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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098462
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ヘッドホン、及びその音量調整方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20230703BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20230703BHJP
   H04R 5/033 20060101ALI20230703BHJP
   H04R 5/04 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/10 101B
H04R1/10 103
H04R5/033 Z
H04R5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215238
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 昌之
【テーマコード(参考)】
5D005
5D011
5D220
【Fターム(参考)】
5D005BB03
5D005BB04
5D005BD01
5D011AC01
5D011AD02
5D220AA04
5D220AB04
5D220AB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スピーカ形態からヘッドホン形態への変形に応じて音量の好適な調整を行うヘッドホン及びその音量調整方法を提供する。
【解決手段】ヘッドホンにおいて、ヘッドホン回路10Aは、左右のスピーカが対向する第1の形態でオフとなり、左右のスピーカが所定方向を向いた第2の形態でオンとなるヒンジスイッチ32L、32Rと、入力された左右の音声信号を増幅して左右のスピーカの夫々に接続するアンプ24L、24Rと、左右の音声信号の経路としてアンプを通過する第1の経路とアンプをバイパスする第2の経路との一方を選択するアンプスイッチ33と、第1の経路が選択され、且つ、第1のスイッチがオフである第1の状態においてアンプに入力される左右の音声信号の音量を、第1の経路が選択され、且つ、アンプスイッチがオンである第2の状態において左右のアンプに入力される左右の音声信号の音量よりも減少させる音量調整部DSP22と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部によって連結された左右のスピーカと、
前記左右のスピーカが対向する第1の形態でオフとなり、前記左右のスピーカが前記対向する方向以外の所定方向を向いた第2の形態においてオンとなる第1のスイッチと、
入力された左右の音声信号を増幅して前記左右のスピーカの夫々に接続する左右のアンプと、
前記左右の音声信号の経路として、前記左右のアンプを通過する第1の経路と、前記左右のアンプをバイパスする第2の経路との一方を選択する第2のスイッチと、
前記左右のアンプの前段に設けられた音量調整部であって、前記第2のスイッチによって前記第1の経路が選択され且つ前記第1のスイッチがオフである第1の状態において前記左右のアンプに入力される前記左右の音声信号の音量を、前記第1の経路が選択され且つ前記第2のスイッチがオンである第2の状態において前記左右のアンプに入力される前記左右の音声信号の音量より減少させる音量調整部と
を含むヘッドホン。
【請求項2】
前記音量調整部が、ディジタル形式の前記左右の音声信号の音量調整を行う
請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項3】
前記音量調整部は、前記第1の状態が所定時間継続した場合に、前記左右の音声信号の音量の減少を行う
請求項1又は2に記載のヘッドホン。
【請求項4】
前記第2のスイッチによって前記第2の経路が選択されている場合には、前記音量調整部は、前記左右の音声信号の音量を前記第1の状態における音量よりも大きい音量に調整する
請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項5】
