(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098340
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】時計部品用のピン、時計用のバンドおよび時計
(51)【国際特許分類】
A44C 5/10 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
A44C5/10 511G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215045
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】大舘 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸島 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】有賀 庄作
(57)【要約】
【課題】外力に対する耐性を向上させることを可能とする時計部品用のピン、時計用のバンドおよび時計を提供する。
【解決手段】ピンは、時計部品を結合するためのピンであって、柱状の胴部と、胴部の端部に形成された嵌合部と、を有し、嵌合部には、全周にわたって、胴部の軸心方向における中央部側に向かって突出するかえし構造が形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計部品を結合するためのピンであって、
柱状の胴部と、
前記胴部の端部に形成された嵌合部と、を有し、
前記嵌合部には、全周にわたって、前記胴部の側に向かって突出するかえし構造が形成される、
ことを特徴とするピン。
【請求項2】
前記嵌合部の軸心方向における長さは、前記胴部の外径の1倍以上2倍以下である、
請求項1に記載のピン。
【請求項3】
前記嵌合部には、3個以上5個以下の前記かえし構造が形成される、
請求項1または2に記載のピン。
【請求項4】
前記かえし構造は、前記胴部から離間するにつれて外径が小さくなるテーパ面と、前記テーパ面を接続する接続面とによって形成され、
前記接続面の軸心方向に対する角度は、85度以上95度以下である、
請求項1-3のいずれか一項に記載のピン。
【請求項5】
前記かえし構造は、前記胴部から離間するにつれて外径が小さくなるテーパ面と、前記テーパ面を接続する接続面とによって形成され、
前記テーパ面の軸心方向に対する勾配は、5度以上15度以下である、
請求項1-4のいずれか一項に記載のピン。
【請求項6】
前記胴部および前記嵌合部は、円形の断面形状を有する、
請求項1-5のいずれか一項に記載のピン。
【請求項7】
時計用のバンドであって、
請求項1-6のいずれか一項に記載のピンと、
前記ピンの胴部が挿通される貫通孔が形成された内駒と、
前記ピンの嵌合部が挿入されることにより前記ピンと嵌合する挿入孔が形成された外駒と、を有し、
前記挿入孔には、前記嵌合部と前記胴部の一部とが挿入される、
ことを特徴とするバンド。
【請求項8】
前記挿入孔の深さは、前記嵌合部の軸心方向における長さに前記胴部の外径を加えた長さ以下である、
請求項7に記載のバンド。
【請求項9】
請求項7または8に記載のバンドを有することを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計部品用のピン、時計用のバンドおよび時計に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計のバンドとして、内駒と外駒とをピンにより連結したバンドが知られている。このようなバンドにおいては、内駒に形成された貫通孔にピンを貫通させるとともに、外駒に形成された挿入孔にピンの両端部を嵌合させることにより、内駒と外駒とを連結する。従来、外駒の挿入孔にピンを挿入することを容易にするために、ピンの端部を、長手方向に延伸する複数の溝を有するローレット状に加工することがなされている。
【0003】
