(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098298
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230703BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230703BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01L21/302 101Z
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214970
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】森井 龍哉
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084BB21
2G084CC05
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD24
2G084DD55
2G084EE02
2G084HH05
2G084HH08
2G084HH22
2G084HH23
2G084HH25
2G084HH27
2G084HH29
2G084HH43
2G084HH56
5F004BA09
5F004BB13
5F004CA06
5F045AA08
5F045EH13
5F045EH20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1の電源において、第2の電源から出力される高周波電圧の周期と同じ周期の変調信号を生成する。
【解決手段】高周波電源装置は、第1の基本周波数を有する第1の高周波電力を負荷に供給する第1の電源と、第1の基本周波数より低い第2の基本周波数を有する第2の高周波電力を負荷に供給する第2の電源と、第1の整合部と、第2の電源と負荷との間に接続された第2の整合部と、を有する。第2の整合部は、第2の高周波電圧の検出情報に基づいて第2の基本周波数より周波数が低いタイミング制御信号を生成して第1の電源へ供給し、第1の電源は、第1の高周波電圧を第2の基本周波数と同じ周波数を有する変調信号で周波数変調させ変調波として出力する周波数変調制御を行う際に、タイミング制御信号に応じて変調信号の開始位相を設定し、変調信号の開始位相に応じて変調信号を生成し、変調信号を用いて第1の高周波電圧を周波数変調制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基本周波数を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を負荷に供給可能である第1の電源と、
前記第1の基本周波数より低い第2の基本周波数を有する第2の高周波電圧を出力することにより第2の高周波電力を前記負荷に供給する第2の電源と、
前記第1の電源と前記負荷との間に接続された第1の整合部と、
前記第2の電源と前記負荷との間に接続された第2の整合部と、
を備え、
前記第2の整合部は、前記第2の高周波電圧の検出情報に基づいて前記第2の基本周波数より周波数が低いタイミング制御信号を生成して前記第1の電源へ供給し、
前記第1の電源は、前記第1の高周波電圧を前記第2の基本周波数と同じ周波数を有する変調信号で周波数変調させ変調波として出力する周波数変調制御を行う際に、前記タイミング制御信号に応じて前記変調信号の開始位相を設定し、前記変調信号の開始位相に応じて前記変調信号を生成し、前記変調信号を用いて前記第1の高周波電圧を周波数変調制御する
高周波電源装置。
【請求項2】
前記第2の整合部は、前記第2の高周波電圧の検出情報から前記第2の基本周波数と同じ周期を有するパルス信号を抽出し、前記パルス信号を分周することによって前記タイミング制御信号を生成する
請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記第2の整合部は、
前記第2の高周波電圧を検出し、検出波形信号を出力する検出部と、
前記検出波形信号を前記パルス信号に変換する変換部と、
前記パルス信号を分周して前記タイミング制御信号を生成する分周部と、
を有する
請求項2に記載の高周波電源装置。
【請求項4】
Nを2以上の整数とするとき、前記タイミング制御信号の周波数は、前記第2の基本周波数の少なくとも1/N倍以下の周波数である
