(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098456
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】藻類育成方法及び藻類育成装置
(51)【国際特許分類】
C12N 1/12 20060101AFI20230703BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C12N1/12 A
C12M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215226
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】518362513
【氏名又は名称】株式会社イービス藻類産業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】平岡正明
(72)【発明者】
【氏名】井上 元
(72)【発明者】
【氏名】大島 義徳
(72)【発明者】
【氏名】千野 裕之
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DB11
4B065AA83X
4B065BC05
4B065CA41
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】
装置構成を簡略化でき、十分な培養効果を得ることが可能である藻類の培養装置及び培養方法を提供すること。
【解決手段】液中にて藻類を育成するための藻類育成容器と、該藻類育成容器中に微細気泡を注入するための微細気泡発生装置とを備え、上記微細気泡発生装置は、取液路と、該取液路の基端側に位置する微細気泡発生部と、該微細気泡発生部に連設された出液部とを有し、該取液路及び該出液路の少なくとも先端部は上記藻類育成容器中の藻類育成液に浸漬するように配設されていることを特徴とする藻類育成装置、及びそれを用いた藻類育成方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液中にて藻類を育成するための藻類育成容器と、該藻類育成容器中に微細気泡を注入するための微細気泡発生装置とを備えた藻類育成装置を用いた藻類育成方法であって、
上記微細気泡発生装置は、取液路と、微細気泡発生部と、出液部とを有し、
上記取液路から上記藻類育成容器中の藻類含有液を取り込み、該藻類含有液を上記微細気泡発生部に送液して該藻類含有液を用いて微細気泡を発生させて、微細気泡を含有する藻類含有液を生成させ、得られた微細気泡を含有する藻類含有液を上記出液部を介して藻類育成容器に出液する微細気泡混合工程を具備する
藻類育成方法。
【請求項2】
請求項1記載の藻類育成方法を実施するための装置であって、
液中にて藻類を育成するための藻類育成容器と、該藻類育成容器中に微細気泡を注入するための微細気泡発生装置とを備え、
上記微細気泡発生装置は、藻類育成容器中の藻類育成液を取り込む取液路と、微細気泡を生成する微細気泡発生部と、該微細気泡発生部で生成する微細気泡を外部に放出するための出液部とを有する
ことを特徴とする藻類育成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置構成を簡略化でき、十分な培養効果を得ることが可能である藻類の培養装置及び培養方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナンノクロロプシス等の藻類は、食品、燃料等種々応用が期待されており、その培養方法も種々提案されている。
例えば、特許文献1には、緑藻類、ユーグレナ藻類、珪藻類及びハプト藻類から選択される藻類を効率的に培養する方法が提案されている。具体的には、光合成有効光量子束密度に対する波長域520 nm以上630 nm以下の光の光量子束密度の割合が65%以上である人工光を前記藻類に照射する培養方法が提案されている。この方法では、前記藻類細胞の状態及び/又は該藻類細胞の培養物の状態を測定することを含み、前記藻類細胞の状態及び/又は該藻類細胞の培養物の状態に応じて、前記藻類細胞への前記人工光の照射若しくは非照射が切り替えられるか、又は前記藻類細胞に照射される前記波長域520 nm以上630 nm以下の光の光量子束密度が変更される。
特許文献2には、藻類の成分生成量を促進する藻類の培養方法として、二酸化炭素を含有する気体の微細気泡を生成するステップと、生成した微細気泡を藻類が存在する水槽内の液中に供給するステップとを有する培養方法が提案されている。