前記音量調整部は、前記左右の音声信号の音量を減少させる場合に、音量の減少の開始時刻から第1の時刻の間に第1の傾きで音量を減少させ、前記第1の時刻から第2の時刻の間に第1の傾きより大きい第2の傾きで音量を減少させ、前記第2の時刻から音量の減少の終了時刻の間において、前記第2の傾きより小さい傾きで音量を減少させる
請求項1から4のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項6】
前記音量調整部は、前記第1の状態から前記第2の状態に遷移した場合に、前記左右の音声信号の音量を増加させる
請求項1から5のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項7】
前記音量調整部は、前記左右の音声信号の音量の増加の開始時刻から第1の時刻の間に第1の傾きで音量を増加させ、前記第1の時刻から第2の時刻の間に第1の傾きより大きい第2の傾きで音量を増加させ、前記第2の時刻から前記左右の音声信号の音量の増加の終了時刻の間において、前記第2の傾きより小さい第3の傾きで音量を増加させる
請求項6に記載のヘッドホン。
【請求項8】
前記左右の音声信号の音量を減少させる場合に、低音の周波数帯における音量を増加させる音質調整部をさらに含む
請求項1から7のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項9】
前記左右の音声信号の音量を減少させる場合に、前記左右の音声信号のステレオ化を行うステレオエンハンサをさらに含む
請求項1から8のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項10】
連結部によって連結された左右のスピーカと、入力された左右の音声信号を増幅して前記左右のスピーカの夫々に接続する左右のアンプとを含むヘッドホンにおいて、
前記左右のスピーカが対向する第1の形態でオフとなり、前記左右のスピーカが前記対向する方向以外の所定方向を向いた第2の形態においてオンとなる第1のスイッチがオフであり、且つ前記左右の音声信号の経路として、前記左右のアンプを通過する第1の経路と、前記左右のアンプをバイパスする第2の経路との一方を選択する第2のスイッチによって前記第1の経路が選択されている第1の状態かを判定することと、
前記第1の状態において前記左右のアンプに入力される前記左右の音声信号の音量を、前記第1の経路が選択され且つ前記第2のスイッチがオンである第2の状態において前記左右のアンプに入力される前記左右の音声信号の音量より減少させることと
を含むヘッドホンの音量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホン、及びその音量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドホンの装耳部を回転させるヒンジを有し、ヘッドホン形態からスピーカ形態に変形可能なヘッドホンがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第862007号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ヘッドホン形態とスピーカ形態との間の変形に応じて音声信号の音量調整を好適に行うことが可能なヘッドホン及びその音量調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、連結部によって連結された左右のスピーカと、前記左右のスピーカが対向する第1の形態でオフとなり、前記左右のスピーカが前記対向する方向以外の所定方向を向いた第2の形態においてオンとなる第1のスイッチと、入力された左右の音声信号を増幅して前記左右のスピーカの夫々に接続する左右のアンプと、前記左右の音声信号の経路として、前記左右のアンプを通過する第1の経路と、前記左右のアンプをバイパスする第2の経路との一方を選択する第2のスイッチと、前記左右のアンプの前段に設けられた音量調整部であって、前記第2のスイッチによって前記第1の経路が選択され且つ前記第1のスイッチがオフである第1の状態において前記左右のアンプに入力される前記左右の音声信号の音量を、前記第1の経路が選択され且つ前記第2のスイッチがオンである第2の状態において前記左右のアンプに入力される前記左右の音声信号の音量より減少させる音量調整部とを含むヘッドホンである。
【0006】
