(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098465
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】接着剤組成物及び接着剤層付き積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 177/00 20060101AFI20230703BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230703BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230703BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C09J177/00
C09J163/00
C09J11/04
H05K1/03 610P
H05K1/03 610L
H05K1/03 650
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215242
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC051
4J040EG001
4J040HA176
4J040JA02
4J040JA12
4J040JB02
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハンドリング性に優れ、得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れる接着剤組成物を提供すること。また、この接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体を提供すること。
【解決手段】ポリアミド化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを含み、前記ポリアミド化合物(A)のアミン価が10mgKOH/g以下であり、前記チタン酸化合物(C)の含有量が、前記ポリアミド化合物(A)の含有量100質量部に対し、60~610質量部であり、硬化反応後の硬化物の誘電率が4.0以上である、接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを含み、
前記ポリアミド化合物(A)のアミン価が10mgKOH/g以下であり、
前記チタン酸化合物(C)の含有量が、前記ポリアミド化合物(A)の含有量100質量部に対し、60~610質量部であり、
硬化反応後の硬化物の誘電率が4.0以上である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記チタン酸化合物(C)の誘電率が100以上である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記チタン酸化合物(C)が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸カルシウムの少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
シランカップリング剤を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド化合物(A)の酸価が0.1~10mgKOH/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(B)が、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂(B)は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記ポリアミド化合物(A)の含有量100質量部に対し、2~25質量部である、請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
基材フィルムと、請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付き積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及び接着剤層付き積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型センサは、タッチセンサ、指紋認証、検品作業などに使用されている。例えば指紋認証では、基板上に半導体のセンサ素子を設け、指紋の微細な凹凸とセンサ素子との距離によって発生する静電容量の違いが検出される。このような静電容量型センサは、一般的にはセンサ素子が封止材により封止されて保護されているが、この封止材はセンサの感度低下の原因となる。センサの感度低下を防ぐために、封止材に高誘電無機充填材を配合し、封止材の誘電率を高めることが提案されている(例えば特許文献1)。
電子部品の封止材としては種々の組成のものが知られており、なかでも硬化性のエポキシ系接着剤が汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エポキシ系接着剤と高誘電無機充填材とを組み合わせると、得られる封止材(硬化膜)を、高誘電率かつ高弾性率を示すものとできる。しかし、本発明者らが検討したところ、これらの封止材は柔軟性に劣り、また、十分な接着力(剥離強度)が発現しない場合があり、さらに、硬化前の接着剤の状態で液粘度が上昇しやすく、ハンドリング性の問題も生じやすいことがわかってきた。
【0005】
本発明は、ハンドリング性に優れ、得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れる接着剤組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、この接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者の上記課題は下記手段により解決される。
[1]
ポリアミド化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを含み、
前記ポリアミド化合物(A)のアミン価が10mgKOH/g以下であり、
前記チタン酸化合物(C)の含有量が、前記ポリアミド化合物(A)の含有量100質量部に対し、60~610質量部であり、
硬化反応後の硬化物の誘電率が4.0以上である、接着剤組成物。
[2]
前記チタン酸化合物(C)の誘電率が100以上である、[1]に記載の接着剤組成物。
