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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098212
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20230703BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214840
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓起
(72)【発明者】
【氏名】花戸 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岸本 真紀
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AB13
2H044AB15
2H044AB19
2H044AB24
2H044AB26
2H044AB28
2H044AD01
(57)【要約】
【課題】ウェハレベルレンズとスペーサからなるレンズユニットにおいて、入射光がスペーサの内壁で反射することによる、フレアやゴーストの発生を抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】レンズを有するレンズ部と、前記レンズから出射した光が通過する貫通孔を有するスペーサ部とが接合されて形成されるレンズユニットであって、前記スペーサ部は、前記レンズ部が接合される側の端面に、前記貫通孔の開口部と、該開口部の外縁の壁面である内壁部と、を有し、前記内壁部は、前記スペーサ部における、前記レンズ部が接合される側と反対側の端面の表面粗さより、粗い表面粗さを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを有するレンズ部と、前記レンズから出射した光が通過する貫通孔を有するスペーサ部とが接合されて形成されるレンズユニットであって、
前記スペーサ部は、前記レンズ部が接合される側の端面に、前記貫通孔の開口部と、該開口部の外縁の壁面である内壁部と、を有し、
前記内壁部は、前記スペーサ部における、前記レンズ部が接合される側と反対側の端面の表面粗さより、粗い表面粗さを有する、レンズユニット。
【請求項2】
前記内壁部の表面粗さは、0.3μm以上4μm以下である、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記スペーサ部における、前記レンズ部と接合される側と反対側の端面には、前記貫通孔の中心軸に垂直に延びるように形成された溝部が設けられ、前記開口部と、前記溝部が連通することで、前記貫通孔が形成される、請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記溝部の表面粗さは、0.3μm以上4μm以下である、請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記レンズ部と前記スペーサ部は、前記レンズ及び前記開口部の径方向外側において接着剤で固定されることで接合される、請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記レンズ部における、前記スペーサ部と接合される側の端面には、該レンズ部が前記スペーサ部と接合される際に前記スペーサ部に当接する円環状の凸部である外周部が、前記レンズを囲うように設けられ、
前記外周部のさらに外周側には、前記レンズ部と前記スペーサ部を固定するための接着剤が充填される充填部が設けられる、請求項5に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記レンズ部の、前記スペーサ部と接合される側と反対側の面における、前記レンズの径方向外側の領域は、平面状に形成され、
前記スペーサ部と接合される側と反対側の面は、該平面状に形成された領域より突出した部分を有さない、請求項1から6のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハレベルレンズとスペーサが積層されたレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、モバイルコンピュータ、パーソナル携帯情報端末、デジタルスチルカメラ等に代表される電子機器に関して、小型化、軽量化及び高性能化が飛躍的に進んでいる。これらの市場動向に伴い、電子機器に搭載されるカメラのレンズに対しても、小型化、薄肉化、及び軽量化が要求され、ウェハレベルレンズが使用されるようになっている。
【0003】
このようなウェハレベルレンズに関しては、焦点距離の長いレンズは一体成形することが困難であり、従前よりスペーサをレンズに接着剤で固定してレンズユニットとすることで焦点距離を実現する場合があった。
【0004】
