(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098217
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
F16K 41/08 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
F16K41/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214847
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】馬場 拓真
(72)【発明者】
【氏名】興羽 大介
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA03
3H066BA19
3H066DA06
(57)【要約】
【課題】弁体の昇降動で流路開閉する超低温流体に適したロングネック構造であり、ステムを正確に芯出ししつつ簡便に装着でき、流体の浸入を防止する高さにバックシート構造を設けて流体の膨張による異常昇圧を防止してグランド漏れを阻止しバックシート構造を高い加工精度で容易に設けることができる弁を提供する。
【解決手段】ロングネック構造のボンネット4の上部にパッキン収納部12を有するヨーク2が装着されステム6が昇降動自在に軸装される。ステム6下端の弁体7で流路8が開閉自在に設けられ、ステム用貫通孔11に環状突出部13が形成される。環状突出部がステム用挿通孔30側に嵌合可能に形成され、環状突出部にはヨーク側バックシート面14、ステムの途中にはステム側バックシート面50がそれぞれ設けられ、ステムの最大リフトアップ時にこれらが当接シールするバックシート機構52を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロングネック構造のボンネットの上部にシール用パッキン収納部を有するヨークが装着された状態でステムが昇降動自在に軸装され、このステムの下端に設けられた弁体によりボデー内の流路が開閉自在に設けられ、前記ヨークに設けられたステム用貫通孔の前記ボンネット側開口部の周囲に前記ボンネット側に突出した環状突出部が形成され、かつ、この環状突出部が前記ボンネット側に設けられたステム用挿通孔側に嵌合可能に形成されると共に、前記環状突出部の開口部内周には前記ボンネットに近いほど拡径するテーパ状のヨーク側バックシート面、前記ステムの途中には前記ヨークに近いほど縮径するテーパ状のステム側バックシート面がそれぞれ設けられ、前記ステムの最大リフトアップ時に前記ヨーク側バックシート面と前記ステム側バックシート面とで当接シールするバックシート機構を有することを特徴とする弁。
【請求項2】
前記ヨークが前記ボンネットに着脱自在に設けられ、前記ヨークを前記ボンネットから取り外したときには、前記環状突出部がその周囲の前記ボンネットとの対向面よりも突出し、前記ヨーク側バックシート面が露出可能に設けられた請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記環状突出部の外周側にガスケットが配置され、このガスケットが前記ヨークの下面側と前記ボンネットの上面側との間に挟着された請求項1又は2に記載の弁。
【請求項4】
前記環状突出部の外周囲に設けられた環状突部と前記ステム用挿通孔の外周側に設けられた環状段部との間に、前記環状突部と前記環状段部との対向面同士に四方を囲まれてなるガスケット室が設けられ、このガスケット室に前記ガスケットが装着された請求項3に記載の弁。
【請求項5】
前記ボンネットの下面側に設けられた環状突起部が前記ボデーの上面側に設けられた環状段状部に嵌合され、前記ボンネットが前記ボデーに芯出し状態で取付けられた請求項1乃至4の何れか1項に記載の弁。
【請求項6】