[3]
前記チタン酸化合物(C)が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸カルシウムの少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]
シランカップリング剤を含有する、[1]~[3]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[5]
前記ポリアミド化合物(A)の酸価が0.1~10mgKOH/gである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[6]
前記エポキシ樹脂(B)が、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する、[1]~[5]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[7]
前記エポキシ樹脂(B)が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[8]
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記ポリアミド化合物(A)の含有量100質量部に対し、2~25質量部である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[9]
基材フィルムと、[1]~[8]のいずれか1つに記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付き積層体。
【0007】
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば、「A~B」と記載されている場合、その数値範囲は、「A以上B以下」である。
【0008】
本発明及び本明細書において、「接着剤層」という場合、硬化前の状態、Bステージの状態(すなわち、一部が硬化し始めた半硬化状態にあり、加熱等により硬化が更に進行する状態)、又は、硬化反応を進行させて十分に架橋構造を形成させた後の状態の層を意味する。また、「硬化物」、「硬化膜」という場合、接着剤組成物を硬化反応させて十分に架橋構造を形成させた後の状態にある物又は膜を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着剤組成物は、ハンドリング性に優れ、得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れる。また、本発明の接着剤層付き積層体は、接着剤層を硬化して得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の接着剤組成物について、好ましい実施形態を以下に説明するが、本発明は本発明で規定すること以外は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、ポリアミド化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを含み、上記ポリアミド化合物(A)のアミン価が1~10mgKOH/gであり、上記チタン酸化合物(C)の含有量が、上記ポリアミド化合物(A)の含有量100質量部に対し、60~610質量部であり、硬化反応後の硬化物の誘電率が4.0以上であることを特徴とする。本発明の接着剤組成物を構成する各成分について、順に説明する。
【0012】
<ポリアミド化合物(A)>
本発明の接着剤組成物は、ポリアミド化合物(A)として、ポリアミド化合物の1種又は2種以上を含有する。本発明に用いられるポリアミド化合物(A)に特に制限はなく、ポリマー鎖中に複数のアミド結合を有するポリマーを広く用いることができる。ポリアミド化合物(A)はポリマー鎖中にポリエーテル構造、ポリエステル構造等を有してもよい。ポリアミド化合物(A)は、例えば、各種のジカルボン酸とジアミン等の脱水縮合反応、アミノカルボン酸の自己縮合、アミノカルボン酸の分子内環状化合物の開環重合、及びこれらの反応の複合によって合成することができる。また、市販品も広く用いることができる。本発明の接着剤組成物に含まれるポリアミド化合物(A)として、例えば、特開2010-31220号公報に記載されたナイロン樹脂を好適に用いることができる。接着剤組成物が溶媒(溶剤)を含有する場合には、ポリアミド化合物(A)は、当該溶媒中に、常温(25℃)において溶解性であることが好ましい。
ポリアミド化合物は、ポリアミド樹脂でもよく、ポリアミドエラストマーでもよい。
【0013】
本発明の接着剤組成物は、ベース樹脂としてポリアミド化合物を含有することにより、硬化物における、チタン酸化合物の配合による誘電率の向上作用を効果的に引き出すことができる。この理由は定かではないが、ポリアミド化合物に特有の構造(アミド結合)の極性等に起因して、ポリアミド化合物中ではチタン酸化合物が、誘電率の高い小粒径の状態で、均一分散できることが一因と考えられる。
【0014】
ポリアミド化合物(A)は、ジアミン成分としてピペラジン成分を含有することが好ましい。ピペラジン成分を含有することにより、ポリイミドフィルム等の可とう性フィルムへの接着性を高めることができる。ポリアミド化合物(A)中、全ジアミン成分に占める
ピペラジン成分の割合(含有率)は20モル%以上であることが好ましく、40~100モル%であることが好ましい。
【0015】
ポリアミド化合物(A)を構成し得る、ピペラジン以外のジアミン成分は特に制限されず、目的に応じて適宜に、種々のジアミン成分を組み込むことができる。一例として、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、p-ジアミノメチルシクロヘキサン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、m-キシレンジアミン、イソホロンジアミン等に由来するジアミン成分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
ポリアミド化合物(A)がジカルボン酸成分を含む場合、このジカルボン酸成分は特に制限されず、目的に応じて適宜に設定することができる。例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム等に由来するジカルボン酸成分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。溶剤への溶解性の観点から、アゼライン酸、ウンデカン二酸及びダイマー酸等の、結晶性が比較的低いジカルボン酸を全量又は一部用いるのが好ましい。
