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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098370
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】外用製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20230703BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230703BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K47/10
A61P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215087
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100129414
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 京
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史織
(72)【発明者】
【氏名】柴田 佳那美
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA11
4C076BB31
4C076CC05
4C076DD22
4C076DD37
4C076EE32
4C076FF67
4C076FF68
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA06
4C206NA10
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】ロキソプロフェンまたはその塩を含む外用剤の過剰投与を抑制しつつ、塗布の度に均等かつ適量の外用剤を所望の部位に適用しやすいものとする技術を提供する。
【解決手段】(a)外用剤、および(b)外用剤(a)を収容する容器を含む外用製剤であって、外用剤(a)が、ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選択される少なくとも一種と、エタノールと、増粘剤と、を含有し、外用剤(a)のB型粘度が、10mPa・s以上400mPa・s以下であり、外用剤(a)のTI値(η1/η2)が、1.00超2.00未満であり、容器(b)が、胴部と、外用剤(a)の塗布部を備える首部とを有し、胴部の長手方向中心軸に対して首部を傾けた容器である、外用製剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)外用剤、および
(b)前記外用剤(a)を収容する容器
を含む外用製剤であって、
前記外用剤(a)が、
ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選択される少なくとも一種と、
エタノールと、
増粘剤と、
を含有し、
B型粘度計により25℃にて測定される前記外用剤(a)のB型粘度が、10mPa・s以上400mPa・s以下であり、
レオメータを用いて25℃にて測定される、せん断速度100s-1における前記外用剤(a)の粘度η2に対するせん断速度5s-1における前記外用剤(a)の粘度η1の比で定義されるチキソトロピーインデックス(TI)値(η1/η2)が、1.00超2.00未満であり、
前記容器(b)が、胴部と、前記外用剤(a)の塗布部を備える首部とを有し、前記胴部の長手方向中心軸に対して前記首部を傾けた容器である、外用製剤。
【請求項2】
せん断速度30s-1における前記外用剤(a)の粘度η3に対する前記粘度η1の比で定義されるチキソトロピーインデックス(TI)値(η1/η3)が、1.00超1.50未満である、請求項1に記載の外用製剤。
【請求項3】
前記容器(b)の容量が5g以上100g以下であり、
前記B型粘度が10mPa・s以上350mPa・s以下である、請求項1または2に記載の外用製剤。
【請求項4】
前記外用剤(a)中の前記エタノールの含有量が、前記外用剤(a)全体に対して10質量%以上75質量%以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の外用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外用製剤にロキソプロフェンまたはその塩を配合する技術として、特許文献1(特開2021-172638号公報)に記載のものがある。