(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009821
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】プレコートフィン材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 13/18 20060101AFI20230113BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20230113BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20230113BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230113BHJP
C09D 133/26 20060101ALI20230113BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230113BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230113BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230113BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230113BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20230113BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20230113BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F28F13/18 B
F28F21/08 A
C23C26/00 A
C09D133/00
C09D133/26
B32B15/08 E
B05D7/24 303A
B05D3/02 Z
B05D3/00 D
B05D7/14 101C
B05D3/00 F
B05D7/24 302P
B05D7/24 302X
B05D7/24 302S
B05D5/00 Z
F28F1/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113421
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 涼子
(72)【発明者】
【氏名】荻原 加奈
(72)【発明者】
【氏名】小山 高弘
(72)【発明者】
【氏名】富森 岳
(72)【発明者】
【氏名】清水 慶一
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4D075AC53
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB28Z
4D075BB33Z
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4D075EB57
4F100AB10A
4F100AK01B
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4J038CG141
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4K044AB10
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4K044BC02
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】簡素な工程で製造することができ、耐食性及び親水性に優れたプレコートフィン材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】プレコートフィン材1は、基材2と、基材2上に設けられた樹脂皮膜3とを有している。樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量は0.2g/m
2以上2.5g/m
2以下である。プレコートフィン材1は、pH3の5質量%NaCl水溶液中で測定した自然電位の測定開始時点から1時間経過時点までの平均値が、基材2の自然電位の平均値に対して+0.040V以上+0.2V以下となり、流水に10分間浸漬した後の水の接触角が20°以上40°以下となる特性を有している。樹脂皮膜3は、特定の親水性重合体(A)と架橋剤(B)とを含有しており、親水性重合体(A)の含有量は、親水性重合体(A)と前記架橋剤(B)との合計100質量部に対して60質量部以上97質量部以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムからなる基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けられた樹脂皮膜と、を有するプレコートフィン材であって、
前記樹脂皮膜の単位面積当たりの質量が0.2g/m
2以上2.5g/m
2以下であり、
pH3の5質量%NaCl水溶液に前記プレコートフィン材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値が、pH3の5質量%NaCl水溶液に前記基材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値に対して+0.040V以上+0.2V以下となり、かつ、
前記プレコートフィン材を流水に10分間浸漬した後の水の接触角が20°以上40°以下となる特性を有し、
前記樹脂皮膜は、親水性重合体(A)と、前記親水性重合体(A)を架橋可能な架橋剤(B)と、を含有し、
前記親水性重合体(A)の含有量は、前記親水性重合体(A)と前記架橋剤(B)との合計100質量部に対して60質量部以上97質量部以下であり、
前記親水性重合体(A)には、
1分子中に1個の重合性二重結合とポリオキシアルキレン鎖とを有する親水性モノマー(a1)に由来する構造単位:2質量%以上50質量%以下と、
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に由来する構造単位:1質量%以上70質量%以下と、
カルボキシル基を含有するカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位:1質量%以上50質量%以下と、
前記親水性モノマー(a1)、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)及び前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)以外の重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位:0質量%以上50質量%以下と、が含まれている、プレコートフィン材。
【化1】
(ただし、前記一般式(1)におけるm及びnはそれぞれ独立に0または1のいずれかであり、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、R
4及びR
5はそれぞれ独立にメチレン基またはエチレン基を表す。)
【請求項2】
前記親水性重合体(A)は、体積基準における累積50%粒子径が5nm以上1μm以下となる粒度分布を有する微粒子である、請求項1に記載のプレコートフィン材。