上記のようなレンズユニットにおいては、入射光線を結像面に集光させ、撮像対象の像を形成させるが、レンズに付加される絞りとレンズの偏芯、レンズの面間偏芯、厚みのバラツキ、レンズユニットのホルダとの偏芯などの影響や、レンズの内部反射の影響などにより、光線の軌跡が本来の設計から外れる場合がある。その結果、特に焦点距離が長い設計のレンズにおいては、スペーサに設けられ光が通過する貫通孔の内壁に光線が当たる場合があった。そのことにより、入射光がスペーサの貫通孔の内壁で正反射することで、結像面にフレアやゴーストが発生する等の不都合が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/100893号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の技術は上記の事情に鑑みて発明されたもので、その目的は、このようなウェハレベルレンズとスペーサからなるレンズユニットにおいて、入射光がスペーサの貫通孔の内壁で正反射することに起因する、フレアやゴーストの発生を抑制可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本開示に係るレンズユニットは、レンズを有するレンズ部と、前記レンズから出射した光が通過する貫通孔を有するスペーサ部とが接合されて形成されるレンズユニットであって、
前記スペーサ部は、前記レンズ部が接合される側の端面に、前記貫通孔の開口部と、該開口部の外縁の壁面である内壁部と、を有し、
前記内壁部は、前記スペーサ部における、前記レンズ部が接合される側と反対側の端面の表面粗さより、粗い表面粗さを有する。
【0008】
これによれば、レンズ部を通過してスペーサ部における内壁部に照射された光は、粗化された面により乱反射または散乱されることとなり、内壁部に照射された光が正反射して直接、スペーサ部に固定された撮像センサに入射し、フレアやゴーストを発生させることを抑制できる。
【0009】
また、前記内壁部の表面粗さは、0.3μm以上4μm以下であってもよい。
【0010】
また、前記スペーサ部における、前記レンズ部と接合される側と反対側の端面には、前記貫通孔の中心軸に垂直に延びるように形成された溝部が設けられ、前記開口部と、前記溝部が連通することで、前記貫通孔が形成されることとしてもよい。また、前記溝部の表面粗さは、0.3μm以上4μm以下としてもよい。これによれば、貫通孔を形成する開口部の内壁面と、溝部の両方において、レンズから出社した光が正反射することを抑制でき、より確実に、撮像センサの結像面におけるフレアやゴーストの発生を抑制することが可能となる。
【0011】
また、前記レンズ部と前記スペーサ部は、前記レンズ及び前記開口部の径方向外側において接着剤で固定されることで、接合されるようにしてもよい。これによれば、光の光路に影響を及ぼすことなく、効率的に、前記レンズ部と前記スペーサ部を固定することが可能である。
【0012】
また、前記レンズ部における、前記スペーサ部と接合される側の端面には、該レンズ部が前記スペーサ部と接合される際に前記スペーサ部に当接する円環状の凸部である外周部が、前記レンズを囲うように設けられ、
前記外周部のさらに外周側には、前記レンズ部と前記スペーサ部を固定するための接着剤が充填される充填部が設けられるようにしてもよい。これによれば、前記レンズ及び前記開口部の径方向外側においてより確実に、前記レンズ部と前記スペーサ部を固定することが可能である。
【0013】
また、前記レンズ部の、前記スペーサ部と接合される側と反対側の面における、前記レンズの径方向外側の領域は、平面状に形成され、前記スペーサ部と接合される側と反対側の面は、該平面状に形成された領域より突出した部分を有さないようにしてもよい。これによれば、レンズユニットのレンズ部側をテープ等に貼付して固定する場合に、接着力を確保することができ、作業の信頼性を高めることが可能である。
【0014】
なお、本発明においては、可能な限り、上記の課題を解決するための手段を組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ウェハレベルレンズとスペーサからなるレンズユニットにおいて、入射光がスペーサにおける貫通孔の内壁で正反射することに起因する、フレアやゴーストの発生を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、レンズユニットの概略図である。
図2図2は、レンズ部とスペーサ部との当接箇所の別の構造の例を示す図である。
図3図3は、レンズユニットをホルダに組み込んだ状態について示す断面図である。
図4図4は、スペーサの成形型の形状を示す図である。
図5図5は、スペーサの成形型及び、成形後の加工方法について示す図である。
図6図6は、レンズシートとスペーサシートの接着箇所、接着後の切り出し箇所及び、レンズとスペーサの間の接着剤が充填される空隙部を示した図である。
図7図7は、レンズシートとスペーサシートから、レンズユニットを切り出す際の固定方法と、切粉の状態について示す図である。
図8図8は、レンズの入射面の形状について示す図である。
図9図9は、レンズの入射面の形状の他の例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施例〕
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るレンズユニットについて説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0018】