【0017】
ポリアミド化合物(A)がアミノカルボン酸成分を含む場合、このアミノカルボン酸成分は特に制限されず、目的に応じて適宜に設定することができる。例えば、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、4-アミノメチル安息香酸、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等に由来するアミノカルボン酸成分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記のアミノカルボン酸の分子内環状化合物としては、β-ラクタム、ε-カプロラクタム、ラウリンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
また、ポリアミド化合物中のポリアミド結合にホルマリンとアルコールとを付加させたN-アルコキシメチル基を導入することにより、アルコール可溶性ナイロン樹脂としたものも、ポリアミド化合物(A)として好ましい。N-アルコキシメチル基の導入は、融点の低下、可とう性の増大、溶解性の向上に寄与するものであり、目的に応じて導入率が決定される。
【0019】
一般的に、ポリアミド化合物(A)のアミン価が高く、酸価が低いと、アミノ基とエポキシ樹脂(B)のエポキシ基との反応が早くなり、短時間の加熱処理で良好な硬化性が得られる。しかし、常温でも反応が進行する為、混合直後から徐々に反応が進み、液粘度が上昇したりゲル化したりして、ハンドリング性において問題が生じやすい。その為、本発明では、ポリアミド化合物(A)のアミン価が10mgKOH/g以下に制御される。当該アミン価は9mgKOH/g以下であることが好ましく、8mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリアミド化合物(A)のアミン価の下限は特に限定されず、0mgKOH/gであることも好ましい。
また、ポリアミド化合物(A)の酸価は0.1~10mgKOH/gであることが好ましく、0.2~8mgKOH/gであることがより好ましい。
なお、上述の「アミン価」とは、ポリアミド化合物(A)1g中に存在するアミンを中和するのに要する塩酸と当量のKOHのmg数を意味する。また、「酸価」とは、ポリアミド化合物(A)1g中に存在する酸を中和するのに要するKOHのmg数を意味する。アミン価及び酸価の測定方法の詳細は、後述する[実施例]の項に記載する。
【0020】
ポリアミド化合物(A)の分子量及びアミン価等の調整は、例えば、ポリアミド化合物(A)を合成する際のジアミンとジカルボン酸との仕込み比率や反応時間及び減圧度の調整により行うことができる。
【0021】
ポリアミド化合物(A)の含有量は、接着剤組成物の全固形分中(溶媒を除いた成分中)、10~65質量%が好ましく、15~60質量%がより好ましく、17~50質量%がさらに好ましい。
【0022】
<エポキシ樹脂(B)>
本発明の接着剤組成物は、エポキシ樹脂(B)として、エポキシ樹脂の1種又は2種以上を含有する。エポキシ樹脂(B)は、ポリアミド化合物(A)を硬化させる架橋剤の役割を担う。エポキシ樹脂(B)の種類に特に制限はなく、エポキシ系接着剤に用いられるエポキシ樹脂を広く適用することができる。
エポキシ樹脂(B)の例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂用いることができ、なかでもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0023】
ポリアミド化合物(A)との反応性を高め、かつ、高い耐熱性を発現させる観点から、エポキシ樹脂(B)としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するものを用いるのが好ましい。エポキシ樹脂(B)は、1分子中のエポキシ基の数が3~10が好ましい。
【0024】
本発明の接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂(B)の含有量は、架橋点密度や耐熱性の観点から、ポリアミド化合物(A)100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、2~25質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることがより好ましく、7~15質量部であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の接着剤組成物は、通常、溶媒(溶剤)に溶解して溶液型の接着剤として用いられる。溶媒としては、ポリアミド化合物(A)及びエポキシ樹脂(B)の両方が溶解するものが好ましい。ポリアミド化合物(A)は一般にアルコール系溶剤に可溶であり、エポキシ樹脂(B)は一般にケトン系、エステル系、芳香族系溶剤、塩素系溶剤に溶解するため、溶剤は通常、アルコール系溶剤とケトン系の溶剤の混合溶媒、アルコール系溶媒とエステル系溶媒の混合溶剤、アルコール系溶剤と芳香族系の混合溶剤等の組み合わせから選択できる。
【0026】
溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、i-プロピルアルコール、n-プロピルアルコール、i-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤(アルコール化合物)、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤(ケトン化合物)、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系溶媒(芳香族化合物)、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤(エステル化合物)、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤(塩素化合物)が挙げられる。その他、ポリアミド化合物(A)の溶解性を向上させるために、水、フェノール、ギ酸、酢酸等を添加したものも使用可能である。これらの溶剤の中から、アルコール系溶剤と他の溶剤を1種又は2種以上を併用した混合溶剤が、本発明の接着剤組成物の溶剤として好ましい。このような混合溶剤として、例えば、メタノール/トルエン混合溶剤、i-プロピルアルコール/トルエン混合溶剤、i-イソプロピルアルコール/ジクロロメタン混合溶剤等の混合溶剤が挙げられる。本発明の接着剤組成物の全溶媒量に占めるアルコール系溶剤の割合は、ポリアミド化合物(A)やエポキシ樹脂(B)の溶解性の観点から、30~80質量%が好ましい。