同文献においては、ロキソプロフェン及び/又はその塩と1価低級アルコールとを含み、1回当たりの投与量が2.0gを超えて過剰投与されるのを抑制できる外用医薬製剤を提供することを課題としており(段落0007)、これを解決するための技術として、ロキソプロフェン及び/又はその塩と、モノテルペン及び/又はカプサイシノイドと、1価低級アルコールとを含み、1回当たりの投与量が2.0g以下に設定されている、外用医薬製剤について記載されている(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-172638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、過剰投与抑制のため、モノテルペン及び/又はカプサイシノイドを製剤に配合することを必須としている。このため、同文献によれば、強い冷感、熱感又は灼熱感により使用者に十分な使用実感を与えることができるとされている一方(段落0018)、皮膚刺激に敏感な使用者等であっても使用できるようにするという点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、ロキソプロフェンまたはその塩を含む外用剤の過剰投与を抑制しつつ、塗布の度に均等かつ適量の外用剤を所望の部位に適用しやすいものとする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の外用製剤が提供される。
[1] (a)外用剤、および
(b)前記外用剤(a)を収容する容器
を含む外用製剤であって、
前記外用剤(a)が、
ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選択される少なくとも一種と、
エタノールと、
増粘剤と、
を含有し、
B型粘度計により25℃にて測定される前記外用剤(a)のB型粘度が、10mPa・s以上400mPa・s以下であり、
レオメータを用いて25℃にて測定される、せん断速度100s-1における前記外用剤(a)の粘度η2に対するせん断速度5s-1における前記外用剤(a)の粘度η1の比で定義されるチキソトロピーインデックス(TI)値(η1/η2)が、1.00超2.00未満であり、
前記容器(b)が、胴部と、前記外用剤(a)の塗布部を備える首部とを有し、前記胴部の長手方向中心軸に対して前記首部を傾けた容器である、外用製剤。
[2] せん断速度30s-1における前記外用剤(a)の粘度η3に対する前記粘度η1の比で定義されるチキソトロピーインデックス(TI)値(η1/η3)が、1.00超1.50未満である、[1]に記載の外用製剤。
[3] 前記容器(b)の容量が5g以上100g以下であり、
前記B型粘度が10mPa・s以上350mPa・s以下である、[1]または[2]に記載の外用製剤。
[4] 前記外用剤(a)中の前記エタノールの含有量が、前記外用剤(a)全体に対して10質量%以上75質量%以下である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の外用製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロキソプロフェンまたはその塩を含む外用剤の過剰投与を抑制しつつ、塗布の度に均等かつ適量の外用剤を所望の部位に適用しやすいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における容器の構成の一例を示す斜視図である。
図2】実施例における塗布量の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図面は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。
本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、以上、以下を表し、両端の数値をいずれも含む。
【0010】
本実施形態において、外用製剤は、(a)外用剤、および(b)外用剤(a)を収容する容器を含む。外用剤(a)は、ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選択される少なくとも一種と、エタノールと、増粘剤と、を含有し、B型粘度計により25℃にて測定される外用剤(a)のB型粘度が、10mPa・s以上400mPa・s以下であり、レオメータを用いて25℃にて測定される、せん断速度100s-1における外用剤(a)の粘度η2に対するせん断速度5s-1における外用剤(a)の粘度η1の比で定義されるチキソトロピーインデックス(TI)値(η1/η2)が、1.00超2.00未満である。そして、容器(b)は、胴部と、外用剤(a)の塗布部を備える首部とを有し、胴部の長手方向中心軸に対して首部を傾けた容器である。
【0011】
本実施形態においては、外用製剤が、特定の成分を含むとともにB型粘度およびTI値(η1/η2)がそれぞれ特定の範囲にある外用剤(a)と、胴部の長手方向中心軸に対して首部を傾けた容器(b)とを組み合わせて含むため、外用剤(a)の投与量を適度な量に制御することができる。このため、外用剤(a)の過剰投与を抑制しつつ、塗布の度に均等かつ適量の外用剤(a)を所望の部位に適用しやすい。