【請求項3】
前記親水性重合体(A)の重量平均分子量は10,000以上である、請求項1または2に記載のプレコートフィン材。
【請求項4】
前記架橋剤(B)は、アミノ樹脂及びフェノール樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレコートフィン材。
【請求項5】
前記親水性重合体(A)には、前記親水性モノマー(a1)に由来する構造単位:5質量%以上45質量%以下と、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に由来する構造単位:5質量%以上60質量%以下と、前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位:5質量%以上35質量%以下と、前記重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位:5質量%以上45質量%以下と、が含まれている、請求項1~4のいずれか1項に記載のプレコートフィン材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のプレコートフィン材の製造方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面上に、前記親水性重合体(A)と前記架橋剤(B)とを含む塗料を塗布し、
前記塗料が塗布された前記基材を温度240℃以上300℃以下の加熱炉内で4秒以上20秒以下加熱して塗装焼付を行うことにより前記基材上に前記樹脂皮膜を形成する、プレコートフィン材の製造方法。
【請求項7】
前記塗装焼付において、風速1m/s以上5m/s以下のファンを用いて前記加熱炉内の雰囲気を対流させる、請求項6に記載のプレコートフィン材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレコートフィン材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機や冷蔵庫等に搭載される熱交換器として、多数のフィンと、これらのフィンと交差したチューブとを有する、いわゆるフィンアンドチューブ型熱交換器が多用されている。フィンは、アルミニウム(純アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。以下同じ。)からなる基板と、基板上に設けられた樹脂皮膜とを有するプレコートフィン材にプレス加工を施すことにより作製されている。
【0003】
プレコートフィン材の樹脂皮膜は、結露水による腐食を抑制するための耐食性や、結露水によるフィン間の閉塞を回避するための親水性などの種々の特性をフィンに付与することができるように構成されている。例えば、特許文献1には、アルミニウム基材上にアクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびウレタン樹脂から選ばれる1種または2種以上を構成材料とする耐食性皮膜が形成され、前記耐食性皮膜の上層にアクリル樹脂を構成材料とする親水性皮膜が形成され、前記親水性皮膜の上層にポリエチレングリコールを構成材料とする水溶性潤滑剤層が形成されていることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のプレコートフィン材においては、フィンに要求される特性を付与するために、基材上に、互いに機能の異なる複数種の樹脂皮膜が設けられている。そのため、プレコートフィン材の製造工程が煩雑になりやすく、加工コストの上昇を招きやすい。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、簡素な工程で製造することができ、耐食性及び親水性に優れたプレコートフィン材及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、アルミニウムからなる基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けられた樹脂皮膜と、を有するプレコートフィン材であって、
前記樹脂皮膜の単位面積当たりの質量が0.2g/m2以上2.5g/m2以下であり、
pH3の5質量%NaCl水溶液に前記プレコートフィン材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値が、pH3の5質量%NaCl水溶液に前記基材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値に対して+0.040V以上+0.2V以下となり、かつ、
前記プレコートフィン材を流水に10分間浸漬した後の水の接触角が20°以上40°以下となる特性を有し、
前記樹脂皮膜は、親水性重合体(A)と、前記親水性重合体(A)を架橋可能な架橋剤(B)と、を含有し、
前記親水性重合体(A)の含有量は、前記親水性重合体(A)と前記架橋剤(B)との合計100質量部に対して60質量部以上97質量部以下であり、
前記親水性重合体(A)には、
1分子中に1個の重合性二重結合とポリオキシアルキレン鎖とを有する親水性モノマー(a1)に由来する構造単位:2質量%以上50質量%以下と、
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に由来する構造単位:1質量%以上70質量%以下と、
カルボキシル基を含有するカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位:1質量%以上50質量%以下と、
前記親水性モノマー(a1)、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)及び前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)以外の重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位:0質量%以上50質量%以下と、が含まれている、プレコートフィン材にある。
【0008】
【0009】
ただし、前記一般式(1)におけるm及びnはそれぞれ独立に0または1のいずれかであり、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、R4及びR5はそれぞれ独立にメチレン基またはエチレン基を表す。
【0010】
また、本発明の他の態様は、前記の態様のプレコートフィン材の製造方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面上に、前記親水性重合体(A)と前記架橋剤(B)とを含む塗料を塗布し、
前記塗料が塗布された前記基材を温度240℃以上300℃以下の加熱炉内で4秒以上20秒以下加熱して塗装焼付を行うことにより前記基材上に前記樹脂皮膜を形成する、プレコートフィン材の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
前記プレコートフィン材には、前記特定の親水性重合体(A)と架橋剤(B)とを含む樹脂皮膜が設けられている。また、前記プレコートフィン材は、前記特定の条件で測定した場合の基材との自然電位の平均値の差、及び、接触角がそれぞれ前記特定の範囲となる特性を有している。前記プレコートフィン材は、かかる構成を有することにより、耐食性と親水性との両方をバランスよく向上させることができる。
【0012】