前記ヨーク側バックシート面の前記ステムの軸方向からの傾き角度が、前記ステム側バックシート面の前記ステムの軸方向からの傾き角度よりもわずかに大きく形成された請求項1乃至5の何れか1項に記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を昇降動してボデー内部の流路を開閉する弁に関し、特に、LNG(液化天然ガス)や液体水素などの超低温流体を扱うロングネック構造の弁に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、LNGや液体水素などの超低温流体用の弁には、グランド部の凍結防止のために、ISO規格などの規格により、いわゆる、エクステンションボンネットと呼ばれる、ふたが伸長されたボンネットを有するロングネック構造に設けられ、このようにボンネットを長くすることにより、弁体(流路)位置から操作部までの距離を一定以上に離すことが定められている。この種の超低温用の弁としては、例えば、ゲートバルブ、グローブバルブ、ニードルバルブ、プラグバルブ等があり、これらは何れも、弁体がステムで昇降動されて流路が開閉される構造になっている。
【0003】
一般に、これらの超低温用の弁においては、いわゆるバックシート機構が設けられ、このバックシート機構は、弁体を上昇させて流路を開放するときに、上昇側であるステム側に設けられたシール面が、ボンネット側に設けられた被シール面に当接シールしてグランド漏れを防ぐように設けられる。このバックシート機構よりも上方に流体である液体が浸入すると、温度の上昇によりこの液体が気化してガス化しやすくなり、例えば、LNGは、ガス化により約600倍に膨張し、バックシート機構よりも二次側のパッキンの破損やガスの噴出を引き起こすおそれがある。これを回避するために、ISO規格(ISO28921-1)では、ロングネック構造の弁において、バックシート機構からパッキン装着部分までの空間において異常昇圧を防ぐような機能が求められ、この対策として、例えば、液体が浸入しにくくなる高さの位置にバックシート機構を設けたものが知られている。
【0004】
このように液体が浸入しにくい高い位置にバックシート機構を設けたバルブとして、例えば、特許文献1のゲートバルブが開示されている。このバルブでは、ロングネック構造のボンネットが一体に形成され、このボンネット内のパッキン装着部の下方に被シール側であるテーパ状の着座面が形成され、一方、ステム側にシール側であるテーパ状の環状シール部が形成されている。そして、全開状態において、環状シール部が着座面に当接シールすることで、ボンネットの上部付近において、ボンネット側着座面とステム側環状シール部とによるバックシート機能が発揮され、媒体流体の逃げを防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したロングネック構造の弁では、エクステンションボンネットの長さに合わせてステムも長くなり、その長さが長くなればなるほど、成形時や加工時などに生じる曲がりや歪みなどの原因により、ステムと、ボンネットやヨークなどとの芯合わせが困難となる。これらの芯がずれた状態で組立てられていると、ステムの傾きなどによって操作部付近に設けられた流体漏れ防止用のパッキン装着側での封止性が不十分になり、一方、バックシート機構側では、ステム側のシール面とボンネット側の被シール面との当たりに偏りなどが生じるためにシール性が十分でなくなり、これらそれぞれの部位で必要なシール性が得られなくなる可能性がある。
【0007】
ボンネットの製作時には、一体型のロングネック構造のボンネット内の高い位置の内周面にテーパ状着座面(バックシート面)を設けるために、いわゆる裏座加工を施す必要が生じるという問題もある。このとき、例えば、ボンネットの外部より刃物(工具)をボンネット内周面の奥側まで装入し、外方から視認しにくい状態で刃物を被加工面に当てて加工することになる。しかも、着座面を均一な傾斜角度によるテーパ面とし、かつその表面に精密な表面粗さで面加工する必要もあることから、加工が非常に困難になって加工精度が低下する可能性がある。