また、特許文献1には、ピンの端部をローレット状に加工することに代えて、ピンの端部に長手方向に延伸する切欠きを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように長手方向に溝や切欠きが形成されたピンを用いた場合、その溝や切欠きの位置では、外駒の挿入孔の内周とピンの外周との間に間隙が生じるため、ピンと外駒との接触面積が少なくなる。したがって、ピンを回転させたり外駒から引き抜いたりするような外力がピンに加わったときに、ピンが緩んだり外れたりする場合があった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、外力に対する耐性を向上させることを可能とする時計部品用のピン、時計用のバンドおよび時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るピンは、時計部品を結合するためのピンであって、柱状の胴部と、胴部の端部に形成された嵌合部と、を有し、嵌合部には、全周にわたって、胴部の軸心方向における中央部側に向かって突出するかえし構造が形成される、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るピンにおいて、嵌合部の軸心方向における長さは、胴部の外径の1倍以上2倍以下である、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るピンにおいて、嵌合部には、3個以上5個以下のかえし構造が形成される、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るピンにおいて、かえし構造は、胴部から離間するにつれて外径が小さくなるテーパ面と、テーパ面を接続する接続面とによって形成され、接続面の軸心方向に対する角度は、85度以上95度以下である、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るピンにおいて、かえし構造は、胴部から離間するにつれて外径が小さくなるテーパ面と、テーパ面を接続する接続面とによって形成され、テーパ面の軸心方向に対する勾配は、5度以上15度以下である、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るピンにおいて、胴部および嵌合部は、円形の断面形状を有する、ことが好ましい。
【0013】
本発明に係るバンドは、時計用のバンドであって、本発明に係るピンと、ピンの胴部が挿通される貫通孔が形成された内駒と、ピンの嵌合部が挿入されることによりピンと嵌合する挿入孔が形成された外駒と、を有し、挿入孔には、嵌合部と胴部の一部とが挿入される、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るバンドにおいて、挿入孔の深さは、嵌合部の軸心方向における長さに胴部の外径を加えた長さ以下である、ことが好ましい。
【0015】
本発明に係る時計は、本発明に係るバンドを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る時計部品用のピン、時計用のバンドおよび時計は、外力に対する耐性を向上させることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】外駒32に嵌合した状態におけるピン4の断面図である。
【
図5】外駒32に嵌合した状態におけるピン4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0019】
図1は、実施形態に係る時計1の斜視図である。時計1は、時計本体2、一対のバンド3等を有する。時計本体2は、時刻表示機能を有する、機械式時計、クォーツ式アナログ時計、デジタル時計等である。時計本体2の側面には、時刻を調整するための竜頭21が配置される。一対のバンド3は、時計本体2の一端(12時側)と他端(6時側)にそれぞれ接続されるとともに、不図示の中留により相互に接続される。バンド3は、バンド3の延伸方向に沿って配列された複数の内駒31と、延伸方向に沿って、内駒31の両側にそれぞれ配列された複数の外駒32とを有する。内駒31および外駒32は、ステンレスまたはチタン等の金属により形成される。なお、竜頭21、内駒31および外駒32は、時計部品の一例である。
【0020】
図2は、バンド3の分解斜視図である。内駒31の外駒32に対向する一対の側面の間には、円形の第1貫通孔311a、第2貫通孔311bおよび第3貫通孔311c(以降では、貫通孔311と総称することがある。)がこの順に並んで形成される。外駒32の内駒31に対向する側面には、円形の第1挿入孔321a、第2挿入孔321b、第3挿入孔321c(以降では、挿入孔321と総称することがある。)がこの順に並んで形成される。
【0021】
外駒32は、第1挿入孔321a、第2挿入孔321bおよび第3挿入孔321cが、いずれかの内駒31の第3貫通孔311c、第1貫通孔311aおよび第2貫通孔311bとそれぞれ対向するように配置される。これにより、内駒31と外駒32とがバンド3の延伸方向に段違いとなるように配列される。
【0022】
