(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098452
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ヒートシンク構造及び該ヒートシンク構造に用いるヒートシンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20230703BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20230703BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 C
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215222
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】506095456
【氏名又は名称】APSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀満
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 剛文
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅夫
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB05
5E322BA01
5E322BB05
5F136BA07
5F136BA14
5F136BA23
5F136BA24
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】複数の山部及び谷部が形成された金属板からなるコルゲートタイプのヒートシンク板を備えたヒートシンク構造において、製造が容易で優れた冷却性能が得られるようにする。
【解決手段】冷却用流体の流動方向に延びる複数の山部3及び谷部4が、前記流動方向と直交する方向に交互に並んで設けられた金属板からなるヒートシンク2を備え、前記山部3の内側及び前記谷部4の内側に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる流通路30,40がそれぞれ形成され、前記山部3の内側には、下流側流通路の断面積が上流側流通路よりも絞られることによって前記冷却用流体の流速を増大させる流速増大部が、前記流通路30の少なくとも途中部に設けられているヒートシンク構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用流体を流動させる流動手段と、冷却用流体の流動方向に延びる複数の山部及び谷部が、前記流動方向と直交する方向に交互に並んで設けられた金属板からなるコルゲート型のヒートシンクとを備え、
前記ヒートシンクは、
前記山部の内側及び前記谷部の内側に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる流通路がそれぞれ形成され、
前記山部の内側の前記流通路の少なくとも途中部に、前記下流側に位置する流通路の断面積を前記上流側よりも絞って前記冷却用流体の流速を増大させる流速増大部が設けられているヒートシンク構造。
【請求項2】
前記流速増大部は、前記流通路を構成する前記山部の左右側壁同士が、前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が近づいて構成されることにより断面積が絞られている請求項1記載のヒートシンク構造。
【請求項3】
前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が、前記山部の頂部の左右幅が狭くなるように形状変化しており、これにより前記左右側壁同士が近づいて構成されている請求項2記載のヒートシンク構造。
【請求項4】
前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が、前記山部の左右側壁の下端部を互いに近づけて配置され、これにより前記左右側壁同士が近づいて構成されている請求項2記載のヒートシンク構造。
【請求項5】
冷却用流体を流動させる流動手段と、冷却用流体の流動方向に延びる複数の山部及び谷部が、前記流動方向と直交する方向に交互に並んで設けられた金属板からなるヒートシンクとを備え、
前記ヒートシンクは、
それぞれ前記山部及び谷部が設けられた金属板からなるコルゲート型の第1のヒートシンク板及び第2のヒートシンク板とを有し、
前記第1のヒートシンク板および第2のヒートシンク板の前記山部同士、谷部同士を上下に重ねることで、前記第1のヒートシンク板の各山部とこれに対応する第2のヒートシンクの各山部との間に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる山部間流通路がそれぞれ形成され、且つ前記第1のヒートシンク板の各谷部とこれに対応する第2のヒートシンクの各谷部との間に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる谷部間流通路がそれぞれ形成され、