特許文献3には、特定のガスを用いることなく、低コストで効率的に藻類(微細藻)の増殖を促進することができる藻類培養方法が提案されている。具体的には、微細気泡を含んだ微細気泡水を藻類の育成用培地に注入して藻類の増殖を促進する藻類培養方法が提案されている。この微細気泡水は、大気ガスを微細気泡化することにより生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-137514号公報
【特許文献2】特開2012-10605号公報
【特許文献3】特開2018-88294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の提案にかかる培養方法では、大掛かりな装置構成が必要になるとともに未だ十分に効率的な培養ができていなかった。具体的には、特許文献1にかかる提案では、光を十二分に全ての藻類に行き渡らせるのが困難であり、多数の光源を準備し且つすべての光源を制御する事が必要となるため、装置構成が大掛かりなものとなり、しかも完全に制御することが困難であり、培養効果が不十分となりやすい。特許文献2及び3の提案では、培養容器全体に微細気泡を行き渡らせるために多数の気泡発生装置を設置する必要があり、装置構成が大掛かりなものとなり、また、微細気泡による作用も限定的なものとなりやすく十分な培養効果が得られていない。
要するに、比較的装置構成を簡略化でき、十分な培養効果を得ることが可能な藻類の培養装置及び培養方法の提案が要望されているのが現状である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、装置構成を簡略化でき、十分な培養効果を得ることが可能である藻類の培養装置及び培養方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、微細気泡を用いた培養方法に着目し、微細気泡の藻類への作用について検討し、単に藻類の培養液中に気泡を注入するのではなく、藻類を生成した直後の気泡に直接接触可能にした方が培養効率を向上させることができることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.液中にて藻類を育成するための藻類育成容器と、該藻類育成容器中に微細気泡を注入するための微細気泡発生装置とを備えた藻類育成装置を用いた藻類育成方法であって、
上記微細気泡発生装置は、取液路と、微細気泡発生部と、出液部とを有し、
上記取液路から上記藻類育成容器中の藻類含有液を取り込み、該藻類含有液を上記微細気泡発生部に送液して該藻類含有液を用いて微細気泡を発生させて、微細気泡を含有する藻類含有液を生成させ、得られた微細気泡を含有する藻類含有液を上記出液部を介して藻類育成容器に出液する微細気泡混合工程を具備する藻類育成方法。
2.1記載の藻類育成方法を実施するための装置であって、
液中にて藻類を育成するための藻類育成容器と、該藻類育成容器中に微細気泡を注入するための微細気泡発生装置とを備え、
上記微細気泡発生装置は、取液路と、微細気泡を生成する微細気泡発生部と、該微細気泡発生部で生成する微細気泡を外部に放出するための出液部とを有し、該取液路及び該出液路の少なくとも先端部は上記藻類育成容器中の藻類育成液に浸漬するように配設されていることを特徴とする藻類育成装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の藻類の培養装置は、装置構成を簡略化でき、十分な培養効果を得ることが可能なものである。
また、本発明の藻類の培養装置及び培養方法は、提装置構成を簡略化でき、十分な培養効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の培養装置の全体構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す培養装置における微細気泡発生装置の1実施形態の要部を模式的に示す内部透視図であり、(a)は側面方向から見た図であり、(b)は(a)の矢印方向に見た矢視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す培養装置における微細気泡発生装置の他の実施形態の要部を模式的に示す内部透視図である。
【
図4】
図4は、実施例における効果を確認したチャートである。
【
図5】
図5は、実施例における効果を確認したチャートである。
【符号の説明】
【0009】
1 藻類育成装置、3 藻類育成容器、5 微細気泡発生装置、10 取液路、20 微細気泡発生部、30 出液部
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、図面を参照してさらに詳細に説明する。