【0027】
<チタン酸化合物(C)>
本発明の接着剤組成物は、チタン酸化合物(C)として、チタン酸化合物の1種又は2種以上を含有する。チタン酸化合物(C)は、本発明の接着剤組成物中に粒子状で含まれる無機フィラーである。チタン酸化合物は、チタン酸とアルカリ土類金属との複合酸化物が好ましい。例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0028】
本発明の接着剤組成物中、チタン酸化合物(C)の含有量は、高誘電性と良好な接着性の観点から、ポリアミド化合物(A)の含有量100質量部に対し、60~610質量部であり、70~610質量部であることが好ましく、100~610質量部であることがより好ましく、150~600質量部であることがさらに好ましく、200~500質量部であることがさらに好ましい。
【0029】
チタン酸化合物(C)の誘電率ε(測定周波数:1MHz)は、100以上であることが好ましく、120以上であることがより好ましく、150以上であることがさらに好ましい。チタン酸化合物(C)の誘電率εの上限値は、特に限定されないが、通常は15000以下であるのが実際的である。チタン酸化合物(C)の誘電率εは、後述する[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0030】
本発明に係る接着剤組成物は、ポリアミド化合物(A)とエポキシ樹脂(B)とを組合せて含有し、さらにチタン酸化合物(C)を組合せて含有することにより、接着剤組成物の液粘度の上昇が抑制されてハンドリング性に優れ、この組成物を用いて形成した接着剤層は、硬化反応により被着体に対して強固な接着力を示し、かつ、より高い誘電率も達成することができる。さらに、封止材の柔軟性も担保でき、フレキシブルデバイスへの適用も可能である。
【0031】
<接着剤組成物の特性>
本発明に係る接着剤組成物の誘電率は4.0以上であり、好ましくは4.5以上であり、より好ましくは5.0以上であり、さらに好ましくは8.0以上であり、さらに好ましくは10.0以上である。当該誘電率の上限値は、特に限定されないが、通常は100.0以下である。接着剤組成物の硬化物の誘電率は、後述する[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0032】
本発明に係る接着剤組成物の硬化物の剥離強度は、10.0N/cm以上であることが好ましく、11.0N/cm以上であることがより好ましい。当該剥離強度の上限値は、特に限定されないが、通常は50.0N/cm以下である。剥離強度は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0033】
本発明に係る接着剤組成物の液粘度は、100~30000mPa・sであることが好ましく、100~25000mPa・sであることがより好ましく、150~25000mPa・sであることがより好ましく、200~25000mPa・sであることがさらに好ましい。液粘度は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0034】
本発明に係る接着剤組成物の硬化物の弾性率は、0.1~5.2GPaであることが好ましく、0.8~4.0GPaであることがより好ましく、1.2~3.7GPaであることがさらに好ましく、1.3~3.0GPaであることもさらに好ましく、1.9~2.0GPaであることもさらに好ましく、2.4~2.5GPaであることもさらに好ましい。弾性率(引張試験)は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0035】
<その他の成分>
本発明の接着剤組成物には、ポリアミド化合物(A)、エポキシ樹脂(B)及びチタン酸化合物(C)以外に、接着性向上や溶液特性の改善等種々の目的で、添加剤が配合されてもよい。例えば、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、チタン酸化合物(C)とは異なる充填材、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、染料等が挙げられる。かかる添加剤は、原料の溶剤への溶解時あるいは溶解後に添加することが可能である。
【0036】
カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのシラン系カップリング剤(シランカップリング剤)、チタネート系カップリング剤(チタネートカップリング剤)、アルミネート系カップリング剤(アルミネートカップリング剤)、ジルコニウム系カップリング剤(ジルコニウムカップリング剤)などが挙げられる。
【0037】
カップリング剤の含有量は、ポリアミド化合物(A)の含有量100質量部に対して、0.5~3.0質量部であることが好ましく、1.0~2.0質量部であることがより好ましい。
【0038】
酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどのフェノール系酸化防止剤、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-ジチオプロピオネートなどのイオウ系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0039】
紫外線吸収剤の例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル〕-ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレートなどのサリシレート系紫外線吸収剤、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系紫外線吸収剤、2-エトキシ-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリドなどのオキザリックアニリド系紫外線吸収剤、ビス-〔2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペジリニル〕セバケート、ビス-〔N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル〕セバケートなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0040】