請求項1から3のいずれか1項に記載の高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置に用いられる高周波電源装置は、2台の高周波電源(第1の電源と第2の電源)を有しており、それぞれの電源から負荷に向けて基本周波数(基本波の周波数)が異なる高周波電圧を出力している。例えば、第1の電源は、プラズマの生成に適した第1の基本周波数F1を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を負荷に供給する。第2の電源は、イオンの加速に適した第2の基本周波数F2(第1の基本周波数F1>第2の基本周波数F2)を有する第2の高周波電圧を出力することにより第2の高周波電力を負荷に供給する。(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-536295号公報
【特許文献2】特開2017-188434号公報
【特許文献3】米国特許第10304669号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような場合、相互変調歪(IMD:InterModulation Distortion)が発生し、第1の電源側において、反射波電力が第2の基本周波数F2の周期に応じて変動する現象が発生する。この相互変調歪に起因する反射波電力を低減させるために、第1の高周波電圧に対して周波数変調制御を行う技術が知られている。この際、予め分かっている第2の電源の第2の基本周波数F2の情報(例えば400kHという情報が分かっている)に基づいて、第2の基本周波数F2と同じ周波数の変調信号を生成し、生成した変調信号を用いて第1の電源において周波数変調制御を行うことが考えられる。
【0005】
しかし、疑似的に生成した変調信号の周期と第2の電源から出力される高周波電圧の周期とは異なる。このように両者の周期が異なると、周波数変調制御によって相互変調歪に起因する反射波電力の低減効果が低下する。
【0006】
本開示は、第1の電源において、第2の電源から出力される高周波電圧の周期と同じ周期の変調信号を生成できる高周波電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る高周波電源装置は、第1の基本周波数を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を負荷に供給可能である第1の電源と、前記第1の基本周波数より低い第2の基本周波数を有する第2の高周波電圧を出力することにより第2の高周波電力を前記負荷に供給する第2の電源と、前記第1の電源と前記負荷との間に接続された第1の整合部と、前記第2の電源と前記負荷との間に接続された第2の整合部と、を有する。前記第2の整合部は、前記第2の高周波電圧の検出情報に基づいて前記第2の基本周波数より周波数が低いタイミング制御信号を生成して前記第1の電源へ供給し、前記第1の電源は、前記第1の高周波電圧を前記第2の基本周波数と同じ周波数を有する変調信号で周波数変調させ変調波として出力する周波数変調制御を行う際に、前記タイミング制御信号に応じて前記変調信号の開始位相を設定し、前記変調信号の開始位相に応じて前記変調信号を生成し、前記変調信号を用いて前記第1の高周波電圧を周波数変調制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る高周波電源装置によれば、第1の電源において、第2の電源から出力される高周波電圧の周期と同じ周期の変調信号を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る高周波電源装置の構成を示す図。
【
図2】実施形態に係る高周波電源装置の動作を示すシーケンスチャート。
【
図3】実施形態に係る高周波電源装置の動作を示す波形図。
【
図4】実施形態に係る高周波電源装置の動作を示す波形図。
【
図5】実施形態に係る高周波電源装置の動作を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る高周波電源装置の実施形態について説明する。
【0011】
(実施形態)
実施形態にかかる高周波電源装置は、RF帯(RF:Radio Frequency)の周波数の高周波電圧を出力することにより高周波電力を負荷(例えばプラズマ処理装置)に供給する装置である。このような高周波電源装置は、2台の高周波電源(第1の電源と第2の電源)を有しており、それぞれの電源から負荷に向けて基本周波数(基本波の周波数)(出力周波数ともいう)が異なる高周波電圧を出力している。例えば、第1の電源は、プラズマの生成に適した第1の基本周波数F1を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を負荷に供給する。第2の電源は、イオンの加速に適した第2の基本周波数F2(第1の基本周波数F1>第2の基本周波数F2)を有する第2の高周波電圧を出力することにより第2の高周波電力を負荷に供給する。