本発明の藻類育成方法は、
図1に示すように、液中にて藻類を育成するための藻類育成容器3と、藻類育成容器3中に微細気泡を注入するための微細気泡発生装置5とを備えた藻類育成装置1を用いた藻類育成方法である。
ここで、微細気泡発生装置5は、
図1及び2に示すように取液路10と、微細気泡発生部20と、出液部30とを有する。取液路10は、微細気泡を発生させる微細気泡発生部20に藻類育成液を移送可能に設けられており、出液部30は微細気泡発生部20から微細気泡が混入された藻類育成液を藻類育成容器3中に排出可能に設けられている。模式的に示す
図1においては、微細気泡発生部20から取液路10及び出液部30が延設されるように示されているが、これら3つの部材の設置形態は用いる発生装置の種類等に応じて任意である。
以下、まず本発明の藻類育成装置について詳述する。
【0011】
〔藻類〕
本発明において培養される上記藻類としては、この種の培養装置において培養可能な単細胞藻類であれば特に制限されないが、ユースティグマトス目ユースティグマトス科ナンノクロロプシス属ナンノクロロプシス、トレボウクシア藻綱クロレラ目パラクロレラ等を好ましく挙げることができ、中でも特にナンノクロロプシスを好ましく挙げることができる。
藻類育成液は、培養液に藻類を分散させたものである。上記培養液としては、培養する藻類に応じて任意であるが、海水、または真水、精製水、イオン交換水、水道水等に栄養塩を混ぜたもの等を用いることができるg/Lとするのが好ましく、0.1~0.3 g/Lとするのが更に好ましい。
【0012】
<装置>
本発明の藻類育成方法に用いられる本発明の藻類育成装置の1実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示す本実施形態の藻類育成装置1は、液中にて藻類を育成するための藻類育成容器3と、藻類育成容器3中に微細気泡を注入するための微細気泡発生装置5とを備える。
藻類育成容器3と微細気泡発生装置5とは、取液管10及び出液管30を介して連結されている。
藻類育成容器3中には、育成対象の藻類及び水を含む藻類育成液4が投入され、後述の育成方法により藻類の育成が実行される。
【0013】
〔藻類育成容器〕
藻類育成容器3には、内部の温度を調節するための熱媒管6が配設されている。本実施形態の藻類育成装置には、この熱媒管6内に冷却媒又は加熱媒を供給する温度調整装置7が設けられている。温度調整装置7は、藻類育成容器3内に設けられた温度計9と接続されており、容器内の温度が所定範囲内となるように調整する。
藻類育成容器3は、本実施形態においては長方体形状で上面が開口とされた容器である。藻類育成装置3中の藻類育成液にエアーを注入するエアー注入装置8が設けられている。藻類育成容器3の内部には、藻類育成液を循環させる還流部材(図示せず)を設置することもできる。
また、
図1においては単なる長方体形状の容器を示したが、これに制限されず、種々形状の容器を用いることができる。例えば、O字状の還流式水槽容器を用いることができる。
【0014】
〔微細気泡発生装置〕
本発明において用いることができる微細気泡発生装置の微細気泡発生方式としては、非添加式であるのが好ましい。中でも、旋回液流式及び加圧溶解式等が好ましい。
他に、界面活性剤添加方式、微細孔式、スタティックミキサー式があるが、界面活性剤添加方式は藻類の品質へ悪影響があり、微細孔式や、スタティックミキサー式は藻類に大きなストレスを与え、細胞を傷つけてしまう危険性が大きく、好ましくない。
図2に旋回液流式の微細気泡発生装置を、
図3に加圧溶解式の微細気泡発生装置の例を示す。これらの方式は、藻類に対するストレスの少ない方式で本発明の育成方法への適用適合性が高い。
図2に示す微細気泡発生装置120は、取液路121と、取液路121の基端側に位置する微細気泡発生部123と、微細気泡発生部123に連設された出液部125とを有する。取液路121は取液管(
図1の取液管10)に、出液部125は出液管(
図1の出液管30)に、それぞれ連結されている(図示せず)。本実施形態の微細気泡発生装置における微細気泡発生部123は、
図2(a)及び(b)に示すように、中空の円柱形状であり、その一端側側面に取液部121が設けられている。円柱形状の微細気泡発生部の一端面に出液部125が設けられている。