難燃剤の例としては、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタンなどの臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル系難燃剤、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族縮合リン酸エステル、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェートなどの含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤、赤リンなどの赤リン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ホウ素系難燃剤などが挙げられる。
【0041】
充填材の例として、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ、銅粉、アルミニウム粉、銀粉等が挙げられる。
【0042】
本発明において、ポリアミド化合物(A)、エポキシ樹脂(B)及びチタン酸化合物(C)を含む接着剤組成物は、通常、上述の任意の添加剤と共に上記溶剤に溶解し、溶液型接着剤として用いられることが好ましい。溶液型接着剤として用いられる場合、接着剤組成物の樹脂濃度(ポリアミド化合物(A)とエポキシ樹脂(B)の各濃度の合計(質量%))は、10~35質量%が好ましく、より好ましくは15~30質量%である。
【0043】
[接着剤層付き積層体]
本発明に係る接着剤層付き積層体は、上記接着剤組成物からなる接着剤層と、当該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備える。
【0044】
本発明に係る接着剤層付き積層体の一態様として、カバーレイフィルムが挙げられる。カバーレイフィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の表面に接着剤層が形成されているものである。
【0045】
接着剤層付き積層体がカバーレイフィルムの場合の基材フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。これらの中でも、接着性及び電気特性の観点から、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルムが好ましい。
【0046】
このような基材フィルムは市販されており、ポリイミドフィルムについては、東レ・デュポン社製「カプトン(登録商標)」、東洋紡績社製「ゼノマックス(登録商標)」、宇部興産社製「ユーピレックス(登録商標)-S」、カネカ社製「アピカル(登録商標)」等を使用することができる。また、ポリエチレンナフタレートフィルムについては、帝人デュポンフィルム社製「テオネックス(登録商標)」等を用いることができる。更に、液晶ポリマーフィルムについては、クラレ社製「ベクスター(登録商標)」、プライマテック社製「バイアック(登録商標)」等を用いることができる。基材フィルムは、該当する樹脂を所望の厚さにフィルム化して用いることもできる。
【0047】
カバーレイフィルムを製造する方法としては、例えば、上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを、ポリイミドフィルム等の基材フィルムの表面に塗布して樹脂ワニス層を形成した後、この樹脂ワニス層から上記溶媒を除去することによって、接着剤層が形成されたカバーレイフィルムを製造することができる。
上記溶媒を除去するときの乾燥温度は、40~250℃であることが好ましく、70~170℃であることがより好ましい。乾燥は、接着剤組成物が塗布された積層体を、熱風乾燥、遠赤外線加熱、及び高周波誘導加熱等がなされる炉の中を通過させることにより行われる。
なお、必要に応じて、接着剤層の表面には、保管等のため、離型性フィルムを積層してもよい。上記離型性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、フッ素系樹脂フィルム等の通常のものが用いられる。
【0048】
接着剤層付き積層体の別の態様としては、ボンディングシートが挙げられる。ボンディングシートも、基材フィルムの表面に上記接着剤層が形成されたものであるが、基材フィルムは離型性フィルムが用いられる。また、ボンディングシートは、2枚の離型性フィルムの間に接着剤層を備える態様であってもよい。ボンディングシートを使用するときに、離型性フィルムをはく離して使用する。離型性フィルムは、上記と同様なものを用いることができる。
【0049】
このような離型性フィルムも市販されており、東レフィルム加工社製「ルミラー(登録商標)」、東洋紡績社製「東洋紡エステル(登録商標)フィルム」、旭硝子社製「アフレックス(登録商標)」、三井化学東セロ社製「オピュラン(登録商標)」等を用いることができる。
【0050】
ボンディングシートを製造する方法としては、例えば、離型性フィルムの表面に上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを塗布し、上記カバーレイフィルムの場合と同様にして乾燥する方法がある。
【0051】
基材フィルムの厚さは、接着剤層付き積層体を薄膜化するため、5~100μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましく、5~30μmであることがさらに好ましい。
【0052】
接着剤層の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
上記基材フィルム及び接着剤層の厚さは用途により選択されるが、電気特性を向上させるために基材フィルムはより薄くなる傾向にある。一般的に基材フィルムの厚さが薄く、接着剤層の厚さが厚くなると、接着剤層付き積層体に反りが生じやすくなり、作業性が低下するが、本発明の接着剤層付き積層体は、基材フィルムの厚さが薄く、接着剤層の厚さが厚い場合でも、積層体の反りがほとんど生じない。本発明の接着剤層付き積層体において、接着剤層の厚さ(D1)と、基材フィルムの厚さ(D2)との比(D1/D2)は、1~10であることが好ましく、1~5以下であることがより好ましい。さらに、接着剤層の厚さが、基材フィルムの厚さより厚いことが好ましい。
【0053】