前記第1のヒートシンク板及び第2のヒートシンク板が、前記上下に重ねる深さを上流側の位置よりも下流側の位置が深くなるように流動方向に沿って斜めに重ねて配置され、これにより上下の山部の上部同士、谷部の底部同士が次第に近づき、前記山部間流通路および谷部間流通路は、いずれも下流側に位置する断面積が上流側よりも絞られて前記冷却用流体の流速を増大させる流速増大部として構成されているヒートシンク構造。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載のヒートシンク構造に用いるヒートシンクの製造方法であって、
前記流通路の全長にわたって同じ断面形状の山部および谷部を有するコルゲート型の板体を形成した後、
該板体をプレス加工することにより、前記ヒートシンクを形成する、ヒートシンクの製造方法。
【請求項7】
請求項3記載のヒートシンク構造に用いるヒートシンクの製造方法であって、
前記流通路の全長にわたって同じ断面形状の山部および谷部を有するコルゲート型の板体を形成した後、
該板体を、山部の左右の側壁が下流側ほど大きく寄るようにプレス加工することにより、前記ヒートシンクを形成する、ヒートシンクの製造方法。
【請求項8】
請求項4記載のヒートシンク構造に用いるヒートシンクの製造方法であって、
前記流通路の全長にわたって同じ断面形状の山部および谷部を有するコルゲート型の板体を形成した後、
該板体を、下流側ほど隣接する山部同士、谷部同士を近づけるように変形させることにより、前記ヒートシンクを形成する、ヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲート型のヒートシンクを備える強制流動タイプのヒートシンク構造、および該ヒートシンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、強制流動させる冷却用流体の流路内に配設するコルゲート型のヒートシンクについて、山部と谷部の間の中間壁部に切り起こし片からなるルーバを設け、流動する冷却用流体(冷却媒体)をルーバに沿って旋回させて温度分布を均一化させるようにしたパワーモジュール用ヒートシンクが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、冷却用流体の流量にもよるが、前記切り起こし片からなるルーバによって流動が妨げられることに起因し、とくに山部内側は熱がこもりやすく、却って冷却性能が悪化する可能性がある。また、ルーバを形成する加工は難しく、製造コストも上昇するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、コルゲート型のヒートシンクを備える強制流動タイプのヒートシンク構造について、製造が容易でコストを抑えることができ、且つ優れた冷却性能が得られるヒートシンク構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 冷却用流体を流動させる流動手段と、冷却用流体の流動方向に延びる複数の山部及び谷部が、前記流動方向と直交する方向に交互に並んで設けられた金属板からなるコルゲート型のヒートシンクとを備え、前記ヒートシンクは、前記山部の内側及び前記谷部の内側に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる流通路がそれぞれ形成され、前記山部の内側の前記流通路の少なくとも途中部に、前記下流側に位置する流通路の断面積を前記上流側よりも絞って前記冷却用流体の流速を増大させる流速増大部が設けられているヒートシンク構造。
【0007】
(2) 前記流速増大部は、前記流通路を構成する前記山部の左右側壁同士が、前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が近づいて構成されることにより断面積が絞られている(1)記載のヒートシンク構造。
【0008】
(3) 前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が、前記山部の頂部の左右幅が狭くなるように形状変化しており、これにより前記左右側壁同士が近づいて構成されている(2)記載のヒートシンク構造。
【0009】
(4) 前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が、前記山部の左右側壁の下端部を互いに近づけて配置され、これにより前記左右側壁同士が近づいて構成されている(2)記載のヒートシンク構造。
【0010】