図1には、本実施形態におけるレンズユニット1について示す。図1(a)はレンズユニット1をレンズ側(入射側)から見た正面図、図1(b)はレンズユニット1を光軸に垂直な方向から見た断面図、図1(c)はレンズユニット1をスペーサ側(出射側)から見た背面図である。レンズユニット1は、樹脂製のウェハレベルレンズを含むレンズ部2と、スペーサ部3とが接着により接合されて構成される。このレンズユニット1は、スペーサ部3に撮像素子等のセンサSが装着されることで、センサSの結像面に入射光を集光して像を生成することが可能となっている。
【0019】
本実施形態においてレンズ部2は、光が入射する面であって略平面状に形成された入射面2aと、入射面2aから入射した光が出射するレンズ面2b、レンズ面2bを囲うように円環状に突出して設けられた外周部2cを有する。この外周部2cは、レンズ部2とスペーサ部3とが接合された場合にスペーサ部3に当接して、レンズ面2bとセンサSの結像面との間の距離を規定する。なお、外周部2cの断面形状において先端部分は曲面形状となっているので、レンズ部2の成形時の離型性を高めることができるとともに、外周部2cは安定してスペーサ部3における平面状の前端面3d(後述)に当接することが可能である。
【0020】
また、図1(c)に示すように、スペーサ部3は、レンズ部2と接合される側の端面に、レンズ部2からの出射光が通過する開口3aを有する。開口3aの周囲には、レンズ部2側に行く程内径が広がるように形成された開口3aの外縁を規定する内壁部3bが設けられている。また、スペーサ部3は、センサSが装着される側には、光軸に垂直な方向に延びる溝状の凹構造である溝部3cを有する。
【0021】
スペーサ部3における、レンズ部2側の面である前端面3dには、上述のようにレンズ部2の外周部2cが当接する。そして、スペーサ部3の前端面3dとレンズ部2の外周部2cとが当接する部分の外周側には、レンズ部2とスペーサ部3とを接合状態で固定するための接着剤が充填される空隙部3eが形成される。ここで、開口3aの周囲の内壁部3bの表面粗さは、0.3μm~4μmとされており、スペーサ部3における他の面と比較して表面粗さが粗くなっている。この内壁部3bの表面粗さが、0.3μm~4μmとされることで、レンズ部2から出射され、この内壁部3bで正反射された光が直接、センサSの結像面に照射されフレアやゴーストが発生することを防止している。
【0022】
なお、スペーサ部3の材質については樹脂材料が前提であるが、その色には特に制限はない。透明でも良いし、有色のものを使用しても構わない。その場合には、遮光顔料や特定の波長を吸収する色素を樹脂材料に含有させることで有色としてもよい。より具体的には、樹脂材料にカーボンや、チタンブラック、特定波長吸収色素にはシアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物等を含有させてもよい。
【0023】
なお、上記においては、レンズ部2とスペーサ部3とが接合される際にスペーサ部3に当接して、レンズ面2bとセンサSの結像面との間の距離を規定するために、円環状の外
周部2cを設けているが、この機能を果たすための構造は、これに限られない。例えば、図2(a)に示すように、台形形状または球面形状の突部2dをレンズ面2bの周囲に複数(図2(a)の例では4つ)配置してもよい。また、図2(b)に示すように、真球粒子を配合したギャップ制御接着剤2eを用いて、レンズ部2とスペース部3の間のギャップを規定してもよい。
【0024】
図3は、レンズユニット1を、例えば撮像装置(不図示)に装着するためのホルダ4に組み込んだ状態について示す断面図である。ホルダ4は、例えば角柱状または円柱状の外形を有し、図3(a)に示すように、内部にレンズユニット1を収納する空間である収納室4cを有する。レンズユニット1及びセンサSは収納室4cの天井面に固定され、さらにベース4aがホルダ4の収納室4cを塞ぐようにホルダ4に固定されることで、収納室4c内に収納される。ホルダ4の天面には、入射光が入射される入射孔4bが設けられている。この入射孔4bには、光軸方向の途中で径が最小となる部分が設けられ絞りとしての機能を有する。なお、上述したホルダ4の形状は一例であって、特に制限はない。
【0025】
ここで、本来、レンズユニット1へ入射する入射光はホルダ4の入射孔4bから入射しレンズ部2、スペーサ部3の開口3aを通過してセンサSの結像面に集光されて像を形成する。しかしながら、入射孔4bとレンズ部2の偏芯、レンズ部2における面間偏芯、厚み違い、レンズ部2とホルダ4の偏芯などの製造バラツキの影響や、レンズ部2の内部反射の影響などにより、入射光線が本来の設計から外れる場合がある。その結果、特に焦点距離が長い設計のレンズ部2においては、スペーサ部3の内壁部3bに光線が当たる場合がある。
【0026】
そうすると、設計外の光線がスペーサ部3の内壁部3bにおいて正反射し、センサSに照射されることでフレアやゴーストが発生する場合があった。これに対して、本実施形態においては、スペーサ部3の内壁部3bの表面粗さを、スペーサ部3における他の面より粗くし、0.3μm~4μmとした。これにより、設計外の光線がスペーサ部3の内壁部3bに当たったとしても、図3(b)に示すように、乱反射または散乱することでそのまま正反射して直接センサSに照射されることが抑制される。その結果、フレアやゴーストの発生を抑制することが可能となる。