接着剤層付き積層体の別の態様としては、銅張積層板が挙げられる。銅張積層板は、上記接着剤層を用いて、基材フィルムとしてのポリイミドフィルムと、銅箔とが貼り合わされた積層体である。即ち、銅張積層板は、基材フィルム、接着剤層及び銅箔の順に構成された積層体である。銅張積層板において、接着剤層及び銅箔は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。即ち、銅張積層板は、基材フィルムの一面側及び他面側に、接着剤層及び銅箔を、順次、備える積層体であってもよい。本発明の接着剤組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、銅張積層板は、一体化物として安定性に優れる。なお、本発明の銅張積層板に含まれる接着剤層は、硬化物からなるものであってよいし、未硬化物からなるものであってもよい。
銅張積層板における接着剤層の厚さは、好ましくは5~45μmであり、より好ましくは10~35μmである。
【0054】
銅張積層板を製造する方法としては、例えば、上記カバーレイフィルムの接着剤層と銅箔とを面接触させ、80~150℃で熱ラミネートを行い、更にアフターキュアにより接着剤層を硬化する方法を適用することができる。アフターキュアの条件は、例えば、100~200℃、30分~4時間とすることができる。なお、上記銅箔は、特に限定されず、電解銅箔、圧延銅箔等を用いることができる。
【0055】
[接着剤層付き物品]
本発明に係る接着剤層付き物品は、上記接着剤組成物からなる接着剤層を備える物品である。本発明において好ましい態様は、接着剤層を備える電磁波シールド材である。これにより、電磁波のノイズによる電子機器の誤動作や、通信電波の傍受による機密情報の漏洩等を防止することができる。本発明の電磁波シールド材を製造する方法としては、例えば、接着剤層を備える高誘電性ボンディングシートと、シールド材とを接合する方法を適用することができる。
電磁波シールド材における接着剤層の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましい。
【0056】
接着剤層付き物品の別の態様としては、上記接着剤組成物からなる接着剤層を備えるアンテナ基板、コンデンサ、静電容量型センサ、圧電フィルムスピーカー等が挙げられる。
【実施例0057】
本発明を、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、下記において、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0058】
[接着剤組成物の調製]
<実施例1>
ポリアミド化合物a(酸価:7mgKOH/g、アミン価:3mgKOH/g)を100質量部、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:EPICLON N-665、DIC社製)を10質量部、エポキシシラン系カップリング剤(商品名:SH-6040、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製)を1.11質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業社製、誘電率:4590)を67.1質量部として、メタノール/トルエン=1/1(質量比)の混合溶剤394質量部に投入して混合し、接着剤溶液(接着剤組成物)を調製した。
【0059】
<実施例2>
チタン酸バリウムの投入量を151質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0060】
<実施例3>
チタン酸バリウムの投入量を259質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0061】
<実施例4>
チタン酸バリウムの投入量を404質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0062】
<実施例5>
チタン酸バリウムの投入量を606質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0063】
<実施例6>
ポリアミド化合物aをポリアミド化合物b(酸価:1mgKOH/g、アミン価:4.5mgKOH/g)に変更し、チタン酸バリウムの投入量を404質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0064】
<実施例7>
ポリアミド化合物aをポリアミド化合物c(酸価:1mgKOH/g、アミン価:4.5mgKOH/g)に変更し、チタン酸バリウムの投入量を404質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0065】
<実施例8>
チタン酸バリウム67.1質量部をチタン酸スロトンチウム(商品名:ST-A、富士チタン工業社製、誘電率:300)322質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0066】
<実施例9>
チタン酸バリウム67.1質量部をチタン酸カルシウム(商品名:CT-3、共立マテリアル社製、誘電率:180)276質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0067】
<実施例10>
o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の投入量を2質量部に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0068】
<実施例11>
o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の投入量を25質量部に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0069】
<比較例1>
エポキシ樹脂(商品名:エピコート828、三菱ケミカル社製)を100質量部、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名:SR-2EGS、阪本薬品工業社製)を25質量部、変性脂肪族ポリアミン(商品名:フジキュアFXJ-8074-D、T&K TOKA社製)を48.5質量部、アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A-1100、日硝産業社製)を1.5質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業社製)を97.2質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0070】
<比較例2>
