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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098219
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】バルブ用固定構造とバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20230703BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
F16K27/00 Z
F16B35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214851
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】浅川 芳比古
(72)【発明者】
【氏名】和田 光史
(72)【発明者】
【氏名】中野 陸
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA07
3H051BB02
3H051CC11
3H051CC12
(57)【要約】
【課題】共通化した固定用のボルトを使用してバルブのボデーとキャップとを接続でき、この固定用ボルトを締め込むだけで所定の位置に取り付けでき、ボルトを通してボデーとキャップとを正確に固定できるバルブ用固定構造とバルブを提供する。
【解決手段】ボデー21側の植え込み側フランジ25の複数箇所に雌ネジ26が連通して形成され、植え込み側フランジの全ねじボルト23の先端23a側が臨む側に設けた肉厚部30に雌ネジの一部が延長して形成され、雌ネジに全ねじボルトが螺入されてその先端側が肉厚部側に係止して位置決めされ、植え込み側フランジにキャップ側フランジ33が突き合わされ、キャップ側フランジの貫通穴34を通してキャップ側フランジから突出する全ねじボルトの後端側にナット24が螺着されて植え込み側フランジとキャップ側フランジとが接続される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブのボデーとキャップとを接続するための固定構造であって、前記ボデー側に設けた植え込み側フランジの複数箇所に植え込み用の全ねじボルトの雄ネジが螺合する雌ネジが連通して形成され、この植え込み側フランジの前記全ねじボルトの先端側が臨む側に設けた肉厚部に前記雌ネジの一部が延長して形成され、前記雌ネジに前記全ねじボルトが螺入されてその先端側が前記肉厚部側に係止して位置決めされた状態で、前記植え込み側フランジに前記キャップ側に設けたキャップ側フランジが突き合わされ、このキャップ側フランジに形成した貫通穴を通して前記キャップ側フランジから突出する前記全ねじボルトの後端側にナットが螺着されて前記植え込み側フランジと前記キャップ側フランジとが接続されたことを特徴とするバルブ用固定構造。
【請求項2】
前記肉厚部に前記雌ネジの不完全ネジ部が設けられ、この不完全ネジ部に前記全ねじボルトの雄ネジの先端側が係止された請求項1に記載のバルブ用固定構造。
【請求項3】
前記肉厚部に前記雌ネジの内径に向けて突出する爪部が設けられ、この爪部に前記全ねじボルトの先端側が当接して係止された請求項1に記載のバルブ用固定構造。
【請求項4】
前記肉厚部が、前記植え込み側フランジの前記全ねじボルトの先端側が臨む側の前記ボデーとの付け根付近に設けられた請求項1乃至3の何れか1項に記載のバルブ用固定構造。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項のバルブ用固定構造によりボデーとキャップとを接続したことを特徴とするバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールバルブ等のバルブ用固定構造に関し、詳しくは、別体に設けられたボデーとキャップとを接続するためのバルブ用固定構造とバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールバルブ等のバルブでは、バルブ内にボール弁体等の弁体を収容するためにボデーとキャップとが別体に設けられ、ボデー内に、ステムを装着した弁体を収容した後に、ボデーにキャップを接続して一体化する場合がある。
【0003】