【0012】
このように複数の電源から高低差のある複数の高周波電力を負荷に供給すると、相互変調歪の影響で、第1の電源側において、反射波電力が第2の電源側の基本周期(基本波の周期)に応じて変動する現象が発生する。そのため、第1の電源から負荷に対して効率よく高周波電力を供給することができない。そこで、本実施形態では、以下のようにして周波数変調制御を行い、相互変調歪に起因する反射波電力を低減させる。
【0013】
なお、第1の電源から出力されて負荷に向かう高周波電圧を第1の進行波電圧、負荷側から反射されて第1の電源に戻ってくる高周波電圧を第1の反射波電圧という。第2の電源から出力されて負荷に向かう高周波電圧を第2の進行波電圧、負荷側から反射されて第2の電源に戻ってくる高周波電圧を第2の反射波電圧という。
【0014】
図1は、高周波電源装置1の構成を示す図である。高周波電源装置1は、プラズマ処理装置PAに適用される。プラズマ処理装置PAは、例えば平行平板型であり、チャンバーCH内で下部電極EL1及び上部電極EL2が互いに対向する。下部電極EL1上には、処理対象となる基板SBが載置され得る。高周波電源装置1は、下部電極EL1に電気的に接続される。上部電極EL2は、グランド電位に電気的に接続される。チャンバーCHは、給気管を介してガス供給装置(図示せず)に接続され、排気管を介して真空装置(図示せず)に接続される。
【0015】
高周波電源装置1は、HF電源(第1の電源)10、LF電源(第2の電源)20及び重畳整合器30を有する。HF電源10は、第1の基本周波数F1を有する第1の高周波電圧(第1の進行波電圧)を出力することにより第1の高周波電力(第1の進行波電力)を負荷に供給する。第1の高周波電圧は、主として、プラズマの生成に適した比較的高い第1の基本周波数F1を有する。第1の基本周波数F1は、例えば、40.68MHzである。HF電源10は、ソース電源とも呼ばれる。なお、基本周波数F1は、40.68MHzに限定されるものではなく、例えば13.56MHz、27.12MHz等の工業用のRF帯(Radio Frequency)の周波数であってもよい。
【0016】
LF電源20は、第1の基本周波数F1より低い第2の基本周波数F2を有する第2の高周波電圧(第2の進行波電圧)を出力することにより第2の高周波電力(第2の進行波電力)を負荷に供給する。第2の高周波電圧は、イオンの加速に適した比較的低い第2の基本周波数F2を有する。第2の基本周波数F2は、例えば400kHzである。LF電源20は、バイアス電源とも呼ばれる。なお、第2の基本周波数F2は、400kHzに限定されるものではなく、他の周波数であってもよい。
【0017】
重畳整合器30は、HF電源10及びLF電源20にそれぞれ電気的に接続される。重畳整合器30は、HF電源10及びLF電源20と下部電極EL1との間に電気的に接続される。重畳整合器30は、HF電源10側のインピーダンスと下部電極EL1側のインピーダンスとを整合させる第1の整合動作を行うとともに、LF電源20側のインピーダンスと下部電極EL1側のインピーダンスとを整合させる第2の整合動作を行う。重畳整合器30は、第1の整合動作及び第2の整合動作が行われた状態で、第1の高周波電力をHF電源10から受け、第2の高周波電力をLF電源20から受け、第1の高周波電力及び第2の高周波電力を重畳させて下部電極EL1へ供給する。
【0018】
なお、高周波電源装置1及びプラズマ処理装置PAは、
図1の構成に限定されない。例えば、HF電源10から出力される第1の高周波電力が重畳整合器30を介して上部電極EL2に供給され、LF電源20から出力される第2の高周波電力が重畳整合器30を介して下部電極EL1に供給されるような構成等、様々な構成がある。このような他の構成にも高周波電源装置1を用いることが可能である。
【0019】
重畳整合器30は、HF整合部(第1の整合部)31及びLF整合部(第2の整合部)32を有する。HF整合部31は、HF電源10と下部電極EL1との間に電気的に接続される。LF整合部32は、LF電源20と下部電極EL1との間に電気的に接続される。HF整合部31は、第1の整合動作を行い、LF整合部32は、第2の整合動作を行う。
【0020】