【0027】
なお、以下の表1には、内壁部3bの表面粗さとフレアの発生の有無との関係を示す実験結果を示す。
【表1】

※1.フレア発生した場合を×、フレア発生がない場合を〇とする。
このように、内壁部3bの表面粗さを0.3μm以上4μm以下とすれば、フレアの発生を抑制できることが分かった。なお、フレア評価には、ゴーストフレア評価システムGCS-2T(壺坂電機株式会社製)を用い、半画角47.5度の入射光を物体面から入射し、画像によりフレアの発生を目視で評価した。
【0028】
<ウェハレベルレンズの製造方法>
次に、本実施形態におけるレンズ部2及び、スペーサ部3の製造方法について説明する。本実施形態におけるレンズ部2は、硬化性組成物(樹脂材料)をインプリント成形法又は射出成形法により成形することで得られる。なお、レンズ部2の成形に用いる成形型の材質は特に限定されず、例えば、金属、ガラス、プラスチック等のいずれであってもよい
【0029】
レンズ部2の成形法としては、例えば、(1)工程1:1つ以上のレンズ型を有するレンズ成形用型(不図示)を準備する工程、(2)工程2:工程1の後、硬化性組成物を上記レンズ成形用型に接触または射出させる工程、(3)工程3:工程2の後、硬化性組成物を加熱及び/又は光照射により硬化させる工程、を含む方法が挙げられる。工程3において加熱処理を行う場合、その温度は、反応に供する成分や触媒の種類等に応じて適宜調整することができ特に限定されないが、例えば100~200℃程度であってもよい。また、工程3において光照射を行う場合、その光源としては、例えば、UV-LED、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線源、レーザー光源等を使用することができる。
【0030】
上記成形法においては、工程3の後、さらに、(4)工程4:硬化した硬化性組成物をアニール処理する工程を含んでいても良い。このアニール処理の内容は、特に限定されないが、例えば、100~200℃の温度で30分~1時間程度加熱することにより行われてもよい。なお、アニール処理は、レンズ成形用型を外してから実施することも可能であるし、外すことなく実施することも可能である。
【0031】
上記の成形法においては、通常、工程3又は工程4により、1個ないし複数個のレンズ部2が連接した状態で形成されたシート状の硬化物(レンズシート22)が得られるようにしてもよい。レンズシート22が複数のレンズ部2を有する場合には、これらのレンズ部2は、規則正しく配列(整列)されていてもよいし、ランダムに配列されていてもよい。上記のレンズシート22をダイシングによって切断し、余分な部分を除去することによって、図1に示したレンズ部2を得ることができる。すなわち、工程3又は工程4の後、さらに工程5:硬化した硬化性組成物(レンズシート22)を切断する工程、を含んでいてもよい。硬化した本発明の硬化性組成物の切断は、公知乃至慣用の加工手段等により実施できる。
【0032】
<スペーサの製造方法>
次に、スペーサ部3の製造方法について説明する。スペーサ部3は、レンズ部2と同様、硬化性組成物の成形工程である上述の工程1~工程5に相当する工程によって製造され
る。ここでは工程1~工程5に相当する工程についての説明は省略する。あるいは、スペ
ーサ部3はインプリント成形によって形成されてもよい。図4には、スペーサ部3の前端面3d側を形成するための下型11の形状を示す。この下型11には、上述のレンズ部2の成形と同様、スペーサシート23として複数のスペーサ部3を成形するため、スペーサ部3の開口3aを形成する突起部11aが複数配列されている。
【0033】
この突起部11aは、図中上側に行くに従って径が小さくなり上端11bが平面である概略円錐型の形状を有する。この突起部11aの側面における斜面11cによりスペーサ部3の内壁部3bが形成される。この斜面11cは、図4(b)に示すように、予めブラスト処理によって表面粗さが粗化されている。また、突起部11aの上端11bは、ブラスト処理された後研磨され、表面粗さが、斜面11cと比較して小さくなるように調整されている。これは、成形後の下型11の型抜きを容易にするための処置である。
【0034】
図5(a)には、1個ないし複数個のレンズ部2が連接した状態で形成されたシート状の硬化物(スペーサシート23)を成形する下型11と、上型12の配置を示す。下型11には、上述のように突起部11aが一度に成形するスペーサ部3の数だけ形成されている。一方、上型12は、平面状の型面を有する。図5(b)には、下型11と、上型12とから成形されるスペーサシート23について示す。スペーサシート23は、成形が終了した時点では、下側に開口3aと内壁部3bになるべき凹部23aが複数形成され、上側
が平面状であるシート状成形物である。このスペーサシート23に対し、上側からダイシングによってハーフカットすることで溝部3cとなるべき溝23bを形成し、溝23bと凹部23aを繋げることでスペーサシート23の上側から下側まで貫通する孔23cを形成する。この孔23cは切断後にはスペーサ部3における貫通孔となる。
