(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098230
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】高周波通信装置の電波吸収体
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20230703BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H05K9/00 D
H05K9/00 M
H05K9/00 G
H01Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214863
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100088742
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村中 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤生 達郎
【テーマコード(参考)】
5E321
5J020
【Fターム(参考)】
5E321AA02
5E321BB04
5E321BB06
5E321BB32
5E321BB33
5E321CC03
5E321CC16
5E321CC30
5E321GG11
5E321GH10
5J020EA04
5J020EA08
5J020EA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、高周波通信装置の電波吸収体に関し、量産性を向上でき、又、コストを低減でき、更に軽量化を図ることができる。
【解決手段】ミリ波レーダー等の不要放射電波を吸収して高周波通信装置100内の半導体素子110への電波干渉を低減する高周波通信装置100の電波吸収体10において、電波吸収体10は、高周波通信装置100に設けられたベース部20に固定された半導体素子110の周囲を取り囲むサイド部40と、サイド部40により取り囲まれる開放面を塞ぐトップ部50と、から構成され、トップ部50の内面には、電波吸収体10内に位置する半導体素子110に向かって突出し、半導体素子110から離れて位置し、周期的に配置された複数の突起部60を設け、突起部60は、半導体素子110に向かって先細り状に形成され、合成樹脂で一体的に成形される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波レーダー等の不要放射電波を吸収して高周波通信装置内の半導体素子への電波干渉を低減する高周波通信装置の電波吸収体において、
前記電波吸収体は、
前記高周波通信装置に設けられたベース部に固定された半導体素子の周囲を取り囲むサイド部と、
前記サイド部により取り囲まれる開放面を塞ぐトップ部と、から構成され、
前記トップ部の内面には、
前記電波吸収体内に位置する前記半導体素子に向かって突出し、前記半導体素子から離れて位置し、周期的に配置された複数の突起部を設け、
前記突起部は、前記半導体素子に向かって先細り状に形成され、合成樹脂で一体的に成形されていることを特徴する高周波通信装置の電波吸収体。
【請求項2】
前記突起部は、前記半導体素子に向かって正多角錐形状又は円錐形状に突出していることを特徴する請求項1に記載の高周波通信装置の電波吸収体。
【請求項3】
前記トップ部と前記突起部とは、合成樹脂で一体的に成形されていることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の高周波通信装置の電波吸収体。
【請求項4】
前記トップ部、前記突起部、及び前記サイド部は、合成樹脂で一体的に成形されていることを特徴する請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波通信装置の電波吸収体。
【請求項5】
前記サイド部には、前記ベース部に取り付けるための係合部を設けたことを特徴する請求項1~4のいずれか1項に記載の高周波通信装置の電波吸収体。
【請求項6】
前記突起部は、前記トップ部の内面から先端部までの突出高さが0.1mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の高周波通信装置の電波吸収体。
【請求項7】
前記突起部は、その材料の比誘電率が4以上26以下であることを特徴する請求項1及び請求項1~6のいずれか1項に記載の高周波通信装置の電波吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高周波通信装置の電波吸収体に関し、量産性を向上でき、又、コストを低減でき、更に軽量化を図ることができる。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波やミリ波における不要放射電波による干渉を低減するための電波吸収体に関して、筐体内部に凹凸を設ける技術が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
