(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098384
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】スピーカ装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H04S 1/00 20060101AFI20230703BHJP
H04S 7/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H04S1/00 200
H04S7/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215108
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 直志
(72)【発明者】
【氏名】上野 正人
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA06
5D162AA09
5D162BA06
5D162BA16
5D162CA12
5D162CA26
5D162CC31
5D162EG02
(57)【要約】
【課題】様々な特性を有するスピーカから放音された場合の音声を聴取可能とする。
【解決手段】スピーカ装置10は、左右のスピーカ20L,20Rと、左右のスピーカ20L,20Rの伝達特性が所定の伝達特性となるように、左右のスピーカ20L,20Rに供給されるステレオ音声信号の周波数特性を補正する補正部22とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のスピーカと、
前記左右のスピーカの伝達特性が所定の伝達特性となるように、前記左右のスピーカに供給されるステレオ音声信号の周波数特性を補正する補正部と
を含むスピーカ装置。
【請求項2】
前記補正部は、モノラル音声信号が前記左右のスピーカに供給される場合における前記左右のスピーカの伝達特性と異なる伝達特性となるように、前記ステレオ音声信号を補正する
請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記左右のスピーカの伝達特性が音声信号の周波数の全てに亘って平坦となるように前記ステレオ音声信号を補正する
請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記左右のスピーカの伝達特性が前記左右のスピーカと異なる種類のスピーカの伝達特性となるように前記ステレオ音声信号を補正する
請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記補正部によって補正される前のステレオ音声信号に対し、定位可能な音像の範囲が前記左右のスピーカの間隔より拡張するように音像拡張効果を付与する拡張効果付与部をさらに含む
請求項1から4のいずれか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記補正部によって補正されたステレオ音声信号に対し、定位可能な音像の範囲が前記左右のスピーカの間隔より拡張するように音像拡張効果を付与する拡張効果付与部をさらに含む
請求項1から4のいずれか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記ステレオ音声信号である第1のステレオ音声信号と合成される第2のステレオ音声信号に対し、定位可能な音像の範囲が前記左右のスピーカの間隔より拡張するように音像拡張効果を付与する拡張効果付与部
をさらに含む請求項1から4のいずれか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記ステレオ音声信号である第1のステレオ音声信号と、前記第1のステレオ音声信号と異なる第2のステレオ音声信号とが合成された音声信号に対し、定位可能な音像の範囲が前記左右のスピーカの間隔より拡張するように音像拡張効果を付与する拡張効果付与部をさらに含む請求項1から4のいずれか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記左右のスピーカにモノラル音声信号を供給するモノラルモードにおいて、モノラル音声信号に音響効果を付与する音響効果付与部
をさらに含む請求項1から8のいずれか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項10】