この種のボールバルブとして、例えば、特許文献1のボールバルブが開示されている。このボールバルブは、ボデーとキャップとが複数の植込みボルトと固定用ナットとの締結により接続され、通常、このようなボデーとキャップとが別体の構造のボールバルブでは、これらが植込みボルトと固定用ナットとによる締結で固定されることが多い。
【0004】
図5においては、ボールバルブのボデーとキャップとの一般的な固定構造を示している。このボール弁1は、ボデー部2とキャップ部3とを有し、ボデー部2側に設けられたフランジ部4と、キャップ部3側に設けられたフランジ部5とが、植込みボルト(スタッドボルト)6と固定用ナット7とにより接続される。
【0005】
植込みボルト6は、ボデー部側フランジ部4への取付け側の植込み側オネジ部8と、この植込み側オネジ部8に続く円筒部9と、この円筒部9に続くナット側オネジ部10とを備えている。植込み側オネジ部8は、ボデー部側フランジ部4の厚さよりも長くなるように形成され、この植込み側オネジ部8をボデー部側フランジ部4に形成されたメネジ部11に螺着したときに、植込み側オネジ部8と円筒部9との境界の係止部6aにて、植込み側の締め込みの限界が設定される。ナット側オネジ部10の長さは、植込みボルト6をねじ込んだボデー部側フランジ部4にキャップ部側フランジ部5を突き合わせた状態で、このキャップ部側フランジ部5の外側から固定用ナット7を螺着して締込みできる長さに設けられる。
【0006】
この植込みボルト6を用いることで、ボデー部側フランジ部4とキャップ部側フランジ部5とを位置合わせた状態でボデー部2とキャップ部3とを接続するものである。これらの接続時には、ボデー部2側に植込みボルト6を植込んだ後に、弁体やステムをボデー部2内に装着した状態で、植込みボルト6を通してボデー部2に対してキャップ部3を仮組みし、これらの所定の組み込み状態で固定用ナット7を植込みボルト6に締込んで一体化するようになっている。
【0007】
一方、ボールバルブ以外のバルブのボデーとキャップとをフランジ接続したり、又は管継手同士をフランジ接続する場合などにも、上記と同様に植込みボルトと固定用ナットとを用いて固定する構造が一般に知られている。
また、このような配管部品同士をフランジ接続するために、一つの締付け箇所を全ねじボルト(寸切りボルト)と2つの固定用ナットとにより固定することも多い。この場合、双方のフランジ部に互いが連通する複数の貫通孔を設け、これらフランジ部を突き合せつつ双方の貫通孔に全ねじボルトを挿通し、この全ねじボルトの両側に、フランジ部の外側から固定用ナットをそれぞれ締込んで固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭63-26612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のボールバルブのように、植込みボルト、固定用ナットを用いてフランジ接続する場合、図5に示すように、植込みボルト6の植込み側の根元位置の係止部6aが、ボデー部側フランジ部4側のメネジ部11開口側に係止することで植込みボルト6が位置決めされるため、バルブのサイズや圧力クラスにより異なるフランジ部(ボデー部側フランジ部4、キャップ部側フランジ部5)の厚さに応じて、その都度、植込み側オネジ部8やナット側オネジ部10、円筒部9の長さの異なる植込みボルト6を使い分ける必要がある。この場合、各種仕様の植込みボルト6を予め準備することになり、さらに、適切な植込みボルト6が無い場合には、あらたに植込みボルトを加工して設ける必要が生じることもある。このとき、植え込み側オネジ部8、ナット側オネジ部10、円筒部9を、接続するフランジ部4、5の寸法に応じて製作しなければならず、その加工も面倒になる。
【0010】
一方、バルブを構成する部品同士を、全ねじボルトと2つの固定用ナットとにより固定する場合には、全ねじボルトを単独でフランジ部に位置決めすることができず、両側の固定用ナットの締付けによって位置決め固定することになる。このように、全ねじボルトを両側の締付け箇所で位置調整しつつ、固定用ナットを締付けてフランジ接続しなければならないため、フランジ部の全周に渡って複数箇所の全ねじボルトを均等に締付けることが難しくなる。仮に、全ねじボルトが極端に位置ずれしていると、フランジ部同士が傾いた状態で接続されてシール性が均一で無くなりフランジ接続面から内部の流体が漏れ出すおそれもある。