(5) 冷却用流体を流動させる流動手段と、冷却用流体の流動方向に延びる複数の山部及び谷部が、前記流動方向と直交する方向に交互に並んで設けられた金属板からなるヒートシンクとを備え、前記ヒートシンクは、前記山部及び谷部が設けられた金属板からなる第1のヒートシンク板及び第2のヒートシンク板とを有し、前記第1のヒートシンク板および第2のヒートシンク板の前記山部同士、谷部同士を上下に重ねることで、前記第1のヒートシンク板の各山部とこれに対応する第2のヒートシンクの各山部との間に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる山部間流通路がそれぞれ形成され、且つ前記第1のヒートシンク板の各谷部とこれに対応する第2のヒートシンクの各谷部との間に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる谷部間流通路がそれぞれ形成され、前記第1のヒートシンク板及び第2のヒートシンク板が、前記上下に重ねる深さを上流側の位置よりも下流側の位置が深くなるように流動方向に沿って斜めに重ねて配置され、これにより上下の山部の上部同士、谷部の底部同士が次第に近づき、前記山部間流通路および谷部間流通路は、いずれも下流側に位置する断面積が上流側よりも絞られて前記冷却用流体の流速を増大させる流速増大部として構成されているヒートシンク構造。
【発明の効果】
【0011】
以上にしてなる本願発明に係るヒートシンク構造は、とくに熱がこもりやすい山部の内側の流通路の少なくとも途中部に、下流側に位置する流通路の断面積を上流側よりも絞って冷却用流体の流速を増大させる流速増大部が設けられているので、冷却用流体が前記流通路を流動する際に、吸熱に寄与する山部内面付近を通過する単位時間あたりの流量が増加する。すなわち、側壁の近傍により多くの冷却用流体を効率よく集めて吸熱させることができ、放熱の効率を高めることができる。また、このような流速増大部は山部の形状を加工するだけの簡単な加工で実現することが可能であり、製造コストの増大化も抑えることができる。
【0012】
ここで、前記流速増大部が、前記流通路を構成する前記山部の左右側壁同士が、前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が近づいて構成されることにより断面積が絞られているものでは、このような形態は山部左右側壁をプレス加工して容易に加工することが可能であり、製造コストの増大化を抑えつつ容易に実現できるとともに、当該流通路を通過する冷却用流体は前記流速増大部によって山部内面に押し付けられるように寄せられて該内面から熱を効率よく吸熱し、放熱の効率を増大することができる。
【0013】
とくに、前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が、前記山部の頂部の左右幅が狭くなるように形状変化しており、これにより前記左右側壁同士が近づいて構成されているものでは、このような形態は一旦流通路の全長にわたって同じ断面形状の山部を形成した後に、左右の側壁を下流側ほど大きく寄せるようにプレス加工することで容易に実現することが可能であり、コスト増加を避けることができるとともに、流動方向に沿って山部内壁の表面積が同じままで流速を増すことができ、優れた冷却効率を得ることができる。
【0014】
また、前記上流側の位置よりも下流側の位置の方が、前記山部の左右側壁の下端部を互いに近づけて配置され、これにより前記左右側壁同士が近づいて構成されているものでは、このような形態は一旦流通路の全長にわたって同じ断面形状の山部、谷部を形成した後に、下流側の隣接する山部同士を近づける(結果、谷部同士も近づく)ように変形させるだけで、プレス加工等することなく容易に実現することが可能であり、コスト増加を避けることができる。また、このようなヒートシンクは、山部内面だけでなく谷部内面も下流側ほど断面積が小さくなり、谷部内面にも流速増大部が構成されるため、冷却効率をより高めることができる。さらに、このようなヒートシンクも、流動方向に沿って山部内壁および谷部内壁の表面積がそれぞれ同じままで流速を増すことができ、優れた冷却効率を得ることができる。
【0015】
また、山部及び谷部が設けられた金属板からなる第1のヒートシンク板及び第2のヒートシンク板とを有し、前記第1のヒートシンク板および第2のヒートシンク板の前記山部同士、谷部同士を上下に重ねることで、前記第1のヒートシンク板の各山部とこれに対応する第2のヒートシンクの各山部との間に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる山部間流通路がそれぞれ形成され、且つ前記第1のヒートシンク板の各谷部とこれに対応する第2のヒートシンクの各谷部との間に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる谷部間流通路がそれぞれ形成され、前記第1のヒートシンク板及び第2のヒートシンク板が、前記上下に重ねる深さを上流側の位置よりも下流側の位置が深くなるように流動方向に沿って斜めに重ねて配置され、これにより上下の山部の上部同士、谷部の底部同士が次第に近づき、前記山部間流通路および谷部間流通路は、いずれも下流側に位置する断面積が上流側よりも絞られて前記冷却用流体の流速を増大させる流速増大部として構成されているヒートシンク構造では、冷却用流体が前記山部間流通路および谷部間流通路をそれぞれ流動する際に、吸熱に寄与する各通路内壁付近を通過する単位時間あたりの流量が増加し、すなわち、各通路内壁の近傍により多くの冷却用流体を効率よく集めて吸熱させることができ、放熱の効率を高めることができる。また、このような形態はコルゲート状に加工した第1のヒートシンク板および第2のヒートシンク板を重ねて配置させるだけで、各ヒートシンク板をプレス加工したり変形させる等することなく容易に実現することが可能で、コスト増加を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の代表的実施形態に係るヒートシンク構造を示す斜視図。