上記した従来の凹凸としては、例えば筐体の蓋の天井部から突出する金属製の突起物を設けた高周波通信装置が知られている(特許文献1の段落「0018」、並びに
図1及び
図4参照)。
また、上記特許文献1には、突起物を、金属製の蓋と別に非金属で作成し、表面をメッキなどによって金属皮膜で覆ってもよい、と記載されている(特許文献1の段落「0014」参照)。
【0003】
さらに、上記した金属製の蓋は、筐体の側壁によってベースプレートから分離されて構成され、側壁としては、金属、或いはガラス、アルミナ等の非金属が例示されている(特許文献1の段落「0014」及び
図1参照)。
一方、従来の凹凸としては、例えばフェライト及びカーボニル鉄を分散混入した電波吸収層の一面に凸部と凹部とを有する電波吸収体が知られている(特許文献2の第2頁左上欄第1~11行、第3図(A)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3739230号公報
【特許文献2】特開昭58-034602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の凹凸(特許文献1及び特許文献2参照)は、金属或いは金属メッキが必要であり、量産性、コスト、軽量化の面で改良の余地があるという第1の問題点があった。
一方、従来の高周波通信装置(特許文献1参照)は、筐体の側壁とベースプレートとが分離しているので、側壁とベースプレートとの取り付けや、さらに、両者のネジ止めなどの必要になり、装置の取付作業性が悪いという第2の問題点もあった。
【0006】
本発明は、上記した第1の問題点に着目してなされたもので、突起部を半導体素子に向かって先細り状に形成するとともに、合成樹脂で一体的に成形することで、樹脂製の突起部でも、従来の金属製の突起物と同等に、不要放射電波の吸収特性を得ることができる。
また、本発明は、上記した第2の問題点に着目してなされたもので、サイド部に、ベース部を取り付ける係合部を一体的に形成することで、サイド部の係合部を用いて、ベース部を簡便に、且つ迅速に取り付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電波吸収体は、ミリ波レーダー等の不要放射電波を吸収して高周波通信装置内の半導体素子への電波干渉を低減する高周波通信装置の電波吸収体において、前記電波吸収体は、前記高周波通信装置に設けられたベース部に固定された半導体素子の周囲を取り囲むサイド部と、前記サイド部により取り囲まれる開放面を塞ぐトップ部と、から構成され、前記トップ部の内面には、前記電波吸収体内に位置する前記半導体素子に向かって突出し、前記半導体素子から離れて位置し、周期的に配置された複数の突起部を設け、前記突起部は、前記半導体素子に向かって先細り状に形成され、合成樹脂で一体的に成形されていることを特徴する。
【0008】
また、本発明の一態様に係る電波吸収体は、前記突起部が、前記半導体素子に向かって正多角錐形状又は円錐形状に突出していることを特徴する。
本発明の一態様に係る電波吸収体は、前記トップ部と前記突起部とが、合成樹脂で一体的に成形されていることを特徴する。
本発明の一態様に係る電波吸収体は、前記トップ部、前記突起部、及び前記サイド部が、合成樹脂で一体的に成形されていることを特徴する。
本発明の一態様に係る電波吸収体は、前記サイド部には、前記ベース部に取り付けるための係合部を設けたことを特徴する。
本発明の一態様に係る電波吸収体は、前記突起部は、前記トップ部の内面から先端部までの突出高さが0.1mm以上2.0mm以下であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る電波吸収体は、その材料の比誘電率が4以上26以下であることを特徴する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、突起部を半導体素子に向かって先細り状に形成するとともに、合成樹脂で一体的に成形することで、樹脂製の突起部でも、従来の金属製の突起物と同等に、不要放射電波の吸収特性を得ることができる。
また、本発明によれば、従来の金属製の突起物と比較し、電波吸収体の量産性を向上でき、又、コストを低減でき、更に軽量化を図ることができる。
さらに、本発明の一態様によれば、突起部を樹脂製とすることで、酸化の影響を受けず、電波吸収体の量産バラツキや経時変化も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係わり、電波吸収体の断面図である。