【0011】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、共通化した固定用のボルトを使用してバルブのボデーとキャップとを接続でき、この固定用ボルトを締め込むだけで所定の位置に取り付けでき、ボルトを通してボデーとキャップとを正確に固定できるバルブ用固定構造とバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、バルブのボデーとキャップとを接続するための固定構造であって、ボデー側に設けた植え込み側フランジの複数箇所に植え込み用の全ねじボルトの雄ネジが螺合する雌ネジが連通して形成され、この植え込み側フランジの全ねじボルトの先端側が臨む側のボデーとの付け根付近に設けた肉厚部に雌ネジの一部が延長して形成され、雌ネジに全ねじボルトが螺入されてその先端側が肉厚部側に係止して位置決めされた状態で、植え込み側フランジにキャップ側に設けたキャップ側フランジが突き合わされ、このキャップ側フランジに形成した貫通穴を通してキャップ側フランジから突出する全ねじボルトの後端側にナットが螺着されて植え込み側フランジとキャップ側フランジとが接続されたバルブ用固定構造である。
【0013】
請求項2に係る発明は、肉厚部に雌ネジの不完全ネジ部が設けられ、この不完全ネジ部に全ねじボルトの雄ネジの先端側が係止されたバルブ用固定構造である。
【0014】
請求項3に係る発明は、肉厚部に雌ネジの内径に向けて突出する爪部が設けられ、この爪部に全ねじボルトの先端側が当接して係止されたバルブ用固定構造である。
【0015】
請求項4に係る発明は、肉厚部が、植え込み側フランジの全ねじボルトの先端側が臨む側のボデーとの付け根付近に設けられたバルブ用固定構造である。
【0016】
請求項5に係る発明は、バルブ用固定構造によりボデーとキャップとを接続したバルブである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、バルブのサイズや圧力クラスに応じて仕様の異なる植込みボルトを使用することなく、共通化した全ねじボルトを使用してバルブのボデーとキャップとを接続できる。接続時には、固定用の全ねじボルトを締め込んでその先端側を肉厚部に係止させるようにすれば、この全ねじボルトを簡単に所定の位置に取付けでき、この状態で植え込み側フランジにキャップ側フランジを突き合わせ、キャップ側フランジの貫通穴を通して全ねじボルトの後端側からナットを螺着して植え込み側フランジとキャップ側フランジとを接続できるため組立て性に優れ、全ねじボルトを通してボデーとキャップとを均等に締付けて正確に固定可能となる。これにより、ボデーとキャップのフランジ同士を、傾きを防ぎつつ接続してシール性を向上できる。鋳造時等の成形加工と同時に肉厚部を設けることができるため、肉厚部を別途加工する必要がなく、製造時の余肉などを利用して容易に設けることが可能となる。各種仕様の植え込みボルトを必要としないためコストがかからず、さらには、雄ネジを有する長尺状の全ねじボルト部材を予め形成しておき、固定するフランジ部の長さに応じてこの全ねじボルト部材を切断するようにすれば、フランジ部の長さごとにその都度仕様の異なる全ねじボルトを予め準備する必要がなく、大幅に費用を抑えることが可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によると、不完全ネジ部に全ねじボルトの雄ねじの先端側の一部を係止させることで、この全ねじボルトを植え込み側フランジの所定位置に容易に取付けできる。それぞれの全ねじボルトにナットを締め込むことで、肉厚部に対して全ねじボルトの抜け止めを図りつつ、植え込み側フランジとキャップ側フランジとを全周に渡って均等の力で圧着して接合面のシール性の向上を図り、これらを安定した状態で強固に接続できる。肉厚部に対して、雌ネジの形成と同時にこの雌ネジから連続するように不完全ネジ部を簡単に加工できる。
【0019】
請求項3に係る発明によると、全ねじボルトの先端側を爪部に当接させて係止させることで、この全ねじボルトを植込み側フランジの所定位置に容易に取付けできる。それぞれの全ねじボルトにナットを締め込むことで、肉厚部に対して全ねじボルトの抜け止めを図りつつ、植え込み側フランジとキャップ側フランジとを全周に渡って均等の力で圧着して接合面のシール性の向上を図り、これらを安定した状態で強固に接続できる。肉厚部の途中まで雌ネジを加工することで、この雌ネジの形成と同時に爪部を簡単にボデーに形成できる。