【0035】
レンズシート22とスペーサシート23が成形された後に、レンズシート22とスペーサシート33とを、各レンズの光軸と各孔23cの中心軸が一致するように接着剤(例えば、UV硬化接着剤)で固定し、さらにダイシングにより切断することによって複数のレンズユニット1を切り出す。図6(a)には、成形されたレンズシート22とスペーサシート23とを、接着剤で固定する際の固定箇所14と、接着後のレンズシート22とスペーサシート23とを、ダイシングによって切断する際のカッターの軌跡15を示す。
【0036】
図6(a)においてハッチング付きの破線による円は接着剤による固定箇所14を示す。また、太破線の縦横の直線は、カッターの軌跡15を示す。なお、図6(a)に示すように、接着剤は、レンズユニット1となるべき部分の四隅にのみ塗布されればよい。図6(b)には、切り出した後のレンズユニット1における、レンズ部2とスペーサ部3及び接着剤14aの断面図を示す。図6(b)に示すように、レンズ部2の外周部2cとスペーサ部3の前端面3dとの当接部の外側に、レンズ部2とスペーサ部3の間に接着剤14aが充填されるための空隙部3eが形成されている。この空隙部3eの高さは10μm~
500μmの範囲であれば、充分な量の接着剤14aを充填させることが可能である。
【0037】
なお、レンズシート22とスペーサシート23とを、ダイシングによって切り出す際には、レンズシート22とスペーサシート23とを、図7(a)、(b)の上側図に示すように、テープ17に貼付して固定した上でダイシングする。その際、図7(a)の上側図に示すように、スペーサシート23側をテープ17に貼付する場合と、図7(b)の上側図に示すように、レンズシート22側をテープ17に貼付する場合とが有り得るが、図7(a)の上側図のように、スペーサシート23側をテープ17に貼付した場合には、ダイシングで発生する切粉Cが図7(a)の下側図に示すように、レンズ面2bの表面に付着してしまう場合がある。
【0038】
この場合、切粉Cがレンズ面2bによって覆われた空間に存在するため、例えばレンズシート22とスペーサシート23とをスピンナ洗浄によって洗浄したとしても除去することが困難となる。一方、レンズシート22側をテープ17に貼付した場合には、ダイシングで発生する切粉Cが図7(b)の下側図に示すように、外部に開放された空間に存在するため、例えばスピンナ洗浄を行うことで切粉Cを除去することが可能となる。
【0039】
また、本実施例におけるレンズ部2の入射面2aにおける、レンズ面2bの外周側の領域は、図8(a)に示すように、略平面形状とされているため、テープ17に貼付する際に、充分な強度を確保することが可能である。仮に、図8(b)に示すように、レンズ部2の、入射面2aが凹凸構造となっている場合には、テープ17との接触面積が少なくなり、強度を得ることが困難となる。
【0040】
なお、レンズ部2の入射面2aの全面が平面である必要はない。例えば、図9(a)に示すように、入射面2aの外周側の領域が平面となっており、入射面2aの中央のレンズ面2bに対応する領域が凹状に窪んだ形状の場合には、テープ17に貼付する際に、充分な強度を確保することが可能である。一方、図9(b)に示すように、入射面2aの外周側の領域が平面となっており、入射面2aの中央のレンズ面2bに対応する領域が凸状に突出した形状の場合には、図8(b)に示した場合と同様、テープ17との接触面積が少なくなり、強度を得ることが困難となる。
【0041】
なお、上記の実施例においては、予め成形型における下型11の斜面11cにブラスト処理を行うことで、スペーサ部3の成形時に内壁部3bの表面粗さを選択的に粗化することを前提としたが、本発明においては、成形型によってスペーサシート23を成形した後、あるいは、ダイシングのハーフカットによって溝部3cを加工した後に、スペーサシート23全体にブラスト処理を行ってもよい。これによれば、スペーサ部3のより広範囲の領域について表面粗さを粗くすることができ、より確実に、フレアやゴーストを抑制することが可能である。
【0042】
また、上記の実施例において、ダイシングのハーフカットによって溝部3cを形成する際に、カッターの砥粒を適切に選択することで、溝部3cの表面粗さを0.3μm以上4μm以下としてもよい。これによれば、内壁部3bのみならず、溝部3cの表面粗さを粗化することができ、スペーサ部3の貫通孔の全域について、レンズ部2を通過した光が正反射することでセンサSにおけるフレアやゴーストの発生を抑制することが可能である。
【0043】
以上、本開示に係るレンズユニットの実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・レンズユニット
2・・・レンズ部
2a・・・入射面
2b・・・レンズ面
2c・・・外周部
3・・・スペーサ部
3a・・・開口
3b・・・内壁部
3c・・・溝部
3e・・・空隙部
4・・・ホルダ
4a・・・ベース
11・・・下型
11a・・・突起部
12・・・上型
22・・・レンズシート
23・・・スペーサシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9