図2(b)に示すように、取液部121は、円柱状の微細気泡発生部の中心よりもいずれか一方の側に偏奇して設けられている。微細気泡発生部123は、出液部125に近接して設けられ且つ取液路121に側面が面している環状溝部材127と、環状溝部材127に連接された旋回流を形成する旋回流形成部129と、環状溝部材127及び出液部125の間に位置する出液準備部128とにより形成されている。旋回流形成部129の端面(出液部の対向面)には外部の空気を旋回流形成部内に取り込む空気取得部(図示せず)が設けられている。この空気取得部は通常逆止弁付きのノズルなどにより構成される。環状溝部材127は、円盤状であり、部材の側面に環状溝124が形成されている。環状溝部材の軸を中心とする中央部分は気泡を含む藻類育成液を排出する開口126が設けられている。
図2に示す微細気泡発生装置120によって微細気泡が発生する機構について説明する。まず、取液部121より取り入れた藻類育成液が環状溝部材127の環状溝124を通過して、旋回流形成部129内で旋回流を形成する。この旋回流中に空気取得部から空気を取り入れることにより、旋回流を形成した藻類育成液中において微細気泡を発生させる。そして、発生した微細気泡を含む藻類育成液を開口126から出液準備部128へと移送し、出液部125から微細気泡を含む藻類育成液4’を排出する。
【0015】
次に
図3に示す方式の微細気泡発生装置について説明する。
図3に示す微細気泡発生装置220は、液体を加圧した後、圧力を開放することにより再気泡化することで微細気泡を発生させる方式である。
図3に示す微細気泡発生装置220は、藻類育成液を取り入れる取液部としてのポンプ221及び管222に連結された一旦藻類育成液をためておく加圧可能なスロート部223とエアー注入部224が配された加圧溶解部225とを有する。加圧溶解部225にて気体が混合された加圧液を排出する出液部としてのノズル227を具備する。スロート部は液の進行方向に従って径が小さくなるように構成されており、これによりスロート部内部の液圧が高くなる。
図3に示す微細気泡発生装置によって微細気泡が発生する機構について説明する。まず、ポンプ221及び管222により藻類育成液を取得し、スロート部223に注入する。このスロート部223から加圧溶解部225に藻類育成液を移送すると共にガスをエアー注入部224から加圧溶解部225中に注入し、加圧溶解部225中にて藻類育成液内にエアーを混入させる。そして、加圧されエアーの混入された藻類育成液を、ノズル227を介して容器3内に排出する。これにより、藻類育成液中に微細気泡が発生して、微細気泡含有藻類育成液4’が容器3内に投入される。
【0016】
(他の部材)
本実施形態の装置は、上述の各部材及び装置の他に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々部材及び装置を付加することができる。
【0017】
<育成方法>
本発明の藻類育成方法は、上述の実施形態の藻類育成装置を用いた藻類育成方法である。そして、本発明の方法は、取液路10から藻類育成容器3中の藻類含有液4を取り込み、藻類含有液4を微細気泡発生部20に送液して藻類含有液4を用いて微細気泡を発生させて、微細気泡を含有する藻類含有液4’を生成させ、得られた微細気泡を含有する藻類含有液4’を出液部30を介して藻類育成容器に出液する微細気泡混合工程を具備する。
以下、さらに詳述する。
【0018】
〔微細気泡混合工程〕
(取り込み)
上記微細気泡混合工程において、取液路10から藻類育成容器3中の藻類含有液4を取り込む取液量は、用いる微細気泡発生装置の性能に応じるので特に制限されるものではないが、好ましくは後述する気泡発生能力に応じて調節するのが好ましい。
(気泡発生)
藻類含有液4を微細気泡発生部20に送液して藻類含有液4を用いて微細気泡を発生させる際の気泡発生装置は、粒子径200 nm以下の微細気泡を1mL当たり100,000,000個以上生産できる能力を有するものが好まししい。また、微細気泡の発生時間は、特に制限されないが、特に藻類の培養中記以降の段階や繰り返し培養の段階において凝集が見られる場合が多く、そのような凝集の生じる点を考慮すると、特に濃度が濃くなった中盤や繰り返し培養を始めた段階においてはある程度の時間連続的に運用するのが好ましい。具体的には、1分以上とするのが好ましく、10分以上とするのが更に好ましい。上限は特に制限されないが、20分以上行っても特に効果の向上が見られないので20分以内とするのが好ましい。また、連続運転の終了後は、30秒~3分の運転を断続的に、例えば20分~2時間のインターバルを設けてこの工程を行うことができる。なお、平均粒子径は用いる気泡発生装置によるが、200nm以下の浮力が働きにくい微細な気泡を多く含むことが、藻類の育成(培養)において効果的であるため、上記のような細かい気泡を発生させられる装置が望ましい。
(出液)