内駒31と外駒32とは、ピン4によって結合される。ピン4は、ステンレスまたはチタン等の、外駒32と同程度の硬度、または外駒32よりも大きい硬度を有する金属で形成され、円柱状の胴部41と、胴部41の両端部にそれぞれ形成された嵌合部42とを有する。内駒31の各貫通孔311の内径は、ピン4の胴部の外径よりも大きく形成される。内駒31の各貫通孔311には、両端からピン4の嵌合部42が突出するように、ピン4の胴部41が挿通される。
【0023】
外駒32の各挿入孔321は、その内径がピン4の胴部41の外径、および嵌合部42の外径の最大値よりも小さくなるように形成される。外駒32の各挿入孔321には、内駒31の両端から突出したピン4の嵌合部42が圧入され、ピン4が挿入孔321に嵌合する。これにより、内駒31と外駒32とが結合される。
【0024】
内駒31の貫通孔311の内周面とピン4の胴部41の外周面との間には間隙が存在するため、内駒31はピン4に対して回動可能である。したがって、内駒31は、第3貫通孔311cに挿通されたピン4を回転軸として外駒32に対して回動可能である。これにより、バンド3が屈曲可能となる。
【0025】
図3はピン4の平面図であり、
図4および
図5は外駒32に嵌合した状態におけるピン4の断面図である。
図4は
図3のIV-IV断面における断面図であり、
図5は
図3のV-V断面における断面図である。
図5においては、挿入孔321の内周面が点線で図示されている。
【0026】
嵌合部42は、複数の円錐台が、胴部41の軸Rと同軸になるように重ねられたような形状を有する。すなわち、嵌合部42には、胴部41の側に向かって突出するかえし構造421が形成される。また、
図5に示すように、挿入孔321の内径は、嵌合部42の外径の最小値(すなわち、円錐台の上底面の直径)よりも大きく最大値(すなわち、円錐台の下底面の直径)よりも小さい。これにより、嵌合部42が挿入孔321に圧入されたときにかえし構造421が挿入孔321の内周面に食い込んだ状態となり、嵌合部42と挿入孔321とが嵌合する。
【0027】
嵌合部42は軸Rについて軸対称であり、かえし構造421は嵌合部42の外周面の全周にわたって形成される。これにより、ピン4は、軸心周りに回転させる外力に対しても高い耐性を有するとともに、高い耐食性を有する。
【0028】
すなわち、
図5に示すように、かえし構造421が嵌合部42の全周にわたって形成されることにより、かえし構造421は挿入孔321の内周面の全周に均等に食い込んだ状態となる。胴部41の側に突出するかえし構造421が全周にわたって挿入孔321の内周面によって保持されるため、ピン4は、ピン4を挿入孔321から引き抜く方向の外力に対して特に高い耐性を有する。また、嵌合部42と挿入孔321との間に強い摩擦力が生じるため、ピン4は、ピン4を軸心周りに回転させる方向の外力に対しても高い耐性を有する。また、かえし構造421が全周にわたって挿入孔321の内周面と接触することにより、挿入孔321の内部が密閉され、液体等が進入することによる腐食のおそれが低減される。
【0029】
図3および
図4に示す例では、嵌合部42には3個のかえし構造421が形成されている。嵌合部42には、複数のかえし構造421が形成されることが好ましく、3個以上5個以下のかえし構造421が形成されることがより好ましい。嵌合部42に3個以上のかえし構造421が形成されることにより、複数のかえし構造421が内周面に食い込んでそれぞれ挿入孔321に保持されるため、ピン4は、外力に対してより高い耐性を有するようになる。また、かえし構造421の数が5個以下であることにより、それぞれのかえし構造421の軸心方向における厚さが薄くなることが防止され、かえし構造421が変形しにくくなるため、ピン4は、外力に対してより高い耐性を有するようになる。
【0030】
かえし構造421は、胴部41から離間するにつれて外径が小さくなるような勾配を有するテーパ面422と、複数のテーパ面422を接続する接続面423とにより形成される。嵌合部42がテーパ面422を有することにより、ピン4は、外力に対して高い耐性を有する。すなわち、嵌合部42が挿入孔321に圧入されるときに、テーパ面422は挿入孔321の内周面と接触し、嵌合部42の軸と挿入孔321の中心とを一致させるガイドとして機能する。嵌合部42の軸心と挿入孔321の中心とが一致することにより、嵌合部42は全周にわたって挿入孔321の内周面の全周に均等に嵌合しやすくなるため、ピン4はあらゆる方向の外力に対して高い耐性を有するようになる。
【0031】