【
図2】
図1に対応し、高周波通信装置の一部を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係わり、電波吸収体の斜視図である。
【
図4】
図3の電波吸収体を下側から見た斜視図である。
【
図5】
図4の電波吸収体の一部を拡大した斜視図である。
【
図7】
図6の電波吸収体の一部を拡大した平面図である。
【
図8】本発明の一つの実施形態に係わり、突起部の形状に関し、反射係数と周波数との関係を説明するため図表である。
【
図9】本発明の一つの実施形態に係わり、突起部の高さに関し、反射係数と周波数との関係を説明するための図表である。
【
図10】本発明の一つの実施形態に係わり、突起部の高さに関し、透過係数と周波数との関係を説明するための図表である。
【
図11】本発明の一つの実施形態に係わり、突起部の比誘電率に関し、反射係数と周波数との関係を説明するための図表である。
【
図12】本発明の一つの実施形態に係わり、突起部の比誘電率に関し、透過係数と周波数との関係を説明するための図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
本発明の実施形態について、以下に主として
図1を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内であって、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(電波吸収体10)
図1及び
図2中、10は電波吸収体であり、電波吸収体10は、高周波通信装置100に用いられ、ミリ波レーザーの内部で処理チップを保護する電波ノイズ対策部品に使用される。
ここで、「ミリ波」は、ミリ波、準ミリ波、又はマイクロ波を含む概念である。
電波吸収体10は、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)については後述する。
(1)電波吸収部材30
なお、電波吸収体10は、上記した(1)に限定されず、例えばベース部20と電波吸収部材30とを一体的に形成してもよい。
【0013】
一方、高周波通信装置100は、電波吸収体10のほか、大別すると、
図2に示すように、次の各部を備える。
なお、次の(1)~(3)については後述する。
(1)半導体素子110
(2)アンテナ120
(3)レドーム130
なお、高周波通信装置100は、上記した(1)~(3)に限定されず、例えば半導体素子110をアンテナ120に電気的に接続する配線などを含んでいてもよい。
【0014】
(電波吸収部材30)
電波吸収部材30は、
図1~
図6に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)~(4)については後述する。
(1)サイド部40
(2)トップ部50
(3)突起部60
(4)係合部70
なお、電波吸収部材30は、上記した(1)~(4)に限定されず、例えばトップ部50と突起部60とは、合成樹脂で一体的に成形したり、或いはトップ部50、突起部60、及びサイド部40を合成樹脂で一体的に成形してもよい。また、係合部70を除き、サイド部40又はベース部20の一方を、他方に差し込んで固定してもよい。
【0015】
(ベース部20)
ベース部20は、
図1及び
図2に示すように、半導体素子110を固定可能なものである。ベース部20は、板状であり、その全部や一部が合成樹脂で一体的に成形されている。
また、合成樹脂は、材質に限定されず、一定の剛性を有していればよい。
さらに、ベース部20は、単層で無く、例えばプリント基板を多層に積層したものでもよい。
【0016】
(電波吸収部材30)
電波吸収部材30は、
図1~
図5に示すように、ベース部20に固定された半導体素子110の上方に位置し、半導体素子110を包み隠すものである。
電波吸収部材30は、中空な箱型である、下面がベース部20に向かって開放し、その全部や一部が合成樹脂で一体的に成形されている。
また、合成樹脂は、材質に限定されず、電波吸収体10として必要な剛性を有していればよい。
さらに、電波吸収部材30は、図示しないが、レドーム130に固定してもよい。
【0017】
(サイド部40)
サイド部40は、
図1~
図5に示すように、電波吸収部材30の一部を構成し、ベース部20に設けられ、半導体素子110の周囲を取り囲むものである。サイド部40は、半導体素子110の四方に位置し、四方に位置する各サイド部40は、板状であり、合成樹脂で一体的に成形されており、半導体素子110とトップ部50との間に任意の間隔を形成している。
また、合成樹脂は、材質に限定されず、電波吸収体10として必要な剛性を有していればよい。