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、弁体を昇降動して流路を開閉する超低温流体に適したロングネック構造の弁であり、ステムを正確に芯出ししつつ簡便に装着でき、流体の浸入を防止する高さにバックシート構造を設けることで流体の膨張による異常昇圧を防いでグランド漏れを確実に阻止し、このバックシート構造を高い加工精度で容易に設けることができる弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ロングネック構造のボンネットの上部にシール用パッキン収納部を有するヨークが装着された状態でステムが昇降動自在に軸装され、このステムの下端に設けられた弁体によりボデー内の流路が開閉自在に設けられ、ヨークに設けられたステム用貫通孔のボンネット側開口部の周囲にボンネット側に突出した環状突出部が形成され、かつ、この環状突出部がボンネット側に設けられたステム用挿通孔側に嵌合可能に形成されると共に、環状突出部の開口部内周にはボンネットに近いほど拡径するテーパ状のヨーク側バックシート面、ステムの途中にはヨークに近いほど縮径するテーパ状のステム側バックシート面がそれぞれ設けられ、ステムの最大リフトアップ時にヨーク側バックシート面とステム側バックシート面とで当接シールするバックシート機構を有する弁である。
【0010】
請求項2に係る発明は、ヨークがボンネットに着脱自在に設けられ、ヨークをボンネットから取り外したときには、環状突出部がその周囲のボンネットとの対向面よりも突出し、ヨーク側バックシート面が露出可能に設けられた弁である。
【0011】
請求項3に係る発明は、環状突出部の外周側にガスケットが配置され、このガスケットがヨークの下面側とボンネットの上面側との間に挟着された弁である。
【0012】
請求項4に係る発明は、環状突出部の外周囲に設けられた環状突部とステム用挿通孔の外周側に設けられた環状段部との間に、環状突部と環状段部との対向面同士に四方を囲まれてなるガスケット室が設けられ、このガスケット室にガスケットが装着された弁である。
【0013】
請求項5に係る発明は、ボンネットの下面側に設けられた環状突起部がボデーの上面側に設けられた環状段状部に嵌合され、ボンネットがボデーに芯出し状態で取付けられた弁である。
【0014】
請求項6に係る発明は、ヨーク側バックシート面のステムの軸方向からの傾き角度が、ステム側バックシート面のステムの軸方向からの傾き角度よりもわずかに大きく形成された弁である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、弁体を昇降動して流路を開閉する超低温流体に適したロングネック構造であり、ヨーク側に設けた環状突出部をボンネット側に設けたステム用挿通孔に嵌合することで、これらの部材を接続する際に、これらヨークとボンネットとを正確に芯合わせしつつ簡便に一体化できる。バルブの組み立て後には、ヨーク側バックシート面とパッキンとを同じヨークに設けていることから、ステムをパッキンによって芯出しした状態に保持し、このステムをヨーク側バックシート面に対して正確に芯合わせできる。これらにより、ステムをボンネットに対して芯出し状態で収容可能となる。
上記のステムの芯出し状態で、ボンネットとヨークとの間の流体の浸入を防止する高さにバックシート機構を設け、このバックシート機構は、テーパ状のヨーク側バックシート面、テーパ状のステム側バックシート面を備え、これらがステムの最大リフトアップ時に当接シールする構造であるから、ヨーク側バックシート面とステム側バックシート面とが密接シールし、優れたシール性を発揮して流体の膨張を阻止し、異常昇圧を防ぐことでグランド漏れを確実に阻止できる。
【0016】
しかも、ヨークのステム用貫通孔の周囲にパッキンを収納し、この直下に環状突出部を設けてヨーク側バックシート面を設けることにより、パッキンとヨーク側バックシート面との距離を近くできる。特許文献1のように、ボンネット内においてパッキン装着部の下方位置に着座面が設けられている場合、このパッキン装着部と着座面との間の距離が長くなるにつれて、これらの間のキャビティも大きくなる。バックシート機構の構成時にキャビティが大きくなると、このキャビティに液体の状態の流体が浸入したときにキャビティ内で流体が大きく膨張し、その膨張圧力で異常昇圧が発生してパッキンに過大な負荷が加わりやすくなる。これに対し、本発明によれば、ステム側バックシート面とヨーク側バックシート面とが当接シールしてバックシート機構が構成されるときに、キャビティ内の流体の膨張の抑制効果を向上してパッキンへの負荷を軽減することで耐久性を向上できる。
【0017】