【0020】
請求項4に係る発明によると、肉厚部を植え込み側フランジの全ねじボルトの先端側が臨む側のボデーとの付け根付近に設けていることにより、鋳造時等の成形加工と同時に植え込み側フランジとボデーとの間に肉厚部を設けることができる。
【0021】
請求項5に係る発明によると、サイズや圧力クラスに応じて仕様の異なる植込みボルトを使用することなく、共通化した全ねじボルトを使用してボデーとキャップとを接続できる。接続時には、固定用の全ねじボルトを締め込むだけでこの全ねじボルトを簡単に所定の位置に取付けでき、この状態で全ねじボルトを通してボデーとキャップとを均等に締付けて正確に固定でき、組立て性に優れている。これにより、ボデーとキャップのフランジ部同士を、傾きを防ぎつつ接続してシール性が向上する。肉厚部を別途加工することなく、製造時の余肉などを利用して容易に設けることが可能となる。各種仕様の植え込みボルトを必要としないためコストがかからず、さらには、フランジ部の長さごとにその都度仕様の異なる全ねじボルトを予め準備することを回避することもできるため、大幅に費用を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のバルブ用固定構造によるバルブの一例を示す斜視図である。
図2】(a)は、本発明のバルブ用固定構造によるバルブの一例を示す側面図である。(b)は、(a)のA-A断面図である。
図3図2(b)のB部拡大断面図である。
図4】(a)は、本発明のバルブ用固定構造によるバルブの他例を示す断面図である。(b)は、(a)のC部拡大断面図である。
図5】従来のボールバルブの固定構造を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明におけるバルブ用固定構造とバルブを実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のバルブ用固定構造を適用したバルブの一例を示し、図2(a)は、本発明のバルブ用固定構造によるバルブの一例を示す側面図であり、図2(b)は、図2(a)のA-A断面図である。図3は、図2(b)のB部拡大断面図を示している。
図において、バルブ(以下、バルブ本体20という)は、例えば、ボールバルブからなり、ボデー21、キャップ22、植え込み用の全ねじボルト23、ナット24を備え、内部には図示しないステム、弁体、シートリングよりなる弁座を有している。バルブ本体20は、ボデー21内にステムを介して弁体が弁座に回転可能に装着され、ステムの回転により流路が開閉可能に設けられている。
【0024】
ボデー21には、キャップ22との接続側に植え込み側フランジ25が設けられ、この植え込み側フランジ25には、全ねじボルト23が植え込まれる。植え込みフランジ25の全ねじボルト23が植え込まれる複数の箇所、本実施形態では4箇所に、雌ネジ26が略等間隔に連通して形成され、この雌ネジ26に全ねじボルト23に形成された雄ネジ27が螺合可能に設けられる。
【0025】
植え込み側フランジ25における全ねじボルト23の先端23a側が臨む側のボデー21との付け根付近には、外周方向に突出した肉厚部30が設けられ、この肉厚部30に雌ネジ26が延長して形成され、この肉厚部30は、4箇所の雌ネジ26全てに対して設けられる。肉厚部30は、雌ネジ26の周方向全体に渡って設けられている必要はなく、雌ネジ26の一部がかかる程度の大きさに設けられていればよい。ここで、雌ネジ26の一部がかかる程度とは、植え込み側フランジ25に設けた雌ネジ26の投影領域に肉厚部30が重複するような状態をいう。
【0026】
このように、肉厚部30には雌ネジ26の少なくとも一部が形成され、この肉厚部30の先端側に、雌ネジ26の不完全ネジ部31が形成される。不完全ネジ部31には、全ねじボルト23の雄ネジ27の先端部32が係止可能となる。
【0027】
従来であれば、ボデー21と植え込み側フランジ25とは、ボデー外周面21aと植え込み側フランジ面25aとをそのまま延長して交差するように接続されるか、その接続部にわずかなテーパ又はアール面が設けられる程度であり、それらの肉が雌ネジ26にかかることはない。本実施形態では、図3に示すように、ボデー21の外周面21aと植え込み側フランジ面25aとの境界部に雌ネジ26にかかるように肉厚部30を設けることで、この肉厚部30に雌ネジ26を延長して設けることが可能となる。