HF整合部31は、センサ311、制御回路312、整合回路313を有する。センサ311は、HF電源10から出力される第1の進行波電圧の波形信号SG1fを検出するとともに、整合回路313側から反射される第1の反射波電圧の波形信号SG1rを検出する。整合回路313は、可変インピーダンス回路を有し、センサ311で検出される波形信号SG1f及び波形信号SG1rに応じて(例えば波形信号SG1f及び波形信号SG1rから計算される反射係数が小さくなるように)、制御回路312によって、可変インピーダンス回路のインピーダンス値を変更する。もちろん、反射係数ではなく、反射波電力が小さくなるように可変インピーダンス回路のインピーダンス値を変更してもよい。なお、可変インピーダンス回路は、例えば、図略の可変コンデンサやインダクタを備えており、可変コンデンサの容量を変化させることによってインピーダンス値を変更できるようになっている(LF整合部32でも同様)。また、上記では一例として、第1の進行波電圧の波形信号SG1fと第1の反射波電圧の波形信号SG1rを用いて反射係数を算出したが、電圧波形信号と電流波形信号とを検出し、それらに基づいて反射係数を算出することも可能である(LF整合部32でも同様)。
【0021】
LF整合部32は、センサ321(検出部321)、制御回路322、整合回路323を有する。制御回路322は、パルス変換回路3221(変換部3221)及び分周処理部3222(分周部3222)を有する。センサ321は、LF電源20から出力される第2の進行波電圧の波形信号SG2fを検出するとともに、整合回路323側から反射される第2の反射波電圧の波形信号SG2rを検出する。整合回路323は、可変インピーダンス回路を有し、センサ321で検出される波形信号SG2f及び波形信号SG2rに応じて(例えば波形信号SG2f及び波形信号SG2rから計算される反射係数が小さくなるように)、制御回路322によって、整合回路323内の可変インピーダンス回路のインピーダンス値を変更する。もちろん、反射係数ではなく、反射波電力が小さくなるように可変インピーダンス回路のインピーダンス値を変更してもよい。
【0022】
パルス変換回路3221は、センサ321で検出された第2の進行波電圧の波形信号SG2fをパルス信号へ変換する。パルス信号は、第2の基本周波数F2を有する矩形信号として変換される。パルス変換回路3221は、コンパレータを有し、コンパレータを用いて正弦波信号を矩形信号に変換する。分周処理部3222は、第2の基本周波数F2を有するパルス信号をN分周し、周波数F3のタイミング制御信号TCを生成する。Nは、2以上の整数である。周波数F3は、基本周波数F1の少なくとも1/N倍以下の周波数である。これにより、タイミング制御信号TCのエッジタイミングを第2の高周波電圧における所定の位相タイミングに一致させることができる。
【0023】
F2=400kHz、N=10の場合、F3=F2×1/N=400kHz×1/10=40kHzになる。タイミング制御信号TCは、第2の進行波電圧に応じて生成された信号であるため、第2の進行波電圧に同期した信号とされ得る。分周処理部3222は、周波数F3のタイミング制御信号TCをHF電源10へ供給する。
【0024】
HF電源10は、LF整合部32で生成されたタイミング制御信号TCを受ける。HF電源10は、タイミング制御信号TCに応じて、第2の進行波電圧に対応する変調基本波信号を生成する。HF電源10は、変調基本波信号を用いてLF電源20から出力される第2の進行波電圧(第2の高周波電圧)の周期と同じ周期の変調信号を生成する。この変調信号を用いてHF電源10から出力する第1の進行波電圧(第1の高周波電圧)を周波数変調制御する。
【0025】
HF電源10は、位相設定部11、直接デジタル合成部(DDS)12(DDS:Direct Digital Synthesizer)、乗算器13、HF基本波周波数設定部14、加算器15、直接デジタル合成部(DDS)16、処理部17、基本クロック生成部18、LF基本波周波数設定部19、周波数偏移量設定部131を有する。
【0026】
LF基本波周波数設定部19は、周波数が第2の基本周波数F2の変調基本波の周波数情報を生成する。周波数情報は、生成すべき変調基本波信号(例えば正弦波信号)の周波数に応じてクロックタイミングごとの振幅を順次に含む情報である。LF基本波周波数設定部19は、変調基本波信号の周波数情報を直接デジタル合成部12へ供給する。
【0027】
位相設定部11は、タイミング制御信号TCを重畳整合器30から受け、変調基本波信号における変調を開始すべき変調開始位相を設定する。これにより、位相設定部11は、LF電源の第2の高周波電圧と同じタイミングで変調を開始すべき変調開始位相を設定できる。位相設定部11は、変調開始位相の情報を直接デジタル合成部12へ供給する。
【0028】
基本クロック生成部18は、基本クロック信号を生成する。基本クロック信号は、第2の進行波電圧に同期した信号となるように予め調整されており、第2の基本周波数F2の整数倍の周波数を有する。F2=400kHzの場合、基本クロック信号の周波数=F2×250=400kHz×250=100MHzであってもよい。基本クロック生成部18は、基本クロック信号を直接デジタル合成部12及び直接デジタル合成部16へそれぞれ供給する。なお、基本クロック生成部18は、例えば、水晶発振器等によって構成することができる。