エポキシ樹脂(商品名:エピコート807、三菱ケミカル社製)を100質量部、m-フェニレンジアミン(商品名:エピキュアZ、三菱ケミカル社製)を19質量部、エポキシシラン系カップリング剤(商品名:KBM-402、信越化学工業社製)を1.84質量部、チタネート系カップリング剤(商品名:KR-46B、味の素ファインテクノ社製)を0.79質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業社製)を426質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0071】
<比較例3>
酸変性ポリオレフィン樹脂(商品名:アウローレン500S、日本製紙製)を100質量部、ジオクチルスズジラウレート(キシダ化学社製)を0.1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デュラネートTKA-100、旭化成社製)を10質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業社製)を78.2質量部として、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=3.7/1(質量比)の混合溶剤567質量部に投入して混合し、接着剤溶液(接着剤組成物)を調製した。
【0072】
<比較例4>
アクリルポリマー(商品名:UH-2041、東亞合成社製)を100質量部、ジオクチルスズジラウレート(キシダ化学社製)を0.1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デュラネートAE-700-100、旭化成社製)を102質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業社製)を66.7質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0073】
<比較例5>
チタン酸バリウム67.1質量部に代えてシリカ(商品名:エクセリカSE-1、トクヤマ社製)を121質量部投入したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0074】
<比較例6>
チタン酸バリウム67.1質量部に代えて窒化ホウ素(商品名:PCTP-2、サンゴバン社製)を154質量部投入したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0075】
<比較例7>
チタン酸バリウムの投入量を35質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0076】
<比較例8>
チタン酸バリウムの投入量を908質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0077】
<比較例9>
チタン酸バリウムを投入しないこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤溶液を調製した。
【0078】
[評価方法]
<ポリアミド化合物のアミン価の測定方法>
ポリアミド化合物を1-ブタノール20mlとトルエン20mlとの混合溶液に溶解し、京都電子工業社製自動滴定装置「AT-510」にビュレットとして同社製「APB-510-01B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.1mol/Lの2-プロパノール性塩酸溶液を用いて電位差滴定を行い、ポリアミド化合物1gあたりの塩酸と当量KOHのmg数を算出した。
【0079】
<ポリアミド化合物の酸価の測定方法>
ポリアミド化合物1gをベンジルアルコール40mlに溶解し、京都電子工業社製自動滴定装置「AT-510」にビュレットとして同社製「APB-510-20B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.01mol/Lのベンジルアルコール性KOH溶液を用いて電位差滴定を行い、ポリアミド化合物1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0080】
<誘電率の測定方法>
(実施例1~11、比較例5~9で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、150℃で30分間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、前記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、ネットワークアナライザー85071E-300(アジレント社製)を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。
【0081】
(比較例1、2で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、130℃で5分間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、前記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、ネットワークアナライザー85071E-300(アジレント社製)を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。
【0082】
(比較例3で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、40℃で1日養生した。この養生により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、前記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、ネットワークアナライザー85071E-300(アジレント社製)を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。
【0083】
(比較例4で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、80℃で1時間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、前記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、ネットワークアナライザー85071E-300(アジレント社製)を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。
