(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098300
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】位置検出装置、位置決め装置、溶接装置、位置検出プログラムおよび位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230703BHJP
F16B 5/08 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G06T7/00 300D
F16B5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214972
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】池尻 匡隆
【テーマコード(参考)】
3J001
5L096
【Fターム(参考)】
3J001GA02
3J001GB01
3J001GC02
3J001GC12
3J001HA02
3J001JD11
5L096BA05
5L096DA01
5L096FA32
5L096FA69
5L096JA03
5L096JA09
5L096MA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】形状の再現性が低い対象物についても位置検出の精度を保つことができる位置検出装置を提供する。
【解決手段】位置検出装置において、制御部104は、複数の第1時間区間夫々における対象物の撮影画像に基づいた第1時間区間毎の登録画像を記憶する画像記憶部115と、第1時間区間毎の登録画像と、複数の第1時間区間とは異なる第2時間区間で得られた上記対象物の撮影画像とのパターンマッチングを行って、登録画像毎に対象物のマッチング位置を得るパターンマッチング部112と、登録画像毎のマッチング位置に基づいて対象物の検出位置を決定する位置決定部(合議部113)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1時間区間それぞれにおける対象物の撮影画像に基づいた当該第1時間区間毎の登録画像を記憶する画像記憶部と、
前記第1時間区間毎の登録画像と、前記複数の第1時間区間とは異なる第2時間区間で得られた前記対象物の撮影画像とのパターンマッチングを行って、当該登録画像毎に当該対象物のマッチング位置を得るマッチング部と、
前記登録画像毎の前記マッチング位置に基づいて前記対象物の検出位置を決定する位置決定部と、
を備える位置検出装置。
【請求項2】
前記位置決定部は、前記登録画像毎の前記マッチング位置が分けられたクラスタのうち、最多のマッチング位置が属するクラスタにおける当該マッチング位置の平均を前記検出位置に決定する請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記登録画像は、前記第1時間区間内で得られた複数の撮影画像の平均画像である請求項1または2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記平均画像と、当該平均画像の作成に用いられた前記複数の撮影画像それぞれとのパターンマッチングを行い、当該撮影画像毎にマッチング位置に基づいた位置調整を行い、位置調整後の複数の撮影画像から新たな平均画像を作成する平均画像更新部を備えた請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第2時間区間で得られた前記対象物の複数の撮影画像に基づいた新規の登録画像と当該複数の撮影画像それぞれとのパターンマッチングで得られた複数のマッチング位置を正解データとし、前記複数の登録画像のうち、前記複数の撮影画像それぞれとのパターンマッチング結果と前記正解データとの一致率が最も低い低率登録画像を前記新規の登録画像と入れ替える登録画像更新部を備えた請求項1から4のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記登録画像更新部は、前記正解データと前記検出位置との一致率が基準の一致率に対して低い場合に、前記低率登録画像を前記新規の登録画像と入れ替える請求項5に記載の位置検出装置。
【請求項7】
所定の指示を受けた場合に、前記画像記憶部に記憶された前記登録画像の全部、あるいは一部を残した他の全部を破棄して新たな登録画像を記憶させる登録リセット部を備えた請求項1から6のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の位置検出装置と、