前記音響効果付与部は、入力されたモノラル音声信号に音響効果を付与する第1の音響効果付与部と、入力されたモノラル音声信号にステレオ音響効果を付与する第2の音響効果付与部との少なくとも一方を含む
請求項9に記載のスピーカ装置。
【請求項11】
前記モノラルモードから前記左右のスピーカにステレオ音声信号が供給されるステレオ
モードに遷移した場合に、前記音響効果付与部がオフとなる
請求項9又は10に記載のスピーカ装置。
【請求項12】
左右のスピーカを含むスピーカ装置が、
前記左右のスピーカの伝達特性が所定の伝達特性となるように、入力されたステレオ音声信号の周波数特性を補正することと、
前記左右のスピーカに補正されたステレオ音声信号を供給することと
を含むスピーカ装置の制御方法。
【請求項13】
複数のスピーカにモノラル音声信号を供給するモノラルモードと、前記複数のスピーカにステレオ音声信号を供給するステレオモードとで動作可能なスピーカ装置であって、
前記ステレオモードにおける前記複数のスピーカの伝達特性が前記モノラルモードにおける前記複数のスピーカの伝達特性と異なるように、前記ステレオ音声信号の周波数特性を補正する補正部を含むことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項14】
前記補正部は、前記左右のスピーカの伝達特性が音声信号の周波数の全てに亘って平坦となるように前記ステレオ音声信号を補正する
請求項13に記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モノラルの音声信号(エレキギターの演奏音の信号)、及びステレオ音声信号(例えば、エレキギターの演奏音に外部エフェクタを用いてステレオ効果を付与した左右のチャネルの音声信号)を入力可能であり、これらの音声信号を放音する左右のスピーカを備えるギターアンプがある。また、本願に関連する技術として、特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、様々な特性を有するスピーカから放音された場合の音声を聴取可能なスピーカ装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、左右のスピーカと、前記左右のスピーカの伝達特性が所定の伝達特性となるように、前記左右のスピーカに供給されるステレオ音声信号の周波数特性を補正する補正部とを含むスピーカ装置である。
【0006】
本開示の他の態様は、左右のスピーカを含むスピーカ装置が、前記左右のスピーカの伝達特性が所定の伝達特性となるように、入力されたステレオ音声信号の周波数特性を補正することと、前記左右のスピーカに補正されたステレオ音声信号を供給することとを含むスピーカ装置の制御方法である。
【0007】
また、本開示の他の態様は、複数のスピーカにモノラル音声信号を供給するモノラルモードと、前記複数のスピーカにステレオ音声信号を供給するステレオモードとで動作可能なスピーカ装置であって、前記ステレオモードにおける前記複数のスピーカの伝達特性が前記モノラルモードにおける前記複数のスピーカの伝達特性と異なるように、前記ステレオ音声信号の周波数特性を補正する補正部を含むことを特徴とするスピーカ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、モノラルモードにおけるギターアンプを説明する図であり、
図1Bは、ステレオモードにおけるギターアンプを説明する図である。
【
図2】
図2は、ギターアンプの回路構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、モノラルモードにおけるギターアンプのブロック図である。
【
図4】
図4は、ステレオモードにおけるギターアンプのブロック図である。
【
図5】
図5Aは、モノラルモードにおけるギターアンプの伝達特性(周波数特性)を模式的に示すグラフであり、
図5Bは、ステレオモードにおけるギターアンプの伝達特性の例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、ステレオモードにおけるギターアンプの伝達特性の他の例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、
図4に示したブロック図の変型例を示す図である。
【
図9】
図9は、
図4に示したブロック図の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。実施形態の構成は一例であり、実施形態の構成は、本開示の目的を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0010】