また、前記プレコートフィン材は、単一の樹脂皮膜により優れた耐食性と親水性とを両立することができる。それ故、前記プレコートフィン材は、簡素な工程で作製可能であり、製造コストを容易に低減することができる。
【0013】
前記プレコートフィン材の製造方法においては、前記特定の親水性重合体(A)と架橋剤(B)とを含む塗料を基材上に塗布した後、前記特定の条件で塗装焼付を行うことにより、基材上に前記樹脂皮膜が形成される。このように、前記製造方法においては、塗料の塗布及び塗装焼付をそれぞれ1回ずつ行うという簡素な工程により、耐食性及び親水性に優れたプレコートフィン材を容易に得ることができる。
【0014】
以上のように、前記の態様によれば、簡素な工程で製造することができ、耐食性及び親水性に優れたプレコートフィン材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例におけるプレコートフィン材の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例における自然電位の測定装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(プレコートフィン材)
前記プレコートフィン材は、基材と、基材の片面または両面上に設けられた樹脂皮膜とを有している。以下、プレコートフィン材の各部の構成について説明する。
【0017】
A.基材
前記プレコートフィン材において、基材を構成するアルミニウムは、純アルミニウムであってもよいし、アルミニウム合金であってもよい。例えば、基材は、A1200やA1050等の合金番号で表される化学成分を備えた純アルミニウムから構成されていてもよい。
【0018】
B.下地皮膜
基材の表面には、無機物からなる下地皮膜が設けられており、樹脂皮膜は下地皮膜上に積層されていてもよい。基材と樹脂皮膜との間に下地皮膜を設けることにより、樹脂皮膜の密着性をより向上させたり、基材の耐食性をより向上させたりすることができる。
【0019】
下地皮膜は、例えば、化成処理により形成された化成皮膜であってもよい。化成皮膜は、反応型化成処理によって形成されていてもよいし、塗布型化成処理によって形成されていてもよい。より具体的には、下地皮膜としては、リン酸クロメート等を用いたクロメート処理により形成されるクロム含有皮膜や、リン酸チタンやリン酸ジルコニウム、リン酸モリブデン、リン酸亜鉛及び酸化ジルコニウム等のクロム非含有化合物を用いたノンクロメート処理により形成されるクロムフリー皮膜等を採用することができる。
【0020】
C.樹脂皮膜
プレコートフィン材の少なくとも一方の面には、樹脂皮膜が設けられている。樹脂皮膜は、基材に直接積層されていてもよいし、下地皮膜上に積層されていてもよい。また、前記樹脂皮膜は、プレコートフィン材の最表面に露出していてもよい。前記樹脂皮膜は、耐食性及び親水性に優れていることに加えてプレス成型時の潤滑性にも優れているため、前記樹脂皮膜を最表面に設けることによりプレコートフィン材のプレス成形性を向上させることもできる。
【0021】
樹脂皮膜中には、親水性重合体(A)と、前記親水性重合体(A)を架橋可能な架橋剤(B)と、が含まれている。
【0022】
C-1.親水性重合体(A)
親水性重合体(A)は、親水性モノマー(a1)に由来する構造単位と、(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に由来する構造単位と、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位と、を含む共重合体である。親水性重合体(A)には、前述したモノマー(a1)~(a3)に由来する構造単位に加えて、更に、モノマー(a1)~(a3)以外の重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位が含まれていてもよい。
【0023】
・親水性モノマー(a1)
親水性モノマー(a1)は、1分子中に1個の重合性二重結合と、ポリオキシアルキレン鎖とを有している。親水性重合体(A)中には、1種類の親水性モノマー(a1)に由来する構造単位が含まれていてもよいし、2種類以上の親水性モノマー(a1)に由来する構造単位が含まれていてもよい。親水性重合体(A)中の親水性モノマー(a1)に由来する構造単位の含有量は、モノマー(a1)~(a4)に由来する構造単位の合計100質量%に対して2質量%以上50質量%以下である。親水性モノマー(a1)に由来する構造単位の含有量は、モノマー(a1)~(a4)に由来する構造単位の合計100質量%に対して5質量%以上45質量%以下であることが好ましい。
【0024】
親水性モノマー(a1)は、例えば、下記一般式(2)で表される化学構造を有していてもよい。
【0025】
【0026】
ただし、前記一般式(2)におけるR6~R8はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R9は水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表し、pは2~200の整数を表す。前記一般式(2)におけるpは、9~120であることが好ましく、20~100であることがより好ましい。
【0027】
このような構造を備えた親水性モノマー(a1)としては、例えば、日立化成株式会社製「FA-1000MW」及び「FA-2000MW」や、日油株式会社製「ブレンマーPME-100」、「ブレンマーPME-400」、「ブレンマーPME-1000」、「ブレンマーPME-4000」及び「ブレンマーPLE-200」等が挙げられる。なお、「ブレンマー」は日油株式会社の登録商標である。
【0028】
親水性モノマー(a1)に由来する構造単位は、プレコートフィン材の親水性を長期間に亘って維持するとともに、プレコートフィン材の表面に付着した水滴を容易に滑落させることができる。
【0029】
・(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、下記一般式(1)で表される化学構造を有している。なお、前述した「(メタ)アクリルアミド」には、アクリルアミド及びメタクリルアミドが含まれる。親水性重合体(A)中には、1種類の(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に由来する構造単位が含まれていてもよいし、2種類以上の(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に由来する構造単位が含まれていてもよい。親水性重合体(A)中の(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に由来する構造単位の含有量は、モノマー(a1)~(a4)に由来する構造単位の合計100質量%に対して1質量%以上70質量%以下である。(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に由来する構造単位の含有量は、モノマー(a1)~(a4)に由来する構造単位の合計100質量%に対して5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0030】
【0031】
ただし、前記一般式(1)におけるm及びnはそれぞれ独立に0または1のいずれかであり、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、R4及びR5はそれぞれ独立にメチレン基またはエチレン基を表す。
【0032】