前記位置検出装置によって得られた前記検出位置を基準として位置決め対象を位置決めする位置決め機構と、
を備える位置決め装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の位置検出装置と、
前記位置検出装置によって得られた前記検出位置を基準として溶接個所を位置決めする位置決め機構と、
前記位置決め機構で位置決めされた溶接個所を溶接する溶接部と、
を備えた溶接装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から7のいずれか1項に記載の位置検出装置における各構成要素として機能させる位置検出プログラム。
【請求項11】
複数の第1時間区間それぞれにおける対象物の撮影画像に基づいた当該第1時間区間毎の登録画像と、前記複数の第1時間区間とは異なる第2時間区間で得られた前記対象物の撮影画像とのパターンマッチングを行って、当該登録画像毎に当該対象物のマッチング位置を得るマッチング過程と、
前記登録画像毎の前記マッチング位置に基づいて前記対象物の検出位置を決定する位置決定過程と、
を経る位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、位置決め装置、溶接装置、位置検出プログラムおよび位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パターンマッチングによる位置検出の技術がある。
【0003】
例えば特許文献1には、指紋認識装置において、入力指紋画像と複数の辞書に登録されている辞書画像とを順次照合して、いずれかの辞書と照合合格となったとき、一方の辞書を他方の辞書に登録されている辞書画像に更新し、他方の辞書を入力指紋画像から抽出された辞書画像に更新する技術の提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、形状の再現性が低い対象物の場合には、パターンマッチングに成功した場合であっても新たな辞書画像として登録するのに適さない場合がある。
そこで、本発明は、形状の再現性が低い対象物についても位置検出の精度を保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る位置検出装置の一態様は、複数の第1時間区間それぞれにおける対象物の撮影画像に基づいた当該第1時間区間毎の登録画像を記憶する画像記憶部と、上記第1時間区間毎の登録画像と、上記複数の第1時間区間とは異なる第2時間区間で得られた上記対象物の撮影画像とのパターンマッチングを行って、当該登録画像毎に当該対象物のマッチング位置を得るマッチング部と、上記登録画像毎の上記マッチング位置に基づいて上記対象物の検出位置を決定する位置決定部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る位置決め装置の一態様は、上記位置検出装置と、上記位置検出装置によって得られた上記検出位置を基準として位置決め対象を位置決めする位置決め機構と、を備える。
【0008】
また、本発明に係る溶接装置の一態様は、上記位置検出装置と、上記位置検出装置によって得られた上記検出位置を基準として溶接個所を位置決めする位置決め機構と、上記位置決め機構で位置決めされた溶接個所を溶接する溶接部と、を備える。
また、本発明に係る位置検出プログラムの一態様は、コンピュータを、上記位置検出装置における各構成要素として機能させる。
【0009】
また、本発明に係る位置検出方法の一態様は、複数の第1時間区間それぞれにおける対象物の撮影画像に基づいた当該第1時間区間毎の登録画像と、上記複数の第1時間区間とは異なる第2時間区間で得られた上記対象物の撮影画像とのパターンマッチングを行って、当該登録画像毎に当該対象物のマッチング位置を得るマッチング過程と、上記登録画像毎の前記マッチング位置に基づいて上記対象物の検出位置を決定する位置決定過程と、を経る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、形状の再現性が低い対象物についても位置検出の精度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の溶接装置の一実施形態を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、制御部の機能構造を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、制御部における位置制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、カメラで得られる撮影画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、画像記憶部に記憶された登録画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、合議による検出位置の決定例を示す図である。