なお、四方に位置する4枚のサイド部40を、一体的に成形してもよいし、4枚ずつそれぞれ成形し、例えば接着剤などを接合しても良い、
【0018】
(トップ部50)
トップ部50は、
図1~
図5に示すように、サイド部40により取り囲まれる開放面を塞ぐものであり、板状であり、合成樹脂で一体的に成形されている。
また、合成樹脂は、材質に限定されず、電波吸収体10として必要な剛性を有していればよい。
【0019】
(突起部60)
突起部60は、
図1、
図3、
図4及び
図5に示すように、電波吸収体10内に位置する半導体素子110に向かって突出し、半導体素子110から離れて位置し、周期的に配置された複数の突起部60を設けている。
突起部60は、半導体素子110に向かって先細り状に形成され、合成樹脂で一体的に成形されている。
突起部60は、半導体素子110に向かって正多角錐形状又は円錐形状に突出している。
正多角錐形状としては、正三角錐、正四角錐(いわゆるピラミッド型)、正五角錐などがあり、本実施の形態では、正四角錐型を選択している。
【0020】
(高周波通信装置100)
図2に示す高周波通信装置100は、図示しないが、例えば自動車の前方レーダーや後方レーダーなどに使用する。
【0021】
(アンテナ120)
アンテナ120は、
図2に示すように、ベース部20の表面に設けられ、半導体素子110に、図示しないが、電気的に接続される。なお、アンテナ120の位置は、ベース部20の表面に限定され、ベース部20の裏側に設けてもよい。
一方、アンテナ120は、電波吸収部材30の外側に位置させている。
これに対し、半導体素子110が電波吸収部材30内に位置することから、電波吸収部材30に内外に貫通する貫通孔を形成してもよい。
【0022】
(レドーム130)
レドーム130は、
図2に示すように、電波を透過するケースであり、電波吸収部材30全体を取り囲むようにいる。レドーム130の内部には、電波吸収部材30と、アンテナ120が位置する。
レドーム130は、例えば「PBT樹脂」で形成され、誘電率は例えば「5」であり、厚さは例えば「1mm」である。なお、レドーム130の材質として、「PBT樹脂」を、誘電率として「5」をそれぞれ例示したが、これらに限定されない。
また、突起部60の形状は、例えば「円錐」であり、高さは「1.5mm」である。そして、隣接する突起部60の間隔、すなわち同図の向かって左右方向、並びに図面の厚み方向において隣接する突起部60の間隔は、例えば「1mm」である。
なお、突起部60の形状として、「円錐」を、高さとして「1.5mm」を、隣接する突起部60の間隔として、「1mm」をそれぞれ例示したが、これらに限定されない。
【0023】
(
図1の各部の寸法)
図1中、各部の寸法a~dについて説明する。
各部の寸法a~dは、次の通りである。
(1)aは、ベース部20の厚みであり、例えば「1.5mm」である。
(2)bは、突起部60の厚みであり、例えば「1.0mm」である。
突起部60の厚みは、「0.1mm」以上「2.0mm」以下が好ましい。
突出高さが0.1mm未満の場合には、射出成形時に金型の凹形状に樹脂を100%充填することが困難であるためである。また、ベース部20とトップ部50との隙間の高さhは、λ/2以下が好ましく、「λ=76.5GHz」の場合、λは「4mm」で、hは「2mm」となる。
このため、突起部60の厚みが「2.0mm」を越えると、隙間の高さh内に突起部60を配置できない。なお、突起部60の高さhは、好ましくは1.0mm以下がよい。
さらに好ましくは、0.1mm以上1.0mm以下がよい。
【0024】
(3)cは、半導体素子110の厚みであり、例えば1.0mmである。
半導体素子110の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。
(4)dは、ベース部20とトップ部50との隙間の高さであり、例えば2.0mmである。
隙間の高さhは、λ/2以下が好ましく、λ=76.5GHzの場合、λは4mmで、hは2mmとなる。
なお、各部の寸法a~hは、例示した距離や厚みに限定されない。
【0025】
(係合部70)
係合部70は、
図1~
図4に示すように、係止爪71、係合穴72から構成される。
係止爪71は、
図1及び
図2に示すように、サイド部40の左右外側面からそれぞれ突出する。係止爪71は、斜面を下に向けた断面が直角三角形に突出する。また、係止爪71は、
図3及び
図4に示すように、前後にも一対突出する。
係合穴72は、
図1及び
図2に示すように、各係止爪71がそれぞれはまり込むものである。係合穴72は、ベース部20から板状に上方に向かって突出し、高さの途中には厚さ方向に貫通し、係止爪71がはまり込む穴が形成されている。