【0012】
ここで、上記外用剤(a)と容器(b)を組み合わせて用いることにより、外用剤(a)の投与量を制御できる理由としては以下のことが考えられる。
まず、外用剤の物性に関し、外用剤のB型粘度(静的粘度)が大きすぎると、外用剤を容器から出し難くなるため、外用剤の適用容易性が低下する懸念がある。
また、外用剤のB型粘度(静的粘度)およびTI値(η1/η2)(動的粘度)がいずれも大きすぎると、外用剤を容器より出し難くなることに加えて、患部等の適用対象部位への適用容易性が低下する懸念がある。
一方、外用剤のB型粘度(静的粘度)およびTI値(η1/η2)(動的粘度)がいずれも小さすぎると、外用剤が容器から過度に出易く、対象部位への適用直後に液だれし易く、対象部位に外用剤が留まり難くなる懸念がある。
そして、本発明者らの検討により、本実施形態における外用剤(a)と容器(b)を組み合わせて用いることにより、外用剤(a)のB型粘度(静的粘度)が特定の範囲にあることで、好適な量の外用剤(a)を容器から出し易く、かつ、外用剤(a)が適用部位に留まり易く、さらに、外用剤(a)のTI値(η1/η2)(動的粘度)が特定の範囲にあることにより、塗布の度に均等に外用剤(a)を皮膚等に容易に塗布し易いことが新たに見出された。
以下外用剤(a)および容器(b)についてさらに具体的に説明する。
【0013】
(外用剤(a))
外用剤(a)は、具体的には皮膚外用剤であり、さらに具体的には皮膚に塗布される外用剤である。外用剤(a)は、ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選択される少なくとも一種、エタノールならびに増粘剤を含む組成物である。
【0014】
外用剤(a)において、B型粘度計により25℃にて測定されるB型粘度は、過剰投与抑制の観点から、10mPa・s以上であり、好ましくは12mPa・s以上、さらに好ましくは14mPa・s以上である。
また、所望の部位への適用容易性を高める観点から、外用剤(a)の上記B型粘度は、400mPa・s以下であり、好ましくは350mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下、さらに好ましくは200mPa・s以下、さらにより好ましくは100mPa・s以下である。
【0015】
ここで、外用剤(a)のB型粘度は、具体的には、B型粘度計(たとえばDV3T、BROOKFIELD社製、スピンドルLV-2等)を用いて、回転数200rpm(粘度が150mPa・s未満のもの)または30rpm(粘度が150mPa・s以上のもの)、測定時間1分、n=2の平均値の条件で測定することができる。
【0016】
レオメータを用いて25℃にて測定される、せん断速度100s-1における外用剤(a)の粘度η2に対するせん断速度5s-1における外用剤(a)の粘度η1の比で定義されるTI値(η1/η2)は、液だれしにくく、患部に留まりやすいことから、1.00超であり、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.02以上である。
また、塗布の度に均等に外用剤(a)を皮膚等に容易に塗布しやすいことから、上記TI値(η1/η2)は、2.00未満であり、好ましくは1.80以下、さらに好ましくは1.50以下、さらにより好ましくは1.20以下である。
【0017】
外用剤(a)の粘度η1は、液だれしにくく、患部に留まりやすいことから、好ましくは5mPa・s以上であり、より好ましくは10mPa・s以上である。
また、所望の部位への適用容易性を高める観点から、外用剤(a)の粘度η1は、500mPa・s以下であり、好ましくは450mPa・s以下、より好ましくは350mPa・s以下、さらに好ましくは200mPa・s以下、さらにより好ましくは100mPa・s以下である。
【0018】
せん断速度30s-1における外用剤(a)の粘度η3に対する粘度η1の比で定義されるTI値(η1/η3)は、液だれしにくく、患部に留まりやすいことから、好ましくは1.00超であり、より好ましくは1.01以上、さらに好ましくは1.02以上である。
また、塗布の度に均等に外用剤(a)を皮膚等に容易に塗布しやすいことから、上記TI値(η1/η3)は、好ましくは1.50未満であり、より好ましくは1.40以下、さらに好ましくは1.30以下、さらにより好ましくは1.20以下である。
【0019】
ここで、外用剤(a)の動的粘度は、たとえば、レオメータ(たとえばAnton Paar社製 MCR302)を用い、外用剤(a)の検体を25℃に加温した測定部にセットし、せん断レオロジー測定メソッドによりせん断速度を1(1/s)から100(1/s)まで275秒間で連続的に変化させ、以下の条件で測定することができる。
プレートタイプ:コーンプレート
プレート径:50mm
測定温度:25℃
【0020】
次に、外用剤(a)の成分を説明する。
(ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選択される少なくとも一種)
ロキソプロフェンおよびその塩として、具体的には、ロキソプロフェンおよびロキソプロフェン塩が挙げられる。ここで、ロキソプロフェン塩は含水塩であってもよい。
ロキソプロフェン塩は、具体的には、ロキソプロフェンナトリウムおよびロキソプロフェンナトリウム・2水和物から選ばれる少なくとも一種であり、好ましくは、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物である。
また、本実施形態におけるロキソプロフェンは、ロキソプロフェンナトリウム水和物として第18改正日本薬局方に収載されている。
【0021】
外用剤(a)中のロキソプロフェンおよびその塩の含有量の合計は、具備すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、たとえば、外用剤(a)全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上である。
また、外用剤(a)中のロキソプロフェンおよびその塩の含有量の合計は、具備すべき薬効等に応じて適宜設定すればよく、たとえば、外用剤(a)全体に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以下である。
【0022】
(エタノール)
本実施形態において、エタノール(エチルアルコール、アルコールともいう。)は、医薬品添加物辞典2021(薬事日報社、2021)に収載されており、たとえば可溶化剤、基剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤(a)に用いられる。エタノール含量が99.5体積%以上のものは無水エタノールとも呼ばれるが、本実施形態におけるエタノールにはこれも含まれる。
【0023】
外用剤(a)中のエタノールの含有量は、塗布後に短時間で乾燥し易いことから、外用剤(a)全体に対して好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、よりいっそう好ましくは42.5質量%以上である。
また、外用剤(a)中のエタノールは、皮膚刺激性低減の観点から、外用剤(a)全体に対して好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらにより好ましくは50質量%以下、よりいっそう好ましくは47.5質量%以下である。
【0024】
(増粘剤)
増粘剤として、外用剤に特定の粘度と特定のTI値を付与するものであればよく、限定されないが、たとえば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、カルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;キサンタンガム、ペクチン、グァーガム、ローストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム等の他の多糖類;カルボキシビニルポリマー;およびマクロゴール(ポリエチレングリコール)からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
増粘剤は、外用剤の分野において粘稠剤、粘稠化剤、粘着剤、粘着増強剤等として用いられる成分であってもよい。
【0025】
外用剤(a)の過剰投与をより安定的に抑制する観点、および、外用剤(a)を所望の部位に適用しやすいものとする観点から、増粘剤は、好ましくはセルロース類であり、より好ましくはセルロース誘導体であり、さらに好ましくはヒプロメロースである。
【0026】
ヒプロメロースにおけるメトキシ基量は、たとえば27.0~30.0%程度であり、好ましくは28.0~30.0%程度である。
また、ヒプロメロースにおけるヒドロキシプロポキシ基量は、たとえば4.0~12.0%程度であり、好ましくは7.0~12.0%程度である。
【0027】
ヒプロメロースの2%水溶液の20℃における粘度(日本薬局方)は、過剰投与抑制の観点から、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは3000mPa・s以上であり、さらに好ましくは5000mPa・s以上である。
また、所望の部位への適用容易性を高める観点から、ヒプロメロースの上記粘度は、好ましくは50000mPa・s以下であり、より好ましくは20000mPa・s以下である。
【0028】
本実施形態において、外用剤(a)は上述した成分以外の成分を含んでもよい。
(水)
たとえば、外用剤(a)は水をさらに含んでもよい。
外用剤(a)中に水の含有量は、たとえば、外用剤(a)中の水以外の成分を除いた残部とすることができる。
また、水溶性基剤を容易に溶かしやすいことから、外用剤(a)中の水の含有量は、外用剤(a)全体に対して好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