【
図7】
図7は、画像登録部による登録画像更新の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の位置検出装置、位置決め装置、溶接装置、位置検出プログラムおよび位置検出方法の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
【0013】
<溶接装置の構造>
図1は、本発明の溶接装置の一実施形態を模式的に示す図である。
本実施形態の溶接装置100はレーザ溶接機であり、ワーク300の銅線301の先端にレーザ光105を照射して溶接する。
【0014】
ワーク300の銅線301は、溶接前にブレード200によって切断され、その切断された先端部分にレーザ光105が照射される。銅線301の切断箇所の形状は、いずれのワーク300でもある程度は似通った形状となる。但し、切断箇所の形状は、例えば一日の間に形状の揺らぎを生じるとともに、数日ないしは数週間といった時間スケールで経時変化を生じる。つまり、銅線301の切断箇所の形状は再現性が低い。
【0015】
溶接装置100は、カメラ101と、溶接部102と、位置決めアーム103と、制御部104とを備える。
【0016】
カメラ101は、ワーク300を撮影して画像データを出力する。
溶接部102は、レーザ光105を出射して溶接を行う。
位置決めアーム103は、ワーク300に対して溶接部102を位置決めする。
カメラ101、溶接部102および位置決めアーム103は、制御部104に有線あるいは無線で接続される。
【0017】
制御部104は、カメラ101で得られる画像データに基づいて銅線301の位置を検出し、位置決めアーム103を制御することで、検出された位置に対して溶接部102を位置決めさせる。
【0018】
制御部104は、本発明の位置検出装置の一実施形態に相当する。本実施形態では制御部104が例えばパーソナルコンピュータによって実現され、パーソナルコンピュータには、本発明の位置検出プログラムの一実施形態が組み込まれる。
【0019】
制御部104と位置決めアーム103とを併せたものが、本発明の位置決め装置の一実施形態に相当する。位置決めアーム103は、本発明にいう位置決め機構の一例に相当し、制御部104によって得られた検出位置を基準として位置決め対象(例えば溶接部102)を位置決めする。
【0020】
図2は、制御部104の機能構造を示す機能ブロック図である。
図2に示す機能ブロック図は、本発明の位置検出プログラムの一実施形態におけるプログラム構造も表す。位置検出プログラムの一実施形態は、コンピュータを、
図2に示す各機能ブロックに相当する各構成要素として機能させる。
【0021】
制御部104は、画像取得部111と、パターンマッチング部112と、合議部113と、位置制御部114と、画像記憶部115と、画像登録部116とを備える。
画像取得部111はカメラ101から、ワーク300の撮影画像として画像データを取得する。
【0022】
パターンマッチング部112は、カメラ101で得られる撮影画像と、画像記憶部115に記憶された登録画像とのパターンマッチングを行ってマッチング位置を得る。登録画像としては、過去にカメラ101で撮影されたワーク300の撮影画像における銅線301の画像が記憶される。また、画像記憶部115には複数の登録画像が記憶され、パターンマッチング部112は、各登録画像を用いてパターンマッチングを行って、それぞれのマッチング位置を得る。なお、パターンマッチング部は、単にマッチング部と言われることもある。
【0023】
合議部113は、複数の登録画像それぞれのマッチング位置に基づいた合議により、銅線301の検出位置を決定する。
画像登録部116は、画像記憶部115に記憶された登録画像を必要に応じて更新し、新たにカメラ101で撮影された銅線301の画像を登録画像として画像記憶部115に記憶させる。画像登録部116は、自動的に登録画像を更新するとともに、溶接装置100のユーザによるリセット指示を受けた場合には、登録画像を自動的な更新よりも大幅に更新する。
【0024】
<位置制御の処理手順>
図3は、制御部104における位置制御の処理手順を示すフローチャートである。
図4は、カメラ101で得られる撮影画像の一例を示す図である。
図5は、画像記憶部115に記憶された登録画像の一例を示す図である。
図6は、合議による検出位置の決定例を示す図である。以下、
図4~