【
図5】同じくヒートシンク構造に用いるヒートシンクの製造手順を示す説明図。
【
図6】同じくヒートシンクの山部の形状の変形例を示す説明図。
【
図7】同じくヒートシンクの流速増大部の形態の変形例を示す説明図。
【
図8】同じくヒートシンクの流速増大部の形態の他の変形例を示す説明図。
【
図9】同じくヒートシンクの流速増大部の形態のさらに他の各変形例を示す説明図。
【
図10】本発明のヒートシンク構造の変形例を示す斜視図。
【
図13】同じく変形例にかかるヒートシンクを変形させる様子を示す説明図。
【
図14】本発明のヒートシンク構造の他の変形例を示す斜視図。
【
図17】同じく変形例にかかるヒートシンクを製造する手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の代表的実施形態にかかるヒートシンク構造s1は、
図1~
図4に示すように、冷却用流体9を流動させる流動手段1と、冷却用流体9の流動方向に延びる複数の山部3及び谷部4が、前記流動方向と直交する方向に交互に並んで設けられた金属板からなるコルゲート型のヒートシンク2とを備えている。山部3の内側及び谷部4の内側には、流動方向の上流側から下流側に向かって延びる流通路30、40がそれぞれ形成されている。山部3は断面視略逆U字状の部分、谷部4は断面視略U字状の部分をいい、本例では、側壁34は共通とされ、山部3は左右側壁34と頂部(上部)の頂壁33とで構成され、谷部4は左右側壁34と底部(下部)の底壁41とで構成される部分をいう。
【0018】
特に、山部3の内側の流通路30の少なくとも途中部に、下流側に位置する流通路30の断面積を上流側よりも絞って冷却用流体9の流速を増大させる流速増大部6が設けられている。このように、熱がこもりがちな山部3の内側の流通路30に流速増大部6が設けられることで、冷却用流体9は流通路30を流動する際、吸熱に寄与する山部3内面付近を通過する単位時間あたりの流量が増加することとなる。すなわち、山部3の側壁34の近傍により多くの冷却用流体9を効率よく集めて該側壁34より熱を吸熱させることができ、放熱の効率を高めることができる。
【0019】
流速増大部6は、
図1ならびに
図2及び
図3の断面図に示すように、流通路30を構成する山部3の左右側壁34同士が、上流側の位置よりも下流側の位置の方が近づいて構成されることにより、流通路30の断面積が徐々に絞られることで構成されている。より具体的には、
図2及び
図3の断面図を比較して分かるように、上流側の位置よりも下流側の位置の方が、山部3の頂部(頂壁33)の左右幅が狭くなるように形状変化し、これにより左右側壁34同士が下流側ほど近づいて構成されている。このような形態によれば、流動方向に沿って山部内壁の表面積(内面面積)が同じまま、流速を増すことができ、優れた冷却効率を得ることができる。
【0020】
より詳しく説明すれば、流通路30の断面形状が、上流側の矩形から下流側の三角形に変化するに応じて、流通路30の中心点(重心)Oから、流通路30の左右に位置する側壁34,34までの距離の間隔も変化し、
図3に示す下流側の位置では、その中心点Oから側壁34,34までの距離が、
図2に示す上流側の位置よりも近くなる。したがって、冷却用流体の流速が速くなる下流側において、より多くの冷却用流体を側壁34,34の近傍に効率よく集めて吸熱させることにより、冷却性能を効果的に向上させることができるのである。
図6に示すように、側壁34を内側凸に湾曲する形に変化させることで、断面積をさらに絞るように構成したものも好ましい例である。
【0021】
このようなヒートシンク2は、
図5に示すように、流通路の全長にわたって同じ断面形状の山部103および谷部104を有するコルゲート型の板体102を形成した後、該板体102を更にプレス加工する、具体的には山部103の左右の側壁34が下流側ほど大きく寄るようにプレス加工することで、ヒートシンク2を形成する方法により、複雑な設計や加工を必要とすることなく、きわめて容易に加工することができる。板体102には、本出願人がすでに提案している特開2018-129484号公報に記載のコルゲート型のヒートシンク板を利用できる。
【0022】
なお、流速増大部6は、流通路30の全長に亘って形成すること以外に、一部のみに形成することもできる。たとえば
図7は、下流側半分の領域にのみ構成すした例を示している。また、徐々に断面積を絞って流速を高めるもの以外に、