テーパ面422は円錐台の側面に相当するため、軸Rについて軸対称である。これにより、ピン4は、外力に対してより高い耐性を有する。すなわち、ピンの嵌合部がローレット形状のように軸対称でない形状を有する場合、嵌合部が挿入孔321に圧入されるときに、嵌合部と挿入孔321の内周面との接触面積が小さくなる。この場合、嵌合部と挿入孔321との接触部分に局所的に強い力がかかり、挿入孔321が大きく変形することがある。挿入孔321にそのような変形が生じた場合、嵌合部が全周にわたって挿入孔321の内周面と全周にわたって均等に嵌合することができなくなり、ピンの外力に対する耐性が低下する。実施形態に係るピン4においては、テーパ面422が軸対称であることにより、嵌合部42が挿入孔321に圧入されるときの嵌合部42と挿入孔321の内周面との接触面積が大きくなり、挿入孔321の変形が最小限に抑えられる。これにより、ピン4は挿入孔321の内周面と全周にわたって均等に嵌合し、外力に対してより高い耐性を有するようになる。
【0032】
テーパ面422の軸心方向(軸Rの延伸方向をいう。)に対する勾配G1は、5度以上15度以下であることが好ましく、10度であることがより好ましい。これにより、ピン4は、挿入孔321に適切に挿入されるようになり、外力に対してより高い耐性を有する。すなわち、勾配G1が5度以上であることにより、圧入時における嵌合部42と挿入孔321の内周面との間の摩擦力が低減されるため、嵌合部42が挿入孔321の奥まで適切に挿入される。また、勾配G1が15度以下であることにより、圧入時において、嵌合部42が挿入孔321の内部に進入した後の早い段階でテーパ面422と挿入孔321の内周面とが接触するため、テーパ面422がガイドとして機能しやすくなる。これにより、嵌合部42は、その軸と挿入孔321の軸とが一致した状態で適切に挿入孔321に挿入される。
【0033】
かえし構造421を形成する接続面423の軸心方向に対する角度G2は、85度以上95度以下であることが好ましく、90度であることがより好ましい。これにより、ピン4は、外力に対してより高い耐性を有する。すなわち、かえし構造421が挿入孔321の内周面に食い込むときには、かえし構造421は内周面から軸心に向かう方向の抗力を受ける。かえし構造421を形成する接続面423と軸心方向との角度G2が85度以上95度以下であり、接続面423が軸心方向に略垂直であることにより、このような抗力を受けてもかえし構造421が変形しにくくなる。したがって、かえし構造421が挿入孔321の内周面に適切に食い込んだ状態となり、ピン4は、挿入孔321から引き抜く方向の外力に対してより高い耐性を有するようになる。
【0034】
嵌合部42の軸心方向(軸Rの延伸方向をいう。)における長さL1は、胴部41の外径Dの1倍以上2倍以下である。これにより、ピン4は、外力に対して高い耐性を有するとともに製品の歩止まりを向上させる。嵌合部42の長さL1が小さい場合、かえし構造421が挿入孔321の内周面に食い込む範囲が狭くなるため、ピン4の外力に対する耐性が低下するおそれがある。他方で、嵌合部42の長さL1が大きい場合、ピン4が折れやすくなり、製品の歩止まりが低下するおそれがある。長さL1が外径Dの1倍以上2倍以下であることにより、このような弊害が防止され、ピン4が外力に対して高い耐性を有するとともに製品の歩止まりが向上される。
【0035】
図4に示すように、外駒32の挿入孔321の深さL2は、嵌合部42の軸心方向における長さL1よりも大きい。したがって、嵌合部42を挿入孔321に圧入したとき、挿入孔321には、嵌合部42と胴部41の一部とが挿入される。また、胴部41の外径Dは、嵌合部42の外径の最大値と等しい。これにより、バンド3は、ピン4の外力に対する耐性を向上させる。すなわち、胴部41は挿入孔321の内径よりも大きい外径を有する円柱状であるため、圧入時にその外周面の全部が挿入孔321の内周面と接触し、かつ接触面に沿って高速で移動する。したがって、胴部41の外周面と挿入孔321の内周面との間に強い摩擦圧接が生じ、胴部41と挿入孔321とが固着される。これにより、ピン4の外力に対する耐性が向上する。
【0036】
好ましくは、挿入孔321の深さL2は、嵌合部42の長さL1に胴部41の外径Dを加えた長さ以下である。すなわち、挿入孔321に挿入される胴部41の軸心方向における長さは、胴部41の外径Dよりも短い。これにより、バンド3は、製品の歩止まりを向上させる。挿入孔321に挿入される胴部41が長すぎると、胴部41が強い摩擦力を受け、嵌合部42が挿入孔321の奥まで挿入されなくなって製品寸法にばらつきが生じたり、ピン4が破断したりする場合がある。挿入孔321の深さL2が長さL1に外径Dを加えた長さ以下であることにより、製品寸法のばらつきや製品の破断が防止され、製品の歩止まりが向上する。
【0037】
図6は、時計本体2の竜頭21の断面図である。
図6は、
図1のVI-VI断面における断面図のうち、竜頭21の近傍のみを図示したものである。