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0033】
・カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基と、1個の重合性不飽和基とを有している。親水性重合体(A)中には、1種類のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位が含まれていてもよいし、2種類以上のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位が含まれていてもよい。親水性重合体(A)中のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位の含有量は、モノマー(a1)~(a4)に由来する構造単位の合計100質量%に対して1質量%以上50質量%以下である。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位の含有量は、モノマー(a1)~(a4)に由来する構造単位の合計100質量%に対して5質量%以上35質量%以下であることが好ましい。
【0034】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)に由来する構造単位は、プレコートフィン材の耐水性を向上させることができる。
【0035】
・その他の重合性不飽和モノマー(a4)
親水性重合体(A)中には、前述したモノマー(a1)~(a3)に由来する構造単位に加えて、任意成分として、これらのモノマー(a1)~(a3)以外の重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位が含まれていてもよい。親水性重合体(A)中には、1種類の重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位が含まれていてもよいし、2種類以上の重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位が含まれていてもよい。親水性重合体(A)中の重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位の含有量は、モノマー(a1)~(a4)に由来する構造単位の合計100質量%に対して0質量%以上50質量%以下である。重合性不飽和モノマー(a4)に由来する構造単位の含有量は、モノマー(a1)~(a4)に由来する構造単位の合計100質量%に対して5質量%以上45質量%以下であることが好ましい。
【0036】
重合性不飽和モノマー(a4)としては、例えば、1分子中に水酸基及び重合性不飽和基を備えた水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、炭素数2~8の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0037】
また、重合性不飽和モノマー(a4)としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン及びアリル(メタ)アクリレート等の、1分子中に2個以上の重合性不飽和結合を有する重合性不飽和モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の、炭素数1~24の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の重合性不飽和ニトリル;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びα-クロルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の、炭素数2~8の(メタ)アクリル酸含窒素アルキルエステル;エチレン及びプロピレン等のα-オレフィン;ブタジエン及びイソプレン等のジエン化合物;酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチルビニルエーテル及びn-プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル;γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン及びビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等の、加水分解性シリル基を有する不飽和化合物;グリシジル(メタ)アクリレート及びアリルグリシジルエーテル等の、エポキシ基を有する不飽和化合物が挙げられる。なお、前述した「(メタ)アクリル酸」には、アクリル酸及びメタクリル酸が含まれる。
【0038】
・親水性重合体の作製方法
親水性重合体(A)を作製するにあたっては、親水性モノマー(a1)、(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)を含むモノマー混合物を適当な溶媒中で共重合させればよい。モノマー混合物中には、必要に応じて、重合性不飽和モノマー(a4)が含まれていてもよい。溶媒としては、例えば、水や水混和性有機溶媒等を使用することができる。
【0039】
モノマー混合物中の各モノマー(a1)~(a4)の含有量は、親水性重合体(A)における各構造単位の所望の含有量に応じて適宜設定すればよい。すなわち、モノマー混合物中の各モノマー(a1)~(a4)の含有量は、モノマー(a1)~(a4)の合計100質量%に対して、親水性モノマー(a1):2質量%以上50質量%以下、(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2):1質量%以上70質量%以下、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3):1質量%以上50質量%以下、重合性不飽和モノマー(a4):0質量%以上50質量%以下の範囲から適宜設定することができる。
【0040】
モノマー混合物の共重合は、通常、ラジカル重合開始剤の存在下に行なわれる。ラジカル重合開始剤の使用量は、例えば、モノマー(a1)~(a4)の合計100質量部に対して0.2質量部以上5質量部以下の範囲内から適宜設定することができる。
【0041】
また、モノマー混合物を共重合させる際の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。モノマー混合物を共重合させる際の温度は、例えば約50℃~約160℃の範囲であってもよい。また、モノマー混合物を共重合させる際の反応時間は、例えば0.5~10時間程度とすることができる。
【0042】
・親水性重合体(A)の形態
親水性重合体(A)は、粒子状であってもよいし、粒子状ではなくてもよい。親水性重合体(A)が粒子状である場合、親水性重合体(A)は、体積基準における累積50%粒子径が5nm以上1μm以下となる粒度分布を有していることが好ましい。この場合には、樹脂皮膜を形成する過程において、塗料中の親水性重合体(A)の安定性をより向上させるとともに、親水性重合体(A)の凝集をより効果的に抑制することができる。かかる作用効果をより高める観点からは、親水性重合体(A)は、体積基準における累積50%粒子径が10nm以上500nm以下となる粒度分布を有していることがより好ましい。
【0043】
なお、親水性重合体(A)の粒度分布の測定には、粒子径測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製「コールター モデルN4MD」)等を用いればよい。