環状突出部の開口部内周にヨーク側バックシート面を設けているため、このヨーク側バックシート面をステム側バックシート面と共に高い加工精度によって容易に設け、流体漏れを確実に防止できるバックシート構造を設けることができる。
【0018】
請求項2に係る発明によると、ボンネットへの装着前のヨークに対して精密な面加工により高精度のヨーク側バックシート面を容易に施すことができ、また、ヨークをボンネットから取り外すことでヨーク側バックシート面を露出させることができるので、このヨーク側バックシート面のメンテナンスも容易になる。
【0019】
請求項3に係る発明によると、ヨークの環状突出部の外周側にガスケットを配置することで、このガスケットを容易に位置決めして所定の取り付け状態にでき、ガスケットをヨークとボンネットとの間に確実にシール状態で挟み込むことができるので、シール性を確保しつつこれらを簡単に組み立てることが可能になる。
【0020】
請求項4に係る発明によると、ヨークとボンネットとを突き合せたときには、環状突出部とステム用挿通孔、及び環状突部と環状段部とによる二段の係合によって正確に芯出しがなされ、ヨークとボンネットを正確な位置決め状態で組み立てできる。バルブを全開にしてステム側バックシート面がヨーク側バックシート面に当接し、環状突出部に外径側に押し開く方向の力が加わるときには、環状突部が環状段部によって支持されていることから、環状突起部の傾倒を防いでバックシート面による高いシール性能を確実に維持する。
環状突部と環状段部との間にガスケット室が構成されることから、このガスケット室にガスケットを圧入しながら収容することで、そのはみ出しや抜け落ちを防止しつつ充填率を100%以上に確保した状態でヨークとボンネットとの間に配置し、ガスケットによるシール性を向上してヨークとボンネットとの間からの漏れを阻止する。
【0021】
請求項5に係る発明によると、ヨークとボンネットとを芯出し状態で取付けできるため、ボデーからボンネットを経てヨークまでの軸芯を正確に一致させた状態でこれらを一体に組み込むことができる。これにより、ステムとボンネット内周面とのクリアランスを最小限に抑えることが可能となる。そのため、流路より流体が上部側に入り込む領域を限りなく小さくし、流路を流れる液体状態の超低温流体の温度上昇による膨張を防いでパッキンへの悪影響を低減し、パッキンの損傷を阻止する。
【0022】
請求項6に係る発明によると、ヨーク側バックシート面の傾き角度とステム側バックシート面の傾き角度との間に角度差を設けることで、バルブの全開時には両バックシート面の接触初期に線接触状態となり、この状態からバルブの開方向への力を増すことでステム側バックシート面がヨーク側バックシート面にクサビ状に押し込まれて面接触状態になる。これにより、接触位置にゆがみ等があると面圧の低い位置から漏れが生じやすい線接触状態における漏れの発生を抑え、この線接触によりシール面圧を高くした状態から徐々に面接触に移行してシール性を発揮することができ、必要に応じてバックシート機構によるシール性を増すことも可能となって、全開時における十分なシール性を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の弁の一実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の弁の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明における弁を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1、
図2は、本発明の弁の一実施形態を示し、
図3は、
図1におけるA部拡大断面図を示している。
図において、本発明の弁(以下、バルブ本体1という)は、ゲートバルブからなる超低温用バルブであり、このバルブ本体1は、ヨーク2、シール用パッキン3、ボンネット4、ボデー5、ステム6、弁体7を備え、ボンネット4にヨーク2が装着された状態でステム6が昇降動自在に軸装され、このステム6の下端には弁体7が設けられ、この弁体7によりボデー5内に形成されたストレート状の流路8が開閉自在に設けられている。
【0025】