図6を適宜参照しながら、
図3のフローチャートが示す処理手順について説明する。
【0025】
図3のフローチャートが示す位置制御の処理は、ワーク300に対する溶接の度に実行される。
位置制御の処理が開始されると、先ずステップS101で、画像取得部111によってカメラ101から撮影画像が取得される。
図4に示すように、撮影画像310には銅線301が写るとともに、
図1では図示が省略されたカシメ部分305も写る。銅線301にレーザ光105が照射されることで銅線301がカシメ部分305に溶接される。従って、カシメ部分305も写った撮影画像310中で銅線301の位置を正確に検出することが求められる。
【0026】
銅線301の画像部分には、切断エッジ302と、切断エッジ302を間に挟んだ2面の切断面303が含まれる。切断エッジ302および切断面303の位置、傾き、曲率などは、銅線301の切断毎に揺らぐとともに、ブレード200の摩耗などに伴って経時的に変化する。この結果、切断エッジ302および切断面303の画像についても、揺らぎと経時変化が生じる。
このような再現性の低い銅線301の画像に対し、パターンマッチングによる正確な位置検出が求められる。
【0027】
図3のステップS101で得られた撮影画像310に対し、ステップS102で、パターンマッチング部112によるパターンマッチングが実行される。パターンマッチング部112では、上述したように、画像記憶部115に記憶された複数の登録画像それぞれによるパターンマッチングが実行される。
【0028】
図5に示すように、画像記憶部115には、複数の登録画像121が登録される。
図5には、一例としてaからfまでの6つの登録画像121が示される。各登録画像121は、基本的な形状に共通性があるものの、切断面303の反射などのパターンが異なっている。
図3のステップS102では、このような複数の登録画像121がパターンマッチングに用いられ、登録画像121毎にマッチング位置が求められる。なお、登録画像121毎にマッチング位置を求める過程を「マッチング過程」と言うことがある。
【0029】
各登録画像121としては、例えば1日間に溶接される各ワーク300についてカメラ101で撮影されて得られた複数の撮影画像310の平均画像が用いられる。つまり、画像記憶部115は、複数の第1時間区間それぞれ(例えば各1日間)における対象物(例えばワーク300)の撮影画像310に基づいた当該第1時間区間毎の登録画像121を記憶する。また、本実施形態において、登録画像121は、第1時間区間内で得られた複数の撮影画像の平均画像である。
【0030】
但し、平均画像中の銅線301に相当する部分のみが切り出された画像が登録画像121として用いられる。撮影画像310の平均に際して撮影画像310同士は、各ワーク300の溶接時に検出された検出位置を基準として位置合わせされる。
【0031】
平均画像は、銅線301の形状における揺らぎが打ち消された画像となるので、各ワーク300における銅線301の画像とのパターンマッチングに成功する可能性が高く、登録画像121として適している。
【0032】
パターンマッチング部112によるパターンマッチングの結果、
図6に示すように、各登録画像121に対応したマッチング位置131が求められる。つまり、パターンマッチング部112は、第1時間区間毎の登録画像121と、複数の第1時間区間とは異なる第2時間区間(例えば他の1日内)で得られた対象物(例えばワーク300)の撮影画像310とのパターンマッチングを行って、当該登録画像121毎にワーク300のマッチング位置131を得る。
【0033】
図6に示す例では、いくつかのマッチング位置131(例えば登録画像a,b,e,fのマッチング位置131)は銅線301の位置に集まり、他のマッチング位置131(例えば登録画像c,dのマッチング位置131)は、銅線301とは異なる位置で互いにばらけている。複数のパターンの登録画像121が用いられることにより、銅線301の位置から外れたマッチング位置131も求められる場合がある。
【0034】
銅線301の位置からマッチング位置131が外れる場合には、カシメ部分305などの画像と登録画像121が、偶々ある程度マッチしたためと考えられるので、マッチング位置131同士が集まる可能性は低い。逆に、複数のマッチング位置131が近くに集まっている場合には、銅線301の画像に対して複数の登録画像121それぞれがある程度以上にマッチしたためと考えられるので、銅線301の位置を示していると考えられる。
【0035】