図1Aは、モノラルモードにおけるギターアンプを説明する図であり、
図1Bは、ステレオモードにおけるギターアンプを説明する図である。
【0011】
本実施形態に係るギターアンプ10は、モノラルモードとステレオモードとの二つのモードで動作可能である。
図1Aに示すように、モノラルモードでは、ギターアンプ10には、エレキギター1が直接に接続され、エレキギター1の演奏音に係るモノラルの音声信号がギターアンプ10に入力される。ギターアンプ10は、左チャネル用のスピーカ20L及び右チャネル用のスピーカ20R(左右のスピーカ20L,20R)を備える。モノラルモードでは、モノラルの音声信号が増幅された後、左右のスピーカ20L,20Rに接続され、モノラルの音声信号に基づく音声がスピーカ20L,20Rから放音される。スピーカ20L,20Rは、複数のスピーカの例示であり、左右のスピーカは、複数のスピーカの一形態である。複数のスピーカが3以上のスピーカを備える場合もあり得る。
【0012】
図1Bに示すように、ステレオモードでは、エレキギター1が外部エフェクタ(効果付与装置)2に接続される。外部エフェクタ2には、エレキギター1の演奏音のモノラル音声信号が入力される。外部エフェクタ2は、モノラルの音声信号にリバーブ、ディレイ、コーラスなどのステレオ化の音響効果を付与することで、左チャネル用の音声信号と、右チャネル用の音声信号からなるステレオ音声信号を生成し、ギターアンプ10に入力する。ギターアンプ10では、ステレオ音声信号が増幅された後、左右のスピーカ20L,20Rに接続され、ステレオ音声信号に基づく音声が放音される。但し、外部エフェクタ2が付与する音響効果の種類は、上記例示に制限されない。外部エフェクタ2からステレオ音声信号として出力される左右の音声信号は、同じ信号である場合があり得る。
【0013】
また、ギターアンプ10には、音楽プレーヤ30を接続し、音楽プレーヤ30から出力されたステレオ音声信号を入力可能である。モノラルモードでは、音楽プレーヤ30のステレオ音声信号は、モノラル音声信号と合成(ミキシング)され、ミキシングされた音声信号に基づく音声がスピーカ20L,20Rから放音される。これにより、ユーザは、例えば,自身のエレキギター1の演奏音と、音楽プレーヤ30からのバックバンドの楽音とがミキシングされた音声を聴取することができる。また、ステレオモードでは、音楽プレーヤ30のステレオ音声信号は、外部エフェクタ2からのステレオ音声信号と合成(ミキシング)され、ミキシングされた音声信号に基づく音声がスピーカ20L,20Rから放音される。
【0014】
本実施形態におけるギターアンプ10は、「スピーカ装置」の一例であり、エレキギター1は、「楽器」の一例であり、楽器はギターに限定されない。スピーカ装置はギターアンプに制限されない。音楽プレーヤ30は、CDプレーヤ、ICレコーダ、スマートフォンなどの楽音又は音声の音声信号の再生音声信号を入力可能な機器であるが、これらの例示に制限されない。また、モノラルの音声信号及びステレオの音声信号の発生源に制限はない。
【0015】
図2は、ギターアンプ10の回路構成例を示す図である。
図2において、ギターアンプ10は、入力端子3a,3b,4a,4bと、ADC(Analog Digital Converter)5a及び5bと、DSP(Digital Signal Processor)6と、DAC(Digital Analog Conve
rter)17L及び17Rと、アンプ(AMP)18L及び18Rと、スピーカ20L及び20Rとを備えている。ギターアンプ10は、さらに、DSP6とバスBを介して接続されたCPU(Central Processing Unit)8及び記憶装置9と、CPU8と接続されたユ
ーザインタフェース(UI)7とを備える。
【0016】
入力端子3aは、モノラルモードにおいて、エレキギター1などからのモノラルの音声信号の入力に使用される。また、入力端子3a及び3bは、外部エフェクタ2などからのステレオの音声信号(左右の音声信号)の入力に使用される。本実施形態では、入力端子3aがモノラルモードとステレオモードとで兼用されるが、モノラルの音声信号の入力専用の入力端子と、ステレオの音声信号の専用の入力端子とが設けられてもよい。
【0017】
入力端子4a及び4bは、音楽プレーヤ30などの音声信号のソースからのステレオ音声信号(左右の音声信号)の入力に使用される。以下の説明では、入力端子3a及び3bを用いて入力される音声信号を第1のステレオ音声信号と呼び、入力端子4a及び4bを用いて入力される音声信号を第2のステレオ音声信号と呼ぶ。