本開示の他の態様は、連結部によって連結された左右のスピーカと、入力された左右の音声信号を増幅して前記左右のスピーカの夫々に接続する左右のアンプとを含むヘッドホンにおいて、前記左右のスピーカが対向する第1の形態でオフとなり、前記左右のスピーカが前記対向する方向以外の所定方向を向いた第2の形態においてオンとなる第1のスイッチがオフであり、且つ前記左右の音声信号の経路として、前記左右のアンプを通過する第1の経路と、前記左右のアンプをバイパスする第2の経路との一方を選択する第2のスイッチによって前記第1の経路が選択されている第1の状態かを判定することと、前記第1の状態において前記左右のアンプに入力される前記左右の音声信号の音量を、前記第1の経路が選択され且つ前記第2のスイッチがオンである第2の状態において前記左右のアンプに入力される前記左右の音声信号の音量より減少させることとを含むヘッドホンの音量調整方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1A及びBは、実施形態に係るヘッドホンの外観構成を模式的に示す図である。
図2図2は、ヘッドホンの回路構成を示す図である。
図3図3は、コントローラの処理例1を示すフローチャートである。
図4図4Aは、音量の減少の説明図であり、図4Bは音量の増加の説明図である。
図5図5は、コントローラの処理例2の説明図である。
図6図6は、ステレオエンハンサの説明図である。
図7図7は、コントローラの処理例3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るヘッドホン及びその音量調整方法について説明する。実施形態の構成は一例であり、実施形態の構成は、本開示の目的を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0009】
図1A及び1Bは、実施形態に係るヘッドホンの外観構成を模式的に示す図である。図1Aには、ヘッドホン10の正面図が図示されている。ヘッドホン10は左耳用の装耳部12Lと、右耳用の装耳部12Rとからなる左右の装耳部12L、12Rを備える。左の装耳部12Lは左チャネル用のスピーカ15Lを備え、右の装耳部12Rは右チャネル用のスピーカ15Rを備えている。
【0010】
左右の装耳部12R、12L(スピーカ15L,15R)は、連結部11によって連結されている。連結部11は、ヘッドバンドとして使用される。連結部11は、ヒンジ13L及び13Rを有している。ヒンジ13L及び13Rは、左右の装耳部12L、12Rに備えられたスピーカ15L、15Rを回転させるのに使用される。
【0011】
ヘッドホン10は、ヘッドホンとしての使用形態(ヘッドホン形態)とスピーカとしての使用形態(スピーカ形態)に変形可能である。変形は、左右のヒンジ13L、13Rを用いて、左右の装耳部12L、12Rを回転させることで行う。ヘッドホン形態では、左右の装耳部12L、12Rは、スピーカ15Lとスピーカ15Rとが内側を向いて対向した状態(第1の形態)にある。これに対し、スピーカ形態では、左右の装耳部12L、12Rは、スピーカ15Lとスピーカ15Rとが正面(所定の方向の一例)を向くように約90°回転した状態(第2の形態)となる。このように、装耳部12L及び12Rに備えられたスピーカ15L、15Rは、ヒンジ13L及び13Rによって約90°回転可能となっている。
【0012】
図2は、ヘッドホン回路10Aの構成例を示す。ヘッドホン回路10Aは、ヘッドホン10に内蔵される。ヘッドホン回路10Aは、シグナルレシーバ(信号受信部)21と、DSP(Digital Signal Processor)22と、DAC(Digital Analog Converter)23と、左側のアンプ24Lと、右側のアンプ24Rと、左右のスピーカ15L、15Rとを含む。さらに、ヘッドホン回路10Aは、制御装置(コントローラ)31と、左側のヒンジスイッチ32Lと、右側のヒンジスイッチ32Rと、アンプスイッチ33とを含む。ヒンジスイッチ32L及び32Rは、第1のスイッチの一例であり、アンプスイッチ33は、第2のスイッチの一例である。
【0013】
シグナルレシーバは、ヘッドホン10の外部から入力される音声信号の受信部である。受信部はBluetooth(登録商標)などの無線通信によって音声信号を受信してもよく、有
線によって音声信号を受信してもよい。
【0014】
DSP22は、プログラムの実行により、シグナルレシーバ22から入力される音声信号に対して様々な音声処理を行うことができる。音声信号の加工によって、音量調整、音質変更、音色調整などの音声処理を行うことができる。DSP22は、左チャネル用のディジタル音声信号と、右チャネル用のディジタル音声信号を出力する。