【0044】
・親水性重合体(A)の分子量
親水性重合体(A)が粒子状ではない場合、親水性重合体(A)の重量平均分子量は10,000以上であることが好ましく、20,000以上250,000以下であることがより好ましく、50,000以上250,000以下であることがさらに好ましい。
【0045】
なお、親水性重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。GPC測定装置としては、例えば東ソー株式会社製「HLC8120GPC」を用いればよい。この測定装置に、東ソー株式会社製「TSKgelG-4000HXL」「TSKgelG-3000HXL」「TSKgelG-2500HXL」及び「TSKgelG-2000HXL」の4本のカラムを取り付け、移動相として温度40℃のテトラヒドロフランを用い、移動相の流速を1mL/minの流速とし、RI検出器を用いて溶出液の屈折率差を測定することにより、クロマトグラムを取得することができる。
【0046】
・親水性重合体(A)の含有量
親水性重合体(A)の含有量は、親水性重合体(A)と架橋剤(B)との合計100質量部に対して60質量部以上97質量部以下である。樹脂皮膜中の親水性重合体(A)の含有量を前記特定の範囲とすることにより、プレコートフィン材の親水性及び耐食性をバランスよく向上させることができる。親水性重合体(A)の含有量が前記特定の範囲よりも少ない場合には、樹脂皮膜中の親水性重合体(A)の割合が少なくなり、親水性の低下を招くおそれがある。また、親水性重合体(A)の含有量が前記特定の範囲よりも多い場合には、樹脂皮膜中における親水性重合体(A)の架橋が不十分となり、耐食性の低下を招くおそれがある。
【0047】
プレコートフィン材の親水性及び耐食性をよりバランスよく向上させる観点からは、親水性重合体(A)の含有量は、親水性重合体(A)と架橋剤(B)との合計100質量部に対して76質量部以上97質量部以下であることが好ましく、78質量部以上95質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
C-2.架橋剤(B)
樹脂皮膜中の親水性重合体(A)は、架橋剤(B)によって架橋されている。架橋剤(B)としては、親水性重合体(A)を架橋させることができる化合物を使用することができる。より具体的には、架橋剤(B)としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、オキサゾリン基含有樹脂、ポリエポキシ化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤(B)は単独で使用されていてもよいし、2種以上の架橋剤(B)が併用されていてもよい。
【0049】
架橋剤(B)は、アミノ樹脂及びフェノール樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の樹脂であることが好ましい。この場合には、樹脂皮膜の耐水性をより向上させるとともに、水と接触した際の樹脂皮膜の成分の溶出をより長期間に亘って抑制することができる。
【0050】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂等が挙げられ
る。メラミン樹脂は、例えば、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を炭素数1~8の1価アルコールでエーテル化したエーテル化メラミン樹脂であってもよい。エーテル化メラミン樹脂は、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基がすべてエーテル化されている、完全エーテル化メラミン樹脂であってもよい。また、エーテル化メラミン樹脂は、メチロール基の一部がエーテル化され、メチロール基やイミノ基が残存している部分エーテル化メラミン樹脂であってもよい。
【0051】
メラミン樹脂は、完全アルキル型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂であってもよい。完全アルキル型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「サイメル232」、「サイメル232S」、「サイメル235」、「サイメル236」、「サイメル238」、「サイメル266」、「サイメル267」及び「サイメル285」等が挙げられる。
【0052】
メラミン樹脂は、メチロール基型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂であってもよい。メチロール基型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「サイメル272」等が挙げられる。
【0053】
メラミン樹脂は、イミノ型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂であってもよい。イミノ型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「サイメル202」、「サイメル207」、「サイメル212」、「サイメル253」及び「サイメル254」等が挙げられる。
【0054】
メラミン樹脂は、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂であってもよい。完全アルキル型メチル化メラミン樹脂としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「サイメル300」、「サイメル301」、「サイメル303」及び「サイメル350」等が挙げられる。
【0055】
メラミン樹脂は、イミノ基型メチル化メラミン樹脂であってもよい。イミノ基型メチル化メラミン樹脂としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル701」、「サイメル703」、「サイメル712」、「サイメル254」、「サイメル253」、「サイメル212」及び「サイメル1128」等が挙げられる。
【0056】
メラミン樹脂は、ブチルエーテル化メラミン樹脂であってもよい。ブチルエーテル化メラミン樹脂としては、例えば、三井サイテック株式会社製「ユーバン20SE60」等が挙げられる。
【0057】
尿素樹脂は、例えば、メチル化尿素樹脂やブチル化尿素樹脂等であってもよい。メチル化尿素樹脂としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「サイメルU-65」、三和ケミカル株式会社製「ニカラックMX-270」、「ニカラックMX-280」及び「ニカラックMX-290」等が挙げられる。ブチル化尿素樹脂としては、例えば、三和ケミカル株式会社製「ニカラックMX-279」、三井サイテック株式会社製「ユーバン10S60」、「ユーバン10R」、DIC株式会社製「ベッカミンP-138」、「ベッカミンP-196-M」及び「ベッカミンG-1850」等が挙げられる。
【0058】
ベンゾグアナミン樹脂は、例えば、メチル化ベンゾグアナミン樹脂やブチル化ベンゾグアナミン樹脂等であってもよい。メチル化ベンゾグアナミン樹脂としては、例えば、三和ケミカル株式会社製「ニカラックBL-60」等が挙げられる。ブチル化ベンゾグアナミン樹脂としては、例えば、DIC株式会社製「スーパーベッカミンTD-126」及びスーパーベッカミン15-594」等が挙げられる。
【0059】