図4において、ヨーク2は、例えばステンレス材料等の耐低温性を備えた金属材料によって形成され、その下部付近にはボンネット4との接続用フランジ部10が形成され、このフランジ部10を介してボンネット4の上部に固着される。ヨーク2の軸方向の中央にはステム用貫通孔11が設けられ、このステム用貫通孔11のボンネット4との接続側近傍にはパッキン3収納用のパッキン収納部12が形成され、このパッキン収納部12にパッキン3が装着される。
【0026】
ヨーク2の下面側において、ステム用貫通孔11のボンネット4側開口部の周囲に、このヨーク2に下部に取り付けられるボンネット4側に突出するように、フランジ部10よりも小径の環状突出部13が突出して形成される。環状突出部13の開口部内周には、ボンネット4に近いほど拡径するテーパ状のヨーク側バックシート面14が形成される。本実施形態においては、ヨーク側バックシート面14のステム6の軸P方向からの傾き角度θ1が、約30°程度になるように形成される。
【0027】
ヨーク側バックシート面14は、例えば、LNGや液体水素等の超低温流体がボンネット4内を流れるときに、この流体が液体の状態を維持したままで上昇する際に、液体が最も高く到達するおそれのある高さよりも高い位置となるようにし、これに対応してボンネット4の長さ(高さ)を設定する必要がある。液体が最も高く到達する高さ位置とは、流路8を流れる流体が沸点に達する高さ位置であり、例えば流体がLNGである場合、流体の組成によって変化するものの平均的な沸点は-162℃であり、その沸点よりも高い温度となる高さ位置がこれに該当する。
【0028】
ヨーク2の環状突出部13の外周囲には環状突部15が拡径して形成され、この環状突部15の外周側に突出するように前記フランジ部10が設けられる。環状突部15のボンネット4との対向側には、環状のガスケット16が配置(装着)可能に設けられる。ヨーク2の上面側には、一対のグランドボルト17が、ヨーク2の軸装方向に交差する方向に回転可能な状態で軸着される。
【0029】
図1、
図3において、シール用パッキン3は、例えば補強材入り膨張黒鉛を材料として円筒状に形成され、パッキン収納部12に収納された状態でステム6周りに装着される。
パッキン3の上部には、このパッキン3と略同じ外径により略円筒形状に形成されたグランド20がステム6外周に配置され、このグランド20の上部には、板状のグランド押え21が、その中央をステム6が貫通した状態で取付けられる。グランド押え21には、グランドボルト17の先端側が挿入可能な一対の挿入孔22が形成され、パッキン3、グランド20がヨーク2とグランド押え21との間に挟みこまれた状態で、グランドボルト17の先端側が挿入孔22に挿入され、このグランドボルト17に固定用のグランドナット23が螺着される。
【0030】
グランドボルト17、グランドナット23を締付けたときには、その締付け力がグランド押え21、グランド20を介してパッキン3に伝達され、このパッキン3がパッキン収納部12内に締め込まれて軸シールがおこなわれる。
【0031】
図1~
図3において、前述したヨーク2は、4組の取付ボルト・ナット24を介してボンネット4に着脱自在に取り付けられ、取付ボルト・ナット24の取り外しによってヨーク2をボンネット4から取り外したときには、環状突出部13がその周囲のボンネット4との対向面よりも突出し、ヨーク側バックシート面14が外部に露出可能に設けられている。
【0032】
ボンネット4は、ヨーク2と同様にステンレス材料等の耐低温性の金属材料により伸長形状のロングネック構造に設けられ、このボンネット4により、LNGや液体水素などの超低温流体に対してグランド20付近の凍結が防がれた状態で、弁体7の開閉により超低温流体を流路8に流すことが可能になっている。
【0033】
ボンネット4の内部にはステム用挿通孔30が設けられ、このステム用挿通孔30に対してステム6が昇降動自在に挿入される。ステム6を昇降操作したときには、ステム5下端の弁体7がボデー5内部に形成された弁座31に接離して流路8が開閉自在に設けられる。
【0034】