図8や
図9(a)に示すように1又は複数箇所で段差状に断面積を小さくして流速を高めるもことも好ましい例である。さらに、
図9(b)、(c)に示すように、流速増大部6の下流側に、断面積を拡大する緩和領域R1を設けたものも、抵抗をなくして流速増大部6における流通を促進できる点で好ましい例である。ここでは徐々に断面積を拡大する例を示したが、段差状に拡大する構造も好ましい。
【0023】
本実施形態のヒートシンク2は、上記公報のヒートシンク板と同様、冷却用流体の流動方向、つまり山部3の長さ方向に延びる貫通溝31が、山部3の上辺に設けられ延びる貫通溝31が設けられるとともに、該貫通溝31の開口縁部から上方に起立する一対の起立片32,32が設けられている。この起立片32,32は、金属板をプレス加工することにより、容易かつ低コストに形成することができる。
【0024】
この起立片32は、具体的には、ヒートシンク2の一端部(冷却用流体の供給側)と中間部と他端部(冷却用流体の排出側)とを除く領域において、二つの長い貫通溝31が、山部3の上辺に沿ってその長さ方向に延びるように形成されている(
図1参照)。貫通溝31の長さや数、間隔は適宜決めることができ、例えば、山部3の長さ方向に方向に延びる三つ以上の貫通溝を設けてもよいし、一つの貫通溝を設けてもよい。一つ又は二つ以上の山部3を飛ばして貫通溝31および起立片32,32を形成してもよい。貫通溝31および起立片32,32を省略とした構造としてもよい。
【0025】
このような貫通溝31は、供給される冷却用流体の流量にもよるが、上方に位置する冷たい空気等からなる冷却用流体を、ベンチュリー効果に応じて内部圧力が低下した流通路30内にスムーズに流入させる効果や、流通路30を通れない余分の流体を吸熱させながら排出させることができる効果が期待される。
【0026】
なお、本発明のヒートシンク(2)の山部(3)内側の流通路(30)とは、このような貫通溝31の外側の起立片32、32の間の空間などは除外するものとし、その断面積も同じく除外して考える。この場合、貫通溝31が存在する位置では内側の表面積としては減じることになるが、その分、起立片が上方に立ち上がっているため、この起立片を含めれば表面積は流通方向に一定と考えることができるのである。
【0027】
このようなヒートシンク2は、高い熱伝導性を有する銅板又はアルミニュウム板等の金属板より構成される。そして、LED又はCPU等からなる冷却対象物(図示せず)に固定したベース部材5に対して、谷部4の底壁41が密着した状態でカシメや固定ピン51等により固定されている。ベース部材5は、銅板又はアルミニュウム板等の高い熱伝導性を有する素材からなる。ベース部材5を省略し、谷部4の底壁41を図外の冷却対象物に直接、当接させるようにしてもよい。
【0028】
流動手段1は、ヒートシンク2の上流側(冷却側流体の入口側)に配置され、山部3及び谷部4に冷却用流体9を送り込む送風ファンや、下流側(出口側)から冷却用流体9を吸引する吸引ファン、さらに必要に応じて設けられる、入口側、出口側の流体流路などから構成される。
【0029】
図10~
図13は、本発明に係るヒートシンク構造の変形例を示している。この変形例にかかるヒートシンク構造s2のヒートシンク2は、
図11及び
図12を比較して分かるように、上流側の位置よりも下流側の位置の方が、山部3の左右側壁34の下端部34aを互いに近づけて配置されたものであり、これにより左右側壁34同士が近づいて構成されている。
【0030】
このようなヒートシンク2は、
図13に示すように、一旦、上述のように流通路の全長にわたって同じ断面形状の山部103および谷部104を有するコルゲート型の板体102を形成した後、下流側の隣接する山部同士を近づける(結果、谷部同士も近づく)ように変形させるだけで、プレス加工等することなく容易に実現することができる。
【0031】
このヒートシンク2は、山部3内面だけでなく谷部4内面の流通路40も下流側ほど断面積が小さくなり、谷部4内面にも流速増大部6Aが構成されるため、冷却効率をより高めることができる。さらに、このようなヒートシンク2も、流動方向に沿って山部3内壁および谷部4内壁の表面積がそれぞれ同じままで流速を増すことができ、優れた冷却効率を得ることができる。本例でも流通路の途中部に貫通溝31や起立片32が設けられているが、これらの効果は上述のとおりである。
【0032】
図14~
図17は、本発明に係るヒートシンク構造の他の変形例を示している。この変形例にかかるヒートシンク構造s3のヒートシンク2は、山部3A及び谷部4Aが設けられた金属板からなるコルゲート型の第1のヒートシンク板24と、同様に山部3B及び谷部4Bが設けられた金属板からなるコルゲート型の第2のヒートシンク板25とを、互いにの山部3A,3B同士、谷部4A,4B同士を上下に重ねることで、第1のヒートシンク板24の各山部3Aとこれに対応する第2のヒートシンク板25の各山部3Bとの間に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる山部間流通路70がそれぞれ形成され、且つ第1のヒートシンク板24の各谷部4Aとこれに対応する第2のヒートシンク板25の各谷部4Bとの間に、前記流動方向の上流側から下流側に向かって延びる谷部間流通路80がそれぞれ形成されたものである。
