている。この分波器によれば、出力ポート間の位相も制御可能である。
【0145】
実施の形態の位相シフト部32は、コアの幅が一定の直線導波路である。しかし、位相シフト部32は、直線導波路以外の光導波路であっても良い。例えば、位相シフト部32は、コアの幅が徐々に増加または減少するテーパ導波路であっても良い。
【0146】
実施の形態の光導波路24は、シリコンフォトニクスに基づく光導波路である。しかし光導波路24は、シリコンフォトニクス以外の技術に基づく光導波路であっても良い。光導波路24は例えば、コア20およびクラッド22の双方がSiOで形成されるPLC(Planar Lightwave Circuit)に基づく光導波路であっても良い。或いは光導波路24は、InP導波路やGaAs導波路であっても良い。或いは光導波路24は、コア20がSiNの光導波路であっても良い。この場合、下部クラッド層54は例えばSiOであり、上部クラッド層56はSiOまたは空気である。或いは光導波路24は、図12を参照して説明した光導波路において、上部クラッド層56が省略された光導波路(すなわち、上部クラッド層56が空気で形成された光導波路)であっても良い。
【0147】
実施の形態の光導波路24は、チャネル導波路である。しかし光導波路24は、チャネル導波路以外の光導波路であっても良い。光導波路24は例えば、リブ導波路、ハイメサ導波路、およびリッジ導波路のいずれかであっても良い。
【0148】
チャネル導波路は、コアへの光の閉じ込めが強いので、アーム導波路114の屈曲部の曲率半径を小さくし易い。リブ導波路は、コアを伝搬する光の一部が、厚いリブ部から薄いスラブ部に浸み出すので、コアの側壁荒れの影響を受け難い。従ってリブ導波路によれば、アーム導波路14を低損失化できる。
【0149】
図2を参照して説明した実施の形態のアーム導波路14は、一か所で交差している。しかし、アーム導波路14は複数の箇所で交差しても良い。この様な構造によれば、アーム導波路14を短くできるので、アーム導波路14による損失を低減できる。
【0150】
実施の形態の偏差Xは、製造誤差である。しかし、偏差Xは製造誤差でなくても良い。例えば、構造パラメータの値が設計値であって且つλが特定の波長λの場合に、位相誤差Δθがゼロ度以外の値(例えば、0.05度)になるようにアーム導波路14等が設計されることもあり得る。この様な場合には、偏差Xは、位相誤差Δθが特定の波長λでゼロになる構造パラメータの値からの偏差である。
【0151】
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0152】
(付記1)
第1出力ポートと、前記第1出力ポートとは異なる第2出力ポートとを有する第1分波器と、
第3出力ポートと、前記第3出力ポートとは異なる第4出力ポートとを有し、前記第1分波器とは異なる第2分波器と、
第1入力ポートと、前記第1入力ポートとは異なる第2入力ポートとを有する第1合波器と、
第3入力ポートと、前記第3入力ポートとは異なる第4入力ポートとを有し、前記第1合波器とは異なる第2合波器と、
前記第1出力ポートと前記第3入力ポートとを接続する第1アーム導波路と、
前記第2出力ポートと前記第2入力ポートとを接続する第2アーム導波路と、
前記第3出力ポートと前記第1入力ポートとを接続する第3アーム導波路と、
前記第4出力ポートと前記第4入力ポートとを接続する第4アーム導波路とを有し、
前記第1分波器は、第1光を第1分岐光と第2分岐光に分岐して、前記第1分岐光を前記第1出力ポートから出力し、前記第2分岐光を前記第2出力ポートから出力し、
前記第2分波器は、第2光を第3分岐光と第4分岐光に分岐して、前記第3分岐光を前記第3出力ポートから出力し、前記第4分岐光を前記第4出力ポートから出力し、
前記第1合波器は、前記第2アーム導波路を介して入射する前記第2分岐光と、前記第3アーム導波路を介して入射する前記第3分岐光とを合波して、第1干渉光および前記第1干渉光とは逆位相の第2干渉光を生成し、
前記第2合波器は、前記第4アーム導波路を介して入射する前記第4分岐光と、前記第1アーム導波路を介して入射する前記第1分岐光とを合波して、第3干渉光および前記第3干渉光とは逆位相の第4干渉光を生成し、
前記第1~第2分波器、前記第1~第4アーム導波路、および前記第1~第2合波器はそれぞれ、コアと前記コアを囲むクラッドとを有する光導波路の一部であり、
前記光導波路は、前記コアの断面の大きさ又は前記断面の形に基づくパラメータの第1の値からの偏差をXとすると、λが特定の波長であって且つXがゼロである場合に、次式(1)~(7)が満たされるように構成され、
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
ただし、λは前記第1光および前記第2光の波長であり、前記断面は前記コアを伝搬する光の進行方向に垂直な断面であり、ε1は前記第2分岐光の電界の第2位相に対する前記第1分岐光の電界の第1位相の差分であり、前記第1位相は前記第1出力ポートにおける位相であり、前記第2位相は前記第2出力ポートにおける位相であり、εは前記第4分岐光の電界の第4位相に対する前記第3分岐光の電界の第3位相の差分であり、前記第3位相は前記第3出力ポートにおける位相であり、前記第4位相は前記第4出力ポートにおける位相であり、Φは式(8)により与えられる位相であり、Φ1は前記第1分岐光に前記第1アーム導波路が与える位相であり、Φ2は前記第2分岐光に前記第2アーム導波路が与える位相であり、Φ3は前記第3分岐光に前記第3アーム導波路が与える位相であり、Φ4は前記第4分岐光に前記第4アーム導波路が与える位相であり、mは整数であり、kは+1または-1であり、位相の単位はラジアンである
光90度ハイブリッド。
【0153】
(付記2)
前記光導波路における前記パラメータの実際の値は、前記第1の値に特定の偏差を加えた値であることを
特徴とする付記1に記載の光90度ハイブリッド。
【0154】
(付記3)
前記第1の値は、前記第1光、前記第2光、前記第1~第4分岐光それぞれの進路に沿って変化することを
特徴とする付記1または2に記載の光90度ハイブリッド。
【0155】
(付記4)
前記パラメータは、前記コアの幅であることを
特徴とする付記1~3のいずれか1項に記載の光90度ハイブリッド。
【0156】
(付記5)
前記第1分波器および前記第2分波器はそれぞれ、2×2多モード干渉計であり、
前記第1合波器および前記第2合波器はそれぞれ、2×2多モード干渉計であることを
特徴とする付記1~4のいずれか1項に記載の光90度ハイブリッド。
【0157】
(付記6)
前記ε1~ε2および前記Φ1~Φ4は、前記第1光の波長および前記第2光の波長が一致する場合に得られる関数であることを
特徴とする付記1に記載の光90度ハイブリッド。
【符号の説明】
【0158】
10a :第1分波器
10b :第2分波器
12a :第1合波器
12b :第2合波器
14a :第1アーム導波路
14b :第2アーム導波路
14c :第3アーム導波路
14d :第4アーム導波路
16a :第1入力光
16b :第2入力光
18a :第1分岐光
18b :第2分岐光
18c :第3分岐光
18d :第4分岐光
24 :光導波路
IF1 :第1干渉光
IF2 :第2干渉光
IF3 :第3干渉光
IF4 :第4干渉光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13