ステム用挿通孔30の上端側における内径φdは、環状突出部13の外径φDと嵌合可能となるように、これらが略同じ穴径に形成され、さらに、ステム用挿通孔30の外周側には、ヨーク2の環状突部15が嵌合する環状段部32が拡径して形成される。環状段部32の外周側には、フランジ部10に接続可能なフランジ部33が形成される。
【0035】
環状突部15と環状段部32は、それらの径方向の幅が同一となるように設けられていて、環状突出部13がステム用挿通孔30に挿入される際に、環状突部15の側面と環状段部32の側面同士、及び、環状突部15の水平面と環状段部32の水平面同士が互いに対向し、これらの面によって四方が囲まれる空間が形成され、当該空間がガスケット室38を構成する。
【0036】
このように、前記ヨーク2のボンネット4への取付け時には、環状突出部13をステム用挿通孔30に嵌合したときに、環状突部15と環状段部32との間にガスケット室38が設けられ、このガスケット室38にガスケット16を装着した状態で環状突部15の先端側を環状段部32に嵌合する。続いて、フランジ部10とフランジ部33とを取付ボルト・ナット24で締め込むことで、ガスケット16がヨーク2の下面側とボンネット4の上面側との間に挟着される。これにより、ヨーク2とボンネット4とがガスケット16でシールされた状態で、ヨーク2がボンネット4の上部に芯出し状態で取付けられる。
【0037】
図3において、環状段部32の上面から環状突部15の底面までの高さをL1、ステム用挿通孔30における内径φdで形成された部分の高さをL2、フランジ部33の上面からフランジ部10の底面までの高さをL3としたときに、高さL1<高さL2となるようにしていることで、ガスケット16をガスケット室38に収容して圧入するときに、このガスケット16を潰し切る前に環状突部15の底面と環状段部32の上面とが当接することを防ぎ、ガスケット16の破損や破断等を防いで適切な状態で取付けできる。
【0038】
さらに、高さL1=高さL3となるようにしていることで、ガスケット16を潰し切ったときには、フランジ部10の底面とフランジ部33の上面とがメタルタッチするようになっており、万が一、ガスケット16が焼失等によりガスケット室38から無くなった場合にも、このメタルシールにより確実に漏れを防ぐようになっている。
【0039】
図1、
図3に示すように、ボンネット4の下部には、このボンネット4下部に取り付けられるボデー5との接続用フランジ部34が形成され、このフランジ部34を介してボンネット4がボデー5の上部に固着される。
ボンネット4の下面側には、ステム用挿通孔30と略同芯状になるように環状突起部35が形成され、さらに、この環状突起部35の外周囲に環状突条部36が拡径して形成され、この環状突条部36の外周側に突出するように前記フランジ部34が設けられる。環状突条部36のボデー5との対向側には、環状のガスケット37が装着可能に設けられる。
【0040】
ボデー5は、前述したヨーク2、ボンネット4と同様に耐低温性を有する金属材料により形成され、ボデー5内の流路8との交差方向に前述した弁座31が形成される。ボデー5の上面側には、ボンネット4の環状突起部35が嵌合する環状段状部40が形成され、この環状段状部40よりも外周側には、環状突条部36が嵌合する環状拡径凹部41が拡径して形成される。さらに、環状拡径凹部41の外周側に突出するように、フランジ部34に接続可能なフランジ部42が形成される。
【0041】
ボデー5への前記ボンネット4の取付け時には、環状突起部35を環状段状部40に嵌合しつつ、環状突条部36と環状拡径凹部41との間の対向面にガスケット37を装着した状態で環状突条部36の先端側を環状拡径凹部41に嵌合する。続いて、本実施形態では、フランジ部34とフランジ部42とを6組の固着ボルト・ナット43で締め込むことで、ガスケット37がボンネット4の下面側とボデー5の上面側との間に挟着される。これにより、ボンネット4とボデー5とがガスケット37でシールされた状態で、ボンネット4がボデー5の上部に芯出し状態で取付けられる。
【0042】