また、外用剤(a)を塗布後に短時間で乾燥し易くする観点から、外用剤(a)中の水の含有量は、外用剤(a)全体に対して好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0029】
(l-メントール)
また、外用剤(a)はl-メントールをさらに含んでもよい。l-メントールは、第18改正日本薬局方や医薬品添加物辞典2021に収載されている。
鎮痛補助の観点から、外用剤(a)中のl-メントールの含有量は、外用剤(a)全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。
また、皮膚刺激性低減の観点から、外用剤(a)中のl-メントールの含有量は、外用剤(a)全体に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7.5質量%以下である。
【0030】
さらに、外用剤(a)には、鎮痛消炎用の皮膚外用剤に通常使用される、上記成分以外の薬物や医薬品添加物を添加することができる。
【0031】
かかる薬物としては、たとえば、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸等の抗炎症剤、ジフェンヒドラミン又はその塩、ジフェンイミダゾール、クロルフェニラミンマレイン酸塩等の抗ヒスタミン剤、トコフェロール酢酸エステル、ニコチン酸ベンジルエステル等の血行改善成分、dl-カンフル、d-カンフル、ノナン酸バニリルアミド(ノニル酸ワニリルアミド)、メントールやチモールボルネオール等を含むテルペン類、テレビン油やハッカ油やユーカリ油等のテルペン類を含む精油、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、カプサイシン等の局所刺激成分、アルニカチンキやベラドンナエキス、セイヨウトチノキ種子又はエキス等の生薬成分、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌成分、酸化亜鉛等の収斂・消炎剤等を挙げることができ、これらの薬物は、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0032】
また、医薬品添加物としては、たとえば、経時的な含量安定性や使用感の更なる向上等を得るために必要に応じて添加するものが挙げられる。医薬品添加物の具体例として、基剤、溶解剤、湿潤剤、粘着剤、pH調節剤、抗酸化剤、清涼化剤、界面活性剤、安定化剤、乳化剤、硬化剤等が挙げられる。
【0033】
基剤としては、たとえば、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体;ポリイソブチレン;流動パラフィン;ポリアクリル酸部分中和物;ポリビニルアルコール(部分けん化物)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、マクロゴール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、D-ソルビトール等の多価アルコールが挙げられる。
【0034】
湿潤剤としては、たとえば、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ポリソルベート40液が挙げられる。
【0035】
粘着剤としては、たとえば、ジブチルヒドロキシトルエン、水素ロジングリセリンエステルが挙げられる。
【0036】
pH調節剤としては、たとえば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、有機酸、有機アミン(例えば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなど)、リン酸等を用いることができる。
外用剤(a)のpH調整方法として、たとえば、pH調節剤と外用製剤に用いられる汎用の基剤等とを混合して溶解又は分散させ、所望のpHに調整する方法を挙げることができる。
なお、pHとしては皮膚に悪影響のない範囲であれば制限されず、通常pH3.5~8.5、好ましくはpH4~8、より好ましくは4~7.5になるように調整される。
【0037】
抗酸化剤としては、たとえば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸水和物、無水クエン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピルが挙げられる。
【0038】
また、清涼化剤としては、たとえば上記l-メントールを含むメントール、カンフル等のテルペン類、ハッカ油、ユーカリ油等を挙げることができる。
【0039】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤を用いてもよく、イオン性界面活性剤を用いてもよい。