【0028】
そして、図3の例では、肉厚部30は、植え込み側フランジ面25aからボデー21の外周面21aに向かって徐々に厚みが小さくなるが、雌ネジ26の延長部位は、肉厚部30が雌ネジ26にかからなくなる厚みの位置まで突き抜けるように設けるのではなく、肉厚部30が雌ネジ26にかかる厚みを有している位置で止めるように設けることで、その先端を不完全ネジ部31とすることが可能となる。
【0029】
一方、キャップ22は、ボデー21との接続側にキャップ側フランジ33を備え、このキャップ側フランジ33が植え込み側フランジ25に接続可能に設けられる。キャップ側フランジ33において、雌ネジ26が対向する4箇所の位置には、貫通穴34が等間隔に形成される。
【0030】
ボデー21とキャップと22をフランジ接続する場合には、先ず、4箇所の雌ネジ26に雄ネジ27をそれぞれ螺入して全ねじボルト23を固定する。このとき、肉厚部30側の不完全ネジ部31に対して全ねじボルト23の先端部32が係止され、植え込み側フランジ25に全ねじボルト23の先端23a側が位置決めされた状態で装着される。これにより、4本の全ねじボルト23が、植え込み側フランジ25から略一定の長さでキャップ22が装着される側に突出した状態となる。
【0031】
この状態で、キャップ側フランジ33の各貫通穴34に全ねじボルト23の後端側を挿入しつつ、植え込み側フランジ25にキャップ側フランジ33を突き合わせることで、ボデー21にキャップ22が位置合わせされた状態で仮組みされる。このとき、全ねじボルト23は、植え込み側フランジ25、キャップ側フランジ33を通してその後端側にナット24を螺着できる長さになるように予め設けられている。
【0032】
続いて、貫通穴34を通してキャップ側フランジ33から突出する全ねじボルト23の後端側にナット24が螺着され、このナット24と全ねじボルト23との締結によって植え込み側フランジ25とキャップ側フランジ33とが接続され、本発明におけるバルブ本体20のバルブ用固定構造が構成される。
【0033】
なお、上記実施形態において、バルブ本体20としてボールバルブを用いているが、ボールバルブ以外のバルブのボデーとキャップとを上記バルブ用固定構造により接続することもできる。
【0034】
植え込み側フランジ25側の雌ネジ26と、キャップ側フランジ33側の貫通穴34とをそれぞれ4箇所に設けているが、これらの数は任意であり、植え込み側フランジ25やキャップ側フランジ33のフランジ径やバルブサイズ等に応じて適宜変更してもよい。
【0035】
肉厚部30は、植え込み側フランジ25における全ねじボルト23の先端23a側が臨む側であり、雌ネジ26に少なくとも一部がかかり、雌ネジ26を延長可能に設けることが可能であれば、ボデー21の付け根付近以外の場所に設けられていてもよい。また、肉厚部を植え込み側フランジ25から円周状に突出するように形成し、この肉厚部の内周全体に渡って不完全ネジ部を設けることもできる。ただし、ボデー21の付け根付近はもともとアールやテーパ等の肉盛がなされることがおおく、鋳造等の際に肉厚に形成しやすいこと、また、付け根付近の方が強度を保ちやすいこと、等の理由から、付け根付近に設けることがより好ましい。
【0036】
次いで、本発明のバルブ用固定構造とバルブの上記実施形態における作用を説明する。
上述したバルブ用固定構造は、バルブ本体20のボデー21とキャップ22とを接続する固定構造であり、これらをフランジ接続するために、そのフランジ接続部(胴着部)に全ねじボルト23を適用したものである。
【0037】
ボデー21側に設けた植え込み側フランジ25の複数箇所に雌ネジ26を連通して形成し、この植え込み側フランジ25の全ねじボルト23の先端側が臨む側のボデー21との付け根付近に肉厚部30を設け、この肉厚部30に雌ネジ26の一部を延長して形成しているので、ボデー21の鋳造加工等による加工と同時に、肉厚部30を設けることができる。
【0038】
さらに、肉厚部30に雌ネジ26を加工すると同時に、雌ネジの不完全ネジ部31を形成できる。この場合、植え込み側フランジ25の外側から雌ネジ26をねじ切り加工で形成するときに、肉厚部30に図示しないねじ切り工具の先端側を進入させて切り込むように加工すれば容易に不完全ネジ部31を設けることができる。