ステム6は、例えばステンレス材料等の金属材料により設けられ、このステム6の途中には、ヨーク2に近いほど縮径するテーパ状のステム側バックシート面50が形成される。ステム側バックシート面50は、前述したヨーク側バックシート面14に対して一部又は全部が当接シール可能なテーパ形状に設けられる。この場合、ステム側バックシート面50は、前述したヨーク側バックシート面14のステム6の軸P方向からの傾き角度θ1が、ステム側バックシート面50のステム6の軸P方向からの傾き角度θ2よりもわずかに大きくなるように形成される。換言すると、本実施形態におけるステム側バックシート面50の傾き角度θ2は、ヨーク側バックシート面14の傾き角度θ1である30°よりもやや小さい角度に設けられる。
【0043】
ヨーク側バックシート面14、ステム側バックシート面50は、何れも高いエッジ品質により形成され、適宜の加工によりバリが除去されている。
さらに、ステム側バックシート面50の上部の境界位置には、縮径状のくびれ部51が形成される。このくびれ部51を設けていることにより、ステム6にステム側バックシート面50を加工するときに、加工用の刃物等を動かすスペースに余裕が生じ、このステム側バックシート面50をより高いエッジ品質により形成可能となる。
【0044】
ステム6には、操作用ハンドル53が取付けられ、このハンドル53の回転操作によりステム6が昇降動可能に設けられる。弁体7の全開位置は、ハンドル53の操作で変化することはなく、基準となる一定の位置でヨーク側バックシート面14とステム側バックシート面50とがメタルタッチするようになっている。このメタルタッチの基準位置は、温度変化による各部品の寸法の増減に影響を受けないように設定される。
【0045】
ハンドル53の操作により、弁体7を全開状態とし、この弁体7の全開時におけるステム6の最大リフトアップ時には、ヨーク側バックシート面14とステム側バックシート面50とが当接シールし、これらによってバックシート機構52が設けられる。
【0046】
なお、上記実施形態におけるバルブ本体1は、ゲートバルブとしているが、弁体の昇降動により流路を開閉し、ヨーク側のバックシート面とステム側のバックシート面とにより構成されるバックシート機構を有するバルブであれば、ゲートバルブに限らず、グローブバルブ、ニードルバルブ、プラグバルブ等の各種構造の弁にも適用できる。
【0047】
ヨーク側バックシート面14、ステム側バックシート面50のステム6の軸P方向からのそれぞれの傾き角度θ1、θ2は、これら双方の当接シールによってバックシート機構52を構成することが可能であれば、それぞれ任意の角度に設けることもできる。
【0048】
ボンネット4下部の環状突条部36、ボデー5上部の環状拡径凹部41は省略することもできる。この場合、環状突起部35、環状段状部40のみをボンネット4、ボデー5にそれぞれ形成し、これらの嵌合によってフランジ部34とフランジ部42との間にガスケット37を挟んだ状態でボンネット4とボデー5とを接続してもよい。
【0049】
取付ボルト・ナット24を4組、固着ボルト・ナット43を6組使用し、これらのボルト・ナットで、ヨーク2とボンネット4、ボンネット4とボデー5とをそれぞれ締付け固定しているが、それぞれのボルト・ナットの組数は、バルブ本体1の各フランジ部の直径や、バルブ本体1の大きさなどの各種の仕様によって適宜変更してもよい。
【0050】
次いで、本発明における弁の上記実施形態における作用を説明する。
図1~
図3において、上述したように、本発明におけるバルブ本体1は、ボンネット4とヨーク2とをフランジ部10、33によるフランジ接続構造とし、ヨーク2内にシール用パッキン3を収納した状態で、ヨーク2側の環状突出部13をボンネット4側のステム用挿通孔30に嵌合することで、ヨーク2とボンネット4上部との正確な芯合わせが可能となり、バルブ本体1の組立て時には、ヨーク2に装着されたパッキン3をヨーク側バックシート面14と共に芯出しし、パッキン3によりステム6をヨーク2に対して芯出しした状態にできる。このため、ステム側バックシート面50をヨーク側バックシート面14に正確に芯合わせした状態で、バルブ本体1の高い位置にバックシート機構52を構成することができる。このバックシート機構52により、全開時のグランド20側への流路8からの流体漏れを阻止し、パッキン3の破損や、ガス化した流体の外部漏れを防いで良好なシール性が得られる。
【0051】