従って、複数の登録画像121それぞれのマッチング位置131に基づいた合議部113における合議によって銅線301の正確な検出位置が決まる。合議部113は、本発明にいう位置決定部の一例に相当し、登録画像毎のマッチング位置131に基づいて対象物(例えばワーク300)の検出位置を決定する。マッチング位置に基づいて上記対象物の検出位置を決定する過程を「位置決定過程」と言うことがある。
【0036】
形状の再現性が低い対象物であっても、撮影画像310同士にはある程度の類似性が存在するので、登録画像毎に得られる複数のマッチング位置に基づいて検出位置が決定されることで精度の高い位置検出が実現される。
【0037】
具体的には、
図3のステップS103で合議部113により、複数のマッチング位置131についてクラスタリングが行われる。即ち、複数のマッチング位置131のうち、相互の距離が所定距離内のものについて、
図6に示すようにクラスタ132が形成される。所定距離内に他のマッチング位置131が存在しないマッチング位置131については単独のクラスタとなる。
【0038】
そして、クラスタリングの結果、最大数のマッチング位置131を含んだクラスタ132について、
図3のステップS104で合議部113により、クラスタ132に属したマッチング位置131の平均位置が算出される。制御部104では、この平均位置が銅線301の検出位置として用いられる。
【0039】
つまり、合議部113は、登録画像毎のマッチング位置131が分けられたクラスタ132のうち、最多のマッチング位置が属するクラスタ132における当該マッチング位置131の平均位置133を検出位置に決定する。最多マッチング位置の平均が検出位置となることで、対象物に経時的な形状変化が生じた場合にも、精度の高い位置検出が実現される。
【0040】
ステップS105では、このように求められた検出位置に基づいて、位置制御部114による位置決めアーム103の制御が行われ、溶接部102が銅線301に対して位置決めされる。その後、制御部104による溶接部102の制御でレーザ光105が銅線301に照射されて溶接が行われる。なお、位置決めされた部位を「溶接個所」と言うことがある。
【0041】
上述したように、銅線301の切断形状は経時的に変化する。このため、画像記憶部115に記憶された複数の登録画像121が固定されたままの場合、時間の経過とともに位置検出の精度が低下してしまう。そのため、画像登録部116では、登録画像の自動的な更新が行われる。
【0042】
<登録画像更新の処理手順>
図7は、画像登録部116による登録画像更新の処理手順を示すフローチャートである。
図7のフローチャートが示す登録画像更新の処理は、例えば1日分の溶接が終了した時点で実行される。なお、1日分の溶接について溶接時毎の撮影画像310が画像記憶部115に記憶済みとする。
【0043】
登録画像更新の処理が開始されると、ステップS201で、検出位置を基準とした位置合わせにより1日分の撮影画像310における平均画像(銅線301の部分のみ)が作成される。また、ステップS202で、平均画像とのパターンマッチングにより、1日分の各撮影画像310について銅線301の位置検出が実行される。
【0044】
その後、ステップS201およびステップS202の処理(精錬処理)が、所定回数まで繰り返される(ステップS203;No)。なお、2回目以降の精錬処理では、ステップS201において、前回の精錬処理における検出位置を基準とした位置合わせが行われる。精錬処理が実行されることにより、撮影画像310同士の位置のばらつきが修正され、平均画像のぼやけが減少して明瞭なパターンの平均画像が得られる。
【0045】
つまり、精錬処理は、本発明にいう平均画像更新部の処理に相当する。即ち、画像登録部116は精錬処理で、平均画像と、当該平均画像の作成に用いられた複数の撮影画像310それぞれとのパターンマッチングを行う(ステップS201)。そして、画像登録部116は精錬処理で、当該撮影画像310毎にマッチング位置に基づいた位置調整を行い、位置調整後の複数の撮影画像310から新たな平均画像を作成する(ステップS202)。
【0046】
所定回数の精錬処理が終了すると(ステップS203;Yes)、ステップS204で、現在の登録画像とのパターンマッチングによる、
図3のステップS102~ステップS104の手順での位置検出が、1日分の各撮影画像310について実行される。そして、登録画像による位置検出結果が、最終的な平均画像による位置検出結果を正解データとして比較され、正解率が求められる(ステップS205)。つまりステップS205では、第2時間区間で得られた対象物(例えばワーク300)の複数の撮影画像310に基づいた新規の登録画像(例えば平均画像)と当該複数の撮影画像310それぞれとのパターンマッチングで得られた複数のマッチング位置が正解データとされる。
【0047】