【0018】
ADC5a及び5bは、入力される音声信号のアナログ-ディジタル変換を行い、DSP6に入力する。なお、入力端子4a及び4bから入力される第2のステレオ音声信号がディジタル信号である場合、ADC5bは省略可能である。
【0019】
DSP6は、入力される音声信号に対して所定の音声処理を行い、DAC17L及び17Rに出力する。DAC17L及び17Rは、入力される音声信号をディジタル-アナログ変換する。アンプ18L及び18Rは、入力された音声信号を増幅するパワーアンプである。スピーカ20L及び20Rはキャビネットに収容され、入力された音声信号に基づく音声を放音する。
【0020】
記憶装置9は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)からなる主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュメモリなどの補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、プログラムの展開領域、CPU8の作業領域、データ及びプログラムの記憶領域として使用される。補助記憶装置は、データ及びプログラムの記憶領域として使用される。
【0021】
UI7は、キー、ボタン、タッチパネル、つまみ、スライダーなどの入力装置と、ディスプレイなどの出力装置とを含む。入力装置は、データ及び情報の入力に使用され。出力装置は、データ及び情報の出力に使用される。
【0022】
CPU8は、プロセッサの一例であり、プログラムの実行によって、ギターアンプ10の全体の制御、DSP6の音声処理に係る各種のパラメータの設定などの様々な処理を行う。
【0023】
図3は、モノラルモードにおけるギターアンプ10のブロック図である。モノラルモードにおいて、入力端子3a及びADC5aは、モノラル音声信号の入力及びAD変換を行い、ディジタル形式のモノラル音声信号Mを出力するモノラル入力部11として動作する。また、入力端子4a及び4b、並びにADC5bは、第2のステレオ音声信号の入力及びAD変換を行い、第2のステレオ音声信号L3及びR3を出力するステレオ入力部12として動作することができる。モノラルモードにおいて、ステレオ入力部12に対する音声信号の入力は必須ではない。これは、ステレオモードにおいても同様である。
【0024】
また、モノラルモードにおいて、DSP22は、全体音響効果付与部13と、ステレオ音響効果付与部14と、合成部(ミキサ)15a,15b,16a,16bとして動作す
る。
【0025】
全体音響効果付与部13は、モノラル入力部11から入力されるモノラル音声信号Mに対し、予め設定された音響効果を付与する。但し、音響効果を付与せずに音声信号をスルーさせる場合もある。
【0026】
全体音響効果付与部13は、モノラル音声信号を、左右のチャネル用の音声信号L1及びR1として出力することができる。音声信号L1及びR1の出力先は、ミキサ15a及び15b、ステレオ音響効果付与部14、並びにミキサ16a及び16bの中から選択できる。
【0027】
ステレオ音響効果付与部14は、音声信号L1及びL2に対し、リバーブ、ディレイ、コーラスなどの、空間の広がりを持たせるなどの、ステレオ音響効果を付与することで、左右の音声信号L2及びR2を生成する。ステレオ音響効果付与部14にて付与される音響効果の種類と、全体音響効果付与部13にて付与される音響効果の種類は異なる。音声信号L2及びR2は、ミキサ16a及び16bに入力される。
【0028】
なお、全体音響効果付与部13及びステレオ音響効果付与部14の何れか一方又は双方は、「音響効果付与部」の一例である。全体音響効果付与部13は第1の音響効果付与部の一例であり、ステレオ音響効果付与部14は第2の音響効果付与部の一例である。
【0029】
ミキサ15aは、全体音響効果付与部13からの音声信号L1とステレオ入力部12から出力される音声信号L3とのミキシングを行う。ミキサ15bは、全体音響効果付与部13からの音声信号R1とステレオ入力部12から出力される音声信号R3とのミキシングを行う。ミキサ16aは、ミキサ15aからの音声信号とステレオ音響効果付与部14から出力された音声信号L2とのミキシングを行う。ミキサ16bは、ミキサ15bからの音声信号とステレオ音響効果付与部14から出力された音声信号R2とのミキシングを行う。ミキサ16aの出力はDAC17Lに接続され、ミキサ16bの出力はDAC17Rに出力される。
【0030】