【0039】
全ねじボルト23によって植え込み側フランジ25とキャップ側フランジ33とを接続でき、この全ねじボルト23を使い分けることなく共通化できる。さらに、長尺状の全ねじボルトを予め設けておき、この長尺状の全ねじボルトを接続するフランジ25、33の厚さ等に応じて切断して使用することも可能になる。
【0040】
全ねじボルト23をボデー21に組み込むときには、この全ねじボルト23を雌ネジ26に螺入し、雄ネジ27の先端部32が肉厚部30に形成した雌ネジの一部を成す不完全ネジ部31に差し掛かったときに、続けて進入させることが可能となる。この場合、雄ネジ27の先端部32が、雌ネジ26の不完全ネジ部31に到達したときに、全ねじボルト23が不完全ネジ部31でストップする程度に緩くねじ込むようにすればよい。これにより、雌ねじ26に対して、全長が略同じ4本の全ねじボルト23を同じ深さまで螺着し、キャップ側フランジ33側への突出長さを略同じにできる。
【0041】
ボデー21とキャップ22とを接続するときには、上記の全ねじボルト23の取付け状態でボデー21内にステムを介して弁体を組み込み、貫通穴34に全ねじボルト23の後端側を挿入しつつ、植え込み側フランジ25にキャップ側フランジ33を突き合わせることにより、4本の全ねじボルト23でキャップ22を案内しながらボデー21に仮組みできる。
【0042】
さらに、全ねじボルト23によるボデー21とキャップ22との位置合わせ状態で、貫通穴34を通してキャップ側フランジ33から突出する全ねじボルト23の後端側にナット24を螺着する。ナット24を締付けることで、全ねじボルトがボデー21側に押し込まれ、植え込み側フランジ25とキャップ側フランジ33とを強固に接続できる。このとき、雄ネジ27の先端部32が雌ネジ26の不完全ネジ部31に係止することで、これら不完全ネジ部31、先端部32がストッパの機能を発揮して全ねじボルト23を位置決め状態で締結する。
【0043】
前述したように、全ねじボルト23の先端を位置決め規制し、キャップ22側への突出側の長さを略同じにしていることで、フランジ25、33同士の傾きを防いだ状態で均等にナット24を全ねじボルト23後端に締付け、フランジ接合面からの内部流体の漏れを確実に阻止する。全ねじボルト23の先端を植え込み側フランジ25から突き出るまでねじ込む構成であるため、植え込み側フランジ25を構成する鋳物の厚みが異なる場合にも、ボデー21とキャップ22とを接続可能になる。
【0044】
図4においては、本発明におけるバルブ用固定構造によるバルブの他例を示している。なお、この実施形態において、上記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0045】
この実施形態のバルブ本体40では、植え込み側フランジ25における全ねじボルト23の先端側が臨む側のボデー21との付け根付近に肉厚部30が設けられ、この肉厚部30に設けられた雌ネジ26の内径に向けて突出する爪部41が設けられる。
【0046】
植え込み側フランジ25に全ねじボルト23を螺入すると、この全ねじボルト23の先端23a側が爪部41に当接し、これによって全ねじボルト23が雌ネジ26に係止して位置決めされた状態となる。
【0047】
これにより、前述の肉厚部30に不完全ネジ部31を設けた場合と同様に、植込みボルトを使用することなく全ねじボルト23、ナット24を用いてボデー21とキャップ22とを接続可能となる。これらの接続時には、爪部41が全ねじボルト23に対してストッパ機能を発揮することで、ナット24を締付けたときに傾きやずれを防ぎつつ強固にし、全ねじボルト23やナット24の緩みを阻止して接続状態を維持できる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
例えば、全ねじボルトを用いてフランジ同士を接続する構造であれば、バルブのボデーとキャップ以外の接続箇所にも利用することもでき、さらには、バルブ以外の各種配管機材にも応用することもできる。
【符号の説明】
【0049】
20、40 バルブ本体
21 ボデー
22 キャップ
23 全ねじボルト
23a 先端
24 ナット
25 植え込み側フランジ
26 雌ネジ
27 雄ネジ
30 肉厚部
31 雌ネジ側の不完全ネジ部
32 雄ネジの先端
33 キャップ側フランジ
34 貫通穴
41 爪部
図1
図2
図3
図4
図5