(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009843
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】融雪装置
(51)【国際特許分類】
E01H 5/10 20060101AFI20230113BHJP
H05B 3/42 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E01H5/10 Z
H05B3/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113457
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】505128289
【氏名又は名称】株式会社シティ企画
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】戸村 繁博
(72)【発明者】
【氏名】戸村 和博
(72)【発明者】
【氏名】戸村 剛
【テーマコード(参考)】
2D026
3K092
【Fターム(参考)】
2D026CL03
3K092PP20
3K092QA01
3K092VV33
(57)【要約】
【課題】複数の発熱体を直列に接続する従来のものでは、
図7に示すように、表面層Bの地表面温度が低く少量の水Wしか生じないので、その水が堆積層Cに吸い上げられて、表面層Bと堆積層Cとの間に断熱層となる空間Gが生じてしまう。これにより融雪効率が低下するという不具合が生じる。
【解決手段】各発熱体を並列に接続して一部の発熱体に多量の電流を流して表面層Bの地表面温度を上げることによって、多量の水Wを生じさせて一部の水Wが堆積層Cに吸い上げられても、表面層Bに水Wが残存して上述の空間が生じないようにした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設した複数本の発熱体に通電して地表面の温度を上昇させて地表面に堆積した雪を融雪する融雪装置において、上記複数本の発熱体を並列に並べて埋設すると共に、これら複数本の発熱体の一部の発熱体に通電し、かつ、その通電する発熱体を順次切り替えていくことを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
上記一部の発熱体に通電した状態での発熱量を、上記複数の発熱体を直列に接続した場合に設定される発熱量と同じ発熱量になるように設定したことを特徴とする請求項1に記載の融雪蔵置。
【請求項3】
上記一部の発熱体に通電する状態とは、1本の発熱体のみに通電する状態が繰り返される状態と、複数本の発熱体に通電する状態が交互に繰り返される状態とを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の融雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場等の地中に発熱体を埋設して、その駐車場等に堆積した雪を溶かすための融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地表面に堆積した雪を溶かすためには、地表面に水を噴出させる方式のほかに、地中に電気ヒータなどの発熱体を埋設し、その発熱体に通電することによって埋設されている範囲の地表面の温度を上昇させ、地表面に堆積している雪を溶かすものが知られている。
【0003】
このような発熱体を埋設するものでは、長尺の複数本の発熱体を並列に埋設し、各発熱体を相互に直列に接続して、各発熱体を同時に均等に発熱させて発熱体が埋設されている範囲の融雪を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-96430号公報(段落[0040]、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
融雪装置を設計する際には、発熱体が埋設されている範囲の融雪能力を予め設定し、その設定された発熱量になるように各発熱体への通電量が設定される。そのため、全ての発熱体の発熱量が、発熱体が埋設されている範囲に分散されるため、特に通電開始時点では地表面の温度上昇速度が遅くなる。
【0006】
図7を参照して、土壌Aにシース管式の発熱体Hが埋設されている場合に、内部の電熱線H2が通電により発熱すると、その発熱によって生じた熱エネルギはシース管H1から土壌Aに伝達され、土壌A中を伝導した後、コンクリートやアスファルトからなる表面層Bに伝達される。表面層Bに伝達された熱エネルギは表面層B内を伝導して表面層Bの地表面の温度を上昇させる。
【0007】
一方、雪の堆積層Cは均一な組成ではなく、雪などの氷粒C1が多孔質状に堆積されている。従って、氷粒C1の周囲には空間が存在する。上述のように表面層Bの地表面の温度上昇速度が遅いと、地表面に接する氷粒C1の融解量が少なくなり、融解して生じた水Wは堆積層Cの多孔質部分に吸い上げられて、表面層Bと堆積層Cとの間に空間Gが生じてしまって、表面層Bから堆積層Cへの熱伝達が阻害される。これにより融雪効率が低下するという不具合が生じる。
【0008】
なお、発熱体Hでの発熱量を増加させて表面層Bの地表面の温度上昇速度を上げて、多くの氷粒C1を融解させて空間Gが生じないようにすることも考えられるが、それでは当初設定した融雪能力を超える発熱量を発生させることになり、融雪装置がオーバースペックとなり、また省エネ上好ましくない。