出液量は、取液量に等しい量とすることができるが、出液する際に、排出され容器3内に投入される微細気泡含有藻類育成液の出液管の排出速度は、藻類への衝撃等を考慮して、液の排出速度として60~70L/分とするのが好ましい。
(その他)
藻類育成液の温度は、藻類に応じて適した温度が異なるが、上記気泡発生を行うことにより生じる温度変化を藻類ごとに適した温度±5℃以内、更には±2℃以内に制御するのが好ましい。
また、育成が進行すると細胞密度が上昇するが、あまり濃度が高くなりすぎると育成(培養)の阻害要因となるので、2.0×108 cells/mL程度で育成を完了とするのが好ましい。
〔他の工程〕
本発明の藻類育成方法においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の工程を追加することができる。
【0019】
〔作用・効果〕
上述のように構成された本発明の藻類育成装置においては、藻類が分散された藻類育成液を用いて微細気泡の生成を行うため、発生直後の微細気泡が直接藻類に作用することとなる。そのため、微細気泡が藻類の成長を促進することはもちろん、藻類の育成において阻害因子となる植物プランクトンや原生動物の育成を阻害する(死滅させる)。
そして、この藻類育成装置を用いた本発明の藻類育成方法では、上述の作用効果を有する藻類育成装置を用いて藻類の育成を行うため、藻類を従来の方法(微細気泡を混入させる方法)に比して著しく高い効果を持って育成させることができる。
【0020】
なお、本発明は上述の実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【実施例0021】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0022】
〔実施例1〕
図2に示す気泡発生装置を有する
図1に示す構成の装置を用いてナンノクロロプシスの育成を行った。
藻類育成容器3は90Lの透明樹脂製とし、7.8×10
7cells/mLの細胞密度を初期のナンノクロロプシス濃度として、屋根付き温室内で太陽光のもとで育成(培養)を行った。その際、上記微細気泡発生装置を用いて、微細気泡(ナノバブル)を発生させた。この時、微細気泡発生装置の運転設定は1分起動、30分停止を繰り返す設定とした。ここで得られた育成液(培養液)について、後述する増殖実験を行い、評価を行った。その結果を
図4に示す。比較のために、通常の培養池での育成についても同様に評価をし、その結果を
図4に示す。
図4に示すように、ナンノクロロプシスの細胞密度は、最初の連続的な微細気泡の供給直後は減少するものの、最初の微細気泡発生工程の完了3日後から徐々に増殖し、7日後には1.1×10
8 cells/mlに到達した。7日目に微細気泡発生工程の実施を停止し、単なるエアレーションへ切り替えた。その後13日目には、1.6×10
8 cells/mlに達した。この間、ナンノクロロプシスは完全に分散しており、凝集は見られなくなった。
〔実施例2〕
長時間の微細気泡発生装置での処理が藻類に悪影響を与えないか確認するため、実施例1と同様の90L培養装置で比較的長時間の微細気泡発生装置の処理を連続で行った後に、室内培養試験を行った。微細気泡発生装置での処理時間を、30秒、1分、5分、10分、15分とした。各々の時間の藻類培養液サンプルを採取し、室内にてナンノクロロプシスの増殖実験を行った。
増殖実験は、40mLフラスコに10mLの新鮮な培地(海水)を入れ、上記の時間微細気泡を発生させて得たサンプルを100μL入れて、各サンプルの培地を得た。得られた培地の入ったフラスコを、レシプロシェーカーにセットして行なった。シェーカー回転速度は、250rpmとした。光は、常時点灯で80~100μmol/m
2/秒の光量子量であった。育成(培養)終了後、顕微鏡観察(目視)により培地の細胞密度を測定した。その結果を
図4に示す。なお、微細気泡による処理を含めて何ら事前の処理をしない実験区、及び100μm目合のフィルターで凝集を除去する処理のみ事前に行った実験区についても同様の実験を行い、評価した。その結果も合わせて
図5に示す。なお、
図5においては、単に「…分処理」と表記してある。
図5に示すように、特に5日目以降、ナンノクロロプシスの細胞密度は、処理をしない実験区、100μm目合のフィルターで凝集を除去した実験区に比して、微細気泡発生による微細気泡発生工程を行った実験区、特に10分処理した実験区と15分処理した実験区では、処理をしない実験区に比べ、1.2から1.3倍細胞密度が高くなった。微細気泡発生装置は、60L/分の処理能力であるため、15分処理では90Lの培養器を10回転で連続処理したことになるが、衝撃などの処理はなく、むしろ好影響を与えた。