【0038】
竜頭21は、時計本体2の側面に形成され、時計本体2の内外を貫通する挿入孔22に挿入される柱状の軸部211と、軸部211の端部に形成され、利用者が回転操作をするための操作部212とを有する。軸部211の操作部212とは反対側の端面には、時計本体2に内蔵された不図示のムーブメントと接続する巻真と係合するための凹部213が形成される。これにより、利用者の操作部212に対する回転操作に応じて、ムーブメントに接続された巻真が回転して時刻が調整される。
【0039】
竜頭21は、ピン5によって時計本体2に結合される。ピン5は、ステンレスまたはチタン等の、時計本体2の挿入孔22の周辺と同程度の硬度、または挿入孔22の周辺よりも大きい硬度を有する金属で形成される。ピン5は、柱状の胴部51と、胴部51の一方の端部に形成された嵌合部52とを有する。
【0040】
時計本体2の挿入孔22は、その内径がピン5の胴部51の外径および嵌合部52の外径の最大値よりも小さく形成される。時計本体2の挿入孔22には、ピン5の嵌合部52が圧入され、嵌合部52が挿入孔22に嵌合する。これにより、時計本体2とピン5とが結合される。
【0041】
また、ピン5には、軸心方向(胴部51の軸Sの延伸方向をいう。)に沿って貫通孔53が形成されるとともに、胴部51の外周に部分的に突出する係合部54が形成される。竜頭21の軸部211は貫通孔53に挿通され、操作部212は係合部54に係合する。操作部212が係合部54に係合することにより、操作部212の軸心方向における移動が規制される。これにより、竜頭21が時計本体2に結合する。
【0042】
嵌合部52の形状は、ピン4の嵌合部42の形状と同様である。すなわち、嵌合部52は複数の円錐台が胴部51の軸Sと同軸になるように重ねられたような形状を有し、嵌合部52には全周にわたって胴部51の側に突出するかえし構造521が形成される。嵌合部52は軸Sについて軸対称であり、かえし構造521は嵌合部52の外周面の全周にわたって形成される。これにより、ピン5は、外力に対して高い耐性を有するとともに、高い耐食性を有する。
【0043】
嵌合部52には、複数のかえし構造521が形成されることが好ましく、3個以上5個以下のかえし構造521が形成されることがより好ましい。これにより、ピン5は外力に対してより高い耐性を有するようになる。
【0044】
かえし構造521は、胴部51から離間するにつれて外径が小さくなるような勾配を有するテーパ面522と、複数のテーパ面522を接続する接続面523によって形成される。嵌合部52が、嵌合部52の軸と挿入孔22の中心とを一致させるガイドとして機能するテーパ面522を有することにより、嵌合部52が挿入孔321の内周面の全周に均等に嵌合しやすくなるため、ピン4は、外力に対して高い耐性を有する。
【0045】
テーパ面522は、軸Sについて軸対称である。これにより、挿入孔22の変形が最小限に抑えられ、ピン5は、外力に対してより高い耐性を有する。
【0046】
テーパ面522の軸心方向に対する勾配H1は5度以上15度以下であることが好ましく、10度であることがより好ましい。これにより、ピン5が挿入孔22に適切に挿入されるようになり、ピン5は、外力に対してより高い耐性を有する。
【0047】
接続面523の軸心方向に対する角度H2は、85度以上95度以下であることが好ましく、90度であることがより好ましい。これにより、かえし構造521が挿入孔22からの効力によって変形することが防止されて挿入孔22の内周面に適切に食い込んだ状態となるため、ピン5は、外力に対してより高い耐性を有する。
【0048】
胴部51は、嵌合部52に接続し、嵌合部52の外径の最大値と等しい外径Eを有する円柱状の第1部分511と、第1部分511よりも大きい外径を有する円柱状の第2部分512とを有する。嵌合部52の軸心方向における長さM1は、第1部分511の外径Eの1倍以上2倍以下である。これにより、ピン4は、外力に対して高い耐性を有するとともに、ピン5が折れやすくなることを防止して製品の歩止まりを向上させる。
【0049】
第2部分512の外径が第1部分511の外径Eよりも大きいことにより、嵌合部52を挿入孔22に圧入したとき、挿入孔22には、嵌合部52と胴部51の第1部分511とが挿入される。また、第1部分511の外径Eは、嵌合部52の外径の最大値と等しい。これにより、第1部分511の外周面と挿入孔22の内周面との間に強い摩擦圧接が生じ、第1部分511と挿入孔22とが固着されるため、ピン5は外力に対して高い耐性を有する。
【0050】