【0029】
直接デジタル合成部12は、変調開始位相の情報を位相設定部11から受け、クロック信号を基本クロック生成部18から受け、変調基本波信号の周波数情報をLF基本波周波数設定部19から受ける。直接デジタル合成部12は、クロック信号を用いながら、変調開始位相と周波数情報と振幅情報とを用いて、周波数が第2の基本周波数F2と同じ変調基本波信号を生成する。変調基本波信号は、例えば変調開始位相を基準とし周波数情報と振幅情報とに応じた正弦波信号として生成される。直接デジタル合成部12は、変調基本波信号を乗算器13へ供給する。なお、変調基本波信号は、LF電源20で生成された第2の進行波電圧に相当する信号であり、変調基本波信号の周期と第2の進行波電圧の周期とは同じである。
【0030】
周波数偏移量設定部131は、変調基本波信号における1周期内の複数の位相のそれぞれに対して施すべき周波数偏移量ΔFを設定し、周波数偏移量ΔFの情報を乗算器13へ供給する。周波数偏移量ΔFは、例えば、変調をかける際の位相に応じて、周波数偏移量ΔFは、-ΔFmax~+ΔFmaxの範囲で変わり得る。例えば、ΔFmax=1.2MHzである。
【0031】
乗算器13は、変調基本波信号を直接デジタル合成部12から受け、周波数偏移量ΔFの情報を周波数偏移量設定部131から受ける。乗算器13は、変調基本波信号に周波数偏移量ΔFを乗算して、乗算結果を変調信号として加算器15へ供給する。
【0032】
HF基本波周波数設定部14は、周波数が第1の基本周波数F1の基本波信号の周波数情報を生成する。周波数情報は、生成すべき基本波信号(例えば正弦波信号)の周波数に応じてクロックタイミングごとの振幅を順次に含む情報である。HF基本波周波数設定部14は、基本波信号の周波数情報を加算器15へ供給する。
【0033】
加算器15は、第1の基本周波数F1を有する基本波信号をHF基本波周波数設定部14から受け、変調信号を乗算器13から受ける。加算器15は、基本波信号に変調信号を加算し、第1の基本周波数F1+ΔFを示す周波数情報を生成する。加算器15は、周波数情報を直接デジタル合成部16へ供給する。
【0034】
直接デジタル合成部16は、周波数情報を加算器15から受け、振幅情報をHF電源10から受ける。直接デジタル合成部16は、周波数情報と振幅情報とを用いて、第1の基本周波数F1を有する基本波が周波数偏移量ΔFで周波数変調された変調波を生成する。直接デジタル合成部16は、変調波を処理部17へ供給する。
【0035】
処理部17は、直接デジタル合成部16から出力された変調波に対して所定の処理を行う。処理部17は、増幅器、フィルタ、合成器等を含む。所定の処理は、変調波を増幅する増幅処理、変調波における進行波・反射波をスーパーヘテロダイン方式等で検出するためのフィルタ処理、進行波電力の目標電力からずれを合成して直接デジタル合成部16へフィードバックする合成処理などを含む。処理部17は、処理後の変調波(第1の進行波電圧)を重畳整合器30へ出力する。
【0036】
次に、高周波電源装置1の動作について
図2~
図5を用いて説明する。
図2は、高周波電源装置1の動作を示すシーケンスチャートである。
図3~
図5は、高周波電源装置1の動作を示す波形図である。
【0037】
LF電源20は、高周波電源装置1の起動指令に応じて、第2の進行波電圧を発生して重畳整合器30のLF整合部32へ出力する(S1)。
【0038】
LF整合部32は、LF電源20から出力される第2の進行波電圧の波形信号SG2fを検出するとともに、整合回路323側から反射される第2の反射波電圧の波形信号SG2rを検出する。(S2)。LF整合部32は、例えば
図3(a)に示すように、第2の基本周波数F2を有する正弦波状の波形信号SG2fを検出する。波形信号SG2fは、例えば、タイミングt1~t2の期間、タイミングt2~t3の期間、・・・、タイミングt40~t41の期間が、それぞれ、LF電源20の基本周期に対応する1周期である。
【0039】
LF整合部32は、波形信号SG2fをパルス信号に変換する(S3)。LF整合部32は、例えば正弦波信号の振幅が
図3(a)に一点鎖線で示す振幅中心を超えたらHレベルとし振幅中心を下回ればLレベルとすることで、
図3(b)に示すようなパルス信号を生成してもよい。パルス信号は、例えば、タイミングt1~t2の期間、タイミングt2~t3の期間、・・・、タイミングt40~t41の期間が、それぞれ、LF電源20の基本周期に対応する1周期である。
【0040】
LF整合部32は、周波数が第2の基本周波数F2のパルス信号をN分周し、周波数F3のタイミング制御信号TCを生成する(S4)。F3=F2×1/Nの関係にある。LF整合部32は、例えば