左右の音声信号は、DAC17L,17Rでアナログ形式に変換され、アンプ18L,18Rで増幅され、スピーカ20L,20Rから、左右の音声信号に基づく音声が放音される。放音される音声は、ギターアンプ10が備えるスピーカ20L及び20R、これらのスピーカを収容するキャビネットの特有の伝達特性に応じた響き(周波数特性)を有する。
【0031】
図4は、ステレオモードにおけるギターアンプのブロック図である。ステレオモードでは、入力端子3a及び3bと、ADC5aとがステレオ入力部11Aとして動作する。ステレオ入力部11Aは、入力端子3a及び3bから入力された左右の音声信号(第1のステレオ信号)に対するAD変換を行う。ステレオ入力部11Aからは第1のステレオ信号L1及びR1が出力される。入力端子4a及び4b並びにADC5bは、モノラルモードと同様に、ステレオ入力部12として動作し、第2のステレオ信号L3及びR3を出力することができる。
【0032】
ステレオモードにおいて、DSP6は、補正部21と、ミキサ15c及び15dとして動作する。ここに、ギターアンプ10のスピーカ20L,20R及びキャビネットの伝達特性は、
図5Aに示すような周波数特性として表すことができる。補正部21は、スピーカ20L,20R及びキャビネットの伝達特性が
図5Bに示すような音声信号の全ての周波数帯(例えば20~20000Hz:フルレンジと呼ぶ)において平坦となるように、入力される第1のステレオ音声信号に対する補正を行う。補正は、第1のステレオ音声信
号の各周波数帯に対するイコライジングあるいはフィルタリングによって行われる。
【0033】
外部エフェクタ2において、エレキギター1の音声信号に対し、特定のギターアンプから放音させた場合を模擬した音響効果が付与される場合がある。このような第1のステレオ音声信号に対し、ギターアンプ10のスピーカ及びキャビネットの特性に基づく放音がなされると、外部エフェクタ2にて施した音響効果が損なわれるか、変質してしまう可能性があった。補正部21にてギターアンプ10のスピーカ及びキャビネットの特性が平坦となるような音声処理(補正)が第1のステレオ音声信号に対してなされる。これによって、適正な音響効果が付与された音声をスピーカ20L,20Rから出力することが可能となる。
【0034】
但し、補正部21による第1のステレオ音声信号に対する補正の方法に制限はない。このため、例えば、ギターアンプ10のスピーカ及びキャビネットの特性が、
図6に示すようなギターアンプ10と異なる特定のギターアンプの特性となるように補正部21が第1のステレオ音声信号に音声処理(補正)を施すことができる。これによって、特定のギターアンプを用いた場合の音声をスピーカ20L及び20Rから放音することが可能となる。このように、補正部21によって、スピーカ20L,20R及びキャビネットが所望の特性を持つように、音声信号を補正することができる。
【0035】
ミキサ15c及び15dは、第2のステレオ音声信号の入力がある場合に、補正部21から出力される左右の音声信号と、第2のステレオ音声信号L3,R3とのミキシングを行う。
【0036】
拡張効果付与部22は、ミキサ15c,15dから出力された左右の音声信号に対し、スピーカ20L,20Rに供給される音声信号に音像拡張効果を付与する信号処理を施す。これによって、
図7に示すように、聴取者50が知覚可能な定位可能な音像の範囲をスピーカ20L,20R間の外側、例えば、仮想のスピーカ20L-Bと20R-Bとの間に拡大することができる。
【0037】
音像拡張効果を付与する信号処理としては、クロストークキャンセル、HRTFを用いた技術など、公知の様々な技術を適用可能である。音像拡張効果を付与する信号処理は、遅延回路、FIR(Finite impulse response)フィルタなどを用いて実現することがで
きる。
【0038】
ステレオモードにおけるDAC17L及び17R、アンプ18L及び18R、並びにスピーカ20L及び20Rの構成は、モノラルモードと同じである。
図4に示す構成では、第1のステレオ音声信号及び第2のステレオ音声信号の双方に対し、拡張効果を付与することができる。
【0039】
図8は、
図4に示したブロック図の変形図である。
図9は、
図4に示したブロック図の変形図である。
図8に示すように、拡張効果付与部22は、ステレオ入力部11Aと補正部21との間に挿入されて、第1のステレオ音声信号に拡張効果が付与されるようにしてもよい。あるいは、
図9に示すように、拡張効果付与部22は、ステレオ入力部12とミキサ15c及び15dとの間に挿入されて、第2のステレオ音声信号に拡張効果が付与されるようにしてもよい。