好ましくは、第1部分511の軸心方向における長さM2は、第1部分511の外径Eよりも小さい。すなわち、挿入孔22に挿入される胴部51の軸心方向における長さは、胴部51の外径の最小値である第1部分511の外径Eよりも小さい。これにより、ピン5が適切に挿入孔22に挿入されるようになるとともに、ピン5が破断することが防止され、製品の歩止まりが向上する。
【0051】
以上説明したように、実施形態に係るピン(4,5)は、柱状の胴部(41,51)と、胴部(41,51)の端部に形成された嵌合部(42,52)と、を有する。嵌合部(42,52)には、全周にわたって、胴部(41,51)の側に向かって突出するかえし構造(421,521)が形成される。これにより、ピン(4,5)は、外力に対して高い耐性を有する。
【0052】
また、好ましくは、嵌合部(42,52)の軸心方向における長さ(L1,M1)は、胴部(41,51)の外径(D,E)の1倍以上2倍以下である。これにより、ピン(4,5)は、外力に対してより高い耐性を有するとともに、製品の歩止まりを向上させる。
【0053】
また、好ましくは、嵌合部(42,52)には、3個以上5個以下のかえし構造(421,521)が形成される。これにより、ピン4は、外力に対してより高い耐性を有する。
【0054】
また、かえし構造(421,521)は、胴部(41,51)から離間するにつれて外径が小さくなる複数のテーパ面(422,522)と、複数のテーパ面(422,522)の間を接続する接続面(423,523)とによって形成される。好ましくは、接続面(423,523)の軸心方向に対する角度(G2,H2)は、85度以上95度以下である。これにより、ピン(4,5)は、外力に対してより高い耐性を有する。
【0055】
また、好ましくは、テーパ面(422,522)の軸心方向に対する勾配(G1,H1)は、5度以上15度以下である。これにより、ピン(4,5)は、外力に対してより高い耐性を有する。
【0056】
実施形態に係る時計用のバンド3は、ピン4と、ピン4の胴部41が挿通される貫通孔311が形成された内駒31と、ピン4の嵌合部42がそれぞれ挿入されることによりピン4と嵌合する挿入孔321が形成された外駒32と、を有する。また、挿入孔321には、嵌合部42と胴部41の一部とが挿入される。これにより、バンド3は、ピン4の外力に対する耐性を向上させる。
【0057】
また、好ましくは、挿入孔321の深さL2は、嵌合部42の軸心方向における長さL1に胴部41の外径Dを加えた長さ以下である。これにより、バンド3は、製品の歩止まりを向上させる。
【0058】
実施形態に係る時計1には、次に述べるような変形例が適用されてもよい。
【0059】
上述した説明では、ピン4の胴部41および嵌合部42は円形の断面形状を有するものとしたが、このような例に限られない。胴部41および嵌合部42は、楕円形又は多角形の断面形状を有するものとしてもよい。例えば、胴部41は四角柱状であってもよい。この場合、嵌合部42は、四角錐台を重ねたような形状を有する。胴部41および嵌合部42が円形の断面形状を有する場合、嵌合部42が全周にわたって均等に挿入孔321に保持されるため、外力に対して最も高い耐性を有する。しかしながら、胴部41および嵌合部42が円形以外の断面形状を有する場合も、嵌合部42が全周にわたって挿入孔321に保持されるため、外力に対して一定程度高い耐性を有することができる。同様に、ピン5の胴部51および嵌合部52は、楕円形又は多角形の断面形状を有するものとしてもよい。
【0060】
上述した説明では、ピン4の嵌合部42は圧入により挿入孔321と嵌合するものとしたが、このような例に限られない。嵌合部42は、あらかじめ接着剤が塗布された状態で挿入孔321に圧入され、挿入孔321と嵌合するとともに固着されてもよい。これにより、外力に対する耐性がより向上する。また、挿入孔321の内部が接着剤により充填されるため、液体等が進入することが防止され、耐食性が向上する。同様に、ピン5の嵌合部52は、あらかじめ接着剤が塗布された状態で挿入孔22に圧入され、挿入孔22と嵌合するとともに固着されてもよい。
【0061】
上述した実施形態では、ピン4は内駒31と外駒32とを結合するものとし、ピン5は竜頭21と時計本体2とを結合するものとしたが、このような例に限られず、ピン4または5が他の時計部品を結合するために用いられてもよい。例えば、時計本体2がプッシュボタン等を備える場合、ピン5がプッシュボタンと時計本体2とを結合するために用いられてもよい。
【0062】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 時計
3 バンド
31 内駒
32 外駒
4 ピン
41 胴部
42 嵌合部
421 かえし構造
422 テーパ面
423 接続面