【0009】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、全体として発熱量を増加させることなく堆積した雪を効率よく溶かすことのできる融雪装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明による融雪装置は、地中に埋設した複数本の発熱体に通電して地表面の温度を上昇させて地表面に堆積した雪を融雪する融雪装置において、上記複数本の発熱体を並列に並べて埋設すると共に、これら複数本の発熱体の一部の発熱体に通電し、かつ、その通電する発熱体を順次切り替えていくことを特徴とする。
【0011】
全ての発熱体を同時に発熱させるのではなく、一部の発熱体に電力を集中させて、通電されている発熱体の上部の地表面温度を従来のものより高温にすることによって地表面から積雪への熱伝達効率を改善する。
【0012】
なお、上記一部の発熱体に通電した状態での発熱量を、上記複数の発熱体を直列に接続した場合に設定される発熱量と同じ発熱量になるように設定することによって、全体としての消費電力を従来のものより増加させない。
【0013】
具体的には、上記一部の発熱体に通電する状態とは、1本の発熱体のみに通電する状態が繰り返される状態と、複数本の発熱体に通電する状態が交互に繰り返される状態を含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明は、発熱体が埋設されているエリアの一部に発熱量を集中させてその部分の地表面温度を高くして、地表面から堆積した雪への熱伝達量を増加させて、特に通電初期における融雪効率を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明における発熱体の埋設状態の一実施の形態を示す図
【
図6】本発明による融雪装置での地表面近傍での融雪状態を示す図
【
図7】従来の融雪装置での地表面近傍での融雪状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明による融雪装置は、土壌A中に複数本の発熱体Hを互いに平行になるように、かつ同じ深さに埋設した。本実施の形態では発熱体Hとして10本の発熱体を配設したが、この本数に限定されるものではない。各発熱体Hは通電することによって発熱する電熱線を内蔵しており、各発熱体Hは、
図2に示すように、電源装置PSに対して並列に配線されており、各発熱体Hへの通電量及び通電タイミングは電源装置PSによって制御される。なお、この電源装置PSは外部の電源PWから電力の供給を受けるように構成されている。
【0017】
従来のものでは上記10本の発熱体Hは直列に接続されており、各発熱体Hに流れる電流は同じにあるので、各発熱体での発熱量は全て同じにある。ここで、例えば従来のものでは各発熱体Hに対して1Aの電流を流すと仮定すると、同じ消費電力量であれば1本のみの発熱体に対して10Aの電流を流すことができる。そうすると、1本あたりの発熱量は従来のものと比較して10倍になる。
【0018】
図3に示すように、1本のみに所定時間通電した後、その発熱体への通電を停止して他の発熱体、例えば隣接する発熱体におなじく10Aの電流を所定時間流す操作を順次繰り返すようにした。
【0019】
なお、通電パターンは
図3に示すものに限られず、例えば、
図4に示すように、発熱体1本に対して所定時間5A流し、その後10Aを所定時間流し、最後に5Aを所定時間流すパターンを各発熱体に対して順次切り替えていくようにしてもよい。なお、この
図4に示すパターンでは同時に2本の発熱体に通電する時間帯が生じるが、その通電時間帯では各発熱体に5Aずつ流して合計で10Aになるように制御する。
【0020】
あるいは
図5に示すように、同時に2本ずつ通電するパターンを繰り返してもよい。この通電パターンでは各発熱体に対して5Aずつ流して、通電量の合計が10Aを超えないようにした。
【0021】
上記いずれの通電パターンであっても従来の融雪装置と比較して、
図6に示すように、各発熱体H内の電熱線H2での発熱量が増加する。すると、発熱体Hのシース管H1の温度が従来のものより高くなり、土壌Aから表面層Bへの熱伝達量が増加して、表面層Bの地表面温度は従来のものより高くなる。そのため、堆積層Cの氷粒C1の融雪量が増加して、従来の融雪装置を作動させた場合より多量の水Wが発生して、一部の水Wが氷粒C1の隙間に吸い上げられても、表面層Bの地表面に水Wが残存して、その残存した水Wを介して熱が堆積層Cへの伝達される。なお、上述のように1本の発熱体Hに通電されると、その後一定時間通電が停止する期間が生じるが、一旦融雪にして生じた水Wが再凝固するためには凝固熱を放熱する必要があるので、凝固する前に次の通電タイミングとなって再び表面層Bの地表面が加熱される。
【0022】
このように本発明による融雪装置であれば、地表面と堆積層Cとの間に断熱層となる空間が生じないので、発熱体で発生した熱量を効率よく堆積層Cへ伝達させることができる。そのため、従来の融雪蔵置よりも融雪効率を上げることができる。
【0023】
ところで、上記
図5に示したように、2本の発熱体に対して同じタイミングで同じ通電量の電流を流す場合には、それら2本の発熱体を直列に接続して対となし、5対のはうねつたいを電源装置PSに対して並設に接続してもよく、あるいは1つ置きに5本の発熱体を一組として同じタイミングで同じ電流(2A)流す場合には、その5本の発熱体を直列に接続し、2組の発熱体を電源装置に対して並列に接続して、各組に対して交互に通電するようにしてもよい。
【0024】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0025】
A 土壌
B 表面層
C 堆積層
C1 氷粒
G 空間
H 発熱体
H1 シース管
H2 電熱線
PS 電源装置
PW 電源
W 水