非イオン性界面活性剤としては、たとえば、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、メチルグルコシド脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル又は多価アルコールアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシエチレンエーテル;ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンメチルグルコシド脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のエーテルエステル等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤;オクチルドデカノール等の高級アルコールなどが挙げられる。本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルは、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等を挙げることができる。
【0040】
本実施形態において、外用剤(a)の剤形は、上述の粘度特性を満たすとともに容器(b)の塗布部から皮膚等に適用できるものであればよく、たとえば液剤とすることができる。外用剤(a)を製造する際には、たとえば剤形に応じて適当な添加物を使用し、第18改正日本薬局方等に記載される通常の方法に従って製造することができる。
【0041】
ここで、本実施形態において、B型粘度およびTI値について上述の条件を満たす外用剤(a)を得るためには、従来技術とは異なる製法上の工夫を施すことが重要であり、たとえば、外用剤(a)の構成成分の種類の選択、各成分の配合量の選択等が挙げられる。
さらに具体的には、外用剤(a)に含まれる増粘剤の種類および量を適切に選択するとともに、他の構成成分の量を制御することにより、各粘度特性が所望の範囲にある封止用樹脂組成物を得ることができる。
【0042】
(容器(b))
図1は、本実施形態における容器(b)の構成の一例を示す斜視図である。
図1に示した容器100は、容器本体110と、容器本体110に着脱可能に設けられた蓋120とを備える。
【0043】
容器本体110には、外用剤(a)が収容される。容器本体110は、胴部101と、胴部101に連通する首部103とを有する。首部103は、胴部101の長手方向中心軸に対して傾いて設けられている。
胴部101の長手方向中心軸と首部103の延在方向中心軸とのなす角αは、外用剤(a)の過剰投与を抑制しつつ塗布の度に均等量かつ適量の外用剤を塗布しやすいという観点、および、外用剤(a)を容易に適用しやすいという観点から、たとえば25~75°程度であり、好ましくは30~60°程度であり、さらに好ましくは30~50°程度である。
【0044】
首部103には、外用剤(a)を対象部位に適用するための塗布部105が設けられている。
また、首部103の外周および蓋120の内面には、それぞれ、たとえばねじ山が設けられていてよく、これらのねじ山が嵌合することにより蓋120が容器本体に装着されてもよい。
【0045】
容器本体110および蓋120の材料としては、たとえば樹脂、ガラスおよび金属からなる群から選択される一種以上が挙げられる。
このうち、樹脂の具体例としては熱可塑性樹脂が挙げられ、さらに具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレンが挙げられる。
また、金属の例として、アルミニウムが挙げられる。
容器本体110および蓋120の材料は同じであってもよいし異なってもよい。
【0046】
塗布部105の材料として、たとえば軟質ウレタンフォーム等のポリウレタンフォームをはじめとするポリウレタン、発泡スチレン、天然ゴム、ポリエチレンが挙げられる。塗布部105が多孔質材料により構成されていてもよい。
【0047】
容器100の容量に制限はないが、適量の外用剤を塗布しやすい観点から、好ましくは5g以上、より好ましくは15g以上であり、さらに好ましくは20g以上である。
また、外用剤(a)の過剰投与を抑制しつつ塗布の度に均等かつ適量の外用剤を塗布しやすい観点や、持ち運びしやすい観点等から、容器100の容量は、好ましくは100g以下であり、より好ましくは80g以下であり、さらに好ましくは50g以下である。
また、容器(b)の容量が5g以上100g以下であり、外用剤(a)のB型粘度が10mPa・s以上350mPa・s以下であることも好ましい。
【0048】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0049】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1~5、比較例1~3)
本例では、外用製剤の作製および評価を実施した。
【0051】