図3(b)に示すパルス信号を20分周して
図3(c)に示すタイミング制御信号TCを生成する。
図3(c)では、N=20の場合を例示している。LF整合部32は、タイミング制御信号TCをHF電源10へ出力する。タイミング制御信号TCは、例えば、タイミングt1~t21の期間、タイミングt21~t41の期間が、それぞれ、LF電源20の基本周期のN倍(例えば、20倍)に対応する1周期である。
【0041】
HF電源10は、タイミング制御信号TCに応じて変調を開始すべき位相を設定し(S5)、変調基本波信号を生成する(S6)。HF電源10は、例えば
図4(a)に示すタイミング制御信号TCを受ける。HF電源10は、
図4(a)に示すタイミング制御信号TCに同期したタイミングt1から変調基本波信号の生成を開始する。すなわち、HF電源10は、タイミングt1から、
図4(b)に示す基本クロック信号に同期して、
図4(c)に示すような周波数情報を参照しながら、
図4(d)に示すような階段状信号を生成する。HF電源10は、タイミングt1~t2で周波数情報における1周期分の振幅を参照し終わると、次のタイミングt2で周波数情報における1周期の先頭の振幅に戻って参照する。これが正弦波の1周期ごとに繰り返される。HF電源10は、
図4(d)に示す階段状信号を平滑化して、
図4(e)に示すような正弦波状の変調基本波信号を生成する。HF電源10は、変調基本波信号に周波数偏移量ΔFを乗算して変調信号を求める(S7)。変調信号は、周波数偏移量ΔFを含む。HF電源10は、基本波信号に変調信号を加算し、周波数F1+ΔFを示す周波数情報を生成する。これにより、HF電源10は、第1の基本周波数F1を有する基本波を周波数変調量ΔFで周波数変調して変調波を生成する(S8)。
【0042】
なお、HF電源10は、
図5(a)に示すように、タイミング制御信号TCのエッジタイミングt1,t21,t41ごとに、変調を開始すべき位相の設定をリセットし、S5~S8の処理を繰り返してもよい。HF電源10は、例えば反射係数R(又は反射波電力)が閾値以下になったことに応じて、周波数変調制御を完了したとみなすことができる。これにより、周波数変調制御の精度を向上できる。
【0043】
周波数変調制御が完了すると、HF電源10は、変調波を用いて第1の高周波電圧(第1の進行波電圧)を生成して重畳整合器30のHF整合部31へ出力する(S9)。
【0044】
HF整合部31は、HF電源10から出力される第1の進行波電圧の波形信号SG1fを検出するとともに、整合回路312側から反射される反射波電圧の波形信号SG1rを検出する(S10)。重畳整合器30のLF整合部32は、S2で検出された波形信号SG2f及び波形信号SG2rに応じて、LF電源20側及び下部電極EL1側で第2の整合動作を行う(S11)。それと並行して、HF整合部31は、S10で検出された波形信号SG1f及び波形信号SG1rに応じて、HF電源10側及び下部電極EL1側で第1の整合動作を行う(S12)。重畳整合器30は、第1の整合動作及び第2の整合動作が行われた状態で、第1の進行波電圧をHF電源10からHF整合部31で受け、第2の進行波電圧をLF電源20からLF整合部32で受ける。重畳整合器30は、HF整合部31の第1の進行波電圧(第1の高周波電力)とLF整合部32の第2の進行波電圧(第2の高周波電力)とを重畳させ、重畳後の進行波電圧(重畳後の高周波電力)を下部電極EL1へ供給する(S13)。
【0045】
以上のように、本実施形態では、高周波電源装置1において、LF整合部32が第2の進行波電圧に応じてタイミング制御信号TCを生成してHF電源10へ供給する。HF電源10は、タイミング制御信号TCに応じて変調信号の開始位相を設定し、変調信号の開始位相に応じて変調信号を生成する。HF電源10は、変調信号を用いて第1の進行波電圧(第1の高周波電圧)を周波数変調制御する。これにより、相互変調歪による影響を高精度に抑制できる。
【0046】
なお、
図1に示す分周処理部3222から位相設定部11へ供給されるタイミング制御信号CTは、
図3(c)に示すように、周波数が比較的低い。例えば、タイミング制御信号TCの周波数が100kHz以下であれば、LF整合部32の分周処理部3222とHF電源10の位相設定部11とを接続する通信線は、同軸ケーブルより安価なケーブルを使用可能である。安価なケーブルは、例えば、断面視において内部導体の外側に外部導体を有しない、すなわち信号線の外側にシールド線を有しないケーブルである。これにより、高周波電源装置1のコストを低減できる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 高周波電源装置
10 HF電源
20 LF電源
30 重畳整合器
31 HF整合部
32 LF整合部