【0033】
とくに、第1のヒートシンク板24及び第2のヒートシンク板25は、
図15及び
図16を比較して分かるように、前記上下に重ねる深さ(図中符号L)を上流側の位置よりも下流側の位置の深さが深くなるように流動方向に沿って斜めに重ねて配置され、これにより上下の山部3A,3Bの上部(頂壁33、33)同士、谷部4A,4Bの底部(底壁41、41)同士が下流側に向けて次第に近づき、山部間流通路70および谷部間流通路80は、いずれも下流側に位置する断面積が上流側よりも絞られて冷却用流体9の流速を増大させる流速増大部6、6Aとして構成されている。
【0034】
本例のヒートシンク構造s3では、冷却用流体9が山部間流通路70および谷部間流通路80をそれぞれ流動する際に、吸熱に寄与する各通路内壁付近を通過する単位時間あたりの流量が増加し、すなわち、各通路内壁の近傍により多くの冷却用流体を効率よく集めて吸熱させることができ、放熱の効率を高めることができる。
【0035】
また、このようなヒートシンク2は、
図17に示すように、コルゲート状に加工した第1のヒートシンク板24および第2のヒートシンク板25を上下に重ねて配置させるだけで、各ヒートシンク板をプレス加工したり変形させる等することなく、容易に実現することが可能で、コスト増加を避けることができる。
【0036】
なお、本例では、下方の第1のヒートシンク板24に、上述した各例と同様、山部3Aの長さ方向に延びる貫通溝31と起立片32,32とが設けられている(
図17参照)。一方、上方の第2ヒートシンク板24には、前記貫通溝31及び起立片32,32が設けられておらず、山部3の上辺が頂壁33により閉塞されている。
【0037】
なお、下方に位置する第1のヒートシンク板24の山部3Aに設けられた貫通溝31及び起立片32,32を省略することも可能である。しかし、第1のヒートシンク板24の山部3Aに貫通溝31及び起立片32,32を設けた場合には、第1のヒートシンク板24の山部3A内側を流動する冷却用流体を、ベンチュリー効果で上側の山部間流通路70内にスムーズに流入させ、熱がこもってしまうことなく、該流通路70を通じて冷却用流体を排出させることができ、効果的である。
【0038】
また、第2のヒートシンク板25の谷部4Bの底部に、下方に突出する起立片及び貫通溝を設ければ、上記谷部間流通路80から当該貫通溝を通じて上方の第2のヒートシンク板25の谷部4B内側の流通路に、冷却用流体を排出したり流入させたりして、熱のこもりをより確実に防止できる点で効果的である。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施の例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。たとえば、以上の説明ではヒートシンクを
図5に示すようにまずヒートシンク板102をプレス加工してから、さらにプレス等で変形加工する例について説明したが、ヒートシンク板102を経ることなく本発明にかかる流速増大部を備えるヒートシンク2をプレス加工等して製造することも勿論可能である。
【実施例0040】
次に、本発明にかかるヒートシンク構造のサンプルである実施例1と、実施例1のヒートシンクを従来からの流速増大部を有しないものとしたサンプルである比較例1について、冷却性能試験を行った結果について説明する。
【0041】
(サンプル)
実施例1は、
図8に示したヒートシンクを有するものとした。比較例1は、
図5の上側に示した変形加工前の状態のものとした。いずれも山部、谷部の長さ、数、板の素材、厚み等を共通とし、ベース部材の上面に設置して行った。
【0042】
(試験方法)
ベース部材の下面に冷却対象物としてそれぞれ10ワットのLEDを取り付け、流動手段1の送風量をそれぞれ一定に設定するとともに、室内の温度をそれぞれ25℃に設定した状態で、ベース部材の同一位置における下面温度及び上面温度をそれぞれ測定した。
【0043】
(結果)
1分経過した時点で、比較例1は下面温度26.6℃、上面温度26.2℃となり、実施例1は下面温度が25.7℃、上面温度25.1℃となった。また、20分経過した時点で、比較例1は下面温度が37.4℃、上面温度が33.2℃となり、実施例1は下面温度が36.1℃、上面温度30.8℃となった。
【0044】
このように、20分経過後で、本発明にかかる実施例1は、比較例1に比べて、下面温度が1.3℃程度低下するとともに、上面温度が2.4℃程度低下することが確認された。これは、実施例1の冷却性能が、下面温度の降下率に換算して3.47%(=1.3℃/37.4℃×100%)程度、比較例よりも向上するとともに、上面温度の降下率に換算して7.22%(=2.4℃/33.2℃×100%)程度、比較例よりも向上したことを意味している。