これらのアミノ樹脂は、単独で使用されていてもよいし、2種以上のアミノ樹脂が併用されていてもよい。なお、「サイメル」はオルネクス ネザーランズ社の登録商標であり、「ユーバン」は三井化学株式会社の登録商標であり、「ニカラック」は日本カーバイド工業株式会社の登録商標であり、「ベッカミン」はDIC株式会社の登録商標である。
【0060】
フェノール樹脂は、例えば、フェノール化合物とアルデヒドとを酸性触媒下で縮合してなるノボラック型フェノール樹脂であってもよいし、フェノール化合物とアルデヒドとを塩基性触媒下で縮合してなるレゾール型フェノール樹脂であってもよい。また、フェノール樹脂中には、メチロール基が導入されていてもよい。さらに、フェノール樹脂中に導入されたメチロール基の一部または全部が炭素数6以下のアルコールでアルキルエーテル化されていてもよい。
【0061】
フェノール樹脂としては、例えば、住友ベークライト株式会社製「SUMILITERESINPR-HF-3」、「SUMILITERESINPR-HF-6」、「SUMILITERESINPR-53194」、「SUMILITERESINPR-53195」、「SUMILITERESINPR-54869」、「SUMILITERESINPR-16382」、「SUMILITERESINPR-51939」、「SUMILITERESINPR-53153」、「SUMILITERESINPR-53364」、「SUMILITERESINPR-53365」、「SUMILITERESINPR-50702」、DIC株式会社製「PHENOLITETD-2131」、「PHENOLITETD-2106」、「PHENOLITETD-2093」、「PHENOLITETD-2091」、「PHENOLITETD-2090」、「PHENOLITEVH-4150」、「PHENOLITEVH-4170」、「PHENOLITEVH-4240」、「PHENOLITEKH-1160」、「PHENOLITEKH-1163」、「PHENOLITEKH-1165」、「PHENOLITETD-2093-60M」、「PHENOLITETD-2090-60M」、「PHENOLITELF-4711」、「PHENOLITELF-6161」、「PHENOLITELF-4871」、「PHENOLITELA-7052」、「PHENOLITELA-7054」、「PHENOLITELA-7751」、「PHENOLITELA-1356」、「PHENOLITELA-3018-50P」、昭和高分子株式会社製「ショウノールBKM-262」、「ショウノールBRG-555」、「ショウノールBRG-556」、「ショウノールBRG-558」、「ショウノールCKM-923」、「ショウノールCKM-983」、「ショウノールBKM-2620」、「ショウノールBRL-2854」、「ショウノールBRG-5590M」、「ショウノールCKS-3898」、「ショウノールCKS-3877A」及び「ショウノールCKM-937」等が挙げられる。
【0062】
これらのフェノール樹脂は、単独で使用されていてもよいし、2種以上のフェノール樹脂が併用されていてもよい。なお、「SUMILITERESIN」は住友ベークライト株式会社の登録商標であり、「PHENOLITE」はDIC株式会社の登録商標であり、「ショウノール」はアイカ工業株式会社の登録商標である。
【0063】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート及びシクロペンタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;これらのポリイソシアネートのビウレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物;これらのポリイソシアネートと低分子量もしくは高分子量のポリオール化合物(例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなど)とをイソシアネート基過剰で反応させてなる遊離イソシアネート基含有プレポリマーなどが挙げられる。
【0064】
これらのポリイソシアネート化合物は、単独で使用されていてもよいし、2種以上のポリイソシアネート化合物が併用されていてもよい。
【0065】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物の遊離イソシアネート基をフェノール化合物、オキシム化合物、活性メチレン化合物、ラクタム化合物、アルコール化合物、メルカプタン化合物、酸アミド系化合物、イミド系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、カルバミン酸系化合物、イミン系化合物などのブロック剤で封鎖した化合物である。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、単独で使用されていてもよいし、2種以上のブロック化ポリイソシアネート化合物が併用されていてもよい。
【0066】
C-3.その他の成分
樹脂皮膜は、親水性重合体(A)と架橋剤(B)とから構成されていてもよい。また、樹脂皮膜中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、塗料用の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、顔料、防錆剤、水性有機樹脂、界面活性剤、レオロジーコントロール剤、表面調整剤、イオン液体、消泡剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0067】
また、樹脂皮膜中には、タンニン酸、没食子酸、アスコルビン酸及びその塩からなる群より選択される1種または2種以上の化合物(C)が含まれていてもよい。これらの化合物(C)は、プレコートフィン材の耐食性をより向上させる作用を有している。化合物(C)の含有量は、親水性重合体(A)と架橋剤(B)との合計100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂皮膜を形成する過程における塗料の安定性をより向上させるとともに、プレコートフィン材の耐食性及び耐水性をより向上させることができる。
【0068】
C-4.樹脂皮膜の単位面積当たりの質量
前記プレコートフィン材における前記樹脂皮膜の単位面積当たりの質量は、0.2g/m2以上2.5g/m2以下である。前記樹脂皮膜は、前記特定の親水性重合体(A)と架橋剤(B)とを含むことにより、単位面積当たりの質量が0.2g/m2となるようなごく薄い厚みにおいてもプレコートフィン材の耐食性及び親水性を向上させることができる。
【0069】
樹脂皮膜の単位面積当たりの質量が0.2g/m2未満の場合には、樹脂皮膜の厚みが薄くなりすぎるため、プレコートフィン材の耐食性の悪化を招くおそれがある。一方、樹脂皮膜の単位面積当たりの質量が2.5g/m2を超える場合には、プレコートフィン材の作製過程における塗料の使用量が多くなり、製造コストの増大を招くおそれがある。
【0070】
前記プレコートフィン材における前記樹脂皮膜の単位面積当たりの質量は、0.2g/m2以上1.0g/m2以下であることが好ましく、0.2g/m2以上0.9g/m2以下であることがより好ましい。この場合には、プレコートフィン材の耐食性及び親水性を確保しつつ、プレコートフィン材の作製過程における塗料の使用量をより低減することができる。これにより、プレコートフィン材の製造コストをより低減する効果を期待できる。
【0071】
D.プレコートフィン材の特性