そして、ステップS205では、各撮影画像310について、登録画像による位置検出結果と正解データとの差が、銅線301の範囲内である場合には、登録画像による位置検出結果が正解であったとして、1日分の撮影画像310についての正解率が求められる。
【0048】
求められた正解率が所定の正解率に達した場合(ステップS205;Yes)には、登録画像の更新は不要であり、そのまま、登録画像更新の処理が終了する。一方、正解率が所定の正解率に達しない場合(ステップS205;No)には、登録画像の更新が必要となり、精錬処理で最終的に得られた平均画像が新たな登録画像として画像記憶部115に記憶される(ステップS206)。
【0049】
つまり、画像登録部116は、正解データと、既存の登録画像による検出位置との一致率が基準の一致率に対して低い場合に、低率登録画像を新規の登録画像と入れ替える。これにより、登録画像の入れ替えが自動的に進む。
【0050】
新たな登録画像の記憶に際し、既存の登録画像のうち、正解率の最も低い登録画像が画像記憶部115から削除され、登録画像更新の処理が終了する。つまり、ステップS206の処理は、本発明にいう登録画像更新部の処理に相当し、複数の既存の登録画像121のうち、複数の撮影画像310それぞれとのパターンマッチング結果と正解データとの一致率が最も低い低率登録画像を新規の登録画像と入れ替える。
【0051】
図5には、各登録画像における正解率の例122、123が示され、ある1日における正解データに対する正解率を示す第1例122では登録画像a,b,e,fの正解率が高い。これに対し、別の1日における正解データに対する正解率を示す第2例123では、登録画像c,d,fの正解率が高い。
【0052】
パターンが異なる登録画像121が登録されていることで、銅線301の切断形状に揺らぎなどの変化が生じても、複数の登録画像121におけるパターン内の変化であれば、複数の登録画像121による合議によって正確な位置検出が可能である。
【0053】
しかし、銅線301の切断形状の経時変化が進むと、合議によっても正解率が低下するので、その場合には、
図7に示す手順により、登録画像121が自動的に更新される。例えば正解率の第2例123の場合、登録画像aにおける正解率が「0.00%」であるため、登録画像aが削除されて新たな登録画像である平均画像が記憶されることになる。
【0054】
上記手順で自動的に登録画像が更新されることで正解率が向上し、銅線301の切断形状の経時変化に対しても、位置検出の精度が保たれる。但し、ブレード200の摩耗が進んで交換された場合などには、銅線301の切断形状について、経時変化および揺らぎなどとは異なる大幅な変化が生じる。
【0055】
この場合には、
図2に示すように、ユーザによるリセット指示が画像登録部116に与えられ、既存の登録画像121が、例えば最新の1つを除いてすべて削除される。そして、登録画像121が所定数(
図5の例では6つ)に達するまで、1日ごとに、
図7のステップS201~ステップS203の精錬処理で得られる平均画像が登録画像として画像記憶部115に追加される。
【0056】
つまり、画像登録部116は、本発明にいう登録リセット部の一例として機能し、所定の指示を受けた場合に、画像記憶部115に記憶された登録画像121の全部、あるいは一部を残した他の全部を破棄して新たな登録画像を記憶させる。登録画像121がリセットされることで、制御部104による位置検出は、ブレード200の交換などに伴う銅線301の切断形状の大幅な変化にも速やかな対応が可能となる。
【0057】
なお、ここでは、本発明の位置検出装置、位置決め装置、位置検出プログラムおよび位置検出方法における使用方法の一例として溶接装置が挙げられるが、本発明の位置検出装置、位置決め装置、位置検出プログラムおよび位置検出方法の使用方法は上記に限定されず、工作機器または光学機器など広範囲に使用可能である。
【0058】
また、本発明の位置検出装置は、コンピュータにプログラムが組み込まれた形態には限定されず、
図2に示す機能構造がハードウェアで実現された形態であってもよい。
【0059】
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
100 :溶接装置
101 :カメラ
102 :溶接部
103 :位置決めアーム
104 :制御部
105 :レーザ光
200 :ブレード
300 :ワーク
301 :銅線
111 :画像取得部
112 :パターンマッチング部
113 :合議部
114 :位置制御部
115 :画像記憶部
116 :画像登録部
302 :切断エッジ
303 :切断面
305 :カシメ部分
310 :撮影画像
121 :登録画像
131 :マッチング位置
132 :クラスタ
133 :平均位置