係合穴72は、係止爪71に合わせてはめ込むと、係合穴72に押されて、樹脂の弾性で互いに離隔する方向にたわむ。係合穴72の穴が係止爪71に位置すると、弾性復元力により、パチンとはまり込む。その結果、サイド部40に対し、ベース部20がワンタッチで固定される。
【0026】
なお、ベース部20から突出した板状部分を剛性部材で形成する場合は、合成樹脂で形成されたサイド部40がたわみ、弾性復元力で係合するようにしても良い。
また、固定状態において、係合穴72を、弾性を利用して係止爪71から係脱させることで、サイド部40からベース部20を取り外すことも可能である。また、係止爪71をベース部20側に設け、係合穴72をサイド部40側に設けてもよい。
【0027】
(サイド部40とベース部20との他の固定方法)
サイド部40とベース部20との他の固定方法としては、係合部70のほか、「挟みこみ」や「熱かしめ」がある。
「挟みこみ」としては、例えばサイド部40にベース部20側に向かって突出した突起を設け、ベース部20側に突起が逆止的にはまり込む穴を設けてもよい。サイド部40にベース部20を取り付けには、突起を穴に合わせてはめ込むことで、サイド部40にベース部20を固定できる。なお、固定状態において、突起を、穴から無理抜きすることで、サイド部40からベース部20を取り外すことも可能である。また、突起をベース部20側に設け、穴をサイド部40側に設けてもよい。
【0028】
「熱かしめ」としては、例えばサイド部40にベース部20側に向かって突出した柱を設け、ベース部20側に柱が貫通する貫通孔を設けてもよい。サイド部40にベース部20を取り付けには、柱を貫通孔に通して突出させ、突出端を熱で溶かし、貫通孔より大径に、かしめることで、サイド部40にベース部20を固定できる。なお、柱をベース部20側に設け、貫通孔をサイド部40側に設けてもよい。
【0029】
(
図6及び
図7の突起部60の配置)
突起部60の配置について、
図6及び
図7を用いて説明する。
突起部60は、
図6に示すように、トップ部50の天井面に、2次元に一定の周期的で、ほぼ全面に配列されている。
突起部60は、
図7に示すように、幅が各々W1、W2であり、横方向ギャップG1、縦方向ギャップG2を持ち、横周期P1、縦周期P2の周期で二次元的に配列されている。
また、「周期的」には、突起部60の全部に限らず、突起部60の一部のグループ61を単位として周期性を持っている場合も含む。
【0030】
(電波吸収体10の製造方法)
電波吸収体10の製造方法は、電波吸収部材30を、金型を用いて合成樹脂で一体成形する方法で製造する。
なお、電波吸収部材30とベース部20とを一体成形することも可能である。このとき、四方に位置するサイド部40の一面~三面を開放した状態で成形することで、電波吸収部材30とベース部20とを一体成形することが可能となる。
また、電波吸収部材30のサイド部40、トップ部50、突起部60、係合部のすべて、すなわち4個の部材を一体成形してもよいし、個別に成形し、接着剤などで固定してもよい。
【0031】
このほか、係合部を除く、3個の部材を一体成形し、係合部の1個の部材を別成形し、サイド部40に接着剤などで固定してもよい。また、サイド部40と係合部とを除く、トップ部50と突起部60との2個の部材を一体成形し、残るサイド部40と係合部との2個の部材を別成形し、トップ部50に接着剤などで固定してもよい。このとき、残るサイド部40と係合部との2個の部材を一体成形してもよいし、個別に成形し、接着剤などで固定してもよい。
【0032】
(合成樹脂の種類)
合成樹脂の種類としては、基本的には樹脂の種類に関係なく、絶縁材料としては、例えばポリプロピレンを用いている。合成樹脂に電波の吸収特性を待たせるには、絶縁材料に導電フィラーを添加すれば目的の材料は得られる。
絶縁材料として、例えばポリプロピレンのほか、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、i-ポリプロピレン、石油樹脂、ポリスチレン、s-ポリスチレン、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、ABS樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4-トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリカーボネート、6-ナイロン、6,6-ナイロン又は6,10-ナイロンなどのポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイドとトリアリルイソシアヌルブレンド物、(ポリフェニレンオキサイド又はポリジメチルフェニレンオキサイド、トリアリルイソシアヌル、パーオキサイド)ブレンド物、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PPI、カプトン)、液晶樹脂、これら複数材料のブレンド物などを用いてもよい。