前記プレコートフィン材は、pH3の5質量%NaCl水溶液に前記プレコートフィン材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値が、pH3の5質量%NaCl水溶液に前記基材を浸漬した時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値に対して+0.040V以上+0.2V以下となる特性を有している。また、前記プレコートフィン材は、プレコートフィン材を流水に10分間浸漬した後の水の接触角が20°以上40°以下となる特性を有している。
【0072】
プレコートフィン材と基材との電位差及び水の接触角がそれぞれ前記特定の範囲内であるプレコートフィン材は、高い耐食性と、高い親水性とを両立させることができる。プレコートフィン材の自然電位の平均値が基材の自然電位の平均値に対して+0.040V未満の場合には、プレコートフィン材の耐食性が不十分となるおそれがある。また、流水に浸漬した後のプレコートフィン材の水の接触角が40°を超える場合には、プレコートフィン材の親水性が不十分となるおそれがある。
【0073】
(プレコートフィン材の製造方法)
前記プレコートフィン材を作製するに当たっては、
前記基材の少なくとも一方の面上に、前記親水性重合体(A)と前記架橋剤(B)とを含む塗料を塗布し、
前記塗料が塗布された前記基材を温度240℃以上300℃以下の加熱炉内で4秒以上20秒以下加熱して塗装焼付を行うことにより前記基材上に前記樹脂皮膜を形成すればよい。
【0074】
基材としては、例えば、アルミニウム板を使用することができる。基材の厚みは、例えば0.05~0.30mmの範囲内であればよい。また、基材には、塗料を塗布する前に、化成処理等の表面処理が施されていてもよい。予め、基材の表面に化成処理を施すことにより、基材上に下地皮膜を形成し、樹脂皮膜の密着性を向上させることができる。
【0075】
塗料には、親水性重合体(A)及び架橋剤(B)が含まれている。塗料には、これらに加え、前述した添加剤や溶媒等が含まれていてもよい。基材への塗料の塗布方法は特に限定されるものではなく、バーコーターやロールコーターなどの種々の方法を採用することができる。
【0076】
基材上に塗料を塗布した後、基材を温度240℃以上300℃以下の加熱炉内で4秒以上20秒以下加熱して塗装焼付を行う。これにより、前記樹脂皮膜を形成することができる。加熱炉内の温度が前記特定の範囲よりも低い場合、または、焼付時間が前記特定の範囲よりも短い場合には、塗料の加熱が不十分となり、親水性重合体(A)の架橋が不十分となるおそれがある。その結果、プレコートフィン材の耐食性の悪化を招くおそれがある。また、加熱炉内の温度が前記特定の範囲よりも高い場合には、塗料が過度に加熱され、樹脂皮膜の劣化を招くおそれがある。
【0077】
塗装焼付においては、風速1m/s以上5m/s以下のファンを用いて加熱炉内の雰囲気を対流させることが好ましい。この場合には、基材上の塗料をより均一に加熱し、耐食性及び親水性に優れた樹脂皮膜をより確実に形成することができる。
【0078】
前記塗装焼付においては、基材の乾燥状態における最高到達温度(Peak Metal Temperature,PMT)が170℃以上220℃以下の範囲内となるようにして基材を加熱することが好ましい。この場合には、親水性重合体(A)をより確実に架橋させ、優れた耐食性及び親水性を有するプレコートフィン材をより確実に得ることができる。
【実施例0079】
前記プレコートフィン材及びその製造方法の実施例を、
図1~
図2を参照しつつ説明する。なお、本発明に係るプレコートフィン材及びその製造方法の具体的な態様は、実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0080】
本例のプレコートフィン材1は、
図1に示すように、アルミニウムからなる基材2と、基材2の両面上に設けられた樹脂皮膜3と、を有している。基材2と樹脂皮膜3との間には、下地皮膜21が介在している。樹脂皮膜3には、親水性重合体(A)と、架橋剤(B)とが含まれている。
【0081】
A.基材2
本例の基材2は、A1050アルミニウムからなる厚み0.1mmのアルミニウム板である。基材2の表面は、下地皮膜21により覆われている。本例の下地皮膜21は、具体的には、リン酸クロメートを用いたクロメート処理により形成されるクロメート皮膜である。クロメート皮膜の付着量は、基材の片面当たり、Cr原子の質量として20mg/m2である。
【0082】
B.樹脂皮膜3
本例の樹脂皮膜3は、80質量部の親水性重合体(A)と、20質量部の架橋剤(B)とから構成されている。親水性重合体(A)としては、具体的には、表1に示すように、親水性重合体(A1)または親水性重合体(A2)のいずれかが用いられている。
【0083】
親水性重合体(A1)は、30質量%の親水性モノマー(a1)と、42質量%の(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)と、20質量%のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)と、8質量%の重合性不飽和モノマー(a4)とからなるモノマー混合物の共重合体である。親水性重合体(A1)における親水性モノマー(a1)は、具体的には日油株式会社製「ブレンマーPME-1000」である。(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、20質量部のアクリルアミドと、5質量部のN-メチロールアクリルアミドと、27質量部のN-メトキシメチルアクリルアミドとから構成されている。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)はアクリル酸である。重合性不飽和モノマー(a4)は、6質量部のアクリル酸2-ヒドロキシエチルと、2質量部のメチレンビスアクリルアミドとから構成されている。
【0084】
また、親水性重合体(A2)は、20質量%の親水性モノマー(a1)と、52質量%の(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)と、20質量%のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)と、8質量%の重合性不飽和モノマー(a4)とからなるモノマー混合物の共重合体である。親水性重合体(A2)における親水性モノマー(a1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a3)及び重合性不飽和モノマー(a4)は親水性重合体(A1)と同様である。親水性重合体(A2)における(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、20質量部のアクリルアミドと、5質量部のN-メチロールアクリルアミドと、27質量部のN-メトキシメチルアクリルアミドとから構成されている。
【0085】
親水性重合体(A1)及び親水性重合体(A2)は、いずれも粒子状であり、体積基準の粒度分布における50%累積径が50nmとなる粒度分布を有している。また、親水性重合体(A1)及び親水性重合体(A2)のポリスチレン換算重量平均分子量は、いずれも200,000である。
【0086】
架橋剤(B)は、イミノ基型メチル化メラミン樹脂(ダイセル・オルネクス株式会社「サイメル701」)である。
【0087】