【0015】
DAC23は、DSP22から出力される左右のディジタル音声信号をアナログ信号に
変換する。DAC23とスピーカ15Lとの間には、アンプ24Lを通過する第1の経路と、アンプ24Lをバイパスする第2の経路とが設けられている。また、DAC23とスピーカ15Rとの間には、アンプ24Rを通過する第1の経路と、アンプ24Rをバイパスする第2の経路とが設けられている。
【0016】
アンプ24L及びアンプ24Rの夫々は、入力された音声信号を増幅するパワーアンプである。スピーカ15L及び15Rの夫々は、入力された音声信号に対応する音声を放音する。
【0017】
アンプスイッチ33は、DAC23から出力された左右の音声信号の経路として、上記した第1の経路と第2の経路との一方を選択する。アンプスイッチ33が第1の経路を選択した状態(アンプの使用状態)では、左右のアンプ24L,24Rによって増幅された音声信号が左右のスピーカ15L及び15Rに接続される。
【0018】
これに対し、アンプスイッチ33が第2の経路を選択した状態(アンプのバイパス状態)では、DAC23から出力された音声信号が左右のアンプ24L,24Rをバイパスし、左右のスピーカ15L及び15Rにダイレクトに接続される。
【0019】
アンプスイッチ33は、リレーまたは半導体スイッチを用いて構成することができる。アンプスイッチ33の状態は、手動により切り替えることができる。また、アンプスイッチ33は、自身の状態(経路の選択状態、すなわちアンプの使用状態かバイバス状態か)を示す信号を制御装置31に入力する。例えば、アンプスイッチ33の状態に応じた電圧等を制御装置31が検知可能とする。
【0020】
ヒンジスイッチ32Lはヒンジ13Lに設けられ、ヒンジスイッチ32Rはヒンジ13Rに設けられている。ヒンジスイッチ32L、32Rの夫々は、ヒンジ13L、13Rの夫々の連結部11に対する相対的な回転角度がスピーカ形態における角度になった場合にオンとなり、ヘッドホン形態及びヘッドホン形態からスピーカ形態への過渡期の角度ではオフとなる。なお、ヒンジスイッチ32L,32Rは、例えば、ホール素子及び永久磁石を用いて構成することができる。また、本実施形態における制御装置31は、ヒンジスイッチ32L及び32Rの双方がオンであることを以て、スピーカ20L及び20Rが所定方向(正面)を向いた状態(第2の形態)であると判定する。一方、制御装置31は、ヒンジスイッチ32L及び32Rの少なくとも一方がオフであることを以て、スピーカ20L及び20Rが対向する状態(第1の形態)であると判定する。
【0021】
制御装置31は、アンプスイッチ33の状態を示す信号、ヒンジスイッチ32L及び32Rのオンオフを示す信号を受けて、DSP22の動作を制御する。制御装置31は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの汎用又は専用の集積回路、あるいはプロセッサ(CPU(Central Processing Unit)等)とメモリの組み合わせによって構成される。
【0022】
図3は、制御装置31の処理例1を示すフローチャートである。ステップS001において、制御装置31は、アンプスイッチ33の状態を判定する。アンプスイッチ33の状態がアンプ24L及び24Rの使用(第1の経路の選択)を示すと判定する場合には、処理がステップS002に進み、アンプスイッチ33の状態がアンプ24L及び24Rのバイパス(第2の経路の選択)を示すと判定する場合には、処理がステップS005に進む。
【0023】
ステップS002では、制御装置31は、ヒンジスイッチ32L及び32Rの双方がオンであるか否かを判定する。ヒンジスイッチ32L及び32Rの双方がオンであると判定
される場合には、処理がステップS004に進み、そうでない場合(ヒンジスイッチ32L及び32Rの少なくとも一方がオフである場合)には処理がステップS003に進む。
【0024】
ステップS003では、制御装置31は、DSP22から出力される(アンプ24L及び24Rに入力される)音声信号の音量(ボリューム)を所定量(例えば10dB)だけ減少させることをDSP22に指示する。指示を受けたDSP22は、音量調整部として動作し、音声信号に対するボリュームを減少させる。このとき、DSP22は、アンプ24L及び24Rによる音声信号の増幅によって音声信号の音量が10dB増加する場合、アンプ24L及び24Rに入力される音声信号の音量が、アンプ24L及び24Rによる音量の増加量と相殺されるように、10dB減少させる。その後、処理がステップS001に戻る。