【0033】
(
図8の突起部60の形状に関する図表)
図8の図表は、突起部60の形状に関し、反射係数(dB)と周波数(GHz)との関係を説明するためのものである。
突起部60の形状としては、本実施の形態の正四角錐と、従来の凸形状のない平板とを用いた。
比較の結果、凸形状のない平板の場合には、反射係数が「-4dB」を推移していたのに対し、本実施の形態の正四角錐の場合には、反射係数が「-11dB」から徐々に向上していた。
このため、突起部60の形状を、正四角錐した場合には、凸形状のない平板の場合に比較し、電波の反射特性を向上できるものと推測できる。
【0034】
(
図9の突起部60の高さに関する図表)
図9の図表は、突起部60の高さに関し、反射係数(dB)と周波数(GHz)との関係を説明するためのものである。
突起部60の高さについては、高さt=0.7mmと、高さt=1.7mmとを用いた。
その結果、高さt=0.7mmには、反射係数が「-11dB」でほぼ一定であったのに対し、高さt=1.7mmの場合には、反射係数が「-22dB」から「-19dB」に向かって徐々に下降していた。
このため、突起部60の高さtを高くした場合には、電波の反射特性を向上できるものと推測できる。
【0035】
(
図10の突起部60の高さに関する他の図表)
図10の図表は、突起部60の高さに関し、透過係数(dB)と周波数(GHz)との関係を説明するためのものである。
突起部60の高さについては、高さt=0.7mmと、高さt=1.7mmとを用いた。
比較の結果、高さt=0.7mmの場合には、透過係数が「-40dB」から「-45dB」に向かって徐々に向上していたのに対し、高さt=1.7mmの場合には、透過係数が「-42dB」から「-51dB」に向かって徐々に向上していた。
このため、突起部60の高さtを高くした場合には、電波の透過特性を向上できるものと推測できる。
【0036】
(
図11の突起部60の比誘電率に関する他の図表)
図11の図表は、突起部60の材質の比誘電率(Er)に関し、反射係数(dB)と周波数(GHz)との関係を説明するためのものである。比誘電率(Er)は、媒質の誘電率と真空の誘電率の比である。
突起部60の材質の比誘電率(Er)の数値については、次のものを用いた。
(1)比誘電率(Er)は、12.0(以下、「Er=12.0」で、材質は「誘電損失材料」である。
(2)比誘電率(Er)は、10.2(以下、「Er=10.2」で、材質は「誘電損失材料」である。
(3)比誘電率(Er)は、7.1(以下、「Er=7.1」で、材質は「誘電損失材料」である。
(4)比誘電率(Er)は、5.0(以下、「Er=5.0」で、材質は「誘電損失材料」である。
【0037】
Er=12.0の場合には、反射係数が「-11dB」でほぼ一定であった。
Er=10.2の場合には、反射係数が「-10dB」でほぼ一定であった。
Er=7.1の場合には、反射係数が「-13dB」から「-16dB」に向かって徐々に向上していた。
Er=5.0の場合には、反射係数が「-9B」から「-11B」に向かって徐々に向上していた。
このため、突起部60の比誘電率(Er)の低い方が、全般的に電波の反射係数が高い。
【0038】
(
図12の突起部60の比誘電率に関する他の図表)
図12の図表は、
図11と同じ条件で、突起部60の材質の比誘電率(Er)に関し、透過係数(dB)と周波数(GHz)との関係を説明するためのものである。
Er=12.0の場合には、反射係数が「-44dB」でほぼ一定であった。
Er=10.2の場合には、反射係数が「-34dB」から「-40dB」に向かって徐々に向上していた。
Er=7.1の場合には、反射係数が「-13dB」から「-16dB」に向かって徐々に向上していた。
Er=5.0の場合には、反射係数が「-4dB」でほぼ一定であった。
このため、突起部60の比誘電率(Er)の高い方が、電波の透過係数か高い。
【0039】
(実施の形態の第1の特徴点)
実施の形態に係る高周波通信装置100の電波吸収体10の第1の特徴点は、ミリ波レーダー等の不要放射電波を吸収して高周波通信装置100内の半導体素子110への電波干渉を低減する高周波通信装置100の電波吸収体10において、電波吸収体10は、高周波通信装置100に設けられたベース部20に固定された半導体素子110の周囲を取り囲むサイド部40と、サイド部40により取り囲まれる開放面を塞ぐトップ部50と、から構成され、トップ部50の内面には、電波吸収体10内に位置する半導体素子110に向かって突出し、半導体素子110から離れて位置し、周期的に配置された複数の突起部60を設け、突起部60は、半導体素子110に向かって先細り状に形成され、合成樹脂で一体的に成形されている点である。
【0040】