この場合、弁体7の全開時において、ステム側バックシート面50がヨーク側バックシート面14に当接シールしてバックシート機構52を設けるようにしているので、ステム6を操作して全開状態になると同時に自動的にバックシート機構52を設けて適切に流体の浸入を阻止可能となる。しかも、このバックシート機構52を、ボデー5内を流れる液体状の流体が上昇する位置よりも高い位置に設けているので、バックシート機構52の高さ位置まで液体状の流体が到達するおそれがない。
【0052】
さらに、ボンネット4側の環状突起部35をボデー5側の環状段状部40に嵌合して芯出ししているので、ヨーク2、ボンネット4、ボデー5を芯合わせした状態で一体化できる。これにより、ISO規格(ISO28921-1)等の規格に適応させるようにボンネット4を長く形成し、弁体7(流路8)の位置からハンドル53までの距離を一定以上に離した場合にも、パッキン3、ヨーク側バックシート面14、及びボンネット4上部に対してステム6を正確に芯出しできると共に、ヨーク2で芯出ししたステム6下端の弁体7を弁座31に対して正確に着座させ、弁閉時のシール性を発揮して流路8からの漏れを確実に防止することが可能になる。
【0053】
ヨーク2のステム用貫通孔11にパッキン収納部12を設け、ヨーク2の環状突出部13の開口部内周にヨーク側バックシート面14を設けているので、パッキン収納部12に収納したパッキン3とヨーク側バックシート面14とを近接させることができ、これらの間のキャビティの容積を小さく抑えることが可能となる。これにより、流体の膨張を最小限に抑制可能となる。
【0054】
ヨーク2がボンネット4に着脱自在に設けられ、その取り外し時には、環状突出部13が、その周囲のボンネット4との対向面よりも突出し、ヨーク側バックシート面14が、外部に露出するように設けているので、ヨーク2の形成時には、外方から直視しつつ面加工等の加工によりヨーク側バックシート面14を容易にかつ精密に設けることができ、裏座加工等の複雑な加工を施す必要もない。ボンネット4からヨーク2を取り外すだけでヨーク側バックシート面14が露出するので、このヨーク側バックシート面14の補修やメンテナンス等を簡単におこなうことができる。
【0055】
また、パッキン3の交換やグランド20の増し締め、内部のメンテナンスは任意に実施でき、パッキン3の交換時には、グランドナット23を緩めてグランドボルト17をグランド押え21から外し、このグランド押え21並びにグランド20を取り外すことで、パッキン3を簡便に着脱できる。
【0056】
ヨーク2にヨーク側バックシート面14、ステム6にステム側バックシート面50をそれぞれ面加工等の加工手段によって直接形成できることから、部品点数の増加を抑えることができ、組立も容易となる。
【0057】
ガスケット16が、環状突部15と環状段部32との段差によりこれらの間に設けられたガスケット室38に収容される構成としているので、取付ボルト・ナット24の締め具合によりガスケット室38の容積の大きさを任意に設定し、ガスケット16のガスケット室38への充填率を好適な範囲に調整できる。
【0058】
バックシート機構52によるバックシール時には、ステム側バックシート面50からの力により環状突出部13を広げるような力が加わる。この場合、環状突出部13の外周面とステム挿入孔30の上端内周面、及び、環状突部15の外周面と環状段部32の内周面とがそれぞれ接触し、これら2カ所で環状突出部13に加わる拡径方向の力を支えている。そのため、環状突出部13の拡径方向への変形を防ぎ、ステム側バックシート面50とヨーク側バックシート面14との当接シール状態を維持して流体を浸入を確実に阻止できる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 バルブ本体
2 ヨーク
3 パッキン
4 ボンネット
5 ボデー
6 ステム
7 弁体
8 流路
11 ステム用貫通孔
13 環状突出部
14 ヨーク側バックシート面
15 環状突部
16 ガスケット
30 ステム用挿通孔
32 環状段部
35 環状突起部
40 環状段状部
50 ステム側バックシート面
52 バックシート機構
θ1 ヨーク側バックシート面のステムの軸方向からの傾き角度
θ2 ステム側バックシート面のステムの軸方向からの傾き角度