【0025】
ステップS004では、制御装置31は、ヒンジスイッチ32L及び32Rの双方がオンである時間が所定時間以上継続したか否かを判定する。所定時間の長さは適宜設定可能であるが、例えば数十ミリ秒に設定される。オンの時間が所定時間以上継続したと判定される場合には、処理がステップS005に進み、そうでない場合には、処理がステップS001に戻る。
【0026】
ステップS005では、制御装置31は、DSP22から出力される音声信号の音量(ボリューム)を所定値にする指示をDSP22に与える。所定値は、ステップS004によって減少したときの値より大きい値である。これより、指示を受けたDSP22(音量調整部)は、現在の音量が所定値であれば、その値を維持する(何もしない)。これに対し、現在の音量が所定値より小さい場合には、音声信号の音量を増加させる。その後、処理がステップS001に戻る。なお、ステップS001とS002の順は逆でもよく、ステップS003はオプションであってもよい。
【0027】
このように、図3に示す処理によれば、ヘッドホン10は、アンプスイッチ33がアンプ24L及び24Rの使用状態(第1の経路の選択状態)であり、且つヒンジスイッチ32L及び32Rがオフである第1の状態において、DSP22から出力されアンプ24L及び24Rに入力される音声信号の音量が、使用状態且つヒンジスイッチ32L及び32Rがオンである第2の状態における音量より小さい値に調整される。これによって、アンプ24L及び24Rの使用時であっても、ヒンジスイッチ32L及び32Rがオフの場合に、スピーカ形態向けの大きな音声がスピーカ20L及び20Rから放音されるのを回避することができる。その後、ヒンジスイッチ32L及び32Rの双方がオンである状態が所定時間継続した場合には、DSP22にて音量を所定値にする音声信号処理によって、音量が所定値まで増加する。DSP22での音声調整は、ディジタル信号に対する処理であるため、アナログ信号の調整に比べてノイズ等の混入を抑えることができる。
【0028】
また、アンプスイッチ33がアンプ24L及び24Rのバイパス状態(第2の経路の選択状態)である場合には、DSP22から出力される音声信号の音量は所定値で固定されているため、ヒンジスイッチ32L及び32Rの状態に拘わらず、DSP22による音量の減少は行われない。
【0029】
図4Aは、ステップS004で行われる音量の所定量の減少の一例の説明図であり、図4BはステップS005で行われる音量の所定量の増加の説明図である。音量の減少による変化は、音量が垂直に立ち下がるような変化、あるいは、音量が一定の減少量で減少する変化であってもよい。もっとも、図4Aに示すように音量を変化させるのがスムーズな(ユーザの耳にやさしい)音量変化となる点で好ましい。すなわち、音量の変化の開始時刻がt0で、その終了時刻がt3である場合において、時刻t0から時刻t1までの間は第1の傾きで音量を減少させる。第1の時刻t1からその後の第2の時刻t2の間は、第1の傾きより
大きい第2の傾きで音量を減少させる。そして、第2の時刻t2から終了時刻t3までの間は、第2の傾きより小さい第3の傾きで音量を減少させる。第1の傾きと第3の傾きとは同じであっても異なっていてもよい。
【0030】
また、音量の増加による変化は、音量が垂直に立ち上がるような変化、あるいは、音量が一定の増加量で増加する変化であってもよい。もっとも、図4Bに示すように音量を増加させるのが、スムーズな音量制御となる点で好ましい。すなわち、音量の変化の開始時刻がt0で、その終了時刻がt3である場合において、時刻t0から時刻t1までの間は第1の傾きで音量を増加させる。第1の時刻t1からその後の第2の時刻t2の間は、第1の傾きより大きい第2の傾きで音量を増加させる。そして、第2の時刻t2から終了時刻t3までの間は、第2の傾きより小さい第3の傾きで音量を増加させる。第1の傾きと第3の傾きとは同じであっても異なっていてもよい。図4A及びBに示すような音量変化の制御はオプションである。
【0031】
図5は、制御装置31の処理例2の説明図である。処理例2では、スピーカ形態のヘッドホン10のスピーカ15L及び15Rから放音される音声では、低音の周波数帯(例えば、800Hz以下の周波数帯)の減少が大きい傾向にある。処理例2はこのような問題を解決するものである。