(第1の特徴点の効果)
第1の特徴点によれば、突起部60を半導体素子110に向かって先細り状に形成するとともに、合成樹脂で一体的に成形することで、樹脂製の突起部60でも、従来の金属製の突起物(特許文献1の段落「0018」、並びに
図1及び
図4参照)と同等に、不要放射電波の吸収特性を得ることができる。
また、本発明によれば、従来の金属製の突起物と比較し、電波吸収体10の量産性を向上でき、又、コストを低減でき、更に軽量化を図ることができる。
さらに、本発明の一態様によれば、突起部を樹脂製とすることで、酸化の影響を受けず、電波吸収体10の量産バラツキや経時変化も低減できる。
【0041】
(実施の形態の第2の特徴点)
実施の形態に係る電波吸収体10の第2の特徴点は、突起部60が、半導体素子110に向かって正多角錐形状、円錐形状又は半球形状に突出している点である。
(第2の特徴点の効果)
第2の特徴点によれば、突起部60に正多角錐形状、円錐形状又は半球形状を採用することで、従来の直方体のもの(特許文献1の段落「0019」)と比較し、
図8に示すように、反射係数を-10dB以下をできる。
【0042】
(実施の形態の第3の特徴点)
実施の形態に係る電波吸収体10の第3の特徴点は、トップ部50と突起部60とが、合成樹脂で一体的に成形されている点である。
(第3の特徴点の効果)
第3の特徴点によれば、トップ部50と突起部60とを合成樹脂で一体的に成形することで、電波吸収体10の製造を簡便にできる。
【0043】
(実施の形態の第4の特徴点)
実施の形態に係る電波吸収体10の第4の特徴点は、トップ部50、突起部60、及びサイド部40が、合成樹脂で一体的に成形されている点である。
(第4の特徴点の効果)
第4の特徴点によれば、トップ部50、突起部60、及びサイド部40を合成樹脂で一体的に成形することで、電波吸収体10の製造を一層、簡便にできる。
また、仕様により異なる半導体素子110の高さや、突起部60の高さにも、サイド部40の長さを変えることで、容易にトップ部50と半導体素子110との間隔を設定あるいは変更することができる。
【0044】
(実施の形態の第5の特徴点)
実施の形態に係る電波吸収体10の第5の特徴点は、サイド部40には、ベース部20に取り付けるための係合部を設けた点である。
(第5の特徴点の効果)
第5の特徴点によれば、サイド部40の係合部により、ベース部20を取り付けることができるので、電波吸収体10の組み立てを簡便に、且つ迅速にできる。ベース部20への取付のために、ネジや接着剤などの取付手段を必要としないため、部品点数の削減に貢献できる。
【0045】
(実施の形態の第6の特徴点)
実施の形態に係る電波吸収体10の第6の特徴点は、突起部60は、トップ部50の内面から先端部までの突出高さが0.1mm以上2.0mm以下である点である。
(第6の特徴点の効果)
第6の特徴点によれば、突出高さが0.1mm未満の場合には、射出成形時に金型の凹形状に樹脂を100%充填することが困難であるためである。また、ベース部20とトップ部50との隙間の高さhは、λ/2以下が好ましく、λ=76.5GHzの場合、λは4mmで、hは2mmとなる。
このため、2.0mmを越えると、隙間の高さhに突起部60を配置できないためである。なお、突起部60の高さhは、好ましくは1.0mm以下がよい。
【0046】
(実施の形態の第7の特徴点)
実施の形態に係る電波吸収体10の第7の特徴点は、突起部60の材料の比誘電率が4以上26以下である点である。
(第7の特徴点の効果)
第7の特徴点によれば、比誘電率が「4」未満になると、
図12に示すように、電波の透過特性が「0dB」に接近し、電波の透過特性が低すぎる。
すなわち、一般的に樹脂平板に電波を照射すると、一部の電波は表面で反射して戻って、これが問題となる。
そこで、本発明の凸形状(突起部60)は、隣り合う凸形状の斜面間で何度も反射を繰り返させることで、少しずつ材料内部に電波を入れて反射を防ぐ役割がある。
【0047】
また、入った電波は、材料内で熱エネルギーに変換して電波を透過させないために、誘電率の高い材料が必要となる。
これが吸収目的(透過させずに材料内部で電波を消す)のために誘電率の高い材料を選定する理由である。
逆に、他社特許の誘電率が低い材料を使用する場合は、材料内で電波が熱エネルギーに変化されずに透過してく。この目的は表面反射を防ぎ、透過率を向上させることが目的となる。レーダーカバーで必要とされる事象である。
また、比誘電率が「26」を越えると、突起部60の材質の選択が困難になる。
【符号の説明】
【0048】
10 電波吸収体
20 ベース部
30 電波吸収部材
40 サイド部
50 トップ部
60 突起部
61 グループ
70 係合部
71 係止爪
72 係合穴
100 高周波通信装置
110 半導体素子
120 アンテナ
130 レドーム