【0040】
モノラルモードからステレオモードへの変更、及びその逆は、UI7の操作により行われる。モノラルモードからステレオモードへの変更時には、DSP6における全体音響効果付与部13及びステレオ音響効果付与部14が自動的にオフとなる。
【0041】
実施形態に係るギターアンプ10(スピーカ装置)は、左右のスピーカ20L,20Rと、補正部21とを含む。補正部21は、左右のスピーカ20L,20Rの伝達特性が所定の伝達特性となるように、左右のスピーカ20L,20Rに供給されるステレオ音声信号(第1のステレオ音声信号)の周波数特性を補正する。
【0042】
補正部21は、モノラル音声信号が左右のスピーカ20L,20Rに供給される場合における左右のスピーカ20L,20Rの伝達特性と異なる伝達特性となるように、ステレオ音声信号を補正する。補正部21による周波数特性の補正により、スピーカ20L,20Rやそのキャビネットの伝達特性と異なる伝達特性を有するスピーカから放音される場合の音声を聴取可能となる。このように、実施形態に係るスピーカ装置たるギターアンプ10によれば、様々な特性を有するスピーカから放音された場合の音声を聴取可能となる。
【0043】
補正部21は、左右のスピーカ20L,20Rの伝達特性が音声信号の周波数の全て(例えば20~20000Hz)に亘って平坦となるようにステレオ音声信号を補正してもよい(
図5B参照)。これによって、外部エフェクタ2で付与された音響効果を損なわない状態でスピーカ20L,20Rからの放音を行うことができる。
【0044】
また、補正部21は、左右のスピーカ20L,20Rの伝達特性が左右のスピーカと異なる種類のスピーカの伝達特性となるようにステレオ音声信号を補正してもよい(
図6参照)。これによって、ギターアンプ10以外のギターアンプの特性を有する音声をスピーカ20L,20Rから放音可能となる。
【0045】
ギターアンプ10は、補正部21によって補正される前のステレオ音声信号、又は補正部21によって補正された後のステレオ音声信号に対し、定位可能な音像の範囲が左右のスピーカ20L,20Rの間隔より拡張するように音像拡張効果を付与する拡張効果付与部22をさらに含んでもよい。これによって、スピーカ形態で、好適な音声聴取を行うことができる。
【0046】
拡張効果付与部22は、ステレオ音声信号である第1のステレオ音声信号と合成される第2のステレオ音声信号に音像拡張効果付与を行ってもよい。また、拡張効果付与部22は、第1のステレオ音声信号と第2のステレオ音声信号とが合成された音声信号に音像拡張効果を付与してもよい。
【0047】
ギターアンプ10は、左右のスピーカ20L,20Rにモノラル音声信号を供給するモノラルモードにおいて、モノラル音声信号に音響効果を付与する音響効果付与部を含んでもよい。音響効果付与部は、例えば、入力されたモノラル音声信号に音響効果を付与する全体音響強化付与部13(第1の音響効果付与部の一例)と、入力されたモノラル音声信号にステレオ音響効果を付与するステレオ音響効果付与部14(第2の音響効果付与部の一例)との少なくとも一方を含むことができる。音響効果付与部について、モノラルモードから左右のスピーカにステレオ音声信号が供給されるステレオモードに遷移した場合にオフとなる構成を採用してもよい。
【0048】
また、実施形態によれば、左右のスピーカ20L,20Rを含むスピーカ装置が、左右のスピーカ20L,20Rの伝達特性が所定の伝達特性となるように、入力されたステレオ音声信号の周波数特性を補正することと、左右のスピーカ20L,20Rに補正されたステレオ音声信号を供給することとを含むスピーカ装置の制御方法を提供することができる。
【0049】
また、実施形態によれば、複数のスピーカ20L、20Rにモノラル音声信号を供給す
るモノラルモードと、複数のスピーカ20L、20Rにステレオ音声信号を供給するステレオモードとで動作可能なスピーカ装置であって、ステレオモードにおける複数のスピーカ20L、20Rの伝達特性がモノラルモードにおける複数のスピーカ20L、20Rの伝達特性と異なるように、ステレオ音声信号の周波数特性を補正する補正部21を含むことを特徴とするスピーカ装置を提供することができる。実施形態にて示した構成は、目的を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・エレキギター
10・・・ギターアンプ
13・・・全体音響効果付与部
14・・・ステレオ音響効果付与部
20L,20R・・・スピーカ
21・・・補正部
22・・・拡張効果付与部
30・・・音楽プレーヤ