本例においては、表1に示すように、樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量及び塗装焼付の条件の異なる9種のプレコートフィン材(試験材S1~S9)を準備し、これらを用いて諸特性の評価を行う。表1に示す試験材S1~S9の作製方法は以下の通りである。
【0088】
C.製造方法
まず、親水性重合体(A1)または親水性重合体(A2)と架橋剤(B)とを表1に示す質量比で混合する。この混合物に、固形分量、つまり、親水性重合体(A1)、親水性重合体(A2)及び架橋剤(B)の合計量が7質量%となるように純水を加えて塗料を調製する。
【0089】
予め準備した基材2の下地皮膜21上に、バーコーターを用いて塗料を塗布した後、塗料を予備乾燥させる。その後、基材2を表1に示す温度に保持された加熱炉内に入れ、表1に示す時間加熱して塗装焼付を行う。なお、加熱炉内の雰囲気はファンにより強制対流している。炉内の温度及びファンの風速により算出される、基材の乾燥状態における最高到達温度(PMT)は表1に示す通りである。
【0090】
塗装焼付が完了した後、加熱炉からプレコートフィン材1を取り出し、室温まで冷却する。以上により、表1に示す試験材S1~S9を得ることができる。
【0091】
なお、表1に示す試験材R1~R3は、試験材S1~S9との比較のための試験材である。試験材R1及び試験材R2は、塗装焼付の条件を表1に示すように変更する以外は、試験材S6~S9と同様の方法により作製することができる。試験材R3は、親水性重合体(A2)のみからなる樹脂皮膜を有している以外は、試験材S6~S9と同様の構成を有している。試験材R3は、架橋剤(B)を添加せずに塗料を調製するとともに、塗装焼付の条件を表1に示すように変更する以外は、試験材S6~S9と同様の方法により作製することができる。
【0092】
D.評価
・プレコートフィン材と基材との電位差の測定
プレコートフィン材及び基材の自然電位の測定には、
図2に示す測定装置4が用いられる。測定装置4は、試験片5を浸漬するための溶液を入れる第1の容器41と、参照電極6を浸漬するための溶液を入れる第2の容器42と、第1の容器41内の溶液と第2の容器42内の溶液とを電気的に接続するための塩橋43と、参照電極6に対する試験片5の電位を測定するためのポテンシオスタット44と、測定した電位を記録するための記録装置45と、を有している。
【0093】
自然電位の測定に当たっては、まず、試験材または基材から縦40mm、横10mmの長方形状の試験片5を採取する。この試験片5の長手方向の一端にポテンシオスタット44との接続部51、他端に一辺5mmの正方形状の電位測定部52を設ける。そして、
図2に示すように、接続部51及び電位測定部52以外の部分に絶縁塗料53を塗布する。
【0094】
これとは別に、第1の容器41内に酢酸を用いてpHを3に調整した5%NaCl水溶液を準備するとともに、第2の容器42内に飽和NaCl水溶液を準備する。そして、第1の容器41内の溶液と第2の容器42内の溶液とを塩橋43を介して電気的に接続する。
【0095】
次に、試験片5の接続部51及び参照電極6をそれぞれポテンシオスタット44に接続する。なお、参照電極6としては、例えば、Ag/AgCl電極を使用することができる。
【0096】
この状態で第1の容器41内の5%NaCl水溶液に試験片5の電位測定部52を浸漬するととともに、第2の容器42内の飽和NaCl水溶液に参照電極6を浸漬することにより、参照電極6を基準としたときの試験片5の自然電位を測定することができる。本例においては、3分ごとに試験片5の自然電位を測定し、記録装置45に記録する。
【0097】
試験片の自然電位は、測定開始時点から時間が経過するにつれて徐々に低下し、10時間経過した時点で概ね一定の値となる傾向を示す。本例では、測定開始時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値を、試験材の自然電位の値とする。各試験材の自然電位の値を表2に示す。
【0098】
また、上記と同様の測定を、樹脂皮膜3を形成する前の基材2を用いて行う。そして、測定開始時点から1時間が経過した時点までの自然電位の平均値を基材2の自然電位の値とする。なお、基材2の自然電位は、-0.720V vs Ag/AgClである。表2の「電位差」欄に、試験材の自然電位から基材2の自然電位を差し引いた値を示す。
【0099】
なお、基材2の自然電位の測定には、プレコートフィン材1の表面を研磨し、樹脂皮膜3及び下地皮膜21を除去することによって作製された基材2を用いることもできる。
【0100】
・水の接触角
各試験材から試験片を採取したのち、温度25℃、流速5L/minの流水中に10分間浸漬する。流水から取り出した試験材の表面に2μLの純水を滴下し、滴下した時点から30秒後に水の接触角を測定する。表2に、各試験材の水の接触角を示す。
【0101】
・樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量
各試験材から一辺100mmの正方形状の試験片を採取する。この試験片の質量W1(単位:g)を測定した後、500℃の電気炉内で試験片を15分間加熱する。電気炉から取り出した試験片の質量W2(単位:g)を測定した後、加熱前からの質量の減少量W1-W2(単位:g)を算出する。この質量の減少量W1-W2を、試験片上に形成された樹脂皮膜3の総面積S(単位:cm2)で除することにより、樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量を算出することができる。表1に、各試験材における樹脂皮膜3の単位面積当たりの質量を示す。
【0102】
・耐食性
試験材から、基材2の圧延方向と長手方向とが並行になるようにして縦100mm、横50mmの長方形状の試験片を採取する。この試験片を用い、JIS Z2371:2000に準拠した方法により塩水噴霧試験を実施する。試験時間は1000時間とする。試験後の試験材の腐食面積率を算出し、JIS Z2371:2000のレイティングナンバ法によりレイティングナンバを決定する。レイティングナンバは、値が大きいほど優れた耐食性を有することを示す。表2に、各試験材のレイティングナンバを示す。
【0103】
・外観
試験材の表面を目視により観察し、樹脂皮膜3の性状を評価する。
【0104】
【0105】
【0106】
表1に示すように、試験材S1~S9は、基材上に親水性重合体(A)と架橋剤(B)とからなる樹脂皮膜が設けられている。また、表1及び表2に示すように、これらの試験材における樹脂皮膜の単位面積当たりの質量、基材との電位差及び流水浸漬後の水の接触角は、それぞれ前記特定の範囲内である。それ故、これらの試験材は、表2に示すように優れた耐食性及び親水性を有している。
【0107】
一方、試験材R1の樹脂皮膜は、表1に示すように、試験材S1~S9に比べて低い炉内温度で加熱されることによって形成されている。そのため、表2に示すように、試験材R1における基材との電位差は前記特定の範囲よりも小さくなる。その結果、試験材R1の耐食性は、試験材S1~S9に比べて劣っている。
【0108】
試験材R2の樹脂皮膜は、表1に示すように、試験材S1~S9に比べて高い炉内温度で加熱されることによって形成されている。そのため、表2に示すように、試験材R2の樹脂皮膜は加熱中に劣化し、変色する。
【0109】
試験材R3の樹脂皮膜には、表1に示すように架橋剤(B)が含まれていない。そのため、表2に示すように、試験材R3における基材との電位差は前記特定の範囲よりも小さくなる。その結果、試験材R3の耐食性は、試験材S1~S9に比べて劣っている。