【0032】
図5において、ステップS003Aを除くステップS001~S002、S004及びS005の処理は、処理例1と同じであるので説明を省略する。ステップS003Aでは、処理例1と同様の音量を減少させる音量調整に加えて、低音域の音質を改善する処理をDSP22が行う。例えば、DSP22がイコライザを具備し、スピーカ形態では、イコライザがDSP22内の音声信号の経路に挿入され、低音の周波数帯の音量を増加させる処理を行う。このように、DSP22が、音量調整部として音声信号の音量を減少させる一方で、音質調整部としてのDSP22のイコライザが、低音の周波数帯の音量を増加させる音質調整(イコライジング)を行う。これにより、スピーカ形態のヘッドホン10から放音される音声の低音域を補正することができる。このような音質調整部及び処理例2の構成はオプションである。
【0033】
ヘッドホン10のヘッドホン形態とスピーカ形態とでは、放音される音声の好適な音像定位が異なることから、以下のような構成を採用してもよい。すなわち、DSP22に、図6に示すようなステレオエンハンサ40を具備させ、スピーカ形態において、DSP22における音声信号の経路にステレオエンハンサを挿入してもよい。
【0034】
図6において、ステレオエンハンサ40には、左右の音声信号が入力される。左右の音声信号は、分岐点41L(41R)において、加算器45L(45R)へ向かう経路と、遅延回路43L(43R)に向かう経路に分岐する。遅延回路43L(43R)は、音声ン信号を遅延させた後、反転増幅器44L(44R)に入力する。反転増幅器44L(44R)は、入力された音声信号の位相を反転させて増幅し、加算器45R(45L)に入力する。加算器45L(45R)は、左の音声信号と反転増幅器44R(44L)からの信号とを加算する。これによって、ステレオエンハンサ40から出力される左右の音声信号では、逆側のスピーカから出力される音声が低減された状態となっているため、ステレオ感を強調することができる。
【0035】
図7は、制御装置31の処理例3を示す。図7において、ステップS003Bを除くステップS001~S002、S004及びS005の処理は、処理例1と同じであるので説明を省略する。ステップS003Bでは、DSP22が処理例1と同様に音量を減少させる音量調整に加えて、ステレオエンハンサ40を用いた音声信号のステレオ化(ステレオエンハンス)を行う。このように、DSP22が、音量調整部として音声信号の音量を
減少させる一方で、ステレオエンハンサ40として音声信号のステレオエンハンスを行う。これにより、スピーカ形態のヘッドホン10から放音される音声のステレオ感を強調し、好適な音声を出力させることができる。このようなステレオエンハンサ40及び処理例3はオプションである。
【0036】
なお、DSP22が行う処理は、専用又は汎用の集積回路などのDSP以外のハードウェア乃至プロセッサを用いて実行されるようにしてもよい。
【0037】
実施形態に係るヘッドホン10は、左右の装耳部12L、12Rと、装耳部12L.12R間を連結する連結部11と、連結部11に設けられ、装耳部12L、12Rの夫々を回転させる左右のヒンジ13L,13Rとを含む。また、ヘッドホン10は、装耳部12L、12Rに備えられた左右のスピーカ15L,15Rと、左右のスピーカ15L,15Rが対向する第1の形態(ヘッドホン形態)でオフとなり、装耳部12L、12Rの回転によって左右のスピーカ15L,15Rが所定方向を向いた第2の形態(スピーカ形態)においてオンとなるヒンジスイッチ32L,32R(第1のスイッチ)とを含む。さらに、ヘッドホン10は、左右のスピーカ15L,15Rの夫々に接続される左右の音声信号を増幅可能な左右のアンプ24L、24Rと、左右の音声信号として、左右のアンプ24L、24Rを通過する第1の経路と、左右のアンプ24L、24Rをバイパスする第2の経路との一方を選択するアンプスイッチ33(第2のスイッチ)を含む。そして、ヘッドホン10は、アンプスイッチ33によって第1の経路が選択され且つヒンジスイッチ32L及び32Rの少なくとも一方がオフである第1の状態において、アンプ24L及び24Rに入力される左右の音声信号の音量を、第1の経路が選択され且つヒンジスイッチ32L及び32Rの双方がオンである第2の状態における音量よりも減少させる音量調整部(DSP22)を含む。音量調整部の位置は適宜設定可能であるが、本実施形態のように、音量調整部は、アンプ24L、24Rの前段に設けられ、ディジタル形式の音声信号の音量調整を行うようにするのが好ましい。