【0084】
(チタン酸化合物(C))
チタン酸化合物(C)からなるチタン酸バリウムシートを0.4mm厚に研磨した後、1.5mm×4mmの大きさに切断し、両面に銀電極を設け、周波数1MHzで、室温(25℃)から500℃の範囲で温度を振り、電気的に誘電率を測定した。
【0085】
<剥離強度の測定方法>
(実施例1~11、比較例5~9で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度120℃、圧力0.5MPaの条件でラミネートした。次いで、この積層体(ポリイミド付き銅張積層板/接着剤層/銅箔)を、温度150℃及び圧力3MPaの条件で30分間加熱圧着し、はく離接着強さ評価用基板を得た。この評価基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°はく離接着強さ(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0086】
(比較例1、2で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度120℃、圧力0.5MPaの条件でラミネートした。次いで、この積層体(ポリイミド付き銅張積層板/接着剤層/銅箔)を、温度130℃及び圧力3MPaの条件で3分間加熱圧着し、はく離接着強さ評価用基板を得た。この評価基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°はく離接着強さ(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0087】
(比較例3で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度80℃、圧力0.4MPa、及び速度0.5m/分の条件でラミネ-トを行った。次に、この被膜をオーブン内に静置して、40℃で1日養生し、はく離接着強さ評価用基板を得た。この評価基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°はく離接着強さ(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0088】
(比較例4で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度80℃、圧力0.4MPa、及び速度0.5m/分の条件でラミネ-トを行った。次に、この被膜をオーブン内に静置して、80℃で1時間加熱処理をし、はく離接着強さ評価用基板を得た。この評価基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°はく離接着強さ(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0089】
<塗工性(液粘度)の測定方法>
接着剤組成物の液粘度をE型粘度計(コーンプレート型粘度計)であるTVE-20H型粘度計(塩水/平板方式、東機産業社製)を用いて、下記の条件下で測定した。液粘度が3万mPa・s以下であれば、塗工性が良好である判断した。
-測定条件-
コーン形状:角度3°×R9.7’、半径20mm
温度:25℃±0.5℃
【0090】
<柔軟性の測定方法>
(引張試験)
上述の電気特性(誘電率及び誘電正接)の測定と同様にして試験片を作製し、島津製作所社製「オートグラフAG-Xplus」を用いて、治具間距離40mm、標線間距離20mm、引張速度5mm/分、23℃で引張試験を行った。歪みはカメラを用いてリアルタイムに計測した。原点から降伏点までの歪みを10分割し、各区間の接線の傾きを最小二乗法で計算し、引張弾性率を算出した。
(折り曲げ試験)
上記引張試験と同様に作製された試験片に対し、JIS K5600-5-1:2018に準拠した耐屈曲性試験(円筒形マンドレル法)に基づいて、試験片を直径2mmの鉄棒に巻きつけ、割れが生じるか否かを目視で観察した。割れが確認されなかったものを「○」、割れが確認されたものを「×」として評価した。
【0091】
実施例1~11及び比較例1~9に係る接着剤組成物の組成を表1、2に示し、実施例1~11及び比較例1~9に係る接着剤組成物について上述の各種測定が行われた結果を表3に示す。
【0092】
【0093】
(表1の注)
・表中の数値:質量部
・フィラーのカラムの括弧内は固形分中の体積%
【0094】
【0095】
(表2の注)
表中の数値:質量部
フィラーのカラムの括弧内は固形分中の体積%
「ジオクチルスズジラウレート」は、表2中からは割愛した。
【0096】
【0097】
(表3の注)
比較例1の「-」は、接着剤組成物が塗工されてから15分後に固化し、塗工性(液粘度)を測定することができなかったことを意味する。
【0098】
フィラーとしてチタン酸化合物を含まず、シリカ粒子を配合した比較例5では、硬化物の誘電率を所望のレベルへと高めることはできなかった。フィラーとして窒化ホウ素を配合した比較例6や、フィラーを配合していない比較例9についても同様である。
また、フィラーとしてチタン酸化合物を配合しても、その量が少なければ、やはり硬化物の誘電率を所望のレベルへと高めることはできない(比較例7)。逆にチタン酸化合物の配合量が多すぎると、液粘度が上昇し、ハンドリング性に劣る結果となり、硬化物の剥離強度にも劣る結果となってしまう(比較例8)。
また、フィラーとしてチタン酸化合物を所望量配合したとしても、ベース樹脂(マトリクス樹脂)がポリアミド化合物を含まず、ベース樹脂をエポキシ樹脂のみとして、硬化剤を用いて反応させる系とした場合には、硬化反応が素早く進みすぎてハンドリング性に著しく劣る結果となり、また、得られる硬化物は硬く柔軟性に劣るものであった。(比較例1、2)。
また、ベース樹脂としてエポキシ樹脂を用いずに、ベース樹脂を、反応性基を有するポリオレフィン樹脂やアクリルポリマーで構成し、これらをポリイソシアネートと反応させて硬化反応を生じさせると、チタン酸化合物を配合しても誘電率を所望のレベルへと高めることができず、また、剥離強度にも劣る結果となった(比較例3、4)。
これらに対し、本発明で規定する接着剤組成物はいずれも、ハンドリング性に優れ、得られる硬化物がチタン酸化合物の高誘電特性を十分に引き出し高い誘電率を示し、この硬化物は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れるものであった(実施例1~11)。