(外用製剤の製造方法)
表1に記載の成分を攪拌、混合して溶解し、各組成物(外用剤)1~6を得た。得られた各組成物を外用消炎鎮痛剤用の塗布容器(後述の「実施容器」)に充填して各外用製剤を得た。
【0052】
(B型粘度の測定)
B型粘度計(DV3T、BROOKFIELD社製)を用い、各組成物をガラス製のバイアル瓶(マイティーバイアルNo.8、マルエム社製)に80mL充填し、以下の条件で各組成物の粘度を測定した(測定時間1分、n=2の平均値とした。)。
回転数:B型粘度が150mPa・s未満の場合は200rpmとし、B型粘度が150mPa・s以上のものは30rpmとした。
スピンドル:粘度が15mPa・s超の場合はスピンドルLV-2を使用し、粘度が15mPa・s以下の場合はスピンドルLV-1を使用した。
測定温度:25℃
【0053】
(動的粘度の測定)
レオメータ(Anton Paar社製 MCR302)を用い、各組成物(外用剤)を25℃に加温した測定部にセットし、せん断レオロジー測定メソッドによりせん断速度を1(1/s)から100(1/s)まで275秒間で連続的に変化させ、以下の条件で測定した。
プレートタイプ:コーンプレート
プレート径:50mm
測定温度:25℃
【0054】
(評価)
(平均塗布量)
各外用製剤の塗布しやすさ、ここでは、適度な量の各組成物(外用剤)を塗布できることの指標として、各例で得られた外用製剤の平均塗布量を以下の手順で測定した。
1.外用製剤の内容量について、それぞれの容器容量100%に対して各充填量を略8%、略40%、略80%に調節した各外用製剤(各例)を作製した。
2.各外用製剤を腕模型(ビューラックス社製、No.47)に対し、図2に示す通り、腕模型200の表面に外用剤を矢印の方向に4列に塗布し、塗布前後の外用製剤全体の質量差から塗布量を算出した。
3.上記2.を各内容量(略8%、略40%、略80%時)で各6回繰り返し実施し、得られた計18回の塗布量の結果から、1回当たりの平均塗布量を求め、以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
○:平均塗布量が0.05g超(内容液が出しやすく、適度な量が塗布しやすい)
×:平均塗布量が0.05g以下(内容液が出づらく、適度な量が塗布しにくい)
【0055】
なお、表2中、実施例および比較例の実施容器に関する詳細は以下の通りである。
実施容器にはそれぞれの充填量に適した容器を選択し、試験を実施した。
具体的には、実施例2では容器容量100%とした時の、略80%充填時の充填量を80gとして、それ以外の実施例および比較例では略80%充填量を25gとして試験を実施した。
容器首部の傾きが「有」の容器において、胴部の長手方向中心軸に対する首部の傾き角は45°とし、容器首部の傾きが「無」の容器において、上記傾き角は0°とした。
また、塗布部としては、ポリウレタン製またはポリエチレン製の2種類の材質の中栓を使用した。具体的には、実施例4ではポリエチレン製の塗布部、それ以外の実施例および比較例ではポリウレタン製の塗布部を用いた。
【0056】
(全データの相対標準偏差)
外用剤の過剰投与抑制しつつ塗布の度に均等の外用剤を塗布しやすい指標として、相対標準偏差(RSD)を求めた。
具体的には、前述の平均塗布量の測定手順3.の計18回の塗布量の結果から、各外用製剤(各例)のRSDを算出して1回当たりの塗布量のばらつきについて、以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
○:RSDが1.0未満(塗布の度に均等な量を塗布しやすく、投与量をコントロールしやすい)
×:RSDが1.0以上(塗布の度に均等な量を塗布しづらく、投与量をコントロールし難い)
【0057】
【表1】
【0058】
表1中、成分量の単位は質量%である。「リン酸(1→2)」とは、リン酸1mLを水に溶かし、2mLとした場合と同じ比率になるように調製したリン酸水溶液のことであり、「塩酸(1→2)」についても同様である。表1に記載の成分の詳細は以下の通りである。
ロキソプロフェンナトリウム水和物:KOLON LIFE SCIENCE社製
無水エタノール:今津薬品工業社製
ヒプロメロース:METOLOSE 60SH-10000、信越化学工業社製、メトキシ基量28.0-30.0%、ヒドロキシプロポキシ基量7.0-12.0%、2%水溶液の20℃における粘度10000mPa・s
ヒドロキシプロピルセルロース:HPC-H、日本曹達社製
l-メントール:鈴木薄荷社製
【0059】
【表2】
【0060】
表2より、各実施例においては、過剰投与を抑制しつつ、均等かつ適量の外用剤を所望の部位(腕模型)に塗布することができた。
なお、腕模型への塗布時に、塗布部の材料がポリウレタン製である場合の方が、ポリエチレン製である場合よりもスムーズに塗布することができた。
【符号の説明】
【0061】
100 容器
101 胴部
103 首部
105 塗布部
110 容器本体
120 蓋
200 腕模型
図1
図2