【0038】
また、音量調整部について、以下の構成を採用してもよい。DSP22からDAC23へ出力される音声信号の大きさは固定とする。一方、DAC23の出力端子と接続されたアンプ24L及び24Rの夫々の入力端子に可変抵抗器が接続される。制御部31は、各可変抵抗器の抵抗値を制御することで、アンプ24L及び24Rに入力される音声信号の音量(ボリューム)を増減することができる。
【0039】
ヘッドホン10によれば、ヘッドホン10がスピーカ形態(第2の形態)となり、アンプスイッチ33が「使用」状態でヒンジスイッチ32L、32Rがオフの場合に、アンプ24L及び24Rに入力される音量の減少が行われる。これによって、ヘッドホン10のスピーカ形態において音量の好適な調整を行うことができる。すなわち、ユーザがヘッドホン10のスピーカ形態時の音量の音声を耳の近くで聞いてしまうことを抑えることができる。
【0040】
ヘッドホン10において、音量調整部として動作するDSP32が、第1の状態が所定時間継続した場合に、左右の音声信号の減少を行うように制御装置31がDSP22の動作を制御するようにしてもよい。
【0041】
また、アンプスイッチ33によって第2の経路が選択されている場合には、音量調整部(DSP22)は、左右の音声信号の音量を第1の状態における音量よりも大きい音量に調整してもよい。これにより、アンプ24L及び24Rの使用時に不必要な音量減少を回避することができる。
【0042】
また、音量調整部として動作するDSP22は、左右の音声信号の音量を減少させる場
合に、以下のようにしてもよい。すなわち、DSP22は、音量の減少の開始時刻(t0)から第1の時刻(t1)の間に第1の傾きで音量を増加させる。また、DSP22は、第1の時刻(t1)から第2の時刻(t2)の間に第1の傾きより大きい傾きで音量を減少させる。そして、DSP22は、第2の時刻(t2)から音量の減少の終了時刻(t3)の間において、第2の傾きより小さい第3の傾きで音量を増加させる。このようにすれば、急激な音量変化よりもユーザの耳にやさしい音量変化とすることができる。
【0043】
また、音量調整部として動作するDSP22は、第2の状態から第1の状態に遷移した場合に、左右の音声信号の音量を増加させるようにしてもよい。これによって、ヘッドホン形態からスピーカ形態への変形時に、音量を好適に増加することができる。
【0044】
また、音量調整部として音量を増加させるDSP22は、以下のように動作してもよい。すなわち、DSP22は、左右の音声信号の音量の増加の開始時刻(t0)から第1の時刻(t1)の間に第1の傾きで音量を増加させる。また、DSP22は、第1の時刻(t0)から第2の時刻(t2)の間に第1の傾きより大きい第2の傾きで音量を増加させる。そして、DSP22は、第2の時刻(t2)から左右の音声信号の音量の増加の終了時刻(t3)の間において、第2の傾きより小さい第3の傾きで音量を増加させる。
【0045】
また、ヘッドホン10は、左右の音声信号の音量を減少させる場合に、低音の周波数帯における音量を増加させる音質調整部(イコライザ)をさらに含んでもよい。イコライザは本実施形態のようにDSP22に具備させることができる。音質調整部の具備により、スピーカ形態における音声の低音を補正することができ、好適な音声を放音させることができる。
【0046】
また、ヘッドホン10は、左右の音声信号の音量を減少させる場合に、左右の音声信号のステレオ化(ステレオエンハンス)を行うステレオエンハンサ40をさらに含むことができる。ステレオエンハンサ40は、本実施形態のように、DSP22に具備させることができる。ステレオエンハンサの具備により、スピーカ形態において好適な音声を放音することが可能となる。実施形態にて示した構成は、目的を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0047】
10・・・ヘッドホン
10A・・・ヘッドホン回路
11・・・連結部
12L,12R・・・装耳部
13L,13R・・・ヒンジ
15L,15R・・・スピーカ
22・・・DSP
24L.24R・・・アンプ
31・・・制御装置(コントローラ)
32L,32R・・・ヒンジスイッチ
33・・・アンプスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7